初めての緊急招集令!

帰り道、人付き合いの悪いエドが珍しく一緒になって帰路を歩いていた。


ナックル「プハ~!満足だぜ!」

エド「旨かったっす!」

ペーター「でも、とくダネとか言ってたけど、ベストさんは新聞記者か何かかい?」

フラット「そうですよ!で、あのうどん屋は休日の金曜日限定でやってるんですよ」

ペーター「1週間に一度だけの開店か。1日だけでもあの味なら大盛況だろ」

フラット「できたばかりはそうでもないですよ。まだあの味のない普通のうどん屋ですから」

ナックル「その時、お前も行ったのか?」

フラット「行ったからレシピあげたんだよ。何か、もっと客にあっと言わせる料理を作れるように。そういえば、あのかき揚げのレシピは僕が作ったんだっけ、忘れてた」


何故だか忘れていたが、たしかにあのかき揚げのレシピだけは自作のものだった。


エド「じゃ、お前なりのレシピはあるじゃないっすか」

フラット「忘れてたの!しょうがないでしょ」

ナックル「あれも旨かったぜ!」

フラット「でも、玉ねぎが少なかったなぁ。品切れしちゃったのかな?半生で、シャキッとした歯応えとアクセントの辛みが美味しいに」

ナックル「じゃあ来週も行こうぜ!今度はあの2人も連れてな!タクマも今日は大会で来れなかっただけだし、いいだろ」

フラット「じゃあ、毎週行っちゃう?金曜日までにとくダネ集めて1番いいのを選んで持ってく!半額であの味を毎週楽しめるよ!」

ペーター「でもその制度、客の皆が知ってるんだろ?ベストさんの所も赤字にー」

フラット「あ、とくダネ割引は特定の人しか知りませんよ。ベストさんの所の新聞を、プラチナ契約で取ってないと分からないですから」

ナックル「?じゃあお前、どこで知ったんだ?寮は新聞、取ってないだろ⁉︎」

フラット「コンビニで買ってるんだけど」

エド「でもコンビニってプラチナ契約の新聞は取り扱ってないはずっすよ?」

フラット「あれ、意外と知られてないのかな?プラチナ契約の新聞はコンビニの店員さんに言えば売ってくれるよ。毎日買ってるとプラチナ契約者を証明する期間限定ライセンス貰えるんだ。それで知っただけだよ」

