18話 練習2
「よし、もう一回よ! 今度はもっとキモくないようにやりなさい!」
「いや、どうしろって言うんだよ……」
そもそもさっきのやつだって全然キモくなかっただろ。
綺麗な人に綺麗だって言っただけなんだし。
意味分からんわー……、と嘆息しつつ、俺は姉さんに言う。
「てか、そんなに言うなら一回お手本を見せてくれよ。姉さんだって彼氏の一人くらいいたことあるんだろ?」
「えっ? ……ま、まあね!」
「……」
あ、これいたことないやつだ……。
でもなんかめっちゃ胸張ってるし、面倒だから突っ込まないでおこう……。
「し、仕方ないわね。ならこの恋愛マスターのあたしが彼氏役を華麗にやってやろうじゃない」
そう勢い込んだ後、姉さんは雪菜さんに向けてこう言った。
「や、やあ、今日も綺麗だね」
「いや、同じじゃねえか!?」
ずびしっ! と即座に突っ込みを入れた俺に、姉さんは「ぜ、全然違うし!」と真っ赤な顔で反論してくる。
「あたしの方が爽やかだったもん!」
「そういう問題じゃねえだろ!? なら俺が爽やかな感じで同じこと言ったらどうするんだよ!? 〝今日も綺麗だね、雪菜さん(歯キラーン)〟みたいな!?」
「え、それは普通にキモそう……」
「いや、なんでちょっと引いてるんだよ!? 爽やかな俺に謝れよ!?」
と、そんな感じで抗議の声を上げる俺だったが、やがて姉さんが一つの結論へと辿り着く。
「もしかしてあんたって何をしてもキモいんじゃないかって気がしてきたわ……」
「え、酷くない? それが実の弟に対して言う言葉なの?」
驚きと静かな怒りを込めて突っ込む俺だが、姉さんは姉さんで愕然と頭を抱えているようだった。
「いや、これはたぶんあれだわ……。弟が〝男〟になっているところを姉として受け入れられないんだと思う……」
「えぇ……」
「だってほら、お姉ちゃん大好きっ子だからあたしのことを女として見るのは仕方がないにしても、ママが女になってるところとか想像したいと思う?」
「……やめてくれ。考えただけでたぶん死にたくなる」
「でしょ?」
「うん……」
まあそれはそれとして、〝あたしのことを女として見るのは仕方がない〟ってなんだよ。
そんな風に見たことなんか一度もねえよ。
「ふふ、ひよりは弟くんのことが大好きなのね」
「えー」
「いや、なんで嫌そうな顔してるんだよ……」
可愛い弟設定はどこ行った……。
「でも困ったわね。そうなるとまずはひよりを〝弟くん離れ〟させる方が先になってしまうわ」
「くっ、あたしが愛の塊だったばかりに……っ」
「……えっ?」
「〝……えっ?〟って何よ!? どう見ても塊でしょうが、愛の!?」
「あ、うん。そうだね」
「反応が雑!?」
がーんっ、と姉さんがショックを受ける中、雪菜さんが何かを閃いたように言った。
「そうだわ。逆に考えてみるのはどうかしら?」
「「逆?」」
揃って小首を傾げる俺たちに、雪菜さんは「ええ」と頷いて続ける。
「ひよりが拒否感を示しているのは、弟くんが未来の彼女さんに対して〝男〟……つまりは〝雄〟になっているのが原因でしょう? だからそれを感じさせない彼女さんを選ぶの。なんかこう〝幸せそう〟みたいな」
「……なるほど。確かに一理あるわね」
え、一理ある?
ちょっと俺的には割と素で意味が分かってないんだけど……。
というか、彼女作りの練習からいつの間にやら彼女審査の流れになってる件については突っ込んでおいた方がいいのかなぁ……。
※読んでくださって本当にありがとうございます!
なるべくコンスタントに続けていこうと思いますので、ブックマークや☆評価などで応援してもらえたら嬉しいです!
どうぞよろしくお願いします!m(_ _)m
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます