第27話ー最終節 星の向こうで
運転車両-
ダバンゴ「なんべん言やぁ分かるんだ⁉︎今からは俺様が操縦する!
俺様の免許を見てもまだ分からねぇなんて言わせはしねぇぞ!」
スレイ「言わせてもらえば、コイツはたしかに賊にこそ入っていたが、
何かあったら責任は俺が取ろう」
運転手「・・・そこまで言うなら・・・」
仕方なさそうに運転手は席から離れた。
ダバンゴ「よっしゃ、ならまずは・・・⁉︎おい!どうなってやがる⁉︎」
スレイ「どうした⁈」
ダバンゴ「これにレーザー砲が載ってねぇたぁどういうことだ⁉︎
普通はどれにでも付いてんぜ⁈」
運転手「そ、それは-」
「何の騒ぎ?」
ダバンゴ「ん・・・親分か。見てくれよ、これ、レーザー砲がないんだぜ?
親分はどう思うよ」
フラット「どうって・・・これスペーストレインだからね?レーザー砲の
搭載は禁止だよ?」
運転手「そうですよ!」
スレイ「ただ、非常用のレーザー銃はあるはずだ。どこにある?」
運転手「それも積んでませんよ!」
ダバンゴ「ハァァ⁉︎」
運転手「まさかこんなことになるとは思ってもいなかったので・・・」
フラット「今ってさ、宇宙旅客機運転乗務員の義務だよ?非常用レーザー銃を
積んでおくことって」
スレイ「たしか、それを反すると運転免許は強制返納、及び何かしらの
処分が下されるとか・・・」
運転手「うぐっ・・・」
ダバンゴ「ったく、どうしろって言うんだ!」
フラット「・・・待って、これならどうかな!」
何かを閃いたフラットは急いで客室に戻っていった。
ダバンゴ「お、親分⁉︎」
客室-
フラット「・・・あった!」
ナックルの鞄からある物を取り出したフラット。
ダバンゴ「親分・・・⁉︎おい、それって⁉︎」
フラット「そう、人工アリジゴク計画で作られた武器。バトラーのだよ。
これを使うしかない!」
スレイ「いや、それは罪だ。君がやることじゃない」
そう言ってスレイはフラットの手からそれを取った。
フラット「へ?」
スレイ「俺がやる。罪が怖くて、海賊なんかやってられるかよ?」
フラット「スレイさん・・・」
ダバンゴ「やめろって言ったところで聞くわけねぇよな。ったく、しょうがねぇな。
俺様もお供するぜ!」
フラット「2人とも・・・じゃ、裁判官は僕だからね!他に代理はいないよ!
あとで絶対裁判だからね!」
ダバンゴ「おうよ!早速行かせてもらうぜ!」
スレイ「俺も先に行く!フラット君はまず全員と合流するように!」
フラット「分かった!でも取り扱いには気をつけてよ!」
スレイ「あぁ!」
フラットはダバンゴとスレイと別れて全員のいる場所へ向かった。
モール車両-
フラット「あ、まだこんなとこに!」
コータス「お、やっと来たか。見てみろ。スペースアリジゴクが
こっちに来るどころか逆方向に行ってる。ただ、例外を除いてな」
フラット「例外・・・?」
スラリア「実はワープゲートまでの道を塞がれちゃって・・・」
ノール「しかも、逆方向に行ってるやつらの先からは電波が受信されてる・・・
その正体は不明っていうね」
フラット「スペースアリジゴク・・・電波・・・」
フォール「フラットが考えてること、多分俺と同じだな。こりゃ、スレイの身に
起こったことと同じだ」
ケーベス「しかしなぁ、何でまた2度目の襲来だ?」
ベングル「スレイが生きているのがバレた、とかか?」
メダイ「・・・見つけた!あの宇宙バイキングは鉄血兜。そして頭は・・・
出た!グラ?」
インターネットからなんとかメダイは情報をあぶり出した。
クレア「グラって・・・姓は?」
メダイ「書いてないから無名魔族かな・・・」
フォール「グラ・・・か。おい、フラット。お前は関わるな。いいか?」
珍しく真剣そうな声色でフォールがフラットに言った。
エド「何すか何すか?そんな声で、フォールらしくないっすよ?」
フォール「黙ってろ。少し俺は席を外すぜ」
一瞬で闇と化し、フォールはどこかへ行ってしまった。
ナックル「な、なんだ?いつものアイツらしくねぇぜ?」
フラット「でも・・・何だろう・・・グラっていう名前に胸騒ぎがする」
ノール「ちょっと、いきなり何?」
フラット「いや、何でもない。とにかく、今は乗客を避難させて、
そこから作戦を考えよう」
ナックル「だな!」
フラット「あっ!バトラーごめん!勝手にアレ借りたけど許してね!」
ナックル「アレ・・・おいアレってまさか⁉︎」
フラット「そうアレ。だから緊急事態専用車両に向かってね」
ナックル「おいおいマジかよ」
フラット「じゃあ、お願いね!」
ナックル「なるべく使いたくもなかったんだが・・・お前がアレを
そんな簡単に使うとなると何か事情があるってことだろ?だったらそれで良し!
