第28話ー最終節 カルマ

アカデミー主催総会議-

ガイア「この間の件だが、デ・ロワーはどう責任をとるつもりか

お聞きしたい」

シャン「ガイア、そこには目を瞑りたまえ。あのような事件に関しては

デ・ロワー総裁であるアレースには何も責任はない」

ガイア「ふん、ゼウス様がそういう風に甘いからこんな事件が

起きたんじゃないのか?」

アイテール「おい、失礼極まりない発言をするでない!」

ガイア「私は今すぐにでもまた独立してもいいんだぞ?」

シャン「・・・ガイア、あなたにその名を授けたのが間違いでした。

ジ・アフダンをこれから内部調査いたします!既に許可も降りています、

あなたが好き勝手やっていた分、こちらもそれ相応にやらせてもらいます!」

シャンとガイア以外の全社長が次々にパソコンを取り出しジ・アフダンの

総合管理システムをハックし始めた。

ガイア「なっ、まずい!」


翌日-

ペーター「うわ、ジ・アフダン社長、賄賂発覚だって」

ノール「そう。そんなことより例の新人ってどこにいるの?見当たらないけど」

ペーター「それが・・・」


カフェ近くのマンホール-

フラット「だからトンヤのせいじゃないって」

スラリア「そうだよ、あたし達の所にいるノールやフォールだって

トンヤ君みたいに忌み嫌われた力なんだよ。あたしだってそう、

恐れられてた力。トンヤ君だってあたし達みたいになれるよ!」

トンヤ「そんなの今はどうだっていい!」

トンヤは例のマンホールに開けた穴の中に閉じこもっていた。

フラット「・・・とんだカルマを課せられたもんだね。まるで生物の

本能を描いてるみたい」

スラリア「えっ?」

フラット「生まれた命はいやでも自分のナワバリを作らなきゃいけない。

トンヤはまるでその本能に生かされてるだけみたいに思えてさ。

なんかいたたまれなくてね」

スラリア「・・・でも人間や天使は-」

フラット「神魔戦争。これで分かるでしょ?魔族にこの地を奪わせまいと

殺し合い、この場所を守る。でも結局はこの場所をナワバリにして

生きているってことに変わりはないでしょ?」

スラリア「そうかもだけど・・・」

トンヤ「今は放っといてくれ!1人で考えたい・・・」

フラット「・・・だってさ」

エド「なら無理矢理外にほっぽり出すまでっすね!」

トンヤ「へ⁉︎ちょっ、おま-」

エドは強引にトンヤをマンホールの外へ放り出した。

エド「これでよしっすね」

フラット「ありがと、エド」

エド「先輩として当然のことっすよ!」

スラリア「でもフラットが初めて会った時のエドにも会ってはみたかったなぁ」

フラット「今はそれどころじゃないでしょ!ほら、行くよ!」

3人もマンホールの外へ出ていった。


外-

フラット「じゃ、あとはエドに任せたよ」

スラリア「あたしはアイツを探す!」

フラット「僕も。あの事件でながら食いがなくなったのはいいことかもだけど

脅しでやめさせるなんて1番やっちゃいけないことだから!」

2人は調査を始めるためにその場からは離れた。

エド「話は聞いてるっすよ。とりあえず、喫茶店で話すとするっすか」

トンヤ「・・・」


喫茶店-

エド「なんか今ならフラットの気持ちが分かる気がするっすね。

で、お前は王家の末裔じゃない、この解釈であってるっすか?」

トンヤ「・・・あぁ、あってるみたいだな」

エド「その感じだと物心つく前に何かあった感じっすかね。俺は俺で

子供の頃っすか・・・普通に生きてたっすね~」

トンヤ「普通って・・・俺からしたら羨ましいよ」

エド「羨ましくはないっすよ。色々俺にもあったんすから」

トンヤ「色々?」

エド「あれは俺が98の頃だったっすね」


ナンプリン-

エド「親父、俺勝った!大会勝てた!」

