神魔戦争編

第16話 共生の道へ

1節 神界へ


フラット「えっ⁉︎スラリアが消えた⁉︎」

ノール「…これが神界に渡る道か」

クレア「アイツ、帰ってこられるよな⁈」


スラリア「ここ…どこ?洞窟…?」

?「お待ちしていました。あなたがスラリアですね」

スラリア「!この声…どこかで…」

?「はい、あなたが生を授かった時にもお会いしました。

私はタナトス。こうしてお会いするのは久方ぶりです。

しかし、最近は教会にいらっしゃらずにどこへ?」

スラリア「…あたしは…月の方に。申し訳ございません!

あたし、教会を継ぎたくなくて…」

タナトス「謝る必要はありません。人には人生において

選択肢があります。主もお分かりになられるでしょう」

スラリア「それでも…どうしてあたしなんかに

タナトス様のお力を?」

タナトス「闇に堕ちた者を救い、更に共生を願った。

それは心の広い証です」

スラリア「えっ、それならフラットの方がー」

タナトス「はい、たしかにあのお方は

お心の広い方だとは存じております。ですが、

あなたは争うことを一切考えずに私に祈りました」

スラリア「それは…って、フラットは争うこと考えてたの⁈」

タナトス「いえ、争うことを彷彿させる祈りでは

なかったのですが、道を正すという方法が曖昧なので」

スラリア「あぁ、フラットって言動も曖昧な時が

多いから…祈りも曖昧なんだ」

タナトス「それに、あなたは死神。ちょうどいい。

すぐに使いこなせるわけじゃありませんが、

暴走することもないので。しかし、やっと会えました。

私の所まで辿り着けた者は」

スラリア「えっ、他の死神は?」

タナトス「ダメです。役目をこなすので精一杯とか

自分には資格がないとか、私の力を使いこなせる存在は

誰1人として現れなかった」

スラリア「あたしも昔ならそう言ってたけど…

今ならやらなきゃ分かんないって思えるんだ。

フラットが教えてくれたから」

タナトス「そうですか。しかし…フラット…

どこかで聞いたことのあるお名前です。どこかで

口ずさんだことがあったような…」

スラリア「知り合い…?」

タナトス「それはありません。私が生きていたのは

第五次神魔戦争が終わるまで。封印されたのです。

この地球の様々の所で」

スラリア「封印…そうか、神は封印されたんだっけ」

タナトス「そうです。ただ、封印されたとはいえ、

神同士で会話はできるので、結構楽しいものですよ」

スラリア「気楽な考えをするんですね、タナトス様も。

まるで普通の男性みたい」

タナトス「神とはいっても、人間とほぼ同じもの。

あ、あと一つ、頼まれてもいいですか?」

スラリア「?」


聖墓ー

スラリア「ただいま」

クレア「良かったぁ〜…もう帰ってこないかと思ったわ!」

ノール「大袈裟だ、というより心配性か」

エド「それで?力は貰えたんすか⁉︎」

スラリア「うん、ほら、あたしの左腕に

タナトス様のイニシャルの“蝶”だよ!」

スター「あっ、像にもあるよ!」

聖母「ま⁈神像に指を刺すとは!」

クレア「す、すみません!スター、無礼だぞ!」

スター「はぁい」

スラリア「それで…フラット。タナトス様の像を見て

何か感じない?」

フラット「えっ?感じるも何も、会ったことあるけど…」

全員「はぁ⁉︎」

フラット「それじゃ辻褄が合わないんだよなぁ…

誰だったんだろ、あの人…」

スラリア「やっぱり…ねぇ、フラットー」

ペーター「スラリア!」

スラリア「えっ⁉︎な、何でペーターさんが?」

ペーター「ちょっとスラリア、こっちに」

スラリア「?」


外ー

ペーター「スラリア、あの話を聞いたか」

スラリア「フラットが第5次神魔戦争の時に生まれた

法の天使って話ですよね?」

ペーター「その話は、フラット君には絶対に伝えないでほしい。

フラット君にとって一欠片も必要ではない記憶だ」

スラリア「…実は、ペーターさんのことも聞きました。

封印されることなく今も生き続けてる時の神、

それがあなただと」

ペーター「…ハハ、流石はタナトス。口が軽く、

それでいて純粋なのは変わらないな」

スラリア「でも…ホーラは女神のはず!」

ペーター「それは……仕方ないな、ほら、俺のその時の写真」

ペーターはスラリアに照れ臭そうに写真を見せた。

スラリア「えっ…これペーターさん⁉︎女性じゃ…」

ペーター「だから女神って書かれたんだ。整形して

やっとこの顔だよ」

スラリア「整形⁉︎勿体無い…」

ペーター「いくら顔が良くても、女性と間違われるのは

お断りってことだ。女性でも、男って言われるのは嫌だろ?」

スラリア「ん〜…あたしは何とも言えないかな?」

ペーター「そ、そうかい…まあ、それはともかく。

フラット君には秘密にしてほしい」

スラリア「それは了解です。でも…どうやって

フラットはこの時代に…」

ペーター「さぁ、そこまでは。おっと、もうこんな時間か。

ごめんね、急に呼び出して」

スラリア「いえ、それに……言えない秘密とか、

面白いじゃないですか!」

ペーター「!」


タナトス「人に言えぬことがあるのも、

また一興だろ?エウノミアーも秘密とか

好きそうだよな」


ペーター「まさか…スラリアは…いやいや、

神の魂は封印されてるんだ、転生できるはずない」


聖墓ー

フラット「あ、来た」

スラリア「ごめーん!いや〜、まさかあたしとしたことが

デ・ロワーに忘れ物しちゃってたよ」

「お、見つけましたよ?」

フラット「ん…この声って…ゴンさん⁉︎」

ゴン「さっき四大グループの人達から聞きました!

で、スラリアさん!タナトス様の紋章、

見せてください!ぜひ記事にさせてもらいたいので!」

スラリア「えぇ〜…記事はダメ!絶対ダメ!

あたし、素顔も皮膚もNG!」

クレア「いや、素顔も皮膚もファイター専門チャンネルで

一般上映されてるだろ」

スラリア「それは…そうだけど…でも、ダメなものはダメ!

なんか、見せちゃダメって…そう感じてるの!」

聖墓に響くくらいの大きな声でスラリアがそう叫ぶと

左腕の紋章が強く輝き始めた。

スラリア「えっ…何これ…?」

ペーター「おっ、久しぶりだな。神光か」

スター「神光ってなぁに?」

ペーター「あぁ、神光っていうのは、神の怒りに

触れると紋章が光だし、神力が引き出される」

フラット「って…いうことは…」

スラリア「ちょ、な、何これ⁉︎顔に…あざ⁉︎」

ペーター「おぉ、もうそこまで…しかしまずいな。

暴走する前に止めないと。フラット君、君の力があれば

暴走は抑えられる」

フラット「ぼ、僕の力で⁉︎」

ペーター「神力を強制的に束縛する。できるだろ?」

フラット「つ、罪がないと束縛はー」

ペーター「何言ってんだ。罪がなくとも

束縛くらいはできるだろ?」

フラット「…したくはないんですけど…ハァ、神業・術封」

スラリア「…あれ?収まった…?」

ペーター「うん、神の力の復活だ。これで死の天使ではなく、

れっきとした死神だな」

スラリア「その言い方はなんか…」

ペーター「おっと、俺も聞こえが悪くなったかな?」

ノール「まあ、用事も済んだということで帰るか。行くぞ」

フラット「あ、ちょっとは待ってよ!」

ペーター「…?なんかノール、機嫌悪くないか?」

フラット「…ハハ」


夜ー

ノール「ハァ〜」

キルユウ「どうした?」

ノール「それがさぁ…スラリアが親不孝者で…

許せなくてさぁ」

キルユウ「お前、相変わらずそういうやつを

毛嫌いするよな。まっ、そういうとこが可愛いけどな」

ノール「茶化さないでって。でも…キルユウ達が

平気で良かった!」

キルユウ「……ノール。バルシアのことなんだが……

その……魔獣になって…」

ノール「えっ…何言ってんの…?バルシアは

魔族の血なんて引いてるはず…」

そう物語るノールの顔は一気に青ざめていた。

キルユウ「それに…変な仮面つけたやつに

連れ去られてな…すまん!俺、何もできなくって…」

ノール「…いや、魔獣相手じゃ、ファイターでもないキルユウは

戦わないのが正解。私達が現場にいなかったのが

問題だったのだ。あんなお嬢様に付き合わず、

帰ってくればよかった」

キルユウ「…ノール。お前が親不孝者を嫌う気持ち、

俺は分かる。だけどよ…人にはそれぞれ何か理由がある。

親不孝をするってことは、何か不満があるということだ。

スラリアにも不満の1つや2つ、あってもいいだろ?

お前だって、その力を悪用されたことに不満があっただろ?

それと同じことだ。許してやれ、それぐらい」

ノール「…分かってるとも、それぐらい。

でも…家族に不満を抱くやつを私は友とは認めたくない!」

キルユウ「…フッ…アハハハ!ノールもワガママに

戻ったな!前のお前だったら俺の指示に何でも

従っただろうにな」

ノール「…私はもう欲とか気にしないから…」

キルユウ「やっぱり、俺じゃお前を笑わせてやれないか。

ボーイフレンドとして、失格だよな」

ノール「キルユウ…?」

キルユウ「お前には、アイツらの方がお似合いだ。

今日で、別れようか」

ノール「えっ…⁉︎」

キルユウ「俺、お前を幸せにはできない。

それが今日、良くわかった」

ノール「ま、待ってよ!私が何かしたなら謝る!ごめん!」

キルユウ「…ほらな。俺のせいでお前が謝る。

泣かせてしまうほどにな」

ノール「だって…急すぎだ!理由も曖昧なまま、

別れよう⁈それをあっさり承諾するほど、私って

バカな女だと思われてた⁉︎」

キルユウ「…実はな。俺、岩手に戻ろうかと考えてる。

故郷で仕事をしたい」

ノール「…何それ…バルシアは⁉︎バルシアは

連れてかれたままでいいわけ⁉︎」

キルユウ「…お前の答えだぞ。ファイターでない俺は

戦わないのが正解だと。違うか?」

ノール「だからそれは、私が守るからって意味でー」

キルユウ「それだ。男が女に守られる。それ以上に

ダサいこと、ないだろ?」

ノール「ダサい⁉︎私がキルユウを守ることが⁉︎最低!

私はファイターだから当然のことをしてるだけなのに…!

もういい、良くわかった。キルユウなんか、

宇宙ゴミにでもなればいいんだ!」

ノールは家から飛び出してひたすら真っ暗な夜道を

走り抜けていった。


大学寮ー

フラット「ふぅ…レポート完成っと。あとはアカデミーに

提出するだけっと」

エド「じゃ、晩飯にしようっす!俺もう腹ペコっすよ!」

フラット「うん、そろそろシチューもできてるだろうし、

食べよっか。エド、お皿の準備お願い」

エド「了解っす!」

2人が和気藹々わきあいあいと夜ご飯の準備をしていると、

ピンポーンと、インターホンが鳴った。

フラット「?誰だろ。はーい」

フラットが駆け足で玄関の扉を開けた。

キルユウ「フラット!ノール、見なかったか⁈」

フラット「ノール…?見てないけど…何かあったの⁈」

キルユウ「実は…」


フラット「えぇぇ⁉︎別れ話したら怒って飛び出した⁉︎

待って、何がどうなって別れ話に⁉︎2人、いい感じだったじゃん!」

キルユウ「…それが…」


フラット「ハァァァァァァ⁉︎ノールに守られっぱなしで

ダサいと思ったから別れた⁉︎呆れた…そりゃ誰でも怒るよ。

流石の僕でも、そんな理由で別れ話を用意されたら

怒るよ。いい⁉︎ノールはキルユウのことが大好きだから

守ってきてたんだよ⁉︎その気持ちを、キルユウは

無碍むげにした!ノールの気持ちも考えてみなよ!

