第13話 魔法制御訓練

 やっとの事で算数を教え込んだら、2年が経過していた。

 気が付けば15歳。成人まであと半分である。

 最近は、魔法制御の訓練を中心にやっている。これが上達すると魔法の射程が伸び、正確に着弾するからだ。目標は祭司長だ。

 たまに見せてもらった、祭司長の狩りはすごかった。なにせ弓がいらない。と言うか、弓の意味がない。魔法の方が射程が長くて、命中率が段違いに良いからだ。

 水を鋭くして飛ばす水槍の魔法等では、移動している獲物であってもホーミングしながら着弾する。

 私は、弓の腕がなまらない程度には使いながら、魔法制御の訓練を継続した。

 この頃になると、基礎の循環訓練では上達が感じられなくなった。祭司長に相談した所、上級編を教わった。

 水魔法の水球や土魔法で作った土の塊で、できるだけ正確な球や立方体の形を作り維持する。そして、それをそのまま動かす。

 3年がたつ頃には、私の魔法の射程は弓より少し長い程度になり、ホーミングの精度も上がって、かなりの命中率を誇るようになった。

 私の狩りには、大人が同伴しなくても良い事になった。

 それから、さらに3年が経過した頃には弓の2倍程度の射程になり、ほぼ百発百中になった。

 私は里一番の、魔法の使い手になっていた。

「いずれは追い抜かれる事になるとは思うておったが、まさか、成人前に抜かれるとはのぅ」

 とは、祭司長談。

 ちなみに、すっかり仲良くなった行商人のアレンさんは30代になり、既に結婚して、2児のパパだそうだ。

「下の娘がかわい過ぎて、大人になっても手放せそうにない」

 と、親バカぶりを、いかんなく発揮するようになっていた。

 この時、私は少し天狗になっていた。今思えば、かなり無謀な挑戦をするようになっていた。

 土魔法が使えて魔法制御に自信があるなら、とあるラノベの主人公を知っていたら、ピンと思いつくモノを作ろうとした。

 祭司長をモデルにした、フィギュア作りである。

 やってみると、小さなサイズで複雑な造形を作ろうとしたら、恐ろしいほどに難しい。しかし天狗になっていた私は、

「これは、良い訓練になりますね」

 と、独り言をつぶやき、しばらく無駄な努力を継続した。

(これは、どうやっても無理です!)

 と、納得した頃には3年が経過していて、改めて魔法の射程等を確認したら、それほど腕が上がっていない事実に愕然とした。

 ようやく伸びた鼻がへし折られた私は、深く反省し、もっと単純な造形のものをできるだけ素早く動かす訓練に変えた。

 気が付けば私も24歳。里を出るまで、後6年しかない。

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