第23話 2節 アルバム
5月9日、クレアの部屋ー
クレア「あった!」
部屋の引き出しに仕舞っていたアルバムをクレアは見つけた。
クレア「たしか・・・この中に!」
アルバムの中にはユリの球根が入っていた。
クレア「よし・・・フラットに頼んでみるか」
夜7時ー
フラット「何?用事しかメールに書いてなかったけど」
クレア「実は・・・これを成長させてほしくてな」
置いてあった植木鉢をクレアはフラットに差し出した。
フラット「これは?」
クレア「ユリの球根が入ってるんだ、頼む!」
フラット「いいけど・・・ユリって結構すぐ散っちゃうよ?お見舞いには
向かないと思うけど・・・」
クレア「なっ、何でお見舞いって知ってんだ⁈」
フラット「そりゃこのタイミングで花なんてそれしかないじゃん」
クレア「まあ・・・言われてみればそうか」
フラット「まあ長生きさせたいならクレア次第だよ。お父さんは
怪我してるんでしょ?」
クレア「あぁ、足をな」
フラット「じゃあクレアが水あげとかしないとね」
クレア「んなの、よくじっちゃんとしてたし!大丈夫だ」
フラット「ならいいかな。じゃあいくよ、神業・急成長!」
その詠唱で植木鉢に芽だけが生えた。
クレア「・・・?おい、いつもみたいに一気に花とか咲かせられねぇのか⁈」
フラット「いや・・・無理。え、何で?」
クレア「球根が古すぎたか?」
フラット「いつの?」
クレア「俺が37だったから・・・70年ぐらい前のだ」
フラット「よくもまあ芽が出たよ。そんなに生命力が強い球根、
いや植物なんてないよ?」
クレア「でも現に生えて・・・」
フラット「まあ、それだけ咲かせたいんでしょ。用事ってこれだけ?
じゃあもう帰るね、今テレビ見てたし」
クレア「あ、あぁ!すまんな、ありがとう」
フラット「うん、それよりめんどくさがらないでよ?クレアって
飽きっぽいから心配だよ」
クレア「流石に飽きねぇよ、昔っからやってんだぞ?スターの
花植えだって俺が手伝ってんだし」
フラット「そういえばそうだったね。じゃあ大丈夫か、じゃあまた明日!」
クレア「おう、悪かったな呼び出して」
クレアの家ー
クレア「ふぃ~、ただいま」
スター「お帰り兄ちゃん。どこ行ってたの?」
クレア「ただの散歩だ、それより飯にしようや。出前頼んであるしな」
スター「さっき届いたよ、ラーメンでしょ?転送ロッカーにあったよ」
クレア「あれ、ラーメンしかなかったか?」
スター「ううん、まだ伝票来てないから後から来るんじゃない?」
転送ロッカー「天津軒から伝票のお届けです」
クレア「は?まだ全部来てねぇだろ」
不思議そうに思いながらクレアは転送ロッカーを開けた。しかし、
そこにあったのは小さな伝票1枚だけであった。
クレア「なっ・・・おいスター!お前食べたな⁉︎」
スター「食べてないよ?スターはさっきまで吹奏楽の練習してたし、
さっきラーメン来たばっかだもん」
クレア「あそこの店がミスするわけねぇだろ!店長は厳しいんだぞ!
ミスするような人材を選ぶほど店長の目は節穴じゃないしな!」
スター「知らないよそんなこと!スターを疑うよりミス疑った方が
いいんじゃないの⁈」
クレア「だからあの店がミスするわけねぇって言ってんだ!」
スター「知らないってば!スター食べてない!」
クレア「いいやお前しかいないんだ!」
スター「バッカじゃないの⁉︎スターがそんなことするわけないじゃん!
もういいよ!じゃあね!」
怒りに任せてスターは神力を使って遠くへ行ってしまった。
クレア「ったく・・・知るか」
カリカリしながらクレアが食卓へ向かうと・・・
クレア「?食器ねぇな・・・まあ洗っといたのか?」
フイッと流しを見るも、そこにも天津軒と書かれた食器はなかった。
クレア「・・・まさかな」
不安を隠しきれない声色でクレアはそう言った。その瞬間だった。
ピロロン!ピロロン!
