50話 合コン1
そうこうしているうちに姉さんが帰宅し、いつも通り三人での時間が始まったのだが、
「――というわけであたし、彼氏を作ろうと思います!」
「「えっ?」」
開口一番そんなことを言い出し、俺と雪菜さんは鳩が豆鉄砲を食ったような顔になった。
てか、何が〝というわけで〟なんだろう……。
「いや、まあそれはいいんだけど、しかしまたどうしていきなり……」
「そんなの決まってるでしょ? あたしだって〝アオハル〟したいからよ!」
どーんっ、と姉さんがその慎ましやかな胸を張って言う。
よもや姉さんの口から〝アオハル〟なんて言葉が出てくるとは思わなかった。
でもたぶん姉さんのことだから〝アオハル〟が〝青春〟の訓読みだって知らずに雰囲気で使ってるんだろうなぁ……、と俺がそんなことを考えていると、姉さんは神妙な顔でこう続けた。
「あたしね、思ったの。このまま花のJK時代を部活と美味しいもの巡りで終わらせちゃっていいんだろうかって」
「あら、でも私ひよりとの食べ歩きは大好きよ? この前のクレープ屋さんも美味しかったし」
「あたしも大好き! 絶対また行こうね!」
「ええ、是非」
うふふ、と微笑む雪菜さんに、姉さんも「えへへ~」とにんまり顔を緩ませていたのだった。
いや、彼氏の話はどうした……。
◇
「……で、何故その話を私に?」
「いや、それがですね……」
翌日、俺はアニ研の湖ちゃん先輩のもとを訪れていた。
というのも、あれから詳しく話を聞いてみれば、なんでも俺に彼女(候補)が出来たことが思いのほかショックだったらしく、これを機に弟離れするしかないと割と本気で考えていたんだとか。
それがぽっと出のクレープ屋さんにがっつり持っていかれたことはさておき。
俺としても姉さんには幸せになってもらいたいし、俺の言えた義理ではないんだけど、変なやつと付き合って傷つくようなことにはなって欲しくないからな。
ならばと少々考えを巡らせたわけである。
「なるほど。つまり大好きな姉を恋愛的な意味合いで男慣れさせるために、まずは信用出来る者での合コン的なものから始めたいというわけだね?」
「ええ。〝大好きな姉〟以外は大体そんな感じです」
「ふむふむ、そういうことか。確かにひよりくんはお世辞にも恋愛経験が豊富とは言えなさそうだからね。食べものに釣られて悪い男に引っかかる可能性は十分にあるだろう」
「ええ……」
それがマジでありそうだから困っているのである。
肉まんや牛丼をちらつかせたらほいほいついて行きそうだからな、あの人……。
「しかしそうなると最低あと二人は男が必要ということか」
「二人ですか?」
「ああ。最初ならば男三、女三の六人くらいが無難だろうしね。そして盛り上げと監視のためにサクラとして私とキミ、そして鷺ノ宮くんを入れる。で、あとはひよりくんの彼氏候補となる二人を連れてくればいい」
「なるほど。まああくまで今回の合コンは姉さんの目を肥やさせることですし、その方向でいいとは思うんですけど、でもなんで雪菜さんじゃなくて雫なんですか?」
俺の問いに、湖ちゃん先輩は「決まっているだろう?」と当然のように言った。
「彼女が参戦したらほぼ間違いなく無双状態になるからだよ」
「あ、ああ、なるほど……。まあ雫は好みの分かれるタイプの美少女ですしね」
「うむ。それでもひよりくんに目を向けさせるためにはもう少し男の目を引かぬ者にしたかったのだが、この際仕方あるまい。それでキミは誰かよい男の
湖ちゃん先輩にそう尋ねられるも、俺は「いえ……」と首を横に振って言った。
「なので交友関係の広そうな湖ちゃん先輩にお願い出来ないものかと思いまして……」
「なるほど、そういうことか。ちなみにひよりくんの好みのタイプはどんな感じの人なんだい?」
「えっと、なんかご飯を一緒に美味しく食べてくれる、くまさんみたいな人がいいって言ってました」
それを聞いた湖ちゃん先輩がおかしそうに笑って言う。
「はっはっはっ、そうか。実にひよりくんらしくて可愛いと思うよ。――うむ、承知した。ではなるべく希望に添える人材を用意しよう」
「ありがとうございます!」
「いや、気にすることはないさ。我らがアニ研の副会長たるキミの頼みだからな。大船に乗ったつもりでいたまえよ」
「ええ、お願いしま……って、うん?」
ふ、副会長になってるーっ!? と俺はまさかの事実にがーんっとショックを受けていたのだった。
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