第27話ー6節 戻れないあの日に恋をした

宿-

スラリア「そっか。魂のない半端なアリジゴクに・・・」

クレア「そりゃあ・・・生き埋めにするしかないよな」

フラット「でも海の中だからね。油断できないよ」

ナックル「それで、スレイは医務室か」

ベングル「そうだろうな。目の前で仲間が殺されたんだ」

メダイ「・・・ごめんね」

フラット「謝らなくていいよ。1番無関係なメダイが来てくれて

良かったよ。僕も・・・あれは倒せなかったから・・・」

ノール「パラレルストーンの力はそんなに危ないなんて知らなかった。

それに中途半端なアリジゴクっていうのも・・・」

ラルバ「あれ、皆さん揃って話し合いですか?っていうか、結局参加は

しないんですか?」

フラット「したかったんだけどね、ちょっと色々あって・・・」

デラガ「だったら何か手伝おうか?」

ビリー「一応ファイター支援課ですし・・・」

ラルバ「一応じゃないですってば!」

フラット「いいよいいよ、警備があるんでしょ?」

デラガ「あぁ、そのことなんだがな」

ビリー「実はなくなったんです、大会」

フラット「えぇ⁉︎だってさっきラルバ参加しないか聞いてたじゃん!」

ラルバ「あぁ~、あれは大会中止発表の時に皆さんがいなかったからです」

アイン「あの、大会って?」

パルカ「オイラ初耳ダゾ!」

クレア「それはお前らがそん時にいなかっただけだろ・・・」

ヒナ「でもどうするの?スレイさんを連れていくわけにはいかないでしょ?」

タクマ「まあそうだけどよ・・・絶対ついてくるだろうな。それにその機械がないと

手がかりが追えないんだろ?」

フラット「ううん。実はもう手がかりはあるんだよね。でも捜索範囲が広いから

グループに分けて探そうかなって」

ベングル「捜索範囲って、分かったのか⁈」

フラット「大体はね。あとは第一車両だけ」

エド「流石フラットっすね!早いっす!」

フラット「そうでもないよ。もう遅すぎたんだから」

いつもなら明るい発言で場を和ませるフラットさえマイナスな発言をした。

スラリア「で、でもさ!魂がないなら仕方ないって!ね?」

クレア「そ、そうだよな!アリジゴクなら倒したところで別に-」

ダバンゴ「できるかよ!俺様でもな・・・できなかった。一緒に同じ屋根の下で

同じ飯食って過ごしてきたんだ。見つめるしか・・・できねぇ・・・!」

メダイ「ダバンゴ・・・」

ヒナ「ほらほら!暗い時こそ明るくしなきゃ!」

タクマ「だな。それでグループに分けるって言ってたが、どう分ける?」

フラット「あっ、言ってなかったね。じゃあ言うから分かれて。えっと-」


数分後-

フラット「よし、これでいいかな」

クレア「俺がコイツらをまとめろと?」

エド「何でクレアがリーダーなんすか⁉︎」

ベングル「せめて俺だろ!」

フォール「わぁわぁわめくな。これで決定だろ?」

フラット「うん、クレアのグループはね。じゃあ次」

ノール「こっちはバカ虎がいなきゃ問題ないんだけど」

ナックル「こっちも同じ意見だ!」

ラルバ「まあまあ、喧嘩してももう決定事項ですし」

ビリー「ラルバさんと同じなら安心です」

フラット「まあこの調子で頼むよ。じゃあ次は」

デラガ「俺をリーダーにしたのはいい選択だな。ただ・・・」

コータス「俺達忙しいんだが・・・」

メダイ「そんなこと言わないでさ」

ケーベス「せめて俺は残してくれよ。お前がいじった宇宙船の

整備もしなきゃいけねぇんだ」

デラガ「何で俺にコイツら任せた?」

フラット「まあ統率力のあるデラガならいいかなぁって」

デラガ「俺は問題児を扱う教師じゃねぇんだぞ?」

フラット「まあまあ。じゃあ最後かな」

ヒナ「こっちはいいチームだよね!」

