24話 相談２
まあそれはさておき、だ。
今重要なのはこの先俺がどうするかである。
お試しでのお付き合いとは言うものの、話のニュアンス的に普通に付き合うのとほとんど変わらなさそうだからな……。
なんか二人揃ってえっちなこともさせてくれるみたいな感じだったし……。
そりゃえっちなことがしたいかしたくないかと言われれば、全力でしたいと答えてしまうのが男の子なわけだが、じいちゃんもそれで夜のお店に行ったのがバレて半殺しの目に遭ってたし、一時の感情に身を任せるわけにはいかないだろう。
とくに俺は一度痛い目を見てるからな。
慎重に考えないと。
「てか、そもそもの疑問なんだけどさー、その言い寄られてる男ってそんなにいい男なの？」
「えっ？」
「いや、だって話を聞く限り二人ともすんごい可愛い子なんでしょ？ そんな可愛い子たちから同時に〝お試しでもいいから付き合って！〟なんて言われるとか、相当なイケメンじゃないと無理じゃない？」
「た、確かに……」
改めてそう言われると確かにおかしい気がする……。
鷺ノ宮さんはまあ罪悪感があるからとしても、雪菜さんはなんで俺の彼女になろうとしてるんだろうか……。
いや、それ以前に鷺ノ宮さんもいくら謝りたいからってえっちなことまで許容するのはおかしくないか？
お年頃の女の子だぞ？
むしろお年頃だからこそそういうことに興味があるのか……？
って、いやいやいや!?
だからってなんで相手が俺なんだよ!?
俺なんてどう見ても冴えない陰キャじゃないか!?
そんなのより〝ザ・サッカー部〟みたいなイケメンの方がいいだろ!?
「――っ!?」
だがそこで俺ははっと気づく。
まさかとは思うがそういうことなのだろうか……。
確かにそれなら全ての辻褄が合うが……。
「……なあ、姉さん」
「うん？」
俺は自分の中に湧いた答えを確信に変えるため、姉さんにそれを問うた。
「もしかして世間的に俺ってイケメンなのか……？」
「……」
それを聞いた姉さんは二、三度目をぱちくりさせたかと思うと、ふっと優しい微笑みを浮かべて言ったのだった。
「寝言は寝てから言いなさい」
「……」
いや、少しぐらい擁護してくれよ……。
◇
「つまりあんたみたいなタイプのやつが何故かモテてるってわけね？」
「はい、そうです……」
すでにお部屋にこもりたい思いの俺だったが、相談を持ちかけた手前、途中でやめるわけにもいかず……。
大人しく頷く俺に、姉さんは神妙な顔で言った。
「ねえ、その人ホントに生きてる……？」
おう、どういう意味だこの野郎。
俺みたいなタイプのやつがモテてちゃ悪いってのか。
「生きてるに決まってるだろ……。じゃなかったら相談せんわ……」
そう嘆息する俺に、姉さんは「……なるほど」と頷いて言った。
「なら考えられるのはもう〝催眠術〟しかないわね……」
……おん？
「催、眠術……？」
どういうことかと俺が眉根を寄せる中、姉さんはやはり神妙な顔のまま言った。
「ええ。あたし、聞いたことがあるの。世の中にはそういうえっちな催眠術を使って女の子たちにいやらしいことをしている、照みたいなタイプの人たちがたくさんいるって」
「うん、とりあえずあれだ。全国の俺みたいなやつらに謝れ。てか、まず俺に謝れ」
声にドスを利かせる俺の抗議を華麗にスルーし、姉さんは続ける。
「で、最終的に感度（？）だかを何千倍にもされて〝んほー!?〟って感じになるんだってアニ研の
いや、誰だよ……。
つーか、なんてもの教えてくれてんだよ、湖ちゃん……、と俺がその〝湖ちゃん〟なる人物を問い詰めたい思いでいると、ふいに姉さんが「あ、そういえばさー」と思い出したように言った。
「前から照に聞きたかったんだけど、アヘ顔ダブルピー――」
「おっとお！ なんか急に風呂に入りたくなってきたなあ！ なんなら姉さんも一緒にどうだい!?」
「えぇ……」
いや、そんなガチでどん引きすんなよ。
確かに無我夢中でわけ分からんことを言った俺も俺だけど、これじゃ俺の方がやべえやつみたいじゃねえか……。
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