第19話 見えざる闇都市
地球連合臨時会議―
防衛管理長「大統領、陛下にお伝えください。日照家の者を
捕らえました。準備に時間がかかるため、監視をお願いいたします」
大統領「ふむ、ご苦労だった。作戦実行日はまた後日の会議で
お伝えするため、このことは一旦置いておきましょう。
それでは次の議題に―」
1節 迫りくる
ニュース「臨時ニュースです。地球連合日本はエリア東京を
完全に封鎖することを決定しました。既に住民の避難は完了しているため、
迅速に判断ができたという代表の発言も確認されました」
フラット「やっぱり、封鎖か」
エド「まるで前の袋井っすね…脅威だらけで封鎖された時と
同じ状況っす」
フラット「ううん、それより酷い。元凶だった浜松よりも
ずっと酷いと思う」
ペーター「どういうことだい?」
フラット「東京の中でも重要なポイントを狙われたということです。
脅威は脳なんてないから考えもせず、ただ本能に任せて人を
喰らおうとする。それと比べて魔獣は脳もあるし、主人には
絶対服従。そして主人は…」
クレア「フォールってわけか」
スター「でもさ、この騒動で魔族の動きが消えちゃったけど
どうなったの?」
フラット「僕も…それが気になってるんだけど…」
「魔族ならほとんど壊滅状態だ」
ペーター「⁉︎誰だ、ここは関係者以外―⁉︎」
アザゼル「久しぶりだな…くっ!」
スター「えっ…大丈夫⁉︎ひどい怪我…」
アザゼル「フッ…いいのか?敵の心配なんかしてよ?」
フラット「敵だったらこんな真正面で会いに来るわけないし、
さっきの発言も気になったからね。スター、治療お願い」
スター「分かった!」
クレア「…まっ、大人しく降伏するって言うなら俺も何か手伝うぞ?」
アザゼル「あぁ…降伏しか手はねぇ…!闇世界はもう…奴らの手のうち…!
血鬼7人衆もサタンと俺だけが残った…これも、あのランケールとか
名乗ってたやつの作戦に乗ったせいでだ!」
スラリア「ランケール…⁉︎」
フラット「やっぱりランケールか…フォールと繋がりを持ったのが
いつかまでは分からないけど敵になるとは分かってた。アザゼル、
本当に残ってるのはお前とサタンだけなの⁈」
アザゼル「一応ベリアルとベルゼブブも生きてはいるが…
魔力はないぜ?」
フラット「それでもいい!頭脳派、つまり戦略家がいないと
ランケールには敵わないから!」
アザゼル「分かった、招集命令かけとく」
スター「あっ、まだ動いちゃダメだよ!」
アザゼル「…なぁ、お前すぐにこの傷を見て治そうとしたな。
何故だ?俺達は敵同士だぜ?」
スター「怪我してたらそんなの関係ないよ。スターは皆のお医者さんだから」
フラット「お医者さんって…でも、白衣姿のスター…」
妄想―
スター「ちょっとチクッとするね〜」
フラット「か、可愛い…」
ノール「フラット、顔赤いけど、風邪?」
フラット「い、いや―」
フォルディン「どうやら…っと。スターの白衣姿を―」
フラット「わーっ!」
慌ててフラットはフォルディンの口を塞いだ。
ノール「?それより、アザゼルと協力すると言うなら私は
個人的に行動させてもらう」
アザゼル「…だろうな。まぁ、協力出来ないなら出来ないで―」
フラット「するよ。ていうか、してもらう。理由は分かるよね?」
アザゼル「理由…?」
フラット「当たり前でしょ!東京も壊してるし、警察関係者も
何人も殺したお前にはうってつけの仕事だと思ったけど?」
アザゼル「あぁ…それより、あの魔獣、俺のせいだな。アイツらの核と
なっている魂は俺が手にかけてた連中のほとんどだと分かったからな」
フラット「待って!アザゼルが普通に生きてたのって…もしかして、
第5次神魔戦争の時⁉︎」
アザゼル「あぁ…?お前…クラリオ⁉︎」
フラット「…久しぶり!その呼び方でやっと思い出した!
アザゼル、人間称でタケル!ウッソ〜!顔、全然違うのに!」
アザゼル「あ、あのな…顔は闇世界の魔術で変装してるだけで…
解除すれば、こんな感じだ」
瞳の色、髪型、肌色までも変わった。
フラット「やっぱりタケル!」
タケル「…で、そうなるとノールは?」
ノール「えっ…父さん…?」
タケル「はぁ?」
キルユウ「ちょっとペーター、ケーベス達が呼んで…⁉︎お父さん⁈」
フラット「2人して父さんって…そんなに似てるの?」
キルユウ「あ、あぁ…本当にそっくりだ」
ノール「…しょうがない、協力する!私も…うん」
フラット「じゃ、問題なしってことで」
ペーター「キルユウ、それよりケーベス達が呼んでたのかい?」
キルユウ「あ、そう、忘れてました。俺の用件はそれだけ、
じゃあ、俺はこれで」
ペーター「俺も席を外すね。フラット君、会議は任せたよ」
そう言って、2人は会議室をあとにした。
フラット「とりあえず、スターの治療が終わるまで待とっか」
スラリア「あたし、屋上に行ってるね。会議が再開する時に呼びに来て」
フラット「スラリア…」
クレア「俺も中庭行ってくるわ。こんな狭い部屋で座りっぱなしは、
流石に腰が痛むしな」
フラット「それもそうだね。再開できるようになったらまた呼ぶもんで
招集がかけられるまでは休憩時間にしよう」
休憩時間―
フラット「ふわぁ〜…暇」
タケル「おいフラット、良かったのか、お前のことバラしちまって」
フラット「全然、僕も覚えてないことだし」
タケル「ったくよ」
スター「だから動かないでってば!」
フォルディン「お主も裏切りとはのう…」
タケル「悪かったっての!俺だってまさかフラットだとは…」
フラット「まぁ、それはお互い様ってことで」
タケル「そりゃどうも。で、シャンのやつは?」
フラット「多分そろそろ来ると思うけど…何?姉ちゃんの彼氏だから
やっぱり心配?」
タケル「ち、ちげぇよ!ただ…その…」
スター「へぇ、あの人と付き合ってるんだ!」
タケル「ガ、ガキには関係ねぇだろ!」
スター「なっ、スターはただの子供じゃないよ!」
タケル「ヤベっ、そ、そうだよな〜、スターは立派な女性だ!」
フラット「…ま、いっか」
フォルディン「それにしても、若造のお前があんな妄想するとは…
やはり男なんじゃのう…」
フラット「い、いやあれは…その…」
フォルディン「ほーう?」
フラット「絶対誰にも言うなよ!もう…」
フォルディン「…随分可愛らしくなったもんじゃ」
タケル「それで、俺をどうする気だ?まさか仲間とかに加える気じゃ
ねぇだろうな?」
フラット「?ダメなの…?」
タケル「ハッハハ!予想通りで安心したぜ!やっぱ、お前は
いつまで経っても変わんねぇな」
フラット「…そっか。1人じゃない…か」
タケル「あぁ?お前らしくない顔してんな。ポジティブシンキングは
どうしたんだよ?お前の取り柄だろ?」
フラット「流石にあれこれポジティブシンキングはできない時だってあるよ」
タケル「ふぅん…」
スター「うん、終わり!どう?」
タケル「お…スゲ、治ってる!」
フラット「じゃあ、集合するように連絡するね」
数分後―
ベングル「すまん!」
フラット「…今何時だと思ってるの?」
ベングル「…午前10時」
フラット「会議開始時間は?」
ベングル「…午前8時」
フラット「罰として反省書一枚!」
ベングル「はい!」
ノール「お久、フラット。2時間ぶりだけど」
スラリア「結構お買い物できちゃった!いい気分転換だったよ!」
クレア「なぁ、フラット。中庭にこんな鳥がいたんだが…」
フラット「あ…その鳥籠…懐かし!」
ノール「この柄…メジロか」
スラリア「でも、鳥籠の中ってことは誰かに飼われてる鳥じゃないの?」
フラット「これってどこにあったの?」
クレア「中庭の木に掛けてあっただけだぞ?」
ベングル「おい、鳥籠の底に敷いてあるの、紙じゃねぇか?」
ノール「ん…本当だ」
フラット「でもこの子が乗ってるし…スター、ちょっと持っててくれる?」
スター「えっ、逃げないかな?」
フラット「スターなら大丈夫!優しい子なら鳥も安心するよ」
スター「う、うん…」
鳥の前に、スターは両手を差し出した。鳥は首を傾け、そしてピョンと
スターの手のひらに乗った。
スター「あれ…この子、羽、怪我してる」
スラリア「…ちょっと待って!うっすらだけど…余命が…」
クレア「死ぬかもしれないってことか⁉︎」
スラリア「うっすらすぎるから…死ぬ可能性は低いってことだけど…」
タケル「ちょっと見せてみろ」
スター「えっ?分かった」
鳥をタケルの前にスターは見せた。
タケル「…この怪我だと筋肉に影響が出るな」
クレア「つまり…どうなる?」
タケル「左翼を羽ばたかせられなくなって、飛べなくなる。
鳥にとって飛べないってことは生きることさえ難しくなるってことだ」
フラット「だからうっすらと余命が見えたってことか」
ノール「コイツを生かすためには私達が飼うしかないってことか」
クレア「でもよ、中庭にはスピカがいるだろ?」
スター「飼う!スターが飼う!」
フラット「スター…いいの?大変だけど…」
スター「だって…可愛いんだもん!」
ベングル「理由になっちゃいねぇが…目は本気だな」
エド「すんません、遅れたっす!」
フラット「…エド?プライベートと仕事は別だからね?ちゃ〜んと罰も
受けてもらうから、か・く・ご、しといてね?」
エド「うぅ…」
フラット「…もう、ベングルも反省書はいいよ。2人とも
早く席着いて」
エド「罰なしっすか⁉︎やったァァァァ!」
フラット「エドだけ反省書3枚ね」
エド「さ、3枚⁉︎それって何文字っすか⁉︎」
フラット「1枚で400文字だから…1200文字だね。もちろん、
ワープロじゃなくて手書きでお願い」
エド「て、手書きっすか⁉︎」
フラット「じゃ、会議始めるから、スター。ちょっとその子を…
う〜ん…その黒尾の横に置いてくれる?」
クレア「おい、まだ紙のこと」
フラット「あ、そうだった!」
ノール「え〜っと…私はこの子の世話をできなくなりそうです。
病気で死ぬからです。身寄りも頼るあてもないのでどうか…」
フラット「そういうこと…」
スラリア「身寄りも頼るあてもないってことは、孤独のまま…」
クレア「コイツのこと、ちゃんと考えてから…優しい飼い主だな」
フラット「うん…」
タケル「つまり、その飼い主の情をスターが受け継ぐってわけか」
スター「でも、出来る出来ないじゃなくてやるんでしょ⁉︎」
フラット「そう!じゃ、これで決定だね」
ノール「でもその文字…どこかで…」
フラット「ノール、席着いて」
ノール「あ、あぁ…」
会議終了―
フラット「結局、まだ情報が少なすぎて結論は出ず…」
エド「フラット、肩こってないっすか?」
フラット「…
エド「チェ、ケチっすね」
フラット「フフッ、ハハハ!やっぱ可愛い!」
エド「だ〜か〜ら!茶化すなっす!」
クレア「本当に仲良いよな、お前ら」
ベングル「で、俺には罰なしだろ?」
フラット「今日だけはね。これからは厳しくいくから、覚悟しといてね?」
ベングル「うぐっ…お前、怒り方がペーターに似てきたな」
フラット「そんなことないよ。ペーターさんよりも厳しい自信あるけど」
エド「まだフラット、ペーターさんの本気を知らないんすね」
ベングル「そうだな。アイツを本気にしたら…まぁ、鬼だよな」
フラット「お、鬼⁉︎」
と、フラットが出て行こうと扉を開けながら言ったら―
ノール「だ…誰が鬼だって⁈」
フラット「あ…アハハ〜…」
ノール「ちょ〜っとフラット、話があるんだ。中庭で話そうか?」
フラット「話し合い…だよね?果たし合いの間違いじゃないよね?」
ノール「それは…半分保証する」
フラット「話し合いという名の果たし合いってことだよね⁉︎え〜っと…
あ!あそこに空飛ぶ円盤が!」
ノール「えっ⁉︎」
フラット(よし!)
