第27話ー9節 終わりゆく日差し

ダバンゴ「で?なんだよ」

スラリア「まずは、フラットから話があるから!」

ダバンゴ「親分から・・・?」

フラット「あ、ありがと、スラリア」

スラリア「全然、これぐらい任せてよ!じゃ、あたしは晩御飯に

行ってるからね」

フラット「うん、じゃあ後で」

スラリアは先に会議室から出ていった。

フラット「で、話っていうのはその天命石のこと。その中の旅人の魂を

できればダバンゴにと思ったんだけど・・・」

スラリア「そうそう!あたし達で考えた最善の策だよ!」

ダバンゴ「俺様にかよ⁉︎いいのか⁈」

フラット「うん。ダバンゴになら任せられそう」

スレイ「重大任務だな。頑張れよ」

ダバンゴ「あぁ・・・まあ、親分とアンタがそこまで言うなら・・・

やってやろうじゃねぇの!」

フラット「うん、じゃあその件は決定だね。じゃあ次、スラリアから!」

スラリア「分かった!じゃあ映像、映すね!」

スラリアはリモコンを手にとって、立体映像を映した。それは船で見つけた

テープに残っていたもの。

そこには-


ダバンゴ「よっ!映ってるか?」

ガレイ「お前はいつまでそんな気軽くいる気だ?一応これ、お前が

船長に謝罪するために撮ってるんだぞ?」

ダバンゴ「んなの気にすんなっての!お前だってアイツのこと

最初は盗賊だと思ってたくせに」

ガレイ「あれは・・・仕方ないだろ」

ダバンゴ「それよりも・・・すまないな。親分のこと、裏切っちまうような

真似してよ。ここを去っちまうのは変わらねぇ事実だけどよ、

ガレイがいれば大丈夫だろ?俺様には新しくやらなくちゃならねぇことが

できちまってよ。それが終わったらまた会おうぜ!」

ガレイ「ちょ、おい-」


そこで映像は終わった。

ダバンゴ「今の・・・どこで見つけやがった⁉︎」

スラリア「えっ、あたし達がいた場所・・・」

ダバンゴ「あの野郎、いつ見つけたんだ」

フラット「見つけたって・・・?」

ダバンゴ「捨てたんだ、アンタに見られる前にな。カッコつかねぇだろ?

俺様があんなこと言っちまったら・・・」

スラリア「・・・これ見ても同じこと言えるかな?」

スラリアはスキップを押して次の映像に切り替えた。


スレイ「あ、あー・・・録音できてるか?」

ガレイ「映像付きでな!頼んだ、船長!」

スレイ「ダバンゴ、聞こえてるか?今ここにいるやつらが見えるか?

