第27話ー8節 ノスタルジア

1班-

クレア「おいおいおい、魚が・・・⁉︎」

エド「だから言ったじゃないっすか」

ベングル「でもよ!ここまで沈んだ時は普通に泳いでただろ⁈」

エド「多分、そのホワイトブラウンっすね。ホワイトブラウンは

神力を保存できる代物っす。その中にある神力がここら辺の時空を

歪めているのかもしれないっすよ」

クレア「そういうことか・・・じゃあスレイの仲間の誰かが時空を

操れたってわけか。スゲェ力だな」

ベングル「つまりは収穫はあったってわけか。よし、そうと分かれば戻るぞ!

やっと遊べるぜ!」

エド「そうっすね!」


2班-

ノール「こっちは探索終わりか」

ナックル「な?足枷にはならなかっただろ?」

ビリー「いや・・・船が半壊したんですけど⁉︎」

ラルバ「あんな強引にやるからですよ・・・」


遡ること数分前-

ラルバ「ノールさん!1人での行動は危険ですって!」

ノール「・・・来てくれたんだ、ありがとう」

ラルバ「当たり前ですよ!これでも刑事ですから!」

ノール「これでもって、自覚はあるんだ」

ラルバ「ウグゥ、それは・・・」

ノール「もう反論なしかい。警察官なんだからちょっとは粘ってよ。

取り調べの時どうすんの?」

ラルバ「デラガと同じこと言わないでくださいよ~!」

ノール「フフッ・・・アハハハ!やっぱり言われてるんだ」

ラルバ「それより早く戻りますよ!ここ、男子トイレですよ?」

ノール「え・・・」

気を散らかしていたノールは自分が入った場所をよく確認していなかった。

ノール「い、いくら廃船とはいっても男子トイレに入るとは・・・

私も情け無い」

ラルバ「じゃあ戻ってください。本官も合流したいですし」

ノール「分かったよ。バカ虎と行動なんて本当は勘弁だけど」

ラルバ「そう言って笑ってると誤解招きますよ?」

ノール「誤解って・・・そんなわけないでしょ!」

ナックル「大声で叫んでんじゃねぇよ。それに作戦中だぞ、死語は慎め」

ラルバ「えっ・・・ナックルさん・・・ですよね?」

ナックル「おいおい、ラルバ。お前いよいよイカれたか?」

ビリー「どうしたんですか?」

ノール「いやいや、私の知ってるバカ虎とは全然違うし。そんな隊長気取りなことを

するようなやつじゃ・・・まさか、私が隊長やってんのが納得いってないってわけ⁈」

ナックル「ちょ、流石に疑いすぎだっつの!ったく・・・」

ラルバ「だって今までそんな姿勢とは逆に行動ばかりしてきてたので・・・

でも、それはそれでいいんじゃないですか?」

ノール「ま、まぁ、いいんじゃない?私じゃ評価できないけど」 

ビリー「それよりも・・・何か収穫を得ないと」

ラルバ「そ、そうですね・・・」

ナックル「にしても、あっちこっち瓦礫だらけで探すのも一苦労だぞ」

ノール「?この瓦礫の下に何か挟まってる・・・」

ナックル「お、なら俺に任せとけ!ぐっ・・・こんのおぉっ!」

馬鹿力で瓦礫を持ち上げたナックル。しかしその傾きで瓦礫が

支えていた、崩れそうな屋根が落ちた。

ノール「えっ、ちょっ⁉︎」

ラルバ「か、神業・弾包!」

慌ててラルバが銃型神器から放った弾が瓦礫と屋根を包み込んだ。

ノール「た、助かった・・・」

それでも一瞬でしか神力を注入できなかったために、銃弾から弾けてできた結界も

既に限界を迎えていた。