急いで窓に向かってフラットは駆け出した。
ノール「そんな冗談に…乗るわけないだろ!はっ!」
駆けていくフラットにナイフを投げ、それは見事に袖に命中し、
フラットを転ばした。
ノール「さぁ〜て…」
ペーター「?何の騒ぎだい?」
フラット「あ、えっと、ベングルがペーターを鬼って言って、
それに驚いてノールが怒っちゃって…」
ペーター「はぁ⁉︎おいベングル、誰が鬼だって?」
ベングル「あ、それはだな〜…う〜んとだな…さらばだー!」
ペーター「あ、おい待て!」
フラット「…ふぅ」
ノール「何だ、ペーターのことか」
フラット「いや、言おうと思ったけどノールが鬼みたいに怒ったから
言えなくてさ―あ!」
ノール「鬼…みたいに?」
フラット「ん〜…これは…逃げる!」
ノール「なっ、逃すかー!」
中庭―
メダイ「へぇ〜、鳥を飼うんだ」
スター「うん!今、専用スペース作ってるんだ!」
ケーベス「なぁ、スター。こんな感じか?」
スター「入ってみていい?」
ケーベス「あぁ、もちろん!」
小さな家屋にスターは入る。
スター「わぁ〜!すごい、広めの鳥籠みたい!」
コータス「コイツを飛ばせるように広めに作ったんだ。少し険しい道だが
飛べるようになるにはいい空間だと思うぞ」
スター「ありがとう!」
コータス「れ、礼ならケーベスに言えっての。俺はただ組み立てただけだぞ」
ケーベス「何言ってんだ、設計図をさらに練ったのはコータスだろうが」
メダイ「それにこんな可愛く作ったのもコータスだし…」
コータス「ちょ、ちょっとは空気読めっての!」
スター「コータス…」
コータス「お、俺はあくまでその鳥のためにだな!」
スター「フフッ、ありがとう」
メダイ「いい感じじゃない?」
ケーベス「だな」
フラット「うわわっ、ちょっと失礼!」
スター「キャァっ!」
突然フラットが小屋の中に入ってきた。
フラット「今ノールに追われててさ」
ケーベス「ったく…地下室付きだからそっち行ってろ」
フラット「あ、ありがと!」
メダイ「もう、いいとこだったのに」
ノール「ちょっと!フラットはいる⁉︎」
ケーベス「フラット?来てな―!」
まだ地下行きの階段につながっている床が開いたままだった。
ノール「その階段は?」
ケーベス「いや、作ってる最中でな。なんなら見てくか?」
ノール「…作ってる最中なら危なそうだし遠慮しとく」
ケーベス「そうか?まぁ、フラットを追ってるならここにはいないぞ」
ノール「?何で私が追ってるって知ってるの?
探してるだけかもしれないのに」
ケーベス「ヤベっ!俺、今から地下で作業しなきゃなんねぇから
行ってるな。ま、フラットを追ってるって思ったのはお前の口調だ。
あんな怒りのこもった声だったらそう思うだろ?」
ノール「…もし隠してたら共犯ってことでかすり傷じゃ済まさないぞ」
ケーベス「います、地下室に」
ノール「そう、それでいい」
フラット(えぇ⁉︎)
ノール「じゃあ…ちょっと」
スター「待って!ここで暴れないで!この子のために作ったお家なの!
だから…ここで喧嘩しないで!」
コータス「そうだな。ここを壊されたら俺達もお前をただで返すわけには
いかなくなるな」
ノール「わ、分かったよ…じゃあ、フラットを呼んできて」
メダイ「えっ…フラット!」
慌ててメダイは地下に向かった。
メダイ「フラット!」
フラット「えっ、メダイ!」
メダイ「こっち!外に繋がる道があるから!」
フラット「えっ、いいの⁈」
メダイ「私もたまにはデンジャラスな追いかけっこしたいからね!」
フラット「もう…じゃ、行こっか!」
メダイ「うん!」
2人は抜け道から外に出ていった。
ノール「フラット…っていない⁉︎」
コータス「メダイまで…ってことは抜け道を使ったか。まだ開いてないのに」
ケーベス「ま、メダイのことだ。開通させんのも簡単だろうな」
地下通路―
メダイ「あ、そうだった!まだ開通してない!」
フラット「えぇ⁉︎」
メダイ「ちょっと下がってて!ふぅ…神業・息吹!」
メダイの腕だけが竜の腕に変わり、紫色に透き通ったレーザーが
一直線に道を作った。
フラット「すごぉい…行こっ!」
メダイ「あ、先に行かないでよ!」
数分後―
ノール「あれ…いない」
コータス「ん?こんな荒々しい道なんか作ったか?」
ケーベス「それに照明なしってことは…アイツが作った道か」
コータス「行ってみようか」
ケーベス「コータスは戻ってろ。スター1人じゃ寂しいだろ」
コータス「またおちょくって…ま、分かったよ」
ノール「…風の音?」
ケーベス「本当だ…繋がってんのか?」
2人はコータスを小屋に戻して先に進んでいった。
小屋―
スター「さっ、怪我は治ったよ。早速飛ぶ練習を―」
鳥「ピピピッ!」
飛べないはずの鳥が地下に入っていった。
スター「えっ⁉︎飛べるの⁈」
慌ててスターも地下室に入った。
スター「あっ!」
しかし、やはり飛べない鳥。地面に倒れていた。
スター「無理だよ、そういう怪我だったんだから…?」
鳥「ピィ…!」
それでも鳥は抜け道を飛ぼうとする。
スター「この向こうに…飛んで行きたいの?」
鳥「ピピ!」
スター「じゃあ、スターと一緒に行こ!スターも追いかけるから、ほら!」
鳥「ピ!」
スター「うん、行くよ!」
抜け道―
コータス「ったく、こんな長い抜け道、強盗しか使わねぇっての」
鳥「ピィ!」
コータス「なっ、さっきの鳥⁉︎」
スター「待って、ってコータス⁉︎」
コータス「ちょ、止まれぇ!」
2人は思い切りぶつかった。
抜け道の奥―
フラット「ここって…谷?」
メダイ「…見てよ!この奥!スッゴイ綺麗だよ!」
フラット「…すごい…これ、全部クリスタル⁉︎」
谷の奥深くはクリスタルが日光に反射して綺麗な碧い光を放っていた。
メダイ「折角だし探検しない?絶対気分転換になるって!」
フラット「…そうだね。行こっか!」
数分後―
ノール「なっ…ここ、谷だぞ⁉︎」
ケーベス「…降りたんじゃないか?ほら、あそこ」
ノール「クリスタル…?ちょっと待て、ここ、どこの谷間だ⁉︎」
一方、スター達―
コータス「なるほど、この通路にコイツが吸い込まれるように
飛んでったと。この先に何かあるのか…?おいおい、ここ谷だぞ」
スター「あっ!」
鳥は谷底に向かって急降下していった。
スター「ちょっと、危ないって!」
コータス「おい、お前まで飛び込むな!」
フラット「にしても、ここって何処なんだろ?」
メダイ「こんな所、袋井にあったの?」
フラット「袋井どころか静岡にもないよ」
メダイ「だよね、聞いたことないもん…でも、綺麗だよ!」
フラット「うん、それは同感。でも、ここ湿っぽいよね」
メダイ「元々は湖か川があって、水が枯れたんじゃないかな?」
フラット「だとしたら乾いてるよ。もしかして…干潮時にしか
現れない谷とかじゃ⁈」
メダイ「じゃあ、早く抜け出さないと!」
フラット「その前に抜け道を塞がないと!」
メダイ「そっか…って、そういえばここどこ⁉︎」
フラット「えっ?一直線に来たんだから普通に戻れば…」
メダイ「分かれ道があったでしょ⁈」
フラット「あっ…でも、ここを貫くのはちょっと気がひけるよね」
メダイ「それに、干潮してるってことは、この真上は水…だよね?」
フラット「うん、まぁ、足跡があるはずだからそれを辿れば!」
メダイ「最初の場所に辿り着ける!」
ノール「おい、フラット」
フラット「げっ!」
ノール「いいから早く―」
フラット「一旦大回り!」
メダイ「ちょ、フラット⁉︎」
ノール「おい!」
ケーベス「ったく、行かせねぇよ!」
フラット「うわっ!」
ケーベスが力強く蹴った石がフラットの頭にぶつかった。
メダイ「ナイス、ケーベス!」
ノール「それより早く!もうすぐ満潮だから!」
メダイ「えぇっ⁉︎あと何分⁉︎」
ノール「大体…あと10分!」
ケーベス「走っていくぞ!」
フラット「何だ、追っかけてきたってわけじゃないんだ」
ノール「もういい。おかげでこんな綺麗な場所に来れたし、
私も冗談半分だったし」
フラット「何だ…じゃあ帰る」
[ゴォォ…]
洞窟の奥の方から変な音が響いた。
フラット「ねぇ…今の音…!」
ノール「まずいな…満潮が始まったみたい」
ケーベス「早くいくぞ!」
入り口付近―
スター「マズっ!もう満潮が!」
鳥「ピピピ!」
コータス「…?ちょっと待ってくれ。妖札・自然翻訳」
鳥「ピィピィ!ピッピ!」
コータス「…そういうことか!コイツの飼い主、
ここのこと詳しかったらしい!で、コイツも知ってるらしくて
ここら辺に大きな岩があるらしい」
スター「岩が?」
コータス「それでここを塞げば…!」
スター「でもここ、谷だよ⁉︎塞げるわけー」
コータス「しょうがねぇな。スター、俺の姿見ても、怖がらないって
言えるなら、俺が見せてやるよ。ここがどんな場所か」
スター「えっ?」
コータス「…やるぞ。妖札・妖姿化!」
スターと同じくらいだったはずのコータスが巨大化し、肌色さえも
変わり果て、おとぎ話の鬼のような姿になっていた。
スター「えっ…こんな大きいんだ…」
コータス「乗れ」
大きな両手をスターに差し出した。
スター「う、うん……思ったより柔らかい」
コータス「…言うな。それより、見ろ」
完全に孤立した土地をスターは見下ろした。
スター「えっ…これってえ!」
コータス「あぁ、こんなに薄い穴なんだ。つまり、
差し込んだ日差しのせいで俺達はここを谷と勘違いしたってわけだ。
で、あの洞窟に繋がってるのは俺達がいるこの場所。ここさえ塞げば
満潮になってもとりあえずは問題なしってわけだ」
スター「分かった。じゃあお願い」
コータス「よし、一旦ここにいてくれ」
スターを湖の近くの草原に置いて、コータスは鳥の言っていた岩を
コータスは軽々しく持ち上げた。
スター「…カッコいい!」
ノール「こっち!」
フラット「…えっ⁉︎あれって…コータス⁉︎」
メダイ「あっちゃ〜…後でケーベスに怒られるね」
ケーベス「あぁ、後で説教だ!」
フラット「でも、水…止まったね…」
コータス「じゃ、解除っと」
スターのもとへ、コータスは帰った。
コータス「……はぁ」
スター「カッコよかった!」
コータス「…へ?」
スター「もう…言葉に言えないほど!」
コータス「そ、そうか…?ありがと」
スター「フフッ、コータスって案外センチメンタル?」
コータス「なっ、バーカ!もう帰ってる!」
ケーベス「おっと、帰したいとこだが、お前は当分ここにいろよ?」
コータス「ケ、ケーベス…こ、今回はいいだろ?俺がいなかったら
お前らただでは帰ってこられなかったんだぞ?」
フラット「で〜も!万が一ここに人がいたらどうする気だったの?」
スター「ちょっと!コータスを責めないでよ!
