第6話 デッドティータイムドリーム

スラリア「はぁ〜、売店の陳列終わった〜!」

フラット「じゃあ僕はこれで行くね。また後で」

?「あっ、フラット!今帰ったよ!」

フラット「スター!お帰り、買えた?」

スター「一応。ペンキと...トンカチだよね!はい!」

フラット「ありがとう!で、まだ袋の中入ってるけど

何があるの?」

スター「あとはお菓子だよ!スターのだからね!

あげないよ?」

フラット「分かってるよ。取らないって」

この子はスタリック・ゴールド。クレアの妹だ。

父親は違うものの母親は同じ。昔は本当に大変だった。

スターを救い出すのはー


1節 かごめかごめと語る先

?「♪かごめかごめ

キャハハ!ダメだよ振り向いちゃ?ルール違反だから

これでお茶会は終わりだよ。それじゃ...バイバイ」

少女は怯える男の首を落とす。

?「キャハッ!新しいお人形さんだぁ!ウフフ…キャハハ!

もうずっと私のもの…フフフ!キャッハハハハ!」

切り落とされた首をぐしゃぐしゃに握りつぶしながら少女は

真っ赤な部屋の中で大笑いした。


フラット「音楽イベントも今日で終わりだ〜」

クレア「あっという間だったな」

エド「そうっすね!俺も準備中に来れて

良かったっす!」

ナックル「ただの風邪で良かったな!」

ノール「しかも風邪ひいてなお、練習してたんだっけ?

やる気あっていいと思う」

スラリア「凄いわけだね。アドリブ効かせるのは

仕上がってるって意味だし」

エド「えへへ、もっと褒めるっす!」

フラット「でもさ、サイン会の時...」


エド「応援ありがとっす!これからもよろしくー」

フラット「エド、そこ僕の席」

エド「えっ⁉︎あっ、ごめんっす!今どくっすよ!」


フラット「焦ったよ、あれは...お客さん喜んでたから

良かったけど...」

スラリア「でも、ずっとエドさんの側に

いられるなんて...幸せ」

クレア「えっ、俺とは⁈」

スラリア「ん?ん〜...普通かな」

クレア「嘘だろ⁉︎うぅ...」

ノール「もう、嫌われたわけじゃないのに...

逆にそんな態度とってると嫌われる。普通に振る舞えば

それでいい話だ」

フラット「そうだよ、恋愛関係に疎そうなノールでさえ

僕と同意見だし」

ノール「ちょ、疎いって...失礼だ、フラット」

ナックル「まぁ、好きな相手に嫌われたくないってのは

分かるがよ?丸わかりすぎて嫌われるぞ?」

クレア「そ、そうか。分かった」

スラリア「別に気にしてないけどね。クレアが

私のことを可愛いって思ってくれたのは正直言って

すごく嬉しかったし」

フラット「だってさ、良かったじゃん」

クレア「ふぅ、良かった〜」

ペーター「あっ、いたいた。今日でイベントも

最後だよね?打ち上げをしよう!」

全員「やったぁ!」

ペーター「と言いたいとこなんだが...打ち上げは

無理そうだ」

全員「え〜っ⁉︎」

ペーター「地球圏日本で大規模な不自然死が

相次いで起こっている」

スラリア「不自然死?」

ペーター「そう。眠っている人間が急に大声を出して

意識を失い、そして数分後に体が千切れたり

口から内臓が飛び出したり、とにかくグロテスクな

状態で死ぬという不自然死でね。魔族が関わっている

可能性があると見て四大が調査した結果、

魔力ではなく神力が見つかったそうだ」

フラット「ということは、犯人はヴァイス⁈」

ペーター「いや、というよりは眠っている最中に

魂を殺しているわけだ。推察するに、これは

夢の神を持つ者がこの異変を起こしている」

ナックル「でもよ...グロテスクすぎないか?

よくそんな真似できるな...」

ノール「サイコってやつじゃない?人を殺めて

快楽を得る」

スラリア「余生ある人をそんな目に...許しておけない!