母親「本当に帰ってきたらすぐにお仏壇に報告するのね。ほら、あの子が

エドを待ってるから行ってあげなさい。晩御飯もそろそろできるから」

エド「はぁい」

仕方なくエドは2階に上がっていった。


兄弟部屋-

エド「兄ちゃん~?入るよ~?」

しかしその返事はなかった。

エド「寝てるのかな?まあいいや、よっと!」

鞄を床に置き、宿題をやろうと机に向き合った。すると-

「ハッピーバースデー、エド!」

背後から大声でエドはそう言われた。

エド「!兄ちゃん、起きてたのか⁈」

エドの兄「あぁ。なんだ?俺がこんな時間に寝てると思ってたのか?」

エド「てっきり・・・ごめん」

エドの兄「何謝ってんだよ。そうそう、アイツらもお前の誕生日、

祝いたいんだってよ。来週になっちまうがいいか?」

エド「来週・・・か。大丈夫!」

エドの兄「ならいいんだ。あ、あとこれ。俺からのプレゼントだ。

お前こういうアクセサリー好きだろ?腕に付けとけよ」

エド「あ、ありがと・・・大事にする!」


エドの兄「・・・おいおい、なんかあったか?元気ないぞ?いつもだったら

ハキハキしてるだろ。それに誕生日の時は自分から祝われにくるくせに

今日は朝からいつも通りだったし」

エド「・・・兄ちゃん。俺・・・見ちゃったんだ」

エドの兄「見ちゃったって・・・まさか!」

エド「うん・・・波間夢」

エドの兄「そうか・・・父さんと同じか。頑張れよ?これから新たな世界へ

大冒険できるんだ!ポジティブ精神、忘れんなよ!」

エド「それは兄ちゃんの精神だろ!でも・・・やだよぉ!俺、まだここで

やりたいこといっぱいある!」

エドの兄「ならあっちでやればいいだろ?お前なら大丈夫だ!

思い切り挑戦してこい!」

エド「兄ちゃん・・・分かった、俺頑張る!」

エドの兄「なんたってこの俺、カイリの弟なんだ!胸張って

歩けばいいんだ!」

エド「うん!」


回想終了-

エド「ていう感じっすね~・・・しかもその約束、まだ全然出来てないっすし。

お互いまだまだこれからっすよ!」

トンヤ「勝手に決めんなよ!俺は-」

エド「ぐちぐち考えてる暇あるなら何かした方がマシっすよ!」

トンヤ「俺が何かする度に俺がどうなったか知ってるのか⁈」

エド「結果よりもアクションっす!」

トンヤ「!」

急に大声を出したエドにトンヤは驚いた。

エド「・・・大声出して悪かったっす。でも今のは俺の大好きなファイター、

ナックラーさんが言ってくれた言葉なんすよ。俺が人間を嫌いになってた時に

教えてくれたことっす」

トンヤ「人間嫌い?」

エド「こっちにきて酷い扱いばかりされてきたんすよ。実験台に

奴隷のように扱われて、ロクな飯も食えず、居場所も狭い牢獄の中だったっす。

暗闇の中、1人死んでいくのかと思うたびに泣いて、恨んでたんすよ」

トンヤ「エド・・・そんなことがあったんだ・・・」

エド「でも、今は恨んでないっすよ!俺の周りにいる仲間は俺を

知ろうとしてくれるっす!だから俺もトンヤを知りたいんす!

俺にできるカルマはこれぐらいっすから!」

トンヤ「・・・俺は・・・!」

エドの腕を強く握り、トンヤは涙を流していた。

エド「大丈夫っすよ、フラット達はトンヤを悪く思ってないっす。

他の俺の仲間も会いたいって言ってたっすよ?」

トンヤ「俺も・・・!やっと地下牢から出れて・・・!何年ぶりかも分からない

陽の光を浴びて、青空見上げて、雑踏の間を抜けて・・・!ようやく自由に

なれたけど、何をすればいいのか分からなくなって!こんな俺でも・・・

あんた達は導いてくれるのか?」

エド「もちろんっすよ!俺達の役目ってのもあるっすけど、

さっきも言ったじゃないっすか!それが俺にできるカルマっすよ!」

トンヤ「・・・そうだな!俺も俺なりに俺のカルマってやつ、見つけてみせる!