スラリア「うんうん。異論なし!」

タクマ「ちょっと待て!何で男1人なんだ!」

フラット「1人じゃないでしょ、フォールもいるし」

タクマ「サボり魔は数に入らんだろ・・・それに?フラットとダバンゴは

どのグループに入るんだよ」

スター「たしかに・・・分配できてるよね?」

フラット「僕達は第一車両、つまり操縦室を探すよ。ダバンゴは

スレイさんを支える大事な役目だよ」

ダバンゴ「・・・そうだな」

遠い目をしてダバンゴが頷いた。

フラット「・・・じゃあ明日からは遊びも兼ねて探すように!」

ダバンゴ「遊びダァ⁉︎何トンチンカンなこと言ってんだ親分⁉︎」

フラット「だって夏休みでダイビングだよ?」

ダバンゴ「そりゃそうだがよ!今はお気楽気分でやるもんじゃ-」

フォール「何言ってやがる。テメェら海賊はいかなる時でもお気楽じゃなかったか?

争う時も荒波に晒されてる中でも、笑って酒とか飲むんだろ?

それと同じじゃねぇか」

クレア「あ~、酒がなけりゃ良かったのに」

ケーベス「でもまあ、そうだな。俺達も宇宙を旅してきた。辛いことばかりで

たくさんいた仲間も今じゃ俺達だけだ。でもこうやって生きている。

それが正しいかどうかなんて分からねぇ。ただ、これだけは言える。

アイツらを忘れなきゃ、それでいい!」

机を強く叩いてケーベスはダバンゴに向けてそう言った。その目は

今まで一度も見せたことのない、生きることに希望を抱くように

見開いていた。

コータス「ケーベス・・・?」

メダイ「どうしたの・・・?初めて見たよ、ケーベスのそんな顔・・・」

タクマ「てか、お前ら宇宙を旅してたのか⁉︎」

メダイ「そうだよ。あの宇宙船がその名残」

コータス「ケーベスが月出身だもんでな」

ケーベス「まあ・・・色々とな」

フラット「そこは覚えてる。ケーベスが月から抜け出したんでしょ?」

ケーベス「当たり前だ。俺は崇められる存在じゃねぇ。永遠の命を

持つなら、あんな狭い世界に縛られたくなかった。宇宙の片隅から片隅まで

旅したかったんだ。そして俺は海賊みたいになってたな」

コータス「でも実際楽しかったけどな」

スラリア「へぇ~」

フラット「で、ダバンゴ。今ので分かった?楽しんでいいってこと。

スレイさんも分かると思う。失っても・・・失わないものだってあるってこと。

僕もバトラーも、それは知ってる。だから-」

「失ったものは戻りやしない。ずっと深海よりも暗く、深く、決して届かない、

雲のような宝物になるだけだ」

ダバンゴ‼︎スレイ・・・」

スレイ「全てじゃないが・・・思い出した。あの日、何があったか・・・」


それはアジトへと戻るはずだった日-

ガレイ「じゃあ忘れ物もないな!っし、色奪船、発進!」

封鎖されたギヴァシュから一隻の船が大空へ飛び出していく。

そのエンジンからは煙を噴き出していた。

しかし旅立ちを惜しむ賊達が気づくことはなかった。


数十分後-

放送「異常発生、異常発生!第七車両より火災発生警告!」

スレイ「なっ、火災⁉︎」

バダンダ「えっ、でも可燃物なんて積んでない!」

トルピア「どうなってやがる⁉︎」

ガレイ「待った!近くから電波受信!モニターに映します!」

電波の発信源を掴み、ガレイはモニターにそれを映し出した。

バダンダ「ウソ・・・※※※⁉︎」

トルピア「おい、そういやマレーゴンとサギューはどうした⁉︎」

ガレイ「まさか・・・!」

2人の正体に気づいたガレイが火災の起きている第七車両へ向かっていった。

スレイ「ガレイ⁉︎俺も行く、お前らは待ってろ!」

バダンダ「何言ってるんですか、危ないですよ!」

トルピア「ガレイなら大丈夫だが船長はまずい!」

スレイ「違う!この辺りはスペースアリジゴクが出現したエリアだ!