キルユウに告白したのはノールでしょ⁉︎好意があるなら

守りたいと思うのも道理!そんなことも分かんないって

どれだけ鈍感なんだか…」

キルユウ「そ、そこまで言わなくたっていいだろ!

俺は…初めての彼女だし…」

フラット「だから?ノールだってそうだと思うけど?

まあ、説教は後にしてノールを探しに行くから。

キルユウは家で待ってること、いい⁈」

キルユウ「俺も探しにー」

フラット「キルユウが探しにいっても逃げられると思うよ?」

キルユウ「俺が原因なんだ。俺が解決したいんだ!」

フラット「…言っても聞く耳なしか。分かった、

それじゃ、デ・ロワーの全員に声かけて…」


スラリア「えっ⁉︎スラリアが行方不明⁈分かった、

あたしが全力で探すよ!」


クレア「ノールが…よし、俺も手伝うわ。スター、

留守番頼む」

スター「えぇ〜!スターも外出たい!」

クレア「バカ!こんな時間に外で歩いたら

何されるか分かったもんじゃない!」

スター「兄ちゃんは心配しすぎ!まあ…うん。

夜道は危険だもんね」

クレア「そういうことだ。じゃ、俺は行ってくるな」


1時間後ー 

フラット「ダメ、どこにもいない」

スラリア「ノールが行きそうな場所に全部行ってみたけど

手がかり何ひとつ…」

エド「まさか誘拐されたとか⁉︎考えられるっすよね⁈」

クレア「縁起でもないこと言うなよ!たしかにありえるが

アイツならマフィア時代の反射でー」

「グルル…ニオウ…ザケノニオ゙イ゙ィィィィ!」

フラット「⁉︎この声…バルシア⁉︎」

ノール「…終わらせる。暗殺・幾多刃乱舞・斬撃!」

魔獣と化したバルシアにノールの神器が迷うことなく

いくつも突き刺さる。

バルシア「アガァァァ!」

フラット「ノール⁉︎」

ノール「目標、瀕死。沈黙するまで叩き潰す」

スラリア「ね、ねぇ…ノールが纏ってるオーラ…

神力…だよね?」

クレア「神力にしては…嫌な感じがするぞ」

フラット「…まさか、神力が蘇った衝撃で

操られてるんじゃ⁉︎」

ノール「破壊・バンフレイムクラッシュ・滅!」

バルシア「グゥゥゥゥゥ!」

魔獣は炎に焼かれ、灰の中からバルシアが出てきた。

フラット「バルシア!」

バルシア「あ…兄貴…俺……酒……飲みてぇ…ないか?」

フラット「お酒⁉︎ある!あるよ!どんだけ飲んでも

怒らないから!好きなだけ飲んでもいいから!

だから…だから!」

バルシア「好きなだけ…飲んでも怒られないか…

それは…幸せだなぁ…」

バルシアは幸せそうな寝顔のように、息を引き取った。

フラット「バルシア…?あるんだって…!

お酒…あるから…お願い…目…開けてよ…!」

ノール「始末完了。帰還します」

スラリア「ノール!」

ノール「…?何か」

スラリア「自分の家族を殺して、何とも思ってないの⁈」

ノール「親不孝者であるお前には言われたくない。

それに、家族だから殺した。それだけだ」

スラリア「えっ…」

ノール「お前達、魔獣が親しい存在だとはいえ

殺すのに躊躇するとはなんたる腑抜け」

クレア「…スラ。もうコイツはノールじゃねぇ。

おいお前、何者だ」

ノール「何者だと問われても、私はノールだ。

闇帝様の眷属けんぞくとして働いている」

スラリア「眷属⁉︎えっ、闇帝の血統だったの⁈」

クレア「そんなわけないだろ!まさか…洗脳されてるとか⁉︎」

エド「もしくは、異世界線のノールじゃないっすか⁉︎」

ノール「いいや、正真正銘、私はこの世界のノールだ」

フラット「…ノールがそんな軽いノリで家族を殺せるとは

到底思えないけどね」

クレア「だ、大丈夫なのか?」

フラット「うん、全然大丈夫。ごめんね、取り乱して。

あと…バルシアのこと、任せるよ」

クレア「は?」

フラット「ちょっと、僕も本気でいくから。

暴走したら…止めてくれる?」

クレア「…おう、バッチ来い!」

フラット「それじゃ、いくよ!神力最高出力!

舞え、審判之正負翼!」

フラットの体を青色の光が包み込んでいく。

ノール「っ⁉︎この光⁉︎」

フラット「グラディウス、思いっきり裁くよ!」

クレア「な、何だあれ⁉︎」

スラリア「⁉︎フラット、紋章なしにそれだけの力使っちゃ

危ないよ!あたしもいく!」

クレア「おい、俺達はー」

エド「スラリアならタナトス様の力を貰ってるっすから

何も心配することはないっすよ!」

クレア「…それもそうか」


その頃デ・ロワー

ペーター「何⁉︎フラット君が神力最高出力で⁉︎」

?「はい。紋章なしなので危険かと」

ペーター「すぐに行く!場所は⁈」

?「浅草公園の近く。行けば分かるかと」

ペーター「分かった、情報提供ありがとう!」

?「そういうのは任せておけ。前のようにな」


フラット「審判・光裁‼︎洸一閃・剛撃!」

ノール「よっと!破壊・闇夜行特急列車・光速!」

フラット「うわぁっ!」

スラリア「無茶だって!あたしに任しといて!

合奏・魅惑之ト長調」

ノール「なっ、この音色…!」

スラリア「とりあえずはこれでよしっと。

神力を抑えるためにも…?おかしい、全然収まってない」

ペーター「君達!離れろ!」

フラット「…?ペーターさん…?」

ペーター「フラット君、後でたっぷり説教だぞ!」

フラット「…あれ…目が…」

パタリとフラットは地面に倒れこむ。

ペーター「全く……スラリア、ノールを介抱」

スラリア「は、はい!」


デ・ロワー

バジー「あ、やっとお帰りになられましたか。

あの、このような手紙が」

ペーター「後で読んでおくよ。その前に、ノールの神力が

戻ったから医務ポッドに」

バジー「承知しました。スラリア様、お連れできますか?」

スラリア「ちょ、ちょっと無理…」

クレア「後は俺がやっておくよ。流石に疲れただろ?

それに、ノールの神力も弱まっている。平気だろ?」

ペーター「そうだな。よし、クレア、頼む」

エド「大丈夫なんすか⁉︎さっき平気で家族を

殺したやつっすよ⁉︎」

クレア「だから平気だって。フラットも寝込んじまってるし、

俺がやることだろ?」

ペーター「ハハ、それじゃ、よろしく。俺はフラット君に

説教しなくちゃならないからね」

バジー「説教?フラット様、何か⁈」

ペーター「いや、無茶したもんでね。“あの力”を今の

フラット君の体で使ってしまえば……」

スラリア「ペーターさん、早く医務室に!

フラット、目覚ましたって!」

ペーター「そうかい。じゃあ君はもう帰りなさい。

もう深夜だからね」

スラリア「はい、そうします。ではおやすみなさい」


医務室ー

フラット「いや…えっと…分かってはいます」

ペーター「分かってたら使うな!君の力は

暴走したら止められる者なんてそうそういないんだ」

フラット「…よく知ってますね。僕の力を詳しく。

ペーターさんって何者?」

ペーター「えっ……それは……」

フラット「まあ、言えない秘密なんて1つぐらい

あった方がミステリアスで面白いからいいですけど」

ペーター「えっ…その言葉…」


カナリア「誰にも言えない秘密の1つぐらいあるのは

当たり前ですし、ミステリアスで趣深いですよ」


ペーター「……」

フラット「あの〜?」

ペーター「あっ、その今の言葉…」

フラット「えっ?あれ、どこかで聞いたことの

あるような…ないような…」

ペーター「そうかい。まあ、それはそれとして、

君が紋章を手に入れるまでは神力を安易に引き出すな。

下手したらノールのようになるぞ」

フラット「百も承知です。でも…これで腑に落ちかけてたことが

やっと落ち切りました」

ペーター「?」

フラット「僕の神力が異様に高いことです」

ペーター「⁉︎」

フラット「あれぐらいの桁違いの神力を引き出しても

2、3分は活動できた。普通だったらほんの数秒で

暴走しているはず」

ペーター「…君の神力は希少なんだ。第5次神魔戦争の時に

存在していた神兵、今でいうファイターぐらいの神力を

君は宿しているんだ」

フラット「僕が…?」

ペーター「彼らの強い神力を抑えていた存在が、

君の中にいるんだよ」

フラット「どういうことですか⁉︎」

フラットは目を大きく見開いてペーターに顔を近づける。

ペーター「…女神って知っているかい?」

フラット「…女神?」

ペーター「神の血を引く者には女神が宿っていると

神話に記されている。君には条件が揃っているんだ。

戦闘モードに入った時に映る紋章」

フラット「えぇっ⁉︎でも僕の体には紋章なんて!」

ペーター「いや、浮かび上がってはいるんだ。

天秤のマークが」

フラット「天秤…でも、それが?」

ペーター「紋章を宿すのはたしかに君だけど、

女神には初めから宿っていて、神力を抑える女神の紋章が

光り輝いて浮かび上がるんだ」

フラット「でも、会ったことも!」

ペーター「今じゃ、神を信仰する人はいないに等しいからね。

女神も君の前に姿を現せる力もないんだろう」

フラット「なるほど…」

ペーター「だから、本物のテミス様に会って

紋章を貰わないとね」

フラット「…でも、どうやってノールは神力を…」

ノール「バルシアを見つけたから」

フラット「ノール⁉︎」

ノール「フラットは聞いたんでしょ?私がキルユウに

フラれたこと。それで公園にいたらバルシアの声に似た

魔獣を見つけて…私が…この手で……また…家族を…!」

フラット「あ、ノール!」

勢いで駆け出したノールをフラットが追いかける。


外ー

フラット「ノール…?」

キルユウ「悪かった!俺が…間違ってた。フラットに

喝を入れられて…ノールの気持ち、考えてなかった。

俺の勝手なワガママというか…欲で…お前を傷つけた。

本当に…謝っても謝りきれないとは分かってる!」

ノール「もう…そんなのどうでもいい。私…また…

この手で…!」

キルユウ「…ノール…」

(クソ…!なんて言えばいいんだ!)

