第27話ー3節 ヴァイキング襲来⁉︎

旅行1日目、夜-

ノール「はぁ、今日は疲れた~」

フォール「お前らがしつこく冷やかしてくるからだろ」

エド「でもあんな執拗に追いかけてくるのもおかしいっすよ!

プールの中まで全速力で・・・」

クレア「お前の体力どうなってんだ?」

ベングル「冷や汗もんだったぞ」

タクマ「そっちで何があったんだ?」

ヒナ「さ、さぁ・・・でもほら!今はご飯食べてゆっくりしよ!」

ラルバ「でも本官達も良かったんですか?」

デラガ「俺達は今回無関係なはずだろ?」

フラット「まあ折角会えたわけだしね。で、そっちも休みで来たの?」

ラルバ「いえ、ここで行われる武闘大会の警備に任されたので

来たまでです!」

デラガ「無理矢理参加させられたがな」

スラリア「武闘大会なんてあるの⁈」

ダバンゴ「復興記念にファイター呼んで知名度を一気に上げるって手だろ。

復興地の王道のやり方だ」

スター「本当に毒舌だよね、ダバンゴって」

ベングル「だから嫌われたんだってこと、まだ分かってねぇんだぞ?

信じらんねぇよな」

ノール「まあ口調なんて人それぞれだからそんな理由で私は人嫌いがは

しないけど・・・ダバンゴはたしかに」

ヒナ「ダバ君は口調こそ悪いけど他はいいとこだらけだもん!」

ダバンゴ「ダバ君って-あぁ、もういい!てかフォローすんな、

余計に傷つくだけだ!」

タクマ「ふぅん、言葉で傷つくんだな、お前」

ダバンゴ「ったり前だろ!」

ヒナ「案外センチなんだ」

タクマ「可愛いとこあんのな」

ダバンゴ「うっせぇ!ったく・・・」

「♪(ダバンゴのウォッチフォンの着信音)」

ダバンゴ「っち・・・⁉︎」

着信相手の名前を見て、ダバンゴは目を見開いた。

ベングル「どうした?」

ダバンゴ「ちょっと・・・席外すぜ」

真剣な声色のままダバンゴは席から立ち、電話に出た。

フラット「何の電話なんだろ・・・?」


ダバンゴの宿泊部屋-

ベランダでドーム状の透明な天井に映るウミボタルの光の粒を見ながらダバンゴは

通話していた。

ダバンゴ「で、用ってなんだ?まさか戻ってこいなんて言う気じゃ-」

通信相手「そんなわけないだろ、ただ伝えておきたくてな。

今ギヴァシュにいるだろ?もし壊れた宇宙船とかあれば連絡を

寄越してほしい」

ダバンゴ「宇宙船だぁ?んなもんがギヴァシュに-」

通信相手「知ってるだろ、俺達がギヴァシュに派遣したサーベル号。

あれの消息が絶ってからもう42年だ。これが何を意味するか、分かるよな?」

ダバンゴ「・・・分かった、探しとくぜ。まあ、あの船長がいれば

何の心配もいらねぇだろうけどな」

通信相手「アイツにつけておいた発信機の反応も途絶えてるってこと

覚えてないのか?」

ダバンゴ「あぁ、そうだっけな」

通信相手「まあそれだけだ。じゃあな」

ダバンゴ「あぁ。あと急に連絡寄越すのやめろよな。俺だけの帰郷じゃ

なかったみてぇだからよ」

通信相手「ハッハハ、やっぱり戻ってこなくて良かったみたいだな。

そろそろ決心はついたんじゃないか?」

ダバンゴ「・・・そんなもん、とっくについてるっての」

通信相手「へぇ~・・・じゃあ早く戻ってやれよ。あの船長の言葉だが、

愛するときは美しく、花のように短く儚い」

ダバンゴ「いちいちクセェんだよ、あの船長。だからあんま俺様は

好きじゃねぇけどな。っと、こんなに話してたか。じゃな、

今晩飯中だからよ」

通信相手「・・・珍しいな。お前が誰かと飯食うなんて」

ダバンゴ「うっせぇな、俺様の勝手だろ。お前も飯食えよ、

もう若くねぇんだ」

通信相手「言われなくても食ったわ、お前も元気でいろよ。例え賊じゃなくても

俺達はれっきとした『家族』なんだ」

ダバンゴ「だからクセェって。ありがとよ、じゃあまたな」

そう言ってダバンゴは通話終了をタップした。

ダバンゴ「・・・家族、か」

何かを思うようにそう口ずさむと-

コンコン(ドアをノックする音)

