第27話ー2節 夏休みの始まり
放送「ガスペラス星です。ギヴァシュ行きの潜水艦は地下のホームに
ございます。特別招待客の皆様には無料で宿に泊まれる宿泊券を
お配りいたしますので旅行券をお持ちになられてください」
スラリア「すっご~い!」
宇宙港の窓の向こうには、白い砂浜に青い空、そして水平線が
くっきりと見えるほどの綺麗な海が広がっていた。
タクマ「残念だが、ここはギヴァシュの上だ。まあギヴァシュにも
砂浜ぐらいある。地下はこっちだ、案内してや-」
ダバンゴ「おい、何1人でぶつくさ言ってんだ?俺様がとっくに案内してるぞ?」
タクマ「は⁉︎早っ⁉︎」
ダバンゴの声が遠くから聞こえて、タクマが振り返ると既に全員がダバンゴに
ついてっていた。
タクマ「ったく、アイツはなんつぅか・・・せっかちだな」
地下港-
ダバンゴ「お、あった。あれだぜ」
ベングル「スゲェ、海賊船みたいだな」
タクマ「なんでも、ギヴァシュはもともと海賊が描いた設計図をもとにできた
海底国だしな。結構海賊を売りにしてんだ」
ノール「海賊・・・か」
スラリア「ノール?どうかした?」
ノール「いや、別に何でもない。私には全く関係のない話だし、
もう何年も前のものだから」
クレア「それより、早く乗ろうや。客が全員乗り次第潜るんだろ?」
タクマ「一応、ヤンセイハッパだな」
ダバンゴ「ヤンセイハッパ・・・そうだな」
ヒナ「ちょっと。ガスペラス語じゃ分かんないよ」
タクマ「あ、すまん。時間は決まってるって意味だ。つい出ちまった」
ダバンゴ「俺様はつられただけだ」
タクマ「まあ、ヒナもふざけてバグ語出すだろ、あれと同じだ」
スター「あ、足場出てきたよ!」
タクマ「あっと、ちょっと待っててくれ」
船員「アスペラッパテルユウ?」
タクマ「アァ、メイン。セイグッデトランスケッチ」
船員「アビデ」
タクマ「ハンジュウ」
船員「・・・イヅデッド。ベイベイ!」
タクマ「キュキュッタ!おーい、乗るぞ~!」
フラット「わ、訳わかんない・・・」
スラリア「あたしもちんぷんかんぷん・・・」
フォール「お前ら語学ぐらいは勉強しとけよ?ただの宇宙公用語だぞ」
フラット「えっ⁉︎」
エド「訛りこそあったっすけど、ちゃんとした宇宙語っしたよ」
ナックル「フラットは宇宙語なんか勉強してねぇもんな」
フラット「苦手だったからね、重点的にはやってなかったよ」
タクマ「おいおい、ギヴァシュのやつらは宇宙語さえ
ギリギリ通じるかどうかだぞ」
ヒナ「まあ、私達もいるし・・・ね、ダバ君!」
ダバンゴ「だから-ハァ」
ケーベス「お、お前らも到着か!」
コータス「ケーベス、お前の運転のせいでまたエンジンが壊れそうなんだが?
