第24話 2節 また君の隣で

ペーター「アカデミー本部にようやく説明できたよ。こんなケース、

今までのデータになくてなかなか納得してくれなくて困ったよ」

フラット「1週間もかかることあるんですね」

ノール「まあ、これでバカ虎もファイターになれたんでしょ?」

スラリア「でもさ、出張組は悲しいね」

フラット「だね。折角バトラーがこんな形でも復帰したっていうのに

なんで出張なんかあるんだろ」

ペーター「こらこら、得意先をなくす気か」

ナックル「・・・にしても暇だな」

ノール「聞いておくけど、バカ虎は人工アリジゴク計画に携わってるってことで

良いのか?念のため聞いておきたい」

ナックル「そうだぜ。まあ、ペーターからの指示だがな」

フラット「へ⁉︎」

ペーター「なっ、それは秘密にしろと言っただろ!」

ナックル「えっ、俺の秘密バラしたのお前じゃねぇのか⁉︎」

フラット「違うよ!って言っても知るわけないか」

ペーター「まあ言ったなら仕方ないか。そうだよ、ナックラーを

人工アリジゴク計画に入れたのは俺からの提案だ」

スラリア「でも、よく気付かれないよね。これだけの有名ファイターなのに

なんで気付かないんだろ?」

ペーター「あぁ、人工アリジゴク計画とは言っても、ナックラーの仕事は

アリジゴクの排除だ。だから計画の極一部しか携わってはいないんだ」

フラット「えっ、でも人工アリジゴクのウェポンを持ってたじゃん!」

ナックル「あ?持ってねぇが・・・まあ、そういうのを受け渡すってのは

楽にできるぜ。ただそこに置いておけって命令しておくだけだしよ」

ノール「組織に入るのはどうやったんだ?」

ナックル「んなの簡単だぜ。偽名を使ってな」

フラット「こんな発展してる時代に偽名なんか通るわけ-」

ペーター「だから実在していた人名を使っているんだよ」

フラット「・・・実在した?」

ペーター「ほら、ナックラーに似たやつだ」

フラット「・・・あっ!」

スラリア「グリテールさんの名前⁉︎」

グリテールはナックルの実の弟である。ナックルがファイターになって

まもない頃に、死に別れをした。

ナックル「アイツの名前を使うのには断固反対したんだがよ」

フラット「・・・だよね」

そんな話でオフィスは暗いムードに包まれてしまった。そんなオフィスを-

「フラット!お腹空いタ!」

という大きな声が一気にムードを変えた。

フラット「あっちゃ、もうそんな時間だったか!じゃあ少しまってて。

スピカの分もごはん用意しないといけないから」

ナックル「なら俺も手伝うぜ!」

フラット「ありがとう!」


厨房-

フラット「え~っと・・・あった!」

ナックル「いいのか?厨房の肉勝手に使っちまって」

フラット「許可は貰ってるよ。じゃあこれ切ってくからお皿に

適当に盛り付けてってね」

そう言いながらも、既にフラットは肉を切っていた。

ナックル「ん・・・っと・・・」

フラット「どんな感じ・・・って、えっ⁉︎嘘でしょ⁉︎」

なんとナックルは肉に胡椒をつけていた。

ナックル「?何かあるのか?」

フラット「それはスピカの分でもあるんだよ⁉︎パルカならまだしも、

スピカは普通の犬なんだから胡椒はダメに決まってるでしょ!」

ナックル「・・・あっ、そうだっけな!」

フラット「もう、本当に何も考えてないんだから・・・ぷっ・・・

アッハハハハ!おかしいな、何でか・・・笑えちゃうよ」

たしかにフラットは急に笑った。涙を流しながら。

ナックル「・・・ごめんな、1人にさせちまって」

フラット「へ⁈」

ナックル「あれ⁉︎俺今・・・勝手に・・・」

フラット「もしかして・・・まあいいや、その胡椒かけたのは

パルカの分にしておいて。スピカの分は手を加えなくていいからね!」

ナックル「あいよ!」


中庭-

フラット「お待たせ~!はい、今日のお昼だよ~!」

スピカ「ワン!」

パルカ「待ってたゾ!」

スピカは思い切り肉に向かって飛び込み、パルカはぶんどるように

持っていった。

フラット「うん、間違えてないね。それでさ、バトラー」

ナックル「?」

フラット「多分、今のバトラーはあっちのバトラーとこっちのバトラーの

2人がくっついちゃったんだと思う」

ナックル「?どういうことだ」

フラット「だから、こっちの記憶もあっちの記憶も持ち合わせてるってこと。

別に害とかはないと思うけどね。でも、今はあっちのバトラーが

強いのかな。さっきの発言だと」

ナックル「・・・本当にお前は考察が好きだな」

フラット「それは昔から言われてる!」

ナックル「だろうな!俺も何度も言った覚えがあるぜ!」

フラット「ハハッ!」

ナックル「ガッハッハ!」

その様子をオフィスの窓から-

スラリア「今のフラット、幸せそう・・・」

ノール「やっぱり、私達よりもバカ虎の方が良いんだな」

ペーター「そりゃそうだろうね。フラット君にとっては、本当に

かけがえのない存在になっているんだしさ」

