第25話 2節 初のロケ地にて
バーデル宇宙港ー
ベングル「いや~、焦ったな」
クレア「食事で結構時間とったせいでな」
スラリア「だから朝食は食べてきた方が良かったのに」
フラット「にしてはスラリアも空腹に任せてスイーツ食べてたようにも
見えたけど気のせい?」
スラリア「スイーツは別腹なの!別腹が空いてただけ!」
ベングル「どんな理論だよ」
グリオ「悪かったな、眠ってて」
クレア「全然、気にすんなよ。四大グループの仕事なら疲れちまうよな」
ライタ「仕事・・・俺、軍職ばっかで仕事したことない・・・」
フラット「大丈夫、ファイターだって案外変わんないよ。営業回ったり、
イベントやったりが主だから」
ライタ「営業とか分からんだよ!」
フラット「まあ営業はもう十分だけどね」
クレア「だよな、女組が優秀で助かるわ~」
スラリア「フラットも最初は優秀だったのにね」
フラット「ちょっと、その言い方はー」
「あ、演者入りでーす!」
「あいよ・・・?」
フラット「えっ・・・えぇ~⁉︎」
なんと番組のスタッフはフラットのよく知る2人だった。
シャン「ウッソー⁉︎聞いてないけど⁈」
ユーリック「ビックリ!まさかアンタ達が来るとは夢にも思ってなかった!」
それはフラットの義姉でありアカデミーの社長であるシャンと
スターの義姉であるユーリックの2人だったのだ。
クレア「お前ら、何がどうなってここに⁉︎」
シャン「私の事務所のスタッフなんだよね、探検隊って。でもちょうど風邪で
来られなくってね。仕方なく私達が出向いたってわけ」
ユーリック「しかも、アポなしで誰か来てるみたいだけど・・・
カメラはNG的な感じ?」
ライタ「そうしてもらえると嬉しいです」
ベングル「まあ今日はまだ撮影しないだろ?たしか1週間のうち、
3日間だったよな?」
ユーリック「そう、あとは自由に過ごしてもらって大丈夫って聞いてる」
スラリア「でも音楽活動の方はいいんですか?」
シャン「あぁ、いいのいいの。ちょうどバーデル星でのライブだし、
そっちのスケジュールと合わせて撮影日も決めてあるから何も問題なし!」
ユーリック「あたしが問題大有りなんだけど・・・いっか。面白そうだし」
ライタ「あっ、今日は撮影なしって感じ?」
フラット「そうみたいだね。そういえば何でライタはバーデル星に?
何か見たい物でもあった?」
ライタ「あ、いや、会いたい人がいたからで・・・」
フラット「会いたい人・・・?」
ライタ「うん、バーデル星に引っ越した俺の旧友が店を開いたって
言っていたから丁度いい機会だったし行こうかなって」
スラリア「お店って?」
ライタ「なんでも骨董品屋って聞いています」
クレア「骨董品か・・・?あまりいい噂聞かないが・・・」
ベングル「そうか?まあ行ってみようか!俺達は特にすることもねぇしな!
先に街を回るついでだ」
グリオ「そうだな。ブラブラ旅って感じでな」
ライタ「アイツの店はこっちって聞いてるから・・・行こうか」
やはり少しぎこちない口調でグリオは全員をその店に連れて行った。
商店街ー
フラット「へぇ~、バーデル星の商店街って螺旋状になってんだ」
クレア「ん?おい、見てみろよ!めっちゃいい眺めだぞ!」
スラリア「本当だ!すっご~い!」
ちょうど夕暮れ時のバーデル星の街並みが目の前に広がっていた。
その光に照らされた景色は地球の秋とはまた違う夕暮れを醸し出していた。
ライタ「・・・すごい・・・」
その景色に見惚れて、ライタの瞳は大きく開いていた。
ベングル「・・・それより、その骨董品屋はどこにあるんだ?」
グリオ「おい、ベングルー」
ライタ「づ、すみません!今案内しますので-あ・・・」
どうしても口癖になってしまっている敬語にライタは嫌気がさしているのか
うっかり口に出てしまった敬語をはにかむように唇を噛み締めていた。
クレア「そんな簡単に口調なんか変わんねぇっての。ゆっくりでいいからよ、
普通に会話できるようになろうや」
スラリア「あたしだって皆と馴染むのに1ヶ月はかかったから大丈夫!
