第24話 3節 失われたコード
フラット「おはよー!」
クレア「おう、来たか!」
エド「やっと出張も終わったっすよ~」
ペーター「ナックラーはこっちに慣れないとだから、出張は
当分君達に任せちゃうかもだけど、いいかい?」
クレア「気にすんな!すっとこどっこいに出張なんかやらせてみろよ?
苦情の嵐になるのは目に見えてるって」
エド「実際、ナックラーさんの担当した相手の8割からは苦情が
来てるっすよ」
ペーター「・・・それもそうか」
フラット「で・・・フォールは?」
クレア「あぁ、どうせアソコだろ?」
エド「いつも通りっすよ、絶対」
フラット「はぁ・・・罰の意味が成り立たないから困るなぁ~」
仕方なさそうにフラットはとある場所へ歩いていった。
デ・ロワー地下2階-
フラット「・・・フォール!」
フォール「・・・?」
デ・ロワーの地下にあるバーで、フォールはカウンター席で
ふて寝していた。
フラット「何してんの⁉︎すみません!」
以前は銀座で店を開いていたハノウのバーが移転しているだけのため
フラットと店主は知り合い同士である。
ハノウ「いやいや、別に構わないよ。君ならすぐ迎えに来るだろうと
思っていたしね」
フラット「もう今日もご迷惑かけて・・・ほらフォール!とっくに入社時間も
過ぎてるから行くよ!」
フォール「カクテルもう一杯!」
フラット「あぁ~もう!ハノウさん、本気にしないでください!」
ハノウ「分かってるよ、営業時間外からはお酒の提供もしてないから
そのうち酔いも覚めると思うから」
フラット「すみません!後でいつも通り注意するので!」
ハノウ「気にしなくていいって。フォール君の持ってくる話が
面白くてね、つい私も耳を寄せちゃうんですよ」
フラット「フォールの話?」
ハノウ「そうです、この前なんか-」
その瞬間、地面が大きく揺れた。
フラット「うわぁ⁉︎」
その揺れを感知し、デ・ロワー全体に警報が鳴り響いた。その警告は
地震感知のものではなく-
「脅威反応確認!脅威反応確認!直ちにファイターは出撃してください!」
フラット「えぇ⁉︎」
ハノウ「フォール君はこの調子じゃ無理そうだね。預かっておくから
君は行ってきなさい!」
フラット「わざわざそこまで・・・後で代金支払いに来ます!」
ハノウ「お釣り忘れないようにね!」
フラット「・・・はい!」
悩みかけるもフラットはその言葉に賛同の意を示して外に直行した。
外-
フラット「アリジゴク多数・・・まあ、前の大量発生に比べれば
まだ余裕だけどね!」
クレア「よし、お前も来てるな!」
エド「張り切っていくっすよ!」
ナックル「フラット、話は聞いてるぜ!お前が指揮者なら俺に
指示、出してくれよな!」
フラット「オッケー!じゃあファイターアプリ各自起動!」
全員は各自の端末からファイティングモードの起動を認証した。
しかし-
ナックル「なっ・・・何だよこれ⁉︎」
ただ1人、ナックルの画面だけは接続エラーと出ていた。
フラット「これって・・・エドも一回だけなった⁉︎」
クレア「おいおい、マジか」
エド「仕方ないっす、フラット!一緒にお願いするっす!」
フラット「う、うん!ごめん、じゃあカメラだけお願い!既に専門チャンネルに
繋いであるから、映すだけでいいからね」
ナックルにカメラを渡すと、フラットも慌ててモードを承認した。
フラット「じゃあ行くよ!」
クレア「よっしゃ!まずは小手調べからだ!神業・旋風!」
エド「敵のリーダーを潰せばこっちのもんっすよ!ドウリャァァ!」
アリジゴク1「ギャワ⁉︎」
フラット「ちょ、そっちは一級ものだよ!特級はあっち!」
エド「あぁ、違うんすか⁉︎」
フラット「今から指示するから勝手に動かないで!クレアは後方支持、
エドは敵がまとまらないようにバラけさせて!」
クレア「了解!なら・・・これでどうだ⁈第一突風『零』術・『水切之旋風』!」
1箇所に集まっていたアリジゴクを、クレアの術が四方八方に
吹き飛ばした。
エド「今っす!俺が中心に入って・・・来たっす!ハァ!」
その瞬間にエドが飛び散ったアリジゴクに中心に入り、もう一度集まろうと
試みるアリジゴク達を片っ端から凪放っていく。
フラット「よし、これで特級だけが残ってる状態!みんな、そっちは任せるよ!