気にすんな!俺はとっくにファイター失格なんだからよ」
ナックルは立ち上がるとすぐさま緊急事態専用車両に向かった。
緊急事態専用車両-
ダバンゴ「これを・・・ここか?」
スレイ「いや、俺は知らん。なにせあくまで運転免許だけだ」
ダバンゴ「なっ、プラチナライセンス取っとけと言っただろ⁉︎」
スレイ「いや、暇という暇がなくてな・・・」
ナックル「あぁ違う違う。ここの配線はこっちだ。で、ここはこっちだ。
遠隔射的の準備は俺がやっとく。お前らは腕を休めとけ」
ダバンゴ「あぁ、なら-」
ガッシャーン!!(何かがスペーストレインに衝突する音)
スレイ「なんだ⁉︎」
客室-
フラット「なっ・・・」
いちはやく爆音のした客室に着いたフラット。彼が目にしたのは
ガラスで覆われたテラス車両を突き破って停車する一つの大きな宇宙船だった。
赤服男性「フフッ、やっぱりいたか。久しいな、フラット君?」
フラット「その声・・・グラ⁉︎」
グラ「いかにも。私はグラ。しかし、フォールがいないとは・・・
残念だな。やつなら私のもとで働くと思ったが・・・」
「誰が働くかよ、バーカ!」
その声と共に、ゴスペル結晶石の多くがグラに降り注いだ。
フォール「テメェの欲しいのはこれだけだろ⁈」
グラ「ほらな、働いてくれた」
フォール「ふん、今回だけだ。あとは何もしねぇ!分かったらとっとと帰れ!
お前とは金輪際付き合う気はない!」
グラ「おぉ、怖い怖い」
フォール「とにかく、これで用済みだろ。さっさと帰っておねんねしてな。
俺はお前と違う!それだけだ」
グラ「違う・・・ねぇ。まあいいか、いずれ分かる。じゃあな。
たしかにゴスペル結晶石は頂いた」
それだけ言うと、グラは無理矢理テラス席にぶつけて停めていた宇宙船に
乗り込み、そそくさと宇宙に飛び出していった。
フォール「さて・・・逃げるぞ!」
フラット「へ⁉︎」
フォール「アレはニセモンだ!戻ってくる前に、早く!」
フラット「う、うん!」
2人はすぐに客室から出ていった。
食堂車両-
フラット「ふぅ~!」
スラリア「ちょちょ、汗すごいよ⁈どうしたの⁉︎」
フォール「あぁ、そんな気にすることでもないぞ。もう終わった-」
ガラッ!(食堂車両と客室車両を繋ぐドアが開く音)
フォール「・・・もうバレたか」
グラ「手にした時から分かってたわ。生意気なことしやがって・・・!」
フラット「見えた!神業・制裁!」
ようやくフラットの目に見えたグラの罪。その一瞬を見逃すことなく
フラットは神力でグラを拘束した。
グラ「チッ⁉︎」
フラット「こうなったら・・・スター!」
スター「分かった!神業・夢落!」
グラ「まあ、こんなの・・・!」
スター「えっ⁉︎」
フラット「なっ⁉︎」
まさかのまさか。グラは2人の術を吸収したのだ。
グラ「ハッハッハ!やはり記憶を失っているようだな、フラット!