いい加減ワープ中にもブースト機能使うのやめてくれ」
メダイ「だったら学問の神様のコータスが対策すればいいでしょ?」
コータス「あのな・・・コイツは対策すればするほど調子乗って
ダメにするからもう対策しない。ていうか・・・もうコイツに
強化するほどのスペックがないからな」
もうあちこちに傷や凹みのある自家製の宇宙船を撫でながら
コータスは優しい声でそう言った。
クレア「まるで自分の子供みたいに扱ってんだな」
ケーベス「作ったのは俺でも、設計図を書いたのはコータスだしな。
それより早く行かねぇと潜水艦出ちまうぞ」
ベングル「ヤバっ、こんな時間か!」
タクマ「急がねぇとまずいな」
ヒナ「もう、早く行くよ!」
一向は慌てて潜水艦に乗り込んだ。
潜水艦、ホール-
スラリア「スゴォイ!見たことない魚でいっぱい!」
ノール「まるで夢の水族館って感じ。スラリア、写真撮らないの?」
スラリア「撮りたいけど・・・やめとくよ。こんだけ人がいるから」
フラット「まあ・・・うん。それより宿泊券は?」
タクマ「貰ってきたぞ。お前らじゃ会話できないだろ?」
ベングル「俺も基本的な会話しか出来ねぇからな」
ダバンゴ「結局雑用かよ、前と変わらねぇな」
クレア「自分から率先してやっといて愚痴言われてもなぁ」
ナックル「まあコイツはこういうやつだぜ。お?あのドーム状のやつ・・・
あれがギヴァシュか?」
タクマ「ん・・・あぁ、あそこが海水浴場だ。ギヴァシュはもう少ししたら
見えるはずだ-?」
ヒナ「何かあった?」
タクマ「あれ・・・?気のせいか?」
フラット「どうしたの?」
タクマ「いや、一瞬何かが光ったように見えたんだが・・・まあいっか」
スター「・・・ハァ」
スラリア「あっ・・・スターちゃん、やっぱりショック・・・だよね。
でもさ、まだ高2の夏!チャンスはいくらでもあるって!」
スター「・・・チャンスがあっても離れちゃうんじゃ・・・」
スラリア「だよね・・・でも、コータスは気付いてないみたいだし、
もしかしたら言えば考えてくれ-」
スター「それだけは嫌!」
スラリア「・・・そっか。あたしも嫌だもん」
スター「えっ?」
スラリア「良かった、スターちゃんがそんなワガママ言ったら
どうしようって思ってたもん」
スター「スラリアのお姉ちゃん・・・」
クレア「おいお前ら、そろそろ着くってよ」
スラリア「あ、分かった~!」
スター「今行く!」
スラリア「この話はここまで!失恋したわけでもないんだし、
気にしすぎだよ。遠距離だって恋は恋!それでいいでしょ?」
スター「・・・うん!」
スラリア「よし!じゃあ皆のとこに行こっか!」
スター「行く行く!」
7分後-
放送「ギヴァシュ、ギヴァシュに到着です。お忘れ物のないように
ご注意ください」
エド「ラララ、ラッラッララッラ♪」
フラット「ん?エド、その歌ってヒナちゃんの新曲じゃん、
しかも未発表曲」
エド「えっ⁉︎何で知ってるんすか⁈」
フラット「だってあれ、僕が作った曲だもん。ね?」
ヒナ「そうだよ。フラットに一度でいいから曲作ってってお願いしたら
普通にいい曲作ってくれたの!スポンサーになってほしいぐらい!」
フラット「あれマジで言ってたの⁈」
ヒナ「うん、そうだよ?それに皆のライブに参加したいくらいだもん!」
ベングル「おいおい、それはキツくねぇか?」
ヒナ「全然大丈夫だよ。私アルバム全部持ってる上に歌詞もメロディも
覚えちゃったもん!」
ダバンゴ「相変わらずお前の暗記力はエゲツないな」
タクマ「まあ、それがバグ星のやつの特徴だしな」
ヒナ「へっへーん!」
スラリア「でも、凄いよね。あんなに偏見の目で見られてたのに
アイドル活動続けて、しかも自分は地球人とは違うって言い張れるヒナちゃんって。
今のあたしでもそんなに強くなれないよ」
ケーベス「それより、なんか変な感じだな。海の中の国って割には
普通に風にあるし、空気もある」
コータス「空気の原理は分かるとしても、風はどこから・・・」
ダバンゴ「そんなの、パラレルストーンの力に決まってんだろ。
