第24話 新たなる光 1節 再会

元独裁フラットの世界線ー

クレア「もう・・・無理だ!」

フラット「チッ!なんて数だ・・・くそ、まだいけるか⁉︎」

ノール「ここは・・・撤退すべき・・・ロクに戦えるやつはもういない」

ナックル「!フラット、危ねぇ!」

その世界線では、今までの脅威大量発生の数十倍もの脅威が

現れており、フラット達は既にボロボロになっていた。そのせいもあって

集中力に限界がきていたフラットはアリジゴクの一斉攻撃に

気付けず、いくつもの触手に串刺しにされた。

ナックル「フラットォォォォォ⁉︎」

ノール「なっ・・・」

「私を殺した報いです・・・当然でしょう?」

ナックル「テメェ・・・まさか⁉︎」

獅子獣人「えぇ、世界を全て管理する者。どの世界の者も私を

管理者と呼んでいます」

クレア「お、お前がフラットを・・・許さない!第一突風『炎』術・『怨炎颯』!」

獅子獣人「ムダです、神器ゴッドミラーの前では貴様らのような

神力、いくらでも跳ね返せる!」

クレアの矢は鏡の中に入っていった。

獅子獣人「・・・さあ、この世界を私のものにする!」

その言葉と共に威力を増したクレアの矢が全員に目がけて一直線に

跳ね返された。

スター「神業・追風!」

全員を守ろうと必死にスターは矢の威力を落とそうとするも、

あまりの強さに一瞬でスターの神力を無碍にした。

スター「キャァ⁉︎」

その突風は全員を吹き飛ばした。ただ1人、ナックルを残して。

獅子獣人「ふむ・・・もう少し抵抗するかと思われましたが・・・

所詮はこの程度というわけですか。まあ、よろしいでしょう。

私の目的はまず・・・あなた方の魂を頂くことです」

全員の姿を鏡が映すと、一斉に魂が吸収されていった。

ナックル「くっ!」


フラット「バトラーは絶対に出てくるな!」


ナックル「・・・ちぃ!」

魂の回収を終えた獅子獣人はゲートを開いた。

ナックル「!それしかねぇ・・・フラット、すまん!」

約束を破り、ナックルはゲートへ一直線に走り出した。

獅子獣人「⁉︎なっ、させるか!」

一瞬の躊躇いで獅子獣人はナックルの魂を奪い損ねた。そのままナックルは

異世界線へと繋がるゲートへ飛び込んだ。


いつもの世界線ー

フラット「ふわぁ~・・・おはよ、エド」

エド「あれ、今日大学じゃないっすか⁈」

フラット「何言ってんの、今日は祝日だよ?」

エド「あ、そうっすね」

フラット「もう、ちょっと早起きするだけで頭が回らないんだからさ」

エド「だってまだ朝っすよ?」

フラット「・・・?」

歯切れの悪い回答に、フラットの頭の中には大きなはてなマークだけが

浮かんでいた。

フラット「まあいいや、朝食は食堂にしよ?今日は朝から仕事が

あるしさ。エドの分は奢るから、ね?」

エド「食堂には賛成っすけど、奢りはいいっすよ。フラットの

財布が萎むだけっすよ」

フラット「いいの?まあ・・・エドがそう言うなら」

エド「じゃあデ・ロワーに行こうっす!」

張り切ってエドは外へと飛び出していった。

フラット「ちょ、待って!」

あまりの勢いの良さにフラットは置いてかれた。


デ・ロワー食堂-

エド「あっ、やっと来たっす」

フラット「あのさ~・・・エドみたいな異世界人は足の筋肉の構造が

こっちとは大違いなんだから、ちょっとは考えてよ」

クレア「お前は飛んでくれば良かっただろ?」

スラリア「そうそう。あ、フラットもこれでしょ?」

フラット「えっ・・・これ・・・」

スラリアが笑顔で手渡したのはプレートにどっさりと盛られた