ありがとう、エド。お陰で自信がついた!」

エド「それなら良かったっす!じゃあ朝食、何がいいっすか?」

トンヤ「ケーキ!」

エド「それ飯じゃないっすよ~!」

2人の笑い声が喫茶店に小さく響いた。


一方その頃-

フラット「ラルバ、何かあった?」

ラルバ「一応ありましたよ。神話なんですけど、デラガに使われた毒、

あれは今までのデータにないものなんです。それで調べたら

ヒュドラーの牙にそっくりな紋章があったんですよ」

スラリア「・・・?どういうこと?」

フラット「なんか、どっかワンシーン飛んでない?」

ラルバ「飛んでないですよ!あのケーキ屋の監視カメラの映像に

たしかに映ってたんですから!」

フラット「やっぱり飛んでるじゃん!」

スラリア「ダメだこりゃ」

ビリー「あ、皆さん来てたんですね。この間の件・・・ですか?」

フラット「ま、まあそんなところ・・・かな?」

スラリア「ビリー刑事は大丈夫?顔色悪いよ」

ラルバ「初めての経験ですから・・・」

フラット「そっか、初めてだよね。でもやっぱり慣れないね」

スラリア「とくにあの2人を失っちゃうとはね・・・ベングルさんのこと、

なっくんがすごい悲しんでるし・・・」

フラット「あのバトラーからしたらよく分かるよ。全員失ってるからね」

スラリア「そうだっけね。あたし達の前で強がってるだけなんだっけ」

フラット「そう。いつか言おうとは思ってたけどそろそろかな。

ちょっと僕は先に帰ってるね、調べなきゃいけないこともできたし。

ラルバ、何かあったらいつでも相談乗るから。ビリーもね。

じゃあまたその日に!」

フラットは先にデ・ロワーに戻っていった。


オフィス-

ナックル「ハァ~・・・」

ペーター「ナックラー、朝食はまだだろ?」

ナックル「いらねぇよ。腹は空いてねぇ」

フラット「よっ、だ~れだ⁈」

ナックルの両目をフラットは塞ぎ、イタズラした。

ナックル「フラット、俺はふざけてる気分じゃないんだ」

フラット「もう、ちょっとは乗ってよね。本当、僕の知ってるバトラーとは

違って弱虫だよね。まっ、そんなバトラーも知ってるには知ってるけど」

ナックル「どっちだよ⁈」

フラット「どっちもだよ。子供の頃のバトラーを見てる気分だよ。

何も変わってないとこうなっちゃうもんなんだね」

少し意地の悪い声でフラットはナックルに話しかけた。

フラット「でも、こっちのバトラーはこう言ったよ?」

それはフラットが人工アリジゴク装置に取り込まれた後のこと-


ナックル「お前は覚えてねぇかもだけどよ。俺はお前を一回だけ

守りきれなかった。だからな、今度こそお前を守ってやる!俺にとって

お前はかけがえのない家族同然なんだぜ」


フラット「てね!何でバトラーにそこまで思われたかは知らないけど

その言葉があったから上京して、今ここにいるんだよ。どんな暗闇の中に

閉じ込められても、誰かを思うたびに走り出せて、抜け出せた。

それは他でもないバトラーの後ろ姿があったからだと思ってる。

僕の勇気も力も、全部バトラーに貰ったもの。僕は貰ってばっかで

バトラーに何一つ返せてないから、何を返そうかなって悩んでた。でもね!」

ナックル「うわっ!」

フラットはナックルの顔を覗き込んだ。

フラット「今出来ることをする!これは忘れてないよね⁈バトラーが最初に

僕に教えてくれたこと!」

ナックル「・・・あぁ、そうだったな」

フラット「・・・やっぱりね。このセリフ、バトラーが知ってるはずないんだよね。

だってこのセリフ、僕がバトラーと独裁者として最後にあった時に

バトラーが言ったことだもん。これで納得したよ」

ペーター「納得って?」

フラット「ほら、バトラーが流れ着いたのはおかしいと思いませんか?