ラルバ「ノールさん、早くこっち!」

ノール「ヤバっ、うん!」

それに咄嗟に気付いたラルバの指示に従い、ノールは慌てて

その場から離れた。

ナックル「その前に、よっと!」

ノールが見つけたソレをナックルは取った。その瞬間、結界が

いよいよ圧に耐えきれず、瓦礫の山がナックルに近づいた。

ラルバ「ナ、ナックラーさん⁉︎」

ビリー「神業・確保!」

手錠型の神器でビリーはナックルを拘束し、間一髪のところで救出した。


ラルバ「で、結局は何だったんですか?」

ナックル「何かのイエローテープだな。まだ破損はしてなさそうだ」

ノール「まあ、いつものバカ虎らしいけどさ・・・無茶しないこと!いい⁈

フラットを2回も悲しませたら、お前の骨をミクロサイズまで

破壊するから!」

ビリー「ヒエっ」

ナックル「何でお前が怖がるんだよ?まあ分かってるぜ、安心しな。

誰も悲しませたりしねぇよ。俺がお前らを守って、お前らが

俺を守る。違うか?」

ノール「・・・ハァ」

呆れたようなため息をしつつも、ノールの瞳はどこか切なそうだった。

ラルバ「じゃあ本官達の任務は終わりましたし、遊んじゃいましょっか!」

ビリー「はい!遊びたいです!」

ナックル「急に騒がしくなるやつだな・・・よし!俺も遊ぶぞ!」

ノール「任務が終わったしね。遊んでも怒られないでしょ」

4人は勢いよく船から出ていった。


3班-

コータス「まっ、このコータス様にかかればこんなもんよ!」

デラガ「だがその賊はゴスペル結晶石なんて使って何をするつもりだったんだ?

今じゃ使い道なんてないだろうに」

ケーベス「アンタ、警察やってんのに何にも知らないんだな。

ゴスペル結晶石は結構な金になる。それが目的だろ」

メダイ「ちょっと!ダメだよ、そんな挑発的に言っちゃ!」

デラガ「あぁ、気にしなくていいさ。俺もこういう時に警察官として

行動はしたくない。今はファイターだ」

メダイ「お堅い人だねぇ、もっと気楽にやろ?」

デラガ「俺は別に・・・とりあえず収穫があったなら帰ってよしだ、

先に帰ってるぞ」

ケーベス「んじゃ、俺も整備するとすっか」

コータス「俺はこのゴスペル結晶石を調べるか」

メダイ「あ、じゃあ私は皆を待ってるよ」

コータス「・・・なんだ?石が急に・・・うわぁ⁉︎」

いきなり数多もの光が石から飛び出して海の中へと伸びていった。

コータス「な、なんだ⁈」


4班-

タクマ「ふぅ、ここまで来ればもう大丈夫か」

ヒナ「スキあり!それ!」

タクマ「ドワっ⁉︎」

待機船に1番に帰ってきたはずのタクマを、水中から飛んで戻って来たヒナが

背中を強く押した。

ヒナ「よしっ、仕返し完了!」

タクマ「プハァ!おい、危ねぇだろ!」

ヒナ「怪我しないようにちゃんと気をつけたもん!」

タクマ「いや、そうじゃなくてだな・・・ったく」

スラリア「ふぅ!ねぇ、フォール見てない⁉︎」

タクマ「フォール~?見てねぇけど?」

ヒナ「一緒じゃないの?」

スラリア「どっか行っちゃったんだよ~!」

タクマ「どうせアイツのことだ、深海の闇に紛れてどっか行ったんだろ」

スラリア「だったら良いんだけど・・・」


一方その頃-

フォール「プヒィ~!もう一杯!」

店主「あいよ、あんさんよく飲むねぇ」

フォール(いやぁ、新しい神業、シャドウボディ、便利だな)

