53話 合コン4


 一方その頃。


 女性陣もまた化粧室内で男性陣の印象を話し合っていた。



「で、どうだね? 誰か気になる男子はいたかい? 個人的には鈴木くんとかおすすめなんだがね」



「鈴木くんはむっつりの上に巨乳好きだからダメです!」



 ぶっぶー、と両手で×印を作るひよりに、湖子が「はっはっはっ、そうか」とおかしそうに笑う。


 すると、雫がひよりに聞いた。



「まあ鈴木くんは冗談として、小日向先輩的にはどうだったんですか? 山下さんといい雰囲気のように見えましたけど」



「あ、うん。やまぴーくん、優しくていい人だったよ。それにすんごいマッチョなの! 照……じゃなくて鈴木くんに筋肉分けてあげたいくらい!」



「そ、そうですか。まあ鈴木くんはスレンダーですからね……」



「えっ!?」



「?」



 突如驚いたような顔をするひよりに、一体どうしたのかと雫が小首を傾げていると、彼女はわなわなと顔色を青くさせて言った。



「す、鈴木くんがスレンダーだってことを知ってるってことは、も、もしかして雫ちゃん、す、すでに彼とあれなあれを……っ!?」



「~~っ!? し、してませんよ!? な、何言ってるんですか!?」



 真っ赤な顔で反論する雫に、ひよりはほっとしたように胸を撫で下ろして言った。



「そ、そっかぁ~……。よかったぁ~……。ま、まあお付き合いしてるんだし、そういうこともいずれするんだろうけど、その時は絶対あたしに報告しないようにしてね……。なんかお姉ちゃん、凄いショック受けちゃいそうだし……」



 よよよ、と両手で顔を覆うひよりに、雫は「いや、普通に報告しませんし……」と半眼を向ける。


 そんな彼女に、湖子はふっと不敵な顔でこう言ったのだった。



「ちなみに私には言ってくれても構わんのだよ?」



「いや、死んでも言わないです……」



      ◇



 そうしてはじめての合コンはなんとか無事終わり、とりあえず全員連絡先を交換してお友達から始めることになった。


 案の定、雫がキムたっくんさんに連絡先を教えるのを渋っていたのだが、そこは後日協力してくれたお礼をするということでなんとか了承してもらった。


 まあ仮に断っていたとしてもお礼はするつもりだったんだけどな。


 ともあれ、サクラだとバレぬよう二手に分かれて帰ることになったので、俺は雫とともに帰路へと就いていた。


 そんな中、雫が嘆息して言う。



「てか、あの人の言ってること八割くらい理解出来なかったんだけど……。なんで黒ギャルのお尻と煮卵を見比べる必要があるの……」



「え、えっと、あれは別に必要があるとかじゃなくて、見分けがつかないのでは? みたいなネット上のお遊びっていうか……」



「え、じゃあ別に本気で黒ギャルのお尻を食べたいと思ってるわけじゃないってこと?」



「えっ?」



「いや、だってあの人〝拙者一度でいいから黒ギャル殿の尻に顔を埋めてみたいでござる〟って」



「そ、それは……」



 完全に食べようとしているやつですね……。


 てか、仮にも合コン中の女子に向かってなんてこと言ってんだあの人!?


 まさかオタクに優しいギャルは皆下ネタにもノリノリだと思い込んでいるのでは……っ!? と思わず頭痛を覚えそうになる俺。


 いや、それ以前に雫は別に〝オタクに優しいギャル〟ではなく、〝オタクにもとくに偏見のないギャル〟なだけであって、下ネタにもそんなに寛容じゃないっていう……。


 なんというか、ご愁傷様です……、と俺が内心キムたっくんさんに手を合わせていると、雫が少々恥ずかしそうに言った。



「っていうかさ、あんたもやっぱ黒ギャルが好きなの?」



「えっ? いや、まあ嫌いじゃないけど……」



「ふーん……。じゃあもしあたしが黒ギャルになったら……?」



「そ、そりゃ似合うとは思うけど……でも俺は今の雫の方がいいかなぁ……」



 キムたっくんさんに付きまとわれても困るし……。



「……そっか。うん、なら照の好きな方にしとくよ」



 ふふっとどこか嬉しそうに笑う雫に、俺は「お、おう……」と頷くことしか出来なかったのだった。



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