ライタさんならもっと早く馴染めるって!」
ベングル「お嬢ちゃんの意見は論点ズレズレだが・・・まあその通りだな。
フラット達が誰かを置いてくような真似しねぇってことは俺が
断言するぞ!」
「あの、お店の前で屯ってもらっては困りますので・・・」
ライタ「あ、ごめんなさい-!あぁ!」
青毛狼獣人「ライタ⁉︎どうしたんだよ⁈」
ライタ「久しぶりだな、ラッシュ!」
ラッシュ「あぁ、お前、軍辞めたって本当か?」
ライタ「・・・あぁ、辞めた。でも後悔はしてない。ここにいるフラットが
教えてくれたからさ」
ラッシュ「そうか・・・何を?」
ライタ「軍の誇りよりも、俺として生きろってことをな」
フラット「それを教えたのは僕だけじゃないけどね。そうでしょ、クレア?」
クレア「お、俺は・・・親父のこと勘違いしてたから言わなくていい」
スラリア「でもいいじゃん、カッコよかったよ?」
クレア「いや、俺はあんな風に誰かを責めたくねぇんだ。まだまださ」
ベングル「にしてもここが骨董品屋か・・・案外きらびやかな物は
売ってないんだな」
ラッシュ「バーデル星には宝石という宝石がないですからね。
ただ原生している木や花が貴重で、それらを使っている品は
地球の宝石を使ったものと同じ価値があるかと」
グリオ「・・・えっ⁉︎この木の小さな木造でも14万⁉︎」
ラッシュ「それはオオシラガスギという木で作られています。
真っ白な葉っぱで覆われている杉の木で、この星にしか原生していない
数少ない木です」
クレア「なんか自然に詳しいな」
ラッシュ「骨董品屋もありますけど、私はここら辺の自然環境を
守っているんです。あとこの街の名所といえば幻想の泉と呼ばれる、
七色の木々に囲まれた、不思議な泉です」
スラリア「えっ、何その場所!行ってみたい!」
ベングル「撮影は明明後日からだし行ってみるか?」
ラッシュ「それは良いんですけど、明日からお祭りですので
人混みには気をつけてくださいね。かなり混雑するので」
ライタ「もうそんな時期か・・・久々に参加しようかな・・・」
ラッシュ「やめとけ、お前騒がしい場所は嫌いだろ?」
ライタ「嫌いというか、ただ離れてただけ」
ベングル「ならこれからは近づく一方だな!」
フラット「ていうか祭りだったんだ。だからさっきから屋台の準備してる人が
多かったんだね。なんの祭り?」
ラッシュ「はい、明日は羽休みの日と言って、バーデル星に住む全ての人が
休んで家族や大事な人と一緒に楽しい時間を過ごすという日なんです。
その時間を作るためのパレードをこの商店街でするんです」
グリオ「パレードか・・・久々にハメでも外すか」
ラッシュ「そして何より、この商店街の200周年祝いも兼ねていますので
とても豪華なものになっていますよ」
フラット「じゃあ明日を待とっか」
スラリア「そうだね、今日は街を見学しよっか」
今日1日は街を見回るだけにすることにして、全員はラッシュに
案内されながら町中を歩き、今日は終わった。
翌日-
フラット「おはよう~、よく寝れた?」
クレア「最っ高!あんなフッカフカなベッドで寝られてこんな格安な宿、
地球じゃ絶対有り得ないな!」
スラリア「だよね!部屋もとにかく綺麗だった!」
ライタ「よく寝えられたよ。あと、バーデル人はお金に興味がないというか
お金よりも自分が好きなことをできれば良いって考えだから
やりがいさえあればお金は二の次ですよ」
ベングル「実際、マドールだってそうだろ?」
グリオ「オーダーメイド制の服なのにブランド品くらいの値段で
買えるなんて普通じゃないからな」
フラット「たしかに、言われてみればそうかも・・・」
宿のロビー辺りで全員はパレードの開始時間を気にしながら
駄弁っていた。すると-
ガッシャーン!