悪いことしたわけじゃないもん!」
メダイ「…まあ、怒る必要はないと思うよ」
ノール「…ふぅ〜ん。スターが…ね」
ケーベス「…ったく、じゃあ仕置きは氷漬けってことで」
フラット「もう、お仕置きはなしでしょ?」
ケーベス「はいはい。じゃ、戻るか…」
メダイ「…フフッ!」
(フラットとちょっとだけ2人きり…楽しかった!)
フラット「ほら、帰るよメダイ」
さりげなくフラットはメダイの手を握った。
メダイ「えっ…⁉︎」
フラット「あ、ごめん!つい…」
メダイ「う、ううん!別に…ボーッとしててごめん」
フラット「もう、やっぱり女の子らしいね」
メダイ「もう!からかわないでよ!」
もう一度メダイはフラットの手を取って、2人は帰っていった。
防衛管理長「大統領。あの件ですが…“あそこ”が賛成してくれなくて
実行ができません。無理矢理洗脳するべきかと」
大統領「いや、何も考えずに実行に移すと証拠が残る。まだ時がある、
ゆっくり考えてくれ」
防衛管理長「了解。時を待ちます」
2節 桃色の幸せ
ノール「はい、フラット。仕事は終わったよ」
フラット「僕じゃなくてペーターさんに…って言いたいけど、
何処行ってるんだか」
ダンステード「地球連合日本に呼ばれたんや」
ベングル「なんでも、地球連合の東京対策案について説明するからって
呼ばれたらしいな」
フラット「地球連合⁉︎」
ノール「おい、マズイ!」
タケル「たしかにな。地球連合は魔族の集まり。神族のペーターが
そんなやつに呼ばれたってことは…」
クレア「非常にヤバいってことだな!」
フラット「そういうこと!でも、仮拠点を放置するわけには
いけないから留守番できるのは…」
スター「じゃあスターが。この子の世話があるから」
コータス「なら俺も」
スター「えっ…」
クレア「…じゃあ俺も残らせてもらう」
スラリア「それならあたしも残る〜!」
クレア「ちょ、あんまり人前でくっつくな!」
スラリア「え〜…」
クレア「ったく、付き合ってるのかよ、俺達」
スラリア「どうだろうね〜?」
フラット「他には?」
ダンステード「わいも無理や。発明に手間がかかるしのう」
エド「俺は行けるっすよ!」
ベングル「俺も特には」
ノール「私も行くよ」
メダイ「私だってフラットが行くなら…って言いたいけど
ケーベス達の手伝いがあるからなぁ」
ヒナ「失礼しまーす…?今からどっか行くの?」
フラット「うん、ちょっとね」
タクマ「なんだ、じゃあ俺達の誘いには乗れないか」
ヒナ「駅前の喫茶店に行こうと思ってたんだけど…」
ダンステード「そこやで、ペーターが行った所」
フラット「へ⁉︎」
喫茶店―
タクマ「まさかこんな形で誘いに乗ってくるなんてな」
ヒナ「とんだ偶然だね」
フラット「それでペーターさんは…いた!」
ベングル「…?あの男…どっかで…」
ペーター「それで、私の方から四大の長である3人を説得しろと」
ランケール「はい、この報酬額といい歩合かと」
ペーター「私はお金で東京を売る気は、一向にありません。
この話はお断り―」
ランケール「…フフッ!」
ペーター(なっ、今の笑み…そうか、それが…“術”…か…)
ランケール「あ〜、寝ちゃったか。フフッ…」
フラット「…特に動きは…⁈」
ペーターとランケールの姿を捉えていたフラットの視界が
ボヤけて、ボヤけが治ると2人の姿は消えていた。
フラット「なっ⁉︎」
ヒナ「どうしたの⁈」
フラット「2人が…消えた!」
ノール「どういうこと⁈ちゃんと見てたんじゃ!」
フラット「それが一瞬、2人のいる場所がボヤけて、直った頃にはもう…」
ベングル「…まんまとはめられたってわけか」
ノール「ランケールの能力…たしかに誰も知らなかった」
フラット「完全にリサーチ不足だったね」
ヒナ「どうするの⁈」
フラット「大丈夫。ペーターさんはすぐに保護できる。
でも、すぐに保護すれば敵の狙いが不明になる。ペーターさんには
悪いけど、ちょっと監禁されてもらうつもり」
ノール「そうだよな…まあ、ペーターのことだ。サラッとこっちのことを
言うことはないだろう」
フラット「待って。スラリアなら知ってるかも!」
ノール「たしかに…知ってるかも」
タクマ「そうだな、おい、連絡してみろよ」
フラット「うん」
スラリア「えっ?ランケールの能力?ん〜と…たしか得意なのは幻術で、
よく使ってたのは心理を操ること…だったかな。よくあたしも
その術で隠してることを言わされて」
フラット「……クソ、はめられてたってわけか、最初から!」
スラリア「えっ、どうしたの⁉︎」
フラット「あ、いや何でも…ごめん、突然大声出して」
ノール「幻術に…心理を操る…か。私達と会ってもその能力を
見せなかったってことは…」
ベングル「最初からフォールと手を組んでたのか、それとも俺達と
敵対することを予測していたかのどっちかだな」
フラット「…ありがとう、スラリア。心配しないで、すぐに帰るから」
スラリア「ちょ、フラット⁉︎フラット…?」
クレア「フラットのやつ、何だったんだ?」
スラリア「分かんない…切られちゃった」
ダンステード「なんなら、わいが様子見に行こか?ちょうど新発明も
終わったとこだしな!」
スター「じゃあ、お願いできる?」
コータス「留守番任せられてるし」
ダンステード「了解や!」
フラット「場所は…山のほうか。僕は詳しくないほうだな」
エド「“は”って、どういうことっすか?」
フラット「バトラーの住んでた地域だから、僕は詳しくないんだよね」
ノール「そういうことか…」
ヒナ「とにかく!どうするの?」
フラット「場所も分かってて盗聴器で声の録音もできてる。
あとは、敵の狙いを探るだけ」
ノール「そんな簡単にいくとは思えないけど」
フラット「まあね。でも、あの盗聴器は僕にしか分からない場所に
仕掛けておいたからランケールにはバレないけどね」
ヒナ「えっ、それってフラットが仕掛けたの⁉︎」
フラット「バジーとね。ほら、前にペーターさん、異世界線の僕に
捕まったでしょ?あの後にこっそり」
ノール「私、初耳」
フラット「そりゃそうでしょ。僕とバジーの間での秘密だから」
ノール「まさか…計算してたのか⁉︎」
フラット「まあ、一応。当たるとは思ってもなかったけど」
ノール「だよな、お前らしくないからな」
フラット「ちょ…ま、今はこっちだ」
タクマ「そうだ!フラット、居場所は分かるんだよな?」
フラット「えっ、そりゃ分かってるけど…?」
タクマ「ならよ、張り込み調査ってのはどうだ?」
ヒナ「危ないよ!それに誰が行くっていうの⁈」
ベングル「俺が行こう」
エド「だ、大丈夫っすか⁉︎」
ベングル「ペーターさんには借りがあるからな。少しでも
何かできるなら、俺はやる。それだけだ!」
フラット「いや、僕に言われても…作戦発案者はタクマだから、
内容は僕じゃ…」
タクマ「まぁ、要するにスニーキングミッションってやつだ。
古風だが、こっそり本拠地に忍んだ入り、できるだけ多くの情報を
持ち出して戻ってくるってやつだ」
ベングル「それなら前にグリオとやったことあるぜ!任せろ!」
フラット「…気をつけてね。ライがまだ行方不明のままだから、
もしかしたらってこともあるから」
ベングル「ありがとよ。じゃ、行ってくるぜ」
そう言ったベングルは、席を外し、喫茶店を出ていった。
フラット「…大丈夫…だといいけど」
ノール「私も行きたいけど、紋章を得ていない私が行って
もしものことがあったら対抗手段がなくなる。それだけは
避けなきゃいけない事態だからな」
エド「なら俺も行くっすよ!」
フラット「いや、エドはちょっと」
タクマ「だな、目立つ」
ヒナ「ベングルさんも目立つかな…?」
フラット「ううん、目立った方がいいんだ。ただ、エドの場合は
ガタイがいい、とまではいかないからね」
タクマ「ちょ、待てよ!目立った方がいいって、それは隠密行動が―」
フラット「さっきも言った通り、ライが行方不明。これが何を意味するのか
僕も確認したいから。それにスラリアからメールが来て、
ダンステードさんもペーターさんの所に行ったみたい。
これなら問題ないから」
エド「問題なし…っすか?」
ヒナ「バジー教授の発明みたいに爆発しないから大丈夫だよ」
タクマ「そうじゃなくてだな!目立ちに目立つだろ!」
フラット「隠密行動はできたらの話だよ。このタイミングで
リスクを負うことこそリスキーだよ」
ノール「危険が危ないって言ってるようなものだぞ、それ」
エド「頭痛が痛いも同例っすね」
フラット「…言葉とか今はどうでもいいでしょ」
タクマ「おっと?浅大のトップ勢がそんなこと言っていいのかなぁ?」
ヒナ「だよね〜」
フラット「そういうヒナちゃんもトップ勢の1人でしょ」
ヒナ「私はトップ勢の端くれだからね〜」
フラット「まぁ…そうだけど。ていうか、何でヒナちゃんは
理系が得意なのに浅大選んだの?銀大行けば良かったのに」
ヒナ「何でって…聞く?」
ノール「私だったら聞かない」
タクマ「フラットはもうちょっと恋愛感情ってのを知ったらどうだ?」
フラット「悪かったね、恋愛したことなくて」
店員「いらっしゃいませ〜」
「あの、5、6人で来店してるお客さんいますか?」
店員「はい、いらっしゃいますよ。あの窓側の2席をご使用しております」
「ありがとうございます」
フラット「ていうか、今は恋愛なんかしてる場合じゃないでしょ?」
「フ〜ラット!」
フラット「ん…姉ちゃん⁉︎」
シャン「ちょ⁉︎」
タクマ「姉ちゃん⁉︎おいおい、お前、キエさんの弟なのか⁉︎」
フラット「あっ…う、ううん!キエさんの地声って、僕の姉ちゃんに
すごく似ててさ、ついね」
シャン「へ、へぇ〜…それより、ユーリックを捕まえたから
仮拠点の方に届けといたよ」
フラット「そ、そっか!ありがと!」
シャン「じゃあ、私も避難所の方に行ってるから」
フラット「わざわざ報告までしてくれてありがとう!
じゃあ、気をつけて帰ってね!」
シャン「うん、またね」
フラットに背を向け、シャンは小走りで店から出ていった。
ヒナ「フラット、シャンさんと仲良いよね」
タクマ「もしかして、お前…」
フラット「えっ?ないない!てか、だから今は恋愛できないってば!