シャドウボディ、それは闇で自分の分身を作り、なおかつ意識さえ

コントロールできる神業である。

フォール「このおかげで、これからは楽に酒が-」

「お酒が、何だって?」

フォール「ん?楽に飲めるって-⁉︎」

後ろから聞こえた声にフォールはグラスを手から落とした。

フォール「えっ・・・何でお前が⁉︎」

フラット「いちゃ悪かった?全く、一仕事終えて集合しようと

思ったら1人サボってこんな時間から飲んだくれて・・・」

フォール「あ~・・・シャドウボ-」

フラット「強制リセット!全く、じゃあ支払いは任せるとして・・・

大変だったんだよ~?」

フォール「何があったんだよ」

フラット「いやぁ・・・もう色々と」


それは海中でのこと-

フラット「な、何とか海中ドローンモードで映像は押さえられてるけど・・・

問題は電波か・・・」

ダバンゴ「親分!全然支援力こねぇぞ!」

フラット「ちょっと待って!えっと・・・しょうがない、このアンテナ、

まだ使えるかな⁈」

船についていたアンテナを一か八か操作してみることにしたフラット。

やはりボタン操作ではビクとも動きはしなかった。

フラット「でも、電波は受信してるなら!ここを・・・!」

スレイ「っ⁉︎まずい!」

アイン「任せてください!パルカ!」

パルカ「ガッテンダゾ!バウト・ポイズンサーベル!」

異世界モンスター「グギュッ⁉︎」

パルカの噛んだ傷跡から徐々に毒が内攻していく。その毒が

体内に回るにつれ、異世界モンスターは苦しみ、海中を足掻きに足掻いた。

アイン「なら・・・トドメ!川流斬-」

異世界モンスター「ジャオォ!」

しかし異世界モンスターの傷が一瞬で癒えた。

アイン「なっ、自己再生⁉︎」

ダバンゴ「流石は魚だぜ、傷の治りが早ぇ!」

フラット「よし!接続完了!あとは電波を拾えれば-」

異世界モンスター「ガララ!」

受信している電波を拡張しようとするフラットを見つけ、異世界モンスターは

船に勢いをつけて突進した。

フラット「うわぁ!」

その衝撃でアンテナは船から落ちてしまった。

ダバンゴ「親分⁉︎」

スレイ「支援力などなくとも・・・倒してみせる!俺が見える全てを

今一度形にしてくれる!第一色彩『零』術・『#虹瀧__こうそう__#凪払』!」

異世界モンスター「ギャジュゥ⁉︎」

何度も突進を繰り返す異世界モンスターの腹に槍型神器を神力と共に

凪払った。槍先からは七色の光が放たれ、異世界モンスターへ

一筋に突き刺さっていく。

フラット「うっ・・・支援力が・・・⁉︎減ってない⁉︎」

ダバンゴ「なっ、減ってない⁉︎そんなわけないだろ⁉︎」

フラット「それどころか・・・増えてる!」

アイン「・・・あ!あそこです!」

アインはあるものを見つけた。それは遠くの方から伸びてくる、

数多もの光。それは-

ダバンゴ「おいおい、さっきアンタが放ったやつと同じやつだぜ⁉︎」

そう、先程スレイが放った光と同じ色をした光の筋が伸びてきたのだ。

スレイ「・・・元々、この神業はアイツらで生み出したものだ。

使えぬと思っていたが・・・そうか。使えるんだな・・・」

何かを噛み締めるかのようにスレイはそう呟く。そしてその光が

フラットのいる第一車両を包み込んだ。

フラット「えっ・・・ウソ⁉︎支援力が・・・!」

なんと支援力の数値が∞となっていた。

フラット「どういうこと・・・⁉︎」

パルカ「それは支援力じゃナイゾ!」

アイン「きっとそれは、ゴスペル結晶石と共鳴した魂です!」

フラット「ゴスペル結晶石って・・・まさか!」

パルカ「神器の基盤になってる石のことダゾ!」

フラット「うん・・・でも、これでいける!」

ダバンゴ「よっしゃ!いくぜ、親分!」

スレイ「俺も行く。アイツらを・・・忘れないためにも!」

アイン「僕達は支援にまわります!」

パルカ「オイラはご主人に従うまでダゾ!」

フラット「よし、いくよ!絶対に勝つこと!忘れずに、生きるためにも!」

ダバンゴ「ガッテンだぜ、親分!」

スレイ「あぁ、俺は生きる!もう迷いはしない!」

フラット「戦闘開始!」

ダバンゴ「どうりゃあ!さっきまではよくも暴れてくれたな!