フラット「ううん、魔獣になってしまった以上、

もう生きて取り戻せはしない。だから…ね」

ノール「それでも私は!最低な方法で…

大切な弟を…!」

フラット「キルユウがいるでしょ?それに、僕達も。

家族みたいに思ってくれていいって前にも言ったでしょ?」

ノール「それでも私は殺したんだ!分からない⁉︎」

フラット「ノール…また神力なくなっちゃうよ?」

ノール「それは…でも、誰かを傷つけるこんな力なんか

やっぱりいらない!」

キルユウ「⁉︎」

フラット「それは…」

キルユウ「お前、どの口が言ってやがる⁉︎」

ノール「えっ」

キルユウ「俺達がマフィアにいた時に言ったこと、

忘れたのか⁉︎」

ノール「私が…2人に言ったこと…」


7年前ー

ノール「私の力があれば、人を殺したようにも見せられる。

お前達も私も殺しはしなくて済む。ウィンウィンだろ?」


キルユウ「そんなこと、言っただろ!誰かを傷つけても

命さえ守れるなら手段は選ばねぇともな!」

ノール「それは…」

キルユウ「それに、助けることもできねぇやつを、

どうやって救う気だ⁉︎たしかにやり方は無慈悲といえども、

バルシアは笑ってた!それでも不満か⁉︎」

ノール「…それは……」

フラット「ノール、大丈夫。何もノールは悪くない。

でも、闇帝様って口ずさんだのは気になったけど」

ノール「えっ…私、そんなこと…?」

フラット「えっ、覚えてないの⁈」

ペーター「おい、今、闇帝と言ったか⁉︎」

フラット「えっ…はい」

ペーター「闇帝……まさか…」

フラット「何か知ってるんですか⁉︎」

ペーター「闇帝…第5次神魔戦争の魔軍の大将が

そう名乗っていた。正体は不明のまま、

行方をくらました。もしもその闇帝なら…

神の力を得られたとしても倒せない」

フラット「えっ⁉︎」


2節 謎に満ちた敵意


ペーター「闇帝は闇の中のさらに奥に潜む者と言っても

過言ではない存在。魔獣もこれまで以上に溢れ出し、

地球全体が混沌におちいる」

フラット「闇帝って…そんな!」

ペーター「本物かどうかは定かじゃないが…

ノールの神力を暴走させたのはやつの仕業かもな」

ノール「…だったら…許さない!私の力を

汚した罪、他でもない私が!」

フラット「よし!やろう!」

ペーター「ダメだ」

フラット「えっ、ダメって…」

ペーター「フラット君やスラリアならまだしも、

他のメンバーはまだ神から紋章を貰っていない。

戦力が圧倒的に足りない」

ノール「…そうか。でも、私の力はこの世界にはないし…」

ペーター「いや、ないことはない。ただ…

あそこは神像の正体が不明な物が多すぎて、

何がなんなのかな…」

フラット「じゃあ、ペーターさんは神像の調査を

任せてもいいですか?」

ペーター「分かった、じゃあフラット君達は

引き続き、他の隊員の紋章を」

フラット「了解です。ノール、今日はゆっくり休んで。

気を落ち着かせないと」

ノール「…ありがと、おかげで少し楽になった」

キルユウ「あ、先に帰っててくれ。フラットの話が」

フラット「えっ…僕に?」


キルユウ「お前、凄いよな。俺、あんなノールに

なんて言えばいいのか分からなくって…」

フラット「…ううん、僕も嘘ついてるし」

キルユウ「嘘…?」

フラット「魔獣になった人は助けられないかどうかは、

僕にも分からないし…」

キルユウ「そうか…でも、嘘だったとしても

ノールの求める答えをあっさりと口にできたんだ。

俺は…何も…アイツのボーイフレンドだぜ?

頼りねぇよな、こんなの」

フラット「だから、頼りきれる存在=彼氏って

わけじゃないってば。まあ…大抵はそうだけど、

例外だってあったっていいと思うよ?ただ大好きな人。

それが愛人にとって最低限のことなんだからさ」

キルユウ「!」

フラット「だってそうでしょ?頼りになるから

愛人じゃ、ちょっとね」

キルユウ「…本当、お前は羨ましいな。俺が

求めていた答えまで見透かして…」

フラット「だから買い被りすぎだって。僕はこういうの、

昔っから得意なんだ。へへっ」

キルユウ「得意…か。得意すぎだろ」

フラット「よく言われる」

キルユウ「…ぷっ…アハハハ!」

フラット「アハハハ!」

2人の笑い声が真夜中の公園に響き渡った。ことのつまりー

「ウルセェ〜!今何時だと思ってる⁉︎」

フラット「げっ…す、すみません!」

キルユウ「静かにします!」

フラット「さっ、帰ろ!」

2人はそそくさと家に戻って行った。


フラット「ただいま〜…」

エド「……」

フラット「あれ、もう寝ちゃってたか。

じゃ、僕も寝よっと。ふわぁ〜…」

エド「ムにゃ…フラットは優しいっす〜…」

フラット「…っはは、可愛い寝言。バトラーも

同じようなこと言ってたっけ」


翌朝ー

ペーター「…ということだ」

クレア「つまり、俺達は神から紋章を貰うだけでいいのか!」

ペーター「だが、闇帝と名乗るやつもバカじゃない。

君達が向かう教会を全て破壊しようとするだろう」

エド「じゃあ、もしかしたら今いるファイター分の紋章を

得られる可能性は低いってわけっすか⁉︎」

ペーター「敵の手駒がいくつあるかまでは予測できないが

動きを表で見せないということは、真っ向勝負できるほどの

戦力はまだないということになる」

ノール「もしくは、そう思わせるためのトラップ、

そうとも考えられる」

スター「ねぇ、紋章が貰えないかもなら

急いで行こうよ!」

ペーター「早速で悪いが、神界に続く神像を

探してもらいたい。数が多すぎて特定ができなくてな」

フラット「数って…そんなに多いの?」

クレア「何でも、レプリカを飾る所が多いらしい。

スラの時は偶然…?」

ペーター「いや、正式な死神家の神像だ。

つまり、ちゃんと家系図が分かっていたから

スラリアの紋章は楽に手に入ったが…

他のはそうともいかない。ゴールド家は神の家柄ではない。

母型の苗字が何か分かれば…」

スター「リューテだよ。ママ、そう言ってた」

ペーター「リューテ…?聞いたことがない…

まさか、神の姓がもう存在してない…?」

フラット「あの…僕のは?」

ペーター「あ…それは…その…」

フラット「あの!そういうのは秘密にしなくていいですから!」

ペーター「いや…テミス像はもう存在しないんだ。

だが…フラット君なら神界に行かずとも、

紋章を宿せるはずだ」

フラット「…ペーターさん、僕の神力の何を

知っているんですか?」

ペーター「女神を復活させれば、ね」

スター「女神…?」

クレア「おいおい、いる…のか。そう考えると、

その神力の高さ、あの天秤の光…そうだったのか」

スラリア「じゃあ…フラットが1番難しいんだ。

今の時代じゃ、女神に必要な信仰なんて…」

ペーター「いや、神から信仰を貰えばいい」

スラリア「そっか!そうすれば信仰なんて!」

ノール「まあ…だが、タナトスはどうする?

また行くのか?」

ペーター「…スラリア、君が信仰してみてくれ」

スラリア「えっ?」

ペーター「試してほしい」

スラリア「わ、分かりました。でも、どうやって?」

ペーター「こうだ。私は神の血を引きしこの者を

信仰すると固く誓います、と言うだけだ」

スラリア「はぁ…」

ペーター「あっ、紋章を使ってね」

スラリア「やってみます。紋章よ、光を見せよ。

私は神の血を引きしこの者を信仰すると固く誓います」

フラット「……えっ?」

ペーター「何か感じたかい?」

フラット「右の手の甲…微かに」

ペーター「…右手の甲…やっぱりそこか…」

クレア「やっぱりって…何か知ってんのか⁈」

ペーター「いや、ダンステードからそういう話、

よく聞かされたからね」

スラリア「…ペーターさん、ホコリついてますよ」

スラリアはそう言ってペーターのもとに寄る。

ペーター「?ホコリなんて…」

スラリア「どうして隠すんですか?あのこと…」

ペーター「だから、フラット君には必要性のカケラもない話なんだ。

それに…今のあの子にとっては絶望でしかない話でもある」

スラリア「だったら尚更ー」

ペーター「ダメだ。いつどのタイミングで言っても、

彼を絶望させ、再び独裁フラットにしてしまうのは

目に見えている」

スラリア「えぇっ⁉︎そんなにマズイ情報なんですか⁉︎」

ペーター「…タナトスから聞いているなら、

細かいことも教えておこう。こっちに来てくれ」

スラリア「は、はい」

ペーター「すまん、スラリアに特別な仕事を

与えてるから、あとの作戦会議はフラット君を中心に

進めておいてくれ」

全員「はい」


小会議室ー

ペーター「…フラット君は第5次神魔戦争の時に生まれた

法の天使であることは覚えているよね」

スラリア「はい、タナトス様からそう聞いています」

ペーター「…実は、彼はテミス様を人工的に

宿っている。魂を実体として機能させる重要な臓器、

心臓の中に」

スラリア「えっ、それってどういうことですか⁉︎」

ペーター「彼を助けるための手段だった。

元々、フラット君は普通の人間だった。だが、

人を笑わせ導く才に長けていた。そんな彼を

病が侵した。しかし時代が時代であったために、

彼を死なすわけにもいかず、法の神であるテミスを

彼の中に封じた。もちろん、テミスの断りを得て。

そして、彼は救われた。だが、それは禁忌に当たる。

彼は追われる身になった」

スラリア「それで…どうなったんですか⁉︎」

ペーター「俺が彼を救った。俺が禁忌を犯して」

スラリア「…禁忌を犯して…?」

ペーター「俺は時の神の1人、季節の神。

時を超えて未来へ彼を導いた。記憶も改竄した。

だから俺は神力を失いかけている」

スラリア「でも…それは誰も悪くないんじゃ…」

ペーター「いや、話はこれからが本題だ。

実は、彼を追っていたのは魔族だったんだ。

そして、彼の病も魔族の仕業」

スラリア「!じゃあ…まさか全部…」

ペーター「そう、魔族の計算だったわけだ。

そしてこの計算を企てたのは、今我々と対峙しているー」

スラリア「ベリアルってわけですか?」

ペーター「そうだ。だから絶対に手を抜かないでもらいたい。

闇帝と手を組まれでもしたら第6次神魔戦争が

起こっても不思議ではない」

スラリア「いや…手は組まないかと」

ペーター「?どうしてそう思うんだい?」

スラリア「闇帝は目的は違えど、あたし達と同じく

やつらを倒すと言っていました。なので…」

ペーター「闇帝が…手を組まない…?じゃあ、

一体何が目的で魔獣を…」

スラリア「…それで、あたしにどんな仕事を?」

ペーター「えっ…」

スラリア「あるんでしょ?」

ペーター「あ、あぁ…君も勘が鋭くなったね」

スラリア「えへへ…で?」

ペーター「あぁ、神器の力を極めてもらいたい。

今なら封印された力もある程度は使えるはずだ」

スラリア「はい、了解しました。それでは…お話、

ありがとうございました」

ペーター「決して彼には言うなよ」

スラリア「心に固く刻んでおきます」

ペーター「じゃあ、よろしく頼む」

スラリア「では、失礼します」

スラリアは小会議室から出ていった。

ペーター「…カナリア、すまんな。君との約束、

守れなかったよ…でも、フラット君は君を

覚えているのかもしれないな」


オフィスー

クレア「へぇ、封印されてた神力を」

ノール「お嬢様には難しい芸当かもな」

スラリア「そんなことないよ。もう、ノーちゃんは」

ノール「ノ、ノーちゃん⁉︎」

スラリア「えっ?可愛いでしょ?」

フラット「なんか…ノーチャンスみたい」

ノール「フラットもそう思ったか!」

スラリア「フラくんも酷〜い!」

フラット「へ、フラくん⁉︎」

ペーター「おや、早速。それはタナトスの癖だよ」

エド「癖…っすか⁉︎」

ペーター「軽々しく話せるように、安易なあだ名をつけて

人と接する。クレアみたいに人の性格からじゃなく、

名前からだけどね」

クレア「一言余計だ」

ペーター「とにかく、俺が情報を掴むまでは通常通りで

お願いするよ。何か異変が起こったら向かう形で」

フラット「了解しました。それじゃ、見つかるまでは

前に中止したイベントをやろう!」

全員「おーっ!」


ヒナ「あっ、おーい!」

フラット「ヒナちゃん!久々だね。遠隔講義はどうだった?」

ヒナ「問題なし!逆に解放感あって全然ストレスなく

講義受けられて無問題もうまんたい!」

タクマ「…なぁ、ダバのやつ、どうしちまったんだ?」

フラット「神力が弱まり始めて、弟のいる宇宙船に戻って

弟とまた生活するって」

タクマ「そうだとしても、俺達には挨拶なしで

別れられるんだ!」

フラット「…多分、挨拶してたと思うよ?