私は地球に戻ることに賛成です!」

フラット「僕もです、すぐ地球に戻りましょう!」

ノール「そんな方法で人の一生を終わらせるなんて

むごい真似...見逃すわけにはいかない。私も賛成」

ナックル「でも犯人が分からないんだろ?

どうやって探すんだ?」

エド「そうっすね。足で探すなんて古典的な方法、

今どきやるわけないっすよ」

ペーター「その点に関しては問題なしだ。バジーに

依頼した3点の道具が完成したよ」

ノール「3点の道具?」

ペーター「神力見極め装置、

ファイター輸送兵器『スパークフラッシュ号』、

そしてファイター強化パーツ」

フラット「つまり...ファイター便利キットって

わけですか?」

クレア「でも...バジーか...」

ナックル「不安か?アイツの腕はたしかだぜ!

普通に天才だし、手先も器用。天然金髪好きがなければ

いい開発者なんだがな」

エド「で、もう帰る感じっすか?」

ペーター「そうだな。すまない、本当は休みをあげたいんだが...この異変が終わったら夏休みにしようか。時期も丁度いいしさ」

フラット「夏休みですか⁈よーし、皆!

夏休みにかけて、張り切って行こー‼︎」

全員「おーっ!」

ペーター「呑気だなぁ」


雲海港にてー

マドール「ほら、エド君のフライトシューズ。

完璧に直ったわよ。お代はナックル君から頂いてるけど...

エド君はファッションを正すこともお代よ。ほら、まず背中に

竜のある服の卒業!」

エド「それだけは嫌っす!まず今はファッションを

どうこう言ってる場合じゃないっす!」

マドール「そうだったわね...フフフ、エド君も変わったわね。

前まで異変なんて気にしなかったのに」

エド「それは...そうっすけど...」

ナックル「フラットのおかげだぜ!エドもこんなに明るくなったし」

スラリア「凄いね。あ、宇宙船着いたみたいだね。じゃあ...

行こっか、地球に!」

クレア「やっぱ地球の方が落ち着くわ」

フラット「じゃ、ゲートくぐって乗るとしよう!」

ナックル「荷物はどうすんだ?」

ペーター「いや、実はあの船では帰らない。地下にアカデミー直々に

迎えが来ててね。今回の異変はそれぐらいのものってことだ。

気をつけて取り掛かってほしい」

フラット「それだけ危険な任務ってわけか...」

ナックル「な〜に、心配はいらん。エリート級ファイターの

俺がいるんだ!」

エド「俺も特級ファイターっす!」

ペーター「その...先に言っとくが四大でも敵の正体を

見つけられていないんだぞ?たとえ君達でもー」

ノール「甘く見てるわけじゃない」

スラリア「私は怖いけど...フラットがいるから、安心できる。

それに...皆も」

クレア「...それにそんなこと俺達には関係ない。だろ?フラット」

フラット「そうです。やってもいないのにいきなりそんな事言われても

何も思わないですよ」

ペーター「そうか。強いな、君達は。こっちだ、地下特別港は。

ついて来い」

全員「了解」


?「ペーター君、待っていたよ。あ、君達がデ・ロワーの新入隊員か!

ナックル君以外は会うこともなく...おっと、関係のない話を、失敬」

フラット「えーっと...」

?「自己紹介がまだだったね。私は

ジミエール・パリス。四大・炎の1人」

全員「四大⁈」

ノール「は、初めまして!私はー」

ジミエール「あぁ、敬語はいいよ。私は

素で接してもらいたい。だから肩の力抜いて」

フラット「わ、分かりました」

クレア「で、わざわざお出迎えに来たってことは...」

ジミエール「少し情報を入手してね。話は

船の中でするよ。もう入れるから」

ペーター「そうか、出向いてくれてありがとな」

ジミエール「いいってことよ、兄ちゃん!」

スラリア「兄ちゃん⁈嘘、兄弟⁉︎」

ペーター「ジミエール!皆の前ではペーターと呼べ!」

ジミエール「失礼、ついな」

ナックル「ジミエール...か」

フラット「ナックルさん?どうしたの?」

ナックル「いや、何でもないぜ。ほら、船の中、入るとするぜ!」

ナックルはズカズカと船の中に入っていく

フラット「ちょっと、失礼だよ!」

ジミエール「いいよ、あれで。君はフラット君だよね。

噂は聞いてるよ。入隊初日で隊長になったっていう」

フラット「そ、そうです...」

ジミエール「それにこの子達を仲間にしたのも

君だろ?凄いじゃないか!」

フラット「す、凄い?」

ジミエール「元ヴァイスだったり、

ジャスミーの娘を救ったんだろ?素晴らしい!