大量のケーキだった。

フラット「朝からこんなに甘いの食べるわけないでしょ!」

クレア「昨日のケーキバイキングのあまりだ、持って帰っても

いいってよ。好きなの持ってけ」

フラット「何だ、朝食かと思った」

スラリア「ごめん、言い方悪かったかな?」

フラット「いやまあ、いいよ。じゃあ僕は・・・モンブランとレモンチーズタルト、あとデラックスショートケーキ」

クレア「多いな・・・?お前、苺ダメだろ!」

フラット「あちゃ、バレた」

スラリア「覚えやすいよフラットのGアレルギーは」

Gアレルギーとは神の血を引く者にだけある独特なアレルギーで、

そのアレルゲンを食べると興奮状態に陥る。つまりは酔っ払うのである。

フラット「・・・じゃあショートケーキの代わりにスペシャルショコラ。

エドは何にする?」

エド「俺はキウイ乗ってるやつで!」

フラット「コラ!」

エドのようなヒョウ獣人にはキウイなど厳禁である。Gアレルギーの

発作よりもひどく酔っ払うからである。

フラット「先にキウイのケーキは僕の方に渡して」

スラリア「フラットもダーメ!キウイのあるやつには苺もついてるから!」

フラット「食べないよ」

クレア「さっきの一言で信用ならないんだが」

フラット「だよね・・・?ってクレア?それ⁉︎」

話をしながらケーキを食べていたクレアが食べようとしていたのは、

『グレープジュレ』の塗られたミルクレープだった。

クレア「?これブルーベリーだが?」

フラット「え、匂いブドウ・・・やめなって!」

しかしクレアは静止を効かずに口に入れてしまった。

スラリア「えっ?それあたしのじゃん!」

ことに気づいていなかったスラリアがようやく気づいた。しかもそのケーキは

スラリアのものであった。

フラット「はぁ⁉︎てか待って!クレア⁈大丈夫・・・じゃなさそう・・・」

クレア「?なんか・・・ボーッとする・・・」

フラット「エド、お願い」

エド「了解っす!」

フラットの命令でクレアに手刀をしようとエドが近づいたその瞬間-

「ドワっ!」

クレア「ッテェ⁉︎」

突然天井から誰かが降ってきて、クレアを押し潰した。

クレア「テテ・・・誰だ⁉︎」

「す、すまん!・・・ん?」

その顔を見ると、落ちてきた人物も全員も沈黙してしまった。

スラリア「・・・え?」

フラット「あれ、夢?天井に穴は・・・」

エド「空いて・・・ないっすよ?」

クレア「おい誰か、俺をつねってくれ」

スラリア「えっ、でも痛かったんだよね・・・?」

そして気づけば周りがざわついていた。

ノール「ちょっと失礼・・・ねぇ、なんの騒ぎ・・・⁈」

フォール「静かに食事もできんのかお前ら・・・は⁉︎」

フラット「・・・どういうこと⁈」

ナックル「・・・」

しかし当のナックルは急に意識を失った。

ノール「ちょ、えっ⁉︎」

クレア「ん・・・⁉︎おい、怪我してんのか⁉︎」

フラット「とりあえず医務室!」

エド「俺とフラットで運ぶっす!」

フラット「分かった!ちょっとどいて!」

エドの判断に従ってフラットは2人でナックルを医務室まで

運んでいった。


医務室-

フラット「本物・・・だよね?」

ノール「天井から降ってきたんだろ?」

クレア「だが天井に穴なんか空いてねぇし・・・」

スラリア「多分あたし達のいる世界とは違う世界線のなっくんだけど・・・

大丈夫かな、もしヴァイスとかだったら・・・」

フラット「それはない!バトラーがヴァイスになるような経験、

してるはずないから!」

フォール「ていうか元々からヴァイスみたいなもんじゃねぇか?