ダバンゴのことだから…手紙とかはないけどね」

ヒナ「何だ、まだ気付いてなかったんだ。

はいこれ。ダバ君のくれた暗号」

ヒナはフラットにとある暗号が書かれた紙を渡した。

フラット「ん?え〜っと…」

[陽出づる所を西から見よ。その言葉を答えよ]

フラット「…あぁ、そういうこと」

タクマ「それが何だよ?」

フラット「陽が出てる所を西から見たら?」

タクマ「んなの、どっからどう見ても

昇ってんだろ?」

フラット「地球平面説ならね、でも地球は球体。

西なんて自分のいる場所から見たらどこまでも西。

ダバンゴ、言ってたじゃん」


ダバンゴ「西…?それだけじゃ分かんねぇよ。

東も見方によっちゃ西になるんだぜ」


タクマ「…ってことは…東から見ろ…?」

フラット「それじゃ行き過ぎ。もう、種明かししていい?」

ヒナ「そうだね、これじゃあー」

タクマ「いいや!そのメッセージ、是が非でも

俺が解いてやらぁ!」

クレア「おっ、偶然。今から大学か?」

フラット「うん…ん?」

クレアを見たフラットはニタァと不気味な笑みを浮かべた。

クレア「な、何だよ…気持ち悪りぃ」

フラット「この暗号、どう解く?」

クレア「ん〜…?陽出づる所を西から見よ?

西から陽が昇る所を見ると…そうだな…どうなる…

あ!そうか!星、星がまだある…ってあれ?」

既に辺りには誰もいなかった。

クレア「え…ハァァ⁉︎さ、三時間も経ってたのか⁉︎」


フラット「あのバカに見せたのがバカだった」

ヒナ「酷い言われだね、フラットから吹っ掛けた話なのに」

タクマ「ダメだ、全然解けねぇ!第一、あれが暗号か⁉︎

ただの謎かけじゃねぇか!」

フラット「暗号ってそういうものだと思うけど?

まあ、この暗号は、たしかに宇宙を旅しないと

分かんないかも」

タクマ「お前だって宇宙を旅してないだろうが!

それに何だ?地球とかガスペラス星にはいない、

他の惑星の生物の名前を表してるのか?

んなの解けっこねぇ!」

フラット「全然違う」

ヒナ「じゃあヒント!東で朝陽を見ると見えないけど

西からなら見えるもの!」

フラット「それに挨拶があるよ。僕もエドから聞くまで

知らなかったよ、まさかあれにそんな意味があるなんてね」

タクマ「くっそ〜!全然分かんねぇ!」

ヒナ「こりゃ当分ダメそうだね。頭の硬いタクマじゃ、

答えが出る前に死んじゃうかも」

タクマ「俺が死ぬわけねぇだろ!」

ヒナ「あら?そういうこと言うと、大抵漫画だと

真っ先に死んじゃうんだよ?」

タクマ「何言ってんだ、漫画の世界じゃねぇんだぜ、ここは」

ヒナ「冗談だよもう。まあ、信じてるから。タクマが

そんな簡単に死ぬわけないってね!」

タクマ「っ!や、やめろよこんな所でそんなセリフ…」

少し照れくさそうな表情を見せるタクマ。しかしー

バジー「あら?ごきげんよう」

フラット「あ、こんにちわ、バジー」

ヒナ「教授ならこの暗号、分かりますよね」

バジー「暗号…?私、そういうの苦手でして…」

タクマ「教授、星に詳しいか⁉︎」

バジー「星…?望遠鏡で見るあれですよね?

申し訳ございません、私、天文学は…」

バジー「そっか…あ!星に詳しい人、知らない?」

フラット「さっき悩みに悩んでたクレアがそうだけど…

星の神を母親に持ってるからそれは反則。

エドなら知識だけだし頼ってもいいかも」

タクマ「よし、行かせてもらう!」

フラット「あっ、今日はエド、大学行ってるから…

帰りを待ってた方が…」

タクマ「何言ってんだよ。突撃すればいいだろ?」

フラット「…怒られても知らないよ」


数十分後、銀座大学ー

教授「こら!他校の生徒が勝手にキャンパス内に

入るとは、なんたることだ!」

エド「あ、あの俺に用事って何すか?

ヒナ姫まで…俺は俺で嬉しいっすけど」

教授「エド、君は部室で待ってろと」

エド「気になったんすもん。まあ、許してほしいっす。

わざわざ有名俳優が地球に戻ってきてすぐ、

俺に会いにきてくれたんすから。大丈夫、俺が責任取るっすから!」

教授「本当だな、今の言葉、忘れるなよ」

エド「お任せあれっす!俺がいれば、問題なんて

1つも起こさせやしないっすよ!」


タクマ「助かった〜!恩にきる!」

ヒナ「それにしても、エド君がまさか銀大に

通ってる生徒なんてビックリしたよ。

私も理系のとこに行きたかったなぁ」

タクマ「お前は生物学さえ学べればどこでもいいって

ゴンさんに頼んでたくせに」

ヒナ「タクマ!それは秘密にしておいてよ!」

エド「で、わざわざ俺に会いに来た理由は何すか?」

タクマ「あぁ、フラットからエドは星に詳しいって聞いてな。

西の星といえばなんだ?」

エド「……ぷっ!アハハハ!知らないんすか?常識っすよ?」

タクマ「うぐっ!常識⁉︎」

ヒナ「エド君、その星じゃないよ」

エド「えっ、明星じゃないんすか?」

ヒナ「ダメそうだね、エド君でも。まあ、こうなったら

タクマが答えに辿り着くまで気長に待つしかないね」


フラット「結局振り出しに戻ってきたと」

ヒナ「こんなんじゃ、何日経つか分かんないよ〜」

タクマ「星……ネットにもいい情報がねぇ〜!

くっそー!何でフラットは分かったんだよ!」

フラット「クレアの知識から引っ張り出したんだよ。

だってクレア、ヒントなしで星ってことには

気付いてたみたいだし」

フラットはクレアから

[答えは星だろ?]

と書かれ、届いたメールを2人に見せた。

ヒナ「私もノーヒントで星とは分かったよ?」

フラット「そっか。って、忘れてた!タクマ、ヒナちゃん!

帰ってきたと聞いてお願いがあったんだよ!

イベントに出てくれない?」

ヒナ「あぁ、用事ってそれだったんだ!どうしよっかな〜?

収録も終わったし…タクマはどうする?」

タクマ「ん〜…」

フラット「これは聞こえてないね。しょうがない、

僕達だけでやるとー」

ヒナ「それで何やるの⁈」

フラット「えっ、やるの⁈」

ヒナ「もっちろん!私はオファーを断らない

アイドルってこと、忘れてたの?」

フラット「アハハ、そうだったね。で、やるのは

今回は初めてのコンテスト!自分の得意分野で

ショーを披露するんだ!」

ヒナ「あ!私、そういうのやってみたかったんだ!」

フラット「タクマはいいの?」

ヒナ「この調子じゃ、暗号が解けるまで梃子てこでも

動きそうにないからね」

フラット「じゃあ細かい話はデ・ロワーで」

ヒナ「うん!」


デ・ロワー、食堂ー

スラリア「ヒナちゃんも参加してくれるんだ!

ペアは大丈夫なの?タッグ制だけど…」

ヒナ「えぇ⁉︎そうなの⁈」

フラット「スラリア、話聞いてた?タッグ制も可能って

言ったはずだけど?」

スター「そうだよ。それにスターは参加できないよ?

吹奏楽部でコンテストだし」

クレア「ってなると…参加できるのは俺とフラット、

ノールにエド、それとゲスト参加でヒナちゃんか」

ノール「なら5人…タッグ制はやめだ方がいいな…?

このパスタ、美味いな」

フラット「そう⁈失敗したと思ったんだけど…」

ヒナ「えっ、これフラットが作ったの⁈お願い、

料理教えて!私、料理てんでダメだから!」

フラット「教えてって…言われてもなぁ…」

クレア「ダメダメ、コイツ教えんのド下手だからよ」

フラット「うっ…反論できないのが悔しい」

ヒナ「教えてもらわなくてもいいよ!私、見ながらでも

覚えられるから」

フラット「そう?じゃあ、今日の晩ごはんも食堂で

食べるとして、一緒に料理すればいい?」

ヒナ「うん!大賛成!」

エド「あ、ここにいたんすね。って、えっ⁉︎

ヒナ姫⁉︎な、何の用でこちらに⁈」

フラット「何で軽く敬語口調?ヒナちゃんは

来週からのコンテストイベントに参加したいってことで

打ち合わせで来てるだけだよ」

エド「コンテスト…あぁ、あれっすね!

すっかり忘れてたっす」

フラット「忘れてないでよ。で…タクマは?」

エド「えっ?そういえば見かけてないっすね」

ヒナ「あ、多分帰ってるか図書館でしょ。星について

調べれば答えが分かるとか言ってたし」

フラット「そっか。じゃ、打ち合わせは終了でいい?

分からない点があったら答えるけど」

スラリア「特にないよ」

クレア「俺も気になる点はない」

ノール「企画の詳細は問題ない」

スター「いいなぁ、大勢の前で大舞台…」

ヒナ「スターちゃんも大勢の前で合奏コンクールでしょ?」

スター「違うよ!審査員の前だから4、5人だよ!」

ヒナ「そ、そっか。でも、部員の皆がいるから

大丈夫!安心して演奏してね」

スター「うん、そのつもり!」

ケーベス「フラット」

フラット「?あ、ケーベス」

ケーベス「メダイが呼んでたぞ」

フラット「メダイが?分かった。じゃあ今日は

これで打ち合わせ終了。各自、コンテストに向けて

特訓しとくように」

全員「はい!」


地下格納庫ー

メダイ「見て見て!スパークフラッシュ号が

完璧に直ったよ!これも私の活躍のおかげ!」

フラット「自分で褒めない方がいいよ。にしても、

凄い…あれだけボコボコだったのに」

コータス「たしかに酷い有様だったが、

メダイが材料全部揃えてくれてな。

助かったぞ、ありがとさん」

メダイ「私にかかればこんなもん!でも、

爪がボロボロだけど…」

フラット「うわっ、何その爪⁉︎」

メダイの爪は岩を引っ掻いたと思われるぐらい

ヒビが入っていたり、剥がれていた。

フラット「大丈夫…じゃないよね。医務室行くよ」

メダイ「えっ…?」

フラット「当たり前でしょ!メダイも女の子なんだから

爪は綺麗にしとかないと」

メダイ「…私のこと、普通の女の子って見てくれるの?」

フラット「へ?違う?」

メダイ「…ううん、何でもない。ありがと…」

少し顔を赤くしてうつむくメダイ。

フラット「ほら、行くよ」

メダイ「う、うん!」

メダイはフラットに左手を無意識に委ねて

医務室に連れて行かれた。

ケーベス「へぇ…メダイも恋するんだ」

コータス「そりゃそうだ。生きてるうち、

恋しないやつなんかこの世にいねぇよ」

ケーベス「そうだな。そうかもしれない」

寂しそうにコータスにも聞こえないぐらいの声で

そうケーベスは呟いた。


フラット「はい、これでバイ菌も入んないね。

絆創膏剥がす時はスターにでも声かけて」

メダイ「…フラットって本当に変わったよね。

私、少しビックリだよ」

フラット「だ、だからあの時は…どうかしてたんだって。

あんな過去、捨てたいくらい」

メダイ「いいと思うよ。法に縛られたフラットが

いなかったら、今のフラットはいないもん」

フラット「メダイ…」

メダイ「私、今のフラットのこと、少し好きに

なっちゃった!」

フラット「えっ⁉︎」

急に好きと言われ、フラットは椅子がガタッと

音を立てるほど飛び跳ねた。

メダイ「アッハハ!やっぱり今のフラットって

可愛くなったよね!昔のフラットじゃ、

絶対見せなかったよ、その表情」

フラット「昔昔って、そんなに比較しなくたって…」

メダイ「あ、いじけちゃった?」

(でもね…)

フラット「そんなことないもん!」

メダイ(私のいう昔は、フラットも知らない昔だよ)

フラット「メダイ?何急に黙り込んで…

もしかして痛むの⁈」

メダイ「…フフッ!フラットに心配させてみたかっただけ!」

フラット「…はぁ」

メダイ「で?さっきの答えはyes?no?」

フラット「…そうだなぁ…ごめん、今は保留でもいい?

