第18話

 もうすぐ夏がやって来る。

 琴美は、夏が嫌いだ。

 カミナリと毛虫と蚊。

 夏のこの三セットがいらないとよく言って

 いる。

 売っていたら絶対買わないと。

 

 大丈夫だ。きっとこの三セットは、売り出

 されないだろうよ。

 

 

「小太郎ー‼︎ついにあいつがやって来る…」

「夏な」

「そんなあっさりと…夏をなんだと思ってる

 のさ‼︎」

「夏」

 

「まったく…これだから困るよ…」

「なんも困んねーよ」

「夏をなめんなよ‼︎いいか⁉︎」

「うん…」

 

 誰だよ…

 

「でもさ、夏は花火も海水浴もあるしそこま

 で、嫌じゃなくない?」

「花火と海水浴だけ?」

「うーん…あとは、かき氷にプールとか?」

「小太郎‼︎そんなんじゃ弱い!夏は、他にも

 虫がわんさか繰り出してくるし、肝試しに

 蒸し暑さ。日焼けに…それに…夏は…」

 

 うつむく琴美…

 

「夏は、どうした?」

 

 …   …   …

 

 

「夏は…猫を見るとどうしても思うんです…

 冬も同じ服装でしたよね⁉︎って…あのー、

 暑くないんですか?って思うんです。いた

 たまれないんです…しかも真夏に素足で…

 猫はどうかしているのでしょうか⁇教えて

 ください‼︎猫は、猫は何を考えてあんなに

 毛をはやしてしまったのか‼︎」

「しらねーよ。でも毎年夏を乗り越えてるん

 だからあんまり深く考えなくていいんじゃ

 ん?」

「そうか…」

 

 

 夏が嫌いから猫の相談みたいになったな…

 

 

「そういえば小太郎。さっき夏はかき氷って

 言ってたよね?」

「うん。なんで?」

「何味が好き?」

「メロンかな。」

「だよね!一年に一回だけ緑色のベロを手に

 入れられるもんね‼︎」

 

 

 味とかじゃなくてそっちかよ⁉︎

 

 

「そういえばさっき家でへっぴり腰りになっ

 て考えてたんだけど…」

 

「うん」

 

「玉ねぎの皮ってどこまでが皮なんだろう」

「どこまででもいいんじゃん。白くなるまで

 とか?」

「なるほどー」

 

 何を考えてたのかと思えば玉ねぎについて

 かよ。

 そりゃへっぴり腰で考えてもいい問題だな。

 

「あとさ、つっかけってサンダルの事言うじ

 ゃん」

「うん」

「あれさ、つっかけ履いて行きなって言われ

 るとさ、転べって言われてる気がしてなん

 かモヤモヤするわけ」

「だいたいつっかけ履いて行きなって言うの

 琴美の母ちゃんだろ。だれが娘に転べって

 念じるんだよ。んなわけないだろ」

「そっかー。ならよかった」

 

 

 琴美は、無駄に物事を考えすぎてしまうみ

 たいだ。

 ってか、つっかけから転べってなんだよ…

 つっかかれみたいな感じなのか⁇

 

 

 

「でさ、ずっとへっぴり腰で色々考えてたか

 らさ、腰が痛くなっちゃったの。だから、

 おやすみなさーい」

 

「おやすみ」

 

 こいつは、一体なにをしに来たんだ…

 

 

 しかも‼︎

 もう寝てる…

 

 そしてしばらくすると笑い出した…

 琴美は、よく寝ながら笑う。

 くくくくくく

 そしていきなり目を開ける。

 

 

 で、また思い出して笑う。

 くくくくくく

 

「琴美なんの夢みてたわけ?」

「あー、ちーの子供たちが二足歩行で手繋い

 でマイムマイム踊ってんの〜」

 

 くくくくくく

 

 

「それは楽しそうだな」

「うん!」

 

 そんなくだらない会話をしながら早数年。

 

 オレたちは、高校生になった。

 でも、別々の高校。

 琴美は、女子校だ。

 

 しかし、バイトは先は一緒だ。

 蕎麦屋で働いている。

 

 琴美は、相変わらず変な事ばっかり言って

 いる。

 

 蕎麦は、一盛り何本なんだろとか洗い場さ

 んの名前が覚えられないからみんなあらい

 さんって呼ぼうとか…

 みんなあらいさんなんて失礼だろ…

 一人でやってくれ…琴美よ。

 

 バイトの帰り道


「なぁ、琴美」

「ん?」

「新メニューランチセットなんだっけ?」

「あのー、そちらは企業秘密ですので…」

「企業秘密じゃないから‼︎」

「あぁ、そうなんだ。ランチセットは、唐揚

 げプラスお新香も添えてだよ。」

「あー、そうか!琴美って新メニュー覚える

 の早いよな」

「まぁ、店長とそんな関係なので…」

 

 

 えっ⁉︎どう言う事‼︎

 

「そんな関係ってなんだよ⁉︎」

「え、小太郎だってそんな関係じゃん」

「は⁈」

「店長と従業員。」

 

 あー、よかった…

 

 

「琴美は、紛らわしんだよ‼︎」

 

 ふふふ

 

「そーいやさ、今朝すっごく悔しい思いをし

 たのよ」

「何?」

「ぱくの足をタオルで拭こうとしたらちょう

 ど目覚ましが鳴ってふけなかったわけ!」

「夢かよ」

「そう!で、どうしても拭きたかったからさ

 ぱくが外から帰って来たわけでもないのに、

 足を拭いたの。そしたらぱく、そのあしで

 すぐさま外にくり出していったわけよ‼︎」

「それは、大変だったね…」

「うん」

 

 ってか、よく猫の夢みるな…

 

 

 続く。

 

 

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