第7話 光闇に飲まれたり

スター「じゃ、これで!」

フラット「その前にフォール見なかった?」

スター「どうせバーでしょ?行けば分かるよ」

フラット「そうだね、ちょっと行ってくる!」


ガチャ、カランカラン

フォール「おーう、フラット!お前も一杯どうだ?」

フラット「フォール、一杯どうだじゃないでしょ!

イベント準備、手伝ってって昨日言ったでしょ⁈

ほら、行くよ!」

この酒好きはフォール。唯一何事もなく、

デ・ロワーに入ったやつだ。戦闘となれば

頭の切れるやつなんだが、普通の時は酒をガバガバ飲む

ダメ男。まぁ、打ち上げにはもってこいの人材だが

ナックルさんとエドがいるからもういいんだけどね。

そういえばフォールが入った日から少しずつ

慌ただしくなったなぁ


1節 動き出した闇

獅子獣人「...」

管理人は眉間にシワを寄せて、小さく舌打ちする

?「おい、そんな考え込むってことは限界って

ことじゃないか?」

獅子獣人「また君か。まぁ限界だ。こちらから彼を

呼ぶことは不可能になったことでな」

?「なら俺に任せろ。ナックルを殺す、だろ?

すぐできるさ!」

獅子獣人「任せる...ですか。いいでしょう。ただし」

?「ただし...なんだ?」

獅子獣人「追加でコイツも頼む」

管理人は手を叩き、ある人物の立体映像を映す

獅子獣人「ランケールという男だ。コイツは

私の契約を踏みにじった元凶だ。ついでに頼む。

あと...」

?「まだ何かあるのか?」

獅子獣人「この2人以外は殺さないように」

?「するわけねぇだろ?この世界は、

“餌場”なんだろ?」

獅子獣人「そうです。分かっているならいいです。

よろしくお願い致しますよ?」

?「任せとけ。“こっちのアイツら”使ってすぐ

ぶっ殺してやるよ。じゃあ、またな」

長髪茶髪の男はそれだけ告げると部屋から出る。

獅子獣人「さて...記憶を失ったあなたにとって

見たくないものと戦うことになりましたね?

これは少々見ものです」


フラット「よし!片付け終了!」

ノール「こんなにいらない書類が残ってるなんて、

結構ペーターって面倒くさがる方?」

ペーター「いや、俺とナックラーだけで片付けなんて

手が回らなかっただけだよ。それにナックラーは

ミスばっかするから余計に書類が増える」

ナックル「俺のせいか⁈すまん!」

エド「でも、いきなり何すか?片付けやるなんて

普通言わないっすよ」

クレア「人数が増えてこのオフィス

結構狭くなっただろ?新しいデスクを買うから

スペースを広くしようってことでここの棚を

どかすことにしたんだ」

スター「あれ、その中に種仕舞ってたんだけど

どこに置いたの?」

ナックル「それなら机の上だぜ。ほら、そこ」

スター「あ、本当だ。ありがとね、ナックラー!

じゃあ中庭に埋めてくる!」


数分後ー

ピンポーン

ペーター「誰だ?今日は客の予定なんてないはず...」

ガチャ

フォール「初めまして!アカデミー京都支部、

デ・ジャポネから来ました、フォールです!」

ペーター「ちょ、君!こちらが開けるまでは

勝手に入らないように!で?フォールだっけ?

君のことは聞いてるが明後日だろ、こっちに来るのは」

フォール「あれ、そうでしたっけ?四大の方からは

今日行けって言ってましたが」

ペーター「君の酒癖が荒いから四大の方は信頼されて

ないんじゃないか?」

フラット「酒癖が荒いって...どんな」

ナックル「酒好きか!バルシアと気が合いそうだな!」

フォール「お、酒好きがいるのか!飲んで夜が

開けるまで夢を語り合えます!」

ノール「いや、語れないと思う。アイツ、最近

デロデロで帰ってくるから」

ペーター「最近、営業課の方も調子が良さそうだしね」

スラリア「ねぇ、ちょっと手伝ってよ!

こっちまだ終わってない!」

フラット「あ、ごめん!ペーターさん、話は

そっちでお願いします!」

ペーター「分かった。フォール君、こっちに」

フォール「片付けですか?すぐ終わりますよ!」

スラリア「いや、この棚の中まだいっぱいー」

フォール「いいから。よっと!」

棚の引き出しを次々とフォールは簡単そうに出す

フォール「あとはいらなさそうな書類を

分類するだけだろ?まぁ見てけば分かる。

これは...いらない、こっちはいる...」

フォールはヒョイヒョイと書類の分別をつけていく

フォール「はい、これはシュレッダーに。こっちは

とっておけ」

スラリア「す、凄い...今年の分の書類だけが

まとまってる!」

ノール「たった3分で...」

フォール「おっと、じゃあ引き出しを元に...」

ナックル「なぁ、あの引き出し結構歪んでたよな?」

ペーター「あぁ、長年使っててガタが来てたはずだが」

エド「でも、あんな楽々戻せてるっすよ?」

フラット「手先が器用だね、フォール」

フォール「まぁ、旅人だったからな、ここに来るまで」

スター「えっ、京都から浅草まで歩いてきたの⁈」

フォール「あぁ、いい景色だったぞ!」

ノール「現代の松尾芭蕉って感じ...」

ペーター「あ、それでファイターについてのことだが...

ここに英語でサインを書いてほしい」

フォール「あ、はい...これでいいですか?」

ペーター「たしかに。でもいいのか?正社員に

なれるっていう話を断ってまでここに...」

フォール「いいんですよ。それに...お前が

フラットだろ?四大もざわつくほどのファイターって。

お前と一戦交わしたかったんだよ!」

フラット「一戦⁈生で...⁉︎」

フォール「ダメか?」

フラット「あのね...せめてイベントにして」

フォール「あいよ。にしても...」

グ〜...

エド「腹減ってるっすか?」

フラット「あ、もう昼だもんね。それじゃ食堂に...」

フォール「いや、レストランがいいな!東京の味は

食ったことなかったしな!」

スラリア「何系がいいの?中華とかフレンチとか

バイキングとかさ」

フォール「バイキングだな〜、考えるのダルいし」

ノール「それをダルイって...まぁいいけど。

バイキングといえば、今日は火星堪能コースが

あったような気がした」

フラット「マジで⁈行こう、行こう!すぐに行こう!

行っちゃおう!」

ナックル「落ち着けって!辛い物好きなフラットは

一旦置いとけ!」

フラット「早くしないとなくなっちゃうよ!」

フォール「フラットは辛い物好きか!俺と同じだな!」

スラリア「でもフラットの料理は普通に美味しいよ」

エド「そうっすね、茶碗蒸しは最高っす!」

ノール「あれを食べた覚えはあるけど、味を

覚えてないんだが...分かるか?」

クレア「お前、食った後倒れただろ?」

ノール「そうだったっけ...覚えてない」

フラット「嬉しい反応だったけど多分二度と

ノールには出さないかな」

ノール「何でだよ⁈くれよ!」

フラット「いや、倒れた後の処理が大変だったんだよ!

普通にここから医務室まで遠いし」

スラリア「そんな美味しい茶碗蒸し、食べてみたい」

フォール「それは帰ってからにして、まずは

バイキングに行くことにしよう!」


フラット「それじゃ、思い切って火星堪能しちゃおう!

レッツバイキング!」

ノール「その前に消毒しとけ。さっきまで掃除を

してたんだから」

ナックル「そうだぜ、それで食中毒なんか起こしたら

責任とれるのか?」

フラット「うっ...それもそうだね...」

スター「スターは手洗いしたから...お兄ちゃん、

一緒に取り行こ!」

クレア「お、いいぞ!行こうか」

エド「ナックラーさん、俺達も取り行くっす!」

ナックル「おう!フラット、消毒終えたか?」

フラット「うん、ってあれ?フォールは?」

スラリア「先に行ってたけど?」

フラット「嘘っ⁈もう、あれこれ話しながら決めようと

思ってたのに...!」

エド「あ、待つっす!もう...俺達も行くっすか」

ナックル「そうだな」

グラグラ...

ノール「地震⁈机の下、隠れないと!」

エド「そうっすね!」

ナックル「そうだな!よいしょっと!」

エド「なんか...揺れ方おかしくないっすか?」

ナックル「なんだこの感覚...ゴロゴロ街が転がって

いるような...?」

ノール「なんだなんだ?次は天変地異が敵さんか?」

フラット「皆、大丈夫⁈」

ナックル「お前、地震の最中走るな!」

フラット「だって気になったし...」

スター「それに揺れがだんだん強まってるから!」

クレア「客の避難を誘導した方がいい!」

フォール「スラリアが今1人でやってる!こっちだ!」

ナックル「分かったぜ!」

エド「そうっすね、入り口が塞がれたらまずいっす!」

クレア「裏口からも誘導してる!フラットとエド達は

スラリアの方の入り口を!」

フラット「分かった!裏口は任せたよ!」


フラット「ゆっくり!走らないで!忘れ物は

回収しているので!」

エド「頭を手で守るっす!」

ナックル「あと少しだぜ!」

ノール「だが揺れ方、尋常じゃない。上下じゃない、

バカ虎が言ってた通り街が転がってるような感覚だ」

フラット「よし、避難終わ...り?」

フラットの目に異様なものが映る。空に大きな穴が

ポッカリと空いていた

フラット「ねぇ、あれ」

エド「何すか?何もないっすよ?」

フラット「えっ、あそこに穴が!」

しかしそこには穴などなかった

フラット「あれ...見間違い...かな?」

スラリア「ありがとう!避難完了だよ!」

フラット「スラリア、空見てた?」

スラリア「えっ...見たかもしれないけど

なんかあった?」

フラット「う、ううん!何でもないよ」

ナックル「裏口の方は終わったのか?」

クレア「終わったぞ!」

フラット「分かった!」

フォール「チェ〜、折角のバイキング食べ損ねた〜!」

フラット「地震はしょうがないよ。ほら、僕達は

避難した人達の貴重品が残ってないか見回ろう」

クレア「地震もおさまった事だしな」


スラリア「でも、変な揺れ方だったね、さっきの地震」

スター「うん、街が転がってるような...」

ナックル「あぁ、でも脅威とかの理由じゃ

なさそうだし、これは地震観測所から情報が来るまで

待機だな」

フラット「そうだね、あ!財布置きっぱなし!スター、

外で忘れ物があって不安な人達が待ってるから

渡してきて!」

スター「はーい!」

フラット「クレア達の方はどうだろ...」


クレア「二階席の方は忘れ物多いな...もう23個だぞ」

エド「あ、またあったっす。これで24個っす」

ノール「下の方はあまりなさそう。あったような声が

聞こえない」

フォール「あ、飲みかけの酒!これは飲みだ!」

クレア「おい、また!お前どんだけ飲むんだ⁈」

フォール「まだ49杯目だ!全然いける!」

エド「バルシアより強いっすね...」

ノール「これで二階は終わり。それじゃこれを

外に待ってる人に届けよう」


フラット「終わったね。さて、昼食どうしよう?」

放送「デ・ロワー付近に竜巻発生!」

クレア「竜巻だぁ⁉︎風が騒いでない...いや、

違う⁈誰かが操ってる!」

?「こんな...ものかな?指示通り...動いたけど」

クレア「誰だ、お前⁈」

?「クレアラント・ゴールドです」

フラット「クレア⁈」

ノール「ど、どういう事だ⁈」

エド「まさか異世界線のクレアっすか⁈」

ナックル「待て。指示通りと言ったな...