お前は愚かな人形同然の運命だというのに・・・なぜアイツは
クラリオの者を生かそうとするのか・・・」
フォール「テメェ・・・フラット。コイツは俺が相手する。お前はゼッテェに
絡んでくんじゃねぇぞ!」
フラット「ちょ、フォール⁉︎」
フォール「神力最高出力!第一暗黒『炎』術・『シャドウフレイム』!」
グラ「私に歯向かうとは・・・神魔・#反撃__カウンター__#!」
グラに向かっていたはずの闇を纏う炎が、一気にフォールを包み込んだ。
フォール「ガァっ⁉︎」
ノール「!神業・術破壊!」
すぐにノールが術を破壊し、フォールを救出した。
フォール「くっ・・・どうなってやがる・・・⁉︎前まではあんな力・・・アイツに
なかったはず!」
グラ「フォール、あれから3000年も経っているんだよ?そういうことも
ちゃ~んと考えとかないと、ね?」
エド「さ、3000年⁉︎」
ベングル「どういうことだ⁉︎」
スラリア「3000年ってなると・・・もしかして、フラット達が
今に来る前の⁉︎」
グラ「おろ?知ってるやつもいるのか」
スラリア「まさか、第5次神魔戦争の時の魔軍⁉︎」
グラ「いや?紛れもない神軍だ」
フォール「あぁ、そうだとも!俺もフラットもシャンもタケルもグラも
神軍に身を置いていた!何故裏切った、グラ⁉︎」
グラ「強いて言えば・・・神魔族だから?」
フラット「まるでフォールみたいな理由だね」
フォール「俺より軽い決断っぽいがな!」
グラ「あぁ、軽いとも。私は崇められたいわけじゃない!」
フォール「・・・そうかよ。じゃあゴスペル結晶石をテメェが持っている意味も
ねぇよな。返してもらおうか」
グラ「いいとも・・・待ってろ!」
フォールの指示になぜか従い、グラは船に戻っていった。
スラリア「やけに素直だけど・・・大丈夫だよね?」
ノール「こういう時には大抵何かが起きるものだけど、まあ私達なら
なんとかなるでしょ」
エド「ノールも段々フラットに似てきたっすよね」
グラ「そらよ!ゴスペル結晶石だ!ただし・・・どうやって地球まで帰る気だ?」
フラット「それなら安心して。見てみなよ」
グラ「ん・・・⁈」
窓の外から見えたのは、緑色のレーザーがことごとくアリジゴクを
粉砕していく様子だった。
グラ「なっ、どうなってる⁉︎アリジゴクが反乱を⁉︎」
ベングル「・・・それだけか?」
グラ「は?」
ベングル「普通の敵さんならこういう状況でまず疑うなら俺達の足掻きとかを
疑うんだがなぁ・・・まさか、この船に緊急事態用のレーザー銃が
載ってないなんて知ってるわけねぇだろ?」
グラ「わ~お。おいおい、心理学者か何かか?折角知り合いを使って
なんとか変装までさせて船に乗せてたのに気づかれるとはねぇ・・・」
フォール「結局はお前の負けだ、とっとと失せな!」
グラ「フォール、私が何もせずにノコノコ帰ると思うか?」
フォール「おい、何する気だ⁉︎」
グラ「実は倉庫車両に爆弾を仕掛けておくようアイツに指示しておいた。
さて・・・倉庫車両ってどこだったかなぁ?」
フラット「⁉︎運転車両のすぐ後ろ!」
スラリア「えぇ⁉︎」
スター「それって、かなりまずいんじゃ⁉︎」
「へん、バカにすんな!頼れる仲間がいるんだよ、こっちにはな!」
ベングル「あ、あんちゃん!」
クレア「へへっ、緊急事態ってわけで連絡しといた!さぁて?そろそろ悪行も
観念した方がいいぞ?もうすぐ俺達のとこの権利者が来るぜ?」
グラ「なら早く済ませて帰るだけだな・・・よっと!」
ドーン!(起爆音)
フラット「なっ⁉︎」
グラ「じゃ、さらば~っ!」
躊躇うことなく起爆を済まし、グラは宇宙船に戻っていった。
クレア「ちぃ、厄介なことしやがって!」
フラット「とにかく、まずは倉庫車両の切り離しを確認してくる!」
フォール「おい!事例があるんだ、俺も行く!」
ノール「2人とも。私がチャチャっと終わらせるからここに残って」
フラット「あ、それもそうだね」
ノール「じゃあ私は行ってるよ。ちょっと任せる!」
自信のある表情で勢いよくノールは倉庫車両の方に向かっていく。
フラット「・・・待って!ケーベス達の宇宙船って倉庫車両の真下じゃん!