早く抜けるためにもガレイが必要なんだ!」

トルピア「ッチ、そういうことか!アイツ・・・船長はとにかく待ってろ!」

バダンダ「僕達が行ってきます!」

スレイ「ま、待て!」

静止を聞くことなく、2人はガレイを追いかけていく。

スレイ「クソ、こうなったら!」

この騒ぎを起こした2人のいるであろう第七車両を切り離そうと

レバーに手をかけたスレイ。しかし全員と過ごしていた日々が

蘇り、結局レバーを下ろせなかった。それでも時は止まらず-

放送「近くに脅威感知!100ノット!スピードを上げてください!」

スレイ「来やがった・・・!こうなれば俺が-⁉︎」

操縦舵につき、船を操縦しようとするも、目の前は既にアリジゴクで

覆われていた。

スレイ「・・・!おもしれぇ、やってやろうじゃねぇか!」

気が狂ったのか、アリジゴクの群れに船を向けて突進していく。

一気に伸ばされた触手の圧力に耐えきれず凹んでいく車両。それでもスピードを

緩めずに突っ込んでいく。そしてボコボコな船は何とかアリジゴクの群れから

脱出できたものの、余計に被害を引き起こした。

放送「パラレルストーンエネルギー供給機能の8割が破損!

機体維持不可能!間もなく機能停止します」

スレイ「止まるな!エネルギー供給源をメインエンジンから

サブエンジンに変更!オート操縦からマニュアル操縦!まだ・・・

やってみせる!」

ギュッと舵輪を握りしめたスレイ。その瞬間-

サブエンジンに異常確認!全てのサブエンジンが破損!」

スレイ「クソっ!やるしか・・・ないのか⁈」

車両の切り離しレバーに再び手をかけるも、やはり抵抗を覚えてしまう。

スレイ「・・・っ!」

そして船を再びアリジゴクの群れが包み込んだ。

スレイ「・・・こうなったら!」

なんとスレイは第二車両から第七車両までの全てを切り離した。

しかし、切り離されたのは第七車両のみ。ボコボコになってしまったが故に

連結部分が車両の金属に圧縮され、切り離せなくなっていた。

スレイ「・・・いや、あれがある!」

冬眠装置の存在を思い出して、スレイは第二車両へ行った。


第二車両-

スレイ「くっ・・・あった!」

地下倉庫に眠っていた冬眠装置6つを見つけ出したスレイ。

しかし、そのうち5つはアリジゴクの群れへの突進の影響で

破損し、使えそうにないものとなっていた。

スレイ「・・・このっ、このっ、このぉ!」

自分に対する憎しみと後悔の念を募らせ、スレイは冬眠装置を

何度も何度も殴り続けた。手がガラスで切れようと、アザが出来ようと。

ガレイ「なっ、何してんだ船長⁉︎」

その音に気づいたガレイが慌てて止めに入った。

スレイ「クソっ・・・!俺のせいで・・・!」

ガレイ「「・・・」

何があったかを察したガレイは目を閉じてスレイの肩に手を置いた。

スレイ「・・・ガレイ・・・」

ガレイ「とりあえず来てください。今は耐えないと!」

スレイ「・・・あぁ、そうだな」

少し希望を取り戻したスレイ。しかしそれも-

アリジゴク「ギャルル・・・!」

スレイ「なっ、どこから⁉︎」

スペースアリジゴクは自分の体の状態を変幻自在に変えられる。

液体となり、原始レベルの穴から侵入してきていた。

スレイ「まずい・・・!」

アリジゴク「ギャアア!」

慈悲もない触手がスレイの肩を突き刺す。

スレイ「ガァっ⁉︎」

ガレイ「船長⁉︎くっ、逃げ場なし・・・か。だったら、とっておきのマジック!

