屋上
高校2年生の夏。事件が起きた。
クラスメイトの女子が一人、自殺をしようとした。
屋上にたくさんの人が集まり、今にもフェンスを飛び越えそうだった。
私はそれに対して、なんとも感じなかった。別に私はその子と仲が良かったわけでもない。どうなろうと関係ない。私に害は及ばないし。
でも周りは私を放っておいてくれなかった。
「日野森!佐々木がじ、自殺しようとしてて!なんとかしてくれないか!?生徒会長だろ!?」
は?
なんで私が面識もないような子の自殺を止めないといけないの?
なんで!?なんでそんな重荷を背負わないといけないの!?
でも、断れなかった。
優等生だから。
知らない子だとしても救わなければならなかった。
「...わかりました。できるかわからないけど、頑張ります。」
「頼んだぞ。」
はあ...これで本当に飛び降りたらどうするのよ。
屋上へ向かう。
たくさんの人が階段の周りに集まっている。
スマホを持って写真を撮ったり、動画を撮ったりしている。
こんなことするから飛び降りたりするんじゃないの。
そんなことを思いながら佐々木さんのいる最上階に着いた。
「...佐々木さん。」
呼びかけられた生徒、佐々木 穂波はびくりと身を震わせた。
目にハイライトは入っていない。殺気を感じた。
両手でしっかりとフェンスを握り、横に同じように並んでフェンスを握った私の方を信じられないと言わんばかりの目で見ている。
「佐々木さんの気持ちは分かる。でもさ、ここから今飛び降りてしまったら全てが終わってしまうよ。」
ここから落ちればまず間違いなく死ぬだろう。
私の通っている高校は5階建てだし、下は全てコンクリート敷だ。
「ほっといてよ!今まで誰も私のことなんか見てなかったじゃない!放っておいてよ...」
彼女はヒステリックに泣き叫んだ。
白い手首にはたくさんの切り傷らしきものがあった。
彼女のことは全くと言っていいほど知らないが、きっと希死念慮に苦しんでいたのだろう。
「なんであんたまで飛び降りようとしてんのよ。関係ないでしょ!」
ふふっ。あははっ。
なんだか笑えてきた。そうだよ。全く関係ないよ。それなのに優等生だから、生徒会長だからたったそれだけの理由で今私はフェンスの外に立っている。
私がそれこそ飛んでやろうか。そんなことを思った。
笑いをなんとか噛み殺して、私は話しかけた。
「佐々木さんが飛び降りるなら、私も一緒に飛ぶよ。佐々木さんもさ、一人で飛ぶのは怖いでしょ?私が着いていってあげるよ。」
涙も出てきた。でもこれは恐怖に怯える涙ではない。笑いを堪えた時に出てくる涙だ。私、女優になれるんじゃないかな。
「何言ってんのよ。」
「私は佐々木さんの意志を止めないし、否定もしない。死にたいなら私は無理に止めはしないよ。だから、佐々木さんも私のことを止められないよ。」
「な、なんでそうなるのよ!わけわかんない!そんなこと言ってどうせ死にたくないんでしょ!?」
「死にたくないに決まってるよ。」
「毎日楽しいし、これからやりたいことだってたくさんある。こんなところで佐々木さんに巻き込まれて死にたくなんてない。」
自分の口からペラペラと嘘が出てくる。私真剣に嘘つくの上手いかも。
「だからさ、私のために、生きてくれないかな。」
こう言った瞬間周りの空気が変わった。
佐々木さんの目に光が入った。一緒に、ゆっくりとフェンスの内側へと戻った。
彼女が感極まって私の方へと泣きじゃくりながら抱きついてきた。
手を握ってきた。
「私、日野森さんのために生きる」
そんなことを言ってきた。
私も「うん!」なんていって手を強く握り返した。
握ってきたその手をはたいてやりたかった。
長文ごめんなさい^^;
ここまで読んでくださりありがとうございます。
巫 歪
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