ペーター「へぇ、そういう制度があったのか」

フラット「制度っていうか、浅草新聞社のみの制度ですけど」


自慢げにフラットはその制度について語った。


ナックル「でも、それって人数制限とかあるんだろ?」

フラット「うん、5人未満までなら半額割引、5人以上だと2割引になるんだ」

ナックル「てことは...そうか、来週は4人だけで

行ったほうがお得ってわけか」

フラット「昼なら、ね?」

ペーター「夜にも行くのかい?流石に失礼だと思うぞ」

フラット「ですよね~...じゃあデ・ロワーで行くのは1ヶ月に一回にしましょうか。それに、ファイターサインを飾れば、毎回3割引になりますし」

ナックル「...!そういえばお前の会計、8割引かれてたな!あれ、そういうことかよ!」

フラット「あ。ごめん、伝え忘れてた。っていうか、ベストさんも言ってなかったし、儲け取られたね」


言い忘れたことを、フラットは笑って誤魔化した。


ナックル「てか先に言えよ!」

フラット「いや、忘れてたんだって」

エド「あ、俺住み込みっすからここで。今日は美味しかったっすよ」

ペーター「...エド君」


いつもは無愛想なエドが、別れの挨拶どころか、手をあげての挨拶をしたことにペーターは驚きを隠せなかった。


エド「別にお礼ぐらいしないといけないってだけっすからね!」

フラット「アッハハ、僕まだ何も言ってないよ?」

エド「...それじゃ、帰るっす」

ペーター「あ、俺も帰らせてもらうよ、じゃあね」

フラット「はい、また明日!」

ナックル「それじゃ、俺達も帰ろうぜ!」

フラット「うん!」



翌日ー

タクマ「やっば、部室に鞄置きっぱだった~、あぶね~、監督に叱られるとこだった...?」

生徒1「あの疫病神、火曜日来るのか?」

生徒2「バジーがそう言ってたぞ」

生徒3「フラットでしょ?まさか疫病神だったなんて信じらんない。来たらボコそうよ」

生徒2「あ、それいいな!」

タクマ「なっ、フラットが指揮者⁉︎まずい、今のこと知らせなきゃな!」


咄嗟にウォッチフォンでタクマは教授に電話をかけようとした、まさにその時だった。


バジー「あら、今フラット様を痛ぶるような発言を致しましたか?」


タクマの真後ろから、バジーが現れた。


タクマ「バジー⁉︎おいおい、聞かれてたのかよ」

バジー「フラット様が指揮者だからといって暴行を加えていい理由にはなりません。あなた方が罪を被るだけですよ」

生徒3「やだ~、聞いてたの?だったら...消しちゃうまでだよ!」

生徒1「俺達の事、知られちゃうもんでな!」


3人は公認ファイターでもないのに、戦闘モードを起動した。


バジー「え、ヴァイス⁉︎」

タクマ「嘘だろおい!」

生徒1「ドウリャぁ!」


女性ということも気にせず、ヴァイスが殴りかかろうとした。だが、その拳を、バジーの目の前に現れた見たこともないファイターがその手を押さえつけていた。


ファイター「おっと、大丈夫か教授!」

バジー「は、はい...?この声ってー」

ファイター「とにかく、大学生がまさかヴァイスとはちょっと驚いた。が、人のことを差別する奴を許す俺じゃないもんでな。痛い目、遭ってもらう!第一舞台『炎』術・『火炎涙想劇』!」