あれがなきゃ海底国なんかまず無理だしな」
コータス「パラレルストーンねぇ・・・何億個ともあるにはあるが
この世界だけで何千万個使ってることやら」
ベングル「たしかにそうだな。ゲートが常に開いてる世界は
ここを含めて5つだけ。他の世界は使ってねぇことになるな」
ノール「そんなこともなさそうだけど。まあ、そんな話より
今は旅行気分でいよう。折角のただ旅行なんだし」
タクマ「・・・ゆっくりしたいのはたしかだけどよ、俺とヒナは
ロケも兼ねてここにいるからあんまりお前らとスケジュールは
あわないぞ。悪りぃな、ダバンゴ。俺がいない時は案内頼む」
ダバンゴ「あぁ⁉︎俺様かよ⁈」
ヒナ「だってダバ君以外に誰がいるの?」
ダバンゴ「ダァカラ!ダバ君はやめろと言ってるだろ!」
ヒナ「えぇ~、絶対良いのに~」
ケーベス「おい、早いとこ宿に向かわねぇと。荷物も取らねぇとだし」
メダイ「ちょ、ちょっと待ってよ~!まだ宇宙船の修理終わってないから~!」
宇宙船からひょこっと顔を出したメダイがそう叫んだ。
フラット「えぇ⁉︎あれって海中もいいの⁈」
コータス「俺の改造でな!まあフラットは知らねぇだろうけどな」
ケーベス「宇宙船の修理は後でもできるから今日はもういいぞ~!」
ノール「ていうか、修理が必要なぐらいガタが来てるならわざわざ自家製の宇宙船で
来ずに普通の旅客船で来ればいいだけで・・・」
クレア「プライドでもあるんだろ?俺達は宇宙船を作れるってな!」
スラリア「でも、メダイちゃんは反対しそうだよね、そういうの」
メダイ「そんなのじゃないよ。ただ見せつけたいだけだもん。
別にこれぐらいの技術力を持ってるって自慢するあれでもないし」
ナックル「それより・・・早く行こうぜ・・・酔った・・・」
エド「えぇぇ⁉︎ちょ、早くそういうことは言えっす!」
ベングル「そういや、ナックラーって酔いやすいっけな、すっかり忘れてた」
ヒナ「じゃあナックラーは・・・しょうがない、私が背負ってくよ」
フラット「へ?」
ヒナはそう言うと、なんとも軽やかにナックルを背負った。
体重は70キロあるにも関わらず。
タクマ「やっぱバグ人は恐ろしいな」
ヒナ「だからこれはお父さんの力だよ!」
スラリア「えっ、ヒナちゃんって地球人じゃないの⁈」
ヒナ「そうだよ。お母さんがバグ人で、お父さんはガジル人。
力持ちで地球人の平均筋質の5倍もあるんだから!」
ダバンゴ「でもよ、ガジル人は民族紛争で絶えないとこだろ?
ヒナにしてみりゃ可愛いもんだ」
ヒナ「よくそう言われがちだけど、本当は違う。民族紛争を続けてるのは
一部の海賊。私達みたいな一般人じゃない」
タクマ「・・・まるで俺達だな。海賊が汚したせいでほとんどの海底国は
公害を引き起こして封鎖された。ギヴァシュだって、元々は
今よりもずっと綺麗だったんだ。見上げれば朝でも海ボタルの
光が見えるぐらいにな」
スラリア「えっ、それって普通暗くないと・・・」
タクマ「そうだ。でもここの海ボタルは地球のとは違って光を
反射して光るんだ。だから朝の方がキラキラと輝くんだよ」
ダバンゴ「お前やけに詳しいな。俺様なんか、ずっとビンの破片だと思ってたぞ」
ヒナ「ねぇ、早く行こうよ~!」
クレア「おっと、ここで駄弁ってる程暇ってわけにもいかねぇか。
折角の旅行だし楽しまねぇと!」
フラット「だね!」
ベングル「それじゃあカメラは俺に任せろ!いい写真撮ってやるよ!」
フラット「あ、持ってきてたんだ。じゃあ早速で悪いけどあれ撮って」
ベングル「あれだろ?もう撮ってあるぞ!」
フラット「早っ⁉︎」
クレア「おいお前ら~!」
フラット「あっ、ごめ~ん!」
ベングル「今行くぞ~!」
2人は宿に向かっていく全員を追いかけていった。
船上宿、ル・シャルテー
フラット「凄い・・・これ船だよね⁉︎」
タクマ「元々はギヴァシュの上を通ってた豪華客船ル・シャルテ号だ。
そのまんま宿にしてるから居心地も1番だ!」
ダバンゴ「俺様から見たら、こんな綺麗な船は居心地悪りぃけどな」
ヒナ「海賊船に乗ればそりゃまあそうなるよね」
