13話 カラオケ1
数日後。
俺は趣味の一人カラオケでストレスを発散中だった。
というのも、あれ以来雪菜さんと顔を合わせるのがとても気まずい上、それでも普通に姉さんが連れてくるから結局辿々しい感じになってストレスフルだったのである。
これで雪菜さんの方も恥じらっていてくれたらまだよかったのだが、俺とは違って全然いつも通りというか、さらにスキンシップが過剰になったというか……。
まあそんな感じで俺だけ悶々としていたので、久しぶりに〝ひとカラ〟でストレスを発散していたのだ。
が。
「「あっ……」」
出会っちゃったんですよね、鷺ノ宮さんと……。
当然、何故ここにという感じの俺だが、まあ女の子の方がカラオケとかよく行くだろうし、別段おかしいことでもないのだろう。
……タイミングに関してはちょっと物申したいんだけど。
「ふーん、あんたもいたんだ。一人?」
「あ、うん……」
ともあれ、鷺ノ宮さんにそう問われた俺は、素直に頷く。
すると、鷺ノ宮さんは「へえ、そうなんだ」と相変わらずさばさばとした口調で言った後、腰に手をあててこう続けた。
「ならちょうどいいや。ちょっと話があるからあたしの部屋に来てよ」
「え、いや、俺は……」
「いいから早く」
「ちょ、ちょっと鷺ノ宮さん!?」
ぐいっと強引に腕を引かれ、俺はそのまま彼女の部屋へと連れていかれる。
まさか仲のいい女子たちとともに俺を糾弾するつもりなのでは!? と戦々恐々の俺だったのだが、
「……あれ?」
意外にも室内にはほかに誰の姿も無かった。
どうやら彼女も俺と同じく一人でカラオケに来ていたらしい。
「何?」
「あ、いや、誰もいないなって……」
「当然でしょ? 今日は一人で気分転換しに来てたんだし」
「そ、そっか……」
てか、めちゃくちゃ気まずいんだけど……。
だって鷺ノ宮さんとはあれ以来一度も話してないし……。
「適当に座って。何か飲むなら頼むけど?」
「い、いや、俺は大丈夫。ほら、自分の部屋に飲み物あるし……」
「あっそう。じゃあ早速本題に入るけど――」
そう言って、鷺ノ宮さんは腕と足を同時に組んで続けた。
「あんた、女の子苦手じゃなかったの?」
「えっ?」
いや、まあ別に得意ではないけど……。
でもどういう意味だろうと小首を傾げていると、鷺ノ宮さんはどこか苛立っているような口調で「あの綺麗な先輩」と言った。
「あ、ああ、雪菜さんのことか……」
「へえ、名前で呼ぶような間柄なんだ。そういえば随分と仲良さそうだったもんね。まさかあの人と付き合ってるの?」
つ、付き……っ!?
「い、いやいやまさか!? 雪菜さんは姉さんの友だちで、よく家に連れてくるから話すようになっただけだし!?」
「じゃあ別に付き合ってるわけじゃないんだ? あんなに仲良さそうだったのに」
「ま、まあ一応親友の弟だしね……。雪菜さんは一人っ子だから、自分の弟のように思ってくれているんじゃないかな……」
いや、でもそれにしては少々スキンシップが過多な気が……。
それにやたらと好意を伝えてくるけど、あれは単にからかってるだけだよな……?
と。
「……ふーん、そうなんだ」
「……?」
ふいに鷺ノ宮さんの口調から刺々しさが薄れ、俺もどうしたのかと首を傾げる。
が、そこでふと財布を部屋に置きっぱなしだったことに気づき、俺は彼女に言った。
「あ、ちょっと財布だけ取ってきてもいいかな? 取ったらすぐ戻ってくるから」
「りょーかい。別に走らなくていいから」
「うん、ありがとう」
そう頷き、俺は足早に廊下を進んでいく。
あの様子ならこれ以上詰問されることもないと思うし、とりあえず一安心だと思っていいのかな?
が。
「……あら? 弟くん?」
「えっ?」
「え、照いるの!? うわ、本当だ!?」
「げえっ!? 姉さん!? と、雪菜さん!?」
まったく一安心ではなさそうなのであった。
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