告白とかされてもお断りだから!」
メダイ「えっ…」
ちょうどメダイがフラット達との席に顔を見せた時にフラットが
そのセリフを言ってしまった。
ヒナ「え〜っと…メダイさん…だっけ?」
タクマ「おぉ!あの龍神のか⁉︎カッコイイよな〜」
メダイ「…ねぇ、フラット、今言ってたの…」
フラット「?だから、告白とかお断りだって。悪いけどそういうのまだ―」
ヒナ「ちょっ、メダイさん⁉︎」
何も言わずメダイは猛ダッシュで出ていってしまった。
タクマ「あぁ〜…フラット、お前のせいだぞ」
ノール「完全に泣かせたな、あれ」
エド「流石に鈍感すぎっす」
ヒナ「…気づいてなかったの?」
フラット「ちょ、ちょっと待って!何で僕のせいになってんの⁈
知らなかったよ!」
ノール「まったく…嫌われても知らないよ」
タクマ「…でもよ、似てると思わねぇか?」
ヒナに尋ねるようにタクマはそう口ずさんだ。
ヒナ「…うん。夕焼け小焼けの時のあれでしょ?もちろん覚えてる。
フラットも私達と同じ風に付き合ったら…な〜んて」
ノール「とにかく、今はメダイを追いかけろ」
フラット「はぁ⁉︎こんな忙しい時に⁉︎」
ノール「…ちょっと来い!」
勢いに任せてノールはフラットを外に連れ出した。
エド「えっ…え〜っと…」
タクマ「ったく、しょうがねぇなぁ。アイツら追いつつ、
あの時の話でもしてやるか」
外―
タクマ「さーて、じゃ、昔話でもするか」
ヒナ「ちょっと恥ずかしいね」
エド「で…いつからお前が来たんすか?」
コータス「いや…ノールから行けって」
スター「だからこうして、スターもついてきたんだよ?」
コータス「スッゴイしつこい奴等もいたけどな」
遡ること15分前―
コータス「おぉ、そういうことか。恋愛経験のある俺にな」
ノール「できればスターも」
スター「ねぇ、何の話してるの?」
コータス「ん?俺とお前でフラット達に協力しろってな」
スター「えっ⁉︎いいの⁉︎」
コータス「…ったく、何でまた俺みたいなやつに」
クレア「ちょ、ちょっと待った!スターが行くなら俺も!」
スラリア「クレアが行くならあたしもついてく!」
コータス「おい、誰が留守番すんだ?」
クレア「あっと…それもそうだな」
スラリア「じゃ、クレアと待ってる」
コータス「ふぅ…」
エド「やっぱりあの2人っすか」
タクマ「まっ、恋の旅路ってやつを伝授しとく」
ヒナ「タクマ、調子乗りすぎ」
スター「ね?でも聞きたいなぁ」
ヒナ「えぇ〜…でもなぁ…」
タクマ「いいだろう。あれは…夕焼け小焼けの主演が俺達と決まった時―」
7年前―
ヒナマネージャー「ヒナちゃん、次のシフトなんだけど、
実はとある実写映画の主演として出てもらいたいってオファーが…」
ヒナ「えっ、主演…デスか?」
ヒナマネージャー「そう、で、実はダブル主演って話で君の彼氏役に
松尾タクマ君が出るって話だけど…」
ヒナ「ダブル…主演?」
ヒナマネージャー「あ、あぁ!要するに2人が中心のストーリーってこと!」
ヒナ「へぇ〜、面白そう!」
ヒナマネージャー「決定でいいってこと?」
ヒナ「ハイ!」
一方その頃―
タクママネージャー「―って、話だけど…」
タクマ「ヒナちゃんと⁉︎やります、やらせてもらいます!」
タクママネージャー「そ、そう。早いね。大ファンなのは知ってたけど
そこまで目を輝かせるって…迷惑かけないでよ?」
タクマ「かけねぇって!俺はあくまでファンだし、ちゃんと
タクママネージャー「頼むよ〜?」
収録初日―
ヒナ「は、初めまして。綾川ヒナ、いいます。宜しく、頼みます」
タクマ「不束者ですが、宜しくお願いします!」
監督「いやいや、売れっ子俳優に売れっ子アイドルと来たら
右に出る作品などないように頼むよ」
タクマ「もちろんです!」
ヒナ「え〜っと…お任せクダサイ」
男優1「おいおい、あのカタコト娘が主役とか正気か?」
女優1「私の方が絶対いいのに。何考えてんだろ、あの監督」
タクマ「…ヒナちゃん、後で俺の控室来れるか?」
ヒナ「へ?」
タクマ「ちょっと台本で相談あってさ」
ヒナ「相談…デスか?」
タクマ控室―
ヒナ「で、相談は?」
タクマ「…アンタ、言葉苦手だろ?」
ヒナ「えっ…そう…デスね」
タクマ「ってことで…」
収録終わり―
ヒナ「お、お邪魔します…」
ゴン「ん?今の声…」
タクマ「ちょっと客人。言っただろ?今回はダブル主演だって」
ゴン「あぁ…」
ヒナ「ちょ、ゴンさん⁉︎」
ゴン「シーっ!今はまだ秘密でお願いするよ」
ヒナ「はい、分かりました」
ゴンとの会話をすれ違いざまで終わらせ、ヒナはタクマのあとを
追いかけていった。
タクマの部屋―
ヒナ「わぁ〜…
タクマ「…バグーラ語…へぇ、やっぱアンタ、バグーラ人か!」
ヒナ「う、うん…チョットここの言葉、難しい…」
タクマ「よし、じゃあ俺がつきっきりで教えてやる!これでも、父ちゃんの
言葉教室の真似は得意だしよ!」
ヒナ「それって…どういう?」
タクマ「収録のない日は、俺のとこに来て言葉の練習!」
ヒナ「えっ…えぇ〜⁉︎」
タクマ「そうと決まれば、早速やるぞ!」
ヒナ「は、はい!」
タクマ「まずは母音の練習!“あ”は、口を丸く広げて声を出す」
ヒナ「あ〜…こんな感じデスか?」
タクマ「その前に、そのデスっていうのはなんとかならないのか?」
ヒナ「えっ?」
タクマ「なんつぅんだ…その、カタコトすぎて話しづらいんだ」
ヒナ「私、まだ言葉、慣れない…でも、歌える!理由、知りたい」
タクマ「ん〜…理由とか突き止めんのは俺じゃできねぇけどよ、
なら最初は歌うように練習するか」
ヒナ「?」
数分後―
タクマ「じゃ、このリズムでこのセリフ、言ってみろ」
譜面ノートを使い、四分音符を並べてセリフを言わせる作戦を
タクマは企てた。
ヒナ「えっと…テンポは?」
タクマ「じゃあ俺が手拍子するからそれに合わせろ」
ヒナ「…フフフ!」
タクマ「な、何がおかしい!」
ヒナ「だって…お稽古で歌のレッスン…!」
タクマ「……」
そのヒナの笑顔を見て、タクマはつい夢中になっていた。
タクマ「…っとと!いっけね、ボーッとしてる暇ねぇんだった!
ほら、いくぞ。ワン・トゥー!」
特訓はしばらく続いた。
数時間後―
ゴン「タクマ、そろそろ…」
タクマの部屋に入ってきたゴンだったが、2人の様子を見て、
すぐに部屋から出ていった。なぜなら―
数分後―
ゴン「まったく、こんな夜中まで練習するとはな。
ゆっくりおやすみ、2人とも」
机で2人が向き合って寝ていたからである。机の上のノートは
達筆な文字と丸文字で埋め尽くされ、更には何本もの空になった
スポーツ飲料のペットボトルが置かれていた。
翌日―
タクマ「おはようございまーす!」
ヒナ「本日も、宜しくお願いします!」
女優1「あれ、昨日より発音良くなってない?」
男優1「あ、あぁ…」
タクマ「監督!早速、本番いっていいですか?昨日、全然だったんで」
監督「そうだね、できるかい?」
ヒナ「はい!猛特訓したので!」
タクマ「これなら大丈夫ですよね?」
監督「まあ、ヒナちゃんのセリフには難しい言葉はないからね。
この感じなら問題なく」
タクマ「よっしゃ、やるぞ、“ヒナ”!」
ヒナ「うん、やろう!“タクマ”!」
数分後―
「シーン2!カット3!よーい、アクション!」
男優1「なぁ、お前ってさ、孤児ってマジ?」
女優1「え〜⁉︎かっわいそ!じゃあお金もないし親もないってこと⁈
そんなの、生きてるだけ悲しいだけじゃん!」
ヒナ「か、悲しくなんか…」
男優1「ホーラ見ろ!やっぱ強がってんじゃんかよ!」
ヒナ「…うっ…」
タクマ「孤児の何が悪いんだよ!」
男優1「うっわ、孤児1号が出やがった!」
女優1「何?仲間思いってやつ?」
タクマ「俺が孤児じゃなかったとしてもな、お前らと同類に
なるぐらいならこっちから願い下げだっての!」
女優1「へぇ、あたい達に逆らう気?」
男優1「ちょっと面かせよ」
ヒナ「あっ…」
2人は強引にタクマを連れ出していった。
監督「カーット!いいじゃん、いいじゃん!何々⁈何したら
そんな一気に名演技できるようになるの⁉︎」
ヒナ「え〜っと…」
タクマ「コイツ、すごい頑張ってたんだ。な?」
ヒナ「いや、頑張ってたのは―」
タクマはヒナにウインクした。
ヒナ「…私が頑張れたのは、タクマ君が応援してくれたからです」
タクマ「…まあ、それでいっか」
監督「ふーん…タクマ君、もしかして?」
タクマ「ち、違います!あの!次やりましょう!」
監督「ハハハハ!分かった分かった、次に行こう」
「シーン12、カット9!よーい…アクション!」
タクマ「あれ…ない…?」
ヒナ「何探してるの?」
タクマ「おわっ!何だ、お前か…そういや、お前の名前なんだっけ?