第一審判『零』術・『凍瀧之結界』!」
アリジゴクの触手が、氷状の結界によって拘束され、身動きが
取れない状態になった。
フラット「そして・・・神業・状態変化!」
更に追い討ちをかけるように、アリジゴクの周りの水蒸気を
氷に変えて、フラットはアリジゴクを氷漬けにした。
フラット「よっし、こんなもん-」
しかし、その氷はあっけなく壊された。
フラット「えぇ⁉︎いつもならこれで終わるのに⁈」
ナックル「何言ってんだ⁉︎ソイツは-!」
そのアリジゴクにナックルは見覚えがあった。尖った尻尾には
血痕のような赤い痕がついていた。
ナックル「・・・ダメだ・・・アイツは・・・!」
急に体全身をナックルは震わせた。
エド「!な、何すかこの匂い⁉︎」
クレア「あぁ?匂いだ?」
エド「なんか・・・嫌な感じっす・・・」
フラット「・・・えっ⁉︎」
指揮者専用サイトに表示されていたエドのファイター部類が
『ソルジャー』に変わっていたのにフラットは気がついた。
フラット「何これ・・・こんなことあるの⁈」
エド「なんか知らないっすけど・・・コイツは危険ってことは
たしかっすよ!」
クレア「まっ、それはそうみてぇだな!フラットの術を喰らって
こんなピンピンしてるのは、ヤベェやつ以外いねぇよ」
ナックル「・・・!お前ら・・・」
フラット「いくよ!」
全員は雑魚よりも親玉を優先して突撃を仕掛けた。その姿を見たナックルが-
ナックル「ダメだァァァァ!」
と、大きな声で叫んだ。
「見つけましたよ、ここに迷い込むとは・・・?」
ナックル「テメェ・・・!」
管理者「・・・そうですか。今のあなたは最早私が殺す必要もないと。
では帰りましょうか」
そう言うと、管理者は親玉であるアリジゴクに近づいた。
管理者「未完成であるこの子の存在を保つことは難しいですし、
あなた方を殺すために作ったのではないのですから。まあ、あなた方は
殺さないでおきましょう。私の作戦を無自覚のまま成功に導いてくれそうですし」
フラット「なっ-」
それだけ言葉を残すと、管理者は全てのアリジゴクと共に姿を消した。
フラット「・・・どういうこと?アイツの作戦は人工アリジゴクを消す・・・!」
クレア「まんまだな。俺達も同じく人工アリジゴクを無くそうとしている。
ただし、裏計画の方だけをな」
エド「それより、フラット。俺の方見てたっすけど何すか?」
フラット「・・・一旦オフィスに戻ろうかモード解除しといて」
クレア「お、おう?」
いつもとは違い、戸惑いの顔を隠さないフラットにクレアは
違和感を感じた。
オフィス-
フラット「・・・やっぱり。エドのファイター部類がソルジャーになってる」
エド「えぇ⁉︎俺がっすか⁈」
フラット「というより・・・僕達全員の神力が上がってる。でも・・・バトラーが
接続エラーって・・・」
フラットの画面に表示されていた、『接続エラー』とは、ファイターに必要な
願望があまりに少なすぎて神力が必要値にまで上昇されないことである。
フラット「・・・これじゃ・・・どうしようもないね」
クレア「ちょ、それは言い過ぎだと思う-?」
違和感がオフィスを包み込んだ。
エド「ちょ、2人とも、少し落ち着いたらどうっすか-?
な、何すかこれ⁉︎」
クレア「分かんねぇ・・・」
ナックル「まさか・・・俺の世界とこの世界が1つになろうとしてるのか⁉︎」
クレア「お、おいおい!それはいくらなんでも無理があるだろ!
