第28話ー2節 隠されてきた力
オフィス-
ペーター「おはよう、皆」
フラット「おはようございます、ペーターさん!あの、イベントの件で
相談があります!」
ペーター「お、早いね。もう何か思いついたのかい?」
フラット「はい!秋といえば芸術です!なので音楽ライブやりましょ!」
ペーター「なんだ、結局はそれか」
クレア「いいんじゃねぇか?飽きられてはいねぇし、新曲も作れば
客はより一層喜ぶってもんだ」
アイン「でもそれってできるんですか?今出張でいない人もいますけど・・・」
プルルル!プルルル!(オフィス固定電話のコール音)
ペーター「はい、デ・ロワー、ファイター課課長のペーターです」
メダイ「あ、ペーターさん?ちょっとアイン君に用事があるので
こっちに来るよう伝えておいてもらえませんか?」
ペーター「分かったよ。アイン、地下に来てって」
アイン「僕ですか?分かりました、行ってきます」
ペーターの指示に素直に従い、アインは地下直行のオフィス内にあるエレベーターを
使って地下に向かった。
フラット「まあ、出張でいない分補えば問題ないでしょ?」
トンヤ「あの~・・・それで俺は?」
スラリア「やだも~!あたしに聞いちゃうと抱きしめちゃうよ?」
トンヤ「うん、いいぞ!」
スラリア「へ⁈」
トンヤ「だって姉ちゃん、懐かしい匂いがするんだ・・・なんか安心する・・・」
スラリア「あたしが?普通のジャスミンの香水つけてはいるけど・・・
それだけだよ?」
フラット「でも凄いよね。女子組だけでどれだけの利益上げてると思う?」
スラリア「さぁ・・・考えたこともないよ」
フラット「月初めから今日で男子組の1.5倍だよ」
スラリア「1.5倍⁉︎もうそんなに差がついたの⁉︎」
ペーター「当たり前だよ、君達は契約、フラット君達は内務だしね。
それにサボり魔が3人もいるからなぁ」
フラット「アッハハ、だよね」
クレア「俺はサボりじゃねぇ、実力がないだけだ!」
全員「威張るな!」
トンヤ「結局俺、どうすればいいんだ?」
ペーター「あ、戦闘の時はフラット君に、仕事についてはエド君から
教わってくれるかい?教育はここで受けてもらうね」
トンヤ「教育・・・受けていいのか⁉︎」
ペーター「あ、あぁ、受けてもらわないと困るしね」
トンヤ「初めてのことにこんな触れられるなんて夢みたいだ!
ここにいれば、俺が諦めてたこと全部できそうだ!」
フラット「大袈裟だよ、そんな楽園でもないよ?」
トンヤ「いや、あそこは大地獄だ!俺を幽閉して自由を拘束して・・・
仕方なかったのはわかってるけどよ・・・この力を知られちゃまずいって
ことはな。俺もそんぐらいは知ってるての」
スラリア「知られちゃまずい能力・・・?あれが?」
フラット「そりゃそうかもだね。あんな能力、盗賊にも殺し屋にも
目につけられる能力だよ。それこそ、ノールみたいにね」
クレア「だな。にしても信頼がねぇのは辛いよな」
フラット「クレアに信頼がないのは任した仕事をメチャクチャに
するからでしょ。この前だって警察からの依頼でミスしまくって
苦情きたからね?」
クレア「げっ、マジかよ⁉︎」
フラット「もうクレアは来なくていいってさ。おかげで次からは
僕かエドだけだよ」
ペーター「アインもいるだろ?トンヤだって」
フラット「警察からの依頼はとても慎重に扱わなきゃいけないものです!