今度はこっちの番だぜ!第一遊泳『闇之』術・『深海#謎泳路__えいろ__#之リンチ』!」

ガスペラス人ならではの泳法で泳いでは異世界モンスターを

タコ殴りにしていくダバンゴ。しかし、神力で辺りを暗くしているために

異世界モンスタも更にはその場にいるファイターにさえも彼の姿を

捉えることはできなかった。しかし、スレイには見えていた。

必死になって戦う彼の顔までをも。

スレイ「・・・ハッ!」

そんなダバンゴを見て、スレイも飛び出した。

スレイ「俺は、1人じゃない!マレーゴン・・・」


マレーゴンと出会った日-

スレイ「調査だと生存者は・・・!」

マレーゴン「く・・・い・・・もん・・・!」

スレイ「おい、大丈夫か⁉︎」


スレイ「サギュー・・・」


サギューと出会った日-

スレイ「おい、そろそろ行くぞ!調査も終わったしな・・・?」

ふと真上の崖の方を見たスレイ。そこには呆然と立ち尽くす誰かがいた。

そして、体を前に倒した。

スレイ「なっ、危ねぇ!」

ちょうど近くにいたために、危機一髪で受け止めたスレイ。

スレイ「何やってるバカ!」


スレイ「トルピア・・・」


トルピアと出会った日-

スレイ「ダバンゴ・・・行っちまったか」

少し寂しそうな顔をして、空の彼方へ飛んでいく船を見つめいたスレイ。

そして、ゆっくりと振り向き、船へと戻った。


スレイ「さて、それで大丈夫か?」

トルピア「・・・」

スレイ「記憶喪失か・・・辛いよな。安心しろ、俺が寄り添ってやる!」


スレイ「バダンダ・・・」


バダンダと出会った日-

スレイ「ここにも誰かがいた形跡があるんだよな・・・おい、誰かいるのか~?」

バダンダ「わぁぁ!」

スレイ「うわぁ!な、なんだ?」

バダンダ「ひっ・・・怖い・・・」

スレイ「マジか、対人恐怖症かな?」


スレイ「ガレイ・・・」


そして、ガレイと出会った日-

スレイ「まさか故郷が1番最初の仕事場か・・・ん?」

ガレイ「隙アリィィィィ!」

スレイ「わわわっ!いきなりなんだ⁉︎」

ガレイ「こっちのセリフだ、盗賊め!」


スレイ「皆・・・いい思い出だ!だから俺は生きる!アイツらに

また笑って会うためにも!彩れ、『色彩之正翼』!」

ダバンゴ「なっ、マジかよ!人工じゃねぇのか⁉︎」

スレイ「見せてやるさ、俺の思いを・・・俺の見てきた色ってやつを!」

異世界モンスター「グルル・・・!ガァァァァァァ!」

ダバンゴ「しまっ、避けろ!」

つい動きを止めてしまったダバンゴの隙をつき、異世界モンスターは

スレイへと勢いよく突っ込んでいく。

スレイ「マレーゴン、サギュー、トルピア、バダンダ、ガレイ・・・俺は

忘れやしない。必ず、会うぞ!

最終色彩『光沢』術・『エターナルフリーズメモリアル』!」

氷のように固まり、槍のように鋭く尖った七色の光が異世界モンスターを

真っ二つにしていく。

フラット「か・・・勝った!戦闘モード接続終了!」

ダバンゴ「スゲェ・・・やりやがったぜ!」

その瞬間だった。

シャン!(船を包んでいた光が弾けた音)

船を包む光が粒子状になって海中に溶け始めた。

スレイ「・・・そうか・・・逝っちまうんだな」

ガレイ「あぁ・・・俺達が仕掛けた術も終わりだな。船長、本当にありがとうな」

スレイ「あぁ・・・マレーゴン・・・」


マレーゴン「これからはまた好きなだけ食いもんが食える!

生きてるっていいことだな!」


スレイ「サギュー・・・」


サギュー「私しか生き残れなくて・・・もう意味なんかないと思ってたけど・・・

あった。船長、生きてるうちにいいことって、本当にあるんだね」


スレイ「トルピア・・・」


トルピア「記憶は無くなっちまったけどよ・・・船長といれるなら

また楽しい思い出が出来そうな気がすんぜ!決めた、俺は船長と、コイツらと

生き続ける!よろしくな!」


スレイ「バダンダ・・・」


バダンダ「あ、あの・・・怖いですけど・・・頑張ってみます!僕だって、

一応・・・男だから!」


スレイ「ガレイ・・・」


ガレイ「疑って悪かったな。アンタにはこの文字をやろう。

アンタなら分かるだろ?じゃ、よろしくな」


スレイ「そうか・・・アイツらとは会えないのか・・・」

ダバンゴ「・・・しょうがねぇなぁ、船長!俺様が残ってるだろうが!