と、モニター電話に着信が入った。
クレア「な、コータス?」
何かの用事かと思って、特に警戒せずクレアは許可のボタンを押した。
そして聞こえてきたのはー
スラリア「クレア!今すぐデ・ロワーに来て!」
と言うスラリアの怒声だった。
クレア「お、おい!ボリューム落とせ!マイク壊れるぞ」
スラリア「いいから、早く来て!ほんっとに怒ってるから!」
クレア「はいはい、行きますよ」
スラリア「よくもまあそんな態度とれるね、早くー」
クレアはそこで通話を切ってしまった。
クレア「俺アイツに何かしたか?まあいっか。夕食食ってから行くわ」
一方その頃ー
スラリア「切られた!」
コータス「アイツ何でスラリアが起こってんのか自覚してねぇんだな」
スラリア「酷いよね!スターちゃんばっか疑って!妹よりも
信頼あるお店を選んだって言ってもいいよ」
コータス「とにかく何か食べねぇとな。ったく、あんなやつが
兄だとかふざけてるな」
スラリア「これはすぐに来そうにないね。あたしが直接行ってくる!
流石に許せないもん!」
コータス「おう、まあアイツがお前を傷つけることはねえだろうし
任せる。俺じゃあどうしようもねえしな」
スラリア「分かってる、じゃあ行ってくるね!」
クレアの家ー
ピンポーン!
クレア「ん~?」
何気ない顔をしたクレアが普通に扉を開けた。
スラリア「クレア!さっきの電話の件、分かってるでしょ⁈」
クレア「あのなぁ、俺がスラリアに何かしたか?」
スラリア「あたしじゃなくてスターちゃんに!分かんないの⁈」
クレア「な、俺がスターとケンカしてること何でお前が知ってんだ⁉︎」
スラリア「スターちゃんが急にあたし達の所に来たからだよ!
それで話聞いたら・・・クレアさ、スターちゃんのたった1人の
家族なんだよ⁉︎分かってるの⁉︎」
クレア「・・・うっせえな、分かってるよそんぐらい。お前に
いちいち指摘されなくてもな。余計なお世話だ、俺とアイツの
ケンカなんていつものことー」
スラリア「クレア。自分が何言ってるか分かってる?はっきり言うと、
今のクレア、すっごい最低だよ」
クレア「なっ・・・」
スラリア「自覚がないならいつか分かると思うけど。スターちゃんは
あたしが預かっとくから。今のクレアには会わせたくないし、
あたしも会いたくない。それじゃ」
冷たい顔でスラリアはクレアに別れを告げ、まっすぐ帰っていった。
クレア「・・・俺が・・・最低・・・?なわけない、アイツらがおかしいだけで
俺はいたって普通・・・だよな。まあ明日はじっちゃんのとこ行くし、
アイツらと会わなくて済むって考えりゃいいか!」
その様子を木陰からー
アイン「はい、計画は円滑に進行中。スラリアにはバレそうですが
問題はないでしょうか・・・はい、了解。引き続き、任務を続行します」
アインが誰かと通話しながら見ていた。
翌日ー
フラット「おはよーう!」
スラリア「おはよう、フラット。今日はアイン達が初めてオフィスに
入るから、あたしが案内しとくね」
フラット「あれ・・・クレアの所に行くんじゃないんだ」
スラリア「うん、今は新入隊員に尽力しようってね!」
ノール「ふぅん・・・まあいい心掛けだとは思う」
ペーター「じゃあ2人を入れるよ。入っておいで」
アイン「は、はい!失礼します!」
コンコン・・・
少し手が震えているようなか細いノックの音を立ててアインは
オフィスに入室した。
アイン「おはようございます!」
ペーター「よし、じゃあ次はパルカ!」
パルカ「ハァ~イ!」
ガンガンガン!