第一#遊芸__サーカス__#『木喰』術・『ターザンスロープ』!」

手袋型の神器からツルを伸ばし、ターザンのようにツルを伝ってスレイを

担ぎながらスルスルと出口から出て行った。


第四車両-

ガレイ「ふぅ、ふぅ~・・・ここは被害が少ないみたいだな・・・とにかく、

船長の傷を治さねぇと!」

触手に貫かれていた肩に手を置き、ガレイは神力で傷を治していく。

スレイ「ん・・・ガレイ、また使ったのか?」

ガレイ「まだ動かないでください。安静に-」

スレイ「黙ってるわけにもいかん!その力はお前の命で-」

ガレイ「船長だけの特別です。いっつも俺達を守ろうとして

無茶ばっかして怪我負って・・・心配してるんですから」

スレイ「それは・・・」

ガレイ「もうすぐ皆も来るので、船長は-」

スレイ「ガレイ。ありがとうな」

ガレイ「えっ・・・?」

スレイ「いや・・・伝えときたくてな」

バダンダ「あ~!ガレイばっかズ~ル~イ~!」

トルピア「1人で船長を独占しようたってそうはいかんぞ!」

ガレイ「あーあ、折角いい感じだったのになぁ~」

トルピア「まあこっちはひと段落って感じだ。だが問題はアリジゴクだな」

バダンダ「でも※※※は⁉︎」

ガレイ「あんなアリジゴクの大群に突っ込む意味がないだろ。

第七車両も切り離されたことだし、とりあえず人為的な被害は

抑えられたとみようか」

トルピア「・・・いや、これが※※※の罠だ。俺達をスペースアリジゴクの住処で

立ち往生させて船を落とすって手だろうな」

スレイ「なら任せろ!既にSOS信号は送ってある!燃料切れになるが

主砲キャノンを使う!」

トルピア「信号送ってるならいいか。だったら侵入してきてるやつには

俺の特製武器を使え!たくさん神器のもとの石を拾っといてよかったぜ!」

バダンダ「トルピアが神奉者で良かった~!」

神奉者とは神のために神器を作った者のことである。トルピアは

その血統の末裔であった。

トルピア「そら、受け取れ!銃も短剣もムチもなんだってあるぜ!」

スレイ「よし、これならいける!各自、時が来るまで-」

放送「SOS信号がハッキングされました。ただちに初期状態に

リセットし、もう一度やり直しください」

スレイ「ハッキング⁉︎」

バダンダ「あの2人・・・最後の最後まで!」

トルピア「諦めるな!船長、俺達が全力で守ってやるから修正してきてくれ!」

放送「メインシステムにウイルス侵入、電源を強制シャットダウンします」

その放送と共に、船内は墜落状態を示す警告ランプに包まれた。

トルピア「ウイルス・・・か。ハハッ、こりゃお手上げだな」

ガレイ「・・・船長、こうなれば賭けに出ましょう!」

スレイ「賭け・・・?」

ガレイ「いちかばちか、ガスペラス星に不時着するんです!

たしかあったはず、耐衝撃機能付きの車両!」

トルピア「・・・あぁ!あったな!第二車両か!」

バダンダ「でも中にはアリジゴク・・・」

ガレイ「なぁに、あれぐらいこの神器でどうにでもなる!」

トルピア「よし、そうと決まれば船長!」

スレイ「あぁ。目標、第二車両の奪還!必ず生還するぞ!」

全員「イエッサー!」


第二車両-

スレイ「お前らなんかに負ける賊じゃねぇ~!」

トルピア「空を舞えないお前たちは這いつくばるミミズみたいなもんだ!」

ガレイ「脳なしのお前らには俺のショーは堪能できないだろうな!

