第15話

 琴美は、オレの部屋のカレンダーをじっと

 見つめていた。

 

「ねぇ、小太郎?」

「なーに?」

「カレンダーの十六日丸で囲んであるパって

 さ、まさかと思うけどパーマかけるわけじ

 ゃないよねー⁉︎」

「かけるわけないだろ。」

「じゃあ、私に秘密のパーティーが開催され

 たりする?」

「しない。」

「なら、パン買いに行く日?」

「そんなのいちいちカレンダーに書かないか

 ら」

「なら、パンダにあいに行く日⁇」

「なんでパンダ限定なんだよ。パソコンが修

 理から戻る日」

「けっ、つまらん」

 

 

 人の用事をつまらないって…

 

 

「あっ、そう言いえばこの前ぱくが二足歩行

 で歩いてたの。しかも!丁度いいカゴを持

 ってて、カゴに焼き魚と煮干しいれて鼻歌

 歌ってたわけよ」

「んなわけないだろ」

「それがんなわけあったから言ってんじゃん

 よー。夢でね。」

「夢かよ」

「そんな夢見ないわけ?」

「みねーよ」

「あら、かわいそう…」

 

 別にかわいそうでもないが。

 

「毎日ぱくさんシリーズみたいなー。ぱくさ

 んバーゲンに行く。ぱくさん足がつるとか。

 見てみたーい‼︎」

「うん。見れるといいね…。あ、そうだ琴美。

 みかん食べる?」

「うん」

「じゃあ、台所にあるから持ってくるね」

「えっ?なんでわざわざそんな遠くまで?」

「そんなに遠くないだろ。」

「だって家知ってんの?」

「家って…自分家だし」

「え、小太郎家二つあるの?」

「はい⁇どこに取りに行くって聞こえたわけ

 ?」

「田所んち」

「なんでひとんちのみかんわざわざ取りに行

 くんだよ。おかしいだろ。台所!」

「だね!台所か。ならよかった。田所って誰

 って思っちゃった。」

 

「だな…」

 

 どんな耳してんだよ。

 

 

 みかんを持って戻ると琴美が変なダンスを

 していた。

 しかもドンドコドンドコ歌っていた。

「何それ?」

「さっき小太郎の家に来る前にテレビでみた

 鳥の求愛ダンス」

「なんで今踊ってんだよ…」

 

 あ、もしかしてこれは琴美からの好きです

 メッセージなのか⁇

 オレも踊るべき⁉︎

 でも、そんな踊り…

 うーん。やるしかないか!

 琴美のおもいにこたえるためだ‼︎

 

 

 求愛にこたえようとしたとたん…

「この踊りさっきぱくにしたら全力で逃げら

 れた。」

 と言い出した。

 ぱくにもやったのかよ⁉︎

 ただ踊りたかっただけじゃん。

 

 よかった…

 踊らなくて…

 

「ぱくびっくりしただろうね」

「うん。かわいそうに。」

「いや、それを琴美が言わない」

「は〜い。で、例のものは持ってきたんだろ

 うな?」

「うん。みかんな」

「わーい。いただきまーす」

 

 

 美味しそうに食べる琴美。

 

 

「あっそうだ。琴美日曜日ひま?」

「えーと、日曜日はみかんを食べるくらいし

 か予定入っておりませんね。なんで?」

 

 みかん食べるって予定なのかよ…

 

「水族館のチケットもらったんだ。今度の日

 曜限定なんだけど一緒に行く?」

「もちろんさ‼︎あー、楽しみ。それってぱく

 も行ける?」

「猫はだめだろ。」

「そっか。ぱく魚好きなのに」

「なら、ちーなら行けそう?」

「ちーも猫なんですけど…」

「そうか…あいつらいつのまにか猫になりや

 がって」

「いや、ずっと猫だから‼︎」

「なら、仕方ない。イワシの大群の写真でも

 撮ってきてあげよう」

「う…ん。そうだね」

「どうしよう。楽しみすぎて当日熱だしちゃ

 ったら。」

「子供かよ‼︎」

「まあな。心はずっと幼いまんまさ」

 

 たしかに。

 

 

 そして日曜日。

 

 とってもいい天気だ。

 

 部屋で出かける準備をしていた。

 すると、

「おや、ここにいたのかい?もう何年も同じ

 場所にいるねぇ。あんたもうここが家みた

 いじゃないかい。」

 なんて琴美は、言ってきた。

「家だよ‼︎」

 あははは。

 

 

 仲良く出発。

 

 水族館は、そこまで混んでいなかった。

 よかった。

 ゆっくり見れそうだ。

 

 

 色々見てまわったけど琴美は、クラゲがと

 にかく気に入ったみたいだ。

 

「きれーだねー。足」

「足⁈」

 

 まぁ、人それぞれだからな…

 

「ねぇ、そういえば魚って足なくない⁉︎」

「うん…」

「足はえてたらなんか目障りだよね」

「え、目障りなのか⁈」

「そうだよ。だって小走りのやつとかあぐら

 かいてるやつとかなんならこっちみながら

 ずっと正座とかしてたら嫌じゃん」

「確かに正座とか嫌かも」

「でしょ。」

 

 少しドヤ顔の琴美…

 

 それから、イワシの写真をたくさん撮って

 いた。

 動画も…

 

 

 

 楽しいな!



「琴美ー。こっちにペンギン」

 

「琴美ー。こっちには、タコいるよー」

 

「もう、小太郎歩くの早いよ〜。ナタリーだ

 ってメアリーもブラウンだって山の向こう

 の三郎おじさんだって言ってるわよ。小太

 郎は、歩くのが早いってね」

 

 

 誰だよ…

 みんな知らねーぞ。

 しかも三郎なんて名前のおじさんなんかい

 ねーだろ…

 

「ごめん。つい楽しくてさ。きをつける」

「うん。まぁ許してやろう。」

 

 最後にお土産屋さんに寄った。

 琴美は、とにかくお土産屋さんが昔から大

 好きだ。

 

「はじまりました‼︎本日のメインイベントが

 ‼︎」

 

 あぁ、ここがメインイベントだったんだ…

 

 

 魚のおもちゃを買っていた。

「ぱく気に入ってくれるといいな」

「うん‼︎帰ったらお風呂入ってからぱくと遊

 ぶんだ」

「お風呂先なんだ」

「うん。お母さんにお風呂ぼっこぼこに沸か

 しておいてって頼んであるんだ〜」

 

 ぼっこぼこって熱湯じゃないんだから…

 

「ま、疲れたからゆっくりお風呂入るといい

 よ」

「うん。そうするー。小太郎は、お風呂すぐ

 入らないの?」

「うーん。どうかな。」

「今日の水族館のお礼にって私の入浴シーン

 覗かないでくださいね。せめて私がイルカ

 になるまでは。」

「意味わかんないし、ずっとイルカにならね

 ーだろ」

「おりこうさんには、イルカにみえるの。お

 バカさんには、人間にみえるのさ」

「へー…」

 

 

 そんなくだらない意味のわからない会話を

 しながら楽しい一日が過ごせましたとさ。

 

 続く。

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