それにファイター兼指揮者!これは唯一無二の

人材だ!」

フラット「はぁ」

ペーター「ジミエール、フラット君困ってる。

褒めすぎだ、ストップ」

ジミエール「でもさ、四大も結構評価してるし、これなら

正社員にすぐなれるって!」

ノール「私達の評価は?」

クレア「それは気になる!どうなんだ⁈」

エド「俺も知りたいっす!」

ジミエール「ノールは四大の方にも知られてる。

ただ、賛否両論だなぁ。破壊の力をもう少し上手く

使いこなせればいい方向に向けると思う。

クレア君は結構評判いいよ。ただ、ファイターとしては

愛情表現が不器用というのが欠点ってとこかな。

エド君はフラット君同様、評価高め。正義心が強く、

ファイターとしての功績もいい...って感じ。

皆、いい力を持ってるから、ナックルより早く

正社員になれると思うよ。スラリアも戦績が少ないけど

期待してるよ、サポーターでも正社員にはなれる...

ってこれはジャスミーから知ってるか」

スラリア「はい...あの!」

ジミエール「?なんだい?」

スラリア「サポーターでも、ソルジャーになれますか」

ジミエール「...それは君次第。ただかなり

険しい道だよ。覚悟はあるかい?」

スラリア「できるなら!私も、余生ある人達を

襲う脅威を倒したいですから!」

ジミエール「うん。その思いを忘れなければ、

きっと正社員にも、ソルジャーにもなれる。ほら、

君達も船に乗ってくれ。もう出航しないと」

全員「はい!」


クレア「愛情表現の不器用...か。よし、だったら...」

フラット「今告るのはやめた方がいいよ。スラリア、

すごい考えてるから」

スラリア「サポーターの力はたしかに弱い...なら、

特訓あるのみ!頑張らないと!」

ノール「邪魔しない方がいい。あの目は本気だ。

茶々入れたら嫌われる」

ナックル「辛そうな目を見せたら優しくしてやれ。

それが好かれるやつだぜ!」

クレア「分かった!」

ペーター「君達はよくそんな話をできるね。

今から四大レベルの異変を相手にするんだぞ?」

フラット「そんなの関係ないです!それに

緊張するよりはいつも通りでいる方が

いいと思いますよ!」

ジミエール「そうだ!プレッシャー感じながら

戦闘するといつも通りの力を発揮できない。

だから兄ちゃんは負けたんだろ?」

ペーター「そ、それは...」

ナックル「ジミエール、そんぐらいにしとけ」

ジミエール「あいよ。あ、オートドライブモードに

してあるから大丈夫だよ。それと音楽イベントで

疲れているだろ?寝ててもいい」

フラット「じゃあ各自休憩!」

全員「はーい」


ジミエール「地球、着いたよ〜、って...」

ナックル「き、気持ち悪い...」

フラット「大丈夫?扇いでるから」

ノール「地球着いたら休め」

クレア「ったく、エリート級ファイターが

こんなに三半規管弱いとは」

エド「あ、ジミエールさん!」

ジミエール「地球、着いたんだけど」

スラリア「あ、そうですか!じゃあ、ナックル担いで

外出よっか!」

フラット「うん、エド、そっちの肩持って!」

エド「はいっす!こうっすか?」

フラット「うん、階段はゆっくりね!」

クレア「俺が後ろいるから、スラリアは

ナックルの前に」

スラリア「分かったよ、ノールは下で待ってて!」

ノール「スラリアが下にいろ。危ない」

スラリア「そう?ありがと」

ノール「ゆっくり来いよ。ゆっくり」

ペーター「ノール、お土産潰れてるぞ」

ノール「あっ...」

フラット「あ、僕のと交換するよ。同じの買ったし」

ノール「ごめん。お返しはー」

フラット「いらない、いらない」

エド「ちょっとフラット!揺らさないでくださいっす」

フラット「ごめっ!次から気をつけるね!」

ノール「よっと、はい、あと一段!」

フラット「よいしょ、っと!ナックルさん、

着きましたよ」

エド「顔真っ青っすよ?これ、酔ったとかじゃ...」

エドはナックルの額に手を当てる

エド「熱っ⁉︎これ、風邪とかの熱じゃないっすよ⁉︎」

クレア「ちょっと失礼...そんだけ高い熱ってことはー」

クレアはナックルの上着を脱がす

フラット「何これ...体が腫れ上がってる⁈」

クレア「月ダニに刺されてる...重症だ、よりによって。

死にはしないが、このままだと全身麻痺する」

ノール「えっ⁉︎」

スラリア「全身麻痺⁉︎」

フラット「治す方法は⁈」

クレア「まだ発見されていない。ただ、ヒーラーなら

治せるって聞いたことがある」

エド「ヒーラーっすか⁉︎デ・ロワーにはいないっすよ!

