第11話 出会い、そして別れ...

1節 得て、失って


フラット「なっ、まさか!」

アザゼル「よう!殺しに来たぞ?デラガ君」

デラガ「俺狙いか⁉︎」

フラット「下がってて!ラルバ巡査!デラガを連れて

なるべく遠くへ!」

ラルバ「了解です!デラガ、行くよ!」

デラガ「...俺を狙っているなら...戦うのみ!フラット!

頼む、やらせてくれ!」

フラット「...でも...」

ナックル「そらよ!受け取れ!」

デラガ「これは⁉︎」

エド「神魔石⁉︎しかも光ってるっす!」

デラガ「応えて...くれるのか?よし!

神魔石、起動!」

フラット「凄い...って感銘してる場合じゃない!

神魔石、フォームチェンジ!」

クレア「了解!」

スター「フォームチェンジ!」

アザゼル「チッ、また厄介になったな。ちょいと、

俺1人じゃ分が悪いな。おいシヴァ!手伝ってくれ!」

ノール「あぁ、分かった!」

フラット「ノール...いや今はシヴァだ!迷うな...!」

クレア「攻撃するのか?」

フラット「違う。攻撃はしない。だけど迷わないで!

ためらったらアザゼルの思う壺だ!」

ナックル「そうだな!俺達は援護しか出来ねぇが

お前らは迷わず戦え!」

ダバンゴ「言われなくたって分かってるぜ!

行くぜオラァ!」

ライ「参るでござる!」

ノール「違う...破壊は...何もかもを消すこと!

魔術・幾多刃乱舞!」

フラット「これは...!あの時の⁉︎」

「おっと、そいつはさせないぞ?神業・土壁!」

ノール「何だと⁉︎」

独裁フラット「ようフラット!どうやら何か、

異変があったようだな!」

フラット「お前...丁度いい!ちょっと手伝って!」

独裁フラット「あぁ、どうやらこっちのノールと

一緒のようだからな。手慣れてる!」

ダバンゴ「それなら助かるぜ!

ちょいと手伝ってくれや!」

ライ「なるべく戦力は欲しいところでござる!」

独裁フラット「まぁ、そうするとこだったし...

でも、アイツの目、あれは人殺しだな。ちょっとは

本気で行くとするか。審判之負翼!」

アザゼル「?負翼...あんなやつ魔族にいたか?」

独裁フラット「どこ見てんだ?審判・光裁‼︎洸一閃!」

アザゼル「グワァ!」

フラット「え、神魔石⁉︎」

独裁フラット「一応、元々は正負翼だしな。

こんなの当然だ!」

アザゼル「くそぉ、負翼じゃねぇのか...迂闊だった」

独裁フラット「まぁ知らなくて当然だろうな。

何たって、俺は異世界線の者。また帰っちまうが」

アザゼル「なら...今のうちに仕留めるのみ!」

独裁フラット「バカが。仕留められるのは...

お前の方だよ!」

アザゼル「なっ、この力は⁉︎」

ライ「油断大敵でござる!落雷・轟連雷!」

アザゼル「見切っている!魔術・疾風!」

フラット「風⁉︎」

アザゼル「これでも風を司っていたウリエルに

仕えていた身!突風術は操れて当然!」

フラット「だったら...ダバンゴさん!神業・水流!」

ダバンゴ「そういうことか!合点だぜ親分!

遊泳・龍蛇之舞!」

アザゼル「魔術・凍風!」

ダバンゴ「何だと⁉︎」

ライ「任せるでござる!忍法・疾風迅雷!」

アザゼル「ぐっ…!」

独裁フラット「時間稼ぎありがとよ!」

ノール「⁉︎」

独裁フラット「審判・闇花誓峰!」

ノール「くっ…!」

アザゼル「シヴァ!」

フラット「…神業・土壁!」

独裁フラット「な、何やってる⁉︎」

フラット「…無理だよ…例え相手が魔族でも…

殺せないよ!」

ダバンゴ「親分!いくらなんでもそれは優しすぎだぜ⁈

魔族は殺すに限るぞ!」

ライ「そうでござる!魔族はこの世界に災いを

もたらす者!生かす必要などないでござる!」

フラット「…でも…ノールは違った!」

ノール「!」

フラット「魔族の血を引いてたとしても…災いなんか

なかったよ!幸せだった!だから…!」

ノール「フラット…私は…!アザゼル!」

アザゼル「シヴァ…まさか!」

ノール「たしかに私はシヴァの末裔…でも…!

あの幸せは本物!私は私として…ノールとして

生かしてもらう!神業・破壊!」

アザゼル「ぐわぁっ!」

フラット「ノール…!」

ノール「…私はバカだ。あの幸せを無くそうとしてた。

ありがとう、フラット」

フラット「アザゼル…これでも、まだ抗うつもり?」

アザゼル「…覚えておけ!」

独裁フラット「っち!逃したか…」

ライ「…フラット殿。魔族を殺すでござる」

ダバンゴ「そうだな。ファイターの役目だ」

フラット「えっ…役目…?」

ダバンゴ「そうだ。裏切り者にふさわしい死刑を

頼んだぜ、親分」

フラット「死刑…」

ノール「…フラット…」

フラット「ノール…」

フラットはノールの瞳を見つめる。

フラット「…僕は…殺さない!裏切り?何のこと?

ノールはスパイだよ?」

ノール「フラット⁈」

フラット「正体不明の敵について、できる限りの情報を

集めてほしいって願ったんだ!ごめんね、

危険なことさせちゃって!でも信じてたよ。

ノールなら帰ってくるって!」

ノール「…!フラット…ありがとう…信じてくれて」

ライ「…もう勝手にするでござる」

デラガ「…ていうか…俺達何もしてない」

エド「大暴れしたかったっす〜!」

フラット「ノール、帰ろ!」

ノール「…うん」

ナックル「お帰りな!ノール!」

ノール「バカ虎…ただいま」

クレア「心配かけさせんなっての!デラガ刑事の護衛、

大変だったんだぞ!」

スター「ビックリしちゃったよ〜、ノールが誰かを

傷つけようとするんだもん!」

フラット「いい役作りだったよ。流石は元演劇部員」

ノール「茶化さないで。もう…」

ダバンゴ「…あれでいいのか?違反行為だぞ」

ライ「あのままでは、地球連合にバレるがオチでござる」


ノール「ファイター支援課の指揮者?」

フラット「そうなんだよねー…いい人材が

見つかんなくてさ〜」

ラルバ「折角アカデミーにスカウトされたというのに

早速難題ですよ〜」

デラガ「まぁ、こればかりは気長に待つしかないな」

エド「でも、シャリーがいるじゃないっすか」

フラット「あたったんだけど…ランケールさんに

あたってくれってさ」

ナックル「な、何でランケールに…たしかに指揮者だが

シャリーの方が優れてると思うぞ?」

フラット「だよね」

クレア「アイツでもダメか…あ、そういやセンリは

どうなったんだろ?」

フラット「あ、すっごいカッコよかったよ!」

スター「じゃなくてキャラだよキャラ!」

フラット「あ、そっち?すごい明るかったよ。

元のセンリって、あんな風だったんだ」

ナックル「そうだな。だが…寂しいもんだな」

フラット「あ…」

クレア「そうだったな。センリの中にいたのは

すっとこどっこいの実弟だもんな」

ペーター「それより。四大の方はどうしたんだい?」

フラット「あれ…そういえば…」

ペーター「まぁ…話もあるしな…少し待っててくれ。

招集かけるから」

ペーターはそう言うと、オフィスから出て行く。

フラット「うーん…どこ行ったんだろ」

エド「でも…酷いっすよね。仲間であっても

あんな軽々しく殺せは」

ノール「それがファイターの役目。仕方ない」

フラット「分かってるけど…できないよ。

死刑は…したくないよ」

ナックル「それでいいと思うぜ。あ、ダンステードは

あそこに決まってるな。呼びにでも行くか」

フラット「待ってようよ。ペーターさんが

呼んでくれてるんだし」

クレア「にしても、こうなーんにもないと

暇なんだな」

スター「なんか眠くなってきちゃったね」

ペーター「いやぁ、ごめん。全員に招集かけるのは

流石に時間がかかるね」

ダンステード「何や、招集って?」

全員「うわぁ!」

ナックル「い、い、いつからそこにいた⁉︎」

ダンステード「?ずっとここにいたで?徹夜で

作業してたんや。もう少し寝ててもええか?」

フラット「えっ、でも話が…」

ペーター「あぁ、あと1時間は寝ててもいいよ。

全員が集まるの、多分まだかかるから」

ナックル「なら…ゲームでもしてようぜ!」

フラット「あ、いいね!」

エド「賛成っす!」

ノール「…私も!」

スター「あ、初めて全員でゲームできる!」

クレア「…そうだな。いつか、本当に全員でやろう!」

フラット「分かってるよ。だから僕達がいるんでしょ」

ナックル「おいおい、遊ぶ前に硬っ苦しい会話は

やめようぜ?」

フラット「それもそうだね。じゃ、何やる?」

エド「白熱乱闘ヒロインズなんてどうっすか?」

フラット「あれ、エドの独壇場になるじゃん!」

クレア「何言ってんだ?7人でやるんだ。

エドのチームを3人にして、なおかつゲームに

疎いやつを入れればいいだろ」

エド「ま、待つっす!どっちか一つにしてほしいっす!