誰の指示だ⁈」

クレア?「そ、そこの人です...」

クレアと名乗る人物はフラットを指さす

フラット「僕...?」

?「おい、余計なことを言うな、役立たず!」

クレア?「ぐっ⁉︎」

急に現れた長髪茶髪な男が神器をクレアと名乗る人物に

突き刺す

ナックル「あれは...⁉︎まさか!」

?「おう、お前か、こっちのナックルは!

俺のいた世界とは大違いだな!」

ナックル「独裁...フラット⁈」

ノール「独裁フラット...そうだ!思い出した!

フラットは...独裁...!」

クレア「罰金レベルの罪さえ死刑にした...

あの独裁フラットか⁉︎」

エド「そんな奴がデ・ロワーに⁉︎まさか...俺達のこと

騙すつもりっすか⁈」

スラリア「どうなの⁉︎フラット!」

フラット「な、なんのこと?独裁フラットって...」

スター「嘘だよね...?フラットが、

あの冷酷無慈悲な連続殺人を犯した犯人って...」

フラット「ちょ、本当に...何のこと⁈」

「そのことを知る必要はないわ」

「フラット、オマエハオマエデイレバイイ」

ナックル「お前ら...!」

シャリー「お兄さん、後でちょっと付き合ってね。

まずはあの人から逃げないと」

センリ「イデヨ、アリジゴク!」

フラット「えっ、アリジゴク⁉︎」

シャリー「大丈夫よ、あれはペットのようなもの。

指示を与えたものだけを食うように躾けてあるから」

センリ「イマノウチニ、ニゲルゾ!」


スラリア「...フラット...」

ノール「信じるべきなのか...信じないべきなのか」

フラット「...クレア?」

クレア「すまん、今はお前と話せそうにない」

フラット「...シャリー、ここは?」

シャリー「もうすぐ分かるわ。暗くてよく

分からないでしょ?足元気をつけてね」

フォール「ふーん、アカデミーの情報通りだ」

センリ「?俺達のことをアカデミーも探りを

入れ始めたか」

シャリー「あ、じゃあ明かりつけるわ」

フラット「えっ...ここって...!」

シャリー「えぇ、地下鉄の線路よ。今は廃線だけど」

センリ「ここに俺達のアジトがある」

スター「...ねぇ、何でスター達も呼んだの?」

シャリー「誤解を解くためよ」

センリ「独裁フラットはもういないってことを

教えるためでもある。ナックル、

まだ伝えていなかったか」

ナックル「だってよ...フラットに嫌なこと

思い出さしちまうって思うとよ...」

センリ「はぁ...おっと、ここがアジトの入り口だ。

入るぞ」

ガチャー

「お、やっと来ましたね。フラット君、久しぶり」

フラット「えっ、あなたは!」

スラリア「ランケール⁉︎」

ランケール「フラット君、君は独裁フラットについての

記憶はないよね?」

フラット「はい、全く」

ランケール「何故だか教える時が来たようだ。

皆、ここに座ってくれ」

全員は大きめのソファに腰を下ろす

ランケール「まず初めに、独裁フラットの存在から。

独裁フラットは7972年から8014年にかけての42年間に

渡って存在していた。罰金レベルの罪さえ死刑にした

フラット君だ。ただ、我々がフラット君を無理矢理

人工アリジゴク計画に招き入れ、その独裁フラットの

存在だけを消滅させることに成功。これで、

フラット君が死ぬまではその存在は誰もが

忘れるはずだった。しかし...」

ナックル「フラットは途中で死んだ、というより

死んだ瞬間に別の魂が宿った」

ランケール「そのせいで、ファイターの素質を持つ

人々は、フラットを知り、更に独裁フラットの事を

思い出してしまえばその記憶が蘇るという

異例の結果になってしまった」

シャリー「それでも、独裁フラットの存在は、

お兄さんの魂の中にはないわ。だって違う世界から来た

魂なんだから」

センリ「ところで、少し問いたい。管理者という

存在を知っているか?」

ノール「管理者...たしか全ての世界線を管理する者だ」

センリ「そう。そいつはこの世界を

1番発展しているからとアリジゴクの餌場にしている。

あそこにいた独裁フラットの狙いはナックルと

ランケールさん。理由は言わずとも本人が

分かってるはず」

フラット「...ここまで来たら言わないと!」

ナックル「皆!俺は...人工アリジゴク裏計画に

携わっている!」

エド「えっ、ナックラーさんが...裏計画に?

嘘っすよね⁈」

ナックル「...すまねぇ」

エド「そんな...!」

ナックル「ただ信じてくれ!フラットは...フラットは

独裁フラットなんかじゃねぇ!お前らの...

仲間だ!それだけは...信じてくれ」

ランケール「こればかりは私からも頼む。

フラット君をもう一度信じてほしい。断じて

フラット君はあの頃とは違う。ナックルもそれは

承知している。生まれ変わった彼を...見捨てないで

もらいたい」

ノール「そんな事言われても...」

クレア「俺は...どうすればいいんだ⁈」

エド「ナックラーさんが...裏計画に...

信じてたっすのに!」

スラリア「分からない...誰を信じればいいの?」

スター「ねぇ!もう帰ろうよ...」

フォール「こんなもんかよ!フラットがお前らに

してきたことは!」

ノール「えっ?」

フォール「そんな過去一つで信頼をなくすほど、

フラットがお前らにしてきたことは薄っぺらいこと

だったのか⁈」

クレア「フラットが...俺たちにしたこと...」

ノール「…あの時…」


フラット「正しいかどうかは自分で決めるものだよ!」


ノール「私に…正しさの意味を教えてくれた」

クレア「…俺には…」


フラット「正直に言えばいいのに。村を守ってるって」


クレア「俺に正直になれって言ってくれた。誰かの力になることの

幸せを教えてくれた...」

エド「俺は...」


フラット「エドの笑顔が見たいー

辛い時はこうやって一緒にあったまって、

忘れちゃおうよ」


エド「俺を...1人じゃないって...励ましてくれたっす」

スラリア「私には...」


フラット「よく頑張ったね」


スラリア「私に出来ることを教えてくれた」

スター「スターはね...」


フラット「僕達全員友達だよ!ー

僕も手伝うよ!」


スター「スターを手伝ってくれた!」

フォール「お前らがフラットから貰った今はそんな

簡単に手放せるものなのか⁈」

ノール「フラットと出会えて私も変われた...

フラット。信じるよ、お前のこと。疑ってごめん」

クレア「俺も悪かった。お前と会えたからこそ

こうやってファイターになれたのに仇で返しちまって」

エド「俺もっす。フラットがいなかったら俺は

ずっと人間嫌いのままだったっす。

その...ごめんなさいっす」

スラリア「私もごめん。つい疑っちゃって...

フラットが色々と親切にしてくれたから私もまた

役目も願いも叶えられたのに...」

スター「フラット、ごめんね。スターのこと、

優しく接してくれたのに...信じるよ!」

ランケール「さてと、フラット君は一件落着か」

ノール「だが、バカ虎を信じるのは流石に無理だ。

裏計画に協力しているやつとは戦えない」

フラット「えっ...」

ナックル「フラット、当然のことだ。驚くな」

フラット「...うん」

エド「フラット!その事...知ってたんすか?」

フラット「一応だけど...言ってどうこう出来ることじゃ

ないから言えなかったけど」

スラリア「それもそうだよね」

クレア「とにかく、俺はフラットは信じる。けど、

そいつは信じない。それでもいいだろ?」

フォール「俺は信じる。両方ともな」

スター「私も2人を信じるよ!ナックラーの温もりは

本物だったから!」

エド「信じ切れはしないっすけど、ナックラーさんが

いたから俺がいるわけっす。だったら受け入れるしか

ないっすよね!」

センリ「とりあえずは一安心だ。このままフラットの

信頼をなくすことはあの男の思う壺だ」

シャリー「それでね、お願いがあるの。表計画を

協力しているランケールが何故か狙われているの。

護衛をお願いしたいのだけれど...」

吸血鬼「護衛を?冗談じゃねぇ!