それにアカデミーにも少ないっす...」

ジミエール「たしかにヒーラーっていう部類は

数が少ない。しかも月ダニか...この症状にまで

至ってるってことは、全身麻痺に陥るまで

残り4日ってとこか。どうするべきだ?」

フラット「隊を二つに分けます。異変解決は

僕とエド、ノールで。ヒーラー探しをペーターさんと

クレア、スラリア。これでいいはずです」

クレア「なるほど、風で情報を集めてヒーラーを

探せと。いい判断だ!」

スラリア「でも、何で私が?」

フラット「今回の戦闘はかなりハード。サポーターで

戦闘能力が低いスラリアは来るべきじゃない」

スラリア「でも私はー」

ノール「ぶっつけ本番で勝てる相手じゃない。

フラットはそう言っている」

スラリア「...」

ジミエール「それは私も同意見だ。いやぁ、

フラット君の指示は完璧だね。私もヒーラー探しに

力を入れるよ。私もサポーターですから」

スラリア「えっ⁈」

フラット「じゃあ僕達は異変解決に!いくよ!」

エド&ノール「了解!」


フラット「地球のニュース情報をまとめると、

群馬、埼玉、茨城、栃木...この4県で事件が

起こってるけど、法則性が見られない。なんだこれ?」

ノール「...いや、なんとなく分かった。まず年齢層。

20代から40代。そして記事の情報だが両親、

もしくは祖父母が白雪村っていうとこの出身みたい。

これ...もし本当なら犯人特定できそう」

フラット「いや、だとしたらもうとっくに

四大の人達が見つけてるって!」

エド「あの、それについてなんすけど、どうやら

白雪村はファイターや天使のような存在は

いなかった村らしいっす!」

フラット「ということは...犯人は誰?白雪村を

恨んでいる人物?」

ノール「もしくは...この事件と関連づいてたりね」

フラットはノールのNPである記事を見る

フラット「少女...消失事件?」

ノール「そう。その少女の特徴は一切書かれてないけど

記事として書かれている時点で脅威による被害では

なさそう。誘拐と見ていいと思う」

エド「あ、こんな情報もあるっす!狙われると思われる

人を保護するっていうものっす!」

フラット「どこが⁉︎」

エド「えっ、四大っすよ?」

フラット「なら手があるのか...でも犯人が

特定できない。ノール、その少女の年齢とかは⁈」

ノール「それも書いてない」

フラット「そっか...残念」

エド「それはそれとしてっす。どうやって犯人を

捕まえるんすか?夢の中に犯人がいるんすよ?」

フラット「そ、それは...」

ノール「事件が起きる前になんとかするしかない。

そのためにこうやって動いてるんでしょ?」

フラット「そうだよ!余計なことは一旦考えないで、

やるだけやろう!」

エド「そうっすね!」

ノール「でも...バカ虎、大丈夫かな」

フラット「...大丈夫。ナックルさんはそんな簡単に

病気なんかに負けないって!」


一方クレア達ー

クレア「なぁ、そっちはどうだ?」

スラリア「...」

クレア「おい?」

スラリア「あ、ごめん。何?」

クレア「...情報は?」

スラリア「えっ?情報?」

クレア「......やる気あるのか?」

スラリア「ごめん、ちゃんとやるよ!」

クレア「ファイター活動の方に行きたいなら

行けばいいだろ?」

スラリア「で、でもー」