クレア「ん?すっとこどっこいはどうした?」
ヒナ「医務室で寝かせてる。それよりプール付きなんだ!折角だし
泳いでこうよ!」
タクマ「お、いいな!海水浴の前に泳いでくか!」
フラット「えっ・・・泳ぐの?」
フォール「お、いいなそれ!フラット~、お前も早く来いよ?お前らも行くだろ?」
スラリア「そうだね、新しく水着買ったばっかだから慣れときたい」
クレア「俺もまあ、仕事の疲れを取るためにも」
エド「クレアは疲れるほどやってないっすよ!まあ、俺もサッパリしたいっすし
プールで泳ぎたいっす」
ノール「みんなが行くなら私も」
スター「今は・・・泳ぎたい」
スラリア「あ、まあそうだよね!嫌なことは運動して忘れちゃおっか!」
ベングル「俺は・・・まあナックラーもただ酔っただけみたいだし
泳ぎに行くか」
フォール「つまりは全員参加だな。てことで監察役である隊長が
いなきゃいけないわけだ」
フラット「うぐっ・・・分かったよ、でも水着は-」
ヒナ「水着着なきゃ入れないよ?」
フラット「えっ⁉︎」
フォール「残念だったな、フラット」
フラット「・・・ハァ~」
とてつもなく重いため息をフラットはついた。
プール-
クレア「え~っと?俺が1番か」
エド「残念っすね、俺が1番っすよ!」
クレア「別に張り合ってねぇよ。お前は子供か?」
エド「プールなんすからはしゃいだって良いじゃないっすか!」
ノール「まあ、童心に帰るのもたまにはいいことだし」
ヒナ「あっ、もう着替え終わってたの?早いね~」
ノール「スラリアはまだだけどね」
フォール「よ、あとはベングルとスラリアにフラットだけか」
ヒナ「タクマとダバ君もね」
ダバンゴ「だからダバンゴと呼べと-」
タクマ「うっせぇ!」
ダバンゴ「あっと、すまねぇ」
タクマの耳元で怒鳴ってしまい、タクマに怒られてダバンゴは
一気に縮こまった。
ヒナ「それにしてもスラリアちゃん遅いな~」
スラリア「ごめ~ん!遅れちゃった!」
ヒナ「あ、やっと来た。待ってたんだ・・・よ?」
階段から降りてきたスラリアの胸がヒナの目に映った。
ヒナ「・・・スラリアちゃんの裏切り者~!」
そう叫びながらヒナはプールサイドの方へ走っていった。
スラリア「えっ、えぇっ⁉︎ちょっと⁈」
ノール「あ~あ、乙女の悩みを・・・」
スラリア「し、知らないよ!それよりフラットとベングルは?」
ベングル「おーい!フラットのやつが閉じこもって出てこねぇんだ、
どうにかしてくれ」
フォール「あぁ、だったら多分もう出てきてるぞ。アイツのことだし・・・
絶対あそこだな。ちょっと待ってな」
フォールはシャワーを浴びて、その水を男子更衣室の屋根に向かって
放射した。
フラット「わわっ、冷たっ⁉︎」
フォール「お前の隠れ場所なんかお見通しだっての!ったく、
お前は変わらんな」
フラット「ハハ・・・もう、水着でいたくないのに」
仕方なさそうにフラットはピョンと屋根から飛び降りた。その姿に-
全員「えっ?」
フラット「あ~もう!だから嫌だったの!」
フォール「やっぱ相変わらずお前はいい体してるよな・・・」
クレア「私服じゃ分かんねぇのに・・・」
フラット「もう、さっさと行くよ!泳ぎは得意だからね、言っとくけど!」
フォール「あぁ、泳ぎだけは、な」
フラット「フォール、一言余計」
フォール「へへ、こりゃ失礼」
フラット「だから水着着るのは嫌だったのに・・・」
「イ~ヤッフ~‼︎」
「ラルバ!飛び込むな!」
プールの方から聞き覚えのある声が響き渡った。
ノール「今の声・・・厄介なことにならないといいけど」
スラリア「それより、ヒナちゃん探さないと」
ダバンゴ「探さなくていいんじゃねぇの?騒がしいやつが減ってくれりゃあ
俺様は充分だしな」
クレア「お前、本当に海賊にいたのか?」
ダバンゴ「別に海賊全てが騒がしいわけじゃねぇよ!」
ベングル「にしては、昔のお前は今よりずっと騒がしかったがな」
エド「でも、ナックラーさんも運が悪いっすね。折角プールに
来れたっすのに」
ノール「まあバカ虎のことだしキウイでもあげれば一瞬で忘れるでしょ。