だったら言う。今どこにいる?元気にやれてるか?なんて、俺から

聞けた台詞じゃないな。でも、たまには帰ってこい。お前は俺よりもずっと

優しくて、カッコいいやつだ!」

バダンダ「あの、ダバンゴさん!いっつも船長があなたのことばっかり

自慢してるんですから!しかも同じ話を何度も!」

トルピア「聞き飽きたからたまにはアンタが話してくれ」

ガレイ「これが俺達の願いだ。皆、アンタに会いたがってる。

帰ってきたらちゃんと話してくれ」

スレイ「調査が終わったら、この映像送れるからな。待ってろよ」


映像はそこでフリーズした。

スレイ「・・・そうだ、この映像を調査終了日の2日前に撮ったんだ!」

ダバンゴ「・・・船長が・・・自慢・・・クッソォ!」

いきなりダバンゴは近くの掃除器具ロッカーを、凹むほど強く殴った。

フラット「ダバンゴ⁉︎」

ダバンゴ「何してんだよ俺様は⁉︎やらなくちゃいけねぇことすら

まともに叶えられずに、ファイターになっても何にもやり切ることもできずに

諦めて・・・!」

今まで何も叶えられなかった自分の無力さに悔し涙を流すダバンゴ。その表情は本当に悔しそうなほど歯を強く食いしばっていた。

スレイ「ダバンゴ・・・安心しろ。お前が俺についてくれたように、

俺もお前のそばにいる。大丈夫だ、俺は他人に染められた色を奪う海賊、

色奪船の船長、スレイだ!」

そう言ってスレイはダバンゴの肩を抱いた。

ダバンゴ「・・・っ!」

スレイ「お前はお前でいればいいさ。俺にやったように、誰かを

笑わせていればいい。無理して強くなれなんて言った覚えは一つもないぞ」

スラリア「・・・一件落着、かな?」

フラット「うん、これで大丈夫そう。じゃ、スラリア。任せた」

スラリア「オッケー!神業・集魂分離!」

天命石の中枢となっている旅人・ミラージュの魂を取り出すために

スラリアは術を使った。

ダバンゴ「うぉっ⁉︎」

スレイ「まぶしっ⁉︎」

弓師「・・・ここは・・・」

スラリア「あっ、天命石が-」

フラット「別にいいよ。天命石は別で見つけよう」

弓師「・・・そうですか。あのサメを倒した・・・私はこの惑星に

調査に来られていた人達に拾われた空樹となった者。あのサメは

ただのサメではありません、あれも魔獣なんです」

フラット「あれも⁉︎」

弓師「あれは、レイン・クロインと呼ばれる海竜です。小魚に化けては

人の前に現れ喰らう化物ですが、私が力を抑え続けていたのです。

しかし、この力ももう限界に近いようで・・・残念ながら自分の魂では

扱いきれぬものになってしまいました。しかし、そこのあなたになら

扱い切れると思います。私の愛弓、瑛駱を差し上げます」

ダバンゴ「お、俺様が弓⁉︎おいおい、何の冗談だ⁉︎」

弓師「冗談ではありません。あなたにはこの使い方を教えなくとも

分かるはずです。試しにお使いください」

弓師が手渡した瑛駱はまるで幽体のように透き通っていたが、

ダバンゴが手にとった瞬間に普通の弓となった。

スラリア「ど、どういうこと⁉︎」

弓師「私達は自分達の武器と共に封印したのです。なのでこんな風に

なっているだけですよ。しかし、こんなにも早くこの瑛駱が

人を認めるとは・・・さぁ、私を射抜いてみなさい!」

ダバンゴ「ハァっ⁉︎」

弓師「大丈夫、やってみなさい!」

ダバンゴ「・・・どうなっても知らねぇからな!」

見よう見まねで矢を放ったダバンゴ。その矢はたしかに弓師の

顔に向かって射られたはず-

が、その矢はなんと、弓師の後ろの壁に刺さっていた。

弓師「・・・ほら、できたじゃないですか」

ダバンゴ「なっ・・・何でこんなに上手く・・・ていうか、何で矢がそこに

刺さってんだ⁉︎たしかにお前めがけてうったぜ⁉︎」

弓師「それがこの私、ミラージュからの試練です。その矢を放った時に

あなたが抱いた感情、忘れてはいけません。それではこの力も共に・・・

雨宮・・・今いくよ。伝授!」

黄緑色の光がダバンゴに入った。

ダバンゴ「スッゲェ・・・!今なら何だってできる気がすんぜ!」

ミラージュ「これで私の役目は終わりです。雨宮にそう伝えておいてください。

私は今、またあの頃に戻れると。だから、あなたも心配はいりません。

必ず仲間というものは待ってくれます」

スレイ「あぁ、迷ってなんかない。もう決めたことだ」

ダバンゴ「この力で叶えられなかったこと叶えてやんぜ!」

スラリア「じゃあ今からはあたしがあなたを冥府まで導きます。。

ついてきてください」

ミラージュ「はい。久々に普通の人間に戻れたのにちょっと残念ですね。

あんなことがなければ・・・」

フラット「えっ?」

ミラージュ「あっと、気にしないでください、今のは独り言です」

スラリア「ま、まぁ、それより早く行かないと!間に合わなくなっちゃいますよ!

