第42話
オレは、琴美の呼び掛けに返事をする事な
く三日眠り続けた。
ずっと溺れている夢を見ていた。
遠くから、女性の声がずっと聞こえていた。
「あっ小太郎ー‼︎」
目を覚ますとオレの手を握り泣いている女
性…
琴美だ。
でもなんか違和感…
? ? ?
何か大事な事を忘れているような気がする
んだけど思い出せない。
オレは溺れた子供を助けた時に岩に頭をぶ
つけてしまったらしい。
お医者さんは、すぐに記憶が戻ると思いま
すと言ってくれた。
目を覚ました時にいてくれた琴美。
毎日お見舞いに来てくれる。
ずいぶんと親しかったのだろう。
会社にも、連絡してくれたそうだ。
でも、オレと琴美って…
面会が終わり夜。
ガラガラ
看護婦さんが入って来た。
「こたちゃん。早く記憶戻るといいね。でも
大丈夫。私がずっとこれからもそばにいる
からね。」
にっこりしながら手を握られた。
ずっと?
どういう事だ?
「あの、オレたちの関係って…」
「うん。無理もないわ。あんなに辛く苦しい
思いしたんだもの。私達付き合ってるのよ。
でも、大丈夫。時間がきっと解決してくれ
るから。」
そういうとまたにっこりする看護婦さん。
オレの彼女…
申し訳ないけど全く思い出せない。
でも、毎日お見舞いに来てくれている琴美。
てっきり琴美が彼女だとばっかり…
「あの、思い出せなくてごめんなさい。じゃ
あ、昼間毎日お見舞いに来てくれている女
性ってオレとどんな関係なんですか?」
「あの子も思い出せないのね。あの子は、あ
なたのただの幼馴染よ。」
「幼馴染…」
…ただの幼馴染…か…
「じゃあ、今日はゆっくり休んで。おやすみ
なさい。」
「あ、おやすみなさい。」
… … …
うー…ん…
なんかピンと来ない…
琴美が幼馴染なのは、わかっている…
でもなにか大事な事を…
そして記憶が戻らないまま退院になった。
オレの彼女だと言う看護婦さんが携帯の番
号を渡してきた。
彼女なのになんで今更……⁈
「えと…オレたち付き合ってるんですよね?
なぜ今更番号…⁈」
「もー、それも忘れちゃったの?喧嘩して全
部私がデーター消したから。でも、あの時
は、ごめんなさい。」
あ…そう言う事か。
だから携帯見てもなんにもなかったのか…
「小太郎ー。」
幼馴染琴美が迎えに来てくれた。
「じゃ、幼馴染ちゃん。よろしく。」
「はい。お世話になりました。」
深々お辞儀する幼馴染。
プッ
そんなに深々と。
「じゃ、また連絡するね!」
看護婦さんが耳打ちしてきた。
「はぁ…。わかりました。色々ありがとうご
ざいました。」
とりあえず挨拶して病院を出た。
「小太郎。まだ記憶戻らないんだね。」
「うん。所々覚えてたりするんだけどなー」
「そうなの?」
「うん。」
「ま、無理は禁物だもんね……」
「うん…だな。」
アパートに着き手際よく料理をしてくれた。
データーがなかったから連絡先も入力と。
「じゃあ、またね!お大事に。」
「うん。ありがと」
夜看護婦さんから電話が来た。
「どう?調子?」
「うん。幼馴染がご飯用意してくれて身の回
りの世話もしてくれて助かったよ。」
「ふーん。ねぇ、こたちゃん。」
「ん?」
「私達、幼馴染ちゃんが原因で喧嘩したんだ
よ?まだあの子と仲良くするの?」
えっ…
そうだったのか。
「ごめん。記憶なくて…」
「ううん。でも、しばらく幼馴染ちゃんとは、
距離置いてほしいなー。」
「うん…わかったよ」
「本当⁈ありがとう」
「うん。」
なぜだろう…
なんだかぽっかり心に穴が空いたようなこ
の感じは…
しばらく天井をみてボーっとしていた。
幼馴染…
幼馴染かぁ…
琴美じゃなくてオレは他の人と交際してた
んだな。
はぁ…
なんだろう。
この気持ちは…
なんか記憶を取り戻す方法は、ないのだろ
うか。
部屋の引き出しをあけてみた。
すると婚約指輪の明細…
しかもつくったのそんなに前じゃない。
でも二人とも指輪してなかったよな…
とりあえず指輪を購入したところに問い合
わせしてみた。
すると、事故に遭う数日前に指輪をとりに
行っていたそうだ。
一応警察に届けを出した。
次の日警察から指輪が見つかったと連絡が
入った。
海に浮いていたそうだ。
急いで指輪を取りに向かった。
指輪には、イニシャルが入れられていた。
K &K
こたろうのK
もう一人の相手は…
看護婦さんに電話をしてみた。
「もしもし。どうしたの?記憶戻った?」
「いえ、そうじゃなくて名前、下の名前なん
ですか?」
「あぁ、このはよ。なんで?」
「あ、そうなんだ…名前まで忘れて本当ごめ
ん。」
「いいよ。それより幼馴染ちゃんに言ってく
れた?」
「…これから。」
「そう。ねぇ、明日お休みなんだけどデート
しましょうよ。」
「デート…」
「そっ、思い出の場所行けば記憶戻るかもし
れないし。」
「あー、そうか。」
「じゃ決まり!うちの住所も忘れてるよね?
後で住所入れておくからお迎えよろしく」
「うん。」
幼馴染に電話してみた。
「小太郎ー。大丈夫?」
「うん。あのさお見舞い毎日来てくれてあり
がとうな。」
「うん。」
「あの…それでさ、しばらく連絡取り合わな
い方がいいと思うんだ。」
「なんで?」
「ごめん。色々考えたくて。」
「うん。わかったよ。小太郎がそう言うなら
そうする。」
幼馴染は、受け入れてくれた。
でもなんか引っかかってしょうがない…
そしてデートの日になった。
続く。
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