素人に任せるのは現場経験を積んでからじゃないと!」
ペーター「君は堅いねぇ。シャンに見せてやりたいよ」
そんな他愛のない話がオフィス内で続いているとお昼の鐘が鳴った。
フラット「あ、お昼か。そろそろエドとバトラーが帰ってくる時間か」
ペーター「いや、あの2人のことだ、寄り道して帰ってくるはずだし
君達は君達で食事行ってきなよ」
クレア「俺もいいのか⁈」
ペーター「自覚があるなら残ろうか」
クレア「あっ・・・」
フラット「墓穴掘ったね、ドンマイ」
スラリア「何で言っちゃうかなぁ」
トンヤ「じゃあ俺、ケーキっていうの食いたい!」
フラット「ケーキ?でもあれ、誕生日に食べるのが・・・あ」
スラリア「そういえば今日ってフラットの誕生日じゃん!」
ペーター「ちょうどいいじゃないか、ケーキバイキングでも行って
思い切り楽しんでくるといいよ」
フラット「でもケーキだけじゃ昼食にはならないから・・・帰りに買って食べよっか。
ケーキバイキングは明日の午後にでも-」
スラリア「いいじゃんたまにはさ!ほらほら、時間は待ってちゃくれないよ?」
フラット「ちょちょ⁉︎」
無理矢理フラットを引き連れてスラリアは出て行った。
トンヤ「ちょっと、置いてかれても~!」
トンヤも慌てて2人を追いかけていった。
ケーキ屋-
フラット「なんだ、他にも普通のメニューもあるんだ」
スラリア「当たり前でしょ。ケーキだけじゃ飽きるよ」
トンヤ「こんなにもケーキ・・・!これ食い放題⁉︎」
フラット「まあそうだけど?」
トンヤ「じゃあ俺、もうたっくさん注文する!」
スラリア「えっ、そんなに注文したら!」
数分後-
机の上には立体型オボンで4枚ものプレートが積み重ねられていた。
スラリア「これ・・・どうする?」
フラット「流石にこれはバトラーでもいないと-」
トンヤ「何ボーッとしてんだよ、食わねぇなら俺が全部食っちまうぞ」
フラット「あ~っ、食べる食べる!」
トンヤ「これがケーキか・・・スゲェうめぇ!」
スラリア「そんなに美味しいならよかった。でも食べ過ぎは-」
「あれ?フラットにスラリアか!」
フラット「あ、デラガ!どうしたの⁈」
ラルバ「いやな、最近おかしな事件が多発しててなぁ・・・あ、
このケーキ貰ってもいいか?俺が頼もうとした時は売り切れだったんだ」
スラリア「それは・・・ヒィ、フゥ、ミィ・・・うん、いっぱいあるから
全然いいよ!」
デラガ「よっしゃ!それじゃ、遠慮なく!」
その様子を遠くから-
「神業・毒塗!」
ラルバ「モグモグ・・・っ⁉︎ガァ!」
急にデラガは嘔吐した。顔は青ざめ、意識は朦朧としていた。
フラット「デラガ⁉︎デラガ、しっかり!」
スラリア「えっ、でも余命は見えてなかったのに、どうなってるの⁈」
トンヤ「この力・・・まさか、いるのか⁈」
その存在を知っているトンヤは周囲を見渡した。そして-
トンヤ「見つけた!」
猫型獣人「おっと、君風情がきやすく僕のことを知っているとは。
だがその能力を炙り出すいい方法だと思ってね?」
トンヤ「まさか、お前まで流れ着いていたとはな・・・あんまり出したくなかったが、
やるっきゃねぇか!」
ズボンのポケットに隠していた短剣を取り出し、その猫型獣人にむかって
トンヤは攻撃を仕掛けた。
猫型獣人「よっと!いいのか?僕の術でソイツは死ぬぜ?」
トンヤ「知ってんだよ!お前のあれを壊さねぇとあの毒が治んねぇってことはな!」
スラリア「毒の術ってこと・・・?だったら、神業・鎮静」
なんとか神力で魂の穢れを浄化しようと試みるも、それは浄化されることなく
こびりついたままだった。
スラリア「な、何で⁉︎」
フラット「まずい、脈が途切れた!」
スラリア「・・・フラット。もう無理みたい」
フラット「へ⁉︎」
スラリア「もうこの一瞬で・・・余命は0、しかもくっきりとね」
フラット「ウソ・・・こんなあっけなく?」
スラリア「フラット「落ち着いて。あたしだって信じたくないけど・・・
これが真実なら受け止めるほかないよ」
フラット「ラルバまで1人になったら、終わるよ⁉︎浅草警察ファイター支援課が!」
スラリア「それは・・・うん。ただでさえフェアード警部がいなくなって
人望が薄くなっちゃったのに、デラガまで・・・」
トンヤ「おいアンタらも戦ってくれ!コイツはチャギワーの邪神、
ベレトの血をひいてるやつだ!」
スラリア「ベレト・・・そういうこと。フォールがいれば上手くできるけど
あたしじゃ難しいかも」
フラット「でも・・・やるよ。ちょうどいい機会だしね」
猫型獣人「へっ、どうしたのかなトンヤ君?あの力は使わないのか?」
トンヤ「ぐっ・・・」
フラット「トンヤ、今回は退いて。僕とスラリアが戦闘でトンヤは指揮!