ハンデがすぎるっすよ!」

ナックル「なら、ゲームに疎いやつが4人いるわけだし

腕前普通の3人チームで対抗してやるよ」

フラット「僕ってどっち?」

ナックル「お前は普通組。あとスターもな」

クレア「俺疎い方かよ⁉︎」

ノール「私は分かるけど…?あと1人は?」

ラルバ「俺ですよね!やっちゃいますよ!」

デラガ「おい…たまには…代わってくれ」

ラルバ「め…珍しいこと言うね…よーし、分かった!

10回に1回は代わってあげるよ!」

デラガ「すっくな⁉︎せめて5回に1回だろ!」

フラット「アハハハ!」

クレア「本当にバカだな!」

ノール「ハハ、やっぱり面白い!」


数時間後ー

フラット「よし!25勝目!」

エド「まだ7勝負けてるっすよ〜!」

ナックル「何でそっちのほうが上手いんだ?」

クレア「だから言ったろ?何で俺が

疎いチームなんだって」

フラット「ていうか…ラルバ巡査が強い気が…」

ラルバ「?いつも通りのプレイングですよ!」

デラガ「こう見えても、ゲームだけは一人前なんだ、

ラルバは」

スター「えぇ〜…こういう乱闘ゲームって

反射神経とかも必要に…」

ノール「となると…ラルバにはもってこいのゲームだな」

フラット「もーう!ならメンバー入れ替え!」

といった戯れムードにー

ベングル「いやー、すまん!」

グリオ「それで…話とはなんだ?あまり暇では

ないのだが」

ライ「修行中に抜け出すなどあっては

ならないことでござる。なるべく早く

終わらせてほしいでござる」

ダバンゴ「それに、魔族と同じ空間にいるのは

嫌だしな!」

ペーター「分かってるよ。それでは話の方を」

フラット「じゃ、一旦ゲームストップだね」


ペーター「それでだ。ノール、魔族の情報を

掴んだだけ話してくれるかい?」

ノール「まず、ボスは不明。ただ、サタンの

生まれ変わりだということは分かった。魔族の目的は

この世界を支配すること。中枢である東京を

制圧することを第一に考えている」

ペーター「つまり、東京を狙っているということか」

ノール「それ以外にも、パリや北京、

ロサンゼルスなんかも狙っている。だが、

東京に目を向けている魔族は、魔族の中でも

最凶レベルのやつらだ」

クレア「てなると、俺達が1番苦しい戦闘になるって

わけか。まっ、大丈夫だろ」

エド「なんたって、地球1のファイター企業が

勢揃いっすもん!」

スター「それに、脅威大量発生異変も何とか

解決できたんだもん!今回も乗り切れるって!」

ナックル「単純だな…フラットの影響か?」

フラット「そこまで単純じゃないよ!」

ベングル「それだけか?」

ペーター「もう一つある。折角、

デ・ロワー出身ファイターが集まったんだ。

イベントでもやらないか?」

グリオ「イベントだと?」

ライ「今はそれどころではないでござる」

ダバンゴ「俺様、イベントは好きじゃねぇしな!」

ラルバ「イベントですか!本官やってみたいです!」

デラガ「おい、デ・ロワーの関係者のみに決まってー」

ペーター「あ、今日から君達はデ・ロワーの枠組みに

入ってもらうからね」

ラルバ「へ?」

フラット「ど、どういうことですか⁉︎」

デラガ「アカデミー本社の枠組みじゃ?」

ペーター「その話だが、俺が貰っちゃってね。

デ・ロワーのビルが増設になってしまうがね」

ノール「なんか…騒がしくなりそう…」

クレア「コイツら、いつもは来ないだろ。

ファイター支援課の方が本業なんだし」

エド「そうっすね。何も変わらないっすよ」

ナックル「それより、イベントをやるとして

何すんだ?今は11月。これといったイベントは

思いつかないぞ?」

ペーター「普通のイベントをやればいいだろ。

台本は既にある。セット準備だけすればね」

ダバンゴ「俺様は却下だ。魔族となんざ、

できるかってんだ」

ライ「拙者も今回は失礼しかまつる」

ベングル「…俺はやってもいいぞ!」

フラット「あれ…ベングルさんって一人称俺だっけ?」

ベングル「あの時は気を遣ってただけだ!」

ノール「ふぅん…バカ虎も見習ったら?目上の人にも

俺って言って…」

グリオ「だから正社員になかなかなれなかったのか。

残念なやつだな。あ、私も出させてもらおう」

ダンステード「…?この声…あ!起こしてーな!」

フラット「あ、起きた。ダンステードさんも

イベントやります?」

ダンステード「お、イベントかいな。懐かしいわー、

やらせてもらいまっせ」

ペーター「これだけいれば、イベントもできるだろう。

ナックラー、エド君ちょっと一緒に来てくれるか?

