27話 義妹


 すっかり婚姻届の一件が俺の妄想劇(将来結婚出来なさそうなのでせめて妄想の中でくらい巨乳美女をお嫁さんにしたかった)として処理されたことはさておき。



「でも雪菜が義理の妹かー」



 もぐもぐと肉まんを頬張りながら机に頬杖をつく姉さんに、雪菜さんが「あら」と笑って言った。



「私はひよりがお姉さんだったら嬉しいわよ?」



「そりゃあたしだって嬉しいけどさー……」



 ちらり、と姉さんが雪菜さんの胸元を見やって拳を握る。



「こんなスタイルのいい妹がいたらお姉ちゃん絶対病みそう……っ。あとパパとママも……っ」



「いや、姉さんはまだしもなんで父さんや母さんまで病むんだよ……」



 そう胡乱な瞳を向ける俺に、姉さんは「だって!」と雪菜さんの胸元を指差して声を張り上げた。



「おっぱい大きいじゃん! すっごい大きいじゃん!」



「お、おう……」



 そうですねとしか言いようがないんだけど……。



「こんな大きなおっぱいの美女をあの照が嫁として家に連れてくるのよ!? そんなのパパからしたら〝ふざけんなちきしょう!〟って感じだし、そんなパパにママも〝ふざけんなちきしょう!〟って感じじゃない!」



「いや、何してんだよ父さん……」



 てか、その前に〝あの照が〟ってどういうことだよ。


 俺にだって巨乳美女を嫁にする権利くらいあるだろ、と俺が内心異議を申し立てたい思いでいると、雪菜さんが「大丈夫よ」と微笑んで言った。



「私、実はそんなにおっぱい大きくないから」



「え、そうなの!?」



「ええ」



「……」



 いや、〝ええ〟じゃねえよ……。


 何をしれっと嘘吐いてるんだこの人は……。



「じゃ、じゃあそんな雪菜先生に質問です! い、今、何カップなんですか!?」



「姉さん……」



 そういうのは俺のいないところで聞いてくれ……。


 普通にセクハラになるだろうが……。



「……C?」



「C!」



 そして雪菜さんはあからさまな嘘吐かないでください。


 どう見ても横棒一本足りてないですよね?


〝G〟の間違いですよね?



「だからお父さんもきっと私を受け入れてくれるわ。そうでしょう? ひよりお姉ちゃん」



「え、えへへ~♪ 〝ひよりお姉ちゃん〟かぁ~♪ なんかもう雪菜が妹でいいかも~♪」



「ふふ、そう言ってもらえて嬉しいわ。じゃああとでご両親にご挨拶に行きましょうか」



「は~い♪」



「いや、待て待て待て……」



 満面の笑みで了承するな、このアホ姉。



      ◇



 その後、なんとか両親への挨拶をうやむやにすることに成功した俺は、雪菜さんとともに駅までの道のりを歩いていた。


 いつもは姉さんが彼女を送り届けているのだが、今日は少し帰りが遅くなってしまったため、男である俺に任せた方が安全だということになったのだ。



「……で、今日は一体どうしたんですか? わざわざ婚姻届まで持ち出して……」



 道すがら、俺は雪菜さんに半眼で尋ねる。


 すると、雪菜さんは「うーん、そうねぇ」と妖艶に笑って言った。



「ちょっと我慢が出来なくなっちゃった、みたいな?」



「えっ!?」



「だって弟くん、とっても奥手なんですもの。だから私決めたの。強引にでも〝既成事実〟を作ってしまおうって」



「き、既成事実……っ!?」



 ごくり、と生唾を呑み込む俺に、雪菜さんは「ええ、そうよ」と頷き、そして囁くように言った。



「明日ね、両親が家にいないの……。だから家に来ない……? もし来てくれたら弟くんのしたいこと、全部させてあげる……」



「――っ!?」



 ぜ、ぜぜ全部ってまさか……っ!?


 どんなに抑えても絶えず溢れてくる桃色の妄想に俺が鼓動を高鳴らせていると、ダメ押しとばかりに雪菜さんが上目でこう言ってきた。



「……来て、くれるわよね……?」



「は、はい……」



 いや、〝は、はい……〟じゃねえよ!?


 そこは一度冷静になって考え直すところだろうが!?


 なに色仕掛けにやられてるんだよ!?


 あのクリスマスの日のトラウマはどうした!?



「嬉しい……。大好きよ、弟くん……」



 ――むにゅりっ。



「……」



 うん、ごめん。


 これは無理だぁ~……、と左腕に押しつけられたおっぱい諸々の温もりに、堪らず天を仰ぐ俺なのであった。



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