第04話 寂しん坊ゆえの親父ギャグ

Missテリ

 「僕は常々、なぜ、ある年齢になるとおやじギャグを発するのかと思うのです。そ

  のおじさんも若い頃には、上司だからと愛想笑いを返していたけど、自分はおや

  じになっても絶対つまらないギャグを言わないと決めていたと思うのに…。なの 

  にどうしてあんなに楽しく発するようになるのかって」

You

 「テリはよくもまぁ、常々って脛しか齧っていないのに」

Missテリ

 「ギャグにもなっていない」

You

 「いやいやいや、ギャグなんて言ってないし、そんな年齢でもないわ」

Missテリ

 「そうなんです。ある年齢になると発病するんです。誰もという訳ではないんです

  が」

You

 「そうだよな、誰でもってことないよな」

Missテリ

 「おやじギャグを言う人には共通点があるんです。役職とか仕事は出来る人に良く

  見られる傾向です。余裕がある人です」

You

 「確かに。眉間に皺を寄せている人は言わないわな」

Missテリ

 「僕は思うんです、おやじギャグを発する人は、実は人との繋がり方を見失ってお

  り、自分の存在感を感じられなくなり、不安に思っていると。それを払拭するた

  めに気を引く狙いと、どうだ、俺、凄いだろう、と言葉を発し、注目を浴びてそ

  の反応を確かめたがっていると。偉くなると部下や周りとの関係・親密さが不透

  明になりますからね。そのギャグが秀逸であるかは自分の存在価値であり、ギャ

  グの出来栄えより如何に自分が高い水準で気さくであり、馴染みやすいか、また

  受け入れられるか、という確認を行っているんだ、と。だから、一方通行でどん

  どん押し付けてくるんです。自分の存在価値に満足が得られればいいんです。た

  だ、気を付けないといけないのは、受けなければ自己否定されたと感じ、名誉挽

  回に必死になり、連呼されるかも知れません。面倒でも、適当に受けて上げるの

  がいい人間関係を構築できると思います。ギャグを言うおじさんは、寂しいんで

  す。誰にも構って貰えずに」

You

 「確かに。面白くないって反応をしても分からないこっちが悪いって気にさせるよ

  な。さらに、空気も読まずに分かれって、説明までして押し込んでくるし…。で

  も、それは寂しさから来ているのか…、猫の構って構ってと同じってことかぁ」

Missテリ

 「そうだと思います。おやじギャグを否定はしません。でも、Youさんも四十代に

  なる頃には好んで言ってそうですから気をるけて下さいね。Youさんのギャグに

  は深みがなさそうなので」

You

 「うっせいわ、テリはどうなんだ、しつこそうだけど」

Missテリ

 「僕はおじさんでなくおばさんです。だから、おやじギャグとはなりません」

You

 「確かにおばさんのギャグって聞かないねぇ」

Missテリ

 「僕はギャグの意味は解りますが、言うのは苦手と言うか面白みが理解できませ

  ん。この糊、ノリが悪いなぁ、って、態々言わなくても、ということで理解で

  きないものは、発することができません。そういう意味では、言ってみたい気が

  します」

You

 「言わなくていい。テリが言うと哲学みたいに硬くて分かりにくいものが多そうだ

  し、分からなければねちねち説明されるようで、より面倒くさそうだから」

Missテリ

 「Youさんは、失礼なことを平然と言いますね、僕は傷ついています」

You

 「ああ、それは悪かったすまんすまん」

Missテリ

 「すまんではすまん」

You

 「それ、おやじギャグじゃない?」

Missテリ

 「失敬な、僕はまだそんなに歳を取っていませんよ」

You

 「これは失敬、死刑だ」

Missテリ

 「はいはい。お互い面白くないので気をつけましょうね」

You

 「テリが言うと真実味があるわ、あっはははは」

Missテリ

 「…」

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