イベント会場を決めるからな」

ナックル「了解だぜ。ちょっくら行ってくる!」

エド「?了解っす!行ってくるっすよ!」

フラット「うん、それじゃ…おやつでも食べよっか」

スター「食べよ食べよ!」

クレア「もう菓子残ってないぞ」

フラット「だったら作ればいいじゃん。何作ろっかな」

ラルバ「ホットケーキとかどうでしょ⁈」

デラガ「俺は…ケーキ」

フラット「流石にケーキは無理かな〜…あ、でも

クレープならチャチャっと作れるか」

エド「クレープっすか⁉︎だったら、自分達で作って

映え勝負っす!」

ベングル「げっ、俺そういうの苦手なんだよな」

グリオ「大丈夫だ。提案だが5人と4人に分けて

2チームで対抗勝負にしないか?」

フラット「あ、もっと面白くなりそう!」

ダンステード「わいも、料理は得意やで!」

フラット「じゃあ、ちょうど料理できないのは

クレアとベングルさんだけだから…僕の方に

ベングルさん来てくれる?」

ベングル「いいのか⁈」

ナックル「俺はフラットと対抗するぜ!」

スター「スターはフラットと一緒がいい!」

ノール「私もフラットと一緒に」

グリオ「ベングルが心配だからフラットのチームで」

クレア「てなると…こっちにはおっさんと警察犬の2人か」

ラルバ「警察犬とは何ですか!」

デラガ「いくらなんでも許せん!名誉毀損で

逮捕していいか⁉︎」

フラット「ま、まぁまぁ!クレアのあだ名が

安直すぎるのはいつものことなんで許してください」

ナックル「クレア、謝っとけ」

クレア「ご、ごめんなさい…負けたら事件の調査とか

手伝います」

ラルバ「本当ですか⁉︎助かります!」

デラガ「素人には任せたくないんだが…」

フラット「それじゃ、映えバトル始めよっか!」


スター「まずは生地からだね!」

フラット「クレープはこうやって丸く伸ばして…

ムラにならないように丁寧に…と!」

ベングル「ほうほう…」

フラット「生地は全員分作っちゃうね!」

ノール「いいのか?助かる」

グリオ「私は自分でできる」

フラット「じゃあ、お願いしてもいい?」

グリオ「元からそう言っている」


クレア「うわぁ!ちょっ、手伝ってくれぇ!」

ラルバ「もう、何がどうなったらこうなるんですか⁈

不器用にも程があります!」

デラガ「お前は料理が上手いから分からんだろうが

クレープ作りなんかやったことないから分かんないのは

当たり前のことだ」

ダンステード「わいは作ったことあるさかい、

教えたるで?いい感じに映えるポイントも

ちゃーんと分かってるで?」

クレア「じゃあ教えてくれ!アイツらにギャフンと

言わせてやろう!」


フラット「よし…僕のは完成!」

スター「あー…フラットには負けちゃったかな」

ノール「わ、私のいびつだ…」

ベングル「助かった、グリオ!おかげでこんな

クレープができた!」

グリオ「いささかクレープとは言えないが…

美味しそうだしいいか」

ノール「グリオのは派手じゃないな…清楚って感じだ」

スター「うん…何使ったの?」

グリオ「うぐっ…じ、実は…」


クレア「うおっ、案外上手くできた!」

ラルバ「でも本官の方が一枚上手ですよ!」

デラガ「この中では1番綺麗に仕上がってるな…」

ダンステード「なに言うとる!わいのが1番に

決まっとるやろ!」

クレア「いや、おっさんのクレープ…

お好み焼きだろ!」

ダンステード「お、いいツッコミや!だが、冗談に

決まってるやろ?本命はこっちや!」

デラガ「うぉぉ…美味そうだ…」

ラルバ「これなら、勝てそうです!」


フラット「というわけで!まずは見せ合いっこ!」

ノール「私のからでいい?確実に最下位だから。

はい、トリプルショコラクレープ」

ラルバ「あちゃ〜…バランスを間違っちゃった

感じですか?」

ノール「そうなんだ。アイスをデカくしすぎて

アンバランスに…」

クレア「で、勝敗の決め方は?」

フラット「デ・ロワー専門チャンネルに載せて、

1番いいねが多かった人が優勝!」

ノール「てことは…撮り方次第で

上手くいけるってこと⁉︎」

デラガ「なんだ、見方だけか…」

ベングル「味の勝負じゃないのか?」

フラット「実はね…このクレープ!イベント商品に

したいと思っちゃってさ!味は皆で分けて食べるから

点数よろしく!」

クレア「うわ…映えと味か…合計点で競うんだよな?」

フラット「そうだね!」

クレア「…やらかした」

デラガ「?」

クレア「食えば分かる。とにかく、ノールは

終わったか?」

ノール「終わった」

クレア「じゃあ、俺だな。先に写真は撮ったから

食ってくれ」

フラット「どれどれ…⁉︎ゲホ!な、何これ⁉︎」

クレア「いや…レタスかと思って入れたら

パクチーだったんだ、アハハハ…」

フラット「これは0点だよ0点!」

ノール「うわ…マッズ」

スター「ど、どうやったらレタスとパクチーを

入れ間違えるの?」

ベングル「なら俺のクレープで口直ししてくれ!」

グリオ「ん…!甘い…バニラアイスが濃厚!」

フラット「うん!これ、最高!」

ベングル「…あっ!」

ラルバ「どうしました?」

ベングル「写真…忘れてた…」

デラガ「…あーあ…もったいない」

ベングル「ちくしょー…」

フラット「で、でもこれは商品化決定だね!

すごく美味しいもん!」

ベングル「いいのか⁉︎」

フラット「うん!」

ラルバ「な…なんか悔しいです!

本官いかせてもらいます!」

デラガ「サラダ風にしたのか…ん?おい、

ドレッシング、何使った?」

ラルバ「?この白いのですけど?」

グリオ「そ、それは生クリームだ…!」

フラット「うっわ…何これ…」

ノール「次だな」

グリオ「全く…私が出そう」

ベングル「グリオのはイチゴか!」

グリオ「ベリーパニッククレープ。ベリー系の果物を

ふんだんに使って、練乳とチョコソースで味付けし、

ナッツを使って食感を楽しむものだ。写真も収めたし

早速食べてくれ」

スター「美味しい!」

ノール「ちょっとクドイが…いける」

ラルバ「まさかドレッシングじゃないとは…」

デラガ「まっ、これも商品化でいいだろ。じゃ、

次は俺だ。苦めのクレープだ。名付けて、

ブラックカフェクレープ」

フラット「匂いは…うわ、キッツ!」

ノール「そう?私は普通だけど…」

グリオ「これは…改良すれば商品にしても

いいと思うな」

スター「苦っ⁉︎子供には人気でないよこれ!」

ラルバ「デラガ、クレープを食べるのは主に

子供なんだから、その辺意識しないと」

デラガ「そ、そうだな…」

スター「じゃあお手本にスターが次ね!

バナナチョコフラッペクレープ!

輪切りにされたバナナにたっぷりチョコをかけて、

またバナナを今度はスライスしたのを

上に乗っけたんだ!」

フラット「うん、子供が見たら即買っちゃいそう!」

ノール「味も子供っぽいが、いけるな」

ダンステード「たしかに美味いが、わいが味覚も

化学っちゅうこと、教えたるで!味の化学、

マジッククレープや!」

フラット「えーっと…これ何ですか?」

ダンステード「何って…アンコに塩をかけたものや!

知っとるか?甘みに塩を加えると甘みが増すんや!」

ノール「交互作用ってやつか。スイカに塩を

かけるだろ?あれと同じだ」

デラガ「なるほどな…面白いが、餅とかあったら

子供も喜びそうだな」

スター「でもクレープにしては地味だよ!」

フラット「じゃ、締めを僕が。僕が作ったのは、

レモン&ライムのサッパリクレープ!

隠し味の蜂蜜でとろける甘さだよ!」

クレア「うわ…うめぇ…」

ノール「サッパリした酸味…ほんのりと蜂蜜が…

美味しい…」

スター「うん!すごいよこれ!やっぱり、

フラットは料理の天才だね!」

フラット「えっ⁉︎そんなことないよ!贅沢品でもないし

想像力さえあれば誰でも作れるよ!」

デラガ「その想像力が羨ましいんだよ」

ラルバ「いいなぁ…本官もそのぐらい想像力があれば

アレコレと作戦考えられるのに…」

ベングル「こりゃ負けだ…」

グリオ「まさかこんな美味いクレープを作れるとは…」

ダンステード「わいの作品の何がダメやったんや…」


フラット「それじゃ、皆食べ終えたね?」

ノール「そうだな」

スター「じゃあ、区切り良く1時間経ったし、

いいねの数、見てみよっか!」

フラット「え〜っと…多い順番から言ってくと、

一位がグリオ、2位が…えっ⁉︎ノール!」

ノール「えっ…私が2位⁉︎」

フラット「撮り方が良かったんだね…それで3位は僕で

4位はスター、5位はデラガで6位は

ダンステードさん、7位がクレアで8位、

つまり最下位がラルバ巡査だね」

スター「で、商品化は?」

フラット「グリオとノールの、僕のとスターのでしょ。

あと、ベングルのもね」

ノール「たった4種類だけのクレープ屋って…

なんかなぁ」

フラット「これから増やしてけばいいでしょ!