僕も行ってくる!」
スラリア「えっ、残れって言われてたじゃん!」
慌てていたフラットはそのことを忘れて咄嗟に飛び出してしまった。
フォール「ったく・・・まあ俺達は残るぞ。まだ客の避難が全部終わっては
いないからな。クレア、子供がいたらお前に任せるぞ!」
クレア「おうよ!風神の力でパッパと安全な場所まで運んでやる!」
スラリア「あたしが危ない目に遭う人を言うから、その時はベングルさん、
お願いします!」
ベングル「任せとけ!スラの嬢ちゃんの頼みとありゃあ断るわけに
いかねぇな!」
フォール「エド、俺達は避難誘導だ!スターは怪我したやつを
治療してくれ!」
エド「了解っす!」
スター「うん!スターも大丈夫!」
フォール「俺が隊長じゃねぇんだけどな・・・」
倉庫車両-
ノール「じゃあ接続部分を-」
フラット「ストーップ!」
ノール「わっ⁉︎何々⁉︎何でフラットが⁉︎」
フラット「いや、倉庫車両の真下にケーベス達の宇宙船があるから!」
ノール「あっ・・・忘れてた」
フラット「まだいけるかな・・・?」
ノール「やめときなって!もう第二防壁まで破れてるから!」
第二防壁は車内の天井となっている第一防壁と1番側面である第三防壁の
中央にある壁。そこに酸素注入パイプや空調設備などの配線があるのだが
それが破られたということは、今の倉庫車両の中は温度が急激に下がり、
酸素濃度が下がっている。つまりは入ってはいけない場所ということだ。
フラット「・・・でも、あれのおかげであの時・・・!だからその恩を
返さなきゃ!見離したりしない!」
ノール「フラット・・・止めないよ。私も同じ考えだからさ」
フラット「ありがと、僕の方もサクッと終わらせるから離れて待ってて。
ちょっと危ないことするから」
ノール「危ないことって⁈」
フラット「無理矢理動かすから。じゃあ行くね!」
ノール「分かった、気をつけてね」
フラット「うん!」
ノールは扉から離れてフラットを見送った。
倉庫車両-
フラット「えっと・・・ここか、ってアッツ⁉︎」
やはり爆風で宇宙船停留所に繋がる扉の取手が熱くなっていた。
フラット「ふぅ・・・当たり前か。神業・状態変化」
取手周りの水蒸気を冷やしてようやく手で触れるぐらいまで
温度が下がった。
フラット「よし、じゃあ-」
ドーン!(宇宙船停留所から聞こえた爆発音)
フラット「まさかっ⁉︎」
慌ててフラットは地下に下っていった。
宇宙船停留所-
フラット「うわっ⁉︎ゲホっ、ゴホッ!ここに爆弾を仕掛けたなんて
聞いてないけど⁉︎とにかく・・・探さないと・・・!」
身をかがめて、フラットはケーベス達の宇宙船を探していく。
ノール「今の音・・・爆弾じゃないな。何かが故障して爆発した感じか」
ケーベス「おい、宇宙船!」
コータス「落ち着け!ここは俺とメダイが行く!」
メダイ「ケーベスはここで待ってて!」
ケーベス「ちょ、おい⁉︎」
ノール「ストップ。お前の命がいくら永遠とはいっても怪我するのは
目に見えてる。いいからここにいて」
ケーベス「あ、あぁ・・・」
フラット「なんとか見つけれた・・・あとは乗るだけ、ってうわっ⁉︎」
宇宙船を停めていた床が爆発により脆くなり、フラットが宇宙船に
乗り込んだ瞬間崩れてしまった。
フラット「ちょちょ、嘘でしょ⁉︎」
メダイ「!龍変化!」
ちょうどよくやって来たメダイがそれに気づき、力を解放して
すぐに宇宙へと落ちていく宇宙船を掴んだ。
メダイ(絶対・・・離さない!2度目は・・・ない!)