フラット「ダバンゴ、まだ~?」

ダバンゴ「うぉっと、フラットの親分か・・・今行くぜ~」

頬を両手で2回パンパンと叩き、ダバンゴはドアを開けた。

フラット「・・・?どしたの?」

ダバンゴ「どうしたって、何がだ?」

フラット「えっ、だって・・・服」

ダバンゴ「・・・あっ!ヤッベ!着替えてたんだった⁉︎」

なんとパンツ一丁でダバンゴは出てきた。

フラット「えぇっ⁉︎バカなの⁈」

ダバンゴ「い、いや・・・着替えながら電話してたからよ!すぐ戻るで

親分待っててくれ!」

フラット「う、うん」

慌ててダバンゴは部屋の中に戻っていった。

フラット「そっか、親分だっけね・・・そういうことか」

その呼び名の意味がようやく分かり、フラットはダバンゴを笑顔で待ち続けた。しかし-

ダバンゴ「終わったぜ!」

フラット「どわぁ⁉︎」

なんとものの数秒でダバンゴは着替えを終え、扉を思い切り開けて、

近くにいたフラットを突き飛ばした。

ダバンゴ「ちょ、おい大丈夫か親分?」

フラット「ててて・・・もう、バトラーじゃあるまいし、落ち着いて出てきてよ。

タンコブできちゃったじゃん」

ダバンゴ「す、すまねぇ・・・」

フラット「まあ、晩御飯中だし皆も待ってるから行くよ」

ダバンゴ「あ、あぁ・・・なぁ親分」

フラット「?何?」

ダバンゴ「・・・ありがとな、迎えにきてくれてよ」

フラット「えっ、大丈夫?」

あまりにダバンゴらしくない言葉を口にされたためにフラットは逆に心配した。

ダバンゴ「な、何でもねぇよ!ただ・・・親分にも会えなくなる時が

来ちまうって分かっただけだ」

フラット「・・・えっ?」

ダバンゴ「その時までは、一緒にいようぜ!」

歯を見せつけるほど大きな笑顔を見せたダバンゴ。その裏に隠れた思いなどフラットに

見えないわけなどなく-

フラット「・・・そっか。でも、無理しないでいいよ。何かあるなら

ちゃんと話してほしい。折角こうやってそばにいるんだからさ」

ダバンゴ「親分・・・ちぇ、敵わねぇな。アイツみたいなやつだ」

観念したかのような口調でダバンゴは言葉を紡いでいく。

フラット「じゃあさ、ちょっと外行かない?ウミボタルの光も

今なら綺麗に見えるよ」

ダバンゴ「・・・あぁ、そうだな」

フラットはダバンゴと共に宿の甲盤へと向かっていった。


外-

ダバンゴ「実はな、もう決めたんだ。俺様は弟を救う。そのためになら

何だってするぜ」

フラット「・・・家族だから?」

ダバンゴ「・・・実を言えば、俺様とは無関係のやつだ。ただの賊仲間ってだけさ。

でもアイツは俺様にとって大事なやつなんだ。だから俺様の全てを

アイツに与える気だ!」

フラット「それって・・・まさか⁉︎」

ダバンゴ「あぁ、神力を失った俺様にできる最後の手段だ。魂と引き換えに

俺様自身が神力となって弟の中に宿る。これでいいんだ」

フラット「なっ、何バカ言ってるの⁈そんなの-」

ダバンゴ「悪いが俺様はもう決めたんだ。後悔したところで、俺様には

居場所なんかねぇんだよ」

全てを投げ捨てるかのような乱暴な声でダバンゴはそう言い切った。