俺が護衛係だろうが!」

センリ「ミッシェル!お前1人で勝てる相手じゃ

ないんだ!今回は特にな!」

ミッシェル「あんだと〜⁉︎俺のことナメてるのか⁈」

シャリー「落ち着いて!ミッシェルが主には

護衛を任せるけどこの人達も含めてランケールをー」

ノール「私は協力しない。人工アリジゴク自体、私は

大嫌いな考えだから」

クレア「そこは同じだ。死刑の代わりと言っても

存在を消されるのは嫌だからな」

エド「しかも大罪人を生かしとくなんてそんなの

正義なんかじゃないっす!」

スラリア「そうかな?死んで全ての罪を償えるとは

思えないけど」

スター「うん、スターもそう思う!死んだら

そこまでだもん。大罪を償いきれるわけない」

フォール「しかしそれを行えば、大罪人による犠牲者の

記憶までもがなくなる」

フラット「...嘘...」

シャリー「だからお兄さんは悪くないわ。

お兄さんの魂はフラットじゃないんだから」

エド「さっきからフラットの魂じゃないって

どういうことっすか?」

センリ「あぁ、それはー」

ミッシェル「この世界のフラットが死んだ瞬間に

別の魂を管理者が吹き込んだってわけだ!」

ノール「別の魂って?」

ランケール「異世界線のフラットだ」

クレア「だったらドッペルゲンガー現象が起きて

フラットは...あぁ、そっか、死んでるのか」

シャリー「そういうことよ。だから、

ドッペルゲンガー現象が起きて消滅することは

なかったの。ただそれだけ」

スラリア「だったらあの独裁フラットは何で

この世界に存在できるの⁈フラットがもしも

人工アリジゴク計画に携わらなかったらっていう

世界線のフラットでしょ⁉︎」

センリ「人工アリジゴクは何を喰ってその存在を

消すか知っているか?」

スラリア「し、知らない」

センリ「その存在が生きた証だ。これは普通の

アリジゴクと一緒だ。魂の紡ぎあげた軌跡を

喰らい、栄養に変える。人工アリジゴクはその軌跡を

どう喰らうか抑制できるものだ。つまり、

このフラットは独裁フラットだった頃の魂が

欠けているっていうわけになる」

シャリー「それで、あのフラットの持つ魂は

何一つ欠けてないものだからドッペルゲンガー現象が

起きずに存在できるの」

エド「小難しい話っすね...」

スター「チンプンカンプン...お兄ちゃん、分かった?」

クレア「何となく...でも協力する気はない。

これだけは覚えとけ」

ランケール「別にいいよ。君達には、やるべき事が

もう一つあるからね」

フラット「もう一つ?」


2節 裁きこそ全て

フラット「もう一つ?」

ランケール「フラット君も見ただろう?あの空に

ポッカリ空いた穴が」

フラット「あれ...見えたんですか⁈」

シャリー「やっぱり見えてたのね。お兄さんぐらい

特別な指揮者なら見えると思ってたわ。私も

見えてたけど」

ノール「その穴がどうかしたのか⁈」

センリ「あの穴から、独裁フラットはあるものを

たくさん呼んでいる」

エド「あるものって何すか⁈」

シャリー「東京の面積を超えるほどのアリジゴクよ。

あの地震もそれがきっかけ。それに、フラットが

仲間にしたあなた達も次々と...」

クレア「じゃあ、アイツは!」

センリ「そう、お前だ、クレア。と言ってもあれは

コピーだ。人工アリジゴクにクレアの細胞を

混ぜて作られた」

クレア「なら良かった...目の前で俺が殺されたかと

思ってたわ...」

ノール「でも、そうなると他にもコピーが!」

シャリー「正解よ。次々と現れているわ。

王子、渋谷、日比谷、鶯谷...あちこちで出現しては

各地区のファイターが倒している感じね」

スラリア「じゃあ、急いで戻らないと!」

ミッシェル「おい、忘れているのか?今、デ・ロワーは

竜巻で機能しねぇんだぞ!」

フラット「...あれも、僕がやってる事なんだよね」

ナックル「フラット、それは違うぜ。今のお前は

あのお前じゃない。れっきとしたファイターだ!」

フラット「分かってる。分かってはいるつもりだけど...

納得できないんだ‼︎分かったら僕の罪は...」

ノール「...フラット。お前はお前だ。昔のことで

悔やむのはらしくない」

クレア「そうだぞ、お前は俺達に未来をくれた。

想像もしなかった綺麗な未来を。だからお前は

笑ってればいい。俺達も力になってやるから!」

エド「フラット、俺がついてるっす!それに、

約束してくれたじゃないっすか!辛い時は

一緒にあったまって忘れようって!俺が

フラットのこと、あっためるっす!」

スラリア「フラットが私の悩みを解決してくれたように

私もフラットの悩みを解決したい!」

スター「フラットの手伝い、スターもしたい!」

フラット「皆...ありがとう!」

ノール「な、泣くなよ...」

クレア「ったく、感情に素直なやつだな」

フォール「で、どうするよ?とりあえず今日は

解散か?」

フラット「そうだね。意見もバラバラだし、協力を

決めたらここに来る。それでもいい?」

全員「了解」

ランケール「すまないね。気遣ってもらって。

じゃあお見送りを...ミッシェル、頼む」

ミッシェル「俺ですか⁈わ、分かりました...」

シャリー「お兄さん、ちょっと待って!」

フラット「どうしたの?」

シャリー「独裁フラットのことは考えなくていいわ。

だって、お兄さんの心じゃないとあのフラットは

暴走を続けるはずよ」

フラット「分かった、約束する」


ミッシェル「ったく、何で俺がコイツらを...で?

協力すると決めたやつはいるのか?」

フラット「僕は手伝う。センリさんには

お世話になったし」

スラリア「私も協力する!死刑の代わりという考え方は

賛成だったし、ランケールには恩返ししないと!」

スター「スターも!」

ナックル「...俺は元からだろ?」

ミッシェル「そうだな。お前は協力したほうがいい」

フラット「...あとはいない?」

フォール「俺も協力するぞ。すまない、考え事してた」

フラット「じゃあ5人か、丁度いい人数じゃない?」

ミッシェル「分かった、5人な。お、俺の見送りも

ここまでだ。吸血鬼に日光は天敵だ」

クレア「そうか。それじゃ、ここでお別れだな。

俺達は協力しない組でやってるぞ」

ノール「それじゃ、また。フラット、バカ虎に

虜になるのはやめた方がいい」

エド「...やっぱ俺、協力するっす!

人工アリジゴクに賛成ってわけじゃないっすけど、

ナックラーさんを正義に戻すためっす!」

フラット「エド...分かった。一緒に!」

エド「はいっす!」

ミッシェル「俺はアジトに戻る。ではな」

フラット「それじゃ僕達も...家に帰ろっか」

全員「了解」


ミッシェル「入るぞ、アイツらの6人は

協力するとー⁉︎」

ミッシェルの目の前にはぐちゃぐちゃになったアジトと

独裁フラットが血だらけになったランケールの腕を

強引に引っ張っている姿を見た

ミッシェル「ランケール⁉︎貴様ァ!」

独裁フラット「おっと、乱暴なやつだな。

俺に歯向かうとはいい度胸してんじゃねぇか?

いいか?この世は法が全て。守れないなら死、

あるのみ。消えろ、雑魚が!」

ミッシェル「シャリー!いねぇのか⁈」

独裁フラット「俺がここに来た時には、コイツ1人しか

いなかったぜ?裏切られたんじゃないか?」

ミッシェル「なっ、裏切り...⁉︎くそ!」

扉を慌てて開けて、ミッシェルは日傘もなしに

日光だらけの外に出る。苦しみも涙も忘れてただ走る


フラット「ここで分かれ道だね。また明日!」

エド「はいっす...あの...フラット!俺、

さっきのこと誤って済むとは思ってないっす。

だから...明日、なんか奢るっす!」

フラット「...分かった。約束だよ!」

エド「はいっす!それじゃまた明日っす!」

フラット「うん!」

ナックル「...フラット。俺は今日、お前とは

離れてていいか?」

フラット「えっ?」

ナックル「お前には迷惑ばっかかけちまってる...

俺こそ疫病神なのかもなぁ」

フラット「バトラー...無理しないでよ、目、

潤んでるよ?」

ナックル「あ...マジか...俺、お前の前だけでは

泣かないって決めてたのによ」

フラット「昔は泣き虫だったもんね!」

ナックル「昔の事は言うな!でもよ...無理しねぇと

俺は生きられねぇ」

フラット「ナックルさん...変な事考えないでよ?」

ナックル「安心しろ。俺がそんなこと考えるわけが

ないだろ?」

フラット「なら...いいけど」

ナックル「それじゃあな。また明日、必ず会おうぜ」

フラット「必ずだよ!いなくなったりしないでよ!」


翌日ー

フラット「ふわぁ〜、よし、向かうか」

ガチャー

シャリー「お兄さん...!」

センリ「フラット」

フラット「うわっ、何⁈」

シャリー「ランケールが...連れてかれちゃった!」

センリ「早く来てくれ!ナックルもいないんだ!」

フラット「ナックルさんも⁉︎分かった、すぐに向かう」


エド「あ、来たっす!」

スラリア「やっとだね。全員集合したよ」

スター「ナックラーもいないって本当なの⁈」

フォール「手の早いやつだ」

シャリー「まだアイツがどこにいるのか分からないの!

お願い、手伝って!」

センリ「俺からも頼む。ランケールがいるから

俺がいる。その恩を返すためにも!」

フラット「分かった!デ・ロワーの地下に行こう!」

エド「そうっすね!向かうっす!」

シャリー「そこに行けば情報を掴めるの⁈」

フラット「うん!信じて!」

センリ「分かった、信じよう!」


独裁フラット「アハハハ!無様なもんだな〜!

ランケールに至っては裏切られるなんてよ!

なぁ、バトラー?どうやって死にたい?

クレアの弓か?エドの拳か?スラリアの斧か?

スターの悪夢か?それともノールの破壊?

もしくは...俺の裁きか?」

ナックル「ぐっ...フラット!俺は知っている!

お前が何故独裁をしてまで法に縛られたか!

お前は間違っている!」

独裁フラット「知っている?だからなんだ!」

ナックルの頭に神器が振り落とされる

ナックル「ガハッ⁉︎知っているからこそ...アイツを

救えた...!お前の過ちから...解き放たれた」

独裁フラット「ふんっ!過ちは消せない。戻せない。

だから全ての罪人は消すべきなんだ。俺の裁きに

間違いなどない!」

クレアに化けたアリジゴクがナックルに矢を射る

ナックル「グッ...!」

独裁フラット「ゆっくりと苦しめながら殺してやるよ。

いい声で鳴いてくれよ?」


フラット「バジー!」

バジー「フラット様、準備はできていますわ!巨大な

アリジゴク反応が検知されています!」

エド「どこっすか?」

バジー「それが...東京の至る所に!」

スラリア「これじゃ特定できないよ!このままじゃ...

ランケールは!」

スター「落ち着いて。慌てたら終わっちゃう」

シャリー「ランケール...!」

センリ「俺がコイツらを全て喰らえば!」

シャリー「ダメよ!一気に喰らえば本物の

人工アリジゴクになっちゃう!」

フラット「本物の...?」

センリ「...俺は、普通にしてれば普通の獣人だ。

だが...戦闘モードの姿、覚えてるだろ?」

スラリア「あっ...まさか!」

センリ「そう、俺の戦闘モードこそ

人工アリジゴクなんだ。俺はなんとか

人工アリジゴクになりきる前に研究所から

抜け出せた。だが...俺は成り切ってはいないとはいえ

人工アリジゴク。人間を喰らわなきゃ生きれない。

そんな時、この体に出会った」


センリ「...キレイだな...この街は。俺には...

似合わない」

人工アリジゴク?「どうして...泣いている?

どうして...悲しそうな瞳をする?」

センリ「⁉︎...人工アリジゴクか...災難だな、

俺と同じように人生を弄ばれて」

人工アリジゴク?「そうか...お前も何かあったのか...

俺は仲間を救うために死んだはずが...目が覚めれば

このザマだ...腹も減って...」

センリ「だったら俺の体をやる。俺の体で

生きてくれ」

人工アリジゴク「し、しかしお前はー」

センリ「俺は疲れた。金に、力に振り回されることに」

人工アリジゴク「...!」


センリ「そして俺は飢えに逆らえなく、コイツを

喰った。だが...決して魂までは喰らわなかった。

アリジゴクを喰らうまでは、何度も喰いたいという

本能と戦っていた」

フラット「ねぇ...お前は誰なの?」

センリ「...俺は......グリテール」

フラット「やっぱり。ナックルさんのこと詳しいなって

思ってたんだ。じゃあ...知ってるでしょ?