僕もやるだけはやるからトンヤも!」
トンヤ「えっ、俺が指揮⁉︎」
スラリア「大丈夫!フラットもついてるから」
トンヤ「わ、分かりました!」
フラット「デラガ・・・任せて。無差別殺人なら、極刑に値する!
永遠に暗闇の中で罪を償ってもらうよ!」
スラリア「す、すごい気迫・・・フラットがこんなに怒るなんて、
相当だね。まあ・・・あたしも同じだけどね!余生ある者を冷酷に死なせたこと、
絶対後悔させてあげるんだから!」
フラット「神業・束縛!」
猫型獣人を束縛し、フラットは回転式扉の方へ彼を投げつけ、
外に出した。
スラリア「行くよ!」
トンヤ「お、おう!」
フラット「このままで済ませるわけにはいかない!」
一方その頃、ベングルは-
ベングル「ん~っ!休憩時間貰えてラッキーだぜ!」
「おいおい、事件だってよ!」
「なんでもファイターが毒殺されたとか!」
ベングル「毒殺⁉︎」
「きゃあ~!ベングルさんじゃないですか!」
ベングル「それより毒殺って何の話だ、詳しく教えてくれ!」
「あ、あぁ・・・ファイター支援課のデラガってやつが死んだらしくて-」
ベングル「デラガ・・・だと⁉︎」
フラット「待て!これ以上逃すわけにはいかない!」
ベングル「⁉︎フラット!」
フラット「!ベングル、ちょうど良いとこに!コイツ、逃げないように捕まえて!」
ベングル「よし来た!」
そしてベングルは片手に持っていた棒アイスを咥えようとした。
猫型獣人「・・・へっ、神業・毒塗!」
棒アイスに毒が仕組まれるも、ベングルは気付くことなく咥えてしまった。
ベングル「っ⁉︎グワッ!」
スラリア「えぇっ⁉︎また寿命が急に・・・!」
フラット「ベングル・・・ウソ・・・」
猫型獣人「・・・ふん、あっけないなぁ。いいかトンヤ。僕こそが
本物の王家の息子だ!お前じゃない。分かったか?」
トンヤ「いや、俺こそが王家の末裔だ!お前が偽物だ!」
猫型獣人「まだ言うか!元々はこの力こそお前の物だったのに・・・!」
トンヤ「2人も平然と殺める存在が王家の末裔だ?そんなこと言わせやしない!」
猫型獣人「僕の国の民ならいざ知らず、コイツらは僕達とは
比較にならないほどミジメで滑稽な存在だ。殺めたところで
虫を殺すのと同義ってわけだよ」
トンヤ「ぐっ・・・黙れ!ハァァァァァァ!」
猫型獣人「・・・」
何も動じない猫型獣人にトンヤは短剣を向けるだけで怯んでしまった。
猫型獣人「・・・フッ・・・アッハハハハハ!人1人殺せぬ者が王家の末裔?
バカバカしくて話にもなんないよ!」
フラット「お前、さっきからどの立場でモノを言ってるか知らないけどよ・・・」
スラリア「フ、フラット?」
そのフラットの周りには天秤の魔法陣が広がっていた。そして顔には
黒と白の混ざり合ったアザが浮かんでいた。
フラット「この世界にはこの世界なりの法があり、それに従ってもらわなくては
法の意味も成さなくなる。法を作りし者は権力を持つもの。神じゃない。
その法すらろくに守れない者が・・・王と名乗る資格など皆無!