もはやノックではなくて扉を殴る音が響いた。
フラット「ちょ、壊れる!」
フォール「おいおい、大丈夫か?」
パルカ「おはよーございます!」
ペーター「ま、まあ・・・?」
スピカ「ワオン!」
ペーター「何でスピカまでいるのかな?」
パルカ「連れてきタ!」
ペーター「うん、戻してきなさい」
パルカ「えぇ~?」
アイン「だから言っただろ、連れてくんなって」
パルカ「はぁーい・・・」
フラット「じゃあ僕が中庭戻しておくね、おいで!」
パルカ「ワン!」
廊下ー
スピカ「ガウガウ!」
フラット「うわっ、どうした?」
いきなり窓に向かって吠え出したスピカにフラットは驚いた。
スピカ「ガルルル・・・」
フラット「この方角にあるのって・・・クレアが行ってる病院とか
よく行ってるバイキングぐらい・・・何かあるの?」
スピカ「グゥゥ・・・ワウ?」
急に、あれ?と言ってるような声をスピカは出した。
フラット「?鳥でもいたのかな」
スピカは鳥を見つけて遊んでいた。フラットはそう考えてスピカを
中庭まで連れていった。
一方その頃、病院ー
クレア「じっちゃん、まだ芽だけどよ、ユリだ!」
ブリーシュ「お、まさかこれから育てくのか。あの時と同じだな」
クレア「だろ?俺が育てたんだぞ」
ブリーシュ「そうか、どんな花が咲くんだろうな」
クレア「まっすぐ綺麗な花だといいな」
ブリーシュ「だな。それよりあの子はどうした?」
クレア「・・・別れた」
ブリーシュ「はぁ⁉︎何でまた⁈」
クレア「知らねぇよ、あっちからだしな」
ブリーシュ「何かしたわけじゃないよな?」
クレア「さあな。じっちゃんと血は繋がってない俺の妹が何か
言ったらしいが、俺は何も悪いことはしてない」
ブリーシュ「妹・・・アイツ結婚してたのか」
クレア「お袋はどうしてるか知らんけどな」
ブリーシュ「・・・会いたいか?」
クレア「いいや。俺は迷惑しかかけてねえし」
ブリーシュ「そんなことない、迷惑だったのは俺だ、お前じゃない」
クレア「・・・それよりさ、飯持ってきたんだ、食わねぇか?」
ブリーシュ「えっ、いいのか?」
クレア「当たり前だろ、一緒に食うから持ってきたんだぞ」
ブリーシュ「なら食べようか。ありがとな」
クレア「あ、その足じゃ届かねぇか、よっと」
机の上に置いたおにぎりを、クレアはブリーシュに手渡した。
その手がブリーシュの手に当たった。
ブリーシュ「・・・案外お前の手、冷たいんだな」
クレア「別にいいだろ!ったく、何気色悪いこと言ってんだ、
食う気失せるだろ」
ブリーシュ「ハッハ、悪かったな」
クレア「・・・俺さ、じっちゃんのことは大好きだ」
ブリーシュ「そうか?」
クレア「だからと言って恨んでることには変わらねぇ。でもよ、
こうやって一緒にいられる時間は幸せだと感じてる。俺って
優柔不断だな」
ブリーシュ「そうかもな。それよりいいのか?もう昼だぞ」
クレア「あぁ、気にすんな、そろそろ出るからよ」
ブリーシュ「そうか。それより説教は明日だな」
クレア「そう言って忘れてたんだろ?じっちゃんらしいや」
ブリーシュ「おっと、バレれたか」
クレア「お見通しだっての」
ブリーシュ「アッハハ、流石はクレア」
クレア「そうだな・・・?」
ブリーシュ「あっと、すまん。つい名前言っちまったな」
クレア「・・・気にすんなよ、俺はもうそこまで気にしてねぇよ」
ブリーシュ「優しくなったな」
クレア「・・・優しく・・・か」
その言葉を聞いた途端に、クレアは自信をなくしていった。
クレア「すまん、今日は仕事が多いから行くわ。ありがとな」
ブリーシュ「あぁ。また明日な」
クレア「うん」
少し苦笑いでクレアはブリーシュと別れた。
午後1時ー
クレア「今参りました~」
ペーター「?珍しいね、君が丁寧語で入ってくるなんて」
クレア「いや・・・その・・・」
明らかに悩んでいる素振りをクレアは見せていた。
フラット「何かあったの?」
クレア「フラット・・・なぁ、ちょっと話があるんだ。来てくれねぇか?」
フラット「う、うん?」
クレア「すまん」
そう言うと、クレアは廊下へ出て行き、フラットもそれについていった。
屋上ー
クレア「フラット。俺さ、強くなりたい。そう言ったよな?」
フラット「・・・初めて会った時?ううん、言われてはないよ。
でもそんな気はしてた。大切な人を守りたいから強くなりたい、
そんな風に願ってるとは思ったよ」
クレア「そうか・・・俺さ、今はただ優しくなりてぇ、素直になりてぇって
思ってるんだ。なのに・・・上手くできなくてな。この前だって
じっちゃんのためにも優しくなって接したい!そう思って病院に