だって今は…」

メダイ「…今は?」

フラット「やらなきゃいけない事が山積みだからね」

メダイ「それもそうだね。じゃあ答えはそれが全部片付いてから

聞くことにしよっと」

フラット「それじゃ死亡フラグだよ」

メダイ「私は龍神だよ?焼かれても、氷漬けにされても

すぐには死なないもん」

フラット「…まあ確かに」

メダイ「それよりもフラットが心配だよ。

いつも無茶ばっかだから」

フラット「たしかに。ちょっとバトラーに

影響されちゃったかな?」

メダイ「そうかもね。あ、もう私次の仕事に

行かないと!じゃ!」

フラット「うん!」

メダイは医務室から駆けて出て行こうとする。その去り際にー

フラット「メダイ!」

メダイ「?何?」

フラット「来週、絶対見てよ」

メダイ「…イベントだね!分かってる!」

フラット「うん、それじゃ、行ってらっしゃい」

メダイ「うん、行ってきます!」


3節 夢見る者


ペーター「カナリア…闇帝だとよ。この時代でも

神魔戦争が起きそうだ。フラット君のことは

俺が何としてでも守るから」


翌日、浅草大学寮にてー

フラット「あれ?この辺にウォッチフォンを

置いておいたはずなんだけど…エド、知らない?」

エド「それならデ・ロワーで充電しっ放しだったっすよ」

フラット「えぇっ⁉︎分かってたなら持ってきてよ!」

エド「え〜、だって今日もデ・ロワーに寄るっすよね?

コンテストイベントも浅草でやるんすから」

フラット「そうだけど…」

ピンポーン!

ノール「いるだろ?早く行くぞ。私も急いでるんだ」

フラット「あ、ありがとう!今行くから!」

エド「フラット⁉︎パジャマのまんまっすよ⁉︎」

フラット「えっ、あっ!」

慌てて玄関前でターンするも、足を滑らせ石造りの床に

フラットは強く頭を打つ。


フラット「…あれ?ここ…さっき滑って…?」

茶髪女性「全く、何をしている!心の慌ては

己を危機に近づけるだけ」

フラット「えっ、あなたは…?」

茶髪女性「やっと会えたぞ。何だこの世界は。

誰も神を信仰しておらんとは!」

フラット「…もしかして…女神様⁉︎」

女神「察しが悪い。全く、何でわしという者が

このような若造に力を貸さなきゃならん」

フラット「あの〜…で、僕は?」

女神「頭を強く打って死と生の境だ。どうしたものか…」

フラット「でも、姿を現せたってことは…」

女神「タナトスのやつが他の神にも信仰させておいて

くれたみたいでな。お前の右手の甲、見てみな」

フラット「えっ、半分くらい出来てる⁉︎」

女神「それで限界みたいだがな。後はお前次第だ。

若造にわしの力を扱えるとは到底思えんけどな」

フラット「な、なんか上から目線な女神様だなぁ」

女神「それより刻が来たようだ。お主はもうすぐ

目を覚ますはずだ」

フラット「うん、もう慣れてる。こんな風に

目の前が暗くなって、気付いたらー」


医務室ー

フラット「こんな風に目を覚ますと」

クレア「はぁ⁉︎お前、大丈夫か?」

ノール「頭打ってバカにでもなった?」

フラット「あっ…いや…何でも」

エド「慌てるからそうなるんすよ。それにしても、

あんな派手に頭打ってタンコブ1つって、

どんだけ石頭なんすか?」

スラリア「余命は見えてなかったから

心配はしてなかったけどね」

フラット「それはそれで嫌なんだけど…」

クレア「うなされてる感じもなかったしな。

先生も異常なしって言ってたし大丈夫だろ」

スラリア「じゃあ、イベントに出向こう!

コンテストなんて久しぶりで楽しみだよ!」

ノール「…平和だな」

エド「そうっすね〜、何事も平和が1番っす」

フラット「…アッハハ、たしかに。じゃ、僕も

イベントの方に行こ〜っと」

クレア「よし、俺も行くとするか」

スラリア「うん、レッツゴー!」


浅草公園ー

ヒナ「やっと来た。私が1番最初に着いてたんだもん」

フラット「今回は僕のせいだね」

ヒナ「?」

ノール「いや、フラットが朝、玄関ですっ転んで」

クレア「おかげで集合時間が30分も遅れた」

ヒナ「え〜⁉︎大丈夫なの⁈参加できるの⁈」

フラット「うん、問題ないよ」

エド「タンコブで済んだっすから」

ヒナ「バケモノ級の石頭だね怖い怖い」

スラリア「だよね〜、ヒナちゃんも分かるね〜!」

バジー「皆様、準備は終わったのですか?」

フラット「……あっ」

ノール「全然進んでない!」

クレア「フラット、頼む」

フラット「ハイハイ、チャチャっと終わらせちゃうね。

それじゃあー」

女神「お前、それで良いか?」

フラット「えっ…ちょ、どこ?」

女神「お前の後ろだ。全く」

フラットの肩に女神が乗っかっていた。

フラット「えっ⁉︎大丈夫⁉︎これ」

女神「何がだ?わしがお前の中にずっといろと?

そんなつまらんことをわしにしろと?」

フラット「…それより、自己紹介してほしいんだけど。

いちいち女神様って呼ぶのも、ねぇ」

女神「お前、わしに対しては冷たいのう」

クレア「なぁ、フラット…⁉︎なっ、お前、妹いたのか⁈」

フラット「だ、だから言ったでしょ⁈」

女神「この際だ、自己紹介ついでにわしの力も

見せつけておこうぞ!わしの名は女神フォルディン。

さぁ、張り切らせてもらう!

神業・パーフェクトクリエイティブ!」

一瞬で舞台のセットが出来上がった。

フラット「この舞台……凄い、いつも通りの!」

フォルディン「見たか、わしの力!」

クレア「フラット、誰だソイツ?」

フラット「いや…えっと…」


全員「え〜っ⁉︎」

スラリア「ウッソ⁉︎女神⁉︎」

フラット「うん…そう…みたい。こんなのが女神って

笑っちゃうよね」

フォルディン「お前、失礼にもほどがあるぞ!」

ノール「…なんか馴れ馴れしすぎない?」

クレア「あぁ…俺達より親しいというか…なぁ」

エド「女神様に対してその態度はどうかと思うっす」

フォルディン「いくらわしの主人とはいえ、

わしも怒る時は怒るぞ!」

フラット「なんかどっかで会ったことが……!

そうだ、シャリー!」

ノール「言われてみれば…顔はそっくりだ」

スラリア「偶然じゃないの?世界には同じような顔の人が

最低でも3人いるって言うし」

エド「まあ、髪の色も目の色も違うっすもん」

フラット「だ、だよね」

クレア「でも、アイツら何やってんだろうな。

最近連絡もねぇし…」

フラット「あ、それなら大丈夫。おととい連絡しといた」

スラリア「えっ⁉︎まさかランケールに⁈」

フラット「うん、ちょうど暇だからって」

スラリア「…気をつけて。ランケールって、魔族だから」

フラット「分かってるよ、だから4人で呼んだんだし」

ノール「知ってるって…どういうこと?」

フラット「僕のあの42年間を消去した時、

微かに魔力を感じた」

フォルディン「あやつの魔力には悪意などは

何も感じなかった。にしても…暇じゃ。

何かないのか?」

フラット「ないよ!悪かったね!」

フォルディン「ならわしは寝るとするか。退屈凌ぎも

なさそうだしな。それでは」

クレア「待て待て。フラット、嘘つくなよ。

今日は神業の美しさを披露するー」

フラット「ストーップ!」

フォルディン「…神業の美しさ…?」

フラット「気にしないでいいから!ね!寝てていいから!」

フォルディン「…何か隠しておるな?」

フラット「い、いや…だってお前嫌いだろ!」

全員「!」

スラリア「お前って…!」

フラット「えっ…あれ、何だ今の記憶…?」

ノール「記憶…?」

フラット「ううん、何でも…」

フォルディン「お前……!そうか思い出したぞ!

カナリアの養子だったフラットじゃ!」

スラリア「!フォルディン様、ちょっと!」

スラリアは話を遮るようにフォルディンの手を引いていく。


フォルディン「何じゃお前は!」

スラリア「とにかくダメなんです!フラットの前で

その話は厳禁なんです!」

フォルディン「何か訳ありなのか?」

スラリア「…ペーターさんに止められてて…」

フォルディン「ほう、ペーターか!久しいなぁ、

やつは生きておったか!」

スラリア「…やっぱり、知り合ってるんですね…

教えてください!神を封じてる神像が

どこにあるのか!」

フォルディン「そんなことわしに尋ねられても

困るわ!わしだってあの若造と共に時代を

超えてるのじゃ!わしが知るわけなかろう!」

スラリア「…そうですよね。あ、自己紹介が

遅れました、あたしはー」

フォルディン「知っておる、スラリアじゃろ?

若造の記憶はわしと同化しておる」

スラリア「なんだ、それならー」

フォルディン「そのせいで、わしの記憶も

抜け落ちたがな」

スラリア「えっ…どういうことですか⁉︎」

フォルディン「女神は天使の一生を記録するものじゃ。

その記憶の根本を消すという非道な策のせいで

若造の記憶はビリビリに破かれた上にクシャクシャにされた

紙切れ同然のものになってしもうた!そのせいで、

わしが記録していた一生が所々消えてしもうた!

だからあの若造のことも忘れてしまったというわけじゃ」

スラリア「…あの…フラットとは?」

フォルディン「…もしや…妬いておるのか?」

スラリア「なっ、違っ…そうじゃなくて、

なんか友達って感じがして…」

フォルディン「…お主、見る目があるのう。

そうだ、わしはあの者とよく遊んだものじゃ。

あの若造がまだ幼かった頃だったのう…」

スラリア「へぇ、フラットの幼少期か…どんな感じだったんですか?」

フォルディン「それはもう何とも言えぬほど

可愛らしかったのう、わしでさえニヤけてしまったわい」

スラリア「ふぅん…女神様さえ惚れた…って、

もうこんな時間⁉︎ごめんなさい、あたし、

そろそろ行かないと!」

フォルディン「そうじゃった、お主、今から

何をするのだ?」

スラリア「何って…フラットの記憶と同化してるなら

分かるかと思いますけど…」

フォルディン「あの者の記憶は、時にわしを

ブロックするようにできておるのじゃ!

あの若造、わしの存在を知らぬのに何故そのような真似が

できるのか、今でも謎めいておるわ」

スラリア「プライバシーの保護…フラットらしいか!

じゃあ一応教えておくね。今から神力を

美しく演技するんだ!」

フォルディン「なっ…そんなこと、させぬぞ!」

フラット「は〜いはい、フォルディンは黙ってて。

見てれば分かるから、どんなものか」

スラリア「フラット⁉︎」

フラット「探してたんだよ?あ、フォルディンは

舞台袖から見ててよ?昔の神業とは大違いなんだから」

スラリア「昔の神業…?」


イベント開始時刻ー

フラット「レディース、アーンド、ジェントルメン!