それじゃ、イベント準備の方に取り掛かろっか!」

全員「おーっ!」


ペーター「…ということだ。なるべく早く、

神力をうまく操れるようになってくれ」

ナックル「分かったぜ。これもアイツらのため、だな!」

エド「これからも努力し続けるっす!」

ペーター「では、これで話は終わりだ。イベント準備に

顔でも出してこい」

ナックル「おう!行くぜ、エド!」

エド「はいっす!」

ペーター「ふぅ…何だろう…何か嫌な予感がする…」


2節 拠り所を無くした心


アザゼル「…モルガン…!」

サマエル「アザゼル…あれじゃ少し気の毒だ…」

スラリア「何を言ってる?」

ベルゼブブ「ふざけているのか?魔族の者は

自分のことだけ考えていろ」

ベリアル「無理あるまい。なにせサマエルは最年少、

オドオドするのは理じゃよ」

アザゼル「私は…何を頼ればよい⁉︎」


ナックル「これで…終わりだな!」

フラット「そうだね、イベント準備はこれでOK!」

ノール「でも…ここ少し出っぱってるな…神業・破壊」

スター「…あれ?」

ノール「な…なんでだ⁈神業・破壊!」

フラット「神話だと、魔が血に染まりし神、神が血に

見捨てられん。ただ、再び認めるべきことあり…つまり

今のノールは神の血に見捨てられてるってことになる。

でも、いつか認められることもあるから大丈夫!」

クレア「でもさ、ノールの術破壊がなくなるのは結構な痛手だぞ?」

フラット「そうだよね…」

タクマ「よっす!イベント準備は順調か?」

ヒナ「見た感じ、もう終わった?」

ナックル「おう!完璧だぜ!」

フラット「あとはエドが持ってくる照明を取り付ければ

完成だよ」

エド「持ってきたっすよ〜!」

フラット「あ、ありがとう!」

エド「あれ、ヒナ姫⁉︎」

ヒナ「あ、エドさん!こうやって会うのは

久しぶりですね!」

エド「戦闘の時は助かったっす!また一緒に

戦ってほしいっす!」

ヒナ「もちろんですよ〜!」

タクマ「困ったときには助け合わねぇとな!」

エド「やったっす!」

クレア「んなことで喜ぶなっての」

スター「でも…戦力不足は補えないよ」

ノール「…ごめん」

フラット「いや、別にノールが悪いわけじゃないよ。

逆にありがとう。情報が手に入ったのは大きいし」

ノール「…そう言ってもらえると、助かる」

タクマ「まっ、すぐに戻ってくるんだろ?スパイの2人も」

ヒナ「スラちゃんとはもっと仲良くなれそうだしさ!」

タクマ「お前はまな板卒業したいだけだろ」

ヒナ「タクマ!もーう、冗談だよ?」

タクマ「はぁ?お前、前にー」

ヒナ「タクマ、ちょーっと…すぐに戻るから!」

タクマ「へ?おいヒナ、どこに行くんだ、おい⁉︎」

ノール「…アイツ、天然であれ言ってるのか?」

エド「フラット以上っすね」

ナックル「タクマは素直なだけだと思うぜ。

んなことより、イベント準備も整ったことだし

あとは稽古を通すだけだろ?」

フラット「そうだね。1回通してみよっか!」


ペーター「…少しだけ、未来を。神業・未来透視…」


ナックル「ノール、危ねぇ!」

ノール「ば、バカ虎ー!」


ペーター「っ⁉︎」

神力で見えた未来にあまりに驚き、術を

解除してしまった。

ペーター「…ナックラー…!」


フラット「ふぅ〜、時間も時間だし、今日は

この辺りで締めようか。明日から1週間は

稽古でいくから遅刻しないように。それじゃ、解散」

全員「はーい」


オフィスにてー

ノール「ん?ペーター、いないのか?」

フラット「そう…みたいだね」

ノール「まっ、忘れ物を取りに来ただけだから

別にいなくても問題はないか…あ、あった」

フラット「それじゃ、もうオフィス閉めちゃうから」

ノール「ごめん、付き合わせちゃって」

フラット「全然大丈夫。ノール、気にしなくていいよ、

神力使えないの。僕達がノールのことを

使えないやつなんか思うわけないから、ね!」

ノール「フラット…そんなの分かってる。

私が1番付き合いが長いんだから」

フラット「アッハハ、そうだね」

オフィスの鍵を閉めながら、2人は

何事もなかったかのように笑顔を絶やすことなく

話を続けた。


一方、ナックルー

ナックル「調査の結果、出たか?」

バジー「微かにですが。この感じだと敵の拠点の特定は

かなり難しいかと」

ナックル「そうか…」

バジー「まぁ、やれるだけやってみますわ!

時が来たらまたお呼びしますので」

ナックル「あぁ、難題押し付けちまってすまんな」

バジー「いえ、大学の研究みたいなのは

飽きていたところなのでいい気分転換になりますわ」

ナックル「…そうか。やっぱりお前は飽きっぽいな」

バジー「飽きっぽい人ほど新しいものに触れられるのですよ?」

ナックル「ガッハッハ!面白いな、お前の理論もよ」

バジー「そ、そうでしょうか?私、今のは

本気で言ったつもりなんですけど…」

ナックル「あ、いやからかったつもりはないぜ」

バジー「分かっていますわ。ナックル様は

聞こえが悪いんですものね」

ナックル「バジー…お前も今回ばかりは聞こえが悪いぞ!」

バジー「フフッ、わざとですわ」

ナックル「…はぁ、それじゃ、よろしく頼んだぜ。

敵の本拠地が分かったらこっちのもんだ!」

バジー「はい、お任せください」


ノール「ただいま」

パパンパン!

と、クラッカーの音がノールを出迎えた。

ノール「えっ…?」

キルユウ「セーの!」

全員「ノール、お帰りなさーい!」

スター「実はね、皆で歓迎会の計画してたんだ!」

クレア「バレそうになくて楽勝だったけどな」

フラット「やっぱり、デ・ロワーはこうでないと。

でしょ、ノール?」

ノール「…皆…」

キルユウ「俺達も待ってたぞ!」

バルシア「姉御は必ず戻ってくる!そう信じてましたから!」

エド「プレゼントとか、選ぶの時間かかっちゃったっす!」

フラット「エド!プレゼントのことは内緒にしてよ!」

エド「あ、ごめんなさいっす」

ノール「…ありがとう…!」

フラット「あ〜!エド、泣〜かせた!」

エド「俺っすか⁉︎それはないっすよ〜!」

クレア「ハハハ、いじめてやんなよ、かわいそうだろ」

スター「でも、こういう祝い事だとエドって

いつもからかわれるよね」

エド「何でっすかね」

ノール「…フラット。私、幸せだよ。もしフラットに

会えてなかったら…なんて想像できない」

フラット「…何言ってんの。僕達はどんな形であれ、

会ってたと思うよ!」

ノール「!」

フラット「僕が独裁者であり続けたら、きっとノールが

止めに来る。結末がどうかまでは分からないけど」

ノール「その時は私が勝つに決まってる!

私が私利私欲に負けるわけない!それに…

フラットに教えられたこと、いつか実現したいから」

フラット「教えた…?僕が?ノールに?何を?」

ノール「それは乙女の秘密!だけど…

私はこの今を守る!これは絶対!」

クレア「破壊神様が守るって…矛盾も甚だしいな」

ノール「クレア!お前、KYにも程がある!」

スター「あーあ、折角の格言が台無し」

フラット「そこまで格言だった?」

キルユウ「普通の約束事だったよな?」

バルシア「いや、姉御の口にしては格言だったと思う」

フラット「あ〜…それは言えてるかも」

ノール「もう…」

ナックル「すまねぇ!話をしてて遅れちまった!」

クレア「そういや…お前は人工アリジゴク計画に

関わってたな」

スター「あっ、忘れてた」

ノール「…バカ虎…私、信じる。だって…この今を

くれたのは、他でもないバカ虎だから」

クレア「…それもそうだったな。俺の借金を

肩代わりしてくれるよう提案したのは、

他でもないすっとこどっこいだった」

エド「そうっすよ!絶対、ナックラーさんが悪に

なるわけがないっす!」

ナックル「お前ら…」

フラット「それより!このイベントは絶対に成功させよ!」

スター「分かってる!スター達の音を2人に届けてみせるから!」

ベングル「よーう!四大の方も今きたぞ!」

ダバンゴ「本当は魔族なんかといたくはねぇけどよ」

グリオ「私も来た。久しぶりだね」

フラット「あっ!グリオさん、お久しぶりです!」

グリオ「すまない、ゼウス様と話をしていて

到着するのに遅れた。それで君達全員の正社員認定が

決まった。所属班もな」

ナックル「本当か⁉︎」

スター「スター達も⁉︎」

グリオ「あぁ、ここにいないスラリアも」

フラット「じゃあ…ゼウス様!」

グリオ「信じている。帰ってくると」

フラット「…頑張らないと!」

ライ「…拙者は反対でござる。もしその方針を

変えないのであれば拙者は四大から抜けるでござる」

ダバンゴ「…俺様もそうさせてもらう」

ダンステード「何や、穏やかやないなぁ?」

フラット「抜けるって…何で⁉︎」

ライ「拙者は魔族を殲滅するのみでござる!