毎日行こうって決めて・・・でも仕事を後回しにして・・・分かんねぇんだ、
俺はどうしたら完璧になれる?優しくて素直で・・・お前みたいになれる⁈
教えてくれ、フラット!」
フラット「いや、そんなこと聞かれても・・・僕だって完璧じゃないよ、
クレアみたいに強いことは言えないし、あんな上下関係を気にせず
会話もできないし」
クレア「そんなことどうでもいい!俺は・・・」
フラット「唯一言えるなら・・・クレアはクレアだよ。他の誰でもない、
誰みたいとかじゃなくて、正真正銘のクレア。不器用で素直に
なりたいって思ってるクレアだよ」
クレア「んなこと聞いてー」
フラット「ねぇ、クレア。何か隠してない?今日のスラリアといい、
スターの欠席、この2人と根強く関係してんのはクレアだから
聞きたいんだけど」
クレア「・・・もういい!お前を頼った俺がバカだった!」
怒りと焦りを混ぜたような声色でクレアはそう言った。
フラット「ちょ、どこ行くの⁈」
クレア「うっせぇな!どこでもいいだろ!」
フラット「・・・そんなんで優しくなれるわけないよ・・・」
クレア「お前に何が分かるんだよ⁉︎俺はな、ずっと・・・ずっと
家族もいないで1人で彷徨って・・・雨に濡れて、風邪ひいて、
死にかけたこともあった!でもよ、孤独を目指したお前には
俺の苦しさなんか知らねぇだろ!」
フラット「・・・クレア・・・
クレア「もういいさ!やめてやるよ、ファイターなんかな!」
フラット「へ⁉︎」
クレア「神業・風変化!」
フラット「ちょっと待っー」
クレアは既に風となって消えてしまった。
フラット「・・・?」
オフィスー
ペーター「よし、書類の整理はこれで終わり・・・?」
背伸びしようとしたペーターの目の前にはクレアがいた。
ペーター「?さっきフラット君とー」
クレア「これ」
ペーターの言葉を遮って、クレアはとある紙をペーターに手渡した。
その紙にはクレアの名前と、『退職届』と書かれていた。
ペーター「えっ⁉︎」
クレア「それじゃ」
ペーター「ちょっー」
ペーターの制止を聞くことなく、クレアは扉を閉めた。ただオフィスには
扉の閉じた音だけが響き渡った。
廊下ー
スラリア「うん、案内はこんなとこかな。じゃあー」
クレア「どけ」
スラリア「キャッ⁉︎」
流れ作業のようにクレアはスラリアを力強く押した。
アイン「スラリア⁉︎大丈夫か?」
スラリア「う、うん・・・」
パルカ「待テ!謝ってないゾ!」
クレア「?俺もうここの関係者じゃないんで。じゃあまあそういうことで」
スラリア「ちょっと!あたしは間違ったことなんて言ってないからね!
クレア、分かってる?今のクレアは最低以下だよ!それが本当の
クレアなら・・・あたしは⁈どうしてあたしと一緒にいたの⁈」
クレア「・・・さあな。言うなれば・・・暇つぶし?」
スラリア「なっ・・・」
クレア「・・・じゃあな」
スラリア「・・・アイン、パルカ、行こ」
明らかに震えた声でスラリアは2人にそう促した。
1時間後ー
フラット「そっか、本当に・・・やめたんだ」
ペーター「あぁ・・・」
スラリア「・・・」
アイン「スラリア、気にすることない」
パルカ「そうダゾ!」
フラット「ねぇ、さっきの話は本当?クレアがスラリアと付き合ってるの
暇つぶしって言ったってこと」
ペーター「そんなはずないだろ?」
スラリア「あたしだって・・・信じたくない・・・」
ノール「ただいま・・・?なんだ、やけに暗いな」
フォール「外回り終わったぞ」
ペーター「あ、あぁ・・・」
ノール「それで・・・クレアのやつは?」
フラット「やめたよ」
フォール「ハァ⁉︎やめた⁈」
エド「何の騒ぎっすか?レストルームまで声が響いてるっすよ?」
フォール「おいおい、何かの冗談だろ?クレアがやめたらまずいぞ⁉︎」
エド「えぇ、クレアやめたんすか⁉︎」
ペーター「あぁ、あっさりとね」
フラット「・・・僕のせいかな・・・クレアの質問、上手く答えられなかった」
スラリア「違う!全部自分勝手なクレアのせいだよ!」
ノール「・・・とりあえず、今はそっとしておこう。悩みがある時に
無闇に近づくのは愚行だし」
フォール「だな。どっかの誰かはその愚行で仲間を作ったわけだが、
今回ばかりはそうもいかないか」
フラット「ちょっと、口が悪いんだから!」
フォール「おっと、手出しは厳禁だぞ、俺は口で言ったんだからな」
フラット「分かってるよ、このサボり魔め」
フォール「お前、煽りとかは下手だよな」
ペーター「君達さ、この緊急事態でよくそんな風に平然でいられるよね、
いつも驚かされるよ」
フラット「だってね?」