という音と同時に、その音に紛れて誰かの半狂乱したような叫び声が聞こえた。
フラット「⁉︎何今の⁈」
スラリア「行ってみよう!」
ベングル「3時の方向・・・ちょうど商店街の辺りだ!」
クレア「ちぃ、よりによってこんな時に!」
全員は急いで音のした方へ急行した。
商店街-
ヴァイス「黙れ黙れ黙れ!アァァァァァァァァ!」
フラット「な、何してんの⁉︎」
1人のヴァイスが、何もない場所で、そうまるで空気と戦っているように
全員の目には映っていた。
ヴァイス「黙れぇ!」
そして叫んでは壁を殴ったり窓を割ったりと、かなりの損壊を
繰り返していた。その手は既に血だらけだった。
フラット「とりあえず止めないと!神業・束縛!」
神器・グラディウスがヴァイスを縛るも-
ヴァイス「ダァァァァァァ!」
暴れ回る象さえ簡単に縛り上げたその術を、ヴァイスはなんと抜け出した。
スラリア「えっ・・・ど、どうなってるの⁈」
ベングル「おいおい、ナニモンだコイツ⁉︎」
ラッシュ「何の騒ぎ-⁉︎」
その場に駆けつけたラッシュも驚いた表情を見せた。
ライタ「脳の抑制機能が働いていない・・・このままだと死ぬな」
スラリア「だったら・・・神業・ソウルブレイク!」
魂の死が近づくと有効になる神業を使うも、そのヴァイスは
気にすることなく暴れ続けていた。
スラリア「な、何で⁉︎」
ラッシュ「ちょっと失礼・・・神業・異常把握・・・どうやら、脳全体が
麻痺しているようです」
ベングル「要するに、本能だけで動いてるってわけか」
グリオ「だが脳が麻痺してるなら普通は倒れるはずだろ」
クレア「ショック状態に陥りながらあんなに暴れてるのか?」
フラット「・・・ちょっと危険だけど止めるよ!このままってわけにも
いかないでしょ!」
クレア「だな!指揮は任せた!」
スラリア「できればベングルさんもお願いします!」
ベングル「あったぼうよ!じゃ、頼むぜ相棒!」
フラット「オッケー!各隊員、ファイターモード起動!」
全員「了解!」
3人は同時にファイターモードを起動した。
ライタ「俺からも頼む!市民を脅かす存在なら放ってはおけません!」
フラット「じゃあ契約書だけ貰うよ!」
ライタ「・・・はい!」
フラット「・・・オッケー!」
ライタ「ライタ・ガブル、参ります!」
ラッシュ「SFA総司令官、ファイターモードに移行します。
指揮の方、宜しくお願いいたします!」
フラット「ラッシュさんってSFAのファイターだったんだ・・・」
SFAとは宇宙闘人連合の略称である。
ヴァイス「消えろぉぉぉぉぉぉ!」
クレア「第一突風『炎』術・『四方爆破之矢』!」
ラッシュ「第一抜刀『光』術・『光消嫌悪斬』!」
ヴァイス「っ⁉︎」
しかし攻撃を受けて傷ついても、ヴァイスは動じることなく
暴れ続ける。
クレア「コイツ、死んじまうぞ⁉︎」
スラリア「どうするのこれ⁉︎」
ライタ「お任せください。第一指令『零』術・『波紋之静粛令』!」
ヴァイスに向けて飛ばされたライタの神器が、ヴァイスを気絶させた。
ライタ「スラリアさん、後はお任せします」
スラリア「うん!今なら・・・大丈夫かな。神業・鎮静之ソナタ」
スラリアの神器が奏でるメロディが暴れ続けたヴァイスの魂を
落ち着かせていく。
スラリア「とりあえずはこれで良いと思う。でも・・・急にどうしたんだろう・・・」
フラット「でもファイター関連法違反ではあるからね。責任を取れるかどうかは
病院に行ってから出ないと何も言えないから」
ラッシュ「・・・?何でしょう、急に風が・・・」
さっきまで吹いていなかった風が冷たく吹き始めた。それと同時に
不気味な音を奏でながら。
クレア「お、おい・・・これ風じゃねぇぞ!」
