第41話

 もうすぐあっという間に二年が過ぎる。

 

「小太郎ー。私もやっと一人暮らしだよー」

 

 あー…そうか。

 心配だよー‼︎

 

 

「どうした?小太郎?」

「んー。琴美が一人暮らし心配。」

「なんで?私きちんと掃除するしご飯作れる

 よー。」

 

 うーん…

 

「セキュリティとかどんな感じ?」

「セキュリティ万全なところをばっちり選び

 ました‼︎」

「そっか。なら少し安心かな。」

「うん。心配してくれてありがとう。」

「もし、なんかあったら吹っ飛んでいくから

 な‼︎」

「わー、吹っ飛んでくるなんてそんなのみて

 みたーい」

 

 …そこかよ…


「で、吹っ飛んでくるってどうやって?タン

 ポポのわた毛に乗って来たりとか?」

「なんでだよ。しかもメルヘンチックだな」

「あはは。でも、なるべく吹っ飛んで来なく

 ていいようにきちんと用心するね」

「うん。だな」



 そして無事飼育員の資格を取得した琴美。

 

 

 二人でお祝いした。

 

 就職先の動物園は決まったけど、どの飼育

 員になれるかは、まだわからないそうだ。

 

 

 オレはまだ大学生。

 しっかり勉強しないとな!

 

 

 

 琴美は、今日から仕事だ。

 

 大丈夫かな…

 一日中心配だった。

 

 その日の夜

 トゥルルルル トゥルルルル

 琴美から電話だ。

 

「もしもし」

「もしかしてその声は、小太郎だな?」

「もしかしなくてもそうだよ」

「あー、そうなんだ。」

「うん。で、どうだった?」

「それが、ハシ ビロコウの飼育員さんには

 なれなかったの。でも、第二希望のナマケ

 モの飼育員に決定いたしました‼︎」

「そうか。おめでとう!」

「ありがとうよ。友よ」

「誰が友だよ」

「ふふッ… あー…ハシ ビロコウ…」

 

 やっぱり第一希望のハシビロコウの飼育員

 になれなくて落ち込んでるか…

 

 

「でもいつかチャンスあるって。」

「そうだよね!いつかなれるように頑張る!

 で、今はきちんとナマケモと向き合うよ」

「うん。頑張れ」

「はい!」

「よし!いい返事だ」

「ありがとうございます‼︎では、今から滝に

 打たれてくるので失礼します‼︎」

「はい⁈今から⁈」

「はい‼︎滝というなのシャワーです‼︎」

「普通に風呂入ってくるでいいだろ」

「いやん…恥ずかしい」

「なんでだよ…」

「だって小太郎そんな事言ったら覗きに来る

 かもしれないじゃん」

「いかねーから。」

「そう…私に興味がないのね…」

「なんだよそれ。そうじゃないけどさー。」

「えっ、小太郎…今私の事興味ありますって

 言ったのと同じだよ。小太郎!」

「うるさいです。早く風呂に入って寝なよ。

 明日も早いんだろ。」

「そうでした。じゃーね。」

「はーい。じゃ」

 

 まったく。

 

 それから琴美は、順調に飼育員の仕事を頑

 張っていた。

 一人暮らしも順調だ。

 

 

 今日は、琴美の部屋におじゃまする。

 

 ピンポーン

 ガチャ

 

「あ、宅配の方。荷物そこに置いといて下さ

 い。」

「誰が宅配だ!」

「あー、よく見たら小太郎さん」

「あーじゃねーよ」

「遊んでないでどうぞ中に」


 遊んでたのそっちだろ…

 

「おじゃまー」

「はーい」

 

 うわー。女子の部屋って感じだ。

 

 たくさんのかわいいぬいぐるみ。

 かわいいカーテン。

 たまに壁からぶら下がる変な宇宙人が飛行

 していて気になるが、それはよしとしよう

 か…

 

 

「粗茶でございます」

「あー、サンキュー」


 ズズズ

 二人でお茶をすする。

「あ〜、お茶っていいねぇ。じいさん」

「そうだな。ばあさん」

「おい‼︎ばあさんなんて失礼だろ‼︎」

 

 いきなりキレ出す琴美。

 

「じいさんって言うからさー」

「あーさいですか…私は、ばあさんなんです

 ね。」

「すねるなよ。かわいいよ」

 

 ぎゅ〜。

 

 

 こんな幸せな毎日を過ごしている。

 

 

 ーそれから五年後ー

 

「んぁーあ。」

 どれ、起きるか。

 

 琴美は今ハシビロコウの飼育員をしている。

 オレも大学を卒業して無事就職した。

 

 そして今日琴美にプロポーズをしようと思

 っている。

 

 

 家を出る前にきちんと指輪の確認。

 

 よし‼︎

 

 琴美はアパートの前ですでに待っていた。

 

「小太郎おはよう。」

「うん。おはよう。」

 

 車に乗った琴美がにっこりした。

 太陽に照らされて琴美がまるで天使に見え

 た。

 

 うわー…

 きれーだ。

 

 

 こんな天使みたいな子に今日プロポーズす

 るんだな。おれ。

 ずっと一緒にいるけれど、全然喧嘩もしな

 いし、むしろ心地がいい。

 

 夢みたいに幸せだ。

 

 このまま夢で終わらなければいいのだが。

 でも、幸せはいつまでも続くものではなか

 った。

 

 昼間ショッピングをしてお昼を食べて浜辺

 を散歩していた。

 

 

 もうすぐ春だ。

 心地よい風がカラダを通り抜けるんじゃな

 いかってくらい清々しい。

 

「今日あったかいな。」

「うん!海の風が気持ちいいねー。」

 

 琴美の髪が風でなびく。

 

 その髪をそっと撫でた。

 

「琴美。」

「ん?」

 

 

 振り向く琴美にいざプロポーズ。

 と、思ったら…

 

 

「キャーッ。助けて‼︎子供が‼︎子供が溺れて

 るー‼︎」

 

 

 ‼︎  ‼︎  ‼︎

 

 

 

 急いで海に潜り子供を無事救助した。

 

 よかった…

 

 これでやっと琴美にプロポーズを…

 

 

 

「小太郎ー‼︎大丈夫⁉︎ねぇ、返事してよ‼︎小

 太郎‼︎」

 琴美の呼び掛けに返事をしたかったけど、

 琴美…

 ごめん…

 

 

 本当にごめん…

 

 

 続く。

 

 

 

 

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