只今からコンテストイベントを開始いたします!

オープニングを彩るのは、今回のイベント発案を

担当していただいたこのお2人!」

マドール「ド派手に決めるわよ、アスカちゃん!」

アスカ「はい!オンステージ!マジックショーが

始まるよ!アン、ドゥー、トロワ!」

アスカが空中に投げたデッキ棒が2本に増え、

さらに4本、8本となった。

マドール「私の炎を纏う糸で絡み取ってみせるわ!

第一裁縫『炎』術・『燃焼蛛糸』!」

マドールの燃えたぎる糸が空中の8本のデッキ棒を

ハート状に絡み取る。

アスカ「フィナーレに、ドドンと1発!」

アスカの指パッチンを合図に、デッキ棒が

一つずつ花火のように爆発した、青空の中に、

綺麗な七色の光が咲いた。

アスカ&マドール「フィニッシュ!」

フラット「オープニングセレモニーは

これにて終了とさせていただきます。それでは早速、

メインセレモニー!最初のチャレンジャーは、

風を纏いしファイター、『カインドウィンド』!」

クレア「っしゃあ!レッツコンサルト!

風よ…神業・カマイタチ!」

辺りの枯葉が散り散りになった。

クレア「そして、神業・旋風!」

散り散りになった枯葉が一斉に旋風の中で舞う。

目には見えない旋風が黄色や茶色に染まり、

春の訪れる前ならではの色彩で観客を魅了した。

フォルディン「…ほう。たしかに…昔とは大違いだな。

ただの殺しの道具だったあの頃とはな」

フラット「え〜っと…平均点は72.2!」

クレア「なっ…思ったほど高くなかった…」

フラット「じゃあ次!ゲスト参加で、綾川ヒナちゃんの

スペシャルショーをお送りします!」

ヒナ「ポップポップアイドル綾川ヒナ、行っきまーす!

皆さーん!最後まで私のダンスを見てね!

第一舞踏『光』術・『シャイニングフラップ』!」

フラット「凄い、前より動きにキレがかかってる!」

ノール「努力してたんだな」

スラリア「クレアよりはいいかもね」

クレア「なっ…ていうか、何で俺の点あんなに低いんだ!

結構手間暇かけて磨いたんだぞ!」

ヒナ「そして、新しい舞で皆さんを笑顔にしちゃいまーす!

第二舞踏『零』術・『波紋合之タップダンス』!」

次々に起こる波紋を目印にヒナはタップしてタップしてを

繰り返し、浮遊中にも美しい舞を舞う。観客の目は

ヒナに釘つけになっていた。

ヒナ「これでフィニッシュです!」

フラット「平均点は…87.6!」

ヒナ「なんか今日のお客さん厳しいね」

スラリア「あたしから見たら百点満点なのにね」

クレア「でも俺よりは15点以上の差があるんだぞ!」

フラット「クレアらしくて予想できた、とか?」

クレア「…おい、次はお前だぞ」

フラット「わわっ、そうだった!司会のエド…

って、どこ⁉︎どこにもいないけど⁈」

クレア「しゃあねぇな!俺がやっとくから

お前は行ってこい!」

フラット「よ、よろしく!」

クレア「コホン、司会のフラットが、ただいまより

緊急参加します!」

フラット「ライトアップ!それじゃ、いくよ!

神業・急成長!」

辺りの地面の芝生が舞台並の高さまで伸びた。

フラット「よし、これぐらいでいいかな。神業・創作!」

芝生が結ばさって1つのとある形になる。

クレア「スッゲェ!」

ノール「だが…あれ、千切れるぞ」

無理矢理結ばさっている草もあったために、今にも

所々が千切れそうになっていた。

フラット「これでフィニッシュ!」

(は、早く終わらせて!)

クレア「…平均点、74.6。暫定2位!」

フラット「ふぅ〜」

少し安心した表情を見せたが、それも束の間。

強い風が、結び目を千切ってしまった。

クレア「…ふん、コンテスト中じゃなかっただけ

良かったと思え」

フラット「もう、負けず嫌いなのは相変わらずだね。

でもエド、本当にどこ行ったんだか」

フォルディン「エドというのは、ヒョウのような男か?」

フラット「そうだけど…?」

フォルディン「ソイツなら変な仮面つけたやつに」

全員「えぇっ⁉︎」

フラット「闇帝⁉︎」

フォルディン「闇帝…?あやつは闇世界の奥に

封印されておるわい。それにやつの仮面にそっくりだったが

偽物じゃ。あれには魔力を一切感じなかった」

ノール「じゃあ…あれは偽物…」

スラリア「てことはやっぱり、フォールなんだ!」

クレア「とにかくアイツが何を企んでいるか

俺達は知らない。エドを救出するぞ!」

フラット「でもイベントは始まってる。なら、

終わり次第捜索を!」

全員「了解!」

フラット「いくよ、クレア!」

ヒナ「私もいく!」

フラット「えっ⁉︎いつから⁉︎」

ヒナ「舞台から帰ってきた時から聞こえてたよ?」

フラット「そっか、じゃあできる?」

ヒナ「うん!」


浅草新聞社ー

ゴン「エド?見てないなぁ…ん?何、もしかして事件⁉︎」

ベスト「だから事件とか事故って聞いて

目を輝かせるなと言ってるだろうが!」

ゴン「アデ!」

ベスト「エドが行方不明か。分かった、俺達も協力しよう」

フラット「うん、お願い!」

ゴン「ってて…それより、置き手紙とかなかったのかい?」

クレア「あったらここまで来るわけねぇだろ?」

ヒナ「ごめんなさいゴンさん。お仕事の邪魔しちゃって」

ゴン「ヒ、ヒナ⁉︎おい通してるなら言えよ!」

ベスト「やなこった。お前のだらしないお仕事を

見せられるいい機会だしな」

ヒナ「えぇ〜⁉︎ベストさん、ゴンさんって

いつもあぁなんですか⁈」

ベスト「そうだぞ。記事もガセかオーバー口調。

おかげで信頼を失うばかりだ」

ヒナ「…ごめんなさい!ゴンさん、帰ってきたら

覚悟しといてよ!」

ゴン「お、お手柔らかに…」

クレア「お前ら!今は駄弁ってる余裕もないだろ!

今、バジーがファイターコードで探査中だが、

見つかるかどうかー」

その時、フラットのウォッチフォンに着信が入る。

フラット「バジーからだ」

立体映像にバジーの顔が映る。

バジー「探知できましたわ!新宿駅北にある、

徒歩7分の所にあるホテルですわ!」

ゴン「おい、そこって!」

ベスト「あぁ、昨日で廃業したホテルだ。

今日取り壊しだったはずだ」

クレア「なっ⁉︎破壊方法は⁉︎」

ベスト「異空間廃棄だったか?」

ゴン「たしかそうだったな」

フォルディン「いくうかん…はいき?」

フラット「うわっ、いたの⁈」

フォルディン「ずっといたぞ」

フラット「まあいいや。向かいながら説明するよ」


電車内ー

フラット「異空間廃棄っていうのは、人間が作り出した

数字世界に、大きな建造物をデータ化して

移動させるってもの。取り壊すことなく一瞬で

終わるから騒音になることなしで便利な手段になってる」

フォルディン「それはなんたる手段じゃ。倫理のカケラも

ないではないか!」

クレア「んなこと言われてもなぁ…」

ベスト「で?誰だその娘は」

フラット「えっ、あ、僕のいとこですよ」

フォルディン「何を言っておる、わしはお前のムグ⁉︎」

フラットは間一髪でフォルディンの口を塞ぐ。

フラット「それは秘密!この世界には女神なんて

いやしないんだぞ!」

フォルディン「そうであったか。わしはこの世界のこと

何も知らない赤子のような存在じゃぞ!」

フラット「はいはい」

ヒナ「でも異空間廃棄は中をちゃんと確認してから

行われるはずでしょ⁈だったらー」

ゴン「確認作業は昨夜のうちに済ませたらしい。

そして作業開始時刻は午前6時」

フラット「じゃあもう始まってるじゃん!」

ゴン「終了予定時刻は午後1時。残り3時間か」

ベスト「まずは西館から初めて、次に中央館、

で、東館、その次に北館で最後に南館。

今でも反応があったということは東か北、南だな」

クレア「フォールのやつ、何考えてんだ!」

ヒナ「フォール君、闇帝の名を使ってるんだよね。

なら、もうやることは決まってるよ!」

フラット「えっ⁉︎」

ヒナ&フォルディン「神魔という考えをなくす」

フォルディン「闇帝は神も魔も消そうとした。

これ以上の理由はないはずじゃ」

ベスト「闇帝……第五次神魔戦争を起こした、

社会国家の頭だったやつか」

フラット「だとしても、フォールは血鬼7人衆でしょ⁉︎

だったら、何で裏切るような真似ー」

フォルディン「やつもそうじゃった。フォールとやらとは、

立場は逆じゃったが」

ゴン「?そんな事実はどこにもー」

フォルディン「わしは知っておる。闇帝は元々は

魔の者であった。しかし、神の者に魅入られ

夫婦めおととなる契を交わすも神魔の間で

契など交わせるわけなどない。闇帝は神魔という秩序を

壊し尽くすために世界を作り替えようとしたのじゃ」

ヒナ「じゃあフォール君も、誰かに恋したの⁈」

フォルディン「そんなわけあるまい!この時代じゃ

神魔問わず契を交わせるのであろう?

あやつは神魔そのものをなくそうとしておるのではないか?」

フラット「神魔そのもの……そんなのつまんない!」

クレア「だな。何の力もない人間だけの世界。

そんなの、刺激がなくてつまんねぇな」

ベスト「…フラット、まさかその娘…」

フラット「げっ…」

ベスト「…女神なのか?」

ゴン「そんなわけないだろ。第五次神魔戦争で

女神は滅んだだろうが」

フォルディン「…わし、これでもめがー」

フラット「わぁぁ!」

ベスト「おいフラット君!電車の中だ!」

フラット「っはは…フォルディン、決して女神と

名乗るな!禁句だ禁句!オッケー⁉︎」

フォルディン「お、お前に言われとうないわ!

わしだってお前という軟弱者に好きで宿ったわけじゃない!

ならばわしも自由にしてよかろう⁈」

フラット「ふぅ、相変わらずの口の聞き方だ。

いい?僕の妹として生まれるはずだったお前が

生きてるの、僕の提案があったからなんだよ?

そこら辺は分かってほしいんだけど?」

フォルディン「そ、それは…」

ヒナ「ど、どういうこと⁈」

クレア「フォルディンはお前の妹なのか⁉︎」

フラット「本当だったらね。でも体はない。

体を構成してるのは信仰。つまり……女神たる存在」

ベスト「……いやいや、それって禁忌だ」

ゴン「ありえない話だ。フラットの存在も

所々禁忌だったが禁忌の塊になるぞ⁉︎」

フラット「いや…え〜っと…」

クレア「…スラから聞いた話だが、フラットは

第五次神魔戦争の時に生まれた天使らしい。

その時なら禁忌でもねぇし、な?」

フラット「クレア…」

クレア「本当は言いたくー」

フラット「何言ってんの?頭大丈夫?」

クレア「はぁ⁉︎」

フラット「僕はこの時代に生まれて育ってんだよ⁉︎」

フォルディン「違うぞ」

フラット「えっ⁉︎」

フォルディン「わしはこれでもお前の記憶を

管理しておるのじゃ。お前は4987年に生まれておる」

フラット「だって僕が生まれたのはエリアFUで

今のような…?」

フラッシュバックした街の景色は今のような

ビルだらけの街並みではなく、どこかの大きな城を

中心とした城下町だった。

フラット「嘘…だって僕には家族もいて…」

フォルディン「それがお前を惑わしたものじゃ。

誰だか思い出せんが、お前をこの時代に飛ばした奴の術、

それがお前の記憶を改竄し、この世界をも改竄した」


最終節 交差なき旅路


ヒナ「どういうこと⁉︎この世界をも改竄って⁉︎」

フォルディン「普通なら奴の術を使ったところで

世界に矛盾が生じて対象者は消される。

じゃが、こやつは残った。何故だか分かるか?」

クレア「ただ単に術を使ったやつがそこら辺も

見繕っただけじゃねぇの?」

フォルディン「そんな単純な発想で魔族や闇帝と名乗るやつと

戦う気なのか?バカバカしくて見てられんわ」

クレア「なっ、このガキ〜!」

フラット「ちょ、フォルディン!」

フォルディン「にしても、わしと会うとすぐに

記憶を甦らすとは……そういう仕掛けだったのか?