魔族は…拙者の…!」

ダバンゴ「ガラの悪い連中と付き合う気はねぇ」

ベングル「…テメェら…!」

グリオ「そうだな。私の所にいたフォールも、

その思いに苦しめられた」

ノール「えっ、フォールって…」

キルユウ「四大・木の1人だったのか」

バルシア「ねぇ〜、祝いの会じゃなかったの?」

フラット「あっ、そうだったね!」

ライ「魔族を祝うなど、拙者には理解できぬでござる。

この会はごめん被るでござる」

ダバンゴ「あぁ、帰らせてもらうぜ」

ベングル「…待てよ!魔族?んなの関係ねぇだろ!」

フラット「ベングルさん…」

ベングル「ノールは魔族かもしれない。でもな、

今は破壊神であり、1人の少女だ!魔族の血を

引いてる?それが何だか知らねぇが、俺達と同じ

ファイターだ!」

ノール「ベングル…」

グリオ「…言っとく。四大・木は魔族の血を

引いている者達の集まりだ」

ダバンゴ「なっ、んだとぉ⁉︎」

グリオ「…秘密にしておいたが、もう限界だ。

神の四大要素は火・水・風・地だ。木はない」

ベングル「い、いいのか⁉︎口にして…」

グリオ「これ以上言われっぱなしは性に合わん。

それにこのまま見過ごすのがファイターか?」

ベングル「…そうだな」

グリオ「ノール、大丈夫だ。分かっている、

今の思いも。私も経験したからな」

ノール「グリオ…」

グリオ「それに、反対派は水と風のみ。残念だが

3対2で賛成派の勝ちだ」

ダンステード「せやな、地も賛成や」

ライ「だったらもういいでござる!拙者達は

これで抜けさせてもらうでござる!」

ダバンゴ「俺様達は好き勝手にやらせてもらうぜ!

これで、ソイツを殺すも生かすも俺様達の自由だ!」

フラット「殺す、か」

クレア「⁉︎な、何だ?風が…狂ってる?」

フラット「…させない。ノールが何の罪を背負った?

何をした?犯した?」

ナックル「ま、マズイ!神力が暴走してるぞ⁉︎」

フラット「教えてやるよ…冤罪ってことを!」

一瞬でダバンゴとライを吹き飛ばす。

フラット「罪を…犯した者はお前達だ!誹謗中傷は

立派な犯罪。罪を犯した者達には罰を…!」

ナックル「させるか!」

フラット「⁈バトラー…邪魔するならお前、

公務執行妨害だ」

ナックル「落ち着け!またあの頃に戻りてぇのか⁉︎」

フラット「だが…このままじゃノールは傷つく。

魔族?だったら僕も魔族ではあるよ?」

ナックル「…は?」

フラット「だって、父さんは堕天使。魔族の血が

薄れることなく通ってる。だから正負翼」

ベングル「ほら、だったらどうだ?魔族でも

東京を救ったし、もっと言えば成功を収めてる」

グリオ「しかも、魔族とか気にせずにな」

ダバンゴ「ハン、だが今はどうだ?完全に魔族の目だ」

ナックル「…いや、コイツは神力の暴走だ。魔力は

これっぽっちも感じねぇ」

エド「そうっすね、いつものフラットの神力っす。

誰かを思うフラットの温かい神力っす」

ライ「拙者は何を言われようと魔族を

殲滅するのみでござる。例えその者が

味方であったとしてもでござる!」

ダバンゴ「これで交渉決別だ。お前達とは絶縁だ」

フラット「好きにすれば?後悔しても遅いだろうけど」

ライ「そうさせてもらうでござる。

さて、ここに残る必要もない故、帰らせてもらうでござる」

ダバンゴとライはそっけなく部屋から出ていく。

ノール「フラットがあんなに怒るなんて…しかも…

私のために…」

フラット「ふぅ…言いたかったことも言えて

スッキリした〜!」

キルユウ「は⁉︎えっ、神力の暴走は⁉︎」

フラット「暴走?演出だよ演出」

ナックル「な、何だよ。じゃあ…魔族っていうのもー」

フラット「あれは本当。隠してきたけどね」

クレア「待てよ!だったら何でお前は

狙われてないんだ⁈」

フラット「だって、僕の前世が魔族ってわけじゃないし

僕の魔力を引っ張り出したら、逆にあっちが標的だよ」

ベングル「あぁ、たしかにな」

グリオ「…ゼウス様から聞いたとおりだ」

フラット「えっ?」

グリオ「さっきも言ったが、ゼウス様と話していた時に

ある事を聞いてな。デ・ロワーに新しく入ったやつらは

全員魔族、と」

フラット「えぇ⁉︎クレアは…」

クレア「たしかに俺自身は魔族じゃない。だが…

いただろ?堕天化してスターの中に眠ってる、

堕天使のユーリックが。身内の誰かが堕天使なら

全員堕天使扱いだ」

フラット「…そうなんだ…」

グリオ「だから、君達の区分は四大のどこにも

属さない、新しい区分だ」

全員「えっ⁉︎」

フラット「それ本当ですか⁉︎」

クレア「流石に冗談だろ⁈」

ナックル「しかも俺達だけって…」

グリオ「あっ、ナックルとエドは違う」

エド「えぇっ⁉︎別っすか⁉︎」

グリオ「ソルジャー限定だし…なぁ?」

ナックル「そ…そういうことか…」

グリオ「名前は、四大・神魔。そのまんまだ」

フラット「本当に…そのままだね」

ノール「だが…ゼウス様が信じてる。なら、絶対に

叶えないと!」

クレア「あぁ!でも、その前に歓迎会だ!」

バルシア「あんなに堅っ苦しい歓迎会は

嫌ですよ!」

フラット「分かってるって!」

ベングル「…四大が2つに分かれるとはな」

グリオ「考えるな。今は楽しめ」

ベングル「それもそうだ。すまんな、お前の秘密を

バラすハメに…」

グリオ「いつかはこうなるんだ。それが今日だっただけ」

ナックル「それよりも、ノール!フラットから

プレゼントがあるぜ!」

ノール「えっ?」

フラット「温め直してくるね。時間経っちゃって

冷めてると思うから」

フラットはスッと席から立ち上がり、台所へ向かった。


数分後ー

フラット「お待たせ〜、僕特製の茶碗蒸し!」

ノール「い、いいの⁈」

スター「もちろん!」

フラット「あ、スターが何で答えんの⁈」

スター「えへへ〜」

クレア「まあまあ、スターはまだ子供なんだし、な?」

ナックル「甘えてんなぁ」

キルユウ「子供のうちに甘えとかんと損だぞ」

バルシア「そうでもないと思うけどなぁ」

ノール「フフッ、でも…ありがとう!でも…

分かってやったの?今日、私の誕生日…」

フラット「へ⁉︎本当に⁉︎」

ノール「う、うん?」

キルユウ「てっきり知ってるのかと思ってたぞ」

クレア「偶然ってあるもんなんだな」

ノール「知らなかったんだ…悲しいような…

嬉しいような…」

ベングル「それより…早く食えよ、勿体無い」

ノール「食べたいけど…大丈夫?」

フラット「前より美味しく作ったから、ね?」

ノール「…分かってやったでしょ?」

フラット「あちゃ〜、バレた?」

グリオ「まだ残ってるか?私もお腹空かせちゃって」

フラット「あ、皆で食べるつもりだったので

たっくさん残ってますよ!今よそってきますね」

グリオ「それもあるが…まだ料理残ってるだろ。

ピザと…スパゲティ、パエリア」

フラット「だ、大正解です…ノールの好きな

イタリアンにしたんだけど…」

ノール「ありがとう、私の大好物まで…」

フラット「何でお礼なんか…当然でしょ!

ノールが主役の宴会なんだよ?」

クレア「宴会じゃなくて歓迎会だろ」

全員「アハハハ!」


翌日

フラット「ん…あれ…あ、結局宴会になったんだっけ…

それで…雑魚寝しちゃったんだ…ふわぁ〜」

ナックル「そんじゃ、オフィス行ってるぜ」

ノール「待って、私も行く!」

クレア「フラットも起こすべきじゃないか?」

スター「ダメだよ、疲れてるのは目に見えてたから」

ノール「アイツが起きるまで寝かしといてやろう」

エド「でも…昨日の宴会で1番に寝たっすよね」

ベングル「それだけ疲れてたわけだ。

ほとんど食ってなかったし」

グリオ「あの茶碗蒸しは美味しかった。人生で

初めておかわりを要求したかも…」

フラット「皆起きてたんだ…あれ…なんか…

また眠く…」

ノール「よし、準備できた。それじゃ、行ってきます。

あと…おやすみ、フラット」


昼ー

フラット「あ…昼のチャイム…起きなきゃ…」

ノール「あ、やっと起きた」

フラット「うわっ⁉︎ビ、ビックリした…いたの?」

ノール「忘れ物したから取りに来たんだけど…

それにフラット、来るの遅かったから…」

フラット「アハハ、ごめん二度寝しちゃった」

ノール「そうか…ほら食堂行こ!昨日も

あんまり食べてないし朝食も食べてないでしょ?