クレア「でももへったくれもあるか⁉︎集中出来ねぇなら

足手まといだ!」

スラリア「...私だって...クレアなんか知らない!」

クレア「...っ!」

ジミエール「...まだまだ、かな。さて、あっちは

どんな動きを見せるかな?」

ナックル「おい」

ジミエール「おっと、やっぱり演技だったか」

ナックル「黙れ、“裏切り者”」

ジミエール「あれ...知られてたか...でも君だって

裏切り者じゃないか?人工アリジゴク計画の裏に

携わっているんだから」

ナックル「それは...」

ジミエール「裏切り者同士、仲良くー」

ナックル「人工アリジゴク兵器発動。

生命存在意義消去」

ナックルは黒の皮鞄から緑色の銃を取り、構えて撃った。

その動きは誰にも捉えられない程の速さだった。そしてジミエールは

アリジゴクの触手のような緑色のジェルの中に閉じ込められ、

段々と消化されていった。

ジミエール「何っ…これは⁉︎」

ナックル「あとは...俺達で解決する。お前は消えろ、

“ガブリエルの末裔”」

ジミエール「くそっ⁉︎」

一瞬のうちにジミエールは消え、その存在を消化したジェルは

銃の中に戻った。

ナックル「さてと...あとは治った演技でも。

良かったぜ、人工アリジゴク兵器をいくつか

持ってきておいて。この幻影弾を背中に打ち込んどいて

正解だったぜ。まぁこれでジミエールを覚えているのは

俺だけか。まっ、どうせ数日経てば俺も忘れちまうが。

喜べペーター、お前がガブリエルの末裔だぜ」


クレア「あ〜、見つからんかった〜...スラリア...」

スラリア「クレアなんか知らない!」

クレア「はぁ、いきなりやらかしたなぁ...俺の言いてぇこと、

アイツに伝わってりゃいいが…こうなったら試すか」


フラット「ダメだ〜、手がかりで限界。

“ペーターさんが引き受けた依頼”、難しすぎるよ〜」

ノール「諦めるな。フラットらしくない」

エド「そうっすよ、俺達も手伝うっす!」

フラット「ありがと!でも、今日はもう夜だし

そろそろデ・ロワーに戻ろっか!」

エド「そうっすね。ナックラーさんも気になるっすし」

ノール「そうだな。明日も調査になりそう」

3人はデ・ロワーへ足を運ぶ


フラット「ただいま〜、誰かいる〜?」

クレア「あ、お帰り」

ノール「?スラリアはどうした?“お前ら2人”で

ヒーラー探してたはず...」

エド「何かして嫌われたとかっすか?」

クレア「お見通しってか?」

エド「えっ、あ、その...えっ⁉︎」

フラット「本当になんかしたの?」

クレア「...その...な」

ノール「はぁ、何したか聞いたげる。フラット達は

バカ虎のとこでも行ってこい」

フラット「ノールなら安心だね。じゃあ僕達は

ナックルさんのとこに。行こっか」

エド「クレア、その、ごめんなさいっす!

じゃあ失礼するっす!」


フラット「入るよ〜」

エド「失礼しますっす」

ナックル「おう!来たな!」

フラット「あれっ⁉︎治ってる⁈」

ナックル「俺が病気に負けるかっての!」

エド「で、でも...」

フラット「?ベッドの下、何かあるの?」

ナックル「な、何もないぜ?」

フラット「そう?でも...ガサガサ動いて...」

エド「本当っすね、って蜘蛛っす!デカイのっす!」

フラット「ちょ、ナックルさん、どうにかして!」

ナックル「分かったぜ!この蜘蛛野郎!