わしとこやつを会わせる算段なら、それができたのは

あやつしかおらんな」

フラット「フォルディン?」

フォルディン「……フラット、わしは少し浅草に

戻っておるぞ。話をつけるべきやつと会いにいく」

クレア「おい、ここ電車だぞ!」

フォルディン「それが何じゃ。わしは元の時代に

一刻も早く戻りたいのじゃ!」

クレア「戻るぅ⁉︎おいおい、無茶苦茶だぞ!」

ヒナ「そんなことできるの⁈」

フォルディン「わしは母様の手助けをしたいだけじゃ!

元々人間の小童には分からんだろうが!」

ベスト「好きにしろ。この時代に女神は必要ない」

ゴン「同感だ。僕もこのままだと神魔戦争が

再び起こるハメになるだろうと思う」

フォルディン「じゃろ?わしの居場所はそこにしかないのじゃ」

クレア「……」

フラット「そっか。フォルディン、気をつけて」

クレア「いいのか⁉︎お前、神の力ー」

フラット「大丈夫、僕は僕で頑張るから」

放送「間もなく、新宿、新宿です」

ヒナ「…何だろ…前よりフラット君がずっと遠くに

感じちゃう…もう私と会えないような…」

フラット「ヒナちゃん、行こ?」

ヒナ「あ、うん」


新宿ー

フラット「もういないね」

クレア「本当にいいのか?お前、アイツがいないと

紋章を宿すことも…」

フラット「いいって。神力さえあれば…ね」

フラットが少し目線を逸らすとエドらしき人影を

見つけた。それはフラットを何故か焦らせた。

フラット(何で?何でこんなにエドを

追いかけなきゃいけないって思うんだろ…

でも、行かなきゃ!)

フラットは咄嗟に走り出した。

クレア「おいフラット⁉︎どこ行く⁉︎」

ベスト「フラット君!待って!」


路地裏ー

クレア「ったく、ここは行き止まー」

そう、たしかに行き止まり。しかし、そこにいるはずの

フラットもエドもいなかった。

ヒナ「あれ?ここにいないの?」

クレア「おかしい…この道は一本道だぞ。

分かれ道なんかねぇからここに辿り着くはず。

アイツ…まさか罠にかかったのか⁈」

ヒナ「罠って⁈」

クレア「アイツは敵からしたら脅威だ。まずいな…」

ヒナ「じゃあ今すぐデ・ロワーに連絡しよ!

そろそろイベントも終わる時間でしょ⁉︎」

クレア「まだだ。カーテンコールと握手会が残ってる。

呼び出せるわけねぇ」

ヒナ「でも緊急事態だよ⁉︎やってる暇なんてー」

クレア「舞台の上に立った以上、やめるわけには

いかないだろ!」

ヒナ「…フフッ、タクマと似てるね、クレ君は」

クレア「クレ君はやめてくれ」

ヒナ「え〜…でもそう言うならクレ君は

カーテンコールにも握手会にも出なくていいの?」

クレア「俺が非難役をこなす。それでいいだろ?」

ヒナ「…もう、じゃあ2人で探そっか!

初めてだね、クレ君と2人きりで何かするの!」

クレア「あ、あぁ…タクマ怒らねぇよな?」

ヒナ「タクマはそんなに心狭い男じゃないよ」

クレア「そうか。じゃ、行くぞ。ったく、フォールのやつ

何考えてんだか…」

ヒナ「……何でだろ…胸騒ぎがする。フラットが

帰ってこないような…」

ベスト「ヒナちゃん、早くしろ」

ゴン「先に行ってるぞ」

ヒナ「あ、今行くよ!」


⁇ー

フラット「…?あれ?エド追っかけてきたのに

ここどこ?真っ暗だし…」

闇帝「来たか」

フラット「⁉︎闇帝……1つ確かめたいことがあるけど

聞いてもいい?」

闇帝「悠長だな。こんな状況下でそんな平常心を

保てられるのは、宇宙広しといえどもお前だけだぞ」

フラット「いいから答えて。闇帝、お前はフォール?」

闇帝「な、何言ってる。フォールって誰だ?」

フラット「しらばっくれても無駄だよ。

だって…フォールも神魔の者。でしょ?

暗黒之正負翼を持ってるはずだよ?」

闇帝「……俺の翼は負翼だ」

フラット「正負翼は神と魔のどっちにも転がれる。

普段の行動的に魔は魔でも堕天使だけど」

闇帝「相変わらず口数が…あっ!」

フラット「相変わらず…?」

闇帝「い、いや〜、それはその〜…あの〜…」

フラット「…ぷっ!」

闇帝「わ、笑うな!」

フラット「アッハハハハ!全然悪役っぽくない!」

闇帝「だ、黙れぇ!」

勢いよくフラットに飛びかかったものの、

その勢いで仮面が外れてしまった。

フラット「あ、やっぱり!」

フォール「げっ!」

フラット「で?何で…ぷっ…アッハハハハ!無理だ、

これ、ムリ!バカらしくて、笑いが…アッハハ!」

フォール「笑うなつってんだ!」

フラット「そ、それより…スゥー…ハァー…

エドはどこにやったわけ?」

フォール「安心しろ、別に何かするわけでもない。

お前を呼び出すために使っただけだ。話が終わり次第、

連れ帰ってくれ」

フラット「ならいいけど。それじゃ、まず僕から

質問してもいい?」

フォール「あぁ、別にいいぞ」

フラット「じゃあ1つだけ。目的は何?」

フォール「知ってるはずだが…まあいいか。俺は

神も魔も平等な世界を作り出す。それでも魔には

力が少なすぎる。だから俺は魔の復活を成功させ、

血鬼7人衆を壊滅させる。やつらはただ魔で

世界を支配するつもりだ」

フラット「そう…ならフォールから見た僕達は?」

フォール「…なるべく刃を交わしたくない敵だな」

フラット「つまり強敵って言いたいの?」

フォール「いいや、考えが読めない。お前らが

どんな世界を望み、どんな未来を生きようとしてるのか」

フラット「……どんな世界を望み、か。僕達は

ずっと僕達でいられるならどんな世界でもいいと思う。

もちろん、フォールを含めてね」

フォール「フラット、先に言っておく。

俺とお前達の道は一度、たしかに交差した。

だが、これから先、2度と交差しない」

フラット「フォール……どのみち、道っていうのは

交差するけどね」

フォール「う、うっせぇ!カッコつけたかっただけだ!」

フラット「ま、時が経てば分かるよ。それじゃ、

次はフォールの話を」

フォール「いや、俺の言いたかったことなら

今話したぞ。それじゃ、エドのとこに連れてってやる。

この道をとにかくまっすぐ行け」

フラット「うん、じゃ、またその時に。楽しかったよ、

久々のフォールとの会話」

フォール「…フラット…」

フラット「さ〜てと…フォール、僕達は待ってるよ」

フォールに聞こえないようにボソッと呟くフラット。

しかしフォールの耳にはしっかり届いていた。

フォール「!フラット…?」

しかしフォールが振り返った先にはフラットの姿はなかった。


フラット「まっすぐって…どこまで続いてるの?

全然道が変わらないけど…ん?あの床…大学の寮⁉︎

嘘、どうなってるの⁈」

フラットはうっすらと闇の向こうに見えた

大学寮の床らしき地面に向かって走り出した。

フラット「やっぱり…床…じゃあ今の道は⁉︎」

振り返った先はいつも通りの壁だった。

フラット「…?どうなってるの?それにエドは…!」

エド「も、もう食べられないっす〜…」

フラット「床の上で寝てる…まぁ、部屋に運ぶか…

って、どうやって!」


一方その頃ー

クレア「そうだ、電話してみるか!」

ヒナ「電話したところでって感じだけど…

まあ、試すだけ試そっか!」

クレア「頼む、出てくれよ!」


フラット「?クレアから…あっ!すっかり忘れてた!」

フラットは慌てて着信を見たあまりに、

つい応答拒否してしまった。


クレア「なっ、切られた⁉︎」

ヒナ「もしかして誘拐⁉︎通話機器を取り上げて…」

クレア「でもそれなら普通壊すだろ!フラットのことだ、

押し間違えただけってこともある!もう一回!」


フラット「もう一回電話し直さないと!」

この着信はコンマの差であったため、通話中になってしまった。


クレア「はぁ⁉︎通話中ってなんだよ!」

ヒナ「もしかして偶然電話かけたタイミングが

一緒だっただけじゃない?」

クレア「な、なるほど。それじゃ、もう一回」

しかし、クレアのネックフォンは何も反応しなかった。

ヒナ「ねぇ…もしかして…」

クレア「…電池切れだ」

ヒナ「え〜⁉︎どうすんの⁈」

クレア「ヒナは持ってねぇのか⁈」

ヒナ「私は事務所のパソコンが連絡ツールだから

持ってるわけないよ!」

クレア「ったくこんな時に!ベストは⁈」

ベスト「すまん、俺は新聞社に…」

ゴン「僕は家に…」

クレア「こうなったらバジーに頼むほかないか!」


フラット「なっ、電池切れ…いや、もしかして

クレア達に何かあってSOSで連絡したけど

バレて壊されたって可能性も…まずい!」

フラットは慌てて外に出る。ウォッチフォンを

机の上に置きっぱなしで。


バジー「フラット様ですか?ウォッチフォンの反応は

フラット様の寮のお部屋ですよ?」

クレア「そうか、じゃあ向かってみる!」

バジー「えぇ、でも…クレア様のお力になれて

私、幸せですわ〜!」

バジーはクレアに抱きつこうとする。

クレア「うわっ、神業・風変化!」

クレア達は一瞬でデ・ロワー研究所からいなくなった。


ヒナ「やっぱり…いないね。ウォッチフォンは

机の上に置いてあったし…」

ベスト「フラット君ってウォッチフォン付けてなかったか?」

ゴン「いや…覚えてない」

クレア「俺も見てねぇなぁ」

ベスト「うわ…マジか。って、もうこんな時間か。

ゴン、そろそろ記者会見の時間だ」

ゴン「そうか。すまん、僕達は行く所があるから

この辺で。協力要請しておこうか?」

クレア「いや、アイツらがそろそろ終わるはずだ。

問題ないからいらないぞ」

ヒナ「大人数での捜索は誘拐犯に怪しまれちゃうよ」

ゴン「それもそうだな。よし、ベスト。

ここは2人に任せて記者会見だ」

ベスト「分かった、君達も気をつけて」

クレア「おう!」


フラット「あ、皆!」

スラリア「フラット!新宿に向かってたんじゃ?」

フラット「それより!クレアとヒナちゃんが

緊急事態!事件に巻き込まれてるかも!」

スター「えぇっ⁉︎」

ノール「待て待て。証拠なしでそんなこと

言ってるわけないよな?」

フラット「ううん、それが電話がかかってきたんだけど

僕が間違って切っちゃって、それでもう一回電話したら

電源切られちゃってて…」

スラリア「電池切れって可能性は?」

フラット「スター、昨日クレア家でネックフォンの充電は?」

スター「してたよ?」

フラット「じゃあ切れるわけない。何かあったんだ」

ノール「なるほど。じゃあ探しに行くか」

スラリア「なら警察にも協力してもらお!」

ノール「そうだな、ただ誘拐かどうか分からない以上、

行方不明者として探してもらうか」


浅草警察署ー

ラルバ「フラットさんが行方不明ですか⁉︎」

デラガ「すぐに捜索を手配しろ!広報でも

情報を流し確実に保護しろ!」

ラルバ「はい!あとはお任せください!」

ヒナ「フフッ、ラルバ巡査も見違えましたね」

デラガ「フラットのおかげだよ。アイツがラルバを

変えてくれた。俺のこともな」


デ・ロワー

フォルディン「ペーター、お主であろう?

