第22.5話 ふふふっ

「はぁ……」

「こればっかりはしょうがないよ」

「けど……はぁ」

「教室に戻りましょうか。生徒会長、お時間をいただきありが――」

「天道さん、ちょっといいですか?」


 生徒会長の瞳が、真っすぐ俺へと向けられた。


「え、わたしですか?」

「はい」


 二人の方を向いて首を傾けると、


「先に行ってるぞ……」

「教室で待ってますね」


 と言って、テンションだだ下がりの凪羅と、天霧さんは行ってしまった。

 

 できれば気まずいから一緒にいて欲しかったけど、あの感じじゃしょうがないか。

 

 閉まった扉の方から顔を前の方へと戻すと、丁度目が合った。


「………………」

「…………っ」


 しーーーーーーーーーーんっ。


 な、なんだ? この状況……。


 こうなった以上、なぜか先に話しかけた方が負けな気がしてきた。


 でも、このままじゃせっかくの放課後の時間が減ってしまう。


「あ、あの…――」

「学校にはもう慣れましたか?」

「え? あっ、まぁなんとか……」


 ほんとはまだ全然慣れてないんだけどね。


 この学校、広すぎ。この一言で十分だ。


「まだ慣れていないと顔に出ていますよ」

「へっ?」

「ふふっ。入学してまだ一ヶ月も経っていませんからね」

「あはは……」


 また心の中を見透かされたような。そんな気がする。


「なにかわからないことがあったら、いつでも言ってくだい」

「あ、ありがとうございます……」


 直感だけど、俺……この人苦手だ。


 今もじーっとこちらを見ている。


「あ、あの、俺の顔になにか付いてます?」

「おれ?」

「あ……」


 しっ、しまった。


「じゃ、じゃあわたしはここで、失礼しますっ!!」


 扉の方に振り返ると、早歩きで生徒会室を出たのだった。


 ……って、外に出ちゃったらなんで呼び止められたのか、聞けないじゃないかっ!


 戻るわけにもいかないし……はぁ。


 ブゥゥゥーッ。


 そのとき、ポケットに入れていたスマホが揺れた。


『マーガレット・フィリアで作戦会議っ!!!!!』


 なんとも気合いの入った一文だな。


 ふっ。切り替えの早さが、凪羅あいつのいいところか。




「………………」


 閉まった扉を見つめながら、生徒会長かのじょはポツリと呟いた。


「ふふふっ。…――――――ですよ、天道さん」

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