第12話
もうすっかり寒くなってきた。
部活帰り
「十月なのに寒いな」
「十月だから寒いんだよ」
そうなのか。
「ねぇ、小太郎。」
「ん?」
「クリスマス何欲しい?」
「なんでもいいかな。」
オレたちは、幼い頃から毎年プレゼント交
換している。
でも、まだまだ先じゃん!
ってか、オレが欲しいのは琴美の取り扱い
説明書…
そんなもんないけどさ。
すっかり日が暮れるのが早くなってきた。
「なんかさー、もう真っ暗だな」
「うん。小学校の頃なんてこんな時間に夜道
をうろつくことなんてなかったよね」
「だな」
ってか、別にうろついているわけではない。
ただの帰宅だろ…。
「でも、小太郎が一緒だから全然こわくない
な。」
「へー、じゃあオレに感謝だな」
「はい。ご存知の通りいい加減感謝しており
ます。」
「なんだよ…いい加減感謝って」
「んー、日本語って難しい」
「いやいや、琴美が難しくしてんの」
「ほうほう。さようでございますか。」
誰だよ…
「あーあ、明日小テストあんじゃん。やだな
ー。琴美自信ある?」
「えー、小テストあるの?最近そういう話聞
くと耳が音信不通になるんだよ」
「なんだよそれ」
「ほんと耳のやつどうかしてるよ。」
いやいや。
耳のせいにするなよ。
どうかしてるのは、琴美だよ!
この前は、足がどうかしてたよな…
「で?なんの教科?」
「えっ、そっからかよ…英語な」
「マジか。日本語もままならない私が英語だ
なんて脳みそさんパニックだよ。あ〜、誰
か私の脳みそを、カニ味噌にかえてくださ
い。」
「うん。そうだね…」
とある休日
「小太郎ー‼︎」
「どうした?」
「今年初モノ‼︎おっかあがごっそり箱買いし
てきたのー。」
ポケットから出てきたのはみかん。
琴美は、とにかくみかんが大好きで人生の
最後に何が食べたいって言われたらみかん
なんだそうな。
「よかったな」
「うん!胃が喜んでるよ〜キュルキュル鳴い
てるー」
お腹空いてお腹鳴ってるだけだろ…
小さなテーブルに向かい合って座りみかん
を二人でいただく。
すると琴美がいきなり
「ご趣味は?」
なんて聞いてきた。
「読書だけど」
「休日は、何をなさってお過ごしですか?」
「だいたい琴美といんだろ」
「ちょっと‼︎それじゃお見合いにならないじ
ゃん‼︎」
なんで勝手にお見合いごっこはじめやがっ
た…
琴美は、みかんの皮をヒトデ形に綺麗にむ
く。
そして必ずちーの頭に乗せる。
それがとにかくかわいくて胸キュンなんだ
そうな。
毎年耳を下げて嫌がるちー。
白いからだに、オレンジの帽子がよくはえ
ると大絶賛だ。
それを写真におさめて何度も見ている。
ほんと猫好きだよなー。
ークリスマスー
プレゼント交換をした。
琴美には、手袋を。
オレにはマフラーをくれた。
マフラーに何か包まれていた。
豆腐一丁…
なんだよ。豆腐って…
とりあえず、味噌汁に入れてありがたくい
ただいたけどさ!
そんな毎日みかんを食べてくだらない話を
している間に年が明けた。
今日は、二人で初詣。
かわいく着物を着せてもらった琴美。
「おー、かわいいじゃん」
「ありがとうございます。うれしゅうござい
ます」
誰だよ…
「じゃ行くか」
「はい。お供させていただきます」
着物だからおしとやか風になりきってんだ
な。
「よい。ではついてきなさい。」
「はい。」
「琴美って着物とか浴衣ほんと似合うよね」
「ありがたき。うれしゅうまいございます」
しゅうまいございますって言わなかった?
しゅうまい屋かよ!
出店がたくさん出ていた。
「なんか食べよっか?」
「うん!お腹すきすきでまいりました。」
もう、はいじゃなくてうんとか言ってるし。
しかもすきすきって…
「いただきますでございますわ」
… … …
なんか変…
ま、いいか。
そして、お腹も膨れておまいりも無事でき
た。
記念に二人で写真も撮った。
いい写真だ!
「あら、私たち写真写りばえばえのコバエで
すわね」
コバエって嫌だろ…
「じゃ、そろそろ帰るか」
「あぁ、いいだろう。貴様この私についてこ
れるかな⁉︎」
なんでいきなりキャラ変…
「う…ん。頑張ってついていくよ…」
「よろしい。ではついてまいれ。まえーなら
え‼︎」
え…
誰だよ‼︎
そんなくだらないことをしながら新年がは
じまったのでありました。
続く。
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