極刑!#火炎十字架__サザンフレイム__#!」
猫型獣人「おっと・・・やれやれ、まさか法の神がいるとは。厄介だ、
ここは・・・神業・毒散!」
フラットに向け毒の塊を投げつけ、フラットがそれに当たると
粉状になった毒が散らばった。
フラット「うっ・・・!」
スラリア「ヤバっ!」
トンヤ「こんなの!スラリア、手、失礼!」
フラットとスラリアの手を握り、トンヤは透明化の術を使った。
フラット「えっ、えっ⁉︎」
トンヤはそのまま逃げるようにデ・ロワーの方に行った。
オフィス-
ペーター「あぁ・・・デラガに、ベングルか。しかも敵は不明・・・か。
かなり荒らしてくれたなぁ、ソイツ」
シャン「私も今、懸命に捜査していますが犯人はここに流れ着いてすぐに
事件を起こしたと思っています」
ペーター「その猫型獣人について知っている人が少なかったんだろ?」
シャン「そう、あまりに。今考えられるのはアカデミーの総合的な戦力の低下を
目論む存在が行った事件・・・としか」
ペーター「つまりは・・・管理者、となるわけだね?」
シャン「私もそう睨んでる。この運命も、アイツが改編したのかもしれない。
スラリアちゃんの話だと急に余命が見えた、って言ってたよね。
多分、それが合図。ソイツにも余命みたいなものが見えているとすれば」
ペーター「シャン。ありがとう。とりあえず君はフラット君の
ケアをよろしく頼むよ。君に死なれたら俺が困るからね」
シャン「分かってる。まあ私の運命まで変えられたら流石にやばいかもね」
ペーター「・・・アイツがそこまで力をつけたこと、そこも重要視しといてほしい。
アイツ1人であそこまで強くなるなんてありえないからな」
シャン「そこについてはとっくに答えも出てる。これ見てくれる?
東京全体的な神力数値。そしてこっちが世界全体的な神力数値。
そしてこれがこの宇宙全体的な神力数値。全部低下してるってわけ。
アイツはこの宇宙から神力を吸い取ってるってわけ」
ペーター「それって、アイツはアリジゴクってわけか⁉︎」
シャン「そういうこと。そこで今、バジー達を使って対策を練ってもらってる。
もうすぐできるみたい、神力吸収を阻止する装置がね」
ペーター「それならいいよ。本当に頼もしくなったよ、昔の君よりね」
シャン「や、やめてよ。あの時は若かったから・・・」
ペーター「ハハッ、冗談だよ。じゃあフラット君のこと、任せたよ」
シャン「もっちろん!私を助けてくれたのはアイツだし、今度は私の番ってね!」
はしゃいでシャンはオフィスから出ていった。
ペーター「・・・毒を操る神力か。しかもベレトの・・・これは今まで以上に
調査が必要になるか。となると、そろそろアイツをこっちに
引き戻すとするか」
ペーターはとある人物に連絡をかけた。
ペーター「もしもし、久しぶりだね。そっちは?」
「とっくに終わってる。そっちこそ急に何?」
ペーター「いや、な。こっちに戻ってくる気はないかなぁ、ってね」
「はぁ?そっちが無理矢理飛ばしたくせにそういう態度?ま、戻ってやんないことも
ないけどね。どうせ寂しいんでしょ?アンタのこと、よく知ってるし」
ペーター「ハッハハ、寂しいというより困ってるが正解だよ。色々と複雑な事件が
こっちで起こっちゃってね。君が来てくれると大助かりなんだよね」
「分かった。だけどアンタの部下には厳しくいくから。じゃあ、失礼」
その言葉を最後に連絡は終わった。
ペーター「よし、俺がやれることは全部やった。あとはシャンに任せるか」
ファイター支援課-
ラルバ「デラガまで・・・」
トンヤ「本当に申し訳ない!俺のせいだ、煮るなり焼くなり好きにしてくれ!」
スラリア「いや、トンヤのせいじゃないよ。あんな下劣な真似、
王家のすることじゃない!」
フラット「でも・・・これ本当に僕?」
さっきの映像を確認し、フラットが見せたあの姿に自身が驚いていた。
スラリア「あたしもビックリしたよ!何あのアザと魔法陣⁉︎」
シャン「あれは失われていたはずの『女神陣』。女神と同化した者なら
簡単に操れる陣のこと。で、アザは私にも分からないんだよね。
あんなの見たことない」
スラリア「そう・・・だよね。あたしの神力暴走とは違うし・・・」
シャン「でもこの光は黒と白・・・多分、神魔族だから?かな」
スラリア「あたしもそう思ってます!でも実例がないことには
考えるしかないのが現状ですよね・・・」
シャン「でも、いい?この異変、あの毒使いで終わらないよ!まだあんなの、
端くれでしかないからね」
トンヤ「アイツは俺がやる!」
フラット「でも、知らなかったよ。トンヤが王家の末裔なんて」
トンヤ「エドなら分かってそうだけどな。俺はトンヤ・ジェーランド。