だからアイツに同情せずに遊ぼうか!」
メダイ「ちょっとは待ってよ~」
コータス「何俺ら忘れてんだ⁈」
フラット「えっ、だって宇宙船の修理するって・・・」
コータス「何言ってんだ、そんなのいつだってできるだろ?だったら思う存分遊んで
その後にやればいいだろ?」
フラット「まあそうだけど・・・ケーベスは?」
メダイ「ほら、ケーベスは水がね?」
フラット「あ、そうだっけ・・・水嫌いだっけ」
クレア「そういや・・・スターは⁈」
エド「あ、忘れてたっす。俺1番じゃなかったっす。スターが
1番最初にプールに来てて俺に嘘つくように頼んだんすよ。先に泳いでるからって」
フラット「・・・コータス、土星に行って何がしたいの?」
コータス「はぁ?そりゃあパラレルストーンよりも使い勝手がいい
エネルギー、反物質の研究だ」
フラット「そっか・・・知り合いとかいなくなると思うけどいいの?」
コータス「お前さっきからどうした?やけに俺の心配してくるが・・・」
フラット「い、いやまあ・・・コータスが周りに迷惑ばかりかけてることを
知らない人の心配をしてるだけだよ」
コータス「あぁ、なんだそういう・・・⁈待て、どういう意味だ⁉︎」
メダイ「フラット、こんなバカは置いて先にプール行っちゃお?」
フラット「ちょちょ⁉︎待って、上着着るから・・・」
手に掛けていた防水の上着を羽織り、フラットはプールに向かっていった。
メダイ「えっ、ちょっと・・・先に行かないでよ~!」
慌ててメダイもフラットを追いかけていった。
ノール「じゃあ、私達も行こっか」
ベングル「だな。ダバンゴ、いつもの調子で泳ぐなよ?」
ダバンゴ「俺様をバカにしてんのか⁉︎」
エド「こんなとこでケンカしないでくださいっす!」
コータス「みっともないぞ」
フォール「お前ら、泳ぎに来たんだよな?早く行くぞ」
ノール「フラットがいないだけでこんな統率力にないチームになるのか・・・」
フォール「だったら俺が今だけ隊長代理だ、行くぞ!」
全員「あ、はーい!」
フォール「返事は伸ばさない!」
全員「はーい」
フォール「ぐっ・・・もういい、さっさと-」
全員「はーい」
フォール「・・・っ!」
(こ、ここは我慢だフォール!ここで怒れば完全に思う壺だ・・・
落ち着け、落ち着け・・・)
ノール「おーい、置いてくよ~?」
フォール「なっ・・・待てお前ら~!」
怒りを堪えるフォールを置いて先にプールサイドに行っていた全員に
フォールの堪忍袋も臨界点を突破して大噴火を起こして、猿のように
頭を真っ赤にしながら一気に全員を追いかけた。
フラット「なんかプールサイドの方騒がしくない?」
メダイ「だね・・・何かあったのかな?」
フラット「まあいっか。じゃあ折角だし泳ごうかな、暑いし」
上着を脱いでフラットはプールに足を入れたその瞬間だった。
「オーレイ!」
フラット「ドワ⁉︎」
誰かが背中を押してその勢いのままフラットは水の中に落ちた。
デラガ「おいラルバ⁉︎今何した⁈」
ラルバ「あ、あはは・・・気づいてるかと思ってつい・・・」
フラット「ゴッへ⁉︎し、死ぬぅ⁉︎」
メダイ「だ、大丈夫?」
フラット「ラルバ!プールサイドで、しかもプールに入ろうとしてる人を
押さない!危険!」
デラガ「悪い、俺が見てなかったばっかりに・・・」
メダイ「いや、デラガ警部のせいじゃないって。そこのおバカ巡査のせいだから」
フラット「流石に今回は罰ゲームだね・・・神業・束縛!」
ラルバ「えっ⁉︎」
フラット「か~ら~の~!ドッセーイ!」
神器に束縛されたラルバを、フラットは底の深いプールの方へ投げた。
デラガ「お~・・・アイツにはいい罰かもな」
ラルバ「プハァ!フラットさん、もう一回!」
フラット「・・・へ?」
ラルバ「聞こえなかったですか~⁈もう一回お願いします!」
フラット「ば、罰になってない・・・」
メダイ「まあ・・・あれかな?ウォータースライダーみたいな感じだったのかな?」
フラット「いや、トンネルもないし完全に空中に投げ出されてるんだよ?