忘れんじゃねぇよ、ヒデェやつだな」

スレイの右肩に肩を置き、励ますように笑顔で冗談混じりの声で

ダバンゴはそう言った。

スレイ「ダバンゴ・・・あぁ、俺は酷いやつだな、アッハハ!」

ダバンゴ「・・・」

(俺様にはこんなことしかできねぇからよ・・・待っててくれよな、

頼りねぇ船長だけどよ)

スレイ「おい、見えてるぞ」

ダバンゴ「げっ・・・」

スレイ「ありがとな」

ダバンゴ「・・・あ?」

スレイ「お前のおかげで・・・生きようと思えた。それはそうと・・・

寂しいな。お前もそうだろ?」

ダバンゴ「・・・いいや、俺様はそんなに寂しくないぜ。アイツらとは

そんなに触れ合えてねぇからな・・・なんて、冗談いう空気じゃねぇか。

でも、よ、俺様には大切なものがまだ残ってんだぜ、泣くわけには

いかないのよ!」

スレイ「大切な・・・もの?」

ダバンゴ「おっと、もうすぐ終わっちまうぞ。何か言うことは

ねぇのか?今しかねぇぞ」

スレイ「・・・」

そっと瞼を閉ざして、あの5人のことを思い出すスレイ。


マレーゴン「船長、飯だぜ!」

サギュー「船長、起きて!」

トルピア「船長のせいで恥かいちまった!」

バダンダ「船長、僕に任せてください!」

ガレイ「船長、たまには休んどけよな」


スレイ「・・・あぁ、忘れないとも!生きて、覚えといてやる!

だから勝手に戻ってくんなよ!お前らのワガママをずっと叶えてきたんだ!

これぐらいの言うこと、聞けるよな⁈」

その光はイエッサーと答えるように瞬いた。そしてイルミネーションのように

フツフツと光は消えていった。

アイン「終わりましたね・・・」

パルカ「これで全部終わったのカ?」

フラット「うん。じゃあ戻ろっか!これで・・・いいよね」

ガレイ「じゃあ俺も逝くとすっか。ありがとな」

フラット「あっ、待って!その石の中に魂がいくつもあるって本当⁉︎」

ガレイ「あ、あぁ・・・それがどうした?」

フラット「どういう原理か分かったら教えてほしいんだ!」

ガレイ「それならミラージュさんの魂か?なんでもバケモノ封印を

してたやつらの仲間だとか・・・」

フラット「それって・・・ありがとう、教えてくれて」

ガレイ「いや、最後に誰かの役に立てたなら良かった。あと船長、

体に気をつけてな。もし無茶したら帰ってくるからな!じゃあな!」

天命石の中から一つの魂が抜け出した。海中でさっきの光と同じく

粒子状に分解されては溶けていく。

スレイ「色奪船の絶対3条、一つ!涙は見せないこと!」

ダバンゴ「船長・・・!分かった、やってやろうじゃねぇの!