裏計画に携わってる理由」

センリ「それだけは言わん。恥ずかしいからな」

フラット「...じゃあそうみたいだね。やっぱり

ナックルさんはファイターだ!」

エド「何すか、1人で盛り上がって?」

スラリア「今はそれより2人をー」

ガタン!

ミッシェル「ランケールはどこだぁ⁈」

シャリー「ミッシェル⁉︎」

センリ「良かった...ってボロボロじゃねぇか!

どうした」

ミッシェル「テメェら...裏切りやがって...このぉ!」

スター「暴れちゃダメだよ!安静にして!

今ケガ治すから!」

ミッシェル「離せ!コイツらはランケールを...!

見捨てやがった!」

スターに治療されながらもミッシェルはそう叫ぶ

センリ「それは違う。ランケールからの撤退命令だ。

俺達だって従う気はなかったが...」

シャリー「でも、あれだけの声で言われたら

従うしかなかったの...ごめんなさい!」

シャリーはポロポロと涙を流しながら謝罪する

ミッシェル「撤退命令...か。そういうことか。

くそっ!俺が見送りになんか行かなきゃ...!」

センリ「ミッシェル。そう思うな。まだ手はある。

やるだけやってから悔め。まだ何も動いてないだろ?」

フラット「そうだよ!やってみよう!」

フォール「やることやって失敗したら悔やむ。

当たり前のことだな」

バジー「私ももう一踏ん張りやってみますわ!

神力をキャッチできれば...!」

スラリア「どう?できそうなの?」

バジー「...できましたわ!ナックル様の神力を

キャッチ致しました!場所は...えっ?

スパークフラッシュ号格納庫?」

フォール「この扉の先か!」

フラット「そんな近くに⁈急ごう!」

全員「おーっ!」


独裁フラット「?誰かが近づいてきてる。

ラッキーだな、助けかもしれん。どうするかな。

まぁ、ここは俺のペットの相手にでもなってもらおう」

ナックル「フラット達か...?ダメだ、来るな!」

ランケール「いや、フラット君達は来るだろう。

あの子は変わったんだろ?」

ナックル「変わったからこそ、来てほしくない!

俺は...アイツらを失ったあの日から

ファイター失格なんだ...だからー」

ランケール「そんな弱音を吐けるなら、今は

あの子達を信じろ!」

ナックル「⁉︎」

ランケール「あの2人を忘れられない気持ちは分かる。

だが、あの子達は死んでしまってもいいなんて考えを

持っているわけがないだろ!フラット君が

彼らに教えた事はそんなものだったか⁈」

ナックル「...ちげぇな。そうか、俺は

救われていいのか。ファイターとして」

ランケール「あぁ、お前はファイターでいろ。

フラット君がいつも笑顔でいられるために」

ナックル「分かったぜ。フラット、お前も

ここに来い、絶対に!」


フラット「格納庫はこっちだよ!」

独裁フラット「やっと来たか。さて、楽しませて

もらうか!俺達ヴァイスグループ、デ・ロワーが

たっぷりもてなしてやる!」

フォール「ヴァイスグループねぇ...ファイター企業の

デ・ロワーが迎え撃ってやる!」

スラリア「ヴァイスに負ける私達じゃない!

フラットが教えてくれた!出来ることをしろって!

だから私は戦う!もう自分に負けたりしない!」

スター「自由は自分で見つけるものだって

皆が教えてくれた!だからスターも皆の幸せを

探す手伝いをする!」

エド「ナックラーさんの正義があったからこそ、

俺はファイターって夢を持てたっす!憧れを...

憧れで終わらせるわけにはいかないっす!」

フラット「いくよ!必ず2人を助けるんだ!」

全員「了解!戦闘モード起動!」

センリ「俺達もいくぞ!シャリー、頼む!」

シャリー「分かったわ!戦闘モード起動」

独裁フラット「まずは1人目、ノール!」

ノール?「任せとけ。殺し屋の実力を見ときな!

第一殺人『闇之』術・『幾多刃乱舞』!」

フラット「そっちのノールは殺し屋のままか!

だったら解決は早い!ノール、お前は親を殺した、

そう思ってるだろ!」

ノール?「そ、それは!」

フラット「お前は人を傷つけるのを嫌う!

これもハッタリだ!」

ノール?「ぐっ...」

フラットの言葉でノールの神器は消える

独裁フラット「何だと⁈」

フラット「お前は仲間のことを何も知らない。

だから負ける。仲間を仲間と思ってないから」

独裁フラット「チッ、役立たずめが!消えろ、

神業・死刑!」

天井から何本もの鉄柱が降ってくる。それらは

そのノールを下敷きにする

フラット「なっ⁉︎」

エド「ノールが...⁈酷いっす!」

スラリア「仲間のことを道具としか思ってないの⁈」

独裁フラット「俺に貢献できないやつは殺す!

俺の名誉を傷つけたわけだからな!」

スター「酷い...!人の命をゴミのように...!」

フラット「...ノール...僕がバルシアやキルユウのように

救ってあげたかった...ごめん...でも...!」

その瞬間、耳の奥から声が聞こえた。

謎の声「もういい」

フラット「えっ…誰⁉︎」

謎の声「俺はお前だ。その体の中にいた俺だ」

フラット「まさか……でも何で⁉︎」

謎の声「俺は残った。お前の魂に封じられてな。でもお前の思いと

今俺が思ってる思いが一つになり、俺を呼び覚ました。

さぁ、俺とお前で1つになれそうすれば、

勝機が見える!」

フラット「……分かった。信じるよ、独裁フラット!」

謎の声「あぁ、お前に託す!俺の未来も、

お前の作り上げる未来も!」

謎の声を発する何かがフラットの中に入る。

力強い思いや温もりが身体中をこだまする。

そして、“失われた42年間”がフラッシュバックし、

気付けば涙を流していた。

フラットは涙を拭い独裁フラットを睨む

フラット「……敵討ちなんて考えたくもなかったけど...

僕がお前の思い受け継ぐから!覚悟しろ!」

独裁フラット「生意気を言うな!お前1人に

何が出来る」

フラット「1人?僕は1人じゃない!この皆がいる!

1人だった僕は、もういない!」

ナックル「フラット...!思い出したのか?」

ランケール「あの攻撃でのショックで思い出しかけたのかもしれない。

だが...思い出したらどうなるか...」


フラット「思い出したよ。あの42年間のこと。

僕は探してた、本当の温もりを。

それは今、ここにある!もう迷わない、僕は...!」

独裁フラット「くっ、ほざくな!たかがお前に

俺を倒す事は不可能!絶対にだ!」

フラット「皆、いくよ!」

スラリア「仲間を殺すなんて行為...フラットは

絶対にしない!独裁フラット!お前にフラットなんて

名乗らせない!私の力を思い知れ!」

独裁フラット「たかがサポーターに何が出来る⁈」

スラリア「私はもう...サポーターじゃない!

第一死導『木喰』術・『死音奏風林』!」

独裁フラット「何っ⁉︎幻術⁉︎」

スラリア「そして草木が枯れれば全ては無に帰す」

独裁フラット「⁉︎ぐっ!」

スター「ノールを...よくも!絶対に許さない!

第一悪夢『炎』術・『生炎身焼』!」

独裁フラット「まずい、ここは退くべきか!」

フラット「逃がさない!

第一審判『炎』術・『永久黒炎結界』!」

独裁フラット「ぐっ...!」

エド「やったっすか⁉︎」

フラット「逃げられた。とりあえず、

ナックルさん達を!」


ガゴン!(スパークフラッシュ号の扉を開ける音)

フラット「ナックルさん、ランケールさん!」

ナックル「勝ったのか...?」

フラット「逃しちゃった。でもこれで助けられたし、

一応はOKでしょ?」

ランケール「そうか。だとすると、アイツのことだ。

確実に暴走するだろうな」

エド「暴走するとどうなるっすか?」

センリ「そうか、知らないのか。暴走すると

やつは何もかもを破壊しようとする」

シャリー「残念だけど、独裁フラットは全ての神の力を

持とうとしていたの。もしその力を持っていたら...」

フラット「まさか...!」

ランケール「そうだ...やつがゼウスになってしまう!

ナックル、お前に力を貸す。ミカエルの力で、

やつを倒せ!」

ナックル「倒せって...殺せってことか⁈」

ランケール「そうだ、やれ!」

ナックル「俺が...フラットを...出来ねぇ!

俺には例えアイツが人殺しでもフラットだ!

前と同じように助けるのがー」

フラット「ナックルさん、僕はいいよ。アイツは

ノールを殺した。他の仲間を手にかける前に...

お願い!過ちを繰り返すわけにはいかない!」

スラリア「フラット...分かった。私はやるよ!」

エド「俺もっす!仲間をゴミ同然のように扱う

アイツにフラットを名乗らせないっす!」

スター「...ねぇ!何か来てる...!嫌な予感がする!」

シャリー「えぇ、来たわ!」

センリ「あれを喰うのはムリだ。さてどうする?」

ナックル「俺は...」


それは独裁者の終わりの日―

独裁フラット「離せっ!俺はー」

ナックル「フラット!俺が...教えてやれなかったこと、

教え直してやるからよ。やっと...教えてやれる!」

ランケール「始めるぞ。フラット君、君は過ちを

犯しすぎた。人工アリジゴク、起動!」


あの日からフラットは変わってた。いや、

元に戻っていた。ただ俺達にはその感覚はなかったが


フラット「ナックルさん、大学行こっ!」

ナックル「おう!」


あの日々が、気付けば当たり前になっていた。

いつお前は死んだ?なぜお前は死んだ?

分からないけれど、俺はお前はお前でいてくれて

良かった。例え別の魂でも、フラットが生きてくれれば


フラット「ごめん...」


だからお前の暗い顔は俺が晴らすって決めた。

それでいいって思えた。俺の幸せなんかより

やっと明るくなったフラットに笑ってほしい。

俺は2人のファイターを見殺しにして、フラットに

正しい温もりを教えられなかった俺に、

ファイターと名乗る資格なんてないー


ナックル「ムリだ!殺せねぇ!分かってはいる!

フラットのためだって...でもよ!アイツも

このフラットのようになれるんじゃないかって

つい考えちまう!」

フラット「1人で悩まないで」

ナックル「え?」

フラット「大丈夫。僕がいる、皆がいる。

ナックルさんは1人じゃない。だから悩み込まないで」

ナックル「フラット...お前は変わらないんだな。

そうだ、俺は1人じゃねぇ...!まだやるべきことが

山ほど残ってる...!俺はファイターなんだ!」

無機質な声「更新データを確認。バージョン『哀』を

展開しますか?」

センリ「バージョン『哀』...!」

シャリー「やっと目覚めたわね。神力に」

ナックル「もし俺がアイツを助けられるなら...!

