第35話
大晦日
久々の実家。
オレの部屋は、そのままだった。
懐かしーなー。
布団にゴロンと横になった。
「にゃー」
猫が入って来た。
ミルクだ。
ミルクとじゃれながらも、琴美の事が気に
なる…
… … …
琴美…今頃誰かに会いに行ってんのかな…
ー三時ー
暇だ…
にゃー。
今度は、ちーが来た。
ガチャン。
琴美もやって来たみたいだ。
少しうちの母ちゃんと話をした後、
ドタドタドタドタ
「小太郎ー‼︎」
琴美がいきなり抱きついてきた。
何⁉︎
「会いたかったよ〜。久しぶり〜」
「えっ?さっき一緒に帰って来たじゃん」
「ここにいる小太郎がまたいいんじゃん‼︎」
「まさか…会いたい人ってこの部屋にいるオ
レ⁈」
「うん♡」
「なんだよそれ…心臓に悪いからやめろよ」
「えっ、心臓さんどうかしたの?」
「琴美が会いたいやつ誰だかわかんねーから
ずっと考えちゃったじゃねーか」
「そうなんだ。ごめんね。心臓さん」
「やめろよ!心臓に話しかけんな。気持ち悪
い…」
「気持ち悪いなんて…ひどいよ小太郎‼︎お母
さんに言いつけるぞ」
「どうぞ。」
「おかーさーん‼︎小太郎が反抗期ですけど。
聞いてます?ン?」
お母さんって猫のちーかよ。
一生懸命猫に話しかけていた…。
「ねぇ、小太郎…」
「ん?」
「チューしてよ」
「えっ、ここで⁈」
「うん」
しゃーないなぁ。
チュ〜。
「ふふっ」
琴美が自分から言ったくせに恥ずかしそう
にしていた。
「琴美は、かわいいなぁ」
「小太郎…お母さん聞いてます」
「えっ⁉︎」
指差す琴美。
なんだよ…ちーかよ。
焦らせんなよ…
「ちーなら、いいよ。」
チュ〜。
ぎゅ〜。
「琴美、かわいいよ」
「小太郎…お母さん…」
「いいって。琴美〜♡」
コホン
ちーじゃなくて今度は、本当の母ちゃんだ
った…
… … …
「小太郎。琴美ちゃんが大好きなのね〜。
若いっていいわぁ。下にお菓子とジュース
あるから終わったらいらっしゃい」
何が終わったらだよ…
「行くよ。今すぐ」
「いいわよ。どうぞお構いなく〜」
下に降りて話に花が咲く母ちゃんと琴美。
楽しそうだな。
あー、恥ずかしい所母ちゃんに見られちゃ
ったぜ…
今夜は、琴美の両親がうちに来てみんなで
宴会をするそうだ。
楽しい宴会だ。
親たちは、結構お酒が入っていた。
オレたちは、からまれたくないのでテレビ
をみて二人で馬鹿騒ぎしていた。
「ギャハハ」
そしてー
テレビでカウントダウンが始まるまでの間
にいつのまにか記憶が…
「もー、朝よー。起きてー」
「あ、母ちゃん…」
ン?
隣を見ると横に琴美が居た。
うっかり二人でソファに寝てしまっていた
ようだ。
「初詣行くんでしょ?朝ごはん用意してある
から食べて行きな」
「ありがとう。おばちゃん」
朝ごはんを食べて一度家に帰る琴美。
「ジャジャーン」
「おっ、かわいいじゃん」
「ですよねー。」
ニコッ。
かわいい琴美と付き合ってまた新しい年を
迎えた。
春
大学二年生になった。
琴美がピクニックに行こうと言うので広い
公園に来ている。
シートを敷く琴美。
「さあさあ、ようこそ我が家へ」
我が家…
「じゃあ、お邪魔します」
「今日晴れてよかったねー。雨だったらびし
ゃびしゃだよ」
「雨ならピクニック中止だろう」
「そっかー。しかしこんな広い野原で私達は、
ボソボソと座ってるんだよ。これは、もう
イチャイチャしなさいって言われてるよう
なもんだね」
「なんでだよ…しねーよ…」
「えーっ、そうなの?残念…」
残念って…しかもボソボソ?ほそぼそじゃ
ないのか⁈
「そうだ!今日は、張り切ってドックフード
作って来ました‼︎」
「ドックフード⁉︎」
「うん。なんでそんなに驚くの?小太郎もし
かして嫌い⁉︎」
「えっ…嫌いとかじゃなくてそんなの食べた
事ないよ」
「へー、意外」
まさか琴美…
飼育員になるからって動物のご飯とか食べ
ているんじゃ…
「琴美、ハシビロコウって何食べるんだっけ
か?」
「生魚丸呑み。しかも白目むいてさ」
あー…それはいくら琴美でも真似できない
な。
「ナマケモノは?」
「コケとか」
うーん…コケ…
「琴美って猫派だよね?」
「もちろん‼︎はい。どうぞ」
渡されたのは、ホットドッグだった…
「琴美、これ何?」
「ドックフード」
「ホットドッグな」
「んも〜、小太郎は、細かいなぁ」
ぷぅ〜。
口を膨らませ怒る琴美。
よそであんまり変な事言ってないといいな。
大丈夫かよ…
このままずっと平和な毎日がよかったな。
続く。
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