一つ、出逢いに感謝すること!」

スレイ&ダバンゴ「一つ!別れの時には大きく手を振ること!」

ガレイの魂がその声に振り返った。そして2人が肩を組んで自分に向かって

手を振っているのをたしかに見届けた。その一瞬だけ、魂がこぼす光が

スレイには涙にも見えたような気がした。

スレイ「・・・元気でな。ケンカすんじゃねぇぞ!」

その言葉を最後に、ガレイの魂は完全に浄化した。

ダバンゴ「安心しな、アイツらのことだ。元気にケンカでもするだろうよ」

スレイ「だな。よし、俺達も帰るとするか!」


フラット「てことがあってさ」

フォール「大変だったんだな。じゃあその疲れを労うためにも、

マスター!コイツにも一杯!」

フラット「ちょっ⁉︎」

フォール「な~に、俺の奢りだ!今日ぐらいは飲んどけ!」

フラット「もう・・・ありがと」

フォール「礼はいらねぇさ、俺も今日ぐらいは誰かと飲みたくてな。

ち~っと考え事してたからな」

フラット「考え事?」

フォール「俺さ・・・お前らを裏切り続けてたらどうなってたんだろうってな。

もしお前が俺を見限ってたら・・・怖くてな。あの時の俺は一体何が

したかったんだって思っちまってよ」

フラット「・・・何バカ言ってんの」

フォール「なっ、俺は真剣に考えて-」

フラット「見限るわけがないでしょ!たとえどんなに世界が分岐点で

溢れていたとしても、僕は絶対に友達を見限ったりしない!

これは100%!分岐なんて起こしたりしない!迷うわけないから!」

フォール「フラット・・・アッハハ!そんな真面目な顔して言うなよ、

冗談に決まってるだろ?俺がそんなこと本気で言ったと思ったか?」

フラット「なっ・・・じゃあマスター!この店で1番高いワインお願いします!

コイツが飲んでみたいって!」

マスター「あいよ!ちょっと待っててくれ~!」

フォール「おまっ、まさかそれ俺が⁉︎」

フラット「うん!ウン10万円のワイン、楽しんでね!」

マスター「お先にそちらの方にワイン。それではしばしお待ちを。

あのワインは、高級ブドウで有名なフィヤーセⅣ星から仕入れた54年ものです。

いやぁ、まさか開ける日が来るとは・・・」

フラット「それって天然物ですよね?」

マスター「もちろん!科学の力で貯蔵なんてしたところで天然物より

苦労しないだけで香りも風味も全然ないんですから」

フラット「ですよね、じゃあフォール、支払いありがとね~!」

フォール「ちょっ、おい!一体いくらに・・・」

フラット「天然物なら・・・しかもフィヤーセⅣ星のブドウなら・・・

そうだね、ウン10万円じゃなくて、ウン100万円かな?」

フォール「えっ・・・ちょちょ⁉︎」

フラット「冗談だよ冗談!アッハハ!まあファイターだし・・・ね?

経済支援で有名度は増すかもね?」

フォール「おまっ・・・有名度?」

フラット「よいしょっと。じゃ、フォールの奢りはさっきの高級ワインってことで、

こっちは僕が払っておくから。じゃ、また-」

マスター「お待たせしました、こちらフィヤーセⅣ星産の最高級ワインになります。

あとお客様、こちらにもう2人ほどお客様が来られますがよろしいでしょうか?」

フラット「えっ?」

「ったく、何で俺様まで・・・」

「まあいいじゃないか。たまには息抜きに・・・な?」

フラット「2人まで⁉︎」

ダバンゴ「親分、違うぜ⁉︎俺様はただコイツに無理矢理-」

スレイ「ほぉう、一応はお前の船長でもあった俺をコイツ呼ばわりするほど

お前は俺より上になったんだなぁ」

ダバンゴ「ったりまえよ!俺様は四大・水の長にまで上り詰めたんだ!

アンタよりも実力者ってわけだぜ!」

スレイ「そうか。やっぱりお前は俺より上に行くんだな」

ダバンゴ「何言ってやがる。アンタがいなきゃ、俺様はここに

いなかったぜ。アンタと出会って、俺様は生きようと初めて思えた。

何でか教えてやろうか?」

フラット「へぇ、聞いてみたいね」

ダバンゴ「親分が答えんじゃねぇよ!ったく・・・まっ、親分が

聞きてぇなら話さんわけにもいかねぇか。あれはアンタが俺様のとこに

きたばっかの時の話だ」


回想-

ダバンゴ「ふぃ~、船の点検終わりっと!」

スレイ「ダバンゴさん、船、点検、お疲れ様、です」

ダバンゴ「おっ、いい感じじゃねぇの!言葉、理解できてきたか?」

スレイ「はい、おかげさま、です!」

ダバンゴ「ガッハッハ!いい笑顔するようになってきたじゃねぇの!