やってやる...!ミカエルの力を持って必ず!」

フラット「...この気迫、いける!バージョン『哀』、展開認証!」

ナックル「この輝き...いけるぜ!」

エド「...なんか分かった気がするっす。ナックラーさんの正義が」

センリ「ナックル。お前の正義をもう一度見せつけろ」

シャリー「私達も行こう!絶対に負けたりなんか

しないってこと、見せつけるわ!」

ランケール「すまないシャリー、君に任せてもいいか」

シャリー「了解よ。行きましょう!」

フラット「僕たちもいこう!」

全員「了解!」


3節 一寸先は光

独裁フラット「俺に敗北を与えたこと...絶対に許さない!」

ナックル「フラット!」

独裁フラット「バトラーか...」

ナックル「...お前は何を求める。俺は知っている」

独裁フラット「だから、知っているからなんだ⁈

何もできないくせに、上から物を言うな!

アリジゴク!全てを喰らえ、全てを壊せ!」

ノール「させないよ!

第一破壊『闇之』術・『闇夜行特急列車』!」

巨大アリジゴク「ギィヤ!」

クレア「これ以上、この街を壊させるか!

第一突風『炎』術・『四方爆破之矢』!」

巨大アリジゴク「ギュウゥ⁉︎」

ナックル「コイツを操るほどお前は力を得たか...

それで温もりは手に入るとでも思ってるのか⁈」

独裁フラット「黙れ!バトラー、お前に何が出来る」

ナックル「...お前を殺す。それが...

俺の出来ることだ!」

フラット「ナックルさん、それでいい。アイツを

生かしとく必要はない。僕は...構わないよ!」

独裁フラット「俺を殺すか...おもしれぇ、

やってみろよ!」

ナックル「戦闘モード起動!」

独裁フラット「何っ⁉︎この輝きは...⁉︎」

ナックル「俺は今だけは...!いや、

これからファイターだ!来い、俺の本当の翼!

『悲哀之正翼』!」

独裁フラット「くっ...負けるか⁈」

ナックル「お前はもう...俺の前に現れるな!

俺の大好きなやつの幸せを...守るためにも!

ハァァァァァァ!」

独裁フラット「ぐっ⁉︎」

シャリー「ナックラーの援護をセンリが!

ミッシェルはアリジゴクを!」

フラット「ナックルさん、僕は援護するよ!

皆はアリジゴクを!」

エド「俺も援護するっす!」

フラット「分かった、来い!」

エド「はいっす!」

独裁フラット「くそ、分が悪い!神業・夢見!」

フラット「これは...スターの⁈」

ナックル「お前の神業になんか負けねぇ!

俺の思いは絶対に負けねぇ!」

独裁フラット「なっ、耐えてるだと⁉︎」

エド「ナックラーさん、任せるっす!」

独裁フラット「エド⁈チッ、グラディウス!」

エド「フラットの神器はそんなに暗い色してないっす!

もっと明るく素直っすもん!お前は偽物っす!

第一鉄拳『光』術・『金剛百裂拳』!」

独裁フラット「ぐっ...!何だこの力⁈本当にエドか⁈」

エド「俺は...フラットに教えられたっす!

俺の正義は...誰かの笑顔を守ることって!

お前の心に正義なんかないっす!」

独裁フラット「ぐっ⁉︎まずい!」

エド「これで最後の一撃っす!」

独裁フラット「くっ、アリジゴク!」

アリジゴクはその声に反応し、触手でエドを吹っ飛ばす

ナックル「エド⁉︎」

独裁フラット「まぁ、もういい。全員は殺すなと

言われたが...もうどうでもいい。この街を...

この世界をも全てぶっ潰してやる!」

ナックル「させるか!この街は...この世界は

守る!俺たちの手で!絶対に!過ちは...

いつか必ず正せる!フラットがそれを教えてくれた!

最終突進『悲涙』術・『放光‼︎涙星タックル』!」

独裁フラット「無駄だと言ったはずだ!

アリジゴク!教えてやれ!」

ナックル「邪魔をするな!ウォォォォォ!」

ナックルに向かって一斉にアリジゴクは群れで突撃するものの、

その全てを一気に振り払い、独裁フラットの所まで辿り着いた。

独裁フラット「何⁈効いてないだと⁉︎」

ナックル「言った通り、テメェを

殺してやる!この世界からな!」

ナックルは独裁フラットを思い切り吹き飛ばす。

独裁フラット「くっ⁉︎こうなれば...!アリジゴク、

降りてこい!」

フラット「う、嘘⁉︎」

ノール「コイツを降ろすな!切り刻め!」

クレア「コイツが落ちれば東京はペシャンコだ!」

その光景を目の当たりにしたフラットの目が変わった。

フラット「...抵抗すれば、無駄になるだけだ!

“俺”に任せとけ!『束縛』!」

独裁フラット「何⁉︎降下が止まっただと⁉︎」

フラット「さぁ、今のうちにやれ!折角“俺”が

作ったチャンス、無駄にするなよ!」

ナックル「フラット...そうか。お前はまた変わったな」

フラット「さて...お前!エドを...この街を

ぼろぼろにしたこと...俺が許すわけねぇ!

この街は俺を受け止めてくれた。だが...

気づかなかった。だけどよ...生まれ変わって分かった。

俺は1人じゃねぇって!俺は仲間がいるって!

教えてくれた仲間がいる!だから...負けるわけにはいかない!

来い!『審判之正負翼』!」

独裁フラット「何⁉︎翼だと⁉︎」

無機質な声「バージョン『怒』を認証されました。

展開します!」

フラット「絶対に勝つ!俺は...守ってみせる!

この場所を、コイツらを!まずは...そこの図体だけの

アリジゴクからよ!

第一審判『光』術・『光裁‼︎洸一閃』!」

巨大アリジゴク「ギィィィ...」

独裁フラット「何⁉︎真っ二つだと⁉︎」

フラット「テメェ、俺のことあんましナメてっと、

死刑どころじゃ済まないぞ?」

独裁フラット「なっ、何だよお前...!お前のどこに

そんな力が⁉︎」

フラット「コイツらが教えてくれた。力の意味を、

温もりの形を!だから...俺は戦える!

これで...終わりだ!好き勝手にさせやしない!」

ノール「おい、アイツ、キャラ違くない?」

クレア「本当のフラットが目覚めたんだ!」

フラット「テメェは俺じゃねぇ!この街から出ていけ!

最終審判『判決』術・『解錠、光来門‼︎光洸浄化』!」

なんと空に開いた穴をフラットが支配して独裁フラットを

封じ込めた。

独裁フラット「グワァァァァ!」

フラット「...やった...皆!戦闘モード解除!」

全員「ヤッタァァァァァァ!」

ナックル「よっしゃあ!勝ちだ!」

フラット「ふぅ...あ、もうダメ...」

スター「あぁ!大丈夫?」

フラット「あれ...何がなんだか...」

ノール「戻ったか」

クレア「よくやった!このぉ〜!」

エド「めっちゃかっこよかったっす!」

スラリア「もう惚れ惚れしちゃった...」

センリ「よし、いい感じだな。帰るか」

シャリー「えぇ、それじゃあまたいつか」

ミッシェル「立てるか?ランケール」

ランケール「あぁ、ただ...」

フラット「ただ?」

ランケール「やつはまだ生きてる。この異変は

まだ続くだろう」

ナックル「なに、平気だろ!さっきのコイツが

目覚めればすぐに、な!」

シャリー「でも、出来るかしら?戦闘モードの

バージョン怒であれになれたけど...お兄さんが

怒るなんてなかなか...」

フラット「ねぇ、本当に何があったの⁈」

ナックル「後で映像で見ろ」

フラット「う、うん?」

ナックル「それじゃ解散にしような!あと、

今日からしばらく修復作業だ!」

全員「おーっ!」

シャリー「ではご機嫌よう。本当にありがとう」


独裁フラット「...チッ」

獅子獣人「おや、お帰りですか?」

独裁フラット「...畜生!なんなんだアイツ!

何も力がないくせに、急に目覚めやがって!

アイツはもういねぇんじゃねぇのか⁉︎おいテメェ、

アイツの魂に細工しただろ?」

獅子獣人「その質問にはお答えできません、

ですがあなたなら分かるでしょう?」

独裁フラット「はんっ、俺もお前の手駒ってわけか?」

獅子獣人「いえ、まさかあなたが動くほど

この問題が大きくなるとは思ってもいなかったので」

独裁フラット「まぁいいさ。次は絶望を与えてやるよ。

俺に敗北を与えたこと、死刑だけじゃすまないってこと、

教えてやるよ!お前が教えてもらったことなど

紙屑同然のゴミだってこと、教えてやるよ!」

獅子獣人「まぁ宜しいでしょう。あなたには

期待していますよ、最高のショーをあげることを」


数日後ー

フラット「これはこっちだよね!」

ナックル「あぁ、それはそこでいい!」

クレア「俺、こういう慎重な作業苦手なんだよな〜!

あぁ〜!くっそ、ムカつく〜!」

ノール「落ち着け、ゆっくりでいい。焦るな」

スラリア「よし、ここもいい感じ!」

スター「怪我した人はこちらに来てください!

手当てしますから!」

フォール「することがねぇな〜、何かすること...

ん、この音...」

ミーンミンミンミン!