こっちのバトラーはたしかにいなくなった。でも、それってこの世界に

魂は存在し続けるんです。なのにバトラーは流れ着いて存在してる。

そして僕達と会った時、俺にはねぇ記憶があるって言ったでしょ?

多分だけどこの世界のバトラーと同化しちゃったと思うんだよね」

ペーター「そんなこと・・・ありえるのか?」

フラット「そうしないと辻褄が合わないんだよね。ただ、同化しただけで

メインはあっちのバトラーって感じかな?」

ナックル「そういうことか・・・だからなんか変な覚えのない記憶まで

あるんだな、よく分かったぜ」

フラット「まあ、つまりこれでどの世界線からバトラーが来ても

ドッペルゲンガー現象は起きなくなったわけだけど」

ペーター「いわゆるフラット君みたいな存在が2人になったわけか」

ナックル「なんかややこしいことになりそうだ・・・」

ペーター「まあなんとかしてくれ。前みたいな事件は却下だよ?」

フラット「僕に言われても困ります!」

ペーター「ただ・・・ナックラーの異世界者は少し厄介かもね。フラット君を

重要視してる分、かなり嫌な予感が-」

「ファックスが印刷されます。お受け取りください」

ペーター「?珍しい、なんだ?」

コピー機から印刷された一枚の紙をペーターは取った。そこには-

ペーター「・・・噂をすればなんとやら・・・」

フラット「えっ⁉︎」

ペーター「冗談だよ。銀座にカフェができただろ?あそこで

また事件があったらしくてね。行ってもらいたい」

フラット「分かりました!バトラー、行くよ!」

ナックル「おう!」


喫茶店-

エド「なんなんすかコイツら⁉︎」

トンヤ「・・・ファイターみたいな感じはするが・・・フラットを

差し出せって言われてもいねぇもんはいねぇんだ!」

柄の悪い虎男「嘘つくな。まあいなくともそろそろ来るだろ。

アイツはそういうやつだ」

フラット「エド、トンヤ!大丈夫⁉︎」

ナックル「見つけたぜ!テメェが頭か⁈」

柄の悪い虎男「ん?この世界のお前は死んだとばかり思ってたぜ。

面倒なことが起きてるようだが・・・まあ俺には関係ないぜ。フラット、

お前の力を貸せ。お前の力があれば俺の世界は救われる」

フラット「・・・?どういうこと?まずお前、名前は?何で僕の名前を知ってる?

その言い草だと異世界線から来た感じだよね」

柄の悪い虎男「俺の名前は・・・聞くな。そして俺はお前のことを

よく知っている。最後の質問は正解だ、俺はゲートを操りここに来た。

最後の頼みの綱だ、頼む!」

フラット「・・・悪いけど断るよ。喫茶店で事件を起こして僕を呼びつけた。

こんな手段を用いるのはヴァイス以外にいない!大人しく・・・確保されるがいいさ!