フラット「・・・ダバンゴ。何を思ってそう思ったかは分からないけど、

これだけは覚えといて。今日ダバンゴと会った時の皆の顔、覚えてないの⁈」

ダバンゴ「驚いてた、だろ」

フラット「・・・そうだけど・・・分かんないかなぁ」

少し怒りをにじますような声でフラットは頭を掻きながらそう言った。

「フラット、あとは任せな」

フラット「へ⁉︎」

後ろから急にとある声が聞こえた。それは-

ベングル「悪いが全部聞いちまってな。いい度胸してんじゃねぇか?

俺達残して自分だけ死のうとするなんてよ?」

種族がら鋭く尖った爪でベングルはダバンゴを何度も引っ掻いた。

ダバンゴ「ッテェ⁉︎何しやがる⁈」

ベングル「忘れたとは言わせなぇぞ!俺達四大はファイターの象徴だ!

たとえ神力がなくなったとしてもそれは変わらねぇ!お前が言った言葉だ!」

ダバンゴ「それぐらい言われんでも分かってるに決まってるだろ!

それにな、こうも言ったはずだぜ。守りてぇやつを守り抜くなら

命は惜しまねぇって-」

ベングル「このっ!」

その言葉を遮るように、ベングルはダバンゴを殴り飛ばした。

フラット「ちょっ、やりすぎじゃ・・・」

ベングル「これぐらいやんねぇと分からねぇんだ、コイツは」

フラット「・・・そうかもしれないけど・・・」

ダバンゴ「俺様を殴るたぁいい度胸できてんじゃねぇか⁉︎やりあうってなら

容赦しねぇぞ!」

ベングル「ったく、いつまで悪ガキ気取りでいる気かは知らねぇけどよ、

俺達にとっちゃお前は大事な家族みてぇなもんだ!死のうとしてるやつを

横目にするわけにはいかねぇんだよ!」

ダバンゴ「なら言わせてもらうがな!俺様は一度でもお前らを

家族として見たことはないぜ!」

ベングル「なっ・・・そこまで言うなら良い。勝手にしやがれ!」

フラット「ちょ、ベングル⁉︎あ・・・その・・・色々あるよね。じゃあさ、

ダバンゴ、部屋・・・戻ろっか」

ダバンゴ「ここにいる」

フラット「あっ、そ、そう?じゃあ僕も残るよ。ウミボタル、綺麗だしね」

ダバンゴ「ひとりにさせてくれ」

フラット「別にいいじゃん。多分そのうち寝ちゃってるし」

ダバンゴ「・・・頼む」

フラット「?頼むって・・・寝ててくれってこと?」

ダバンゴ「ちげぇよ!どっか行けって言ってんだ!」

フラット「だから何もしないし気にしなくていいって。それに残るって言っても

誰もダバンゴのそばに残るなんて言ってないよ」

フラットは軽々とテラスの屋根に登り、仰向けで寝転がった。

ダバンゴ「・・・はぁ」

フラット「これなら全然いいでしょ?」

ダバンゴ「勝手にしやがれ」

フラット「じゃあ勝手にさせてもらうよ」

たなびく風の中でフラットは目を閉じていた。

ダバンゴ「・・・ありがとな、親分」


翌朝-

フラット「ん・・・あれ、ダバンゴ?」

テラスにフラットは目を向けるも、そこには誰もいなかった。

フラット「ダバンゴ・・・⁈」

恒星の光が差し込むテラスに残った手紙がフラットの目に映り、

慌てて屋根から飛び降りた。

フラット「これ・・・ダバンゴの字だ」

[先に部屋に戻ってる。起きたらさっさと来やがれ。眠りにつくのが

早すぎだぜ?]

