第25話 幻惑のゴーストフォレスト 1節 テレビ出演決定!

7月上旬-

全員「テレビ局からオファー⁉︎」

ペーター「そうなんだよ、でも出れるのは3人だけ。決めてくれるかい?」

ノール「その収録はいつになる⁈」

ペーター「明後日からだけど?」

クレア「だぁぁ!そういうのは早く言えって何回言えばいいんだ⁉︎

もう予定入っちまってるよ!」

スター「もう!スターも部活オッケーって言っちゃったよ!」

エド「その日なら大丈夫っすよ」

ナックル「明後日だろ?明後日は・・・」

フラット「赤点補講」

ナックル「あっ・・・」

フラット「やっぱり忘れてたか・・・勉強してないなぁとは思ってたけど、

本当に忘れてるとはね・・・」

フォール「俺は予定ないぞ」

フラット「いや、フォールが来てもなぁ・・・」

ノール「私も特にはないけど」

スラリア「あたしも大丈夫。って、ノール仕事明後日からあるでしょ?

何サボろうとしてんの」

ノール「いいじゃん、サボり魔が2人から3人になるくらい」

スラリア「何言ってんの、テレビに出られるのは真面目でなるべく地味な

格好をしない、そうあたしみたいな人にしか務まらないんだよ?」

ノール「・・・なーに気取っちゃってんの?」

スラリア「ふふーん、舞い上がっちゃってるだけだよ」

フラット「で、後1人だけど・・・いないならデ・ロワーと契約だけはしてる

ファイターを出すことになるけど・・・良い?」

フォール「だから俺空いてるって!」

フラット「だ・か・ら!フォールは例外に決まってるでしょ!」

フォール「分かったよ・・・本当はテレビ出てぇのに」

フラット「フォール・・・じゃあ仕事やってくれる?今日と明日。

それができたらオッケーにする」

フォール「マジか⁉︎」

フラット「ただし!5割は自力でやること。これが目標だから」

フォール「つまり2日分の仕事だろ!任せとけ!」

そう言うと、フォールは咄嗟に雑務処理を始めた。

ノール「呆れた、こんな簡単に仕事するなんて」

クレア「コイツの海老は伊勢海老だな」

ペーター「で、鯛を釣るか。下手したら損するね」

スラリア「でも何のテレビですか?」

ペーター「あ、言ってなかったね。実は『宇宙の隅まで冒険隊』の

ゲストオファーなんだよね」

全員「えぇっ⁉︎」

スラリア「だ、誰の企画です⁈」

ペーター「安心して、君達のよく知ってるあの2人だよ」

フラット「なら大丈夫ですね、あの企画ならスラリアも別に

何の問題もないでしょ」

スラリア「ロ、ロケ地は?」

ペーター「バーデル星だよ。何かあるのかい?」

スラリア「む、虫とか多い地域じゃなければ・・・」

フラット「バーデル星でしょ?結構大きな虫とかいた気がするけど・・・

ほら、ギラントメティウスアゲハなんてこんなに」

スラリア「あ、結構綺麗・・・⁉︎無理無理!」

フラット「ちょ⁉︎」

フラットの見せたアゲハ蝶の写真をドアップにしたスラリアは

いきなり端末をふん投げて目をギュっと瞑っていた。

フラット「どうしたの?」

スラリア「だって口先のグルグルが・・・気持ち悪い!」

フラット「あぁ~・・・やめる?こういうの結構多いらしいけど」

ノール「え~?勿体無いなぁ、こういうリアクション、結構視聴率も

取れると思うけど?」