ジェーランド家の名を名乗ってアイツは俺の世界でもあんな真似して・・・!」
スラリア「だとしては気になったけどね。元々この力はトンヤのものだって」
フラット「うん。あの目と口調は嘘じゃなかった。どういうこと?」
シャン「・・・ねぇ、トンヤ君。ちょっといい?試したいことがあるからさ。
フラットの能力は便利でね?何でもパパッと直せるんだよね。
どう、羨ましいでしょ?」
トンヤ「えっ、そりゃ羨ましいですけど・・・」
その瞬間、トンヤの体が光った。
スラリア「わっ、何⁈」
シャン「やっぱり・・・」
スラリア「あれ、トンヤ、今の光、何?」
トンヤ「へ?なんで呼び捨てなの?」
フラット「ちょっと、どういうことだ⁈なんかおかしいぞ!」
シャン「・・・なるほどね。面白い能力を持ってるね。トンヤ君、
あの透明化能力を取り戻してみて。今のトンヤ君はフラットという性格と
能力が引き継がれてるから」
トンヤ「えぇっ⁉︎」
シャン「しかも、厄介なことに自分は一切気づいてない。でもやり方は簡単。
その人の能力、性格を羨ましがること。それで終わり」
トンヤ「羨む・・・僕は透明化能力が羨ましい!」
そしてまたトンヤの体が光った。
フラット「あ、良かった、戻ってる」
スラリア「スゴォイ!流石シャンさん!」
シャン「スラちゃんも何かを考えてるうちに発想力なんてすぐにつくよ」
トンヤ「じゃあ・・・アイツが元々は王家にいたっていうのも、俺の能力だって
言ってたのも嘘じゃなかったってわけか・・・」
スラリア「それはそうなるね。でも気にしなくていいよ!王家だってことを
自覚してる上であんな真似したんだもん!トンヤ君が気にすることじゃない!」
シャン「それは全くもって正論だよ。あんなやつが王になんかなれば
独裁国家一筋になるだけ。だ~よね、フラット?」
フラット「そう言う姉ちゃんこそ、昔だったらそんな真似したくせに」
シャン「なんの~っ!」
ピロロロ!ピロロロ!(フラットのウォッチフォンの着信音)
フラット「もしもし?」
シャンの顔を手で押さえつけながらフラットは電話に出た。
ペーター「案外フラット君は元気そうだね・・・」
立体映像でフラット達の様子が見えたペーターは驚いていた。
フラット「僕よりバトラーとラルバが問題ですよ。今ラルバのケアに
来てたんですよ?」
ラルバ「あ、そうだったんですか」
スラリア「ごめんね、戦闘の話ばっかしちゃって」
ペーター「なんだ、ケアじゃなくて私語を交わしていたのか?」
フラット「ち、違います!それじゃ、僕達はラルバのケアを続けますので
これで失礼します」
ペーター「あっ、ちょっ-」
無理矢理フラットは電話を切った。
フラット「スラリア、あんまり本当のこと言わないでよ」
スラリア「へへ、ごめん」
フラット「それでさ・・・大丈夫?」
ラルバ「大丈夫なわけ・・・」
フラット「だ、だよね。でもさ、ラルバの憧れの人はそんな時、
どうしてた?大切な人を失った時もあったでしょ?」
ラルバ「俺の憧れた人は・・・」
警察ヒーロー「失っても、貰ったものがある。そう、それがこの今だ」
フェアード「失っちまってもな、新しく作れるものだってある!
俺にとってそれは笑顔だ!」
デラガ「俺はどうしようもないやつだと自責してきた。でもな、アイツらを、
家族を失ってもこんな楽しい今を過ごしていいと許されるなら、
俺は笑顔になってみようと思う」
ラルバ「俺の憧れは・・・全員、笑ってました!失っても、笑ってました!」
フラット「そっか。じゃあラルバも笑わないとね!何事にも一生懸命に!」
ラルバ「はい!でも・・・時々は会いに来てください。約束ですよ!」
フラット「分かったよ、約束。
♪ ゆびきりげんまん 嘘ついたら針千本のます ゆびきった!」
ラルバ「へへへ・・・なんか子供みたいですね!」
トンヤ「・・・俺のせいで・・・全部おかしくなっているのか?」
四大グループ-
グリオ「そんなこと言われても対処できないぞ。私だってそばにはいなかったし、
アイツの目、鼻でも気づかないような毒なら私にも見抜けない」
ナックル「ちげぇよ!俺が聞きてぇのはそんな答えじゃなくて
アイツのことをどうとも思ってねぇのかって聞いてんだ!」
メッシュ「どうとも思ってねぇわけねぇだろ!」
ダンステード「あんさん、今は落ち着くのが1番やで。わいだってそりゃ悲しいに決まっとる。あの永炎之虎男と呼ばれたアイツが
もうこの世におらんなんて、信じれるわけあらへんやろ」
グリオ「お前がいなくなった時のようなデ・ロワーのやつらみたいに
悲しい顔はできないが、これでも悲しんではいる。私達も無慈悲じゃないんだ」
ナックル「アイツは俺の後輩の1人だぞ!それにお前らもだ!