水性のボールペンで書かれていたその字はまだ乾ききっておらず、

持ち上げた時に軽くインクが垂れた。

フラット「・・・なんだ、部屋に戻ったならいっか」

ふぅ、と安心したため息をつき、フラットは部屋に戻っていった。


男部屋-

フラット「ごめーん、待った?」

クレア「あっ!どこ行ってたんだ?食事代も払わずによ?」

フラット「そ、それはごめん・・・」

ベングル「フラット、ダバンゴから聞いたぞ。悪かったな、任せちまって」

フラット「大丈夫だよ、あと食事代ね。ちょっと待って、今渡すから・・・

えっとクレアの端末に・・・2200オズっと。はい、オッケー」

クレア「ん・・・来てるな」

エド「で、ダバンゴがどうかしたんすか?」

フラット「色々とね。まあ朝食行こっか。そのあとに武闘大会の件は

話し合おっか」

ナックル「だな!おっと、フラットと俺でペアだぞ!」

フラット「言われなくても!」

フォール「相変わらず仲がいいこった。そのせいで朝から酒が

飲めねぇっての」

フラット「だから禁止だって何回も言ってるでしょ!」

フォール「別にいいだろ~?昨日の晩飯には一杯も飲んでねぇし」

フラット「いや・・・まあ・・・」

クレア「迷うなよ!ったく、純粋すぎるのも問題だな」

コンコン!(ノック音)