フラット「いや、でもうちは芸能事務所じゃないんだから・・・」

クレア「でも実際、タレントみたいなことはしてんだよなぁ。

写真撮影会とか、雑誌の表面に載ったりとかな」

フラット「本格的な活動はして-」

ペーター「でも音楽活動はどう説明するんだい?あれはれっきとした

ライブコンサートだけど」

フラット「あっ・・・で、でも音楽活動している人は出演してないですよ」

ノール「現役でアイドルがいるじゃん」

フラット「うぐっ・・・スラリア、虫慣れる?」

スラリア「絶対嫌!」

クレア「まあ、俺の用事がもしかしたら早めに終わるかもだしよ、

無理してスラが行く必要ねぇって。ペーター、悪いけどよ、

俺かスラ、どっちかってことにしといてくれ」

ペーター「分かったよ、どっちにも詳細は伝えておくから」

スラリア「クレア、絶対に用事終わらせてよ!」

クレア「まあそんなに時間かかんねぇから、な?」

スラリア「うん・・・」


翌日-

フラット「え~・・・残念なことが判明しました」

スラリア「何⁉︎」

フラット「そう、スラリアにとっては避けられない、非常に

残念なお知らせです。フォールが、今日風邪でお休みです。

そしてそれでも無理して来ようとした彼が車に轢かれました。

よって今日から1週間・・・入院です」

スラリア「えぇっ⁉︎じゃああたしも・・・」

フラット「そういうこと、行かなきゃいけない」

クレア「ちょっと待った!代わりがいるんだろ?」

フラット「でも、もう昨日で決定しちゃったんですよね?」

ペーター「そうだよ。もう変更は・・・」

スラリア「・・・ヤダヤダ!どうにかして!」

クレア「俺にんなこと言われてもなぁ・・・一か八か、アイツらのとこ行って

相談してみるか?ちょうど俺の仕事もジ・アフダンだしよ」

スラリア「うん!あたしの仕事はひと段落ついてるから」

フラット「じゃあ僕も行っておくよ。そのこと伝えないとだし」

ペーター「悪いね、お願いするよ」

フラット「じゃあ行ってくるので、フォールの仕事はみんなで

やっといてね。じゃあまた!」

3人は少し早足で出ていった。


ジ・アフダン-

フラット「すみません、ファイター課におとりつぎお願い致します!」

受付「その前に御用件を」

クレア「フラット、段取りめちゃくちゃだぞ。明日からタクマさんと

ヒナさんと、宇宙の隅まで探検隊のロケで一緒になるのでご挨拶を

したいため、ファイター課までお取り継ぎください」

受付「え?松尾と綾川は明日、クリームリーグのロケですが・・・

宇宙の隅まで探検隊のロケに参るのは四大グループのグリオ様とベングル様の

お2人ですよ?」

スラリア「えっ・・・そうなんですか⁉︎」

フラット「す、すみません!なにせ、共演者の情報すら入っていないので!」

受付「デ・ロワー様のファイター課長のお噂は耳にいたしますが、

真実とは少々驚きました。では、お気をつけてお向かいください。

お越しいただき、誠にありがとうございました」

フラット「じゃあ銀座か・・・行こ」

クレア「あぁ。お手数おかけしました」

スラリア「ご足労おかけいたしました、それでは失礼させてもらいます」

3人は出口でお辞儀をして、出ていった。


四大グループ-

ベングル「アッハッハ!ペーターのせいで乗り越し苦労だったな!