教室で話す機会ねぇし、名前も…な」
ヒナ「名前…?サナエ…だけど?」
タクマ「サナエか。ちなみに俺の名前は?」
ヒナ「…ごめんな…ごめんな…」
タクマ「お、おい…さっきから何に詰まってんだ?」
ヒナ「言えないの…このセリフ…」
タクマ「…じゃあ、また特訓だな。監督、このシーンは後に回して
先のやつ、やりましょ」
監督「おう、セット変更!」
夜―
タクマ「で、“ごめんなさい”が言えないってことか?」
ヒナ「うん…バグーラ人の舌じゃ、ナ行からサ行の発音に
変えるのって、すごく難しくて…」
タクマ「じゃあ、ごめんなさいの、“な”と“さ”を
ゆっくり繰り返すように発音してみればどうだ?」
ヒナ「な…さ…?」
タクマ「そう!そんな感じに。で、その間隔を縮めてけば
“なさ”って言えるだろ!」
ヒナ「な、さ!」
タクマ「よしよし、いい感じ!」
ヒナ「なっさ!」
タクマ「おいおい、顔ひきつってるって。可愛い顔台無し」
ヒナ「う〜…難しい…」
タクマ「じゃあ、声小さくてもいいから」
ヒナ「なっさ…?」
タクマ「おぉ!そう、グッドグッド!」
ヒナ「本当⁉︎」
タクマ「本当の本当!」
ヒナ「本当の本当の本当⁈」
タクマ「しつけぇよ」
ヒナ「えへへ…」
タクマ「じゃ、ゆっくりとごめんなさいだ」
ヒナ「ごめんな…さい」
タクマ「あ、あれ〜?も、もう一回!」
数時間後―
タクマ「よ〜し、流石にできるだろ?」
ヒナ「ご…ごめん…」
タクマ「…だ〜!もうやめ!疲れるだけだ、こんなの!」
ヒナ「えっ…でも、明日には―」
タクマ「何度やってもできねぇなら、もういっそのことアドリブで
ごめんね、とかでいいんじゃねぇの?」
ヒナ「ダメだよ!あのシーンは、まだサナエがコウスケと
馴染んでないから、ごめんねなんて言わないよ!」
タクマ「…だったら、そのシーンだけ代役頼んだらどうだ!」
ヒナ「えっ…代役?」
タクマ「そうだよ、俺が何とかしてやろうって頑張ってるのによ、
ここで詰まってんじゃ、もうどうしようもないっての」
ヒナ「…酷い…私だって頑張ってるのに!」
机をバンと強く叩いてヒナは立ち上がり、部屋から
勢いよく飛び出していった。
ゴン「うわっ、ヒナ⁉︎」
外―
ヒナ「…努力はしてるもん…こうやって喋れるようになったのも、
タクマのおかげで…だから、努力はしてる!」
ゴン「そうだな、前まではそんなペラペラに喋れなかったもんな」
ヒナ「ゴ、ゴンさん⁉︎」
ゴン「タクマから聞いたよ。すまんな、アイツは短気だから
ちょっと怒りっぽいっていうかな」
ヒナ「…そう…」
ゴン「まあ、俺から厳しく叱っといたから」
ヒナ「…ううん、私も悪いっていうのは分かってるんです。
だから、私、タクマにごめんなさいって言いたい…?」
ゴン「…ハッハハ!」
ヒナ「あっ…」
ゴン「まあ、今の聞こえてたよな?」
タクマ「あ、あぁ…」
ゴン「まったく、恋愛映画の主人公役同士が現実でも…な。
おっと、2人とも。俺はそろそろ取材に行かないと!」
ヒナ「えっ…あ、行ってらっしゃい!」
タクマ「気をつけろよ」
ゴンは蛍光灯の光を抜けて走り去っていった。
タクマ「で…その…悪かった」
ヒナ「ううん、私ももっと頑張るから!だから…」
タクマ「ごめんなさい、だろ?」
ヒナ「…うん!でもね…もう一つ…あるんだ。私…」
タクマ「俺も。でもよ、それこそアドリブで言わないか?」
ヒナ「いいね、それ!」
回想終了―
タクマ「で、映画のクライマックスのセリフを変えて、告ったわけだ」
ヒナ「そうそう!監督さん、泣いてたよね」
コータス「ふぅん…で、その映画の評判ってどうだったんだ?」
タクマ「そりゃもう大絶賛!」
ヒナ「最優秀賞までは貰えなかったけどね」
スター「でも…フラット達はどこ行ったの?」
エド「全然見当たらないっすね」
ノール「やっと来た。こっちだ、こっち」
エド「そっちにいるんすね」
ノール「でも、今は2人きりにしておけ」
ヒナ「…あ!そういうこと」
タクマ「なら仕方ないな。帰るか」
エド「恋愛してる暇ないとか言っときながら、スミに置けないっすね」
スター「まあまあ、そう言わないの!」
ノール「まあ、もう一件落着だからな。止まる理由もない」
コータス「…でもよ、覗き見るのはいいよな…?」
タクマ「お、それ面白そう!俺はのった!」
スター「えぇ〜、覗き見なんてダメだよ!」
ヒナ「そうそう!私も断固反対!ほら、帰るよ!」
タクマ「いででで!分かったから、んな強く腕引っ張んなって!」
スター「コータスも、帰るよ!いつまでもこんな所で突っ立ってても
意味なんてないから!」
コータス「分かってるって。冗談に決まってるだろ」
スター「もう、変な冗談はやめてよね」
エド「ちょ、なんか俺、場違いっすよ〜!」
一方その頃―
フォール「…ランケール、次の争いに向けて用意しておけよ。
もうすぐ、奴らは攻撃を仕掛ける」
ランケール「了解した。ところで、一つ問いたい。その戦で
私が死んだとしても、君は大丈夫かい?」
フォール「…困りはしない。だが、わざと死ぬような真似はするなよ」
ランケール「それはもちろんだとも。では、静岡に向けて私は出向こう」
3節 正しさなどなく
フラット「で、今日の作戦会議は―」
クレア「休み、だろ?何で最近は集まりが悪いんだ?」
スラリア「誰かしら都合が合わないからね」
メダイ「その上、その都合が大体市民からの依頼だからね。
断ることはできないでしょ」
ノール「で、それで何でエドがいないわけ?」
フラット「力仕事だからね、僕達より力があるのは納得でしょ」
コータス「だったら、何で俺を呼ばないんだ?」
フラット「当たり前でしょ!鬼がいるなんてバレたら、市民の不安を
煽るだけでしょ?出すわけにはいかないってこと」
コータス「チェ、今は世知辛いな」
クレア「まあ、千年以上生きてれば、そんなセリフ言えるよな」
ノール「ハァ…で、終わりなら私も依頼の方に行っていい?
空き家の破壊を任されたから」
クレア「スラリアも行った方がいいんじゃないか?この世間じゃ、
自殺とか考えるやつもいるだろ?」
スラリア「で、でも…あたしじゃ、止めることはできないよ…」
クレア「じゃ、俺とスターも行く。それでいいだろ?」
メダイ「私もケーベスの手伝いかな」
コータス「俺も同じく」
フラット「えっ、ちょっと…東京のために何かしようって―」
ノール「お疲れ〜」
フラット「え〜……」
エド「じゃあ、その木片はそこに置いて、ガラス片を片付けるっす!」
ノール「ちょっとどいててくれ。危ないからな…神業・破壊!」
空き家が粉微塵になるぐらいにノールは破壊を繰り返した。
スラリア「うわぁ…この辺、すごい負のオーラ…」
クレア「東京から避難してきた都民が集まってる公園か…
今じゃ、絶望の集合体だな」
スター「じゃあ、一緒に何かしようよ!」
スラリア「そうだね!クレアも、一緒に!」
ケーベス「メダイ、ボルト」
コータス「もうボルトはキレてる。今、そのメダイが買いに行ってるから
もうちょい待ってろよ」
バジー「皆様のおかげで作業が順調に捗っていますわ」
ダンステード「ホンマに助かるわ!おおきに!」
フラット「…ハァ」
コータス「?ため息なんて、珍しいな」
フラット「コータスか…あのさ、ちょっと分かんないことがあってね。
皆はこの街のことを守ろうとしてる。でも、僕は東京を取り戻したい。
どっちが正しいことなのかなぁ、ってね」
コータス「…ハッハハ、らしくない悩みだな。ちょっと意外だった」
フラット「えっ?」
コータス「お前、いつか言ってたぞ、その答え」
フラット「言ってた…?僕が?その答えを?」
コータス「まあ、気付きたいなら皆の所に行ってヒントを
貰ってきたらどうだ?皆、それが正しいと思って行動してるわけだしさ」
フラット「うん、それもそうだね!」
エド「ふむ、綺麗になったっすね!これでまた、営業できるっすよ」
フラット「エ〜ド。お疲れ」
エド「あっ、フラット⁉︎す、すみません、会議に出られなくて…」
フラット「全然いいよ!でさ、ひとつ聞いていい?」
エド「もちろんいいっすよ!」
フラット「あのさ、エドは何で手伝ってるのかなぁ…って」
エド「そんなの決まってるっすよ!俺がファイターである以上、
誰かの助けにならないといけないっすから!まあ…それは、
ナックラーさんから教わったことっすけど」
フラット「…そっか」
エド「でも、フラットにとって大事な場所だから…っていうのも、
理由のひとつっすけど」
フラット「エド…ありがとう。でも、張り切りすぎないでね。
ここ、東京みたいに発展してないから」
エド「大丈夫っすよ!俺は、人のためになること、大好きっすから!」
フラット「じゃあさ…東京は?」
エド「…東京はたしかに俺の第二の故郷っす。だから捨てる気は
これっぽっちもないっす。でも、今の俺じゃ、東京を救えるほどの力は
ないって、分かってるっすもん!だから、守りたいものを増やして、
力も増やす!それが俺にできることっす!」
フラット「あっ!」
エド「って、これはフラットが教えてくれたことっすけど」
フラット「うん、そうだったね。あ、ごめん、
行かないといけない所、まだあるから。でも、夜の8時には
絶対、集合してよ」
エド「了解っす!」
フラット「じゃ、手伝い頑張ってね」
ノール「ふぅ〜、一仕事終わり!」
フラット「ノール、お疲れ様」
ノール「フラットか。うん、本当に疲れた。頼りにしてくれるのは
私も嬉しいけど、限度ってものがあるだろ」
フラット「ハハッ、たしかに!でも、何でそんなに疲れてまで
頑張ろうとするの?ここはノールと…」
ノール「たしかにな。ここは私には何も関係のない土地。
でも、何でだろ…私の体が勝手に動いてた。疲れなんかより、
誰かを笑顔にしたいって思いが強くてな」
フラット「そっか。まあ、疲れてるだろうし、僕はこれで帰るよ」
ノール「…自分が正しいと思ったことこそ正しい。これはお前が
言ったことだ。何か腑に落ちないことでも?」
フラット「…ううん。全然」
ノール「それに…バカ虎にも言われたしな。諦める前に
笑ってみろって。だから私は東京を諦めてない。これは断言できる!」
フラット「…ノール…ありがとう!」
ノール「…何だよ、改まって」
フラット「ううん、別に。じゃあ、夜の8時に!」
ノール「あぁ、約束した」
フラット「じゃあまたその時に!」
スラリア「まだこんなに…もう無理〜」
クレア「でもよ、ちょっとは希望が見えてきたじゃねぇか!」
スター「そうだよ、諦めてた人も笑顔になってたじゃん!」
スラリア「…そうだよね、もうちょっとだね!」
フラット「皆!どう?」
クレア「お、フラットも来たな。どうよ?」
スター「結構いい感じだよ!」
フラット「そうみたいだね、お疲れ様」
クレア「でさ、お前は何しに来たんだ?」
フラット「あ、それは…ちょっと聞きたいことがあってね。
その…なんて言えばいいんだろ…」
スラリア「もしかして、何であたし達がこんなことするんだ、とか?」
フラット「ま、まあそんなとこ」
スラリア「そうだなぁ…あたしは守れる命は守りたい!かな?」
クレア「俺は、自分を偽らずに人を助ける!これしかねぇだろ」
スター「もちろんスターは誰かのためになりたい!だって皆が
教えてくれたことだから!」
フラット「…うん、皆…ありがとう。優しく接するようにね。
じゃあ、今日の夜8時に集合できるように。僕は行くところが
あるからまた後でね」
スラリア「そうなんだ…フラットも頑張ってね」
クレア「お前も忙しいんだな。体、気ぃつけろよ」
スター「疲れたらスターが癒してあげるから!」
フラット「うん、そっちもしっかり休んでよ」
メダイ「た、ただいま…ボルト…何とか集めた…」
ケーベス「うわっ、お前…傷だらけ…」
コータス「何してきたんだ?」
メダイ「いや…ちょっとね」
フラット「まさか、竜になって何かしてきたわけじゃないよね?」
メダイ「うぐっ…え〜っと…」
コータス「まあ…な」
メダイ「ちょっと…やっちゃった、てへ?」
ケーベス「てへ?じゃねぇ!で?何があったんだ?」
メダイ「それがね、工具屋に行ったまではいいんだけど、
棚が全部倒れちゃっててさ。直すにも重すぎて仕方なく、って感じ」
フラット「…怖がられな…って愚問か。この辺の人は優しいから」
コータス「なら俺が鬼になっても―」
フラット「流石に無理」
ケーベス「だが、竜は大丈夫って…」
フラット「まあ、流石にカッコいいとかっていう理由じゃないのは
たしかなんだけどね」
コータス「でも、何でそんな傷だらけになるんだ?棚を直しただけなら
怪我する理由がないだろ」
メダイ「いや、その後に色々と力仕事お願いされちゃって…
断りにくくて受けてたら、だんだんとハードになって…」
フラット「…土木関係の仕事でしょ。枝とかに引っかかった跡、
結構目立つよ?」
メダイ「大丈夫、私、こう見えて結構丈夫だから」
フラット「だめ!ほら、できるとこは絆創膏とか貼るから
こっち来て。アルコールで消毒しなきゃいけないし」
メダイ「あ、ありがとう…」
コータス「…な〜んか、いい感じじゃね?」
ケーベス「あぁ、どうなるかと思ったけどな」
フラット「うん、どの傷も浅そうだね。でも、枝とかで怪我したら
ほっといちゃダメだよ。色んな菌が入り込んで、傷口が炎症して
下手したら病気のもとにもなるんだから」
メダイ「もう、私のこと分かってて言ってるでしょ?」
フラット「あ、バレてた?」
メダイ「やっぱり。でも、そういう冗談を言えるところ、
私は本当に好きだよ?」
フラット「…今はそんなこと言ってる場合じゃないよ」
メダイ「本当にマジメちゃんだよね。昔とは見違えちゃうよ」
フラット「だから昔のことは忘れてって」
メダイ「あのフラットもワイルドだったけどなぁ」
フラット「そんなワイルドは却下」
メダイ「え〜、ちょいワルも良さげだけどなぁ」
フラット「ちょい…?」
メダイ「あっ、自覚あった?」
フラット「うわっ、やなやつ〜!」
メダイ「フフフ…アッハハ!」
フラット「もう…」
午後―
フラット「ふぅ、飾り付けまで1人…」
とある人の誕生日会の準備をフラット1人でやっていた。
フラット「あとは机を隅にやるだけっと」
ケーベス「フラット、緊急事態だ!浅羽の方に魔獣の軍勢が
押し寄せてるらしい!」
フラット「魔獣の…軍勢⁉︎分かった、僕1人で行くから、
ケーベス達は待ってて!僕にとって、この場所は…始まりの故郷だから!」
そう言うとフラットは翼を広げて窓から飛び降りた。
ケーベス「ちょ⁉︎まずい、紋章持たずにどう歯向かう気だ⁉︎」
フラット「いた!この街は…絶対に守る!神力最高出力!
