29話 いざ合戦の刻2
と、とりあえず落ち着け、俺。
確かにお誘いを断り切れずここまで来てしまったが、俺はまだ雪菜さんとお付き合いもしていない上、鷺ノ宮さんにもお返事をしていないのだ。
である以上、ここで雪菜さんとえっちな関係になるわけにはいかない。
そういうことはきちんと段階を踏んでからするべきだし、そうでないと真剣に俺との関係をやり直そうとしてくれている鷺ノ宮さんに対しても不誠実になってしまう。
だからそう、今日はただ遊びに来ただけなのである!
「ふふ、弟く~ん♪」
「って、いつの間にそんなところに!?」
がーんっ、とショックを受ける俺と腕を絡め、雪菜さんがぴたりと寄り添ってくる。
途端に俺を安らかな気持ちにさせたのは、雪菜さんから漂ってくる甘いシャンプーの香りだった。
以前姉さんが「雪菜めっちゃいい匂いする! ずるい!」と恐らくは同じシャンプーを買ったことがあったのだが、こんなふわふわな気持ちになることはなかった。
にもかかわらず、一体これはなんなのか。
何故こんなにも雪菜さんを抱き締めたくなっているのか。
ええい、惑わされるな!? と必死にその欲求から逃れようとする俺に、雪菜さんがふふっと悪戯な笑みを浮かべて言った。
「ねえ、弟くん。さっきのブラに見覚えない?」
「えっ?」
「ほら見て。こんな感じで紐まで全部透けてるの。見覚えあるでしょう?」
そう言って再び紫のブラ紐をチラ見させてくる雪菜さんから慌てて視線を逸らす俺だったが、言われてみれば確かに見覚えがあるような気がしていた。
「あっ」
そして俺は思い出す。
以前雪菜さんとランジェリーショップに行った際、俺が間違って選んだ下着が確かこんな感じの透け透けなやつだったということを。
「ま、まさか本当に買ったんですか!?」
「ええ、そうよ。ちょっと恥ずかしかったのだけれど、弟くんが喜んでくれたら嬉しいなって」
「い、いやいやいや!? あ、あれはたまたまそこにあったのを間違って取っただけで……って、あれ? じゃ、じゃあもしかして今……?」
ちらり、と視線を下げた俺に、雪菜さんは恥ずかしそうに顔を紅潮させて頷いた。
「ええ、着けてるわ。上下ともにね」
「上下ともに!?」
つ、つまり今このお洋服の中では雪菜さんの大事なものが色々と透っけ透けになっていらっしゃるということで!?
ごくり、と生唾を呑み込む俺の耳元で、雪菜さんは囁くように言った。
「……確認、してみる?」
「――っ!?」
な、なん、だと……っ!?
驚愕に目を見開く俺に、雪菜さんはさらにこう続けてくる。
「でもここじゃちょっと恥ずかしいから、あそこに移動してくれるのが条件だけれど……」
「あそこ……って、はわあっ!?」
雪菜さんの視線を追った先で俺が見たのは、先ほど見つけたぬいぐるみだった。
そう、つまりは〝ベッド〟である。
「ゆ、ゆゆ雪菜さん!? じょ、冗談ですよね!?」
「あら、私は本気よ……? それとも私とじゃ嫌……?」
「~~っ!?」
こ、こここれはよろしくないのでは!?
と、とととってもよろしくないのでは!?
ばくばくと心臓があり得ないほどのビートを刻む中、雪菜さんが「……来て」と俺の腕を引いて立ち上がる。
もちろん思考のショートしている俺はされるがままである。
そうして為す術なくベッドに寝かされた俺の上に跨がり、雪菜さんは言った。
「やっと、やっとあなたを私だけのものに出来るわ……」
「ゆ、雪菜さん……」
い、いいのか……?
ほ、本当にこのまま流れに身を任せちまっていいのか……?
い、いや、ダメに決まってるだろ!?
鷺ノ宮さんはどうするんだよ!?
「私ね、こういうことをするのはじめてなの……」
「……っ」
が、頑張れ、俺!
お、お前はそんな不誠実なやつじゃないだろ!?
た、戦うんだ、小日向照おおおおおおおおおおおおっ!?
「だから優しくしてね……」
「……はい」
……すまぬ。
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