三途の川って案外待ってくれないんですから!」

ミラージュ「君、死神?」

スラリア「はい!地獄犬と門番に会うことはないのでご安心ください!」

ミラージュ「エスコートまでしてくれてありがとう、助かります」

スラリア「いえ・・・えへへ」

ミラージュ「私はこれでも元々は王子。天国に行けると嬉しかったりします」

スラリア「やっぱり!王子様ですよね!じゃあまた会えますよ!」

何故かはしゃいでいるスラリアに全員は疑念を抱いた。

スラリア「さっ、今冥府に繋がる扉を開いたので、行きましょう!」

明るい声でスラリアは神力で冥府の門を開き、ミラージュを

中に入れた。

スラリア「あとはまっすぐ進んでください!じゃあ、また~っ!」

相手が王子様であるのにも関わらず、スラリアは大きく手を振って見送った。

スラリア「ウフフ・・・フフッ!」

フラット「ね、ねぇスラリア?」

スラリア「ねぇ、気付いてた⁉︎」

ダバンゴ「何にだよ?」

スラリア「あの人ね、クレアの前世!」

全員「えっ・・・え~~~っ⁉︎」

スラリア「会~っちゃった!あんなに礼儀正しい人が、何をどうしたらあんなに

口調の軽いやつになっちゃうんだか」

スレイ「クレアって、あの金髪のだろ?アイツが・・・王子?」

スラリア「うん、sぷ!」

フラット「えっ、でも・・・おかしくない?だってクレアはもう転生して

あれでしょ?でも前世の魂は・・・」

スラリア「それはそうだけど・・・でもいいじゃん!今はそんなことを

気にしないでさ!」

ダバンゴ「楽観的に捉えられたものでもない気がするんだがな・・・」

フラット「まあ、それで話があってさ。これは明日言うから

今日は解散しよっか」

スラリア「あれ、まだ何かあったっけ?」

フラット「ほら、ダバンゴがまたアカデミー所属企業のどこかに

入らなきゃだしね」

ダバンゴ「そういや親分。ゼウスと大げんかしたってマジか?」

フラット「ま、まあ・・・結局ペーターさんが説得して絶縁も独立も

なかったことになったけどね。僕もついカッとなって言っただけだし、

する気まではなかったよ」

スラリア「姉弟ケンカで絶縁ってのも変な話だけどね。でもそうなるとあたし達も

地球に帰らないとだね」

フラット「そういうこと。だから明後日には帰らないと、と思って」

スレイ「明日はどうする気なんだ?」

フラット「明日は思いっきり遊んで、って感じかな。あ、あとスレイさんは

どうします?ファイターとして活動するか、それとも-」

スレイ「もう決めてある。俺はアイツらを忘れずに生きていくつもりだ。

賊に戻るべきかも考えたが・・・俺はもう一度、1からやり直すことにする。

親も友も失ったやつから孤独を盗む。それができれば、なんだってするつもりだ」

フラット「あ、ならちょっと待って」

スレイの言葉を聞いて、フラットはとある場所に連絡をとった。

「もしもし、こちら浅草消防署」

フラット「・・・ネックフォンだよ?」

「あっ⁉︎すまん!つい癖でな、ハッハッハ!」

フラット「お元気そうで何よりです、ペイロゴンさん」

フラットが電話をかけたのはレスキューファイター、ペイロゴン・バースだった。

ペイロゴン「で、何か用だったか?」

フラット「はい!あの、そちらの孤児院って空きがありますか?」

ペイロゴン「孤児院・・・あぁ!綿毛園のことか!あぁ、空きがあるとも!

なんだ、孤児でもいたのか?」

フラット「えっ、いやえっと!孤児じゃなくって先生の方です!」

ペイロゴン「なんだ、そっちか。まあどちらにしても人数不足だ。

最近は養子になる子が多くて募集はかけてないけどね。まあフラット君は

東京を救ってくれた1番のヒーローだ!断るわけにもいかないな。

よしっ、ソイツ紹介してくれ!」

フラット「はい!実は元海賊、今はホテル営業員のスレイです!」

ペイロゴン「あっちゃ、海賊か・・・隠し通せるか?」

フラット「あ、いや無理なら大丈夫ですよ⁈」

ペイロゴン「それならデ・ロワーの方はどうなんだ?」

フラット「あっちは・・・まあいいかな。うん、そうするよ。

時間貰っちゃってごめんなさい」

ペイロゴン「いや、こっちも力になれずにごめんね、それじゃ」

フラット「いえいえ、それではこちらも失礼しました」

少しトーンを下げた声でフラットは連絡を終えた。

フラット「・・・スレイさん、ごめん。ちょっと難しいかも・・・」

スラリア「えっ、でもデ・ロワーの孤児院って-」

フラット「あそこはダメ!」

スラリア「っ!」

フラット「あ、ごめん・・・それより、どうしようかな・・・」

ダバンゴ「別に孤独を盗めりゃどこでもいいんだろ?」

スレイ「あ、あぁ・・・」

ダバンゴ「だったらよ、俺様もアンタもデ・ロワーに入るぜ!