それは全く同じ世界になる場合だけだ!今のあっちに俺達は
いないんだろ?」
フラット「多分・・・管理者の奪った魂・・・あのアリジゴクの中に
あるのかもしれない」
ナックル「な、どういうことだ⁉︎」
フラット「あの術の壊れ方・・・ノールの術にしかできないものだったし・・・
何よりあのアリジゴクは、アリジゴク特有の悪寒も殺気もなかった。
まるで、僕達を見つめてるだけのようだったし・・・」
エド「そう言われてみればそうっすね・・・攻撃は何もしてこなかったっす」
フラット「今、ペーターさん達が解析してるから待つだけだけど・・・
バトラーが心配だよ」
ナックル「・・・すまん・・・足を引っ張っちまって・・・」
クレア「無理ねぇよ、俺達を目の前で殺されてんだ」
エド「いくらナックラーさんでも、それを何事もなかったように
いられるわけないっすよ。それでこそ俺の憧れたファイターっす!」
ナックル「お前ら・・・ありがとよ・・・」
フラット「ねぇ、折角だし何かしよ?バトラーもこっちに慣れないとだし」
ナックル「フラット・・・」
フラット「バトラーをもう一度戦わせたい!だって・・・僕の知ってるバトラーは
僕の前でこんなこと、言わなかったもん!」
ナックル「!」
その言葉がナックルの心を熱く揺らした。
ナックル「・・・俺の知ってるお前は、そんなこと言わねぇけどな」
フラット「バトラー・・・ハハ・・・アッハハ!」
クレア「お前らだけで楽しむなよ!」
ペーター「会議中失礼するよ。あのアリジゴクの件だけど、
フラット君の見立て通りあっちの君達で間違いないよ。うっすらとだが
ファイターコードが読み取れた。ところどころ文字化けを起こしてはいるが
間違いないだろう。それとエド君のソルジャー化現象も謎が解けたよ。
エド君の神力が目覚めただけのことさ」
クレア「エドの神力⁉︎」
ペーター「この世界にはない力だったからね、上手く力を
引き出せなかっただけだよ。それでも今はエドを応援するファンも多くなって神力を引き出せるようになった、それだけのことだよ」
フラット「な、なんだ。てっきり指揮者の力が衰えたのかと思っちゃいました」
ペーター「フラット君の力が衰えたら困るなぁ」
クレア「たしかにな。あ、ペーター。ちょっといいか?」
ペーター「?君から何か話があるのは珍しいね」
クレア「いやな、聞きたいことがあったんだ。お前・・・何者だ?」
ペーター「えっ?」
クレア「こうなることを見越していただろ。管理者復活、そしてやつの狙い、
おまけに今回の解析は自ら動いた。そうとしか思えないんだが?」
ペーター「考えるね。でも俺は時の神、別に不思議でもないだろ?」
クレア「あぁ。それで未来を知ってはいる・・・とでも言いたいのだろうが
数が合わねぇんだ。禁止術を使えば、神業3回分の神力しか
残らないはずなのに・・・お前はファイターだったんだろ?」
ペーター「そ、それは・・・」
フラット「ペーターさんは違う!」
ペーター「フラット君⁉︎」
フラット「分からないけど・・・これだけは言える!理由なんかない・・・
でも、ペーターさんは僕達の味方だよ!」
ペーター「・・・ありがとう」
フラット「ごめんなさい、うまく言えなくて」
ペーター「いいよ。君の言葉だけで」
クレア「別に俺も敵とは思ってねぇよ。ただ何者か聞いただけだし」
ナックル「まあ、んなの今は関係ねぇだろ?」
エド「そうっすね。で、俺の力って何だったんすか?」
ペーター「白虎だよ」
エド「白虎⁉︎俺がっすか⁉︎」
ペーター「あぁ・・・少し驚いたよ、白虎はナックラーだとばかり思ってたから」
フラット「バトラーはミカエルですよ」
ナックル「親父の力だがな」
ペーター「まぁ、あのアリジゴクを倒すことは難しいだろうな。
ただでさえ強力な神力なのに、それが7人分・・・」
フラット「別に困ることでもないですよ。姉ちゃんもいるし、
色々と頼りになる人がたくさんいるじゃないですか!」
ペーター「・・・それもそうだね。余計な心配だったよ。それより・・・
こっちの方が俺的には怖くてな。これを見てくれ」
ペーターは印刷されたデータをフラットに渡した。
フラット「これは?」
ペーター「世界各地で観測された謎の力だよ。なんでも、この世界には
存在しない神力らしいんだけど・・・」
「おっす、邪魔すんぞ・・・?なんだ、会議中か?」
フラット「あ、コータス・・・⁉︎ごめん、忘れてた!」
鬼人のコータスが介抱しながらフォールをオフィスに連れてきてくれた。
ペーター「まったく・・・罰の意味が分かってるのか?」
エド「絶対分かってないっすよ」
コータス「で、この反応・・・妖力っぽいな」
クレア「妖力?」
コータス「あぁ、ただの妖力じゃないがな。神力も混じってやがる。
こりゃ、神獣ってやつだな」
ペーター「神獣・・・か。神話にもあったが、神獣はとっくに
絶滅したはずだろ?」
コータス「だれが神話の神獣って言った?これは、流れ者だ」
クレア「流れ者だぁ⁉︎神獣って言ってもな、何種類もいるんだぞ⁉︎」
フラット「特定するのは難しいな・・・コータス、知らない?」