とある記憶がメダイの頭の中を駆け巡る。それはメダイがこの世界線に
流れ着く少し前の話-
メダイ「爺様~?あっ!いた!」
老龍「ん・・・また来たのか」
メダイ「ねぇ、どうやったら私も爺様みたいな龍になれるの?」
老龍「よいしょ・・・言っているだろう。メダイ、お前さんじゃ龍にはなれん。
この地、ドラコメイドの世界に伝わる龍神の力を持ってはいないんだ」
メダイ「でも母様から聞いたもん!龍神の力がなくてもなれるって!」
老龍「ふむぅ・・・なぜそんなに龍になりたいのだ?」
メダイ「あんなバカにさえなれるんだもん!負けたくない!」
老龍「負けたくない・・・か。そうか・・・」
「ギャァァァァ!」
メダイ「⁉︎まさか・・・⁉︎」
老龍「やつら、また来たか!」
その時、ドラコメイドには争いが起こっていた。それは
空の王者、陸の王者、海の王者をかけた戦争。メダイは空の王者の国、
クラウドランに住んでいた。
メダイ「・・・爺様、私、帰ってる!」
老龍「そうするならアヤツを呼べ!」
メダイ「あのバカを⁉︎」
老龍「あぁ」
メダイ「・・・分かりました」
奥歯を噛み締めて、メダイはあの家に帰った。
メダイ「クラワラス~!お呼びがかかったから向かいなさ~い!」
クラワラス「ハイハイ、お呼びな。っしゃあ、行ってやるぜ!」
嬉しそうにクラワラスは家から飛び出して行った。
メダイ「・・・死なないでよ」
その背中を、メダイはただ見送るしかできなかった。
外-
老龍「皆の衆、やつらをこれ以上通すな!食い止めろ!」
龍軍「オーっ!」
クラワラス「お先~っ!」
老龍「なっ、アヤツまたしても!」
メダイ「爺様~!」
老龍「メダイ⁉︎お前さんはここにいても無意味だ、早く逃げなさい!」
メダイ「でも-」
老龍「いいから逃げなさい!」
メダイ「う、うん・・・」
嫌々そうに振り向いて逃げようとした時だった。
クラワラス「ガァァァァァァ!」
メダイ「クラワラス⁉︎」
なんとクラワラスの両翼が剥ぎ取られ、浮島であるクラウドランよりも
外にいたために落ちていった。
メダイ「ダメ!ワープ!」
そう、元々メダイは龍神ではなく、ただの超能力者である人間の流れ者。
家族に血のつながりはなく、ただ引き取ってくれただけだった。
老龍「まったく・・・」
メダイ「クラワラス、踏ん張って!」
クラワラス「ッテェ・・・!クソ!もういい、離せ!」
メダイ「ダメ!だって・・・!」
それはメダイが流れ着いて数日後-
クラワラス「ん?おぉ、お前か!不思議な力を持つやつって!
なぁ見せてくれよ!」
メダイ「ひっ!」
まだ龍族に馴染んでいないメダイにいきなり近づいてしまったために
クラワラスを怖がってしまった。
クラワラス「なんだなんだ、こ~んな弱そうなやつにスゲェ力があるとは
思えねぇなぁ・・・ん?なんだこの柔けぇの」
メダイ「なっ、なっ、なっ・・・どこ触ってんのこのバカ龍~っ⁉︎」
龍にはない女性の胸の膨らみを珍しがって触ったが故にメダイの怒りを
買い、その能力を暴走させてしまった。
回想終了-
メダイ「アンタみたいなバカでも・・・私を仲間みたいに思ってくれたから・・・!
絶対!離したりしない!」
その声虚しく、メダイの腕では限界があった。そしてゆっくりと解かれていく
手はやがて、クラワラスを離してしまった。
メダイ「クラワラス~っ!」
残ったのは、クラワラスの手ににじんでいた彼の血液。その血液を
戸惑うことなくメダイは舐めた。そして-
メダイ「っ⁉︎うっ・・・ガッ、アァぁぁ!」
身体中に熱がほとばしる。頭痛が響き、耳鳴りは絶えず続く。
やがてはメダイの影は、だんだんと龍に化していた。
回想終了-
メダイ(あの時の私とは・・・もう違う!今の私は・・・龍神なんだ!)
宇宙船を掴むメダイの腕力が一気に強まった。
フラット「・・・⁉︎メダイ!」
コータス「おいおい、アイツケーベスにのやつに何言われても
知らんぞ!でも、そんな状況じゃねぇな!妖姿化!」
コータスも戸惑うことなく鬼の姿となり、メダイを手伝おうとした。
しかし-
メダイ「グル!」
コータス「いいってか?分かったよ」
仕方なさそうに妖姿化から元の姿にコータスは戻った。
メダイ(私だけでやるんだ・・・!愛してる人を2度も手離したりしない!)