生徒2「ちょ、熱い!」

生徒3「燃えてる、助けて!」


その神力はそのファイターからではなく、ファイターの持つ神力から放たれていたことを見るに、彼はヒーロー部類である。その神力が炎となり、ヴァイス達に制裁を加えた。


ファイター「助けて...?お前らは、助けられる権利なんかねぇよ。人の気持ちも考えないで自己中心的にしか物事考えられねぇようなやつに、な」

バジー「今すぐ解除なさい!」

ファイター「へ?」


予想だにしなかった声に、ファイターはポカンと口を開けた。


バジー「この人達は、たしかにヴァイスです!しかし、私の生徒でもある!だから、彼らを守るのもまた私の役目!」

ファイター「...優し過ぎます。それは甘えであって教育ではない。人間は痛い目に遭ってようやく学ぶんです。あなたの甘えでは教育なんかできません」

バジー「...っ!」

ファイター「...でも、その甘えがあるから人はまた生きれる。だから...仕方ない、罰はこれぐらいでいいとして、あとは警察が処理してくれるか」

バジー「警察⁉︎」

ファイター「流石に犯罪者をこのままにしておくのはまずいだろ。それに...もう来ちまったしな」


ウォッチフォンをカメラモードにし、自分のサイトに動画を載せていたため、視聴者が警察を呼んでくれたのだろう。門の方からサイレンの音が響いていた。


バジー「...」

ファイター「蜜を吸いすぎると幼虫は成虫になっても羽ばたけず、自分の見える世界にしか動けない。吸い過ぎた蜜は取り出さないと。空へ羽ばたくには十分すぎる」

バジー「...それはわかっているつもりですわ!でも...蜜を取り出すということは羽ばたく自由も...」

ファイター「彼らは力の使い方を間違えた。正しい方向へ使えれば正義になれる。だから、その希望に賭けてみる。それが次に踏むべきステップなんだ」

バジー「...はい」



そのニュースはすぐさまトップランキングワードになっていた。


フラット「へ⁉︎浅草大学でヴァイス⁉︎」

ナックル「マジか。驚きだぜ」

フラット「うん、でも謎のファイターが討伐、逮捕されたって」

ナックル「ん~、誰だ?」

フラット「分からないんだって!」

ナックル「まっ、だから謎なんだよな」

フラット「そういうこと。ほら、早くオフィスに行こうよ!それに、今日こそ失敗しないから!エドのお土産!」

ナックル「ったく、お前は仕方ないやつだな!それじゃ行かないわけにもいかんな」

フラット「そゆこと。じゃ、行こう行こう!」



その頃、オフィスはペーターと、普段はオフィスには残らないエドの2人がいた。


ペーター「エド君、昨日は珍しかったね」

エド「昨日だけっす。あれは...旨かったっすから」

ペーター「ふぅん」


そんな会話の最中に、ノックの音がした。


フラット「失礼します。フラットですけど、今出社しました」

ナックル「もっと軽く入っていいぜ。よ、ペーター!」

ペーター「おはよう、君達も来たか」

フラット「はい!それでエド、この前は怒らせてごめんね。もう一度考えてね。これならどう?竜柄の帽子!エドに似合いそうだな~って!」

エド「...カッコいいっす!もらっていいんすか⁉︎」


その柄を見たエドは、フラットの手も一緒に帽子を握りしめた。しかも、嬉しそうに瞳を輝かせた笑顔で。


フラット「う、うん、勿論」

ペーター「エド君、こんないい笑顔見せるのか」

ナックル「本当、驚かされるぜ」

広報「浅草駅路地裏にアリジゴクの巣窟が発見!直ちにファイターは出撃に当たってください!」

フラット「えっ、何これ⁉︎初めて聞いた広報だけど⁉︎」

ペーター「緊急出動だ!ファイターはエド君、ナックラー、フラット君、指揮者は俺とフラット君。カメラは専用ドローンを用いる!隊長、出撃命令を!」

ナックル「おう!デ・ロワー、脅威殲滅開始!」

全員「了解!」



すぐさま現場に到着すると、その場には街を荒らし、人々を襲うアリジゴクの群れがいた。


ナックル「情報だと雑魚が2体、通常個体が3体、大物が1体か。よし、まずは雑魚から片付けるぜ!」

エド「...!通常個体発見っす!俺の力見せてやるっす!第一鉄拳『光』術・『金剛百裂拳』!」

アリジゴク「ギャフ⁉︎...ギャルル...!」


指示も出されていないのにエドは飛び出した上、勝手に支援力までもを使った。


フラット「どこ狙ってるの⁉︎弱点は...腹!第一審判『炎』術・『永久黒炎結界』!」

アリジゴク「ギャァァァァ...」

フラット「ふぅ...勿体無いことしちゃったな。エド、アリジゴクの弱点は腹!そこを叩けばすぐ倒せるから!」

エド「は、はいっす」