スラリア「そういえば、ペーターさんはここが孤児院の時の園長でしたよね。

その時の話聞きたいです!」

ノール「私も聞いてみたい。あの2人のこと」

ペーター「いいけど・・・そうだなぁ・・・じゃあ高校の文化祭の時の

話をしようかな」


文化祭1か月前-

ナックル「フラット!出しもん何にするか決めたか?」

フラット「うぅ~ん・・・定番だけど出店とかにしようかなぁって」

ナックル「んだよ、それじゃつまんねぇだろ?」

フラット「だからもう一個!体育館の講堂を借りてライブしたいなぁって。

バトラーと僕なら絶対ウケるって!」

ナックル「お、それは名案だな!よっしゃ、早速やろうぜ!」

フラット「どうする?オリジナルかカバーか」

ナックル「オリジナルなんか作ってる暇ねぇだろ!カバー一択だ!」

フラット「オッケー!先生に相談しよっか!」

ナックル「でも、文化祭準備も手伝わなきゃだな!」

フラット「そんなの当然だよ」


翌日-

フラット「先生!ちょっと今大丈夫ですか?」

先生「大丈夫だよ。どうしたんだい?」

フラット「あの・・・文化祭2日目、体育館の講堂って空いてます?」

先生「何かするの?」

フラット「はい!バトラーと2人でライブしたいんです!」

先生「ライブって・・・ダメだ、風紀が乱れるかもしれない」

フラット「えっ、そんな派手なライブじゃないですよ!」

先生「いいからダメだ。君達2人で責任を取れるのかい?」

フラット「・・・分かりました。失礼します」

仕方ないと諦めて、フラットは職員室から出ていった。


教室-

ナックル「なっ、ダメだし喰らった⁉︎何でだよ⁈」

フラット「その・・・風紀が乱れるからって」

ナックル「風紀が乱れるだぁ⁉︎どんなライブイメージしてんだ⁈

第一、優等生なフラットがんなメタリックなライブするわけねぇだろ」

フラット「ゆ、優等生なんかじゃないよ!普通だって!」

ナックル「お前はいいのか⁉︎折角お前が初めて勇気出して先生のとこまで

お願いしに行った案だぞ!」

フラット「分かってるけど・・・しょうがないよ。できないって

言われたものはさ」

ナックル「できるかできないかじゃねぇよ!やりてぇんだろ⁈

やりてぇから案出して先生に許可を貰いに行ったんだろ⁉︎」

フラット「それは・・・うん」

ナックル「第一、他人からのできないって言葉を鵜呑みにしてどうする⁈

俺はな、他人に言われたできないを覆してぇんだ!何でかわかるか⁈」

フラット「何度も聞いたよ、できるかできないかは-」

ナックル&フラット「自分で決めるものだから!」

ナックル「なんだ、分かってるじゃねぇか」

フラット「でも・・・僕にはできないよ。そんな反抗的な態度を取れる勇気が

何もないから・・・だからバトラーはファイターにもなれたし、

僕を安心させてくれるんだもん」

ナックル「フラット・・・」

フラット「だから、正直言うとバトラーが羨ましいよ。僕なんかより、

ずっと強いし・・・優しいもん」

ナックル「何言ってんだ、優しいのはお前だろ」

フラット「えっ?」

ナックル「俺が何かやらかしても許してくれるじゃねぇか。

俺だったらあんなすんなりとは許さねぇけどな」

フラット「あ~・・・じゃあ優しいのは僕だね、ッハハ!」

ナックル「やっと笑ったか。んじゃ、練習すっぞ!」

フラット「へ、練習⁉︎」

ナックル「やるんだろ、ライブ」

フラット「えっ、だから-」

ナックル「つべこべ言わずにやるぞ!」

躊躇っているフラットを気にかけることなく、ナックルはフラットの手を

強引に引っ張っていった。


河原-

ナックル「よし!ここなら迷惑にもならねぇだろ!」

フラット「ねぇ、本当にやる気?」

ナックル「あったぼうよ!このまま黙って引き下がりたくねぇしな!

その先生に一泡吹かせてやろうぜ!俺達の歌でよ!」

フラット「バトラー・・・言ってもカバーだけどね」

ナックル「っしゃ!やるぜ!ワン・トゥー!」


帰り道-

ナックル「結構人集まっちまったな」

フラット「結局門限すぎてる・・・園長に怒られちゃうね」

ナックル「それは・・・嫌だな」

フラット「ハァ~・・・憂鬱だよ~」

ナックル「そうだ!もしかしたら今日は入れさせてもらえねぇかもだし

コンビニ寄ってこうぜ!」

フラット「ダメだよ!コンビニ袋なんか提げてたら絶対入れさせてくれないよ!

まずは帰ってからにしよ?」

ナックル「そういうとこが優等生なんだよ。人の目ばっか気にしねぇで、

少しは自由を考えてもいいんじゃねぇか?俺だってファイターにはなって

金には余裕あるしよ」

フラット「・・・自由か・・・」

ナックル「よし!まずはそこからだな!」

フラット「へ⁉︎そこからって・・・」

ナックル「お前の根本から全てに勇気ってやつを教えてやんよ!」

フラット「えっ、いいよ!僕は別に・・・普通で」

ナックル「普通が1番って言うけどよ・・・そんなの1番つまんねぇぞ?