それでウォータースライダー気分って・・・」
デラガ「忘れてた、アイツはああいうやつだったな」
フラット「ハァ~、怖いもの知らずって1番怖い」
メダイ「だったら誰でも怖がるような罰ゲームにすれば?」
フラット「あ~、それいいね。じゃあやってみる。神業・幻影与罰!」
ラルバ「ん・・・んん⁉︎」
ラルバの視界にはなんと鮫やシャチが水中にいるのが見えていた。
もちろんそれは幻術で、本当はそこに子供用の浮き輪があるだけである。
しかしあまりの恐怖に1人でワーワー騒ぐラルバは周りから見れば
ただの狂人としててでしか思われず、冷たい目で見られていた。
デラガ「アッハハハ!アイツには分からない罰だな」
フラット「そのうち気づくよ。もうそろそろ幻術も解けるから」
ラルバ「わわわっ-あれ?」
目の前にいたはずの鮫やシャチが一瞬で姿を消し、ラルバは呆然と
立ち泳ぎしていた。そして、ラルバに向けられていた冷たく尖った視線に
ようやく気がついた。
ラルバ「えっ、えっ⁈いやたしかに鮫が!」
と言って指差したのは、子供用の鮫型の浮き輪だった。
ラルバ「へ・・・?」
「大丈夫かしらあの人・・・」
「あの人変だよね?」
「こら、そういうこと言っちゃダメ!」
ラルバ「ま、まさか・・・!」
フラット「ラルバが軽犯罪法違反だからね。許す代わりにちゃんとした罰を
執行したまでだよ?」
デラガ「お前にはお似合いだな!」
ラルバ「そんなぁ!」
ヒナ「あれ、ラルバ巡査?お久しぶりですね、こういう機会で会うの」
ラルバ「ヒ、ヒナさん⁉︎まさかロケで⁈」
ヒナ「それもありますけど、主には休日です!ロケと言っても、
最近やっと作った小鳥の休日チャンネルの撮影です!」
ラルバ「えっ、じゃあ動画の編集も⁉︎」
ヒナ「それはタクマがやるんです。と言っても、まだ全然メンバーが
決まってなくて。だから募集中です」
ラルバ「だったら-」
ヒナ「あっ、できればデ・ロワーの皆さんには声かけしないでくださいよ?
あの人達忙しいですから」
ラルバ「え~っと・・・ライタさんを・・・」
ヒナ「えっ、ライタさん?」
ラルバ「冗談ですよ。それより、フラットさーん!」
フラット「じゃあ僕達は普通にプール行こっか」
デラガ「そうだな。アイツは放っといてもいいだろ」
フラット「じゃあ自分で戻ってきてね~!」
ラルバ「えぇ~⁉︎」
ヒナ「あ、じゃあ私も大プールの方に行ってよ。じゃあまた!」
ラルバ「ちょ、えっ・・・本官も行きます~!」
こうしてフラット達の夏休みが幕を開けた。息を殺して潜む、
ある存在に気づくことなく-
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