フォール「夏か...!」


その夜ー

全員「夏休み〜⁉︎」

フォール「そうだ、ペーターとも相談して許可を

貰ってる。休みも大事だ」

フラット「まぁ...いいけど...」

ノール「この状況はどうすんだ?」

フォール「このレベルは8人がどうこうして

変わる問題ではない。それに親睦を深めるという意味も

勿論ある。それがメインだ!」

クレア「まぁ、決まっちまったことにあれこれ言っても

意味ないか。分かった、行こう」

エド「でも大丈夫っすか?また独裁フラットが

襲ってくる可能性だってあるっす!」

フラット「あぁ、それなら大丈夫。独裁フラットが

逃げた理由は時間だって」

スラリア「何で分かるの?」

フラット「昨日の作業中にシャリーが来てね。

そう話してくれたんだ。完全に魂が戻った僕と

同じ世界にはいられて半日なんだって。でも、

同じような存在としてアイツは24時間以上

ここにいたから、急に魂が戻ったことによって

一気に制限時間が狭まったみたいだって」

スター「全然分からない...」

フラット「つまり、前の僕だったらアイツは大体

3日いられたってこと」

ナックル「だったら戻れて良かったな」

フラット「うん、でもあの映像本物だよね?」

エド「合成なんかしてないっすよ!」

フラット「マジか...あれが昔の僕?」

ナックル「そうだぜ!あんな口調だった!」

ノール「今のお前と大違いだな」

フラット「まぁいいもん!で、夏休みは何しよっか⁈」

ナックル「やっぱ海だろ!」

エド「そうっすね、海がいいっす!」

クレア「まずどこに行くか決めた方がいいと思うが」

フラット「折角だし宇宙に行ってもいいと思うけど」

スラリア「海といったらガスペラス星?」

ナックル「あそこは遠すぎるぞ」

ノール「フォール、人数制限は?」

フォール「10人まで」

ノール「じゃああの2人呼べる」

フラット「あぁ、アイツらね。どこにしよっかな〜」

ナックル「海と言えばあそこだろ?」

フラット「あそこ?どっかある?」

ナックル「海といえば...な?」

エド「ハワイっすか⁈」

ナックル「違う」

クレア「沖縄か?」

ナックル「それも違う」

ノール「...海の幸...静岡?」

ナックル「正解!」

フラット「え〜、静岡?」

ナックル「美味い魚をいっぱい買えるからよ!」

ノール「焼津港か?」

スラリア「豊洲があるじゃん」

ナックル「穴場なんだよ、あそこは。ホッケが

本当に美味いんだ!」

エド「ホッケっすか!俺も好きっすよ!」

ナックル「鰻も美味いし、お土産も一杯買えるし!」

クレア「でも、西部は立ち入り禁止だろ?」

フラット「...うん。エリアHAからエリアKAまでは

立ち入り禁止。大量の脅威が住み着いてる」

スラリア「詳しいんだね。もしかして静岡育ち?」

フラット「うん、エリアFU。有名じゃないけど、

地元では有名なお寺や神社があったんだ」

ナックル「あの団子を食えないのは残念だな。

美味かったのに...」

フラット「しょうがないよ。で、フォール?

本当は場所は決まってて、集合時間とかも

もう決まってるでしょ?」

フォール「そうだ。今の話し合いは無駄だったな。

と言っても、今正解に近かった」

クレア「じゃあ静岡は確定なのか!」

ノール「熱海?」

フォール「あ、正解でた」

フラット「熱海か〜...いい旅館に泊まれそう」

スラリア「集合時間は?」

フォール「明日の8:15だそうだ」

エド「いつもよりは遅いっすね。良かったっす、

ゆっくり休めそうっすよ!」

スター「旅館...お泊まり...!」

ナックル「楽しみか?なら楽しもうぜ!」

フラット「その前に、アレをやらないと!」

ナックル「あっと、やってなかったな!

じゃあ今日やっちまうか!よし!」

フォール「キタキタ!デ・ロワー恒例のアレ!

じゃあ今回は全員横に並んで記念写真といこう!」


数分後―

フラット「いい感じ!あれ、バジーやペーターさんは

呼ばないの?」

フォール「あの2人は復興作業に手を焼いてるから

無理そうだ」

フラット「うーん...まっ、やっちゃおっか!

いくよ!勝利のVサインー」

全員「決めっ!」

フラット「でーきた!もうこれは書くことないね!

この写真だけで伝わってくるもん!」

ナックル「じゃあこれ、デ・ロワーに飾ろうぜ」

スター「今はないよ?」

ナックル「壊れたものは直せばいい。更に強くな」

ノール「そうやってものは進化していく。

たまにはバカ虎もいいこと言うな」

ナックル「おうとも!...たまにはは余計だ」

タクマ「おーい、フラット!」

ヒナ「ごめん、今手伝いに来たよ!」

フラット「あ...呼んでたっけ...ごめん!もう今日は

終わりなんだ。明日から夏休みにしろって」

タクマ「え〜、いいなそれ!」

ヒナ「やっぱりどっかに旅行する感じ?」

ナックル「熱海にな!」

タクマ「行きてー!連れてってくれ!」

ヒナ「無理に決まってるでしょ!ごめん、タクマの話は

水に流してくれていいよ。じゃあ私達は後を継いで

復興作業やっとくから!」

フラット「いいよ、ここはデ・ロワーが引き受けた

場所だから」

タクマ「まぁ、そう言うなって!俺達銀座の方は

被害が少なかったしよ!」

スター「やっぱり中枢のデ・ロワーが

狙われちゃったってわけか」

クレア「ん?スター、怪我してるぞ」

スター「これ?大丈夫だよ」

クレア「ダメだ、はい、絆創膏」

スター「...ありがとう」

フラット「皆怪我してるのに...」

クレア「妹の心配して何が悪い⁈」

ノール「過保護はよくない」

ヒナ「そうだよ、クレ君!」

クレア「クレ君⁉︎」

タクマ「変なあだ名つけるな」

ヒナ「クレ君っていいあだ名だと思うけどなぁ」

ノール「...でも、一応は平和になったってことで

いいのかな?」

フラット「多分すぐにまた前のような事件が

起きると思うけど」

スラリア「まぁ、大丈夫だよ!何とかなるって!

皆で力を合わせればきっと百万力だって!」

エド「そうっすね!」

ペーター「あれ、今話し中かい?」

フラット「いえ、ただの雑談ですよ」

ペーター「そうか...にしても君達は凄いなぁ!

あんな大規模な事件で大怪我を負ったやつがいないとは

流石、フラット君ってとこか?」

フラット「いや、皆がいてくれたからです。

僕がやったのは皆の思いを引き出しただけです」

ペーター「それが凄いんだよ。胸張っていい」

フラット「じゃあ、皆で胸張ります!」

ノール「何だよそれ」

全員「アハハ...!」


深夜、公園にてー

フラット「涼しい〜!」

ナックル「あ、お前もここに来たくなっただろ?」

フラット「うん。ここが始まりだったからね。僕が

バトラーの前でファイターとしての姿を見せて、

公認ファイターになることを考えた場所」

ナックル「そうだな。それで大学の中庭に

アリジゴクが湧いてお前が指揮者に目覚めた」

フラット「そしてノールに会って...いっぱいの出会いに

繋がった。いろんな場所に行っては友達ができた。

あの42年間、僕がずっと探し求めてたもの」

ナックル「見つかったんだろ。俺も守ってやるぜ!

覚えてねぇかもしれねぇが、たしかに約束してたぜ。

お前と初めて出会った時に」

フラット「僕がナックルさんと初めて出会った...」


脅威大量発生が始まった夜-

フラット「ここ...どこ?」

それはまだフラットが17歳の頃だった。人間でいう

幼児期にあたる歳である

フラット「母さん、どこ?」

辺り一面火の海。周りからは人々の悲鳴とアリジゴクが

次々と彼らを喰う咀嚼音が響き渡る

フラット「怖いよぉ!痛いよぉ!」

裸足で歩いていたフラットの足は傷だらけで

火の粉による火傷も負っていた

男性「君!こっちだ!」

フラットはとある男性に抱き上げられる。少し先には

大きく手を振るガタイのいい少年がいた。

それがナックルだった。

フラット「母さん...!」

男性「君の母さんはどこに?」

フラット「アイツの中...」

男性「...分かった。君はこの中に。いいかナックル!

父さんの言うこと、守れよ!」

ナックル「あ、父さん!」

フラット「...うぅ...」

ナックル「泣くなよ、おい...俺だって...母さんが...!」

フラット「母さん、僕守った...!」

その言葉に、まだ子供だったナックルは上手く言葉に表せず-

ナックル「...いいか?もし父さんがお前の母さんを

連れ帰ってきたら、一緒に...暮らしてくれねぇか?」

と、普通ならありえない言葉をかけてしまった。

フラット「えっ?」

ナックル「俺、お前みたいなやつ、放っとけなくて…だから...

こうやって知り合えたから...その...」

フラット「いいよ!お名前は?」

ナックル「あ、ナックル・バトラー!」

フラット「僕はフラット・クラリオ!よろしく!」

ナックル「あぁ、よろしく!」


夜が明けー

女性ファイター「起きて、起きてナックル君!」

ナックル「あ!もう朝...!」

女性ファイター「少しいい?」

ナックル「ちょっと待っててください。おい、

フラット、お前も起きろ!」

フラット「ムにゃ...」

ナックル「...しょうがない、背負うか」

女性ファイター「付いてきて」


女性ファイター「ここ、見て」

ナックル「父さん⁉︎」

ナックル父「ナックル...約束...守れたか?

あぁ、その子も無事か...生憎この傷だ。

助からないってよ。すまねぇ、お前を

置いてっちまうな」

ナックル「はぁ⁉︎諦めんな!まだ手はあるはず!だからー」

ナックル父「ナックル、俺の神力がお前に継がれていってる。

つまりそういうことだ」

父親の言う通り、傷口から漏れ出た血から金色の光がナックルに

向かって流れていた。

ナックル「コイツの母親は⁈

ちゃんと助けたんだろうな!」

ナックル父「すまない、それも出来なかった...

あのアリジゴクは倒せたが...既に消化されていた」

ナックル「...じゃあな!」

フラットをおぶったまま、ナックルは駆けていく。

裸足に伝わる瓦礫の痛みも感じることなく。


フラット「ここは...?」

ナックル「目、覚めたか?」

フラット「あ、バトラー君、おはよう」

ナックル「君はいらない。バトラーでいい」

フラット「分かった、バトラー!」

ナックル「...なぁ、お前の母さんって

どんなやつだった?」

フラット「えっ?優しくて〜、温かくて〜、

歌が上手!」

ナックル「覚えてるのか...」

フラット「?何か言った?」

ナックル「あ、いや?さてと父さんに朝食...あ、

もういないんだっけ...くそっ...!」

フラット「バトラー?どうしたの?

泣いてるの?どっか痛いの?」

ナックル「フラット...!」

フラットをナックルは力強く抱きしめる

ナックル「いいか!俺がお前を絶対守る!

アイツのようなヘボい力なんかに頼らなくたって...

俺はお前を絶対守る!約束だ!だから...

俺のそばから離れないでほしい」

フラット「えっ...」

ナックル「なんか今の告白みたいだな⁈違うぞ、

断じて違うぞ!」

フラット「?顔真っ赤だよ?」

ナックル「あ、そっか。子供だっけな...良かった...」

女性ファイター「入っていい?」

ナックル「あ、はい...」

女性ファイター「君達は孤児...だよね?だから、

アカデミーの運営してる孤児院に来て」

フラット「孤児...?母さんは⁈」

女性ファイター「えっ⁉︎覚えてるの⁈」

ナックル「...どうやら力があるみたいです」

女性ファイター「なるほど、報告しないと!