弾けた生き方してりゃ、もっと人生変わんのにな」

フラット「弾けて・・・分かった、今日は付き合うよ」

ナックル「なんだよ、“今日”はって。明日も付き合わせてやるぜ!」

フラット「やめとくよ!園長に心配かけさせるのも悪いし・・・」

ナックル「何も明日もこんな風に帰れなんて言ってねぇぞ。

それに今日は入れなかったらの話だしな」

フラット「あっ、そうだね」

ナックル「だろ?まっ、コンビニ寄ろうぜ。腹減ったしよ」

フラット「分かったよ、じゃあ行こっか」

「どこに行くって?」

フラット「あっ・・・」

2人の目の前には園長が立っていた。

ペーター「今までどこに行ってたのか・・・教えてくれるよね?」

ナックル「・・・フラット」

フラット「うん・・・多分同じこと考えてるよね」

フラット&ナックル「逃げろ!」

2人は一斉に走り出した。が-

ペーター「神業・タイムラグ!」

あっけなくペーターの神力で引き戻された。

ナックル「あぁ~・・・園長の神力は卑怯だぜ」

フラット「やっぱりこうなるのか・・・」

ペーター「で・・・まあ事情はわかってるよ。園の全員から聞いてるしね。

門限は守ってくれとしか言わないようにしようと思ってたが・・・

逃げたからね、掃除当番と料理当番の数を増やしておくよ」

フラット「えっ、そんなんでいいんですか⁈」

ナックル「そんなの⁉︎」

ペーター「アッハハ!フラット君は相変わらず雑よう好きだね。

罰の意味になっていないけど・・・折角だし園の子供達の世話でも

してもらおうかな?」

フラット「えっ・・・子供ですか?」

ペーター「お?」

やっとフラットに対しての罰ゲームが成立する。そう期待を抱いた

ペーターだったが-

フラット「一度でいいからやってみたかったんです!是非やらせてください!」

逆に嬉しそうな声で答えたフラットに、ペーターはうずくまった。

フラット「えっ⁉︎大丈夫ですか⁈」

ペーター「一体君は何が嫌なんだ・・・」

フラット「僕が嫌なことですか?そうだな・・・運動ですかね」

ペーター「えぇっ⁉︎君ランニングは毎日してるじゃないか?」

フラット「あれは好きでやってるんです。運動って言っても

ガチめなのが苦手なだけですよ」

ペーター「あぁ・・・部活みたいな感じのやつか。フラット君は

不得意なものが少なくて羨ましいよ」

フラット「えっ、不得意なものならいっぱいありますよ?ただ不得意なものでも

やれることだけはしたい!そう思ってるんですよ」

ペーター「チャレンジャーだね。ほら、帰るよ」

ナックル「ヘーイヘイ」

ペーター「ナックラーには追加で数学の課題でも出すかな」

ナックル「す、数学⁉︎勘弁だ、それだけは!」

ペーター「もう決定事項だ!赤点とったら毎日課題出すからね」

ナックル「フラット!お前数学は平均並だったよな!頼む!

教えてくれ!」

フラット「・・・ペーターさん、もう一つ苦手なことありました。

バトラーに物事教えることです」

ペーター「だろうね」