俺達の企画に来るっていうのはお前らだったのか、いやぁ、

想定外だったな」

グリオ「前に話はしといたんだがな」

フラット「で、スタッフさんに出演者変更の件で話があるんだけど

大丈夫そう?」

ベングル「そういう話なら明日で大丈夫だぜ。俺達の方に話さえ

通してくれりゃあ後はこっちで処理はやっておくからよ。あくまでお前らは

ゲストなんだし仕事をやらせるわけにはいかねぇのよ」

グリオ「そういうことだ。それよりフォールの見舞いに行ってやれ。

アイツ、テレビに出るのが夢だったからな」

フラット「えっ・・・じゃあ僕、悪いことしたかな・・・」

スラリア「・・・フォールのことだよ、バチが当たっただけ。で、

そう思ったあたしにもバチが当たってるんだよね」

クレア「ハァ・・・この調子でロケできるのか?」

フラット「うーん・・・バーデル星には羽毛の豪華なベッドが

地球より安く買えて、その上可愛い服とか結構あるし、温かくて美味しいって

評判のグルッツェってシチューがあるらしいけど・・・」

スラリア「でもあんな大きな虫がいるんでしょ⁈」

ベングル「虫・・・?あぁ、ドデケェ虫のいるのは保護区域だけだぜ。

安心しな、流石に市街地にはいねぇよ」

フラット「えっ、でもネットにはそこら中にって・・・」

グリオ「ネットの情報なんか鵜呑みにするなよ。常識だぞ」

クレア「なんだ、観光情報じゃねぇのか。なら大丈夫だろ?」

スラリア「うん!もう、フラットもネット情報なんか信じないでよ!」

フラット「ご、ごめん!」

ベングル「まあ、また今度も誘ってやるぜ。でもよ、そんだけ人気なら

普通にレギュラー番組とかできても不思議じゃねぇぞ?」

クレア「案外俺達も忙しいんだ」

フラット「クレアとフォールがもう少し真面目に働いてくれたら

忙しくないんだけどね」

スラリア「それはそうだよね」

クレア「そ、そんな話より!もう要件は済んだんだろ?ならついでに

フォールの見舞いにも行こうや!な?」

フラット「有耶無耶にしないでよ。まあでも、そうだね。フォールが

本気でテレビに出たがってるなんて知らなかったし・・・」

スラリア「じゃあ行こうか。あたし・・・悪いことしちゃったから」

グリオ「待って、私も行く。フォールには話があるから」

フラット「話ですか?まあ大丈夫だとは思いますけど」

グリオ「ありがとう。じゃあベングル、スタッフに伝言頼む」

ベングル「おう、じゃあまた後でな!」

4人は四大グループのオフィスを抜けて、フォールのいる浅草第一病院へ

向かっていった。


病室-

フラット「ごめん、まさか本気でフォールがテレビに出たがってるとは

思ってもなくて・・・」

フォール「別にいいよ、ケガしたのは赤信号渡った俺だしよ。

そんな謝んな、こっちの気が悪くなる」

スラリア「あ、あのさ・・・あたしからも謝りたいんだよ。フォールの楽しみ、

横取りしちゃった感じになっちゃってるから・・・」

クレア「それによ、まだチャンスはあるだろ?待ってようや」

フォール「まあスラリアは、これから大嫌いな虫の多い地域にも

行くんだろ?だったら謝んな、俺だって虫は勘弁だ」

フラット「へ?にしてはカブトムシ見て可愛いとか言ってたじゃん」

フォール「あれはチビが持ってきてくれたやつだったし、そう言うしか

なかっただろ!」

フラット「ふぅ~ん・・・じゃあ子供に嘘言ったんだ」

フォール「な、別に・・・カブトムシはカッコいいし可愛いだろ!」

クレア「カッコいいは分かるが可愛いは分からんぞ」

フォール「あの・・・クリクリし目とか!」

フラット「そこだけで可愛いの?変なの。でもスラリアは虫のいる所には-」

スラリア「い、行くよ!あたし、虫のいるとこ行かなきゃいけないんだ!