さぁ、裁きまくるよ!」
ランケール「?なんだ、君1人?」
フラット「なっ、ランケールさん…やっぱり、敵に回ったわけですね」
ランケール「いや、元から君の味方をするつもりはなかったけどね。
もしかして、君を普通に戻したの、私の真心とでも思ってたのか?」
フラット「まさか。多分、あの時の僕だとあなたにとって
邪魔でしかなかったから、とかでしょ」
ランケール「大正解です。流石はフラット君、察しがいい」
フラット「で、そんなくだらない回答を求めに来たわけじゃないでしょ?
何の用か、答えてほしいんだけど」
ランケール「…まあ、友好的な目的ではないね。交渉をすんなりと
承諾してくれるならこの魔獣達は帰すつもりだけど」
フラット「交渉を?」
ランケール「魔族との協力を絶ってもらいたい」
フラット「…それってタケルと絶交しろってことだよね。
それは、お断りするよ!」
ランケール「…ふぅ。神魔族であるあなたは、神族とも魔族とも
関わりを持ってはいけぬ存在…その契りを破れば、裁きが
下されるという昔話がありますが…その裁きを私が直々に
下さなければならないようですね。交渉決裂だ、好きなだけ暴れなさい!」
魔獣「ガルル…!」
フラット「くっ!」
ランケール「無謀なやつめ。たった1人で魔獣に勝てるわけが
ないだろう!それに、紋章の半分しか持たぬお前に、何ができる⁈」
フラット「何ができるか…そんなの、分からない!分からないから
がむしゃらに僕は突っ走る!それが、僕のモットーで…正しさだから!」
一方その頃―
コータス「浅羽より南、つまり太平洋に魔獣の軍勢が出現した!
フラット1人で対処に当たっている。この状況がどんなものか、
見なくても想像がつくと思う。すぐに向かうぞ!」
全員「了解!」
バジー「皆様、神力強化パーツ、遂に完成ですわ!」
ダンステード「早速、実戦で試してくれや!わいらの実力、
舐められっぱなしで黙っとるわけにはいかんのや!」
クレア「あぁ、分かってる!」
ノール「あの無茶な隊長に喝を入れて…」
エド「敵を片っ端から薙ぎ倒すっす!」
スター「そして、またここに帰ってくる!」
メダイ「もちろん、誰1人として欠けることなく!」
コータス「じゃ、あのバカの援護は任せたぞ!」
全員「おう!」
フラット「まだ…やれる!」
ランケール「あと何体残ってると思ってますか?」
フラット「数えきれるほどだよ…ふぅ…ふぅ〜」
ランケール「さぁ、かかれ!」
フラット「くっ!」
「まだじゃ!」
フラット「なっ、フォルディン⁉︎」
フォルディン「若造、お主はまだ死ぬ刻なぞではない!わしは、
お主を導くための存在!いざとなればこの命、お前に捧げる気じゃった!
その紋章の残された半分は…わしの分じゃ。お前とわしが
一つになることで、天秤の紋章は完成する」
フラット「でも…そしたら!」
フォルディン「…良いのじゃ。わしは元から死んでおった。
不安定な体のまま生き続けるわけにもいかぬ。
それに…家族の迷惑になるのはごめんだからな」
フラット「だからって―」
魔獣「ギャア゙ァァァァ!」
フォルディン「優柔不断なやつめ!このままじゃと喰われるぞ!」
フラット「でも―!」
クレア「突風・四方爆破之矢・散!」
エド「フラット、何ごちゃごちゃ言ってるんすか⁉︎」
ノール「戦闘に集中しろ!」
フラット「……」
ランケール「増援が来たところで、この数の魔獣を処理できるわけが
あるまい。貴様らの敗北は既に決まっている。だが…念のため…
魔獣ども!心の底に眠る憎悪の念を奴等にぶつけ理がいい!」
魔獣「ッ‼︎ギャア゙ァァァァ!」
エド「なっ、うわぁ!」
ノール「くぅ⁉︎」
スラリア「な、なんて速さ⁉︎」
魔獣「グルル…!」
メダイ「!フラット、危ない!」
鋭い爪をフラットに向けて飛び出した一体の魔獣に気付いたメダイは
反射的に龍へと変化し、フラットを庇った。しかし―
メダイ「ギャァ!」
その鋭い爪はメダイの硬い鱗をいとも容易く貫いていた。
スター「メダイ⁉︎こ…こんなの…スター1人じゃ治せない!」
クレア「くそっ、コイツら力まで上がってやがる!」
フォルディン「お前!」
フラット「!」
フォルディン「お前のせいで皆は傷つき、倒れておるのだぞ!
早くわしと一つにならんか!もとは、お前の神力なんじゃ。
わしは、消えてもお前と共にある」
フラット「フォルディン…」
フォルディン「分かったら早よせい!忘れたわけじゃあるまいな⁉︎
今夜8の刻の約束!」
フラット「あっ!」
フォルディン「お前のせいで中止になるのやもしれんのじゃぞ!」
フラット「…そうだね…フォルディン、やるよ!」
フォルディンの体をフラットは力強く抱きしめた。その体は
一気に光と変わり、フラットの手の甲の紋章を描いた。
そして、フラットの正負翼が力強い輝きを放ち、グラディウスは
赤と青の光を放った。
フラット「…僕は…フラット・クラリオ!正と偽を測るもの!
裁きの時は…満ちた!審判・光裁‼︎洸一閃・散!」
光の刃が魔獣の群れを一瞬にして消し去った。
ノール「…?フラット…?」
スラリア「ウッソ…あの魔獣達が一瞬で…」
クレア「スッゲー…」
フラット「ふぅ…!メダイ!」
慌ててフラットはメダイの傷口を触る。その瞬間、傷口が
ないことに気がついた。
フラット「…あれ?」
メダイ「……痛くない?」
ランケール「…ここは、退散するのが答えのようだ」
クレア「おっと、逃がさねぇぞ?」
スラリア「ランケール…答えて。母さんに仕えてたのは何で?」
ランケール「もちろん、あなたの存在を消すため。お母様の事故も
実は私が見せた幻術がもとなのです」
スラリア「なっ…⁉︎」
ランケール「そうとも知らず、あなたは…利用されたと知っても
もう遅いですけどね。なのに…フラット君はいつも私の計算を
覆す!まあいい。この場で全て始末すれば同じこと」
フラット「スラリア、残った全員の士気を高めろ。クレアはその速さで
敵を撹乱!」
スラリア「えっ?」
フラット「早く!」
スラリア「う、うん!死奏・ドラゴダンザ!」
クレア「神業・疾風!」
フラット「ノールは爆風で敵の視界を遮り、スターは治療の準備!」
ノール「了解!破壊・バンフレイムクラッシュ・絶!」
ランケール「くっ!」
スター「神力溜!」
フラット「よし…審判・コンダネェション!」
ランケール「なっ…⁉︎」
スラリア「…あたしも、許すわけにはいかない!母さんを…
そんな理由で!」
クレア「なら俺に任しとけ!突風・水切之旋風・爽!」
ランケール「なんの!心操・トラウマジック!」
フラット「皆の思う正しさを…咲かせよ!
最終審判『成就』術・『皆正開花』!」
全員の神力をフラットは引き出し、ランケールを中心に花のような
光を咲かせた。そして、その光は大爆発を引き起こした。
ランケール「なっ…この私が…負けるというのか⁉︎」
フラット「…戦闘終了!全員、帰投!」
ランケール「…?」
スラリア「殺さないって。それに、ペーターさんをどこに連れ去ったのか
聞かないといけないからね」
クレア「にしても、フラットのやつ…変わりすぎだろ」
スター「まるでフォルディンみたいだったよね」
ノール「お前ら、帰るぞ」
エド「そうっすよ〜」
夜8時―
フラット「セーの!」
全員「ハッピーバースデー!」
ダンステード「おお、せやったな!今日はわいの誕生日やったわ。
おおきにな、え〜っと…フロート君!」
フラット「だからフラットです!」
クレア「すっかり元通りだな」
タケル「で、結局ランケールは生かしてるのか」
ノール「まあ、ペーターの居場所をはいてもらわないと」
スラリア「もう、フラットどうかしたかと思っちゃったよ。
急に人格変わるんだもん」
シャン「変わって当たり前だよ。紋章が完成したんだから」
スター「でも、スターは紋章できても人格は変わらなかったよ?」
シャン「まあ、普通はそうだけど、フラットの場合、人力の一部が
欠けていた状態だったからね。急に完全体になって神力に
操られていた、と言ってもいい」
ノール「あぁ、私が神力を取り戻した時と同じ状態ってことか」
シャン「そういうこと。まあ、これであとはノールの紋章なんだけど…
タケル、どこにあるか教えてくれる?」
タケル「闇世界だ。だが、東京の地下だしな…」
エド「じゃあ、今となっては遅いってことっすか⁉︎」
タケル「そうとまでは言ってないが…難しいだろうな」
ノール「…じゃあ、私はお荷物ってこと?」
フラット「もう、折角のパーティなんだから楽しまないと!」
ノール「フラット…」
フラット「タケル、不可能ってわけじゃないでしょ?」
タケル「あぁ、まあそうだが、東京にどうやって行くかだ」
フラット「それはアレを使えばいいもんで…チャンスが来れば
その時に行こう?」
ノール「アレってなんだ」
フラット「地下に行けば良いわけでしょ?」
タケル「…言っとくが、普通には闇世界に行けないぞ」
フラット「分かってるよ。どこに境界があったっけ?」
タケル「ここからだと…旧本坂トンネルだな」
フラット「ト、トンネル…?ウソ…だよね⁈」
タケル「あ、もしかして〜…暗いの怖いとか〜?」
フラット「そ、そそそそんなわけないでし?」
クレア「へぇ〜…じゃあ」
フラットに気付かれないようにクレアは立ち上がると、
部屋の照明を消してみた。
フラット「えっ、ちょ⁉︎て、停電⁉︎わわっ、わ〜‼︎」
停電の真っ只中でやってはいけない、暴れ回る、をフラットは
やらかし、パーティー会場を気付かぬうちに滅茶苦茶にしていた。
クレア「ヤッベ、え〜っと…あ、あったあった、カチッと!」
なんとか電気をつけるも、スイッチの側にいたのは
クレアだけだったため、一瞬で犯人に向けての冷たい視線が
向けられていた。
全員「ク〜レ〜ア〜⁉︎」
一方、第二回地球連合臨時会議―
大統領「アカデミー代表、ゼウス。本名不明。この者を早急に
探し出してほしい!」
防衛管理長「しかし、ゼウスは変装上手と言われています!