よっしゃ、気合い入れて出航準備整えるぜ!」

スレイ「はい!」

ダバンゴ「だぁら、はいじゃなくてイエッサー!」

スレイ「そう、でした。イェッサー!」

ダバンゴ「何でイェになっちまうかなぁ?」


回想終了-

ダバンゴ「俺様は弟のためだけに生きようと思って仕方なかった。

弟のために生きて、死んでいくだけだとな。でもアンタが俺様に

新しい生きる意味を教えてくれたんだぜ。なのに・・・親分のことを

考えてなかったな。自分のことしか考えられてなかった・・・タクマのやつも

同じだ。でもよ、親分。許してくれて・・・ありがとな!」

感謝と共にダバンゴは泣いた。思わずフラットは-

フラット「ダバンゴ・・・もう、何泣いてんのさ!元気出せって!」

と、またダバンゴのウロコを強く叩いた。

フラット「イッテェ!」

ダバンゴ「・・・ワッハッハ!ガーッハッハッハ!バカでぇ、何やってんだよ!

学習能力0かよ!」

フラット「なっ、違うし!今のはその・・・間違っただけだよ!」

フォール「・・・フラット、ありがとよ」

フラット「ちょ、フォールまで何⁉︎」

スレイ「俺からも言わせてくれ。ありがとう」

フラット「ちょ、皆して⁈何、なんか変だよ⁉︎」

あまりに感謝されて戸惑うフラット。それを茶化すように-

フォール「本当にありがとな!」

ダバンゴ「親分、恩に切るぜ!」

スレイ「フラット君がいてくれたおかげだ」

フラット「ちょっと、何々⁉︎」

しばらくの間、フラットは#弄__もてあそ__#ばれた。


その夜-

スレイ「・・・」

海中を漂うウミボタルが月光を反射し始めたのをスレイは1人、

イアリングを手に持ちながらベランダで眺めていた。

ダバンゴ「おっと、アンタも見にきてたのか」

スレイ「ダバンゴか。やっぱり綺麗だな」

ダバンゴ「だろ?最初は新・ギヴァシュ計画なんて反対だったんだがな。

できてみりゃあ計画書に描いてあったようなモノとは大違いで

元々のギヴァシュとほぼ同じで良かったぜ。もし全然違ったら

俺様がぶっ壊してたぜ」

スレイ「こらこら、それじゃ犯罪だぞ」

ダバンゴ「今のは冗談に決まってるだろ、本当に鈍いやつだな、アンタは」

スレイ「アッハハ、アイツらにもよく言われたな」

ダバンゴ「・・・なぁ、その天命石はアンタが持ってるべきだぜ。

なにせ、ガレイがアンタを導いてきた物だ」

スレイ「あぁ、分かっているとも。ただな、俺が持っていたところで

この中にいる旅人って存在が必要なんだろ?」

ダバンゴ「親分の話だとな。でもどうやって抜け出させるんだよ」

スレイ「そんなの、当の本人に聞くのが1番だろうな」

ダバンゴ「それもそうか。じゃ、聞きに行こうぜ」

「その必要はないよ」

ダバンゴ「ワヒャァ⁉︎だ、誰だ⁉︎」

スラリア「フフッ、案外ダバンゴって臆病?」

ダバンゴ「なっ、チッと驚いただけだ!」

スラリア「まぁ、それよりも、これ!」

そう言ってスラリアが両手を広げると、後ろから5つの魂が

姿を見せた。

ダバンゴ「なっ、その魂・・・まさか⁉︎」

スラリア「そう!スレイさんの所にいた人達だよ!」

ダバンゴ「待て待て!アイツらはもう天国だろうが!」

スラリア「一応あたしが冥界に連れていくんだよ?それにフラットからの

命令だし、従ってもらうよ。じゃあこっちにまず来て!」

ダバンゴ「ちょ、おい!」

スラリアは先に会議室の方へ行ってしまった。

ダバンゴ「ったく・・・行くしかねぇか」

スレイ「一体・・・何をする気なんだ?」

2人は疑問を頭に残したまま会議室の方に向かっていった。

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