ナックル「お前ら!指示ぐらいちゃんと聞け!」


エドの勝手な動きのせいで、フラットまでもが指示なく動くことになってしまった。


フラット「ごめん、飛び出しちゃって。でも、雑魚は最後にするよ!雑魚が動ける範囲には僕達以外に人はいないから」

ナックル「...それもそうか!」

フラット「じゃ、任せたよ!僕の業なら、雑魚アリジゴクの5体、まとめて倒せる!第一審判『零』術・『凍瀧之結界』!」

アリジゴク「ギュル⁉︎」


一気に川の水を使ってフラットは雑魚アリジゴクを氷漬けにした。


フラット「そして...神業・制裁!」

アリジゴク「ギュルピィィィィ...」

フラット「よし!まとめて撃破!って、エド、危ない!」


フラットの指先から金色の光がエドに道標を見せる。


エド「‼︎よっと!」


その軌道通りに動くと、エドを狙った成体のアリジゴクの触手を見事にかわすことができた。


フラット「ふぅ、ギリギリ!」

ナックル「お、じゃ、指揮はよろしく頼んだぜ!」

フラット「任せて!ナックルさん、ジャンプ!」

ナックル「おう!」

フラット「エドは敵に向かって第二必殺!」

エド「了解っす!ウォォォォォ!第二鉄拳『零』術・『胸骨粉砕殴打ボンバブルアッパー』!」

アリジゴク「ギャピィィィィ...」

ナックル「これが俺の全身全霊だ!第二突進『光』術・『会心‼︎トライアタック』!」

アリジゴク「ギャァァァァ...」


フラットの的確な指揮のおかげで、次から次へと雑魚アリジゴクは倒されていく。


フラット「これで大物以外は全部かな...?何...この影...?」


ふと下を見ると、段々と何かの影が大きくなってきていた。


ナックル「フラット、上だ!」

フラット「えっ...⁉︎」

エド「危ないっす!」


フラットを思い切り押し倒すエド。そして即座に影の主から離れたため、誰も怪我をせずに助かった。


フラット「こ、コイツは...⁉︎」

ナックル「あぁ、出ちまったよ、エリート級のアリジゴクがな」

エド「さっ、パーティーの始まりっすよ!俺の力、見せつけてやるっす!」

ナックル「待て!まだ弱化用の武器、使ってねぇだろ!ペーター、使用許可をくれ!」

ペーター「よし、使用許可する!」

ナックル「っしゃあ!くらえ!」

アリジゴク「ギャ‼︎」


すぐに対エリートアリジゴク用武器を投げつけ、弱化に成功した。


エド「今っす。第二鉄拳『零』術・『ボンバブルアッパー』!」

アリジゴク「ギュゥ⁉︎」

ナックル「勝手に行動するな!」

エド「俺は俺なりに戦わせてもらうっす!」

アリジゴク「ギシャァァァ!」

フラット「危ない!」


エドにむかって伸びていく尖った触手。それをー


フラット「くっ!ギリギリ...!大丈夫⁉︎」


危機一髪でフラットが神器で庇った。


ナックル「マジか⁉︎俺でもあんな...」

ペーター「ほう...」

フラット「油断大敵!それと、ちゃんと指示を聞くようにね!支援力まで勝手に使って...」

エド「...ごめんなさいっす」


フラットの本気を見たエドは、ポロッと謝った。


ナックル「謝った...」

フラット「分かればいいよ、それじゃ、張り切って討伐しようか!」

ナックル「フラット、今支援力はいくつだ?」

フラット「えっと...6209だね」

ナックル「まだ足りねぇな...フラット!支援力を集められるか⁉︎」

エド「...何する気っすか?」

ナックル「エド、翼を使え!俺が囮になる!」


ナックルも、エドを試す気になった。フラットがいれば、今のエドも大丈夫だろうと確信していた。


フラット「囮って...それなら僕がー」

ナックル「お前は指揮してくれ!あの触手の動き、しっかり見とけよ!」

フラット「分かった、任しといて!」

エド「俺が...任されたっす......初めて...」


当のエドは嬉しさを噛み締めていた。


フラット「大丈夫!いくよ、ナックルさん!」

ナックル「おう!」

フラット「前方、警戒...今、左!」

ナックル「よし、いい感じだ!」

フラット「右!」

ナックル「ほっと!」

フラット「左行って上!」

ナックル「ぐっ、はっ!」

フラット「よし、そこで1発!」

ナックル「了解だ!よくやってくれた!だが、支援力は使わないぜ!ドウリャ!」


2人の息の合っている連携が視聴者の心を熱くしていた。そして見事に攻撃が決まるとより一層視聴者の心を掴んだ。


フラット「凄い!支援力が3万‼︎」

ナックル「フラット!エドの翼を解放しろ!」

フラット「解放って...あ!」


エドの方に端末を向けると、翼解放の認証画面が広がっていた。