その思いが更に腕力を強めた。そして-
コータス「おっ、スゲッ!」
フラットを乗せた宇宙船は何とか引き上げられた。
メダイ「・・・ふぅ~!」
コータス「お疲れちゃん。さぁて・・・この傷は直してくれるんだよな?」
メダイ「えぇ~・・・もう無理~!」
フラット「ふぁ~!死ぬかと思った~!」
メダイ「あっ、フラット・・・良かった~‼︎」
フラット「へ⁉︎」
ふらふらと倒れ込むフラットをメダイはすかさず抱きしめた。
メダイ「ねぇ、保留にしてた答え・・・聞かせてよ!」
フラット「えっ・・・今?」
ふとコータスのいた場所をフラットは見返した。
フラット「・・・あれ?」
しかしそこには誰もいなかった。
フラット「・・・メダイ。僕も・・・好きだよ」
ポンとメダイの頭に手を置き、そっと頬にキスをした。それは窓に映る
宇宙に広がる星屑を背景にした中だった。
メダイ「!」
メダイがドラコメイドに流れ着いて少しした頃-
クラワラス「おいメダイ。見てみろ!今日は星屑祭だ、流星群が
多く降り注ぐ日なんだぜ?」
メダイ「スゴォイ!」
メダイ「・・・あの日と・・・同じだ!」
メダイの目には、流れているわけのない星屑が流れて見えた。
あの初恋の日を思い出す度に流していた涙に、初めて温もりがあった。
フラット「さて・・・メダイ。あとはこれを無事に運ぶために・・・
先頭まで飛ばしたいけどいける?」
メダイ「えぇ⁉︎無理だよ!燃料ほんの少ししかないよ!まだバイオマスで
エネルギー生成中だし・・・」
「おい、そこにいる君達!危ないからどきなさい!」
フラット「!この声・・・えっ、何で⁉︎」
窓の外から見えたのはデ・ロワー専用の小型宇宙船だった。
ペーター「なんだ、フラット君とメダイか。何してる?」
メダイ「あっ!じゃあちょうどいいじゃん!」
数分後-
メダイ「うん、問題なし!じゃあ発進してみて!」
ペーター「よし!」
小型宇宙船が発進すると、縄に繋がれたケーベス達の宇宙船も
しっかりとついていくように動いていく。
メダイ「あとはエンジンだけつけて放置でも大丈夫かな!よし、エンジン起動っと!
それじゃ、私達は先に帰ってよっか!」
フラット「その前に、宇宙船掴んでできた傷の治療!また爪こんなにして・・・
折角キレイな爪なんだから大切にしなって」
メダイ「はぁーい」
2人は仲睦まじそうに笑って倉庫車両を後にした。
ペーター「・・・フラット君は幸せな恋を手に入れたよ、カナリア」
バジー「あら?何かおっしゃいました?」
ペーター「いや、なんでも。それじゃとりあえず運転車両はコイツで
代用するよ!バジー、連結作業は任せる!」
バジー「はい、かしこまりましたわ!」
客室-
フラット「ただいま~!」
ノール「切り離し作業も終わったよ」
クレア「お、こっちも避難は終わったぞ~!」
フォール「まったく、フラット。俺は隊長代理じゃないぞ?」
フラット「あぁ、ごめんごめん!」
スラリア「でも様になってたよ?」
フォール「うっせぇ」
ベングル「まっ、あとはあの3人だな!」
ダバンゴ「よっ、今帰ったぜ!」
スレイ「楽しいものだった」
ナックル「何でコイツらあんなに扱い上手いんだ?」
フラット「あ、お疲れ!」
ナックル「おう!あとなぁ、勝手にアレを使うなよ?」
フラット「悪かったって」
メダイ「それよりさ!アレやろ、アレ!」
フラット「あ、やっちゃう?」
「ちょっと待ってください~!」
「オイラ達を置いていくとはどういうことダゾ~⁉︎」
フラット「あ、忘れてた!ごめん!」
アイン「せめてそのアレには参加させてください!」
パルカ「オイラもダゾ!」
フラット「分かった分かった、じゃあ集まって~!」
数分後-
フラット「いい感じ!じゃあ、撮るよ~!」
メダイ「フラットも早く早く!」
フラット「オッケ!よし!じゃあ-」
メダイ「勝利のVサイン-」
フラット「へっ⁉︎」
全員「え~っ⁉︎」
急にフラットを抱き寄せてVサインを送るメダイに全員驚いてしまった。
そんなワンシーンが切り取られてしまった。
フラット「そ、それじゃ帰るよ!僕達の故郷、地球にね!」
ダバンゴ「何だ親分?カッコつけか?」
スレイ「もしくは海賊の真似事か?」
全員「ハハハハ・・・!」
全員の笑い声の中、地球に向けて再出発することを告げるアナウンスが流れていた。
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