ナックル「そんなこと言わないでくれよ~!」

3人は我が家へ続く帰り道の上で、笑いながら歩いていた。


2週間後-

フラット「バトラー、数学どうだった?」

ナックル「まだ見てねぇんだ!俺は帰ってから見る!」

フラット「そっか、じゃあ-」

一生懸命ナックルが隠していたタブレットの画面の十の位がフラットの目には

見えてしまった。

フラット「・・・バトラー、帰ったらさ、一緒に勉強しよっか?」

ナックル「えっ⁉︎」

そのセリフにナックルは慌てて点数を確認してしまった。

フラット「あぁ⁉︎」

フラットの目に見えていたのは十の位の0であった。

ナックル「なっ・・・7点・・・」

フラット「・・・えっと・・・今回の平均点が58だから・・・」

ナックル「・・・フラット、お前が勉強教えてる余裕なんかねぇだろ?」

そう言ってナックルはフラットの点数を確認した。

ナックル「ほらな、やっぱ平均並じゃねぇか」

フラット「・・・いいよ。バトラーが罰ゲーム喰らっちゃうし」

ナックル「俺のことは今はいい!お前のしてぇことをすれば

それで良いんだ!」

フラット「バトラー・・・この前はさ、ノリであんなこと言ったけど、

別にバトラーに何か教えるのは嫌じゃないよ。それだけは言っとく」

ナックル「・・・ありがとよ」


孤児院-

フラット「ここはキー低くか・・・で、バトラーが主旋律の時は

僕が声を少し下げる・・・よし」

ペーター「何してるんだい?」

フラット「来週の文化祭の出し物の向けての準備です!」

ペーター「あれ、君とナックラーは同じクラスのはずじゃ?」

フラット「あぁ~・・・バトラーは今、宿題に追われてるんですよ」

ペーター「また週末までやらなかったのか・・・どうしようもないやつだね」

フラット「まあ・・・来週はほぼ休みみたいな感じですし、僕なんか

サボってますけどね」

ペーター「こら!」

フラット「冗談ですよ。あ、バトラーの部屋には入らないでくださいね。

今猛勉強中で神経が尖ってるので」

ペーター「・・・そうか」

フラット「あれ、どこ行くんです?」

ペーター「あぁ、物置部屋にね」

そう言ってナックルの部屋の方向へペーターは向かっていった。

フラット「たしかにあっちには物置部屋もあるけど・・・ バトラーのためにも!」

ペーターがナックルの部屋に行くのではないか、そう心配したフラットは

タブレットをスリープモードにし、ペーターを追いかけた。


フラット「失礼しまーす・・・」

ゆっくりとフラットは物置部屋の扉を開けた。しかし、フラットの思った通り

ペーターの姿はなかった。

フラット「・・・やっぱり・・・急がなきゃ!」

中を見渡し、フラットは急いで自分達の部屋に向かった。


2人の部屋-

フラット「バトラー!」

ナックル「ドワっ⁉︎なんだ、お前かよ。大声で入ってくんじゃねぇよ、

今勉強中なのは見て分かるだろうが」

フラット「・・・そっか、ごめん・・・」

不思議そうに辺りを見渡しながらフラットはそう答えた。すると-

コンコン!