親分と一緒なら心配無用だぜ?」

フラット「えっ、四大はどうするのさ⁉︎」

ダバンゴ「あっちにはもう戻らねぇ。俺様は親分だけに従うぜ!」

フラット「まあ・・・いいんじゃないかな?ファイター課もあの異変から

オフィス拡張したし、出張依頼も増えたから。ただ、四大よりは

仕事量多いからね!サボったら承知しないよ?」

ダバンゴ「ガッハッハ!それは俺様じゃなくベングルに言えっての!

俺様は賊だ!サボるなんてダセェ真似、するわけねぇだろ!」

スラリア「フォールとは真逆だね・・・」

スレイ「つまり、俺がファイターに・・・?」

フラット「ただ、出張多めでもいい?出張可能なやつが少ないから」

スラリア「あたしとノール、エドだけだもんね」

フラット「僕は隊長だもんで強制出張以外はできないからね」

ダバンゴ「だったら俺様が副隊長にでもなってやろうか?」

フラット「へ?いやいや!四大の中で1番の統率力があるとは

聞いてたけど、流石にそれは僕には決められないよ!」

「いいんじゃないか?」

フラット「へ?」

電子音だったが、たしかにフラットの後ろからあの声が聞こえた。

ペーター「それにダバンゴが帰ってくるんだろ?また世話させてもらうよ」

ダバンゴ「お、流石はペーターだ!分かってるじゃねぇの!」

ペーター「あとスレイは出張業務を多めだね。ハッキリ言って助かるよ。

それじゃ明後日にはこっちに帰ってくるみたいだし、明日は楽しんでね」

スラリア「はぁい!」

フラット「なんかスラリア、急に上機嫌だなぁ」

ペーター「にしても急な連絡はやめてくれよ?驚いたよ」

スラリア「あ、ごめんなさい!」

ペーター「それじゃ俺はいいかな?」

フラット「はい!ありがとうございました!」

ペーター「明日は思う存分楽しんできてね。あとお土産も期待してるからね」

それで連絡は終わった。

スレイ「良いのか?俺なんかがファイターになっても」

フラット「もちろん!」

ダバンゴ「誰にも却下なんかさせねぇぜ!」

フラット「ダバンゴが返事しないでよ!」

スラリア「フフッ、また騒がしくなりそ!」

フラット「たしかに・・・アッハハ!」

全員「アハハハ・・・!」

会議室が笑い声で溢れかえった。


そして翌日は全員、海で泳いだり、お土産を買ったり、服を買ったりと

大はしゃぎして帰りの宇宙船が到着するまでの時間を精一杯楽しんだ。


スラリア「あっ、この服可愛い~っ!」

ヒナ「うわぁ!スンゴイ似合ってるよ~っ!」

クレア「あぁ、メッチャ良い!」

スラリア「これ買っちゃおうかな⁈」

タクマ「おい」

ヒナ「買っちゃおう!」

タクマ「おい!」

スラリア「?」

タクマ「それ、予約済みだぞ」

スラリア「えっ・・・ウッソォォォォォ!」


フラット「ふわぁ・・・そっちどう?」

ラルバ「全然釣れてないですよ~」

デラガ「お前ら、何で釣れてないんだ?」

ビリー「こっちはこんなに獲れてますよ?」

デラガとビリーのバケツは既に魚で溢れかえっていた。

フラット「えぇ~・・・っ⁉︎きた!って重っ⁉︎」

ラルバ「じゃあ手伝います!それっ!」

フラット「ぐっ・・・ハァァァ!」

デラガ「うわっ⁉︎」

重かったせいで獲物は後ろにいたデラガの頭についた。

デラガ「な、何だこれ⁉︎いててて!」

フラット「わわっ、大丈夫⁉︎」

ラルバ「まさかこんなデカいタコが釣れるとは・・・」

巨大ダコの吸盤を剥がそうにもデラガの頭に見事吸着して上手く剥がせなかった。

フラット「こうなったら・・・こうだ!」

仕方なくフラットは神器でうまいこと吸盤を切り落とした。しかし、吸盤に

くっついていたデラガの毛まで剥がれてしまった。

フラット「あっ・・・」

その結果、吸盤のくっついていたデラガの頭はあちこちハゲた。

ラルバ「デ、デラガ・・・ッ!アハハハ!」

ビリー「デラガさん、それは・・・それはアッハハ!」

デラガ「なっ、何なんだよ⁈なんか頭がスゥスゥするが、それと関係してるのか⁉︎」

フラット「関係というか・・・答えというか・・・」

デラガ「本当になんなんだ・・・」

わけも分からずにデラガは水面を見つめた。

フラット「あっ-」

デラガ「なっ・・・ハァァァァァァ⁉︎」