神業・拘束!」

柄の悪い虎男「くっ!」

フラット「僕はヴァイスと協力する気は・・・?何・・・この感覚・・・」

神器に伝う虎男の血液が、フラットに強い感情を与えていた。

フラット「・・・壊れた街・・・孤独・・・絶望・・・」

それが伝わる度にフラットの右手の甲にある天秤の紋章が光を放つ。

フラット「・・・解除」

その全てを理解してフラットは彼を解放した。

ナックル「な、何やってんだ⁉︎」

フラット「・・・隠さなくていい。お前も・・・バトラーだよね。そしてここにいる

ヴァイスは皆、デ・ロワーの・・・」

ヴァイス1「そう、何とか生き残ったファイターっすよ。俺はエドっすよ」

ヴァイス2「俺はクレア。逃げ遅れたやつも多いがな。スラは・・・

守れなかった!」

悔しそうにクレアと名乗るボロボロの青年はそう言った。

フラット「さっきの物言いだと僕もだよね」

虎男「あぁ・・・お前がメチャクチャにしたんだ!」

フラット「へ⁉︎」

ヴァイス1「急に暴れ出して・・・!まさかお前もっすか⁈」

ヴァイス2「怪しきは罰せよとも言うよな・・・なら!」

「やめなさい、愚か者!」

バッとフラットを守るように誰かが立ち塞がった。それは-

管理者「このフラット君はそんな真似できません。そちらの世界のフラット君が

あなた方を騙していただけの話。さぁ、ゲートを暴走させた罪は

重いですよ!思い知りなさい・・・!」

キッと3人組を管理者は睨みつけ、禍々しいオーラを右手に纏い始めていた。

フラット「!ダメ!」

しかし3人組を庇いようにフラットは管理者の前に立った。

フラット「やめて。コイツらに罪はあるけど、それを裁くのは

この世界では僕の役目!お前の出る幕じゃない」

管理者「ほう・・・懸命な判断ですね。では私を満足させられるような審判を

頼みましたよ、私の最高傑作」

フラット「・・・っ。まずゲートを濫用し、この世界に流れ着くなり

この所業・・・警察には行ってもらうよ。ラルバ!」

ラルバ「はい!器物損壊、及びファイター法違反で現行犯逮捕です!」

ビリー「無駄な抵抗は己を苦しめるだけですよ!」

管理者「甘いな・・・!」

フラット「管理者、お前がどう言おうと-」

ラルバ「ちょっ、何ですかこの人達⁉︎」

虎男「俺達はな・・・実体がねぇんだよ。だからな?こんな真似だって

できちまうわけだぜ!」

なんとナックルと名乗った男は黒いモヤと変わり、ナックルの中へ

入っていった。

ラルバ「なっ⁉︎」

フラット「バトラー⁉︎」

ナックル「ぐっ・・・!ガッハッハ・・・ガーッハッハ!俺はようやく俺になった・・・!

フラット、これで俺はお前を殺せる!」

ヴァイス2「なら俺は・・・!」

ヴァイス1「俺もっす・・・!」

2人も同じく黒いモヤと変わり、エドと名乗ったヴァイスはエドの中に

入り込み、クレアと名乗っていたヴァイスはどこかへ行った。

エド「ガァ!・・・へへ、これで復讐劇の始まりっすよ!」

フラット「なっ・・・⁉︎」

トンヤ「エド、やめろ!」

フラット「バトラー、負けないで!そんな力に負けるほどバトラーは

弱くないでしょ!」

しかし2人にフラットの声は届くことなく、段々とフラットに

距離を詰めていた。

ラルバ「撃つしか・・・ないんですか⁈」

トンヤ「こうなれば・・・!」

トンヤはフラットの手を掴み透明化の術を使った。

ナックル「!くそ、どこ行きやがった⁉︎」

エド「・・・!そこっす!」

トンヤ「あっぶな⁉︎ちぃ、アイツの目には見えてるのか!急がねぇと!」

急いでトンヤはラルバの手とビリーの手を掴み、同じく透明にさせて

すぐさま逃げた。


オフィス-

ペーター「なるほど・・・ちょうど良かった。入ってきてくれ」

「はい、ペーターさん」

女性の声が扉の向こうから聞こえると、入ってきたのはフラットと

同じ年くらいの女子だった。

新人女子?「初めまして、アゲハ・コンチェルトです。久しぶり、

フラット先生」

フラット「えっ⁉︎待って、先生って⁈」

アゲハ「覚えてない?まあ、私、先生に興味ないけど」

ペーター「それより君を呼んだのは他でもない。君のところまで

連れて行ってほしいんだ」

アゲハ「アンタ達大勢を乗せられるほどの宇宙船なんか持ってないわ。

めんどくさいもの。どうしてもって言うなら考えなくもないけど?」

ペーター「いや、3台で行くから大丈夫だよ。デ・ロワー姉妹ファイター企業、

フライトエースまで頼むよ!」

アゲハ「はいはいわかりました~、アンタ達を乗せる気はないんだけどね、

どうしてもって言うから仕方なくよ、仕方なく」

ペーター「ありがとう!助か-」

ドカーン!(爆発音)

ペーター「⁉︎もう来たか!アゲハ、宇宙船に先に乗っててくれ!」

アゲハ「分かってる!」

ペーター「俺達は地下だ!」

全員「了解!」


地下-

バジー「出力最大、パラレルストーンエネルギー変換効率最大!