ヒナ「皆~?もうすぐ朝食だから来て~」

スラリア「今日はフラットの大好きな火星料理だよ~?」

フラット「えっ、マジ⁉︎行く行く!」

目の前のご馳走にありつくライオンのように、フラットは飛び出して

思い切り扉を開けた。

スラリア「キャッ⁉︎」

フラット「お先!」

「ストーップ!」

フラット「わわっ⁉︎」

しかしその勢いを、見知らぬ熊型の獣人が一気に食い止めた。

フラット「ちょ、何ですか?」

熊型獣人「友達を置いてっちゃダメだぞ?」

フラット「食堂にも友達いますけど・・・」

熊型獣人「だからといって、欲望に目を眩ませてしまうと大事なものを

失ってしまうよ」

フラット「・・・はい・・・?」

「おーいスレイ!何やってんだ?早く清掃やるぞ!」

熊型獣人「あ、あぁ!俺はスレイ。ここで清掃員やらせてもらってる。

君の行動が・・・なんとなく俺の知ってる誰かに似ていてつい声を

かけてしまってね。迷惑だったかな?」

フラット「あ、いや全然!あの、ありがとうございます」

スレイ「ハッハハ、えらくいい子なこった。じゃあまた」

クルリと背を向けて、スレイはロッカーからデッキブラシを取り出して

隣の空き部屋に入っていった。

フラット「なんか・・・不思議な人だったな・・・」

ヒナ「フラット!危ないでしょ!」

フラット「あ、ごめん」

スラリア「ビックリしたよも~!」

クレア「お前の辛いもの好きは平常運転だな」

ナックル「っしゃ!そうと来たらフラット!」

フラット「分かってる!勝負でしょ?」

ナックル「分かってるじゃねぇか!」

ノール「遅いから迎えに来てみれば・・・朝から騒がしいよ、2人とも」

ラルバ「まだ寝てる部屋だってあるんですから大声は出しちゃダメですよ!」

デラガ「お前も大声だ、少しは落ち着け」

ビリー「あ、あの・・・騒がしいと怒られちゃいますよ?」

タクマ「にしても旅行中だってのに相変わらずってのもなぁ」

ヒナ「タクマもそう思うよね?」

スラリア「あれ、スターちゃんは?」

タクマ「アイツならケーベス達と一緒だぞ?」

スラリア「そっか。ならいいんだ」

クレア「なら俺達も行こうや」

エド「そうっすね、腹ペコっす」

フラット「えっ、ダバンゴは?」

ベングル「アイツなら海で泳ぎいってるぞ?」

フラット「・・・ちょっと先行ってて!海の方に行ってる!」

何かに気付いたフラットはそう言い残して駆けていった。


ギヴァシュ実験用海岸-

フラット「ダバンゴ~!ダバン-⁉︎」

岩陰の向こうからダバンゴの声が聞こえて、フラットは覗いてみた。

すると、海岸には大きな宇宙船と明らかにヴァイスと分かる男達が

ダバンゴを囲んでいた。

フラット「まさか・・・宇宙海賊⁉︎」

ヴァイス1「っ⁈誰だ、そこにいるの⁉︎」

フラット「⁉︎気づかれた⁉︎」

ダバンゴ「落ち着け。大体こういうのを嗅ぎ分けられるのは、親分だけだ。

そうだろ?親分」

フラット「うわっ⁉︎」

軽々フラットを持ち上げて、ダバンゴは連中にフラットを見せつけた。

ダバンゴ「コイツなら大丈夫だぜ」

フラット「えっ、えっと・・・」

あまりの威圧感に覆われた浜辺に、フラットは言葉を失った。

ダバンゴ「ダッハッハ!どうした親分?まさか腰抜かしてんのか?」

弾けるような笑顔でダバンゴはフラットに笑った。その顔を見て、フラットは

とてつもない安心感を抱いた。

フラット「と、とりあえず降ろして」

ダバンゴ「あ、あぁ」

パッと手放されて、フラットは尻もちをついた。

フラット「ッテェ!乱暴すぎでしょ⁉︎」

ヴァイス2「ガッハハ!ダバンゴはそういうやつよ!」

ヴァイス1「で、アンタがフラットか!ダバンゴから聞いてた通りのやつだ!

そりゃ親分って呼ぶわけだ」

フラット「えっ?」

ヴァイス2「実はな、俺達はあくまでダバンゴの説得係さ」

ヴァイス3「俺達は他の賊とは違うぜ?グループ分けがあるんだ。

ダバンゴのいた船は色奪船!仲間を増やすグループだな」

フラット「へぇ~・・・」

ヴァイス2「でも、もう色奪船はないけどな・・・」

フラット「えっ?」

ダバンゴ「俺様が賊を辞めてすぐの話だ。色奪船はガスペラス星の調査中に

通信が途絶えた。そこからは消息不明だ」

フラット「・・・もしかして、あの船・・・」

ダバンゴ「あぁ、あの沈没船か?あれは色奪船の貨物車両だ、

特に何にも残ってなかったがな」

ヴァイス2「で、それはそれだ。ダバンゴ、お前なぁ、いくら弟のためとはいえ

神化はやめときな。得なんか何にもねぇんだ」

ヴァイス1「そんなことさせたら弟がどう思うよ?」

フラット「えっ、まだそんなこと言ってんの⁉︎」

ダバンゴ「そうしなきゃ助かんねぇんだよ!アイツは・・・アイツは・・・!

チクショウ!神力が残ってさえいりゃ!」

フラット「ダバンゴ・・・?」

一瞬だが、フラットは自分のウォッチフォンが光ったように感じた。

フラット「気のせい・・・?」

ダバンゴ「だから頼む!アイツを・・見殺しなんかに-」

ドカーン!(爆発音)

と、ギヴァシュの街中から響き渡った。

ヴァイス1「な、なんだ⁉︎」

ピロロロ!ピロロロ!(フラットのウォッチフォンの着信音)

