第34話

 だいぶ生活に慣れてきた。

 琴美とも週一で会っている。

 

 

 ピンポン

 琴美だ。

「小太郎〜。ただいま」

「おぅ、お帰り」

 

 

 ただいまなんて自分家かのように。


 来て早々に琴美が意味のわからない事を言

 いだした。

 

「もしかして、あなた小太郎さん?」

「そうだよ」

「ふーん。少しみないうちに大きくなったな

 ぁ」

 ナデナデ

 

 

「先週も会ってるだろうが」

「あぁ、そうか。そんなくだらない話よりも

 これ見てよ!」

 

 くだらないって…自分からしてきたくせに。

 

「何?」

「このビデオすごく面白そうなの」

「あー、これ見たかったやつ」

「本当⁉︎ならよかった!今からみよーよ」

 

 

 琴美は、結構インドア派だ。

 

 

 ビデオを見始めると

「ちょっとトイレ行きたいから一時再生しと

 いてくれない?」


 ン?

 

「一時停止な」

 

「んもぉう」

 ぷぅ〜。

 

 言い間違いを訂正されて口を膨らませて怒

 る琴美。

 かわいい。

 

 

 トイレから琴美が戻ってきた。

 

 

「お待たせ〜」

 

 琴美は、オレから少し離れて座る。

 付き合ってるんだし、隣に座ればいいのに。

 あー、ソファが欲しーよー。

 

 

 ビデオが終わった。

「ねぇ、これツーがでるんだよ。」

「へぇー。ならそん時は、映画館行く?」

「やだ。映画館だと背後が気になるし、トイ

 レ行ったら見逃しちゃうもん」

「あー、そうね」

「小太郎は、それでも平気なわけ?」

「うん。あんまり気にしてなかった」

「まったく…これだからさぁー‼︎んもぉう‼︎

 お母さん‼︎靴下かたっぽ見当たらない‼︎」

 

 

 ‼︎     ⁉︎  ‼︎

 

「お母さんってなんだよ…急にびっくりした

 わ」

「だって小太郎がまったくもーだからさ…」

 

 

 

 

「なー、来週はどっか行かない?」

「うん。いいよ。どこ行きたい?海外は、ダ

 メ。お金ない」

「誰も海外なんて行かねーから」

「あーそう。ならカラオケからのショッピン

 グとか?」

「いいね。そうしよう」

「うん」

 

 

 そんなこんなで一年が過ぎようとしていた。

 

 

「琴美、クリスマスバイトだよね?」

「そうなんだよ‼︎うっかりケーキ屋なんかで

 働いたばっかりにクリスマスのイベントが

 バイトでおじゃんだよ‼︎ごめん‼︎小太郎」

 

 両手を合わせて謝る琴美。

 

「うん。いいよ。ならクリスマス、オレもバ

 イト入れようかな」

「えっ⁉︎そんな事したら小太郎君フリーなん

 だぁ♡って言い寄る女が現れてしまうかも

 しれない…どうしよう…どうしたら…」

「ないよ。大丈夫だよ」

「そんなのわからないじゃん。あ、いい事考

 えた。小太郎。私の働くケーキ屋さんでエ

 ンドレスでケーキ買い並びなよ」

「それは…ありえなくない?」

「だよね………。」

「琴美。オレを信じろ。」


「………うん………」


「クリスマス当日は、無理だから早めにクリ

 スマスやろうよ」

「そうだね。ありがとう」

「うん。オレ出来るやつだから。」

「出来るやつは、自分で言わないんじゃない

 かな」

「ですね…」

「嘘だよ。ありがとう♡」

 

 

 そしてクリスマス三日前

 

「メリークリスマス‼︎」

 二人でケーキとご馳走ジュースを並べてク

 リスマス会。

「美味しいね」

「うん…でもクリスマスを盛り上げるアシス

 タントがいないとやっぱり寂しいね」

「アシスタント?」

「ほら」

 

 去年のクリスマスの写真を見せてきた琴美。

 猫たちにサンタの格好をさせていたのだ。

 

 

「お正月帰るんだろ。そん時いっぱい遊べば

 いいじゃん。」

「うん。そうだね。」

「そろそろケーキ切ろっか」

「お願ーい。大きくね」

「了解ー」

 

 

 パクッ

 

 『美味しい‼︎』

 二人の声が重なった。

 シンクロして顔を見合わせて笑った。

 

「琴美。クリスマスプレゼント」

 

 今年は、腕時計をプレゼントした。

「えっ…これは…」

「ん?」

 ゴソゴソバックから取り出した。

「小太郎、開けてみて」

「おっ…これは…」

 

 あははは

 

 なんと同じメーカーの時計。

 男性用と女性用だけどほぼ一緒って。

「すごいな。オレたち」

「うん。趣味がおんなじだぁ」

 

 

 部屋にいるのにお揃いの時計をして過ごし

 た。

 

 

 そしてクリスマスも無事何事もなく過ぎた。

 

 

 大晦日

 

 朝コンビニで待ち合わせして一緒に帰省。

 

「早くあの人に会いたいな」

「あの人?親⁇」

「ううん。」

「なら、猫⁇」

「ううん」

 

 なら、誰だよ⁉︎

「うふふ」

 

 何その笑い…

 

「あの人って親戚とか来んの?」

「ひ・み・つ」

 

 なんだよそれー‼︎

 気になるじゃんかよー‼︎

 

 

 誰だかわからないまま家に着いた。

 

「…じゃ、またな…」

「うん。またね」

 

 

 琴美ーっ………

 一体誰に会うの楽しみにしてんだよ…

 

 おーい‼︎

 教えてくれよぉーーっ‼︎‼︎‼︎

 

 

 続く。

 

 

 

 

 

 

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