スラリア「待って、何これ・・・幽霊⁉︎」
2人の神力で感じられたのは、今吹き始めた風は風でないこと、
その中にいくつもの魂が紛れ込んでいるということだった。
フラット「・・・!ちょっと待って、商店街の様子おかしくない⁉︎」
その風に当たった人達が次々と頭を抱え込み、次第にはうめき声を上げたり、
涙を流す人も現れた。
クレア「な、何だよこれ・・・⁉︎」
スラリア「多分この風のせいだよ!早く止めないと!」
クレア「あ、あぁ!神業・霧払!」
クレアを中心に渦状の風が吹いた。それによって怪しい風は
かき消された。
「・・・あれ・・・?」
「何だったんだ、今の・・・」
フラット「とりあえず何があったか聞いてみよう!情報が集まるかも!」
スラリア「そうだね、やろう!」
ベングル「俺も賛成だ!」
ライタ「俺は怪我をした人の治療に!」
ラッシュ「ライタ、俺も手伝う!」
グラディウス「私は情報収集に!」
フラット「じゃあ各自分かれて行動!」
全員「了解!」
フラット「あの、さっきは?」
「それがよく覚えてないのよねぇ~・・・まるで夢を見てたような・・・
でもすごく幸せな夢だったのは覚えてるわよ」
フラット「そ、そうですか・・・」
スラリア「そうです、さっき泣いていた時!」
「何故だか思い出せないんだよなぁ・・・夢見心地というかね」
スラリア「夢?」
「でも何だかすごく懐かしい気持ちで一杯なんです」
スラリア「へ、へぇ~・・・すみません、変なこと聞いちゃって」
ベングル「そう!そん時!」
「悪いけど記憶にないねぇ。そんなことあった?私が泣くだなんて、
せいぜい大事な誰かを失う時ぐらいなものよ。あ、でも何だか悲しいような
嬉しいような気持ちで一杯なのは確かだわ」
ベングル「あお、そうか・・・気をつけてな、おばあちゃん」
ライタ「あのヴァイスが暴れる前、何をしていたか分かります?」
「別に普通に開店作業してたよ。いつもは優しい人なんだけどねぇ」
ラッシュ「じゃあ急に頭を押さえ込んであんな風に暴れ回ったんですか?」
「そうそう、良かった、近づかないで。私心配して近づこうと
しましたもん」
ラッシュ「・・・」
グリオ「えっと・・・落ち着いて」
「落ち着いていられるか!何だか知らんが無性に気が立って仕方ない!
あぁ~もう!どいて!パレード気分じゃないから帰る!」
グリオ「あ、ちょっと!・・・?」
3時間後-
フラット「ダメ、誰も覚えてないってさ」
クレア「でもよ、あの風に当たって何も俺達に異常がねぇってことは
あの風は魔力ってことだ」
スラリア「でも魂は・・・あれは本物だったよ?」
ラッシュ「・・・『あそこ』か?」
フラット「あそこって・・・何か知ってるんですか⁈」
ラッシュ「ここら辺にしか伝わっていない御伽話ですけどね。
前にも話した幻想の泉、あそこに辿り着くためには死の森と呼ばれている、
迷路のような森を抜けなければならないのです。先ほどの風は
ちょうどその死の森から吹いてきたように思います」
フラット「じゃあ・・・行ってみる価値はありそうだね」
ラッシュ「だ、だめですよ!あそこはとても貴重で、尚且つあそこにしか
原生していない生物や植物でいっぱいなんです!立入禁止エリアにも
認定されていて入ることはできませんよ!」
フラット「てことは、ファイター案件としては入れますよね?
だったら確実な証拠さえ見つければ-」
グリオ「それは無理だな。誰も何があったか覚えてないみたいだしな」
ベングル「証拠のしの字もないって感じだ」
フラット「あ~・・・証拠なしなんだ・・・」
クレア「それどころか、見てみろよ」
商店街組合長「今日はこの商店街が成立されて200周年です!