あと、君、お名前は?」

フラット「...ファイターの人には名乗るなって

言われてる...」

ナックル「フラット・クラリオだってよ」

女性ファイター「クラリオ⁈嘘...」

フラット「バトラー、言っちゃダメだよ!」

女性ファイター「何で言っちゃいけないかは聞いてるの?」

フラット「聞いてない」

女性ファイター「そっか。で、大丈夫。フラット君の

お母さんは生きてるよ。ただ少し怪我しちゃって

長い間病院に入院しないといけないから」

フラット「じゃあ迎え来てくれるの?」

女性ファイター「...それは...」

ナックル「お前がいい子で待ってれば必ず

迎えに来てくれるさ!」

フラット「分かった!いい子で待ってる!」

女性ファイター「ありがとう、ナックル君」

ナックル「それでは...行きましょうか」

女性ファイター「はい、フラット君、

付いてきて!今から孤児院に行くからね」

フラット「はーい!」


最終節 独裁フラットの原点

女性ファイター「フラット君、荷物はいい?」

フラット「うん!」

ナックル「フラット、手繋いどけ。リニアの中、

混んでるだろうからよ」

フラット「...バトラーの手って不思議」

ナックル「えっ?」

フラット「石みたいに硬いのにあったかい!」

ナックル「...ありがと」

女性ファイター「フフフ、兄弟みたい。

あ、リニア来たよ、ほら乗ろう!」


フラット「眠〜い...」

ナックル「しょうがねぇなぁ、ほら、膝枕していいぞ。

子供は昼寝する時間だし」

フラット「わーい!」

ナックル「うおっと⁉︎勢いよく倒れるな!」

フラット「スゥー、スゥー」

ナックル「もう寝ちまったか...可愛いなコイツ...

まだこんなに小さいのに1人なんてな...

すまんな、父さんが弱くて...俺は絶対強くなる!

まだ獣人のファイターなんて少ねぇけど、

必ずなってやる!」


女性ファイター「はい、たしかにクラリオと。

上手くいけば人柱に...しかしまだ神力が未熟すぎです。

もう少し強くならないと」

電話相手「そうか。では世話を君に任せよう。

くれぐれも、フラット君にその話がバレないように

気をつけたまえ」

女性ファイター「はい、分かりました。では」

ピッ

女性ファイター「...やっと見つけた。最終手段の人柱。

クラリオの血がまさかこんな所に残っているとは」


ナックル「ウッヒョ〜!東京だぁ!」

フラット「凄い凄い!全部高ーい!」

女性ファイター「孤児院はこちらです。来てください」


ナックル「スゲェ、こんな時期に桜が咲いてる!」

女性ファイター「あれは世界初のどんな時期でも

花を咲かせられる品種改良された桜だよ。

どう?ビックリした?」

フラット「桜は春にだけ咲くから綺麗なんだよ」

女性ファイター「フフッ、文系脳だね。あ、あそこが

孤児院。あと少しだよ」


フラット「着いた!」

ナックル「2時間で着いたな!」

女性ファイター「では園長と挨拶をしよっか」

その孤児院の名前は、アカデミー会社所属・ロワー孤児支援学校と

標識に書いてあった。



園長「どうも、ベル・ケプラさん、わざわざご足労を。

あ、自己紹介が遅れたね。私はペーター・クリフト。

この孤児院の園長だ」

フラット「フラットです、よろしくお願いします!」

ナックル「ナックルだ。これからよろしく頼みます」

ペーター「うんうん、礼儀作法が

きっちりできる子達だ」

ベル「それでは私はこれで失礼します。2人とも、

孤児院でも仲良くね!」

フラット「当然だ!ね、バトラー!」

ナックル「あぁ、俺達が喧嘩なんかしないぞ!」

ベル「愚問だったね。じゃ!」

キィ〜、バタン

ペーター「それじゃ、孤児院の皆にも挨拶をしないと」


フラット「えーっと...えっと...」

ペーター「落ち着いて、ね?」

フラット「ぼ、僕はフラット!よろしく...!」

ナックル「大丈夫か?俺はナックル!よろしくな!」

2人に拍手が贈られる

ペーター「皆、仲良くしてやってくれよ」

園児「はーい!」


フラット「バトラー、何してるの?」

ナックル「何って勉強だ。俺は児童期ってものに

分類される歳だが、種族がらどうしても子供には

見えねぇからよ、知識はつけとかんと」

フラット「見せて見せて!」

ナックル「ったく、仕方ねぇなぁ。ほらよ」

フラット「ん?これ母さんとやったことある!

これも!」

ナックル「嘘だろ⁈これ高校レベルだぞ...?」

フラット「これって、スーガクって言うんでしょ?

他にもセーブツとか、カガクとかやったよ」

ナックル「とんだ秀才教育だな...」

ペーター「君達の歳でもう高校レベルかい?

将来が楽しみだなぁ」

フラット「?褒められてるの?」

ナックル「あぁ、未来に期待されてるんだよ」

フラット「何を?」

ナックル「ん〜、なんて言えばいいんだろう...」

ペーター「今まで世界になかったものを作り上げたり

できるかもしれないねってことだよ」

フラット「本当⁉︎僕、ベンキョー頑張る!」

ナックル「単純な理由だな...ま、いいけどよ」


ペーター「おーい、夕食の時間だよ!」

フラット「あ、夕食か!」

ナックル「この匂いは...カレーか!」

ペーター「お、流石は虎族、鼻がいい」

ナックル「へへへ!」

フラット「食いしん坊の特技みたい」

ナックル「なっ...そんな笑顔で言うなよ...」

フラット「面白いから笑うんだよ?」

ナックル「面白いやつだなお前」

フラット「そうかな?」


「いっただきまーす!」

フラット「あ...バトラー、これあげる」

ナックル「ん?肉?お前肉食えねぇのか?」

フラット「違う...腐ってる」

ナックル「えっ⁉︎」

ペーター「どうした⁈」

ナックル「フラットが肉腐ってるって...」

ペーター「本当かい⁈」

フラット「うん、調べればすぐわかると思う」

ペーター「そうか...」

ティッシュで綺麗にカレーを拭き取った肉は見た目は

真っ白い豚肉だった。

ナックル「別に普通...?」 

鼻をくんくんと嗅がせるとナックルは異様な

匂いに気づく。

ナックル「この匂いは...この肉からか⁈」

ペーター「分かったのか⁈」

ナックル「これ、少しかじっていいか?」

ペーター「えっ⁉︎」

ナックルはその肉を少しかじる

ナックル「ぺっ!これ、腐ってるじゃなくて、半生だ。

牛肉ならまだしも豚肉を半生で出すのは流石に

まずいぞ」

ペーター「半生だって⁈」

「良かった、俺食ってない」

「私も...」

ナックル「...?おいフラット。何で気づいた。

お前まだ食ってなかっただろ」

フラット「えっ、何でって...分からないの?」

ナックル「分からないって、普通は分からんぞ⁉︎」

フラット「そうなんだ...」

ペーター「まぁ、良かった。誰も肉を食べていないで。

食中毒を起こすとこだったよ」

ナックル「でもよ、腐ってるって思った肉を

何で俺によこすんだよ」

フラット「虎さんだから食べるかなって!」

ナックル「食うわけあるか!ったく」

ペーター「2人とも、ありがとう」

フラット「え、何で今お礼言われたの?」

ナックル「俺は何もしてないぞ?」

ペーター「フラット君が異変に気づき、ナックル君が

勇気を出してその肉を口にして結果を出した。

もしかしたら君達2人、いいファイターコンビに

なれるんじゃないか?」

ナックル「フラットとコンビ...カッコいい!」

フラット「僕がファイター?僕なれるの⁈」

ペーター「あ...」

ナックル「なれるとも!お前、力があるみたいだしな」

フラット「本当に⁉︎やったぁ!」

ペーター「…ナックル君は子供好きなのか?」

ナックル「いや、俺はコイツが好きなだけです。

かわいらしくて...」

ペーター「そうか。で、カレーはどうする?」

フラット「お肉以外は大丈夫だよ!だからお肉を

残して食べたらいいよ!」

ペーター「だそうだ。各自肉を避けて食べてくれ」

「はーい!」


「ごちそうさまでした!」

フラット「食器片付けに行こ!」

ナックル「そうだな!あ、おい前!」

フラット「ぎゃっ!」

フラットが手にしていたお盆が壁にぶつかり、

カレー皿に乗っていたスプーンがナックルのカレー皿に

カランカランと音を立てて入る

ナックル「おーう、スゲェ」

ペーター「ただの偶然に驚く前にフラット君の心配を

してあげなさい」

ナックル「あ、そうだな!おい、大丈夫か?」

フラット「うん……へへへ」

ナックル「笑えるだけまだ子供ってことか」

フラット「食べ終わったら何するの?」

ペーター「フラット君はお風呂かな。ナックル君は

どうする?ゲームでもするかい?」

ナックル「俺は家から全部持ってきたから大丈夫だ。

だから俺も部屋に戻ってフラットと風呂にする!」

ペーター「兄弟みたいだね、2人とも。分かった、

部屋の場所は覚えてるかい?」

ナックル「三階の1番奥だ!」

ペーター「そうだよ。覚えてるなら大丈夫そうだね。

それじゃあおやすみ」

フラット「おやすみなさい!」


浴室―

ナックル「ほら、フラット。背中流すぞ...足、

痛かったら痛いって言えよ」

フラット「大丈夫...ゆっくりね!絶対ゆっくりね!」

ナックル「分かってる。我慢しろよ...」

フラットを思いやりつつ、足の火傷や傷を痛めないよう

丁寧にお湯を流していく。そのナックルの表情は

どことなく悲しそうでもあった。

ナックル「痛くねぇか?」

フラット「大丈夫。我慢...できるよ」

ナックル「そうか、いい子だな!」

フラット「えへへ...」

ナックル「それじゃ、次は頭だ!にいちゃー...

俺が洗ってやるからよ」

フラット「...弟でもいいよ」

ナックル「えっ?」

フラット「だって前言ってたじゃん!

一緒に暮らそうって。一緒に暮らすってことは

僕達兄弟じゃん。バトラーがお兄ちゃんで僕が弟!」

ナックル「...しょうがねぇなぁ。兄ちゃんが

洗ってやるよ!」

フラット「うん、お願い!」


そんな日が続き、気づけば高校生ー

ナックル「なぁフラット!これ何だと思う?」

フラット「えっ、これってファイター免許⁈

おめでとうバトラー!良かったじゃん!」

ナックル「お前も早く取れよ!コンビで

大活躍して有名になろうぜ!」

フラット「分かった!すぐにとって有名になろうね!」


フラット「ただいま!」

ペーター「お、お帰り。今日も園児達の世話いいかい?

最近私の方も忙しくてね」

フラット「はい、分かりました!じゃあいつも通り

自由時間をとって、18:30に夕ご飯にします」

ペーター「助かるよ、ありがとう。それじゃ、

よろしく頼んだよ」

キィ〜、バタン

フラット「さて、じゃあ夕ご飯の支度に入るとするか」


フラット「うん、人数分できたかな、あとはー」

「助けてー‼︎」

フラット「⁉︎何⁈」


不良1「おいお前、そこの孤児院のガキだろ?