あっち行きやがれ!」

ナックルは蜘蛛を手で持ち外へ放り投げる

フラット「ナイス!流石ナックルさん!」

エド「本当っすよ、あの病気も治せるって

もう凄いっすよ!」

ナックル「ガッハッハ!だろ?」

フラット「良かったよ〜...?ベッドの下から

何かはみ出してる...これは...銃?」

ナックル「げっ⁉︎フラット、それは俺の知り合いの

預かりもんだ!勝手に触るな!」

エド「それってニュースでよく見る銃に

よく似てるっす。たしかー」

ナックル(ヤベェ、ここまでか⁈)

エド「ダメだ、思い出せないっす」

フラット「...!」

ナックル「そうか。俺もどっかで見たように

思ったんだが思い出せなくてよ。まぁ今日は

疲れちまった。来てくれて悪いが今日はもう

帰ってもらってもいいか?」

エド「分かったっす、フラットも行くっすよ」

フラット「ごめん、先帰ってて。ナックルさんに

一つだけ聞きたいことがあるから」

エド「えっ...いいっすけどなるべく早く終わらせて

あげてくださいっすよ!」

フラット「分かってる。すぐ終わるから」

エド「絶対っすよ!じゃ、先帰ってるっす」

フラット「...行ったね。じゃあこ聞くよ。

ナックルさん、これ、人工アリジゴクでしょ?」

ナックル「...何でそう思った?」

フラット「持った瞬間に悪寒を感じた。まるで

腕にアリジゴクが乗り移ったような...そんな感覚」

ナックル「気のせいじゃないか?」

フラット「他にもある。ナックルさん、

仮病...いや幻術で病気だと偽ったでしょ?」

ナックル「だから何でそう思う?」

フラット「肩を持った時感じた。この銃を持った時と

同じ感覚が。それに...法の天使の前で嘘は意味を

成さないよ。残念だけど」

ナックル「だったら俺をどうする?」

フラット「何でこんな真似をするの⁉︎」

ナックル「必要だからだ!」

フラット「ナックルさんはファイターでしょ⁈

なのに何で...」

ナックル「ファイターの力か...俺はもう、

ファイターじゃねぇんだよ」

フラット「えっ?」

ナックル「だから...俺はもうファイターじゃねぇ!

人工アリジゴク裏計画の研究員の一人だ」

フラット「裏切るつもり?アカデミーを、僕達を」

ナックル「命令が来れば...殺すハメになるかもな」

フラット「そう...」

(バカみたい、何悩んでたんだろ?こんなやつに

僕は今まで騙されてたんだ...だったらもう...

殺しちゃっても問題はー)