あの若造とわしをこの時代に送り込んだのは」

ペーター「全く、まさか君がこんなにも早く姿を

見せるとは、俺の計算が大きく狂ったよ」

フォルディン「さっさとわしを元の時代に戻せ!

一刻も早く、母様をー」

ペーター「なぜ俺がお前達をこの時代に連れてきたと思う?」

フォルディン「今はお主と駄弁っておる暇などない!

わしは…わしは!」

ペーター「フラット君のおかげで君は体こそ失ったものの、

魂は残り、生きていられる。それに、君を含めて

フラット君をこの時代に連れていくことは

カナリアも賛同済み。今更戻っても呆れられるだけだ」

フォルディン「そんなことあろうはずがない!

母様はわしを捨てたとでも言うのか⁉︎」

ペーター「そんなわけないだろう?カナリアは

ある使命を君達2人に任せた。覚えていないなんて

言わせはしないぞ?」

フォルディン「母様が…わしらに与えた使命…じゃと?」


時渡りより数刻前ー

カナリア「良いですか?私達神軍は、魔軍とーーし、

世界をーーすることを決定しました。あなた達には

このーーを守ってもらいたいのです。そのためにも、

封印されてしまった天秤の紋章を必ず得てもらうことに

なるでしょう。フォルディン、あなたはフラットのために

試練が待ち受けているでしょう。しかし、

フラットがいればあなたは絶対に試練の苦を

乗り越えられる。辛い時こそ、フラットの顔を

思い出してみてくださいね」


フォルディン「わしが…若造のために試練?」

ペーター「まずはそこからだ」

フォルディン「待て!わしらは一体何を守れと

言われたのか、そこだけが思い出せないのじゃ!

お主の術のせいでやつの記憶がかき乱されて

記録さえごちゃごちゃになったのじゃぞ!」

ペーター「それは悪かったよ。俺もまさかそうなるとは

微塵にも思っていなかったんだ」

フォルディン「もう良いわ!それで?

若造はどこにおるか分かるか?」

ペーター「俺に聞くな!」

広報「浅草警察署からお知らせします。

デ・ロワー所属ファイターのフラット・クラリオさんが

行方をくらましています。お見かけした人は

浅草警察署までお知らせください」

ペーター「…探しに行ってこい」

フォルディン「あんな奴がわしの兄とは思えんわい」


フラット「新宿にもいないって…どこ行ったんだろ」


1時間後ー

ラルバ「集まった情報は少なすぎですね〜」

デラガ「たった2つか…しかも、この通りのコンビニと

この通りのスーパーの前…これじゃあどこに向かったか

分からないな」

ノール「行き先が多すぎるからな」

クレア「おいおい、アイツ新宿にいるんじゃねぇのか?」

ラルバ「?何でまた新宿なんて?」

デラガ「全部浅草での情報だが…」

ヒナ「フラットがいなくなったの、新宿なんだけど…」

デラガ「えっ、だがラルバの情報だと…」

ラルバ「…へへ、間違っちゃいました!」

デラガ「…ハァ〜、フェアード警部の気持ちも

よく分かった。こんなバカ相手するのは骨がおれる」

クレア「ったく、じゃあ新宿にも広報流せよ!」

ラルバ「は、はい!」


銀座ー

フラット「新宿にいないなら銀座と思って来たけど…

思い当たる場所にはいないか〜」


ラルバ「ダメです、30分以上前の目撃証言しか…」

デラガ「移動してる…?場所は」

ラルバ「それが…駅です」

クレア「駅⁉︎どこ行きだ!」

ラルバ「丸の内線で銀座方面にとしか…」

ノール「一体どこに向かってるんだ…」

スラリア「どうしよう、っていうか、フラットは

ただ単に出かけてるだけじゃないの?」

ヒナ「うん、ただ銀座に向かってただけだと思うけど…」

ラルバ「そうですよね…」

デラガ「だがあのフラットだぞ?何か伝言を

しておくはずだが…」

クレア「おいラルバ、状況説明したのか?」

デラガ「そういえば…詳細なんて聞いてなかった!

すまんラルバ、教えてくれ!」

ラルバ「……」

デラガ「何黙ってんだ!早くしろ!」

ラルバ「……エヘっ、忘れちゃいました!」

デラガ「よし、クビ!」

ラルバ「そ、それだけは勘弁!」

デラガ「まあ…お前の“足”には期待できるものの、

少しは頭を良くしてもらいたいものだ」

クレア「…なんかお前ら見てると

ホッコリするな」

スラリア「そんなこと言ってる場合?」

ノール「もう銀座方面に向かった方が早くないか?」

クレア「そうだな、パトカー出してくれるか⁈」

ラルバ「それなら捜索用ヘリを使えば!」

デラガ「バカ!あれは遭難船用だ!」

ラルバ「う〜!」

クレア「なら普通にパトカーでいいだろ?」

デラガ「よし、捜索範囲を銀座方面に変えて

俺達も向かうとするぞ!」


浅草ー

フラット「あれ?デ・ロワーにもいないって…

どこに行ったんだか」

既にクレア達はパトカーで浅草から出ていった後だった。


銀座ー

クレア「どこにもいねぇぞ?」

ノール「隅から隅まで探したが見当たらなかったぞ」

スラリア「ねぇ…これ二転三転してない?」

ヒナ「私もそんな気がしてた。こういうパターンだと…

大体最初にはぐれた場所にいるよね」

ラルバ「そういうのってドラマだけですよ〜!」

デラガ「いや、あのフラットだ。自分で行動するのは

十分ありえるぞ」

ノール「だが、新宿にも広報は流したんだろ?

なら、私達が探してるの知って警察署に行くだろ」

スラリア「それよりさ…ちょっとカフェ行かない?

フラットに余命なんて見えなかったし危険な目には

遭わないよ。ね!いいでしょ?」

ノール「……そういうのは早く言え!」

スラリア「痛っ!ノール!そんなに強くぶたなくても

いいじゃん!今思い出したんだもん!」

クレア「まあ…でもな…」


浅草大学寮ー

フラット「あっ!ウォッチフォン置きっぱなしだった!

って、ラルバから連絡来てるし!」


ラルバ「?電話…あっ!フラットさんからです!」

クレア「ちょ、貸せ!」

強引的にラルバのリングフォンをクレアは取り上げた。

デラガ「おい、それ犯罪だぞ!」

クレア「フラット!今どこにー」

フラット「家だよ、家。そっちこそどこに行ったんだよ⁈

ずーっと探してたんだよ⁉︎」

スラリア「やっぱり二転三転だね」

ヒナ「ていうか私達も探されてたんだね」

フラット「で?今どこにいるわけ?すぐに向かうから」

フォルディン「全くお前はいつになっても

焦るんだな。ちょいとその通信機器をわしに貸せ」

フラット「フォルディン⁉︎って、渡す前に

聞きたいことがあるからちょっとは待って」

フォルディン「ならば急がんか」

フラット「何に使いたいのか分かんないけど…」

クレア「俺達は銀座駅前の喫茶店にいるぞ。

いいから早く来い!」

フラット「分かってる分かってる。で、フォルディン、

貸すけど何に使うの?」

フォルディン「…すまぬ、使い方が分からぬぞ」

フラット「…もう喫茶店に行ってからでいいよ」


喫茶店ー

クレア「全く、時間の無駄だったわ!」

スラリア「まあまあ、会えたんだし結果オーライでしょ?」

ノール「まあな。ちょうど間食時でもだったし

喫茶店に来れたのは良かったな」

フラット「でも、何で僕を探してたのに喫茶店に?」

スラリア「余命が一切見えなかったから危険な目には

遭わないだろうと踏んでね」

フラット「まあ…実際そうだったけど…」

フォルディン「それよりわしの話を聞いてほしい」

デラガ「だ、誰だ⁉︎」

フラット「フォルディン。僕の義理の妹」

ラルバ「えっ、妹いたんですか⁉︎」

フラット「ま、まあね。で、話って?」

フォルディン「お前、わしに対しては冷たいのう。

まあいいわ。実はなー」


全員「えぇ〜っ⁉︎」

クレア「お前が試練を受けるから…」

ノール「私達にも手伝えぇ⁉︎」

スラリア「そんなのダメだよ!試練は自分で

乗り越えるものだよ!」

フラット「ちょっとその話には乗れないな」

フォルディン「何故じゃ!お礼もすると言っておるのじゃぞ!」

スラリア「あのさ、あたし達が一緒に試練を受けたら

フォルディンの試練にはならないでしょ?」

フォルディン「わしはお主らのためを思って

言っておるのじゃぞ!」

クレア「スラリアもお前のために言ってるんだぞ!」

フォルディン「ふん、お主らの力を試したいだけじゃ」

フラット「ふぅん、試してみたいなら…いいよ。

ちょうど、来たみたいだし」

魔獣「ゴワスゥゥゥ!ズベテ…ゴワスゥゥゥ!」

ノール「なっ、魔獣⁉︎」

ラルバ「コイツが渋谷を!」

デラガ「フラット、何故分かった⁉︎」

フラット「……なんとなく、かな」

ヒナ「…やっぱり…遠くなっちゃった…

私の知ってるフラットじゃ…ない」

クレア「?どうした?」

ヒナ「……こんなの、違う!私の知ってるフラットは、

そんなキャラじゃない!何かは言えないけど…

違う!だって…だってもっと…言葉に出せないけど

そんな強キャラっぽくなかったもん!」

フラット「…?何言ってんの?強キャラって…?」

ヒナ「そういうとこはたしかにフラットだけど…

でも何か違うんだって!前みたいに笑わないし…

何かを我慢してるような…」

フラット「っ⁉︎な、何のこと?それより行こ!」

魔獣「グゥ!」

デラガ「神魔石があればいいんだろ!なら俺も!」

フォルディン「ダメじゃ!神魔石だけでは

何もかも足りぬわ!神力を少ししか持たぬ貴様らには

魔獣の相手など務まるわけがなかろう!」

フラット「そういうこと!今回は補佐役でお願い!」

ヒナ「…分かった。デラガさん、ラルバさん、

私が戦闘に入りますからお2人は避難誘導お願いします!」

デラガ「…本当は戦いたいところだが

そういうことならいくぞ!」

ラルバ「了解です!」

フラット「よし、目的は魔獣討伐!デ・ロワー出撃!」


ノール「破壊・闇夜行特急列車・爽!」

魔獣「グギイ゙ィィィ!」

クレア「元は人間だったとしても厄災になるなら

討伐する他ねぇよな!」

スラリア「ていうか、これを人間とは呼べないよね!

余命とか気にせず戦える!」

フラット「…何も我慢なんか…」

ノール「おいフラット!集中しろ!」

フラット「えっ⁉︎」

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