ノール「エアボート持ってきといて良かった」

フォール「にしてもすることねぇな・・・おいダバンゴ、もっと速く泳いでくれよ。

爽快感がねぇと退屈だぞ」

エド「そうっすね~、こうもゆっくりだと爽快感も感じられないっすね」

ダバンゴ「ったく、注文の多い客だぜ!ドウリャアァァァァ!」

ナックル「わっ、ちょ⁉︎いくらなんでも早すぎだぜェェェェ⁉︎ウワァっ!」

フォール「ヒュー!最っ高だ~っ!」

エド「ちょっ、前、前~っ!」

目の前にはたくさんの観光客がいた。

ダバンゴ「うおっと!ちと揺れるぜ?」

ノール「揺れるって・・・ワァ⁉︎」

ダバンゴは海水浴に来ている客の間を通ってUターンした。

ナックル「どわぁ⁉︎」

フォール「ちょ、おい⁉︎」


スラリア「?何この声・・・あっ!」

クレア「ヒヤァァ、良いもんだなぁ」

タクマ「いやいやいや!危ねぇから!」


ノール「キャァァァ!」

揺れに耐えきれず、ノールはエアボートから落ちた。

ナックル「ヤベっ!ノール!」

落ちたノールを助けるためにナックルは自ら飛び降りた。

ノール「ちょ、ここ深-!」

既に浅瀬から抜け出していたためにノールはジタバタと浮くしか

手段はなかった。そうしてるうちにノールの足がつってしまった。

ナックル「なっ、まずい!ノール!」

なんとかノールを救ったとナックルは思った。しかしその手にあったのは

リボンの付いた黒色の物だけだった。

ダバンゴ「おい、大丈夫・・・おいタイガー・・・?」

ナックル「こ、これは誤解だ!俺はただノールを-」

ノール「言い訳よりも・・・返せェェェェ!」


宇宙港-

クレア「本当だったらあと1週間はあったのによ~」

ケーベス「な、なんとか宇宙船の整備終わった~!」

メダイ「でも燃料が尽きちゃったね・・・」

スター「3人ともいないと思ったら最後の最後まで整備してたんだ・・・」

フォール「でもよ・・・ックク!あれは傑作だったなぁ!アッハハ!」

ノール「フォール?笑うのも同罪と見なすけど?」

フラット「あのさ・・・何でバトラー、傷だらけなの?」

ノール「・・・私の・・・水着剥いだから」

全員「・・・へ?」

スラリア「ち、違うよ!ノールが海で足つって溺れかけたから

なっくんが助けようとしたらノールの水着を剥いじゃって・・・」

フォール「でもよ・・・ックク!あの時のナックラーの反応ときたら・・・

笑うほかねぇっての!」

エド「そろそろコイツ、笑い死ぬんじゃないっすか?」

コータス「おい、もうそろそろ行くぞ。とっくに宇宙船到着してるぞ」

フラット「あ、それもそうだね。よいしょっと・・・」

ノール「なっ、お前どんだけ買ってんだ⁉︎」

フラットの荷物は今にもキャリーケースがはち切れそうなほどだった。

フラット「あ、これ?お土産買ったら、こんなに。ハハハ!」

ノール「いやハハハじゃなくて・・・まだお金残ってる?」

フラット「12オズ」

ノール「・・・ん?」

フラット「残金は12オズだよ」

ノール「・・・え~と聞き間違いかな?」

フラット「はいこれ。僕の残高」

フラットはウォッチフォンの残高確認アプリをノールに見せた。

ノール「・・・12・・・オズ?えっ?手持ちじゃなくて、残高?えっ?

待って?・・・えっ?」

フラット「はいはい、それじゃ宇宙船乗ろうか!」

ノール「・・・えっ?」

全員がさっさと宇宙船に向かう中、ノールは現実においても距離においても

1人置いてかれていた。


宇宙船-

フラット「いやぁ、まさかノールがあんなに信じるとは思ってなかったよ」

ノール「全く、変な冗談はやめて」

フラット「うん・・・ここまでされたらやめるよ」

フラットの服にはノールのナイフ型神器が刺さっていた。

ノール「まあ爆発はしないしケガをすることもないから」

ダバンゴ「あっ!ようやく来たか!」

スレイ「何で集合時間を決めたフラット君が後から来るんだ?」

フラット「?集合時間は宇宙船の到着時刻より5分前だけど・・・」

スレイ「ん?いや、ダバンゴからは15分前と聞いていたが」

ケーベス「聞き間違えたか?」

ダバンゴ「・・・え~ってとな・・・」

スレイ「ほう・・・俺はなぁ、時間を無駄にさせられるのが1番大っ嫌いなんだよぉ?