とノックの音が響いた。

フラット「あっ!バトラー、それ仕舞-」

ペーター「隠さなくても分かってるよ?」

フラット「へ・・・」

扉が開き、ペーターが入ってきた。机の上にはまだ赤点の数学の

データが残ったままだった。

ペーター「7点・・・これ中間だろ?流石に・・・」

フラット「・・・あのさ、バトラーまた夏季補講になっちゃうよ?」

ナックル「んなこたぁ分かってるけどよ・・・」

フラット「まだ返ってきてないけど化学も・・・ライブやめる?

バトラーの夏季補講対策した方が良いよ」

ナックル「何言ってんだ⁈お前のやりてぇことを無碍にしたくねぇ!

俺のことじゃなくてお前だけに集中しろ!」

フラット「集中って言ったって、できないよ!バトラーなしで

ライブなんか・・・できっこない!」

ナックル「できねぇなんて、何で言い切れるんだ⁉︎まだやったことも

ねぇくせに、できるかどうかなんか分からねぇだろうが!」

フラット「!」

ペーター「どの口が威張ってんだ?お前、また夏季補講なんかになったら-」

フラット「バトラー、その代わり約束だよ!再テストは絶対合格して

期末は赤点を取らないこと!できなかったら今年は勉強ざんまいに

なるからね!じゃ!」

ペーター「ちょ、フラット君⁉︎」

ナックル「・・・よっしゃ、本気でやるとすっか!」

ペーター「・・・本当、馬が合う子達だなぁ」

諦めてようにため息を吐き、ペーターは部屋から出ていった。


1週間後、ライブ当日-

フラット「大丈夫なの?本当に」

ナックル「あぁ、再テストの結果は後で見せてやんよ。じゃあ・・・

いくぜ!フラット、マイクオン頼むぜ!」

フラット「オッケー!」

ナックルに言われ、フラットはマイクの電源を入れた。

フラット「大変お待たせしました!これより、2年B組の独断イベントの

ライブコンサートを開催致します!」

この放送は職員室にまで流れ-


先生「なっ、アイツら勝手に!」


フラット「それでは張り切っていきましょう!レッツゴー!」

その合図で幕がバッと開いた。それと同時にナックルはドラムを

力一杯叩き-

フラット「じゃあサポートメンバー!カモーン!」

男子生徒1「イェーイ!」

女子生徒1「よろしくね~!」

フラット「いくよ!まずは気分盛り上げて!」


先生「ここか!」

生徒「先生は立入禁止です!」

先生「なっ、先生になんて口を聞くんだ⁉︎」

生徒「ここは神聖な舞台と観客席です、もう満員ですので立ち入らないでください」

先生「何が神聖な舞台だ!これでもし風紀が乱れたら-」

生徒「風紀風紀って、そんなんだから何も変わらないんです!