人工アリジゴクに携わってるやつだしな」

クレア「まあ俺もヴァイスではないと思うがな。俺と目があった時の

表情が、ちょっとな」

エド「でも・・・ナックラーさんがこの世界に来たら普通俺達の

記憶も改竄されるはずっすよね?」

ノール「・・・そうだな。一度死んだ者の魂が流れ込んだら、

死んだという事象がなくなる」

スラリア「じゃあこのなっくんは?」

フラット「・・・もしかして・・・あっちで何かあったのかな?」

クレア「あっちって・・・まさか⁉︎」

フラット「こっちのバトラーになくて、あっちのバトラーには

あるものがある。何かは僕にしか分からないけど・・・この傷、

昔僕が付けようとしたものだから」

ノール「いつの話だ?」

フラット「・・・変なことを考え始めたきっかけの時。バトラーを見て

傷つけようと思った場所だから・・・多分そう」

フォール「でもよ、それがこの事例に何か関係してんのか?」

エド「そうっすよね・・・」

フラット「僕のとこに、あっちの僕が来た。何かが起きるかもって。

多分それがこれなんじゃないかなって」

ノール「・・・待て。傷だらけってことは戦ってたわけだ。だったら、

あのペーターが言ってたことが起きてたんじゃないか?」

スラリア「でもさ、あたし達がこうやって話し合ってても結局は

なっくんしか何があったのか分からないわけだし・・・起きるのを

待とうよ。なんか・・・なっくんの顔・・・悲しそうに見えたから」

フラット「・・・そうだ!」

何かを思いつき、フラットは急いで食堂に戻っていった。

クレア「ちょ、おい⁉︎」


フラット「あった!これを使って・・・」

売れ残ったケーキのキウイをかけ集め、フラットは再び医務室に戻った。


クレア「ったく、どこ行ったんだか知らんが-」

フラット「ただいま!」

クレア「ドワぁ⁉︎」

扉の目の前にいたクレアが、フラットの勢いよく開けたドアによって

吹き飛ばされた。

フラット「あっ、ごめん・・・でも今は待って!」

慌て気味にフラットはナックルのもとへと駆け寄った。そして、

そのキウイを鼻元へ運ぶと-

ナックル「!キウイ⁈」

フラット「やっぱり・・・バトラーだね!」

聞きたかった返答がフラットに届き、思わず涙が溢れてしまった。

その涙はナックルに落ちていった。

ナックル「・・・?フラット?」

スラリア「あっ・・・本当に・・・なっくんなんだ・・・夢みたい、

また会えるなんて・・・」

クレア「ってて、今日2回も・・・⁉︎」

エド「ずるいっすよ・・・こんな再会。俺・・・もう会えないって

思ってたっすもん!」

ナックル「?こっちで何があったんだ⁈」

ノール「ホンットにバカ虎だな!少しはノウキンから成長したらどう⁉︎

私がその性格にどれだけ・・・どれだけ悩まされたか分かってる⁉︎」

フォール「ノール、落ち着け。まあ俺も悩まされたな、お前には」

ナックル「はぁ?全く分からねぇんだが・・・ていうか・・・お前ら誰だ?」

全員「えぇ~⁉︎」

ナックル「建物からしてここはデ・ロワーだよな?」

フラット「え、僕分からない?」

ナックル「・・・?」

ノール「ま、まああっちの私達の容姿は軽くとはいえ違うが・・・

分かるだろ、考えれば」

ナックル「とりあえず、ファイター課に行かせてくれ」

フラット「だから、僕達がファイター課ですけど⁉︎」

ナックル「えっ、ハァ⁉︎」

フラット「僕がここの隊長のフラット!」

ノール「なんか変な気分だが・・・私がノール」

クレア「俺はクレアだ。自己紹介2回目だぞ」

エド「俺の事は覚えてるっすよね?迷惑ばっかかけてたっすし・・・」

ナックル「迷惑・・・?エドか?」

エド「そうっすよ!覚えててくれたんすね!」

ナックル「き、気持ち悪りぃな」

エド「へ⁉︎」

ナックル「こんなハキハキとしたエド、なんか無理だ」

フラット「あぁ、あっちのエドはずっとあの調子だったんだ」

エド「えぇ~・・・あっちのフラットはダメっすね」

ナックル「んだと⁉︎アイツらはな-」

反論しようとしたナックルの声が途中でピタッと止まった。

フラット「・・・バトラー?」

ナックル「・・・アイツらは・・・俺のせいで死んだ」

スラリア「えっ、今なんて言ったの⁈」

フォール「どういうことだ⁉︎」

ナックル「あの男が・・・蘇りやがった!」

フラット「やっぱり・・・じゃあ起きるね。こっちにも脅威大量発生」

クレア「しかも、人工アリジゴクが追加されてな」

スラリア「それだけじゃないよ!この前の魔粉もある!」

ノール「いや、魔粉のことを詳しく調べた結果、分かったことが

もう一つあった。魔粉を使った儀式が最初の人工アリジゴク計画だったらしい。

魔粉は魔獣化に必要な魔力とパラレルストーンのカケラを混ぜた粉らしい」

クレア「つまりは、あれも人工アリジゴク計画の一部ってわけか。

まあ、すっとこどっこいは知ってたんだろ?」

ナックル「なっ、何で俺が人工アリジゴク計画に携わってることを

知ってんだ⁉︎」

フラット「まあ・・・こっちで色々あったんだよ」

ナックル「・・・フラット・・・」

フラット「でもさ、こうして会えたのは本当に嬉しいよ!だって、

またバトラーの隣にいられるからさ!」

フラットはナックルにとびきりの笑顔を見せた。

ナックル「ごめんな・・・今は笑いてぇ気分にはなれねぇ」

フラット「えっ?」

クレア「話聞いてたのか?俺達を殺されてんだぞ」

フラット「あっ、そっか・・・」

ノール「でも・・・脅威大量発生がまた起こるなら、用心しないと」

クレア「だな。おい、お前も手伝ってくれよ?俺達よりも大先輩なんだしよ」

ナックル「・・・俺が・・・先輩・・・」

フラット「バトラー・・・そうだ!ケーキあるけど食べない?