それはお前がよ~く分かってるよな?」

ダバンゴ「わ、悪かったって!頼む!許してくれ!」

スレイ「・・・ダメだ。罰として・・・」

ダバンゴ「マジかよ~っ!」

ゆっくりと近づいてくるスレイに、ダバンゴは息を呑んだ。

スレイ「罰として、コイツを食ってもらう」

そう言って、スレイはダバンゴに紙で包まれた何かを渡した。

ダバンゴ「な、何だこれ・・・?」

その包みを開けると、異臭を放つ饅頭のような菓子があった。

ダバンゴ「っ⁉︎クッセエ⁉︎何だこれ⁉︎」

スレイ「笹の葉を酒漬けにして、それにシャケの燻製を包み、

発酵させたもち米で作った饅頭だ」

ダバンゴ「うっ・・・食わなきゃダメか?」

スレイ「食わないならアレだが?」

ダバンゴ「それだけは勘弁だぜ⁉︎しゃらくせぇ!食ってやらあ!」

ソレを口に放り込んだダバンゴ。そして-

ダバンゴ「っ⁉︎」

毒殺されたようにダバンゴは倒れた。

スレイ「ハハッ、ったく・・・演技も甚だしいぞ」

ダバンゴ「・・・ちぇっ、バレたか」

スレイ「そんなものを作るわけないだろ勿体ない」

ダバンゴ「普通の饅頭だったから怖かったぜ・・・」

アナウンス「間もなく地球行きのスペーストレイン、発車します。

お立ちのお客様は、お手数お掛け致しますが客室に戻り、お座りしてください」

フラット「じゃあ一旦解散だね、また後で」

全員「はーい」

アナウンスが流れて全員は各々の客室に戻っていった。


数時間後-

フラット「そうそう!でさ-」

ジリリリリリリリ!(緊急停車のベル)

クレア「な、なんだ⁉︎」

アナウンス「皆様。当機はただいま異常が確認されましたので

緊急停車しました。お忙しい中申し訳ございませんが、しばらくお待ちください」

ノール「異常って・・・?」

スラリア「普通、スペーストレインの異常発生なら電気も止まるよね?」

ケーベス「・・・いや、見てみろよこれ」

タブレットに表示されていたあるデータを、ケーベスは全員に見せた。

フォール「・・・これはここのエネルギー量か?」

メダイ「えっ⁉︎待って待って、だんだん吸われてない⁈」

メダイの言った通り、スペーストレインのエネルギーが段々少なくなっていた。

宇宙を駆けるわけだからエネルギーを消費するのは当然なのだが、

それでも普通なら1時間でようやく目視でエネルギー消費に

気づくはずなのだが、たった30秒も経たずして目視で分かるほど早く

残量ゲージが減ったのである。

コータス「それどころじゃねぇな。早くこれを動かせねぇと、

まずいことになるぞ」

エド「まずいことってなんすか⁉︎」

コータス「見てみな。次元数値が暴走してる。てことはだ、ゲートが

開くってわけだ。これが何を意味するか、分かるだろ?」

フォール「なるほどな。スペースアリジゴクか」

ナックル「なっ・・・!」

その事象はナックルにとって2度目のことだった。

ダバンゴ「ったく、こうなったら俺様が動いてやるぜ!」

運転車両の方へとダバンゴは全速力で向かっていった。

スレイ「おい!俺はアイツを追う!」

フラット「うん、お願い!」

スレイはダバンゴを追いかけていった。

フラット「さて・・・スペースアリジゴクか・・・どうしよっかな」

クレア「宇宙空間で戦闘なんかできるわけねぇしな・・・」

フラット「とりあえず乗客を先頭車両の方に集めよう!」


クレア「おい!ここにいたら危険だ、先頭車両の方に行け!」

スラリア「命に関わることじゃないけど、早く!」

フラット「先頭車両にいれば安全は確実なのでお願いします!」

スター「そういえば、ダバンゴ達は何してるんだろ?」

フラット「そうだった!ちょっとここは任せるよ!」

2人のことを思い出し、フラットは運転車両の方に向かっていった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る