金持ってんだろ?くれよ」

園児「も、持ってない...」

不良2「おいテメェ!嘘つくんじゃねぇぞ?

ポケットからチャリチャリ金が鳴いてんだよ!」

園児「ひっ!」

不良が園児の顔を殴ろうと拳を振り上げる。その腕をー

フラット「それ以上、うちの子に

手を出さないでください」

不良1「あぁん?うちの子だってよ!お前と

血の繋がっていない赤の他人なんだぜ、そいつは。

お前さん、頭イカれてるんじゃないか?」

フラット「僕の事はなんとでも言えよ。でもな...

子供には絶対指一本触れさせねぇ!」

不良2「おい、コイツやっちまおうぜ」

不良1「ムカつくしいいんじゃね?」


数時間後ー

ペーター「あれ、君達ご飯は?」

「あるけどフラット先生がいないの」

「合図がないから食べられない...」

ペーター「いない...?とりあえず、皆、

いただきます!」

「いただきます!」

ペーター「...どこに行ったんだ?」

食堂から玄関に向かうとペーターはフラットの靴と

ある園児の靴がないことに気付く

ペーター「外か...?」

玄関の扉を開け、ペーターは外に出る。

孤児院の周りをグルグルと回ると、裏口のすぐそばの

電柱に傷だらけで倒れているフラットを見つける。

園児もフラットのそばにいた

ペーター「フラット君⁉︎どうした、何があった⁈」

園児「園長先生、私、不良に絡まれて...フラット先生が

庇ってくれたの...そしたらフラット先生が...!」

ペーター「そうか...とりあえず君はもう帰ってなさい。

夕ご飯ができてるから」

園児「フラット先生と食べたい!」

ペーター「...そうか。なぁ、その不良のこと、

何か覚えてないか?」

園児「たしか...ボタンに第二高って書いてあった!」

ペーター「分かった。あとは監視カメラだ。

フラット先生は病院に行くから我慢して皆と

夕ご飯にしなさい」

園児「...はい」

ペーター「フラット君、すまなかった」


警察官「今回の事件を引き受けました、

フェアード巡査です!」

ペーター「早速で悪いが、この映像に映っている

2人の生徒を特定してもらいたい」

フェアード「コイツらは...!やっといい情報が

入手できました!浅草第二高等学校の生徒だったのか。

これでやっと少年院に入れられる!」

ペーター「少年院ってそんなにですか⁈」

フェアード「コイツらは結構な悪趣味な不良でして、

盗みやら器物損壊やらあちこちで犯罪を

犯していましたがやっと情報が集まりました!

ご協力ありがとうございます!」


病院にてー

ナックル「フラット...また傷だらけになっちまったな...

お前、子供庇ったんだってな。ファイターらしいこと

しやがって...俺にできたか?そんな真似。怖くて

できなかったかもしんねぇな」

ペーター「失礼するよ」

ナックル「ペーター...どうだ?」

ペーター「あぁ、逮捕されたよ」

ナックル「そうか...くそっ、守ってやるって

約束したのによ...!」

ペーター「そう言うな。お前だって頑張ってる」

ナックル「でもよ!」

フラット「あれ...?」

ナックル「フラット...!」

フラット「あの子は?」

ペーター「無傷だよ。ありがとう、そこまで

してくれて」

ナックル「とりあえず良かった。目が覚めて。

今日1日は...なぁ、俺が風呂に入れるのはダメか?」

フラット「えっ...ハハ、初めて孤児院に来た日と

同じだね。それじゃあー」

「ギャオーン!」

ナックル「今の声は!」

ペーター「アリジゴクか⁈」

ナックル「フラット、俺は少し離れてるぞ!」

ペーター「私も孤児院に戻っているよ!君は安静に!」

フラット「は、はい!」


ベル「大量発生始まりました。神力が高まった彼なら

人柱になれます!」

電話相手「くれぐれも失敗するなよ。ゲートを

封印するための人柱だ」

ベル「失敗なんかしません。彼女もそれで成功を

納めています」

電話相手「そうだな。任せたぞ、クラリオの血ほど

我々魔族にとって不必要なものはないからな」


フラット「安静にしろって言われて、分かりましたって

言うほど単純じゃないぞ、俺だって!避難は

しとかないと!」

フラットは松葉杖を使い、避難を始める

ベル「...今!」

その瞬間を狙い、ベルはフラットの口元に

睡眠薬を濡らした布で覆う。

フラット「ぐっ⁉︎」

ベル「フフッ、これでクラリオ家も終わり。

これからは魔族の時代が始まる!」


ナックル「おい、なんだこの数⁈倒し切れる量じゃー」

ファイター「諦めるな!座して死ぬわけにはいかない」

ナックル「やってはやる...!頼む、俺に勇気をくれ!」


ベル「これで...終わり。フフッ、魔族の時代が訪れる!」

フラット「そうか...俺は...操られていたのか...」

ベル「なっ、お前薬効いてー」

フラット「もう...分からねぇや。生きてて

いいことなんてない。温もりも優しさも全て

無駄だった!そういうことか...この世界を全て...!

ぶっ潰してやるよ!」

ベル「くっ、この光は⁉︎」

フラット「来い、グラディウス!神業・死刑!」

ベル「イヤァァァァァ!」

フラット「次は...あっちか」


ナックル「キツいぞ...!」

ファイター「グオっ⁉︎」

ナックル「はっ⁉︎今何がー」

フラット「...あとはお前だけ...?バトラーか。

今は生かしといてやるよ。このアリジゴクは

俺が消してやる。見とけよな!

第一審判『光』術・『光裁‼︎洸一閃』!」

光の刃が全てのアリジゴクをかき消す。

ナックル「その声...フラット?」

フラット「お前はいつ殺すハメになるかな?

アハハハ...アッハハハハ!」

ナックル「お、おい!どこに行く⁈...フラット...?」


いよいよ分からなくなった。俺は何故人に優しくした?

俺は何故温もりを与えた?どうせ人間は人間を裏切り

生きていく。愛なんて幻、温もりなんて偽り。

もう何も願わない。ただ見たい、本物の温もりを。

それこそ、脅威だ...!脅威こそ温もりを持っている。

そうだ、脅威だ...アハハハ!アッハハハハ!


それからはずっと、この手を血で汚してきた。

汚れすぎて手どころか身体も心も汚れた。それで、

俺は生まれ変わる日を願っていた。


フラット「...俺はこれでいいのか?」

最近は子供の頃の夢を見る。母さんと一緒に

暮らしていた日もあったけど...


ナックル「俺が絶対守る!」


あのバトラーの温もりを感じたときの夢。

それを見るたびに涙が流れていた。


そして42年目ー

ナックル「フラット!やっと見つけたぞ!」

フラット「?バトラー...か。何の用だ?」

ナックル「お前...どうして⁉︎」

フラット「俺は...人間を皆殺しにする!俺を騙し、

操り人形にした復讐だ!」

ナックル「フラット...それが正義か?それがお前の

願いなのか?」

フラット「...分からない。俺は...何を望む?

俺は何がしたい?それすら忘れた。

どうせ叶わないから」

ナックル「...辛かったな...今、楽にしてやるよ...

俺がお前にできるのは...それだけだ!」

ナックルは右手に隠していた戦闘用暗殺道具を

フラットにヒトツキする。

フラット「何っ⁈俺を...殺すのか⁉︎」

ナックル「お前を守るって言っただろ...?

でもよ、こんなお前なんかいらねぇ...!

俺は...俺はあの頃のお前がほしい!ワガママかも

しんねぇ!でも...お前を...幸せにしたかった!

この思いは...この涙に嘘なんかねぇ!」

フラット「...あったかい...」

ナックル「えっ...」

フラット「バトラー...あったかい...やっと...見つけた...

本物の温もり...あぁ...こんな側にあったんだ...

バカだなぁ...俺、自分で失くして...」

ナックル「フラット...!お前だって...あったけぇよ!

俺、お前がいなかったらきっと...生きてなかった!

でもお前は...笑ってくれた!こんな別れは...

お前とだけはしたくなかった!だけどよ...!」

ランケール「手はあるよ。来るかい?」

ナックル「お前は...⁉︎」

フラット「あっ...!ま、魔族...⁉︎」

ランケール「とりあえず来てください。死ぬ前に」

ナックル「まさか...できたのか?」

ランケール「できた。だから来い」

ナックル「あぁ」

意識が朦朧としているフラットを連れて

ランケールについていく


ランケール「じゃあ、この機械にフラット君を」

ナックル「おう。フラット」

フラット「離せ...!俺は...!」

ナックル「よし...スイッチオンだ!」

ランケール「いくぞ。上手くいけ!」


数日後ー

ナックル「頼む...起きてくれ」

フラット「あれ...?僕は?」

ナックル「良かった!起きたか!ったく、事故なんか

起こしやがってよ!42年間も眠ってるな、この〜!」

フラット「わわっ、ギブギブー!」

ナックル「心配してたんだぞ!」

何が何だか分からないフラットは頭の中をハテナマークで

一杯にすることしかできなかった。


回想終了―

フラット「バトラー、ありがとう」

ナックル「急にどうしたよ?」

フラット「だって...さ。守ってくれたから」

ナックル「...あぁ、思い出したか。約束したこと」

フラット「うん...ふわぁ〜...バトラー、膝貸して」

ナックル「?あぁ、いいが」

フラット「ありがと...それじゃおやすみなさ〜い」

ナックル「ちょ、おい!...ったく子供か?」

フラット「バトラー、あったかい」

ナックル「...そうか?」

フラット「だって...お兄ちゃんだもんね」

ナックル「そんなとこまで覚えてるのかよ...

まぁ、いいけどよ。本当、可愛い寝顔だな」

フラット「スーっ、スーっ」

ナックル「もう寝ちまったか?この〜」

フラットの前髪を優しくナックルは撫でる

ナックル「お前は俺が守る。絶対に。お前の見つけた

温もりも、お前が作り上げたこの今も。絶対に」

フラット「...お兄ちゃん...大好き」

ナックル「...あぁ、俺も大好きだ。側にいてくれて

ありがとな」

(お前には言ったか?実は俺が

救われてるってこと。お前の幸せそうな顔があったから

俺は生きてる。お前に会えて幸せだぜ。フラット。

お前は笑っててくれ。強くなんかなくていい。

俺達に見つけたものを教えてくれ。

全部受け止めてやるからよ。ゆっくりおやすみな、

俺の大事な弟)

ナックルは瞬く星で満ちた夜空を見上げた。

夜空に一つ、流れ星が落ちる。2人を見守るように―

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