すっごく美味しいんだけど、どう?」

ナックル「・・・こっちのお前は優しいんだな」

クレア「おいおい、こっちのお前とは大違いだな。場慣れの早いのが

お前だろ?ほら、シャキッとしな!」

スラリア「クレア、ちょっとそれはダメだよ!」

エド「でもナックラーさんっぽくないっすよね・・・」

ノール「こんな弱虫なやつだったか?」

フラット「高校生の時まではこんな感じだったけど・・・」

ナックル「べ、別に弱虫じゃねぇ!ただよ・・・」

フラット「不安・・・かな?」

ナックル「不安というか・・・分からねぇ」

フラット「まあそんな時は食事から!ほら、いこっ!」

悩んでいるナックルに対してフラットは手を差し伸ばした。

フラット「バトラーが言った言葉だよ。飯を食わなきゃ何も

始まんねぇ!ってね」

ナックル「・・・どんだけ前の言葉か覚えてるのか?」

フラット「小学生の時!」

ナックル「ガッハッハ!やっぱフラットだ、そういうとこはな!」

フラット「・・・」

その笑い声を聞いた途端、フラットの胸が一気に熱くなり、

瞳の奥から涙が一粒溢れた。

ノール「なんか・・・この感じ懐かしいな」

エド「元通りに・・・なれるんすかね」

クレア「するんだろ。これからさ」

フォール「だな。それに・・・お前がいねぇと困るからな」

ナックル「お前ら・・・」

スラリア「最初は戸惑うかもしれないけど、だんだん慣れてくれれば

全然いいから!だから一緒にまた戦お?」

ノール「またって言うか・・・初めてだけど」

フラット今はそんな話より食堂の戻ろ!バトラーの分は奢るから!」

ナックル「ありがとよ、フラット」

フラット「!バトラー・・・」

ナックル「こっちも俺がお前とどんな風に接していたかは知らんが・・・

何でだろうな、勝手に言葉が口から出てきたぜ」

フラット「・・・バトラー、お帰り!」

ナックル「・・・おう、ただいまだぜ!」

スラリア「じゃあ食堂に行こうよ!」

全員はナックルを支えて食堂に向かっていた。


食堂-

フラット「はい!バトラーの好きなシチュー!」

ナックル「へ⁉︎」

エド「こっちはタンドリーチキンっすよ!」

ナックル「待て待て、お前らどうした?」

フラット「パーティだとでも思ってよ!後でオフィスにも-」

「皆様、お騒がしいですわよ?」

フラット「あっ、バジー!」

バジー「お食事中は静粛にお願い致しま-!」

ナックル「おっ、バジーか!どうしたんだ?」

バジー「えっ・・・どういう状況ですか?」

フラット「とりあえず話はオフィスでするので今は食事を優先しても

いいですか?バトラーも疲れてるみたいですし」

ナックル「こんなに食っていいのか?」

フラット「もちろん!」

ナックル「じゃあ遠慮なくいただくぜ!」

フラット「どうせ僕の奢りだし」

ナックル「ん⁉︎ゴッホ!ゲホゲホ!んなのさっき聞いた!分かってるっての、

お前らも食えよ!食事中だったんだろ!」

クレア「プッ・・・アッハハハハハ!」

スラリア「なっくんがいるだけでこんなに面白くなるんだね、

やっぱり・・・今のデ・ロワーの方がいいな」

エド「そうっすね。ナックラーさんの声がないオフィスなんて・・・

寂しいだけっすもん。でも変わった俺達を見せる時っすね!」

バジー「・・・やはり、ナックル様あってのデ・ロワーですわね。

ペーター様も喜ぶことでしょう」

クレア「あ、じゃあよ!またコイツのファイター契約申請届を

書かねぇとな!」

ナックル「げっ・・・あれ再発行めんどくせぇんだよな・・・」

ノール「あぁ、そういえばめんどくさかったな」

スラリア「そうそう、なんかね」

フォール「反省書20枚よりは楽だけどな」

