46話 膝枕


 先日の一件以降雪菜さんのスキンシップが激しくなったのは言わずもがな、雫の方にも大きな変化があった。



「お昼、一緒に食べない?」



「あ、うん」



 以前までは人気のない校舎裏などで割と距離のある感じで食べていたのだが、



「よいしょっと」



「えっ?」



 それが人気のない空き教室の、しかも隣に寄り添うような感じになったのである。



「何?」



「あ、いや、その、随分距離が近いなぁと……」



 当然、困惑する俺に、雫は「そうだね」とおかしそうに笑って言った。



「なんならあとで膝枕でもする?」



「ひ、膝枕!?」



 ちらり、と視線を下げた俺の目に映ったのは、スカート丈短めな雫のむっちりとした太ももだった。



「……」



 思わずごくりと固唾を呑み込む俺。


 と。



「えっち」



「ご、ごめん!? な、なんか柔らかそうだったからつい!?」



 雫にそう言われ、慌てて謝罪する俺だったのだが、彼女はふふっとどこか嬉しそうに笑って言った。



「別にそんな謝る必要ないし。てか、太ももなんて珍しくもないでしょ? いつも白藤先輩のを見てるんだし」



「え、あ、いや……。太ももは、見てないなぁ……」



 ブラ紐とか谷間は見せていただいたんだけど……。



「そうなの? じゃあ膝枕は?」



「それもないなぁ……。というか、基本的に姉さんもいるから迂闊なことは出来ないっていうか……」



「あ、そうなんだ」



「うん」



 ふーん……、とお弁当箱の用意をする雫だったが、ふいに彼女は手を止めて言った。



「ならさ、あたしがさせてあげるよ。膝枕」



「えっ?」



「だってしたことないんでしょ?」



「いや、まあそうだけど……」



「だからさせてあげる。ほら、おいで」



 ぽんぽんっ、と両ももを叩く雫に俺が困惑していると、彼女は「ほーら」と強引に俺の頭をそこにいざなった。



「ちょ、ちょっと!? ――おふっ!?」



 しかもあろうことか雫の方向きで、である。


 ひんやりとした太ももの感触が顔の右側に広がる中、雫は俺の頭を優しく撫でながら言った。



「どう? 気持ちいい?」



「う、うん……」



「よかった」



 確かにめちゃくちゃ気持ちがいい。


 出来ればずっとこうしていたいとすら思うほどだ。


 が!


 俺はそれどころではなかった。


 というのも……〝見えている〟のである。


 俺の視線の先、スカートと太ももの間の暗闇に、見えてはいけない布地が見えてしまっているのだ。


 ……これは言うべきだよな?


 いや、言うべきなのか!?


 てか、なんて言えばいいんだよ!?



「ほら、もっと身体の力抜きなって。てか、仰向けの方がよくない?」



 仰向け!?



「い、いや、今仰向けはよくないかなぁ……」



「……? ――っ!?」



 そこで雫も気づいたらしい。


 彼女はぎゅっとスカートを押さえて言った。



「……えっち」



「ごめん……」



 もう謝ることしか出来ない俺が内心滝のような涙を流していると、ふいに雫がこう言ってきた。



「……ねえ、あんた今あたしに興奮してくれてるんだよね……?」



「えっ? い、いや、まあ……そう、なりますね……」



「それってさ、つまりあたしと〝したい〟ってこと……?」



「い、いや、それは……」



 なんと答えたらいいか言い淀む俺に、雫は恥ずかしそうに頬を染めながら言った。



「……いいよ。ここ誰も来ないし……。する……?」



「い、いやいやいやいやいや!? さ、さすがにそれは!?」



 堪らずがばっと上体を起こした俺だったのだが、



「でも……」



 ――ちらり。



「……うん? Oh……」



 生理現象真っ只中だったことをすっかり忘れており、とりあえず両手でそちらの方をそっと隠したのだった。


 てか、そんなまじまじと見んでくだせえ……。



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