だからさ、フォールも見ててよ。絶対だよ!」

クレア「ハァ⁉︎けどあそこは-」

フラット「分かったよ、行くんだね。じゃあ止めないよ」

クレア「おいおい、良いのかよ?」

スラリア「フォールの楽しみ奪った分だよ。フォールが許しても

あたしが納得いかないもん」

クレア「・・・ったく、分かった、俺も何も言わねぇよ」

フォール「何コソコソ話してんだ?まあ、俺のことは気にすんな、

流石に今回は自己責任ってこと分かってるしよ。でも次は俺を

優先的に出させてくれよ?一応仕事はペーターに頼んで持ってきてもらうことに

なってるしな。上には報告するなよ?」

フラット「分かってるよ。いつもこんな調子なら何も言わないんだけどな」

フォール「っへへ、俺を本気にさせるには高価な海老でも用意するんだな」

全員「得意げに言うな!」

フォール「そ、そんなハモらんでも・・・ッハハ!お前らなら

カメラなくても笑いとれそうだな」

フラット「褒め言葉じゃないよ、それ」

フォール「知ってる。まっ、わざわざ見舞いありがとな。それとグリオが

用事で俺を呼んでるんだろ?じゃあそろそろ帰って良いぞ。

多分、まだお前達には言えない話だろうしな」

クレア「なんだ、四大レベルの話かよ。じゃあ俺達じゃまだ

その話は聞けねぇな。まっ、お前から聞きゃあいいか」

フォール「あのな、分かってるだろ?」

クレア「冗談だ。じゃあ俺達はオフィスに戻るわ。気をつけろよ?」

フォール「あぁ、お前らもな」

スラリア「じゃあね、仕事は無理しないようにね~」

フラット「じゃあ後はグリオさんに任せるよ」

3人はフォールのお土産用に買ったフルーツやデザートを置いて

病室から出ていった。その入れ替わりでグリオが入ってきた。

フォール「で、用事ってなんだ?」

グリオ「あぁ、実はとある物を見つけてな。これだ」

フォール「これ・・・おい、見つかったのか⁉︎」

グリオ「あぁ、浅草で。どうやら、神話はまだ続いてるらしいな」

フォール「マジかよ・・・俺がケガしてなけりゃ危なかったな。

四大級の報告かと思ったが、シャンにも伝えねぇとまずいな」

グリオ「第5次神魔戦争のような悲劇は繰り返してはならない。

絶対に食い止めるぞ」

フォール「あったりめぇだ!フラットには伝えねぇようにな。

アイツのことだ、無理するに決まってる。だったらまずは休息を

与えた方が良いだろ」

グリオ「同意見だ。じゃあ任せた」

その報告を済ませると、グリオは病室を後にした。

フォール「・・・さぁてと。グリオのやつ、こんな作りもんに騙されやがって。

神力も魔力も、『この石』にはねぇっての。ったく、もと魔者でも

そういうのは感じれろっての」

フォールは赤と青の入り混じった石を窓から放り投げた。


翌日、浅草宇宙港ー

ベングル「おっし!お前らも来たな!」

グリオ「出港時間まで、まだ全然余裕あるな・・・」

クレア「だったらよ、先に乗って朝食にしようや!」

スラリア「えっ、食べてないの⁈」

ベングル「俺はそのつもりでいたが・・・なんだ、スラの嬢ちゃんは

食べてきたのか!」

スラリア「当たり前だよ!」

フラット「当たり前って・・・まだこんな時間なんだけど・・・」

宇宙港の時計は朝の4時を示していた。

フラット(何時に朝食食べたんだ?)