女にも男にも化けられる以上、探しようがありません!」
大統領「案ずるな、防衛管理長。ゼウスは女であるという情報は
地球連合から送り込んだスパイが情報を掴んでいる」
防衛管理長「女…ですか?」
大統領「そして、もう一つ。正体は有名歌手のキエであることも
判明した。そうなると、今いる場所は…」
防衛管理長「静岡…ですか。しかし、コイツが所属している
ファイター企業はアカデミーと一切関係のない所…」
大統領「それこそ、コイツの居場所と正体を隠していたモヤだ。
やっと霧払いができた」
防衛管理長「つまり、あとは捕らえるだけ!」
大統領「そうだ、それと同時に四大のやつらも捕えろ!」
防衛管理長「はい!」
最終節 終わりという名の始まり
フォール「やつら、動き始めたか…まあ、ならこっちも動くか。
大規模に、ド派手に!世界よ…闇に染まれ!」
ニュース「臨時ニュースです。東京を中心に、魔力の広がりが
観測されました」
シャン「…始まっちゃったか」
ペーター「シャン、どうするんだい?」
シャン「やっと、帰ってきたか。待ってた…⁈」
翌日―
フラット「姉ちゃん、入る…⁉︎」
シャンの部屋が荒らされていて、フラットは驚いた。そして部屋の中には
シャンの姿がなかった。
フラット「ウソ…とにかく皆にも知らせないと!」
全員「え〜⁉︎」
クレア「おいおい、シャンのやつが行方不明⁉︎」
ノール「ペーターに続いて…」
スラリア「これ、結構まずい事態じゃない⁉︎」
エド「それより…ベングルやダンステードも来てないっすよ?」
スター「もしかして…ライもいない理由って⁉︎」
フラット「四大の長…何の目的で…」
ケーベス「分かったぞ、アイツらの居場所。地球連合本部だ」
コータス「どうするよ。地球連合本部なんて東京のど真ん中だぞ」
メダイ「皆!そ、その…お客さん」
フラット「客人に構ってる暇なんてないよ⁈今は―」
軍人「すまないが、構ってもらわないと困るのでね。我々地球連合の
意志を聞いてもらいたいのだが」
フラット「地球…連合⁉︎」
軍人「私はライタ・ガブル。地球連合所属軍の少佐を努めています」
ノール「今更何の用?地球連合の意志なんて聞いてる暇が
ある状況に見えるの?」
ライタ「…多忙な状況であるのは承知しております。しかし、
我々の話を聞いていただかないと納得いかない点もあるのは
必然であります」
クレア「じゃあ、早速聞かせてもらおうじゃねぇか!」
エド「ペーターさん達が本部にいる理由を聞かせてもらうっすよ!」
ライタ「それは我々の意志に賛同を得るため」
ケーベス「その意志ってやつ、聞かせてくれ」
ライタ「…まずは賛同してくれないと、私の口からは何も
お話しできません」
スラリア「はぁ⁉︎何それ⁉︎」
コータス「んなリスキーな条件出されて、はい良いですよ、
なんて言うバカいねぇよ!」
メダイ「それに、賛同してどうなるわけ?私達には知る権利が
あるはずだよね?こんな理不尽な条件、呑めるわけないでしょ!」
ライタ「…申し訳ないですが、私の独断での行動は禁則事項なので
これに従ってもらいたい」
フラット「だったら反対です!これで終わり、出てってください!
僕達にそんな暇もなければ、中身を隠さなければいけない事情に
賛同するのはお断りです!」
ライタ「はぁ…ですが、まあ宜しいでしょう。賛同するにしろ、
反対するにしろ、この意志は
ありませんから。なぜなら、四大の皆様も、アカデミーの社長も
賛同しました。よって、この意志は賛同され、実行に移されます」
フラット「なら教えてくれる?その内容」
ライタ「まあ、宜しいでしょう。我々はこれより、日照家の
霊力を用いて、東京に多重結界を張ります」
ノール「多重結界…?その方法、闇世界を封印した方法と同じだぞ⁉︎」
クレア「てことは…東京を丸ごと封じるってことかよ⁈」
スラリア「…ふざけないで!」
フラット「皆。落ち着いて。これでハッキリした。ペーターさんも、
四大も、もう信用しない。これより、デ・ロワーはアカデミーから
独立し、独断で実行する!」
エド「それって…まさか!」
スター「縛られずに行動できるってこと⁉︎」
メダイ「ダメだよ、まずいって!」
フラット「と、言いたいとこだけど。隊長ごときにできる判断じゃない。
結局はペーターさんがいないとね。でも、その話は別!
今すぐ、お帰りください!」
フラットは無理矢理、ライタを外に出した。
ケーベス「大丈夫なのか?」
フラット「…皆。これよりデ・ロワーは最終作戦を決行する!
強化されたヴィオラ号と、スパークフラッシュ・メガ号で
東京に向けて出発する!」
ノール「……フラット、お前…!」
フラット「うん、皆を救出し、東京で最後の戦いにする!
絶対に地球連合の意志なんか実行させたりしない!」
クレア「よっしゃあ!やろうや、その作戦!」
スラリア「うん、絶対に成功させよう!」
エド「必ず東京を取り戻すっす!」
ケーベス「じゃあ、最終点検でも行うか!」
コータス「思いっきり腕を振るうぞ!」
メダイ「フラット、信じてる!絶対、絶対成功!」
フラット「うん!」
タケル「…フラット。甘く見るなよ。今じゃ東京は魔獣の巣窟だ。
がむしゃらに突っ込むだけじゃ、勝てるわけない」
フラット「分かってる。ケーベス、ヴィオラ号の透視モードを
より性能上げて!」
ケーベス「よし来た!任せとけ!」
ノール「隊長、ここは円陣やって」
フラット「…そうだね。皆、集まって」
全員はフラットを中心にして円陣を組んだ。
フラット「…最初は、僕達、ただの集まりだった。チグハグで、
時にはケンカして、時には笑いあって…そんな日々が続いて
この今がある。だから、まだ終わらせたりしない!あの場所で、
あの全員で、一緒にいられるように!この戦いを最後にして、
必ずまた皆で笑い合おう!」
全員「…了解!」
ケーベス「よし、ヴィオラ号もスパークフラッシュ・メガ号も
整備完了!いつでも行けるぞ!」
コータス「あとは隊長の指示だけだぞ!」
メダイ「さっ、隊長!」
フラット「…ヴィオラ号、スパークフラッシュ・メガ号、
出撃!共に目的地は東京!」
タケル「だが、わざわざ東京で闇世界に行くのか?」
フラット「その方が手っ取り早いでしょ」
ノール「私のこと、わざわざ考えてくれてありがとう」
クレア「んなの気にすんなって!」
フラット「それ…僕のセリフ…」
クレア「ハッハハ!ちょっとは気楽にいこうや」
スター「そうだよ。緊張のしすぎは失敗のもとだよ」
スラリア「でも、気楽すぎるのも問題だけどね」
フラット「まあ、いつも通りやろう!」
エド「でも、グループ分けした方がいいっすよね。ノールの紋章を
得るためのグループと、地球連合所属軍の対抗を見据えて、
戦闘グループの2つっす」
フラット「うん。ノールの方は戦力はいらないよ。だから、
エドとスラリアでお願い」
ノール「なっ、このお嬢様と一緒に行けって⁉︎」
フラット「ワガママ言わないでよ」
エド「そうっすよ。隊長命令は絶対っすよ」
ノール「…分かった、了解」
フラット「うん。じゃあ、あとは東京に到着するまで―」
「待ちなさい!」
フラット「なっ、この声、どこから⁉︎」
ケーベス「前方に巨大な反応確認!」
コータス「この機械…間違いない、地球連合のドリル機だ!」
メダイ「そんなのが…何でこんな所に⁉︎」
地上に、ドリル機から1人の男が降り立った。それは―
ライタ「あなた方がその機械で東京に無理矢理来ることなど
想定するに容易いこと。今すぐその機械を我々に献上し、
仮拠点にお帰りください」
フラット「お断りするよ!それに、アンタは悔しくないの⁈」
ライタ「なっ…悔しい…」
ノール「そうだな。自分の手で自分の国を傷つけて…それが正義だと
本当に思ってるのか?」
ライタ「…私は軍人。地球連合の決めたことに従うのみ。
私個人としての意見など、捨てるべきことです」
クレア「まるでピエロだな、アンタ。それで良いのか?」
ライタ「良し悪しではありません。従うのみですので」
エド「たとえそれが誰かを傷つけるとしてもっすか⁉︎」
スラリア「そんなの、守るって言わないよ!」
スター「壊して何を守るって言うの⁉︎そんなの…フォールと同じだよ!」
フラット「本末転倒だよ、そんなことしたら。食い止めるどころか
フォールの代行役になるだけだよ」
ライタ「…そんなの、私だって考えましたよ」
クレア「だったら反対しろよ!」
ライタ「先ほども言った通り、私は個人としての意見は
捨てなければならないのです」
エド「軍人の前に、アンタは1人の個人っす!」
ノール「そうだな、発言するくらいの権利はあって当然だ。
その権利すらないなら、そんな所、やめればいい」
ライタ「私は誇りを持って軍にいる!」
フラット「悪いけど、アンタみたいなのは軍人向きじゃないよ。
ファイターから言わせてもらうと、だけどね」
ライタ「いくら命をかけて戦う者だとしても、身分を弁えたまえ」
エド「弁えるのはどっちっすか⁉︎」
クレア「お前、そろそろどいてくれないか?邪魔なんだよ!」
ライタ「もし引き返さないなら…私が直々にお相手致します」
フラット「こんな街中で戦え⁉︎正気⁉︎」
ノール「それもただの指示だろ。お前、ロボット、いや、地球連合の
ペットだな。お前、軍人のプライドのカケラもないぞ」
ライタ「プライドはある!」
クレア「なら…そのプライドってやつ、見せてみな。まあ、俺が
思いっきりへし折ってやるよ!」
いつもの気楽そうな声ではなく、心の底から怒りのこもった声で
ライタにぶつけた。
フラット「クレア…?」
クレア「自分達のプライドが守られるなら、どんな手を使っても
良いと思ってるのか?そんな理論…通すわけにはいかねぇ!
プライドってのはな…弱い人間の鎧だ!」
ライタ「…ライタ・ガブル、戦闘開始致します!」
ユーリック「神業・夢見!」
急にライタは威勢を張ったかと思うと、ユーリックの術で
一瞬にして眠らせた。
スター「ユーリック⁉︎」
ユーリック「あたしを置いてくなんてどういうつもり?
ていうか、こんな面白そうなことやってたなら教えてよね!」
フラット「だって仮拠点にいなかったから、てっきり捕まってるかと…」
ユーリック「いや、夢の中で眠ってただけだし」
クレア「で、コイツどうする?」
フラット「…ケーベス、手錠と鎖」
ケーベス「お、あれか!久々だな!」
数分後―
コータス「軍のやつらも同じくやっといたぞ」
フラット「オッケ。じゃあ、ちょっと見せて」
ライタ「…おい…」
フラット「プフっ!」
ライタ「見せ物ではない!」
処刑台の上に捕らえられたライタ。
フラット「じゃあ、あとは任せたよ、ケーベス」
ケーベス「おう、任せとけ!」
ライタ「なっ…何するつもりだ⁉︎」
フラット「別に〜?痛いことも実験もしないよ。じゃあ、セットアップ」
処刑台が磔台に変わった。
フラット「そして、ライトアップ!」
ライタ「な、何だこれは⁉︎」
フラット「はいはーい、クレアの提案だからね。プライドを
折りに折りまくるってさ」
ライタはレッカーされた戦車の上で、磔され、その上虹色の
光に照らされていた。横には、
[東京破壊未遂者]
と書かれた立札が置かれていた。
クレア「どうだ?少しは恥というものも分かっただろ」
ライタ「早く降ろせ!」
フラット「じゃあ、賛同してくれる?」
ライタ「なっ…」
フラット「もちろん、賛同するまで内容は伏せとくけどね」
ライタ「…」
フラット「分かった?アンタがしたこと」
ライタ「…」
コータス「どうやら、まだその精神は曲げないってな」
フラット「そっか。じゃあ、バージョンアップ」
コータス「あいよ。え〜っと、カジノの客寄せは…これか」
ド派手な音楽が大音量で流れた。
ライタ「おい、ちょ―!何だ―!」
フラット「え〜?よく聴こえな〜い。もう置いてこ?」
クレア「だな。プライドがそんなに大事なら、プライドと
一生を共に過ごして、共に終えるんだろうな」
フラット「ああいうのって、幸せなんかになれないよね」
ライタ「…」
27年前―
ライタ「た、ただいま帰りました…」
父「…刻限より2秒遅い!何をしていた?」
ライタ「は、はい!その…」
父「昨日は4秒早く、おとといは1時間も遅かった!平均して、
刻限より7秒遅れている!」
ライタ「はい…」
父「軍に入る者ならば、1秒たりとも遅れは絶対に許されない!