皆もう集まってるから」

フラット「あ、そうなの?じゃあちょっと待って、

着替えとか準備とかあるから…」

アザゼル「…時は…満ちた」

ノール「っ⁉︎」

アザゼル「私は…決めた。悩むことなどない。

シヴァ様が消え失せようと、私はもう一人前になれた!

ならば、モルガン様の魂を覆すほどの魂さえ

私1人で消せる!覚悟しろ!」

ノール「アザゼル…いいだろう、勝負をつけてくれる。

死ぬ気でかかってくるがいい!でも…私を…

私達を甘く見たこと、後悔することになってもな!」

フラット「ノール…まさか⁉︎」

ノール「あぁ、やつを殺す。本当は嫌だけど…

この場所を壊されるのはもっと嫌!」

フラット「…僕は…間違ってるのか…?」

ノール「いくぞ!」

アザゼル「魔術・熱風!」

フラット「う、うん…って、ノールは無理でしょ⁉︎」

ノール「あっ!」

ナックル「ノール、危ねぇ!」

ノール「バカ虎⁉︎」

アザゼル「ちっ、邪魔が入ったか。まぁ、

ソイツが戦えないなら用はないのだが…

魂を集めるに越したことはない!

まとめてぶっ殺してくれるわ!」

クレア「それはどうかな?」

エド「お前一人だけで俺達に勝てるとでも

思ってるんすか?」

ノール「お前ら…!」

フラット「…って、それじゃこっちが悪役じゃん」

クレア「言ってる場合か!」

アザゼル「貴様らが何人来ようと同じこと!

私の力に恐れるがいい!」

ベングル「ちょっと場所が悪いんじゃねぇか?」

グリオ「そうだな…じゃ、頼んだ」

ベングル「任せとけ!火炎・フレアスプラッシュ・弾!」

アザゼル「なっ、こんな術、データになかった…⁉︎」

フラット「な、何あれ…弾けた火の粉が…まるで

踊ってるみたいに!」

グリオ「あれが神魔石の力。自分の神力を

思うがままにコントロールし、表現する。

君達にも、すぐにできると思う」

ノール「…私は…まだまだか…」

クレア「つまり…自分の思うがままに神力を

操ればいいってわけだろ⁈だったら…!

突風・四方爆破之矢・舞!」

クレアの矢があっちこっちに飛び交っては

爆発を起こし、アザゼルにダメージを与える。

それと同時に、デ・ロワーのビルも衝撃で崩れていく。

ノール「ちょ、私の部屋…!」

クレア「ちょ…⁉︎制御きかねぇ!」

アザゼル「スキあり!」

エド「危ないっす!鉄拳・金剛百裂拳・壊!」

アザゼル「なんの!」

エドの拳を全て軽々とかわしー

アザゼル「魔術・死誘之血霧」

エド「なっ…あ、あそこから抜けそうっす!」

アザゼル(フッ、かかった)

エド「なっ⁉︎」

霧から抜けた先は崩れ落ちたビルの一角であった。

フラット「神業・束縛!」

落ちていくエドをフラットがギリギリの所で助けた。

エド「ど、どうもっす…」

スター「エド、怪我治すから!」

ノール「ど、どうしよう…私…何もできない…!」

アザゼル「…そうだよ、狙いはアイツ1人。コイツらは

後回しでもいいんだ…なら!」

ナックル「ぼーっとしてていいのか⁈

突進・光纒タックル・爽!」

いつもよりも何倍も速いスピードで駆け抜けていく。

しかしー

アザゼル「よっと!」

ただ向きを変えただけで簡単に避けられてしまった。

アザゼル「そんなまっすぐな軌道でぶつかるほど

バカじゃないもんで。それより…お前らは

引っ込んでな!魔術・竜巻!」

フラット「ぐっ…!」

クレア「…神業・統一」

アザゼル「何⁉︎」

クレア「生憎、俺は風神だ。お前ごときの風に

負けるほど弱くはないんだな!」

アザゼル「こんの…!その減らず口、消してくれる!即死弾!」

フラット「⁉︎この感じ…!」

アザゼルが魔器で撃った銃弾から感じた魔力にフラットは

身に覚えがあった。

クレア「おっと⁉︎あっぶねぇ」

フラット「…まずい…あれに当たったら…!」

アザゼル「残りは4発…それまでに…当てる!」

フラット「さっきの弾には当たらないように!

あれは…フェアード警部を殺したものだ!」

ベングル「つまり、あれに当たれば…!」

フラット「致死率100%ってわけ!」

グリオ「だが普通の弾丸並みの速さだ!かわせるか?」

ノール「狙いは私だ!私が囮になってみる!」

フラット「な、何言ってるの⁈ノールは

ただの一般人ぐらいの身体能力なんだよ⁉︎

銃弾をかわせるわけがー」

ノール「フラット。私を誰だと思ってる。

元マフィアの1人で、破壊神のノールだ。

神業がなくとも、あれぐらい!」

フラット「…分かった。なら…結界!」

ノールを守るように結界を張る。

アザゼル「無駄なこと!即死弾!」

ノール「まずい!」

弾は結界を貫き、ノールがいた場所へ撃ち込まれた。

フラット「なっ…結界の意味がない⁉︎」

アザゼル「あと3発…きめる…!」

クレア「させねぇ!突風・水切之旋風・煌!」

渦の中心で光り輝くクレアの矢がアザゼルの

目を潰すーかと思われたが

アザゼル「魔術・風奪!」

クレアの風を逆に利用され、ノールの逃げ場を

ガレキで塞ぎ込んだ。

アザゼル「これで…完成だ!ノールとやら…

シヴァ様の魂を壊した罪、償うがいい!即死弾!」


3節 さよなら


アザゼル「シヴァ様の魂を壊した罪、

償うがいい!即死弾!」

ノール「っ!」

ナックル「危ねぇ!」

ノールをギュッと抱きしめ、身代わりに

撃たれるナックル。

ナックル「ぐっ⁉︎」

ノール「…バ…バカ虎…?」

アザゼル「…まっ、いいや。魂を集められただけ」

クレア「ふざけるな!」

アザゼル「グハッ⁉︎」

クレアの放った矢がアザゼルを傷つける。

クレア「よくも…俺達の…!」

アザゼル「…痛かった…貴様…この痛み…

必ず返してくれる!」

アザゼルはそう叫ぶと闇に消えていった。

フラット「バトラー⁉︎」

ノール「…バカと、ナックル!」

エド「ナックラーさん!返事してくださいっす!」

スター「お願い、塞がってよ!」

ナックル「…すまねぇ…助けられは…したんだが…な」

フラット「…良かった、生きてー」

グリオ「いや…脈が弱まってきてる」

ベングル「それに…体内が魔力に汚染され始めている。

もう…助からない」

エド「そんなっ⁉︎」

ノール「私のせいだ…!私が…

あんな無茶しなかったら…!」

ナックル「それは…ちげぇぞ…お前は…よくやった」

ノール「えっ…?」

ナックル「力がなくても…やったんだぜ?お前は…

れっきとしたファイターだ」

ノール「…っ!でも…!」

フラット「僕にだって非はあった!あの時…

ノールを止めれば…!」

ナックル「フラット、お前のおかげで…ノールは

帰ってきたんだぜ?それに…俺はお前に…

迷惑ばかりかけちまった…」

フラット「そんなことないよ!だって…だって…!」

クレア「俺が術さえ使わなけりゃ…!クッソ!

畜生…!畜生!」

ナックル「クレア…強くなれたじゃねぇか…

素直に…ノールを守ろうとしてな…」

クレア「だがお前が消えちまうんじゃ何にも

意味がねぇんだよ!」

エド「そうっすよ!俺だって…まだ恩返しできてないっす!