フラット「普通20枚も書かないけどね」

フォール「うっせぇ」

ナックル「うっ・・・!」

エド「あっ、そんな詰め込んだら喉に詰まるっすよ!ほら水っす!」

ナックル「ん・・・ング、ング・・・ぷはぁー!し、死ぬぅ!」

フラット「本当に慌てん坊だよね、相変わらずだけど」

ナックル「そういうお前だって天然はそのまんまだがな」

フラット「えっ、どこが⁈」

ノール「・・・あ」

クレア「お前・・・ったく、ジーパン見てみろよ」

フラット「へ?・・・あぁ!」

クレアの言う通りにジーパンを確かめると、1箇所に白布が

顔を覗かしていた。

フラット「バトラー・・・いつから気付いてたの?」

ナックル「俺の目の前にいた時から・・・」

フラット「言ってよ!すんごい恥ずかしいじゃん!」

スラリア「もう、気をつけてよね」

ナックル「そうだ、フラット。お前に渡しとくものがある。

ちょっと手貸せ」

フラット「?」

ナックル「いいから早く」

フラット「分かった・・・?」

真剣な声色でそう言うナックルにフラットは疑念を抱きつつ、

手を出した。

ナックル「ん、これ。こっちの俺がお前に渡したかどうかは

知らねぇけどよ。別に2個あっても困りゃせんだろ?」

フラット「い、いや・・・」

ナックルが手渡したものはたしかに嬉しいものではあった。

しかし・・・

フラット「あのさ・・・今渡すものじゃなくない?」

ナックルが渡したものは、なんと下着だった。

フラット「分かるよ?バトラーが僕のこういうのを洗濯しようとした時に

ジュースぶちまけてダメにしたの。渡すのは今じゃなくない?」

ナックル「しょ、しょうがねぇだろ!」

クレア「お前ら2人が揃うと、本当にお笑いトリオだな」

ナックル「なっ、お笑い⁉︎」

フラット「バトラー、口の中入ってる時は喋らない!」

ノール「お笑いというより、親子だな」

フラット「もう・・・」


30分後、食事も終わりオフィス-

フラット「ペーターさん!大ニュースです大ニュース!とびっきりの

大ニュースです!」

ペーター「な、何だい?珍しいね、君がそんなにはしゃいで」

フラット「もうあれこれ言ってる時間も勿体無いので・・・入ってきて!」

その声を合図にオフィスの自動扉が開いた。

ペーター「えっ、えっ⁉︎」

ナックル「よっ、ペーター!って言っても、俺からしたら一応は

初対面になるんだがな」

ペーター「?待ってくれ、何がどうなってんだ⁈」

クレア「コイツは異世界線のすっとこどっこいだ。しかも異例のな」

ノール「普通、こっちの死んだやつの魂が流れ込んだら世界の記憶が

改竄されて死んでなかったことになるはずなんだけど・・・」

スラリア「なんでか記憶に残ってるんだよね」

ペーター「・・・そうだな、言われてみれば。どうなっているんだ?」

ナックル「それは・・・俺が管理者のゲートを無理矢理通ってきたからだろうな。

アイツに奪われた、フラット達の魂を取り返すためにもな!」

エド「えっ、魂を奪われたんすか⁉︎」

フラット「じゃあ・・・もしかしてアリジゴクにする気じゃ⁈」

ペーター「それはともかく・・・ナックラー、お帰り」

ナックル「なんだかお前にお帰りって言われても嬉しくないぞ!」

ペーター「そうだろうな、俺がお前にお帰りと言う時は大抵は

説教か反省書だもんな。まあ、ファイター契約申請届を書いてもらうから

ちょっと待っててくれ」

そう言うとペーターは奥の部屋に入っていった。

フラット「え、ファイター契約申請届はこの棚の中なんだけど・・・」

クレア「じゃあ出しとけよ。ペーターのことだ、勘違いしてんだろ」