ノール「信じてるしな」
ペーター「やっぱりか」
病院ー
クレア「よっ!」
ブリーシュ「クレア⁉︎仕事は⁈」
クレア「よっと、やめてきた!」
ブリーシュ「は⁉︎へ、冗談だろ?」
クレア「マジで。うっせぇんだもん、アイツら。俺がどうしようと
俺の勝手だろ?」
ブリーシュ「クレア。今日は説教だ」
クレア「はぁ?じっちゃんまでアイツらの味方かよ」
ブリーシュ「いいからこっちへ来い!」
クレア「へいへい、分かったよ。俺はもうここにも来ねぇよ。
俺を分かってくれるやつなんて、どこにもいねぇんだな」
ブリーシュ「お、おい!」
寂しそうな顔を見せて、クレアは病室を出ていった。
夜ー
フラット「ねぇ、行ってみない?」
スラリア「クレアのお父さんの所?」
フラット「うん。会いに行ったと思うんだよね」
ノール「でも大勢で行くのは失礼だろ。時間的にも2人で行こう」
スラリア「じゃああたしとスターちゃんで行くよ!1番クレアと
関係があるから!」
フラット「分かった。でもスターはいいの?」
スラリア「まあ、事情を話せばいいでしょ」
フラット「そういうとこは計画性がないよね。その代わり迷惑は
かけないでよ。病室が個室だから問題ないけど」
スラリア「じゃあスターちゃん連れて病院行ってくるね」
フラット「うん、任せるよ」
スラリア「はーい!」
元気そうな笑顔でスラリアは駆けてオフィスから出ていった。
エド「・・・普通やめるっすかね?悩みがあっても、ファイターを
やめる理由にはならないと思うっすけど・・・」
フラット「だよね・・・クレアが変になったのはお父さんと会ってから・・・
何かあったとしか思えないんだけど」
フォール「まあアイツらが確かめに行ったし・・・?」
安心しようとしていたフォールがあることに気づいた。
フォール「なぁ、アイン達はどこだ?」
フラット「あれ・・・そういえばいないね」
フォール「・・・アイツら、まさかな」
エド「何かあるんすか?」
フォール「いや、気のせいかもしんねぇし、今は気にすんな。
それよりまずはクレアだろ?」
フラット「そうだね、今はあの2人に委ねるしかないけど」
病院ー
スラリア「失礼します」
スター「・・・」
ブリーシュ「あ、ちょうど良かった。クレアどこ行ったか知らないか?
あのバカに説教してぇんだが飛び出して行きやがってな」
スラリア「あの・・・あたしも知らないんです。本当に何考えてるのか
あたしにはさっぱり分からないです」
スター「・・・ねぇ、この人・・・」
スラリア「?どうかした?」
スター「・・・この人違う、兄ちゃんのパパじゃない!」
スラリア「えぇ⁉︎何言ってんのスターちゃん⁉︎」
スター「分かるもん!だって・・・お姉ちゃんから聞いてるパパと
全然違うから!」
スラリア「えっ・・・でも・・・クレアはたしかに・・・」
ブリーシュ「お姉ちゃんと言うと・・・あぁ、誰かは分かった。
ユーリックだろ?」
スター「な、何で知ってるの?」
ブリーシュ「俺も一応親だ。それぐらいは知っている。あとユーリックが
アイツの腹ん中で死んでから整形したし、顔も変わってるさ」
スラリア「ほら、だからクレアはすぐに認めたんだよ」
ブリーシュ「それより、ユーリックの妹ってことは君がクレアの
言ってた妹か。クレアがすまんな」
スター「えっ・・・」
優しくブリーシュはスターの頭を撫でた。その温もりから伝わった
優しさはスターの神力に響き、紛れもない真実を知った。
スター「兄ちゃん・・・スラリアお姉ちゃん、探しに行こう!
もういいよ、だって・・・兄ちゃんは多分・・・思い出しちゃったんだよ、
昔のこと・・・色々と」
スラリア「昔のこと・・・?」
ブリーシュ「・・・話す時が来たようだね。アイツがどんな風に
1人で彷徨ってたか」
そう言うとブリーシュは鞄の中から一冊のアルバムと日記帳を
取り出した。それは何故か濡れた痕がついていた。
ブリーシュ「・・・アイツのだ、この日記は。放浪記って書いてあるだろ?」
日記の表紙には擦れてこそいるが、たしかに放浪記と書いてあった。
スラリア「そこに・・・クレアの昔があるんですか?」
ブリーシュ「あぁ・・・アイツの彼女なら知っておいた方がいいかもと
勝手に思っていたが・・・いいかな?」
スラリア「もちろんです!あたしは・・・死神です。隠し事とか
人生のうちになくしとくべきものをなくす者でもあるんですから!」
ブリーシュ「・・・よし。じゃあまず1ページ目から」
ブリーシュは丁寧に放浪記を開いた。
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