フラットはグラディウスを手にしてナックルに向ける。

その瞬間、あるものがフラットのポケットから光る

フラット「これは...!」


2節 頼れる存在

それはー

センリ「俺達を頼れ」

センリ「おい、もうか?思いの外早かったな」

ナックル「センリ⁉︎」

フラット「センリさん、どうして⁈」

センリ「それはいつか分かる。状況を見るに

ナックル。お前、バラしたか。自分のこと」

ナックル「...それでいい。俺を殺せばフラットは

生きられる。俺はフラットに生きてほしい、

考えられねぇからよ。フラットのいない

日が続くなんてさ」

センリ「それはフラットだって同じはずだ。第一、

死んでもいいなんて考え、大嫌いなお前がそれをして

どうする。あの2人に示しがつかないだろ?」

ナックル「...だけどよ、このままじゃフラットは...」

センリ「大丈夫だ。フラット、期限はあと

どのくらいある?」

フラット「あと...1ヶ月半」

センリ「ギリギリだが...できるな。フラット、

前も言った通りあの男が言うことは断じて聞くな。

お前はあくまでアイツの手駒になっている。

このままだと過ちを犯すことになる。

それは嫌だろ?」

フラット「でも実際、ナックルさんは!」

センリ「ナックルはたしかに裏計画に携わっている。

それは、アカデミーに紛れ込んだ裏切り者を消すため。

ただそれだけだ」

フラット「えっ...そうなの?」

ナックル「...まさかセンリ、覚えているのか?」

センリ「あぁ、覚えている。ジミエールだろ?」

ナックル「そうだ。何故覚えている?」

センリ「裏計画で消された魂は我々の方に送られる

仕掛けになっているんだ。まぁボスのおかげだが」

フラット「ボス?センリは表計画を...」

センリ「俺達はほぼこっそりだが。ボスは表計画に

携わっている身のため問題はないが、俺やシャリーは

違うからな」

フラット「...ねぇ、ナックルさんはどうすればいいの?

このままじゃ...2人揃ってー」

センリ「よく考えろ。アイツはお前を殺せて、

何故ナックルを殺せないと思う?」

フラット「えっ?何でって...知らない」

センリ「多分だが...ここだろ」

フラットの背中を見る

センリ「こんな分かりにくいとこに...さて」

ナックル「これを崩せば...フラットは救われるのか⁈」

センリ「あぁ、調査結果が正しいなら。やるぞ、

フラット。少し痛いが...我慢してくれ」

ナックル「...フラット...」

センリ「それじゃ...やるぞ」

フラットの背中に描かれた小さなダビデの星に

センリは爪をたてる。そして十字に傷を作っていく

フラット「痛い!」

センリ「くっ、結界か⁉︎あの野郎、本気でナックルを

殺すつもりだったか!フラット、激痛かもしれないが

耐えてくれ!少し長引くかもしれん!」

フラット「大...丈夫。続けて」

センリ「分かった。本当なら麻酔を打つべきなんだが...

ないからな。仕方ない。やるぞ」

センリは続きを始める。フラットが痛みで

力んでいるのが心に響くも、手は止めない

センリ「あと少しだ!頑張れ!」

センリは汗を拭いつつフラットを励ます

フラット「ぐっ...!」

センリ「...よしっ!終わりだ!」

フラット「終わ...った?」

センリ「あぁ、終わった。大丈夫か?」

フラット「...僕...生きていいの?」

センリ「そうだ。ナックルを殺す必要も、

君が殺される可能性もなくなった。これで、

君は自由の身だ。あの男に振り回されることはない」

ナックル「フラット!すまなかった!」

ナックルはフラットを強く抱きしめる。その感覚を

フラットは思い出した。少し遠い記憶。

初めてナックルと行った浜辺の記憶。夕暮れの中で

ナックルは強くフラットを抱きしめていた

フラット「...“バトラー”...」

ナックル「⁉︎フラット...やっと思い出したか⁈」

フラット「えっ...何のこと?」

ナックル「記憶喪失だ!ほら、お前がじんー」

センリ「ナックル!」

ナックル「うおっと...危ねぇ」

センリ「その話はするなと言ったはずだ。いいな」

ナックル「...そうだったな。でも...本当に

すまなかった!俺のせいで...お前を追い込むことに...

許せとは言わない!嫌ってくれても構わない!

お前の好きにしろ!」

フラット「...バトラー、それじゃあこれからも

友達でいてくれる?」

ナックル「えっ...友達...?何言ってんだ、お前を

傷つけた俺が友達になんか...」

フラット「ダメ...かな?」

ナックル「...分かった、友達な。ありがとよ、

フラット。絶対二度と傷つけやしないからな!

今度はお前から傷つけてこいよ!」

フラット「何それ!するわけないでしょ!

バトラーに守られながら僕も守るから!」

センリ「...これで“恩返し”はできたか、ナックル」

ナックル「?何か言ったか?」

センリ「い、いや。じゃあ俺はこれで。フラットも

あの男から逃れられて良かったな」

フラット「センリさん!ありがとう!」

センリ「...どういたしまして」

センリはさっきと同じ光と共に消える

フラット「...僕...生きてていいんだよね。また皆と

会って、笑って...たくさん思い出作れるんだよね!」

ナックル「そうだ。フラット、明日からも頑張ろうな!