コータス「エドの世界のやつらだろうな。神力が引き出された要因は
たしかに支援力もある。だが、もう一つ。それがこの妖力だ。
これに含まれる神力を調べれば分かるだろ」
ペーター「あ、あぁ。じゃあ調べてくるよ。そろそろナックラー達も
帰ってくる頃だろう、それまでは休んでてくれて構わないよ。
その前にフォールに罰を頼んでおくよ」
フラット「はぁーい。じゃあ早速・・・神業・与罰!」
フォール「ガッダ⁉︎」
フラットの神力でフォールの頭に蛍光灯が落ちた。
クレア「・・・おい、死んでねぇよな?」
フラット「さ、流石に・・・」
コータス「まあ一応・・・」
仕方なさそうにコータスはフォールの脈を確認した。
コータス「脈はある。ただ単に気絶してるだけだな」
ナックル「ふぅ、なら良かったぜ」
フラット「第一、フォールがあんな簡単に死ぬわけないでしょ。
焼いても凍らしても死ななかったし」
エド「まるでゴキブリっすね・・・」
フォール「だれがゴキブリだ誰が!」
コータス「うわっと⁉︎」
さっきまでのびていたフォールが何事もなかったように飛び起きて、
エドのはいた一言に反応した。
クレア「ゴキブリというよりもゾンビだろ」
フラット「あぁ~・・・そうかも」
フォール「ったく、流石に驚いた。あの世に行きかけたぞ」
ナックル「お前がか?」
フォール「お前も喰らってみろよ。そしたら分かるぞ」
ナックル「やなこった!」
コータス「・・・フラット、ちょっと話が」
フラット「?分かった。ごめん、ちょっと席外すね」
コータスに呼ばれて、フラットは廊下に出ていった。
廊下-
フラット「何?」
コータス「・・・エドのことだ。神獣の白虎の力が覚醒した理由、
お前も分かるだろ」
フラット「さっきの妖力と関係してるってこと?じゃあ・・・やっぱり・・・」
コータス「あぁ、動きから見るにまだ神獣が何かを仕掛けてるわけでは
なさそうだがな。まあ要するに、エドは警戒するには早いが、
注意はしとけってことだ」
フラット「分かった、注意はしとくよ」
コータス「まあ、アイツが裏切ることはまずないとは思うけどな。
もしものためだ、すまん」
フラット「全然いいよ。エドは構ってちゃんだからさ」
コータス「それはお前にだけな。じゃあ、それだけだ。神獣とやらが
どんな動きを見せるか。それを確認するまでは頼む」
フラット「報告ありがとね。そっちも仕事は気をつけてよ」
コータス「おう!」
去り際に手を振るコータスを横目に、フラットはオフィスに戻った。
オフィス-
クレア「じゃ、俺はもう帰るわ」
フォール「ふん、勝手にしろ!」
エド「ちょ、2人とも!フラットにバレたらただじゃ-!」
フラット「ね、ねぇ・・・何があったの?」
ナックル「ほらな、こういう時にフラットはよく出てくるんだぜ」
クレア「コイツが戦闘に出る気はねぇって言うから理由聞いたんだぞ?
そしたらよ、めんどくせぇって・・・何様だ⁉︎」
フラット「あぁ~・・・僕もめんどください」
ナックル「そう言わずに頼む!」
エド「フラットしか便りがいないんすよ、こういう時は!」
フラット「分かった分かった。でも今日は解散。いつものことだしさ」
エド「えぇ⁉︎ダメっすよ、この2人のことっす、明日からサボる可能性も
全然あるんすけど⁉︎」
フラット「ないよ。サボらせるわけないでしょ、この2人を」
ナックル「そうだな、仕事がたんまり残ってるコイツらをサボらすわけにも
いかねえな!」
クレア「だったらコイツとは別室だ作業させてくれよな。やる気のねぇやつと
一緒に仕事なんかしたくねぇよ」
フラット「じゃあ・・・クレアはレストルームでやる?」
クレア「あぁ、そうさせてもらう」
フラット「オッケー。じゃあ今日は帰宅時間だし帰ろっか。お疲れ様~」
フォール「やっと終わった~、じゃあな」
エド「本当にダメなやつっすね」
フラット「・・・はぁ・・・僕達も帰ろ、バトラー」
ナックル「そうだな・・・じゃ、俺達も先に上がるぜ」
クレア「おう、じゃあまた明日な!」
フラットとナックルは全員に手を振って、大学の寮へと帰っていった。
浅草大学寮-
フラット「ただいま~」
ナックル「よっと。で、エドのやつは帰ってこねぇのか?」
フラット「今日は大学のサッカー部に顔出すって言ってたから
遅くなると思うよ」
ナックル「そうか・・・」
フラット「バトラー・・・?」
エドの帰りが遅いと聞いて、ナックルは俯いた。その顔と口調は
フラットにとって2度と聞きたくない、『あの声』に似ていて-
フラット「そんな顔・・・しないでよ・・・」
ナックル「フラット-⁉︎す、すまん!なんかやっちまったか?」
フラット「バトラーが泣きそうな顔・・・もう見たくない」
ナックル「フラット・・・ごめんな。いっつもお前を困らせちまうな・・・
フラット、俺さ、ファイター失格なんじゃなぇかなって-」
フラット「そんなことない!バトラーは・・・バトラーはこれ以上にいない、
最高のファイターだよ!僕に手を差し伸ばしてくれて・・・みんなを
笑わせてくれたのもバトラーだった!僕にないものがバトラーにある!