フラット「何があったの⁉︎」

エド「海賊っす!襲撃に来たんすよ!」

フラット「海賊って・・・⁉︎」

ヴァイス3「奴らか・・・昔のダバンゴだったら楽に迎え打てたんだがな」

フラット「任せて!ダバンゴ達は残ってて!」

ダバンゴ「なっ、俺様も行くぜ!」

フラット「ダメ!神力もないのにどうする気⁈」

ダバンゴ「っ!それは・・・」

フラット「言いたくはないけど・・・今のダバンゴは来るだけ無駄だよ。

神力を失ったファイターが神力を取り戻したなんて事例、聞いたことないし・・・」

ダバンゴ「でもよ!俺様の故郷を放っとけるか!」

「神力を探知!願望強大、ファイター認定しますか?」

フラット「えっ・・・」

ダバンゴ「なっ・・・まさか⁉︎」

フラット「そんなことあるわけ-」

慌てて指揮者権限アプリを開くフラット。そこに映っていた文字列に

驚きを隠すことはできなかった。

ダバンゴ「戦えるのか⁈」

フラット「・・・ダバンゴ、いける⁉︎」

ダバンゴ「あったりまえだ!このまま背中向けて逃げれるかってんだ!」

フラット「じゃあ、久しぶりにいくよ!認定!」

ウォッチフォンから放たれた光がダバンゴを包み込む。そしてそこにいたのは

ガスペラス星の民族衣装を着こなすダバンゴだった。

フラット「・・・復活のスプラッシュ・アリゲーターだね!」

ダバンゴ「んなこと言ってる場合じゃねぇ!さぁ、賊狩りの時間だ、

指示を下せ、親分!」

フラット「合点!ギヴァシュで暴れる海賊討伐、開始!」

ダバンゴ「イエッサー!」


ギヴァシュ国立図書館-

海賊長「ふん、あっけない。さぁ、ありったけの宝もってこい!」

クレア「させねぇよ!第一突風『炎』術・『四方爆破之矢』!」

海賊長「なっ、新手か⁉︎」

ノール「油断は禁物って知らないの?神業・破壊!」

海賊長らしき男の立つ足場を次々と破壊していき、段々と着実に

追い込んでいく。

海賊長「っとと、追い詰めたと思って油断してるのはお前らかもな。

クレア「どういう意味だ⁉︎」

海賊長「キール!アルガ!」

クレア「なっ⁉︎」

ノール「どこから⁈」

その合図と共に2人に何者かが不意打ちを仕掛けた。

「神業・伊吹!」

しかし攻撃を受ける前に黄色の弾幕が遮った。

メダイ「大丈夫⁈」

クレア「ナイス!」

ノール「助かったよ」

メダイ「龍神の力、思い知らせてあげる!」

海賊長「龍神・・・か。あの人の報告が正しければ、これを使えば!」

男が手にしていたのは2つもの天命石だった。

メダイ「っ⁉︎何で⁈まずい!」

急に竜変化を起こしたメダイ。しかもその目は完全に暴走していた。

クレア「なっ、まさかあれのせいか⁉︎」

ノール「まだ完全に神力を操れないメダイに天命石は毒でしかない!

あれをどうにかしないと!」

「ドウリャァァァァァァァ!」

海賊長「ぐわっ⁉︎」

フラット「ふぅ~・・・大丈夫?」

ダバンゴ「やっぱりテメェか・・・俺様の故郷に手出すたぁ、いい度胸してんじゃねぇか。

生きて帰れると思うなよ!」

海賊長「き、貴様⁈神力を失ったはずじゃ-」

ダバンゴ「ふん、この世にはどんな天才でも理解できねぇ現象で

ありふれてんだ!テメェには一生理解できねぇことがな!