システムオールグリーン、スパークフラッシュ号、及びヴィオラ号、

発車準備整っていますわ!」

ペーター「外回り組も帰ってきてくれて良かったよ」

クレア「にしても、さっき何で色々と検査されたんだ?」

フラット「まあ何もなかったから後で説明するよ」

クレア「あ、あぁ・・・」

スター「っ⁉︎来てるよ!」

神力に敏感なスターにはあのナックルとエドが近づいていることに

気がついた。

スラリア「は、早く行こう!」

ペーター「よし、発車!」

バジー「了解ですわ!ヴィオラ号、発車オッケー!」

そう無線でバジーは伝えた。

コータス「発車指示!ヴィオラ号、浮上!」

メダイ「エンジン稼働!避難完了してたよね⁈」

ケーベス「あぁ、浅草のやつらはこの辺にはいねぇ!」

メダイ「なら!ヴィオラ号、全装置フル稼働!」

なんとメダイは一気に全ての機能をフル稼働させた。そしてヴィオラ号は

一気に浮上して地上を突き抜けていった。

バジー「私達も参りますわ!」

同じくバジーも全ての機能をフル稼働にし、地下へと猛スピードで

スパークフラッシュ号は潜り込んでいった。

ナックル「ドウリャアァァァァ!」

エド「・・・いないっすね」

ナックル「まあいいぜ。まだ手段は残ってるぜ。あと・・・」

2人の後ろにはロープで体を拘束され、ガムテープで口を塞がれた

クレアと名乗っていたヴァイスがいた。

ナックル「役立たずは・・・消えてもらうぜ!」

エド「俺も・・・同感っす!」

彼を空となった地下室に放り投げ、それと共に不穏な電子音で

カウントを刻む黒い物体を投げ入れ、2人は去っていった。


5分後-

グリオ「酷い・・・デ・ロワーが、こんなに・・・」

157階建のデ・ロワーがたった高さ4メートルしかなかった。

しかも辺りは瓦礫の山と化していた。

メッシュ「アイツらは逃げ切れたらしいが・・・犯人はナックルとエドか。

しかもアイツらが言っていた世界線は非常にまずい」

グリオ「知っているのか?」

メッシュ「あそこは俺のいた世界だ。実はな、あそこは普通じゃ

存在できない世界だ」

グリオ「どういうことだ?」

メッシュ「あの世界は全てが真っ逆さまの世界。この世界の裏の世界とでも

言っていいかもしれねぇな」

グリオ「裏の世界・・・つまりは流れ者じゃないってことか!」

グリオ「それどころか起きる出来事も真っ逆さま。あっちで起きた出来事は

フォール達が裏切った時の事象だろうな。で、それでフラットを恨んだ

あの3人が事件を起こした、って感じか」

グリオ「正に運命に縛られたカルマ、だな」

メッシュ「裏世界のやつらは非常に厄介だ。ファイターこそがヴァイスで、

何でもかんでも好き放題にやってくる。まさか-!」

何かをメッシュは察した。

グリオ「多分、私と同じ見解だな」

メッシュ「これ、管理者の罠か⁉︎」

グリオ「多分な。その事象が起こった後にゲートを開けて指示を

与えたんだろう。絶対に私達のカルマを妨害したいらしい」

メッシュ「このままだとアイツの思う壺だ!」

グリオ「それでも今は既に旅人の2人の力を手にしている。

あと5人、絶対に手にするぞ!」

メッシュ「あぁ!裏世界が嫌になって抜け出した身、負けるわけには

いかねぇんだ!」

2人も自分達の意思を確認し-

グリオ「よし。私達も向かうぞ!」

メッシュ「目指すはフライトエース!」


一方その頃-

管理者「フフフっ、やはり頭が回る連中だ。しかしどうする?

私より先回りできるのかな?」

グラ「流石は管理者、やることが姑息だな」

管理者「まあ、フラット君は生かしといてあげますよ。ただ・・・フォール君には

消えてもらいましょうか。

フフフフフフ・・・」

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