そんな風になれと言った覚えは微塵もないぜ⁉︎」
グリオ「だがお前はこうも言ったぞ!過去は振り返るな、ってな。
どっちが正解なんだ⁈」
ナックル「それは失敗nした時にしろって言ったことだ!」
ダンステード「とにかく、もうあんさん帰ってくれへんか?今暑苦しい説教を
聞くのは勘弁や」
ナックル「な、ベングルが死んだってのにその態度はなんだ⁉︎」
我慢の限界が訪れ、ナックルは机を蹴り飛ばした。
メッシュ「いい加減にしろよテメェ。ここはお前が好き勝手やっていい場所じゃ
ねぇんだ。それが分かったらとっとと帰りな」
グリオ「待て2人とも。今の言動は失礼極まりない。すまないナックル。
うちの2人が。ただ怒りが制御できないほど悲しんでいるとは
分かっておいてほしい」
ナックル「グリオ・・・そうだな。俺もついカッとなっちまった。すまん」
グリオ「とりあえずこれからベングルのことで会議があるから
ナックルはそろそろ帰れ。デ・ロワーに所属していたやつも
同じ状況だったと聞いてる」
ナックル「アイツはアイツでフラット達が行ってる。こういう時、グリオは
1番冷静で助かるぜ」
グリオ「本来だったら風の長、ライの役目なんだけどな」
ナックル「だな。アイツ、本当にどこ行っちまったんだ?まあそんなことを
気にしててもしょうがないか。じゃあ、俺は帰るぜ。邪魔したな」
グリオ「あぁ、お前もながら食いは気をつけてな」
ナックル「おう!」
グリオに笑顔を見せるなり、ナックルはオフィスから出ていった。
グリオ「・・・さて。お前ら!隊長がいなくなった今、新たな隊長が
必要になった!誰にするべきかすぐに・・・?」
既にダンステードとメッシュは帰り支度を始めていた。
グリオ「な、何してる?これから会議と-」
ダンステード「そんな気分やないから帰るだけやで」
メッシュ「同じく」
グリオ「・・・っ!」
ガンっ!と強くグリオはホワイトボードを叩いた。
グリオ「お前ら、いい加減にしろ!ベングルのやつが悲しむぞ⁉︎
最後まで面倒かけさせてどうする⁈」
ダンステード「わいが反魂の術でもなんでも生み出して蘇らせたるわ!」
メッシュ「禁止術だろうと何だろうと、世界中から探し尽くして
使ってやるとも!ベングルなしじゃこの四大グループは終わりなんだよ!」
グリオ「・・・勝手にしろ!こうなったら四大グループ解散だ!
好きな道を歩めばいいさ!」
グリオは自分の机の中の荷物を全部取り出し、自分の家に転送されるよう、
転送ロッカーに入れた。
メッシュ「賛成だ、こんなとこにもう残る意味もねぇよ」
ダンステード「わいが開発したる!何としてもや!」
グリオ「じゃあな。私の判断じゃない、これは四大グループ総意の
決断だ。揺るぎはない」
3人はオフィスをメチャクチャにして帰った。
夜-
シャン「あっちゃ~・・・これは酷い。なるほどね、敵はそこまで考えてたわけね・・・
旅人捜索の妨害に出てくるとは、ちょっと想定外だったかな?」
デ・ロワー地下駐車場
謎の女性「あら、あららら・・・ふぅ、まさか靴紐が解けるなんて」
女性の娘?「母さん、しっかりしてよね。ていうかなんで母さんまで
来るなんていきなり言い出すのさ?」
謎の女性「だってここは私の故郷だもの、ダメ?」
女性の娘?「ダメじゃないけど・・・ペーターさんになんて言おう」
2人は駐車場の光に照らされながらエレベーターの方へ歩いていった。
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