スラリア「まあ、スイーツでも楽しもっかな」

クレア「今日の特別デザートは焦げつきカスタード香るビターチョコモンブラン、

メープルとマーガリンのパンケーキ、メロンホイップカスタードエクレア・・・

結構美味そうだな・・・」

スラリア「それ以外にも沢山あるの⁈」

フラット「う、うん・・・?そっか、スラリアって結構久しぶりだよね、

スイーツをここで食べるの」

スラリア「うん!」

ベングル「まあ俺は甘いものはそんな好きじゃねぇし、嬢ちゃんに

譲るか。グリオ、たまにはー」

グリオ「キウイは禁止な」

ベングル「まだ何も言ってねぇ!・・・当たりだけどよ」

クレア「いや当たりかよ」

スラリア「早く~!置いてっちゃうよ~!」

フラット「早っ⁉︎スイーツの魔力って凄いな・・・」

クレア「だな、俺達じゃ勝てそうにねぇぐらいだ」

4人は先に食堂に入っていったスラリアを歩いて追いかけていった。


食堂スペースー

フラット「うっわ、凄い良い匂い・・・!」

クレア「パンが焼きたてなんだな・・・?うお!これスゲェ美味そう!」

ベングル「アップルパイか。グリオどうだ?」

グリオ「い、いいのか?」

フラット「へぇ、グリオさんってアップルパイ好きなんだ」

スラリア「あっ、やっと来た!」

既に支払いを終えたスラリアが沢山のスイーツを乗せたプレートを

手に持ちながらフラット逹のもとへ駆け寄った。

フラット「結構可愛く盛り付けられてるね、ヒナちゃんがいたら

即写真撮ってたよ」

スラリア「えへへ、さっきデ・ロワーの掲示板にアップしちゃった」

クレア「おいおい、あれはデ・ロワーの食堂にあるものしかー!」

フラット「まさかデ・ロワーで作ってもらう気じゃ・・・」

スラリア「えっ、ダメだった?」

ベングル「流石はリア家のお嬢様だ、厨房の人達は召使い扱いか」

スラリア「そ、そんなんじゃないよ!」

フラット「自覚なしってのが逆に怖いよ」

クレア「まあ俺達も早く選ぼうや。スラを待たせるわけにも

いかないしな」

グリオ「わ、私はもうできたから先に行ってる」

ベングル「はぁ?お前アップルパイのとこしか行ってー⁉︎」

一瞬ベングルは自分の目に映ったグリオのプレートに驚いた。

なんと、焼きたてのアップルパイ全部乗っていたのである。

ベングル「戻せ、流石にマナーってのがあるだろ。他にも欲しいやつが

いるだろうし、第一そんなに食えんだろ」

グリオ「うぐっ・・・分かった」

フラット「あ、案外グリオさんって子供っぽいとこあるんだ・・・」

「おや・・・?もしかしてフラットさんですか?」

フラット「?はい、そうですけど・・・ってライタ⁉︎」

ライタ・ガブル。地球連合所属軍の少佐である。

フラット「えっ、何かバーデル星に用事ですか?」

ライタ「いや、ただの慰安旅行です。軍も辞めさせられましたし、

久しぶりにゆっくりできるので」

フラット「なっ、だったら何か連絡してよ!そういう場合は

どうにかするって言ったでしょ?」

ライタ「いえ、これ以上ご迷惑をお掛けするわけにもいかないと

考えましたので・・・その都度は大変申し訳なかったです」

クレア「・・・ったくよ。旅行だったら俺逹と来るか?テレビのロケだけどよ、

映らなきゃ問題ねぇだろ?」

ベングル「まあ一応は大丈夫だが・・・まっ、あのスタッフ陣なら

何も文句言わねぇか」

グリオ「こういうアポなしの場合でもあっさりと承認しちゃうからな」

クレア「それはそれで問題な気もするが・・・まっ、結果よければ

全てよしってわけだ、付き合ってもらうぞ」

ライタ「テレビ・・・ですか?」

フラット「あ、嫌ならいいよ?ライタってそういうのー」

ライタ「いいんですか⁈いかせてください!」

フラット「・・・あれ?」

クレア「だろ!よっしゃ、移動時間とかは一緒に旅行しようや!」

フラット「・・・まあいっか」

ベングル「本当、お前と出会うやつはすんなりと変わるよな。

俺も変わっちまったし」

フラット「えっ、ベングルは変わってないじゃん」

ベングル「いいや、俺はお前と会うことはなかったがな」

フラット「・・・?それより早く決めてよ。僕はもうとっくにプレートの方は

盛り付けできてるんだから」

クレア「俺も・・・これでよしだろ」

ベングル「あ、ちょっと待ってくれよ。先行っててくれ。

すぐにそっち行くからよ」

フラット「分かった。じゃあライタ、行こっか!」

ライタ「はい!」


数分後ー

ベングル「すまん、待たせた!」

フラット「オッケー、じゃあ全員集まったことだし・・・!」

全員「いただきます!」

スラリア「うぅ~ん、このモンブランおいっしい!」

フラット「火星料理がなかったのがショックだけど、これ美味しい。

どこの料理なんだろ?」