盛大にお祝い致しましょう!」
という声と同時に200周年を祝う音楽が始まった。
スラリア「さっきまであんなことがあったとは到底思えないね・・・
本当に覚えてないんだ」
クレア「まあその方がいいだろ。あんなにうなされてたんだ、
忘れちまった方がいい」
ベングル「まっ、次何か起こったらその時に証拠でも掴めば
いいんじゃねぇの?」
フラット「でもこのロケ期間にまた起こるとも考えにくいけど・・・」
スラリア「あんな量の魂、ずっとあそこに留まり続けることは
できないよ。多分また起きるよ、見積もって明日にも」
ベングル「明日⁉︎毎日ってことか⁈」
スラリア「あれだけの魂があの変な風にまとわりついてるなら
ありえなくはないよ。あたしもあんなの初めて見たけど・・・」
「なになに?幽霊が出たって本当?」
フラット「うっわぁ⁉︎なんだ、姉ちゃんか」
シャン「ちょっと、私が幽霊みたいに驚かないでよ」
ユーリック「さっき変な夢の気配があったから来てみたんだけど」
フラット「夢・・・そうだ!ユーリック、ちょっと相談なんだけど-」
シャン「その前に!フラット、その風には気をつけること、いい?
私と同様、アンタは負に偏ったらまずいからね?」
フラット「分かってるって。というより、いつも負に偏ってる姉ちゃんこそ
気をつけた方がいいと思うけど?」
シャン「私があんな程度の魔力に負けるとでも思ってるの?」
フラット「何でもいいけど油断大敵だよ。あの魔力・・・ただの魔力だとは
思えないからね」
ユーリック「で?あたしに相談って?」
フラット「あ、ごめん。明日も異変が起こると思うから、その時に
夢の気配を感じたら入り込んでほしいんだ」
ユーリック「そういうのならお任せあれ。あたしの神力で夢の全てを
明らかにしてみせるよ!」
スラリア「でも、ユーリックの情報だけじゃ証拠には・・・」
クレア「そうだな、証拠にはなんねぇ」
フラット「まぁ、せめてそんなことが起こってるのかさえ分かれば
良いからさ。僕達は風の出どころとどんな被害が起こっているかを
映像に収めれば良いんだよ」
ベングル「つまりは俺達が証拠を突き止めてユーリックが異変の全貌を
集めるわけだな!良い作戦思いつくじゃねぇか、流石はデ・ロワーの
隊長なだけあるな!」
グリオ「最初はただの無謀隊長かと思ったがな」
シャン「それこそ、私自慢の義弟だよ」
ユーリック「お前は本当ブラコンだよね。気持ち悪いぐらい」
スラリア「えっ、クレアと一緒じゃん!」
クレア「な、俺がシスコンって言いたいのか⁉︎」
スラリア「だってスターちゃんが遠く行くだけで心配するじゃん」
フラット「あぁ~、してるしてる」
ベングル「妹想いでいいやつじゃねぇのか?」
グリオ「思いすぎるのも逆にだめな時だってある」
ラッシュ「皆さん、そろそろお客さんで溢れかえるので通路のど真ん中からは
避けた方がよろしいですよ」
ライタ「それもそうか。それとフラットさん、さっきは急な要望に
答えてくれてありがとうございました」
フラット「う、うん・・・」
やはり敬語調のライタを気にかけながら、フラットは全員と一緒に
ラッシュの店に入って行った。
骨董品屋-
シャン「まあ、今は今を楽しも!」
クレア「ハァ⁉︎」
フラット「姉ちゃんはこういう性格なんだ、まあ僕も賛成だけど」
スラリア「フラットも⁉︎」
フラット「だってもうこれ以上話すことはないし。ほら、商店街で
ショッピングでも楽しもーっ!」
ベングル「だな。明後日からは撮影も始まるし、今体力使っちまったら
それこそアウトだしよ」
グリオ「ということだ。流石はアカデミーの社長、頭が回っている」
ライタ「というより、ただ直感で動いてるようにしか見えないが・・・」
ラッシュ「あっと、そろそろ回転時間!すみません、正面玄関の鍵を
開けに行ってます!」
急いで出入り口の方へラッシュは走っていった。
フラット「じゃあ今日は解散。あ、あのヴァイスには警戒しといてね。
落ち着いてるとは言っても、まだ安心の保障はできないから」
スラリア「そうだね。もしも魂に魔力がこびりついてたら、
スターちゃんがいないと助けようがないからね」
クレア「お~い!こっちにスラの好きそうなケーキあるぞ~!」
フラット「あ、僕も行く~!ライタも行こっ!一緒にケーキでも
食べようよ!この1週間は慰安旅行でしょ!楽しもうよ!」
ライタ「・・・うん、行きたい!」
フラット「よし、決まり!姉ちゃん達はもうどっか行っちゃったし、
僕達だけで自由に回ろっか!」
ライタ「そうし・・・よう!」
フラット「・・・じゃあレッツゴー!」
ケーキ屋-
スラリア「わぁ~!どれもこれも美味しそう!」
クレア「だな!じゃあ俺は~・・・」
フラット「ライタは決まった?」
ライタ「い、いや・・・こういうものは食べたことがなくて・・・」
フラット「あっ・・・じゃあ僕が庶民的な物を選んであげるよ!