だから・・・そんなこと言わないでよ・・・僕のお兄ちゃんでいてくれるって
約束、自分でしといたくせに、もう忘れたの⁈」
ナックル「!・・・そうだな、忘れてたぜ。俺とお前は家族だ。
だったらこんな顔、してちゃいけねぇよな。フラット、今のお前のままで
いてくれよな。頼むぜ?」
フラット「・・・うん。だから・・・バトラーの言いたいこと、聞きたいよ。
分かってるから・・・何に悩んでるか」
ナックル「だろうな・・・俺さ・・・目の前でお前を・・・失っちまった・・・
俺のせいでだ。だからよ・・・怖いんだ。俺のせいでまたお前を・・・
壊しちまうんじゃねぇかって・・・」
フラット「・・・そんなことないよ。僕達は今まで、バトラーに
全てを委ねてた。というより、甘えてた。強くて、眩しくて、
優しかったバトラーに。でも、いなくなって気付いたんだ。
バトラーなしじゃ、僕達は何にもできないんだって。それでもね、
強くなれた!互いに互いを助け合って、そして自分にできないことを
出来ることで補うってことが出来るようになった。だからもう・・・
バトラーに守られっぱなしの僕達じゃない。だからさ・・・守らせてほしい。
バトラーのことを・・・前までは守られてた分、守りたい!」
ナックル「・・・守り、守られ・・・親父の言葉だな」
フラット「僕も別にバトラーのお父さんを恨んでないよ?母さんは
ベルに殺されただけだからさ。あの人は何にも悪くない」
ナックル「・・・フラット、強くなったな」
フラット「バトラーなしであの戦いを勝っただけはあるでしょ!」
ナックル「・・・何でだろうな、俺にはねぇはずの記憶があるぜ」
フラット「うん・・・バトラー、僕はいつでも側にいるよ。だから、前みたいに
また笑い合いたいな」
ナックル「あぁ!そうしようぜ!」
(フラット、俺は・・・お前がいるだけで幸せだぜ。だからよ・・・
俺はお前を守ってやる!でもよ・・・)
フラット「?どうしたの、いきなり黙り込んで」
ナックル「いや、何でもねぇよ」
フラット「そっか。じゃあ晩ご飯、何にしよっか?」
爽やかな笑顔でフラットはナックルに尋ねた。
ナックル「・・・バイキングにしようぜ!」
フラット「バイキングね・・・アッハハ!バトラーと一緒だと、
大体バイキングだよね!」
ナックル(でもよ・・・お前の笑顔があればそれでいいんだぜ。
俺の心を、お前の笑顔が支えてくれてる。俺を守ってねぇとか、
甘えすぎたとか言ってるけどよ-)
フラット「ほら、行こ?」
ナックル「フラット」
フラット「?何?」
ナックル「いつもありがとよ」
フラット「えっ、何急に。もう、風邪でもひいた?バイキングやめる?」
ナックル「ちょ、大袈裟だっつの⁉︎」
フラット「冗談だよ冗談。もう、すぐ騙されるよね~」
ナックル「ったく・・・」
(こんな風にお前といる日々に、俺が甘えてるだけだぜ。本当にありがとよ、
フラット。俺と出会ってくれて・・・俺といてくれて)
フラット「バトラー、行きたくないの?」
ナックル「あ、すまん!今行くぜ!」
フラットに呼ばれて、ナックルは慌てて玄関に向かっていった。
慌てていたためにナックルは机の上にウォッチフォンを忘れていた。
その画面にはただ一つ-
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と表示されていた。
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