クレア「お前、あの赤いとこでとったか?」

フラット「うん」

クレア「あそこの料理は、俺の故郷、月の静海料理だ!」

フラット「えぇ⁉︎クレアって静海生まれだったの⁈」

クレア「あぁ、スラのいた雲海とは全然比べものにならない程の

大都会だぞ!ほら、窓見てみろよ。ちょうど見えるぞ」

車窓から見えたのは静海上空だった。辺りには今にも届きそうなほどの高さの

高層ビルが建ち並んでいた。そのビルは太陽の光で照らされていた。

スラリア「すご~い・・・こんな近くまでビルがあるなんて・・・

そうだ、この風景を写真で撮って・・・!」

サッと首からネックフォンを外すと、スラリアはその風景を

一枚の写真に収めた。

スラリア「よーし!バーデル星に着くまでこの絵でも描いてよっと」

ライタ「絵ですか、俺は苦手ですね」

フラット「だよね~、芸術には向いてなさそうだもん」

ライタ「なっ、失敬な!」

フラット「アッハハ、冗談だよ」

グリオ「お前ら、ちょっとは静かに食えないのか?」

ベングル「まあいいじゃねぇか!折角の全員揃っての食事だ、

ちょっとぐらいはしゃいでも大丈夫だろ?」

グリオ「さっきマナーで私を叱ったのは誰だ?」

ベングル「ぐっ・・・分かった、お前ら、静かに食えよ」

フラット「あ、ごめん」

クレア「ついはしゃいでたな」

スラリア「もう、3人とも」

ライタ「俺もですよね、すみません」

ベングル「わかればいいんだ。じゃあー」

放送「間もなく、月から抜けて第二ワープゲートをくぐります。

しばらくの間、携帯端末の電源をお切りになるか、スペースモードに

お切り替えくださいますようお願い致します。ワープゲート内での

故障責任は負えませんので、予めご了承ください」

フラット「あ、もうすぐ到着か」

クレア「早く食い終わんねぇとマズイな」

ベングル「あと30分あるかどうかだな」

ライタ「えっ、かなりマズイです!急いで食べましょう!」

フラット「ちょ、ライタ!そんな一気に詰め込んだら喉詰まらすって、

落ち着いて急いで食べよ?」

クレア「なんか矛盾した言葉だぞ」

スラリア「もう、っフフ!本当に慌てん坊だよね。でもライタさんも

意外にも一般の人みたいな言葉遣いなんだ」

ライタ「軍人言葉は軍の中で使うものです。外にいるうちは

普通の言葉で過ごしています」

フラット「結構ファイターと似てるんだ、そういうとこ」

ライタ「それより食べちゃいましょう。残すのも勿体無いですし」

クレア「というかグリオのやつ口数少ねぇけど大丈夫か?」

グリオ「スゥ・・・」

ベングル「あちゃ、食って満足しちまったか?」

スラリア「こんな可愛い寝顔見せるんだ・・・ちょっとビックリ」

ベングル「よいしょっと。じゃあグリオの分も片付けちまうぜ。

お前らもなる早で食い終われよ」

スラリア「あっ、ちょっと待って!あたしも片付け行く!」

フラット「あともうちょっとで食べ終わるから待ってて!」

ベングル「待っては聞かん!ったく、ただでさえこのプレート重いんだ、

少しは分かってくれよ」

クレア「駄弁ってないで早く行ってこいよ、重いんだろ?」

ベングル「あ、あぁ・・・?嬢ちゃんどこ行った?」

ライタ「スラリアさんならとっくに収納スペースに行かれましたけど」

ベングル「早いな~・・・じゃあ俺も行ってくるな」

クレア「ん・・・よし、俺も食い終わったっと。フラットも片付け行くか」

フラット「うん。ライタ、ちょっと待っててね」

ライタ「はい」

全員は急いでプレートを片付けに行った。


数分後ー

フラット「ごめんね。じゃあそろそろ客室行こっか。僕達の部屋は

青のFだから」

ライタ「・・・他の皆様は?」

フラット「先に戻ってるよ。ほら、行こ」

ライタ「了解・・・じゃない、はい!」

フラット「別に敬語じゃなくていいよ?」

ライタ「いいんですか?」

フラット「うん、馴れ馴れしく話してほしいし、そっちの方が

話しやすいもん」

ライタ「・・・うん、分かった、フラット」

フラット「なーんかぎこちないけど・・・まあいっか。こっちだよ」

ライタの目の前に、フラットの手が差し伸べられた。それはどこか

彼にとって懐かしく、長い間封じられていた存在だった。

ライタ「・・・握っても・・・いいのか?」

フラット「もちろん!ほら!」

ライタ「・・・じゃあ・・・お言葉に甘えて・・・」

その手を迷いながらもライタは取った。フラットはその手を

強く握って一気に走り出した。その瞬間、ライタは今まで背負ってきた何かを

一気に落としたように感じた。しかしライタは気にすることなく

フラットの手に連れ去られていく。その手を強く握り返しながらー

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