俺の正義を…まだ見てほしいっす!」

ナックル「エド…お前の正義は十分見れたぜ。

カッコよかった…それに…お前の笑顔が…

俺にとっての恩返しだぜ」

エド「…ナックラーさん…!」

スター「ナックラー!消えないよね?いなくならないよね⁈

こんな傷、スターの力があればー」

ナックル「スター…もういい…これ以上やったところで…

お前がぶっ倒れるだけだ…いい子になったなぁ」

スター「いい子じゃないもん!まだ愛なんて分かんないもん!」

ナックル「何言ってんだ…もう分かってるだろ?

泣いてくれてるんだろ?もう…目の前真っ暗で…

顔も見えねぇけどよ…」

フラット「えっ⁉︎」

ナックル「…フラット…ノール…クレア…エド…スター…

ここには…いねぇが…スラリア…フォール…

お前達に会えて…良かったぜ…」

フラット「何言ってるの⁉︎これからも、

ずっと、ずーっと一緒に決まってるでしょ⁉︎」

クレア「そうだ!何もう諦めてんだよ!」

ノール「私を庇ったくせに…私のお礼聞かずに

逝かないでよ!」

スター「スターだってまだ一緒にいたい!

この先も…!」

エド「俺もずっといたいっす!ナックラーさんのために

今まで以上に笑うっすから!だから…!」

ナックル「…フラット……俺の机の…」

フラット「…バトラー、聞こえないよ!もう1回言って」

ナックル「………」

フラット「バトラー…?」

グリオ「午後1:07…か」

ベングル「…脈も…もう止まってるな…」

ノール「ナックル…!」

クレア「ちっくしょう!」

スター「…っ!」

フラット「バトラー…!」


一方オフィスー

ペーター「…俺だけ…か」

1人で中継映像をペーターは見ていた。

ペーター「本当に…先にいっちまうよなぁ…!」


終業時間後、ノール

ノール「………」

キルユウ「…ノール」

ノール「何」

キルユウ「そ、その…部屋、すぐに直って良かったな」

ノール「…」

キルユウ「あー…なんだその…明後日には葬儀だろ?

俺達も出た方がいいよな?」

ノール「好きにすれば」

キルユウ「ノール…」


バルシア「どうだった?」

キルユウ「ダメだ。だが…アイツがあんなに

悲しむとはな…親を失った時よりひでぇ…」

バルシア「当たり前だよ。姉御はナックルさんのこと、

尊敬してたみたいだもん。よく食事中とかに

話してくれたでしょ?」

キルユウ「…面白い、とか頼りになる、とかな。

あんなやつになりたい、と言うぐらいだしな」

バルシア「もしかしたら…本当の兄貴のように

感じてたんじゃないかな、姉御」


ノール「…ナックル…」


クレアの部屋ー

クレア「…あの時…」


クレア「突風・水切之旋風・煌!」


クレア「俺が術を使わなけりゃ…!クッソ!」


スターの部屋ー

スター「…足りない…もっと力が欲しい…!

あんな傷でも…治せるぐらいの!嫌だよ…!

ナックラーがいないなんて…やだよぉ!」


大学寮ー

フラット「…さて、晩御飯でも作んないと!」


フラット「え〜っと……」

野菜室を開けると、1日1個と書かれたキウイの

段ボールが目に止まる。

フラット「…誰が…誰がこんなに食べるんだよ!」

必死に泣くのを堪えるフラット。野菜室を何とか

閉めて、冷蔵庫を開ける。今度はノールの歓迎会の時に

ナックルが持ち帰ってきたのであろう物が入っていた。

しかも、2人用に半分こされて

フラット「……無理だよ…!食べられないよ…!

だって…!料理も!洗濯も!通学も!

もう…バトラーは…いない!“また”1人じゃ…

意味がないんだよぉ!」


この4人の様子をー

桃色髪女「フラット…」

鬼男「…どうかしたのか、メダイ」

メダイ「…コータス。今…聞こえた気がしたんだ。

フラットが…泣いてる音」

コータス「何かあったってことか」

メダイ「うん!ケーベスに伝えてすぐに行こう!」


フラット「…失礼します」

ペーター「…やぁ、おはよう」

フラット「今日は僕1人ですか?」

ペーター「…あぁ」

フラット「じゃ、バリバリ働かないと!」

ペーター「…あぁ」

フラット「ペーターさん?」

ペーター「…君は凄いね。1日でもう…」

フラット「何言ってるんですか!僕は隊長ですよ?

クヨクヨしてるとこ見せてどうするんですか!」


ナックル「フラットが笑って平気な顔してる時は

大抵無理してるんだよな。やっぱ、何かあったのか?」

ペーター「そういう時は遠回りして誘導してくと

引っかかりやすいよ」

ナックル「なるほどな!」


ペーター「…フラット君…」

フラット「さーて!片付けちゃおっと!」

ペーター「ナックラー、強がれるって、案外難しいことなんだな」

フラット「?なんか言いましたか?」

ペーター「い、いや?」

フラット「それにしても静かですね。いつもなら…

皆がいて…バトラーの…笑顔が…あって…」

ペーター「フラット君…」

(何やってんだペーター・クリフト!俺の立場は

部下を励ますことだろ!)

ペーター「さっ、さっきの気合いはどうした?

バリバリ働くんだろ?」

フラット「ペーターさん…そうですね!

働きますとも!」

ペーター(ナックラー。お前よりは不器用だが、

俺でも何とかできる。安心して…眠ってくれ)

ベングル「入るぞ」

グリオ「手続きをしたい。四大・神魔の組織認定証の」

ペーター「あ…それは全員が揃った時でもいいかな?」

ベングル「…ああいう体験、初めてだろ?」

フラット「…うん」

グリオ「別れってのは…何回経験しても慣れないな」

ベングル「あぁ…しかも、デ・ロワーの中でも

頼りがいのあったやつがな」

ペーター「そういえば、ダンステードは?」

グリオ「アイツなら…安置室だ」

ペーター「そうだろうな。気に入ってたみたいだし…」

ベングル「呼んでくるか?」

グリオ「ダメだ。アイツ…珍しく…」

ベングル「…そうか。あ、フラット君。

調子はどうだい?」

フラット「特に問題ないですよ。こういう時こそ、

笑ってないと!」

グリオ「…強がれる余裕があるだけ凄いな」

フラット「えっ?強がってないですよ?」

ベングル「グリオ、言うな。それより、全員が

集まってからな。了解した、行くぞ、グリオ」

グリオ「あぁ…」

ベングル「グリオ?」

グリオ「すまん。目の前で誰かを失うのは…

初めてでな。知らせで知るってことは

経験済みなんだが…」

ベングル「…だよな。俺だってそうだ。実際…

俺はナックルのおかげで四大まで昇り詰めたわけだしよ」

フラット「えっ、それって…」

ベングル「俺が唯一、四大の長の中で場数がねぇ。

ファイター歴も、ナックルの方が長かった」


23年前ー

ナックル「ベングル、そんなに落ち込むなって!

失敗は誰だってあるぜ?」

ベングル「だが…そのせいであの子は!」

ナックル「怪我ですんだだけラッキーだ。

それに言うだろ?結果良ければ全てよし!ってな!」

ベングル「…それでも俺が無理に飛び出しさえ

しなけりゃ、先輩は怪我もせずに済んだ!」

ナックル「それは結果論だろ?その場その場で

結果を考えるより、誰かを守るってことを考えて

飛び出す方が正義だと思うぜ?」

ベングル「先輩…」

ナックル「こういう言葉もある。後悔先に立たず、

ともな!」

ベングル「…ありがと…」

ナックル「ガッハッハ!礼なんかいらねぇよ!