フラット「これか!エド...頑張って!認証!」

無機質な声「認証されました。正義之人工正翼を解放します」


翼状の神々しい光がエドに向かい差し込む。


エド「...俺に全てが掛かってるっす...!俺なりの正義、存分に見せつけてやるっす!」

フラット「カッコいいよ、エド!」

エド「早く指示するっす!余計なことを言ってる暇は...!」


攻撃を喰らい、アリジゴクは怒りに任せて大暴れを始めた。


フラット「そうだね!それじゃ、一緒に戦うよ!レッツファイト!」

エド「了解っす!」

フラット「僕もいかせてもらうよ!ナックルさん、カメラ代わって!」


今の今までドローンモードのウォッチフォンとは別のデ・ロワー専用のカメラを持っていたフラットはそれをナックルに手渡し、戦闘モードを起動した。


ナックル「っとと!おい、勝手に...ふぅ、言っても無駄か」

エド「動き合わせるっすよ!」

フラット「そっちもね!右行ってその後まっすぐ!」

エド「了解っす!」


フラットとエドはまるで心が通じ合ってるかのようにアリジゴクの攻撃をかわして、進み続ける。


エド「よし、ここならいけるっす!フラット、ありったけの支援力を俺にくれっす!」

フラット「えっ⁉︎凄い数だよ、負荷がー」

エド「いいから早くするっす!」

フラット「無茶して倒れたら知らないからね!」


と言いつつも支援力を送るフラット。その顔は、エドを信じきっているものだった。


エド「さぁ、大人しくおねんねする時間っすよ!最終鉄拳『正義』術・『絶悪続光爆裂拳』!」

アリジゴク「ギュワァァァァ!」

フラット「よし、グッジョブ、エド!」

エド「こんなのやってのけて当然っすよ。それより、これで駆除の方もー」

アリジゴク「ピギィ...!ギュルル!」


倒れ込んだアリジゴクは、まだ立ちあがろうとした。だが、三万以上の支援力の負荷を受けたエドは戦闘モードを維持できず、既に解除されていた。


エド「なっ、まだ生きてるっすか⁉︎」

フラット「マズイ、エドはモード解除してる...!エド、下がって!」

アリジゴク「ピギュゥゥゥゥゥ!」

エド「っ⁉︎」

フラット「くっ...ったく、暴れん坊な脅威だ!ちょっと、本気でいかせてもらうよ...!神力最高出力!さぁ、裁判を始めよう!」


危機一髪でエドを庇ったフラットは神力を高めて、アリジゴクと対峙を始めた。


ナックル「おい、いくらお前でも神力だけでエリート級を相手にするのは不可能だ!」

フラット「不可能かどうかは...やってから判断するんだ!」


その映像を見ていたペーターはロケットの中の女性の写真を見ながら微笑んでいた。


ペーター「...ふふっ、どうやら君に似たようだね、カナリア。俺がアイツの面倒、しっかり見ていくよ」


フラット「人を喰らう前に...仕留めてみせる!第二審判『光』術・『シャイニングカット』!」


神器の刃が光の刃をアリジゴクに向かって飛ばした。その刃はアリジゴクを真っ二つにした。だが、その業に支援力などなく、ただの神力と同じものだった。


アリジゴク「ギャゥゥゥ...」

ナックル「...スゲェ...ただの神力で...勝ちやがった!」

エド「...やるっすね」

フラット「ふぅ~...疲れた~!」

ナックル「よくやったぜ、このぉ~!」


フラットの背中をナックルは思い切り押した。


フラット「うわぁ!ナックルさん、危ないよ!」

エド「今はとりあえず帰投するっすよ。もうクタクタっす」

フラット「そうだね、帰ろっか!」



ペーター「やぁ、お疲れ様。フラット君は初仕事の割に色々と頑張っていたね」

フラット「いや、全然!結構勝手に動いちゃいましたし指揮者としてはまだまだかな~って」

ペーター「そんなことないよ、初仕事なのにあそこまで成果をあげたのは素晴らしい!そこで、俺はあることを提案する!」

ナックル「あること…?」

エド「何すか?」

ペーター「それはな...本日をもって、ナックルには隊長という立場から降りてもらう!」

ナックル「...は?」

全員「えぇぇぇぇ⁉︎」


いきなりかつ無茶苦茶な提案に全員は大声で驚愕の声を出した。


ペーター「そして、フラット君、君に隊長を務めてもらいたい」

フラット「へっ⁉︎僕ですか⁈いやいや、冗談ですよね?」

エド「いくらなんでも、それは無理っすよ!こんなど素人に隊長なんて任せちゃダメっすよ!」

フラット「そうです!僕まだ入りたてですよ⁈隊長は...無理とは言いませんけど...」

ペーター「そう、君のその精神から判断した。出来るか、出来ないか。やってみなくちゃ分からない。君の純粋にそう思ってる心、俺はその心に十分な期待をしている」