フラット「え?ペーターさんが勘違いなんて・・・」

スラリア「もう、ここでしょ?」

ノール「そう、上から2段目」

エド「ナックラーさん、ここに名前、ここにファイタータイプ、

ここに・・・ここに・・・」

フラット「エド・・・?」

エド「・・・ごめんなさいっす・・・でも・・・やっぱり嬉しくて・・・

だって俺の憧れたファイターっすよ?」

ナックル「エド・・・ったく、本当に変わったんだな。フラットのおかげか?」

エド「そうっすね、フラットの言葉があるから今の俺があるっす!」

フラット「そしたら甘えん坊になって・・・でもさ・・・どれもこれも

バトラーがいなかったら・・・何もなかったんだよね・・・バトラーが

差し伸ばしてくれた手があって、僕を無理矢理にでも引っ張ってくれて・・・

そして誰かを支える勇気をくれた。やっぱりバトラーのことが

今でも忘れられなかった!だから・・・また一緒にいたい!ずっと・・・

もう手放したりしないから!」

ナックル「フラット・・・」

ノール「私も・・・いたい。バカ虎なしのデ・ロワーは・・・その・・・

面白みがないから」

クレア「普通に物たりねぇしな」

エド「俺も同じ思いっす!」

スラリア「あたしもなっくんといたい。だって・・・なっくんに

言いたいことも、伝えたいこともいっぱいあるから!例え食い違いが

あっても・・・全然気にしない!」

フォール「まあ、今のデ・ロワーは静かすぎるもんでな」

ナックル「お前らまで・・・分かってる。またいさせてもらうぜ。

だからそんならしくもねぇ目をすんなっての!」

フラット「・・・うん!」

ナックル「よっしゃ!じゃあ・・・イベントしようぜ!」

ノール「・・・イベント?」

クレア「ハッハハ!脈絡のねぇ話に繋げんのはもうやめにしようや。

会議が忙しくなっちまう」

フォール「先に挨拶に回るだろ?」

フラット「だね、大学にも説明しないと」

スラリア「ヒナちゃん達、なんて反応するかな?」

クレア「すっとこどっこい、先に挨拶しないか?」

ナックル「・・・?すっとこどっこいって俺のことか?」

クレア「あ、あぁ!そうだっけな」

ナックル「まあ挨拶はしねぇとな」


ジ・アフダン-

フラット「失礼します」

タクマ「珍しいな、直接お前らがうちのファイター課に顔出すなんてよ」

ヒナ「で、緊急の用事って?」

フラット「じゃあ・・・入って!」

ナックル「おうよ!」

タクマ「⁉︎ちょっと待て、今の声って・・・⁈」

ヒナ「えっ⁉︎ナックル君⁉︎」

ナックル「一応俺は昨日も会ってるんだがな」

タクマ「・・・本当に出しゃばりなやつだな」

ヒナ「お帰り、ナックル君!」

ナックル「おう、ただいまだぜ!」


浅草区警察署-

ラルバ「おはようございます!今日は珍しいですね!」

デラガ「俺達もそんな暇人じゃないが・・・それに今、新人の実習中で

忙しい方なんだが」

クレア「そう固いこと言うなよ。軽~い気持ちでいてくれねぇと

やりにくいしな」

ラルバ「?何かするんですか?」

デラガ「にしても、フラットがいないのは珍しいな」

クレア「あぁ、今来るぞ。じゃ、待たせるのは悪りぃし・・・

もう入ってきていいぞ!」

フラット「オッケー!おはよう、ラルバ、デラガ!」

ナックル「こうやって直々に会うのは緊張するな!」

ラルバ「えぇぇ⁉︎」

デラガ「ナ、ナックル⁉︎」

フラット「へへ、異世界線のね!」

ラルバ「・・・また一緒に戦えるんですね!本官、嬉しいです!」

デラガ「これでファイター関連の事件も解決しやすくなる!」

ナックル「こっちでもよろしくな!」

ラルバ「やっぱりただで帰ってこないのがナックルさんですね!