フラットがライブをしようって言ったのは、あくまで文化祭を

盛り上げるためです!そんなのが許されないなら何のための

文化祭ですか⁉︎」

先生「・・・」

フラットの思いをフラットに代わって伝える生徒の言葉に先生は

ついに返す言葉を失った。

生徒「あ、始まった・・・この音を聴けば分かると思います。

フラットが何のために今ステージに立っているのか」

フラット「みんな盛り上がってる~⁈」

「イェーイ!」

フラット「まだまだいける?」

「イェーイ!」

フラット「じゃあ、大きな声で、この体育館を満たすよ1、2、

あ、1・2・3!」

先生「・・・優等生とばかり思っていたが、違ったな。フラット君は

ただ単に・・・自分らしくありたいだけか」


ペーター「とまあ、こんな感じかな」

スラリア「えぇ~、その後は?」

ナックル「その後か?」

ノール「バ、バカ虎⁉︎いつから⁈」

フラット「ライブの話してた時から・・・懐かしいね、あの時だっけ。

僕に出来ることをし続けようって決めたの」

ナックル「そうだな!俺の言葉あってこそのお前なんだな!」

フラット「・・・もう、それは実感したよ。あ、ちょっと待って、

中庭に忘れ物した!」

ナックル「なら俺も行くぜ」

ペーター「あぁ、行ってらっしゃい」

2人をペーターは見送った。

ペーター「そういえば・・・文化祭終わって帰ってきた時にも

今と同じようなことがあったな」

スラリア「どんな?」

ペーター「それは-」


フラット「あれ⁉︎ごめん、バトラーから預かってたタブレット、

置いてきちゃった!」

ナックル「ハァ⁉︎しょうがねぇ、取り行くぞ!あれがねぇと

課題もできねぇしな!」

ペーター「もう遅いから気をつけて行ってくれよ?」

ナックル「分かってるぜ!」

フラット「早く!学校閉まっちゃうよ!」

ペーター「やれやれ・・・忙しい子達だな」


学校-

ペーター「あったぞ!」

フラット「良かったぁ~・・・丁度いいや、点数は?」

ナックル「見ての通り・・・76点だぜ!」

フラット「えっ・・・合格点は80点じゃ・・・?」

ナックル「い?マジでか?」

フラット「ぷっ・・・アッハハハハ!冗談!やーい引っ掛かってやんの!」

ナックル「なっ、お前!言ってもいい冗談と言っちゃいけねぇ冗談が

あるだろうが!」

フラット「え~?分かんなーい!」

ナックル「テッメェ!」

フラット「やーい化学も赤点~!」

ナックル「ギクっ・・・知ってたのか・・・」

フラット「まあ科学の赤点は期末で挽回できるし問題は-」

ナックル「っしゃ!捕まえたぜ?」

フラットのからかいで傷ついた風に見せたナックルについうっかりフラットは

近づいてしまった。

フラット「げっ・・・」

ナックル「今日は・・・覚悟しとけよ?」

フラット「え~っと・・・!」

何か閃いたような顔をフラットは見せた。そして-

フラット「うわぁ~!ここに不審者がいまーす!」

と大きな声が学校に響き渡った。

ナックル「ちょ、お前⁉︎」

フラット「じゃ、僕はお先に!」

そう言ってフラットは窓から飛び降り、まだ不慣れな飛行術で

逃げていった。

ナックル「俺だって2階ぐらいの高さからなら落ちても平気だぜ!よっと!」

恐れることなくナックルは窓から飛び降りた。土に足を取られるも

すぐに抜け出しナックルも学校から出ていった。


近くの河原-

フラット「ふぅ~・・・いやぁスリル満点で面白かった!」

ナックル「あっ!みっけたぜ!」

フラット「げっ⁉︎こりゃ・・・お手上げ」

ナックル「さっきの分、両方ともお返しだな!」

笑いながらナックルはフラットに近づいた。

ナックル「ったくよ、相変わらず・・・」

ギュッとフラットをナックルは抱きしめた。

フラット「へ⁉︎」

ナックル「お前は俺の『家族』だろ?たまにゃいいじゃねぇか」

フラット「えっ、ちょ・・・」

あまりの急展開にフラットは焦って落ち着くことができなかった。

ナックル「何だよ、一応礼でもあるんだが?お前が俺の言いてぇことを

分かってくれて俺も本気で勉強できたしよ」

フラット「バトラー・・・」

その言葉を聞いて、フラットはナックルに身を委ねた。


ペーター「ってとこかな」

スラリア「えっ⁉︎ちょっと待ってください⁈あの2人、そういう関係ですか⁉︎」

ペーター「?そういうって・・・変な誤解させたかな?」

ノール「いや、私もそう思った」

ペーター「まあ・・・俺の口からは何も言わないでおくよ。あの2人、

親友以上の関係ではあるからね」

ペーターは中庭にいる2人を見下ろしながらそう言った。


フラット「あった!ごめん、ついてきてもらって」

ナックル「忘れ物が多いのは相変わらずだな。ちったぁ気をつけなよ」

フラットにとっては懐かしい笑顔が、自然とフラットを笑顔にした。

そして-

ナックル「・・・やっぱお前には笑顔が1番だな」

そう言ってナックルはフラットの頭を撫でた。

フラット「ふぇ⁉︎バトラー!もう子供じゃ-」

言いたかった言葉がナックルの温もりで消えていった。その温もりをフラットは

ただ受け入れて、気付けば2人の影は木陰に消えていた。

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