フラット「...僕のモットーに、そこまで…分かりました!やるだけやってみます!できる限り、頑張らせてもらいます!」

ナックル「よっしゃあ!新しいデ・ロワーの起点って意味も込めて、アレ…やろうぜ?」

エド「アレ...っすか。了解っす、誰が中心っすか?」

ナックル「そりゃあ勿論、新隊長のフラットだ!ほら、早く来いって!」


ナックルは力任せにグイッとフラットの腕を引っ張る。


フラット「いててて!少しは優しく引っ張ってよ」

ナックル「よし、並んだな!じゃ、ペーター!合図、よろしく頼んだぜ!」

ペーター「おう、勝利のVサインー」

全員「キメっ!」

ペーター「よーし、写真出来た。フラット君、何か一言書いてくれ」

フラット「えっ⁉︎いきなり言われても...じゃあ!」



その夜ー

フラット「ん...もう退社時間か」

ナックル「そうだな!じゃあ、新隊長を祝いに...夜の花見でもするか?」

フラット「いいね!1夜だけの大騒ぎといこう!エドも一緒に行こうよ!楽しいよ!」

エド「...前にも言ったはずっす。昨日は特別っす」

フラット「ふーん、エド、隊長命令は絶対だよ?」

エド「それは権利の濫用っす!」

フラット「あちゃ~、いいツッコミされた。ハハ、一本取った罰として、一緒に花見でもしようよ!」


食い下がらないフラットを見て、エドは諦めがついた。


エド「何が何でも連れてく気っすね…分かったっす、ついてくっすよ」

フラット「それでよし!行こ~行こ~!」



浅草第一公園ー


ナックル「ほれ、色々と買ってきたぜ!花見で出店を開いてくれるのは嬉しいもんだぜ!焼きそばサイコォ~!」

エド「はぁ~…何で俺がー」

フラット「はい、エド!」

エド「いらないっす。人から料理をもらうほど俺はー」


そう言うエドのお腹からグゥ~という音が鳴った。


フラット「アッハハ、お腹すいてんじゃん!じゃあー」

だがフラットのお腹もまたグゥ~と音を鳴らした。


フラット「あ...どうしよ!」

エド「それはフラットのものっす。俺は自分でー」


フラット「じゃ、半分ずつ!」

エド「えっ…」


フラットはタコ焼きの半分を、蓋に置いて割り箸と共にエドの方に向けた。


フラット「皆で同じものを食べる!それが食事だよ!」

エド「…それならナックラーさんは別のもの…ってあれ?」

ナックル「俺もたこ焼き食ってるぜ!やっぱ、たこ焼きはウメェよな!」


さっきまでナックルが食べていたはずの焼きそばの上にたこ焼きが並べられていた。


フラット「だよね~!ほら、エドも食べなって!」

エド「…何で…俺なんかと…」

フラット「ダメ?僕はエドのこと嫌いじゃないよ。面白いもん!照れたり、尖ったり。色んなエドの表情、見たくなっちゃった!それに折角出会えたんだし分かり合えないのは承知の上で、分かち合いたいんだ!」

エド「っ!フラット…本当っすか?俺のこと…嫌いじゃないんすか?」

フラット「うん!何言われても、嫌わないよ。ただ側にいるから。いつか、友達になれるようにね」

エド「…なる気はないっすよ」

フラット「だったら、させてみる!認めたくなくても、そばに居るだけで楽しい存在に!」

ナックル「おっ、活きのいい隊長だ!」



回想終了―

こうやって、僕達の物語の第一歩が踏み出された。


ノール「おい、何ボーっとしてる。イベント準備、早く行くぞ。置いてっちまうぞ?」

フラット「あっ、ちょっとは待ってよ!ってうわっ!」


走り出した勢いでフラットは盛大に転ぶ。


ノール「大丈夫か?ったく、少しは落ち着いて走れ。ほら、手貸すから」

フラット「…ノールに手を掴まれたら骨折しそうだからいいや。自分で立つ」

ノール「…ほーう…いい度胸だな」

フラット「さて...と。神業・ステップジャンプ!」


ノールの殺気に気付くも、フラットは冷静に天空術でノールでは追いつくことのできないくらい遠くへと離れた。


ノール「あっ、待てこのバカ法神!」

フラット「待てって言われて待つバカがどこに、ってあっ!僕の写真!」


風によってフラットのポケットから写真が吹き飛ばされる。それは、始まりの写真。デ・ロワーが3人だった頃の。裏にはデカデカと、

『僕達の新たなスタートライン』と書かれていた

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Light Fallen Angels 桜木 朝日 @asahi0318

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