あ、でもゴンさんには合わせない方がいいですよ?」

フラット「まあね、変に記事書かれても困るし」

クレア「すまんな、時間取らせて。挨拶に回ってるもんでそろそろ行くわ」

デラガ「何かあったら頼りまくるが了承してくれよ?」

フラット「もちろん!2人と協力するの楽しいしさ」

ラルバ「ヤッタァー!フラットさんがオッケーしてくれるなら

万事解決です!」

フラット「じゃあ次いこっか」


マドールブティック-

スラリア「こんにちは~」

アスカ「スラリアさん⁈あ、こんにちは!えっと・・・予約されてましたか?」

スラリア「直接予約したくて来たの。あと用事もあったからね。

まず予約いい?」

アスカ「しょ、少々お待ちください。今お師匠を呼んできますので」

セイ「お客さん?」

アスカ「セイ、遅いでしょ!」

セイ「お姉ちゃんが先に飛び出すからでしょ?」

マドール「あなた達、うるさくてよ!裁縫に集中できな-

あら、スラリアちゃん、来てたのね。ごめんなさい」

スラリア「はい、ステージ衣装でこのデザインの服を8着、

色は青、黒、黄緑、ラメの入った黄色、オレンジ、紫、レモン色、赤で

お願いします。文字はマドールさんにお任せします」

マドール「分かったわ・・・?8着も?」

スラリア「はい!じゃあ・・・」

爽やかな笑顔でスラリアは入り口の扉を開けた。ベルの音と共に

入ってきた2人に-

アスカ「えぇっ⁉︎」

セイ「ど、どういうこと⁉︎」

マドール「に、人形か何かかしら?」

ナックル「失敬な!正真正銘、ナックル・バトラーだぞ!」

アスカ「え、いやいや!えっ⁉︎」

セイ「でも・・・生きてるのはたしかだね・・・」

マドール「じゃあ何?流れ者のナックル君ってことかしら?」

フラット「大正解です!じゃあ挨拶もしたし、次は・・・」

「マドール~、予約したの届いたか~?」

アスカ「あ、ゴンさん!少々お待ちください!今持ってきますね!」

フラット「げっ・・・」

ナックル「?おう、ゴンじゃ-」

フラット「こんにちは、ゴンさん!じゃあスラリア、支払いは

任せるよ。じゃあお先に!」

ナックル「ちょ、おい⁈挨拶するんじゃ-」

無理矢理にでもフラットはナックルを外に連れ出していった。

ゴン「・・・なんだ?」

スラリア「さ、さぁ・・・」


浅草新聞社-

フォール「だからもうすぐ来るって言ってるだろ!」

ベスト「いくら待たせる気だ?」

フォール「今電話してみる!」

フラット「すみませ~ん!あっちこっち行ってて・・・本当にすみません!」

ベスト「まったく・・・ゴンのやつがまたどっか行ったから新聞の発行で

忙しいんだ、少しは考えて-」

ナックル「ゴンならマドールの店にいたぜ?」

ベスト「!そうか、ありがとうなナックル・・・⁉︎ナックル⁉︎」

ナックル「よっ!」

フラット「あ、早くしないとゴンさんどっか行っちゃいますよ!」

ベスト「そ、それもそうだね・・・じゃあ後であれこれ聞きたいから

事務所に訪問させてもらうね!」

フラット「あ、ゴンさんは来させないでくださいね?捏造なんか

されたら最悪ですから」

ベスト「あいよ、じゃあまた後でな!」

そう言いながらベストは上着を脱いで出ていった。

フラット「これぐらいかな?」

フォール「まあセンリ達はまた後でだな」

ナックル「そういやスターのやつはどうした?」

フラット「・・・あっ!」

フォール「そういや部活だったな」

フラット「じゃあ戻ろっか!」

3人はようやくデ・ロワーに戻っていった。


オフィス-

スター「えぇ~っ⁉︎」

ナックル「すまんな、部活だったのか」

スター「うん・・・またこうなったね!」

スラリア「ねぇ、写真撮ろうよ!」

クレア「おっ、いいなそれ!」

ノール「まだあの2人がいないのにか?」

スラリア「あの2人ならもう帰ってくるよ。さっき赤雲さんが

伝えにきたから」

フォール「ふぅん、赤雲ってやつは地獄とこっちを行き来できるのか」

スラリア「そうだね、できるみたい」

アイン「ただいま戻りました!」

パルカ「やっと終わったゾ!」

フラット「あ、2人も来た!多分バトラーは知らないよね、

新隊員のアインとパルカ。地獄から来たみたい」

ナックル「地獄から・・・?まあいいか、写真だろ。よっしゃ、

集まったみてぇだし、撮ろうぜ!」

スター「じゃあ、ちょうどスターがカメラ持ってるからそこに集まって」

フラット「それじゃあバトラーを中心に!」

全員は一斉にバトラーの周りに集まった。

スター「オッケー!じゃあ・・・タイマー設定っと。よし!」

タイマーを設置し、スターも全員のもとに行った。

スター「じゃ・・・はい、チーズ!」

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