お題は結構、出てってもらう!」

バダンダ「皆を傷つけるなら、僕だって許さない!」

たかが4人、しかも僅かな神力しかないというのに諦めることなく

アリジゴクの群れに突っ込んでは薙ぎ倒していく。あっという間に

第二車両は制圧されたが-

スレイ「なんだ・・・?船が・・・揺れてる?」

トルピア「っ⁉︎船長!車体が・・・落ちてます!」

なんと第一車両から第六車両まで別々に切り離されて、ガスペラス星の

重力に従って落ちていた。

スレイ「なっ、どうなってる⁉︎」

バダンダ「多分、ウイルスが完全に船を乗っ取ったんだよ・・・」

トルピア「そういうことだな・・・こうなるともう無理だな」

ガレイ「でもさ、希望は残ってる」

ポツンと光るたった一つだけ生き残った冬眠装置を見てガレイはそう言った。

バダンダ「そう・・・だね。これがあれば、どうにでもなるよね」

トルピア「問題は、誰が入るか、だが・・・」

ガレイ「決まってるだろ?」

バダンダ「うん、多分同じだと思う」

全員の目が一斉にスレイの目に行った。

スレイ「・・・俺か⁉︎いや、ダメ-⁉︎」

先程の激しい戦闘で、ガレイが治したはずの傷が再び開いてしまった。

しかも、そこから更に今度は神力までもが溢れ出していた。

ガレイ「夢中するから・・・もう、ダメですよ船長」

スレイ「こんなの・・・!すぐ治る!」

トルピア「アンタはいっつも無茶ばっかだ。したっぱに心配かけさせんなよ」

スレイ「無茶だってする・・・!他でもない、家族なんだ!」

バダンダ「親が心配されてどうするんですか?それに・・・無茶ばかりする原因は

いつも僕達で・・・迷惑ばかりかけてるのにいつも笑顔で許してくれた。

そんな船長のことを見殺しなんかできません!」

スレイ「お前ら・・・っ!でもダメだ!俺が生き残ったところで

お前らはどうする⁉︎」

トルピア「んなの、どうにだってなる。ただな、寂しがり屋のアンタを

1人にしちまうのが1番の心配ごとだな」

スレイ「・・・やめろ!」

ガレイ「でも、良いんです。だって-」

全員「船長のこと、大好きですから!」

スレイ「・・・こんな時ばっかり・・・っ!あぁ、俺も大好きだ!」

バダンダ「船長・・・うん」

トルピア「その体じゃ、思うように動けねぇだろ?ほら、背負ってやる」

スレイ「・・・」

遠のいてく意識の中、トルピアが自分のことを背負って何かを

呟いている声を

最後に、スレイは完全に意識を失った。


回想終了-

スレイ「そして気付けばここのシップホテルに雇われた」

ダバンゴ「俺様が去った後にそんなことがあったとはな・・・

マレーゴンとサギューか・・・クッソ!」

ノール「裏切りなんて最低行為、許しておけない!」

スラリア「でも、何でそんなことしたの?」

スレイ「それは分かっている。やつらの狙いはこのイヤリングだ。

これ、天命石っていうんだったな。やつらはその天命石を奪ったり

回収したりしている」

フラット「天命石を?でもたかが1個で・・・」

スレイ「1個なんかじゃないさ、トルピアやバダンダがギヴァシュにあったものを

ほとんど持ってきたらしいからな。たしかそれは第一車両に・・・」

ベングル「第一車両か⁉︎」

フラット「・・・でもスレイさんは来ちゃダメです!来たところで・・・」

スレイ「いや、行かせてくれ!何も・・・伝えられてないんだ!