第一遊泳『零』術・『#暴回魚泳__スタークスクィメン__#』!」

地面が割れて水が溢れ出すと、ダバンゴにまとわりつき、宙を舞う軌道に

沿って予測不可能な道順でダバンゴは海賊長に近づいていく。

クレア「おい、あれって・・・」

ノール「神力・・・でもダバンゴには⁈」

メダイ「なくなった・・・はずだけど?」

フラット「それだけじゃないよ、見て」

指揮者権限アプリに表示されていたダバンゴの欄に並んだ文字列を

3人にフラットは見せた。

ノール「えっ⁉︎ダバンゴってヒーロー部類じゃ⁉︎」

クレア「エドと同じってわけか。じゃあアイツも神獣ってわけか?」

フラット「四神獣じゃないとは思うけど・・・」

メダイ「四神獣・・・あの、そのことだけど-」

「スキありィィ!」

フラット「⁉︎」

メダイの攻撃に怯んでいた敵が再び襲いかかった。しかし-

「第一舞踏『光』術・『モアモアアンコール』!」

突然の声と共に幾多もの光がヴァイス達の視界を奪った。

「ぐわっ⁉︎」

ヒナ「大丈夫⁉︎」

ノール「ありがとう、助かった!」

クレア「ナイスタイミング!」

ヒナ「こっちの避難は終わったから手伝いに来たよ!タクマは

スラちゃんの方に行ってる!」

フラット「ならこっちはこの2人だね・・・!」

したっぱ1「テメェら、やるじゃねぇの!名乗っておこう俺の名はアルガ。

あのお方、ジャミルに敬慕する者」

したっぱ2「そして僕がキール。前は別の海賊に身を置いていたが、

今じゃジャミルにしか従わねぇよ!」

ヒナ「アルガにキール・・・どこかで聞いたことあるような・・・」

フラット「今は戦闘!集中して!」

ダバンゴ「っ⁉︎オメェら、気をつけろ!」

フラット「えっ?」

ダバンゴ「後ろだ!」

「何の騒ぎだ?」

フラット達の後ろには騒動を知らなかったスレイがいた。

フラット「なっ、危ない!」

キール「これは・・・面白い!」

何も関係のないはずのスレイに向かってキールは短剣を片手に

一気に距離を縮めていく。

ノール「まずい!」

クレア「避けろ!」

スレイ「・・・ここだ!」

しかしスレイは避けることはせずに、手に持っていたデッキブラシで

キールの顎に強烈な一撃を喰らわした。あまりのショックに

一瞬で気を失うほどの。

クレア「スッゲェ~!」

スレイ「海賊・・・ですか。この街から速やかに出て行け!さもないと、

この私が直々にお相手いたしましょう!」

アルガ「おっと、やっぱりスレイか。ここは退いた方が良さそうのこって。

ジャミル、逃げますよ!」

ジャミル「チッ、よりによってスレイか。仕方ねぇ、退くぞ!」

アルガ「てなわけだ、命拾いしたな。よっと、この街にまさかアンタが

いるなんてなぁ」

スレイ「いいから出て行け!」

アルガ「ハイハイ。でも、演技は良くないなぁ。何の記憶もないくせに」

スレイ「なっ、どこでそのことを⁉︎」

アルガ「俺の事を覚えてない時点でもう丸わかりなんだよ。

でもテメェの実力は衰えてねぇみたいだし、去ってやるよ」

気絶しているキールを背負いながらアルガはスレイとそう話した。

ジャミル「おい、早くずらかるぞ!」

アルガ「イエッサー!まあ、アンタは殺さねぇさ。じゃな!」

そう言い残して、アルガはフライトシューズで宇宙船に乗り込んだ。

そして宇宙船は無駄なくその場から離脱した。

ダバンゴ「・・・で?テメェ、スレイって言うのか?」

スレイ「あ、あぁ・・・それが?」

ダバンゴ「・・・そうか。なら良い。とりあえず俺様は戻ってるぜ。

親分も来い。話しておきてぇことがある」

フラット「分かった。じゃあ皆は先に宿に戻ってて。僕は浜辺にいるから」

クレア「大丈夫なのか?」

ノール「なんならついてくけど?」

ダバンゴ「テメェらはダメだ。俺様は親分以外信じてねぇからな!」

スレイ「そんなのダメだ!」

ダバンゴ「っ・・・そういうところは相変わらずだな」

ボソッと呟いたその声を、フラットは聞き漏らさなかった。

ダバンゴ「ハイハイ、でも俺様は俺様。テメェの言うことに

縛られてたまるかってんだ!」

グイッとフラットの腕を引っ張り、ダバンゴは神力で水を操って

波のようにフラットと共に浜辺に向かった。

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