第14話
琴美が風邪をひいた。
コンコン。
「はい…」
「これ耳に当てて」
琴美の部屋に一瞬だけ入りあるものを渡し
た。
そして、ドアの向こうに座った。
「風邪大丈夫か?」
「もしもし、大丈夫なつもりです」
「そうか。まさか、この糸電話が役に立つ日
がくるなんてな」
「もしもし、まだとっておいたんだ。貧乏症
だね」
「貧乏とかいうな。なんか欲しいものある?
買ってくるよ」
「もしもし、ならツチノコ欲しい」
「売ってねーよ。あと、いちいち最初にもし
もしいらないから」
「そうなんだ。了解」
「欲しいものないの?」
「なら、ゼリー。プルプルしたやつ」
プルプルしてないゼリーってどんなんだ⁉︎
「わかった。じゃあ買ってくるよ」
「それは、お母さんに頼んだ」
「なら、いちいち言うな‼︎なら頼んでないや
つで欲しいものないの?」
「うーん…ならクリスマスを年に三回に増や
して欲しい。」
「それは、無理だ」
「そうか。あとは間に合ってます。他をあた
ってください」
「なんで新聞の勧誘断ってるみたいにいうん
だよ」
「あはは。ふふふ。ひひひ」
「糸電話で変な笑い伝えなくていいから」
「そうなんだ」
「下の冷凍庫にアイス冷やしておいたから、
少し落ち着いたら食べて」
「わざわざ貧乏症なのにありがとう」
「別に貧乏じゃないから‼︎じゃ、早く風邪治
せよ」
「うん。そういうつもり」
「そうか。じゃあな」
「は〜い」
数日後
すっかり元気になった琴美だったけど声が
まだ本調子ではなかった。
風邪をひいた時の特権。
琴美いわくおかまの声が手に入るそうな。
朝からおかま声の琴美は、
「ちょっとお兄さん。よく来たわね。おかま
バーへようこそ」
なんて言ってきた。
「ようこそって…来てねーから!」
「まあ、お子ちゃまね。照れちゃって。かわ
いいんだから。いいわ。おかまちゃんがた
〜っぷり可愛がってあげる!」
「いや、いい。ってか、風邪うつるから離れ
ろよー」
「んも〜照れ屋さん」
からだをくねくねさせる琴美。
風邪で頭どうかしちゃったのか?
いや、もとから変わってんだよな。
ま、でも元気になってよかった。
それからさらに数日後。
すっかりおかま声じゃなくなった。
よかった…
毎日おかまバーへようこそって勧誘されな
くなって。
「琴美。マスクになんかついてるよ?」
「ゴミ?」
「ううん。白い…なんだろ。」
「あぁ、白いかたまり?」
「そう!そんな感じ」
「それ歯磨き粉だから気にしないで。」
「は?なんで歯磨き粉⁇」
フフフ
怪しい笑みを浮かべる琴美。
「仕方ない。小太郎君に特別教えてあげよう
とするか。」
「え…」
「いいですか!鼻が詰まっていたら喉も痛く
なるんです!なので‼︎鼻の通りをよくさせ
てあげなければならない‼︎だからどうしま
すか⁉︎小太郎さん!手挙げて。もっとピン
と!」
無理矢理挙手…
「はい!そこのピンと手を挙げている小太郎
さん」
え…
無理矢理の挙手だけど…
「なら…歯磨き粉を嗅ぐ?」
「惜しい‼︎スースーする歯磨き粉で歯を磨く
んです。そして偶然にもマスクに少し歯磨
き粉がつきました。意外とマスクに少し塗
るといいかも」
「そうなんだ…」
首に塗るそういうやつ売ってるよな…
貧乏症なのは、琴美だろ。
「いい勉強になりましたね‼︎実践は、風邪ひ
いた時にどうぞ。あと‼︎これテストにでま
すからね‼︎きちんと覚えておいてください
よ‼︎」
「うん…」
絶対マスクにつけるのはやらないと思うけ
どね。歯は普通に磨くし。
あと、テストってなんだよ…
マスクに少しつけるとか…
しかも鼻の通り良くするために何回歯磨く
んだよ…
普通の人がやらない事を当たり前かのよう
にやりこなす琴美。
ある意味すごいな。
その話は、終わったかと思いきや、
トントン
「ん?」
「その効果長く続きませんから歯磨き粉は、
きちんと持ち歩いてください。で、すかさ
ず歯を磨いてください。」
と、わざわざ付け加えてくれた。
持ち歩かねーから!
なら、のど飴持ち歩くよ。
「そうだ。小太郎さ、私が風邪の時ジュース
とかも持ってきてくれたんでしょ?なんか
お礼するよ。何がいい?」
別にいらねーんだよなー…
あ、ならば。
琴美風にふざけてみた。
「ならー、キラキラネームが欲しいかなー」
「キラキラネームか。こったりょん?こたり
ゃん⁈んーそもそもキラキラってどんなん
だ⁉︎」
真面目に考えんなよ。
「嘘だよ」
「えっ嘘⁇お母さんは、そんな嘘つきに育て
たつもりはありません‼︎」
「お母さんじゃねーだろ。お返しとかいらな
いから。そのかわりオレが風邪ひいたら、
糸電話しよう」
「えー、そんなんでいいんだ。安上がりな男
だねー」
安上がりとかいうな。
でも、弱ってるときに琴美と糸電話したら、
すぐ元気になりそうだな。
続く。
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