それに・・・気になってることがあるんだ」

エド「気になってることっすか?」

スレイ「俺は・・・たしか何か持っていた気がするんだ。アジトから

出ていく時に、ダバンゴから貰ったはずの何か・・・」

ダバンゴ「・・・何だっけか・・・アンタは忘れっぽいから持たせたんだが・・・

悪りぃ、覚えてないぜ」

クレア「まっ、遊び中心的にやりゃあ良いんだろ?」

フォール「フラットらしいな。よし、俺はのった!」

ヒナ「泳ぐの苦手だけど・・・探すのは得意だから任せて!」

ラルバ「フラットさん、本官達にも仕事くださいよ~!」

フラット「えぇ~・・・まあ一応デ・ロワーの枠組みだもんな~・・・

でも、ラルバに・・・ねぇ~」

デラガ「まあ当然の反応だな。それに加えてビリーもいることだ。

今回は引き受けるだけ迷惑に-」

フラット「デラガがいるなら関係なくオッケー出すけど」

ラルバ「マジですか⁉︎デラガ、一緒に!」

デラガ「ちょ、フラット⁉︎」

フラット「面倒くさがると後が怖いからね~?警部が仕事を押し付けてるって

本部が知ったらどうなることやら・・・」

デラガ「・・・分かったよ!やりゃあ良いんだろ、やりゃあ!」

ビリー「あのデラガ警部が動いた・・・」

ベングル「ていうか昔のアンタはどこに行ったんだか」

エド「大真面目でどんな事件にも突っ走ってたっすのに・・・」

コータス「へぇ、あのへっぽこがな~」

デラガ「へ、へっぽこ⁉︎」

メダイ「だって私達の策に見事引っかかったの、あなたが初めてだったし・・・」

ケーベス「あんなガムシャラに突っ込んできたのもアンタ以外見たことねぇよ」

ラルバ「あ~、本官が警察官になったばかりの頃のデラガはたしかに

ナックラーさんよりの戦いしてましたね」

デラガ「ング・・・そ、それより飯にしようか!もう夕飯時だ!」

フラット「話の逸らし方までバトラーそっくりだなぁ」

ナックル「俺ってそんなにか⁈」

ノール「自覚なしっていうのもまたか」

スター「コータス、一緒に行こっ!」

コータス「あ、あぁ・・・?全員で行くんじゃないのか?」

メダイ「コータス、誘われたら断っちゃダメ!これは礼儀作法の一つだよ?」

コータス「だから、俺達の世界に作法とかマナーとかねぇの!」

ケーベス「グチャグチャ言ってねぇで早く行けっての。すまんな、

こんなやつだがよろしく頼む」

スター「フフーン、スターならどんな問題児もいい子になるよ!」

クレア「実際そうっちゃそうなんだよな・・・」

フラット「1番の問題児は健在だけどね」

クレア・フォール「誰のことだ⁉︎」

ノール「2人にことに決まってるでしょ。じゃあ私も晩御飯に

しようかな。お腹も空いたし」

タクマ「じゃあ今日はガスペラス星の郷土料理をご馳走してやろうか!」

スラリア「あ、食べてみたかったんだよ黒いお米!美肌効果あるんでしょ?」

ヒナ「あとハーブも!地球のハーブよりも良い香りするって

聞いたことあるから試してみたい!」

タクマ「お前ら情報収集早ぇな・・・」

全員はロビーの席から立ち上がり、話しながら食堂へ向かっていく。

それについて行こうとするフラットに-

ダバンゴ「親分、こっち来てくれねぇか」

フラット?」

ダバンゴはそれだけ言うと、テラスの方に向かっていった。

フラット「・・・分かった!」

大きく頷き、フラットは少し遅れてダバンゴを駆け足で追っていった。


テラス-

ダバンゴ「・・・ありがとよ」

夜の光を反射するウミボタルが泳ぐ水面を見上げながら、ダバンゴは

そう呟いた。

フラット「えっ?」

ダバンゴ「ただよ・・・迷っちまったのが正直言って悔しい」

フラット「・・・ダバンゴらしくないね。悔しいって言葉にするのは」

その隣にフラットは腰掛け、ダバンゴに微笑んだ。

ダバンゴ「それは自分でもよく分かってる!ただよ・・・アイツの気持ちも

スゲェ分かる。できるわけねぇよな。親分、今の俺様になら分かるぜ。

ノールを思うアンタの気持ち・・・ヒデェこと言っちまったな、すまなかった」

フラット「ダバンゴ・・・なーにしめっぽいこと口にしてやがんでぃ!」

バン!とフラットはダバンゴの背中を強く叩いた。その瞬間、

鋭く尖るダバンゴの鱗がフラットの手に刺さり、痛みが走った。

フラット「イッタ~!」

ダバンゴ「何やってんだ親分・・・ガッハッハ!バカでぇ!俺様の背中を

叩いて怪我したの、船長ぶりだぜ!ガッハッハ!」

フラット「もう、笑わないでよ~!それより絆創膏・・・」

ダバンゴ「んな傷、絆創膏じゃ意味ねぇよ。医務室で包帯巻いてやるから

ちょっと来な。一応・・・礼だ」

フラット「ダバンゴ・・・」

初めて見たダバンゴの嬉しそうな横顔に、フラットもつい笑った。

ダバンゴ「おい、早く行くぞ!チンタラすんな!」

フラット「あ、うん!」


医務室-

ダバンゴ「っし、こんなもんだろ・・・ありゃりゃ、不恰好になっちまったな。

まっ、巻けてりゃなんだっていいか!」

フラット「案外不器用なんだね」

ダバンゴ「なっ・・・ったく、船長と同じこと言うんだな。怒る気持ちも失せるぜ」

フラット「ねぇ、ダバンゴ。誰かを守りたいって思う時、何を思い浮かべる?」

ダバンゴ「ん・・・そうだな・・・ソイツから貰う報酬とかか?」

フラット「ぷっ・・・アッハハハハ!ダバンゴらしいや!アッハハ!

報酬ね、うん。でも報酬がなかったら?」

ダバンゴ「貰うまで付きまとうだけだぜ!」

フラット「ふぅん・・・よっと!面白い回答も貰えたわけだし、

僕もご飯にしよ~っと!」

ダバンゴ「なっ、親分は答えねぇのかよ⁈」

フラット「ダバンゴの答えが報酬なら、僕の答えはなし!以上!」

ダバンゴ「あっ、待ちやがれ!なしなわけねぇだろ~‼︎」

フラット「へへ~んだ!追いつけるものなら追いついてみろ~!」

2人は子供のような言い合いをしながら、笑って廊下を走る。

その足音は強く響き渡り、軽やかなリズムを奏でている。

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