そうだなぁ・・・まずショートケーキは確定で、チョコムースかな。
で・・・チーズケーキにミルクレープっと。うん、こんな感じかな。
折角のケーキバイキングだし、もっと食べていいからさ!」
フラットは笑顔でライタにプレートを手渡した。
ライタ「あ、ありがとう・・・」
フラット「じゃあ席つこっか。2人も・・・っていないし」
クレア「お~い!遅いぞ~!」
フラット「あ、もう、先行ってるなら言ってよ~!僕達もあそこで食べよっか」
ライタ「そう・・・だね!」
2人はクレア達の座る席に向かった。
フラット「じゃあライタ。まず一口!」
ライタ「う、うん・・・」
フラットに勧められるがまま、ライタはショートケーキ一口分を
口に入れた。その『初めての味』に、気付けばライタはスプーンを
プレートに落としていた。
フラット「あ、あれ⁉︎嫌い・・・だったかな?」
ライタ「!い、いやその・・・美味しいんです・・・こんなに美味しいの・・・
初めてだったからつい・・・」
今まで自分が食べていたもの、そしてその食卓がライタの頭によぎった。
それは贅沢のぜの字もない質素な料理を、1人で黙々と食べているだけの
寂しい時間だった。
ライタ「・・・だから・・・俺・・・こんな楽しい食事・・・生まれて初めてで・・・!」
フラット「ライタ・・・」
ライタ「俺、やっぱり変ですよね・・・軍人を辞めて一般人になってから
周りからは変としか見られなくなって・・・辛くて・・・!」
スラリア「・・・分かるよ、その気持ち。誰も理解してくれようとしない痛みは、
あたしもよく知ってる」
ライタ「えっ?」
スラリア「あたしもね、フラット達と会う前までは殺し屋って呼ばれてたの。
死神だからっていう理由だけで勝手な空想話を作られて信じられて・・・
でもね、フラットとクレアの言葉があったから今はもう平気なんだ。
どんな目で見られようとあたしはあたし!それで良いって分かったから」
ライタ「・・・俺は・・・俺・・・」
フラット「ライタ、じゃあ明日はどこ行く?」
ライタ「明日・・・?」
フラット「今日は買い物して、明日はじゃあ遊びに行こっか!
それで明後日からは撮影だからあれだけど最終日にはお土産買ったり
また色々楽しもっか!」
ライタ「・・・フラットさん・・・ありがとうございます!」
フラット「その前に、まずは敬語を直さないとね」
ライタ「・・・!」
その言葉に、ライタは聞き覚えがあった。それはまだ子供の頃に-
ラッシュ「敬語なんか使うなよ!俺らは友達なんだからさ」
と、ラッシュの口から飛び出した言葉だった。
ライタ「・・・なんで忘れてたんだ・・・?それに・・・確かその時・・・」
ラッシュ「何で軍人なんか目指してんだ?」
ライタ「ーーーーーーーー」
ライタ「俺・・・なんて言った?なりたいからなんかじゃない、
何かあったはずだ・・・」
フラット「どうしたの?食べないと勿体無いよ?」
ライタ「・・・あ、そうだな!」
フラットの言葉で思い出せなかったが、ライタはその記憶を探るのを
無意味だと考えた。自分はもう軍人ではない。そう考えたからである。
ライタ「・・・これも美味しい」
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