だと言って、早くてもダメだ!きっかり時間通りに行動しろ!
そのために、時間通りに行動できぬ者とは共にいるな!
それで、話は変わるが、お前の部屋にあった漫画は処分しておいた。
軍人に娯楽など不要だろ!」
ライタ「あ、あれは…友達の物で…ただの忘れ物…」
父「何⁉︎お前、そんな友人など早く縁を切れ!」
ライタ「…はい…」
ライタ「…“僕”だって…自由になれるならなってやるとも!」
フラット「…やっと心開いた」
クレア「意外と簡単だったな」
フラット「簡単…じゃないけどね。これじゃ、僕達が悪役じゃん」
ケーベス「でもよ、転機っていうのには悪役が付きまとうもんだろ」
フラット「まあ、これ以上はもう良いでしょ。ランケール、幻術終了」
ランケール「了解です」
メダイ「やっぱり優しい、フラット」
フラット「優しくないよ。こんな作戦しか思いつかないっていうのも」
ライタ「悔しい…そりゃ悔しい!」
フラット「じゃあ、協力、する?」
ライタ「協力…?」
フラット「軍人としてではなく、1人の個人として。はっきり言うと、
僕達は軍人としてのあなたは認めていません」
クレア「今のアンタなら大歓迎だけどな。軍を裏切って何になる?
軍をやめるハメになったら俺達のとこに来れば良いだけだ。
問題はどこにもないぞ」
ライタ「……」
メダイ「はっきり言うけど、今1番信頼がある軍ってアカデミーで、
その中でもデ・ロワーだと思うけど?」
ケーベス「実績もあって、今こうやって東京を奪還する勇気もある。
どこにも汚点なんかねぇけど?」
コータス「逆に東京ごと封印することで解決しようとする地球連合に
信用があるとは思えねぇぞ?」
ライタ「…しかし…軍人である以上…」
クレア「だから、俺達が受け入れると言ってるだろ!信じろ!」
ライタ「…分かり…ました」
フラット「よし、じゃあ、各員に伝達!これより進行を再開、
ヴィオラ号は大気圏まで上昇し、時速1000ノットを維持!
スパークフラッシュ・メガ号はマッハ3を維持!」
コータス「了解!持ち場に戻る!」
ケーベス「任せときな!お前らを安全に東京まで送ってやる!」
メダイ「操縦の方は任しといて!」
フラット「うん!残りのメンバーはスパークフラッシュ・メガ号の
第二車両で作戦会議!」
クレア「了解!と言っても、俺しかいねぇけどな」
フラット「たしかに!」
ライタ「…これが…ファイター…」
フラット「さっ、行こっ!案内するから!」
ライタ「僕が…捨てた世界…」
フラット「何してるの、早く!」
ライタ「もう一度…描きたい!」
フラット「もう、無理矢理にでも連れてくからね!」
ライタの手を無理矢理握り、目的地に向けて連れていった。
軽い足取りで、幅広い歩幅で、軽々しい靴音を響かせて。
第二車両(作戦会議室)―
フラット「というわけで、協力することになった…自己紹介」
ライタ「え〜…ライタ・ガブル。宜しく」
ノール「…?さっきのオーラがないけど…」
スラリア「何、同姓同名の別人?」
クレア「正真正銘、さっきと同じやつだ」
スター「えぇっ⁉︎ウッソ〜⁉︎」
ユーリック「ありえな〜い!全然見違えたけど…」
エド「まあ、それより作戦会議っすよ!」
フラット「?作戦会議はもう終わり。自己紹介やったでしょ、
はい終わり。はい解散!」
全員「はぁ⁉︎」
フラット「今マジメにやっても意味ないでしょ。この調子なら数十分で
東京には着くけど、まだやることあるでしょ。ノールの紋章を
得るまでの護衛、その間、闇世界に繋がる扉を死守する。
この作業が終わるまでは作戦会議はなしでいこう」
ノール「本気か⁉︎」
スラリア「こんな時に呑気なこと…まあ、フラットらしいけど」
フラット「じゃあ、一旦解散!」
第四車両(レストルーム)―
エド「フラット、ソイツのこと信じて良いんすか?」
フラット「大丈夫!僕が保証する!」
ライタ「…」
フラット「軍を裏切っても、誰も責めたりしないよ。あんな作戦を
実行しようとした地球連合なんか、いるだけライタの価値を
無駄にするだけだもん」
ライタ「僕の…価値?」
フラット「普通に生きて何が悪い。娯楽を楽しんで何が悪い。
堅っ苦しく生きて何が楽しい。たしかに、僕は法を司る者。
でも、それに縛られず生きてるけどバチなんて当たってない。
僕は信じてるんだ」
ライタ「何をですか?」
フラット「役目や人生に縛られない未来を!」
ライタ「…未来を…!」
フラット「その未来図の中にいる皆を増やしたい、そして笑顔にしたい!」
ライタ「その皆というのには僕も?」
フラット「皆っていうのは、僕が出会ってきた人達のこと。
だから、ライタもその中の1人だよ!」
ライタ「フラットさん…僕は…」
父「軍人に娯楽など不要だろ!」
ライタ「僕は…普通に生きたい!」
フラット「分かってる。そのためには手伝ってもらうけど」
エド「そこまで言い切ったなら俺も信じるっす!」
フラット「ありがとう、エド」
ライタ「…情報
中心地点、及び生贄の場所をお教えします」
フラット「ライタ…!お願い!」
ライタ「まず開始時刻は8月3日の正午。。中心地は浅草、
生贄の場所は新宿です」
フラット「…ありがとう。浅草を中心…絶対阻止するよ!
あの場所は…大切な場所、ううん、僕達の家だから!」
エド「俺にとっても、原点っす!俺に光をくれたあの場所を
絶対守り抜くっす!」
フラット「……エド。分かってるだろうけど…今回の任務は
命を落とすリスクもある」
エド「えっ、いきなり何すか?」
フラット「ううん、ただ分かっておいてほしいだけ」
エド「最初から承知の上っす!」
ライタ「…僕の軍勢はどこですか」
フラット「今は第七車両だけど?」
ライタ「彼らに協力を仰いでみます」
フラット「いいよ、そこまでは。東京を守りたいって思ってるのは
僕達以外にもたくさんいたから」
ライタ「…?」
第一車両(操舵室)―
フラット「皆、お待たせ!」
タクマ「おせぇよ!何分待たせるつもりだよ!」
ヒナ「ごめんね、無理言っちゃって」
ラルバ「でも、本官は東京を守りたいんです!」
デラガ「俺も同じだ!この手で必ず守る!」
シャリー「私の大事な故郷を…無くすわけにはいかないから!」
ミッシェル「そうだな、それにフラットがくれた仕事だ!
断るわけにはいかねぇな!」
センリ「俺も同じ理由です!グリテールさんのくれた今を、
無駄にしたくないから…!」
ゴン「あの街を消そうとしたこと…もとは地球連合に仕えてた身でも
許せるわけないからな!今回はおふざけなしでキレたぜ!」
ベスト「俺の大事な店を消すっていうなら覚悟しとけ!あそこは…
フラットのくれた思い出屋なんだよ!」
バジー「私も…許すわけにはいきませんわ!本領発揮と参りますわ!」
フラット「この皆がいるから」
エド「えっ…いつの間に⁉︎」
フラット「ほら、僕達がライタを相手にしてたでしょ?その後に
いきなり押しかけてきてさ」
10分前―
フラット「じゃあ、コイツに幻覚見せといて。僕もついて―」
タクマ「待て!」
フラット「?」
声のした方をフラットがスッと振り向くと、全員が熱い眼差しで
フラットを見つめていた。その全員を前に、フラットは大きく頷いてみせた。
タクマ「フラット…よっしゃあ!」
ヒナ「いいんだ!フラット、ありがとう!」
フラット「分かったら早く乗って!すぐに出発するから」
フラット「ていうこと」
エド「知らなかったっす…」
フラット「そりゃ、皆はプライベートルームの第三車両に
いたわけだしね。エドもでしょ?」
エド「そうっすね」
ライタ「まずは皆様に謝罪したい。地球連合がこのような
正しいとは決して言えない作戦を実行に移そうとしていること、
本当に申し訳ない」
ヒナ「えっ…そう言われても…」
タクマ「アンタには非がないということは分かってるし。
だからこうして、協力するんだろ?」
ラルバ「この世に敵も味方もないです!ただ悪さする人は
正せば良いだけです!」
デラガ「俺も同意見だ。アンタは善悪を見極められる目を持ってるだろ?」
ライタ「皆さん…ありがとうございます!」
フラット「でも、皆はファイターと言ってもヒーロー。神力を
持っていない以上、最前線には戦ってもらうことはできない。
支援で限界だけど、いい?」
シャリー「協力できるならなんでもするわ。任せて」
ミッシェル「俺も邪魔する奴はバッタバタ倒してやるよ!」
センリ「力になれるか分かりませんが、やれるだけやります!」
ゴン「この記事書いて、地球連合のプライドをへし折ってやるとも!」
ベスト「後方支援でもなんでも、やれるなら思いっきりやってやる!」
フラット「うん!それじゃあ協力を認める!」
ケーベス「入るぞ!あと5分で東京に入る。全員、第二車両に移動しろ!」
フラット「分かった、移動するよ!」
第二車両(作戦会議室)―
クレア「あと5分か…」
ノール「ふぅ…緊張するな」
スラリア「大丈夫。絶対上手くいく!」
フラット「ほら、各自席について!」
フラットの指示でバラバラに立っていた全員がバッと席についた。
スター「ねぇ、上手くいくかな?」
ユーリック「スター、大丈夫だから」
フラット「上手くいくって信じなきゃ始まんないよ。
それより、この戦いの抱負を今から発表するよ。くじけそうになったら、
この言葉を思い出して、立ち上がってほしい」
その言葉を聞いて、全員は息を飲んだ。
フラット「僕1人じゃ何もできないってことは分かってる。
でも、東京が壊れゆくのを、ただ座して見てるだけなんて
もっとできない!今までだって、諦めてた未来を今にしてきた。
だから、皆でいればどんな不可能だって絶対可能になる!
これがこの戦争の終止符になるように、全力を尽くして、
必ず帰ってくる!」
ケーベス「もうすぐ東京だ!魔獣の反応、多数!フラット、
計画通り、囮作戦始めるぞ!」
フラット「オッケー!魔獣の攻撃を避けつつ、タワーのてっぺんから
対魔獣光線を一気に放射!」
コータス「了解!」
フラット「…最終ミッション発令!魔獣を全て殲滅し、東京の
奪還、全員で生きて帰還する!」
全員「了解!」
フラット「…いくよ…積み重ねた今までの先へ!」
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