まっ、分かったなら明日から…いや、今から

気合い入れろ!」

ナックルは強くベングルの肩を叩いた。

ベングル「…あぁ!」


ベングル「…優しくて、憧れた。今のエドが

昔の俺にそっくりなんだ。そして、お前が

ナックルみてぇでな」

フラット「そ、そんなことないですよ!僕だって

バトラーがいてくれなかったらきっと、

こんな風にはなってなかったですから…」

ベングル「まっ、俺が言えることとすりゃ、無茶は禁物!だぜ!」

フラット「…はい!」

グリオ「それじゃあ私達はまた後で来ることにするか」

ベングル「おっと、その前にフラット君、来てくれるか?」

フラット「えっ?」

ベングル「ペーター、ちょっと借りるぜ」

ペーター「あぁ、いいとも」

ベングル「気分転換にな!」

自信の溢れた笑顔でベングルはフラットの手を握った。その温もり、

握られた手のひらに感じられる握力はナックルとは違って

とても優しかった。

フラット「…うん!」

それでもフラットはいつものように強く握り返した。

ベングル「っしゃ!まずは朝食だな!さっきから腹の音聞こえてんぞ?」

フラット「え゙っ⁉︎」

ベングル「ガッハッハ、冗談でい冗談!でも食ってねぇだろ?

朝食抜きは体に悪いぜ?」

フラット「もう…冗談はやめてくださいよ〜!」

ベングル「…フラット君、敬語はいいよ。これからは同じ四大の

仲間なんだ。それに、なんかこそばゆいんだよな〜!」

フラット「…分かった、ベングル!」

ベングル「本当に素直なやつだな…ヤベッ!」

ナックルの気持ちが分かり、思わず涙が流れてしまったベングル。

フラット「そんなに憧れてたんだ…やっぱり…ズルいな、バトラー…」

ベングル「や、いや!目が痒くてな!コンタクトでゴロゴロしてて

痛かったんだ!」

フラット「どっちだよ、ハハッ!」

ベングル「ふぅ〜…」

慣れないケア作業にベングルも少なからず疲労していた。

それでも笑顔は絶やすことはなかった。

ベングル「フラット、それより朝食に行こうぜ!」

フラット「うん!」

2人は並んで近くのレストランに向かった。


その夜―

フラット「…バトラー…」

ナックルのベッドに横たわり、フラットは遠いあの日を思い出していた。

それは初めて2人が行った海でのこと―


ナックル「こっち来てみろって!」

フラット「もう、どうしたの?」

ナックル「スゲェぞ!ほら!」

フラット「…!」

それは夜の海に光るウミボタルが見せた絶景。

ナックル「な?スゲェだろ!」

フラット「凄い…!」

ナックル「これぞ正しく、手に触れられる星空だな!」

フラット「…ハァ」

折角の絶景を台無しにするナックルの相変わらずさにフラットは

呆れたため息をついた。

ナックル「何だよ、そのため息は⁈」

フラット「何でもないよ〜だ!」


回想終了―

フラット「海…か」

ベッドから降りて、フラットは東京湾に向かった。


東京湾―

フラット「今までも何度も来たなぁ…」

つい隣を見たフラット。いつもならそこにあった笑顔と声。

それがないことを知っていたのに―

フラット「・・・バトラー、ほら、あの日までじゃないけど

輝いてるよ…キレイ…だよ!」

震えた声でフラットは言葉を紡いでいく。

フラット「バトラー…!」


ナックル「ハハハハ、たしかにな!―

腹減って死にそうだ!―

ガッハッハ!やっぱお前は天然だなぁ!―

ったく、しょうがねぇやつだなぁ!―

お前は料理の天才だな!―

俺の完全敗北だな…クッソ〜!―」

フラットが思い出すナックルはいつも笑っていて、騒がしくて、

それでも頼りがいがあって―


フラット「バカ…!置いて…かないでよ!」

騒ぐ波の音がフラットの声をかき消す。その時―

桃色髪女「あ、な〜に泣いてんのかな?」

フラット「えっ…メダイ⁉︎」

メダイ「もう、前にも言ったでしょ。男の子なんだから泣くな!ってね」

フラット「…何で…?」

メダイ「いやぁ、フラットに渡しといたアレから聞こえてね。

これは私の出番かなぁ…って思ったわけよ!」

フラット「これが2度目の出会いってのが信じられないけどね」

メダイ「そうそう!」

フラットとメダイは最初の出会いがあまりに衝撃的的だったために

忘れられない存在になっていた。その出会いは―


フラット「女子供、どんな理由であれ罪を犯せば死なすのみ。

これに逆らう選択肢は―」

ナックル「フラット⁉︎」

フラット「…バトラーか」

2人が出会い、独裁者が死んだあの日だった。


フラット「でも、何かを貰った覚えなんて…」

メダイ「そりゃそうだよ、ナックラーから貰ってるもん」

フラット「…もしかして…」

フラットは自分のウォッチフォンを確かめた。

メダイ「そう!実はそれに盗聴器が入ってたんだ!念のためにと思って

付けといて良かったよ」

フラット「…それ犯罪だけど」

メダイ「うん、知ってる!でも良いじゃん、それがなかったら

こうやって会いにも来られなかったんだよ?」

フラット「ていうか今更何の用?特に何も―」

メダイ「恩返し、だよ!」

フラット「恩返しって…それこそ何の?」

メダイ「それは秘密!でもね、クヨクヨするのはフラットらしくないかな。

ほらほら、スマイル!」

馴れ馴れしくメダイはフラットの頬をつねった。

フラット「ひょ、やめやめ!」

メダイ「フフッ、アハハ!本当に変わったんだね!今のフラットなら

大丈夫!もう1人じゃないってこと、忘れないでね」

フラット「えっ?」

メダイ「私がフラットのことを1番知ってるから。理由は秘密だよ!

じゃ、私は行こうかな。あ、もうすぐあの2人とも会えるよ、

楽しみにしててね〜!」

そう言い残すと、メダイはフラットに手を振りながら駆け足で

夜の東京の街並みに消えていった。

フラット「…1人じゃない…か。うん、そうだね。あの皆がいる。

戻りはしないけど…笑わなきゃ始まんない!」

メダイの言葉でフラットはようやく立ち上がった。そして笑顔で

寮に戻っていった。その様子を―

フォール「…さて、これがお前にとって4回目の試練だ、フラット。

お前は大切なものを…壊せるか?」


翌朝―

フラット「よいしょ…っと!」

自室の本棚から、フラットは何冊ものアルバムを出していた。

フラット「うん…これで最後かな」

そして座り込み、一冊ずつアルバムをゆっくりと眺めていく。

それは、ナックルと静岡を出て行き、孤児院で過ごした毎日の写真。

その全部の光景がフラットの脳裏に流れる。

桜舞う春の日、眩しい青空広がる夏、紅に染まる秋、白雪が降る冬―

そしてまた桜舞う春に戻ってを繰り返す。その中にはいつも2人の

笑顔があって。懐かしく、そしてこれからも続いたであろう日々。

だから見返す必要はないと本棚の奥にあった写真たちはホコリを被り、

中には破れや色褪せが見られた。それでもフラットには輝いて見えた。

フラット「…あっ」

そして気づけば最後の一冊の最後のページ。それはまだ撮られたばかりの

あの写真。フラットがファイターになって、指揮者になって、

デ・ロワーの隊長に任命された日の写真。フラットはそれを

見るのを躊躇った。そのページを開けば、もうナックルの姿は

どこにもない。その孤独感がフラットを襲い、瞼を閉ざさせた。

その瞬間、ついこの間大きな異変を共に終わらせた全員の顔が浮かんだ。

それは、ナックルがフラットと出会っていなければ生まれなかった

かけがえのない“今”。それに気づき、フラットはもう一度アルバムを

開き、そのページを見返した。そこには、まだ人嫌いだったエド、

ナックルの左で微笑むペーター。そして中心のフラットの左肩に手を置き

弾けるような笑顔を浮かべるナックル。全てが始まったその日は

今よりもずっともの寂しく、それでも幸せに満ちていた。

フラット「…?」

写真を見つめていたフラットが、写真の一部が黒く何かで

にじんでいることに気付いた。

フラット「何だろ…何か書いた覚えないけど…」

気になって写真を取り出し、その裏をフラットは確かめた。

そこには筆圧の強い文字で-

[期待してるぜ、新隊長さん!]

と書かれた文字列。それを見たフラットの頬に、一筋の涙が

伝った。ナックルに対する感謝と別れ、自分に対する不甲斐なさと怒りが

入り混じった涙。その中に花吹雪の中へ消えていくナックルが映った。

それでももう悲しむことはせず、自分の手で涙を拭っていく。

フラット「…大丈夫。泣くのは今日まで!バトラーに…笑われるわけに

いかないから…ありがとう、バトラー」

そう言って、フラットは写真をアルバムに戻して、また本棚に

戻していった。

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