あと...嬉しいぜ。お前がバトラーって

呼んでくれたのは」

フラット「...もうやめるけどね。恥ずかしいし、

呼び方をいきなり変えるなんて...さ」

ナックル「それもそうか。あ、そろそろお前、

帰らないとマズイか。ほら、帰ってろよ。俺は

明日にでもクレア達に治ったこと伝えないとな!」

フラット「そうだね。あと、異変の犯人探しも

そうだけど、スラリアも探してね!」

ナックル「スラリア...いないのか?」

フラット「クレアと喧嘩したみたいで

はぐれちゃったって。僕達は今日と同じく

ノールとエドで班を組んで行動するから、

バトラー...ナックルさんはクレアと一緒に」

ナックル「2人の時はバトラーでもいいぜ?」

フラット「じゃあそうする。また明日ね、バトラー」

ナックル「おう、おやすみな、フラット!」


獅子獣人「チッ!生意気な真似を!まさか、

失敗作第二号が生きていたとは。第三号も

人工アリジゴクとして生きてはいましたが、

フラット達が既に冥土に送ってしまいましたし...

まぁ、第二号・グリテールは仕留めておかないと。

アイツは私を確実に狙っていますから」

?「普通に殺すんじゃダメなのか?」

獅子獣人「あなたですか。困りますねぇ、勝手に

ゲートをこちらに繋がれては」

?「いいじゃねぇの、“バトラー”?で、

この世界のお前はまだ消せてないのか。協力しても

いいけど?あっちの世界は退屈すぎるし」

ナックル「そんな風にしたのはあなたですが...

もう少しお待ちください。彼らの世界で

起こっている異変が解決されたと同時に

仕掛けますので」

?「分かったよ、待ってる。さて、“こっちの俺”は

一体どんな力を持ってるのかな?」


デ・ロワーファイター課内ー

フラット「さて、調査の続きをやってこー!」

ノール「バルシア達とも協力して情報を集めたら、

80年前の白雪村の記録を見つけた」

エド「本当っすか⁈何が書いてあるんすか」

ノール「内容までは長くて読みたくないが、

要約すると、人の願いを何でも叶えたり、

どんな病も治せる少女がいたらしい。ただ、その力を

使いすぎると災いが起こった。それで少女を地下に

閉じ込めて災いの起きる原因を探りに探った。

そしてある日、その少女は姿を消したー

って感じ。最後のは推察だが、私は誘拐事件の

被害者である少女がこの地下に閉じ込められていた

少女だと思う」

フラット「僕も同意見。ありがとう、情報を

集めてくれて」

エド「でも、その子が夢の神の力を持つとは...

考えられないっすけど」

フラット「たしかに。ただヒーラーの才能があるって

だけのように思えるけど...」

ノール「引き継ぎの儀」

フラット「えっ?」

ノール「引き継ぎの儀なら、神力を渡すことはできる」

エド「それは知ってるっすけど、それを使った人は

死ぬんすよ⁈何でそんなことー」

フラット「もしかして、その誘拐事件の犯人が

夢の神の力を持った人物⁉︎」

ノール「それだと合点が合う」

エド「でも、何でわざわざそんな真似を...」

ノール「罪滅ぼしなのかは知らんが、そのせいで

この事件は起こっているのはたしか。これで犯人も

見えてきただろ?」

フラット「うん、その子で決まりだ」

エド「ただ...場所が特定できないっす...」

「できますわよ!」

ノール「この声は...!」

フラット「バジー!」

エド「どうしたっすか⁈突然...」

バジー「ペーター様からお聞きに

なられてないのですか?神力見極め装置が

完成したっていうお話」

フラット「それは聞いてますけど...」

バジー「なら話が早いですわ。少し廊下に

出てもらってもよろしいでしょうか?」

ノール「廊下?いいけど...」

全員は廊下に出る

バジー「ファイター課の扉の右側にはインターフォンが

ついています。しかし、左側には今まで何も

ありませんでした。なので改造したんです」

バジーは扉の左側の壁を押す。するとー

エド「何すかこれ...穴...っすか?」

バジー「滑り台のような構造になっております。

各隊員の身長に合わせて作っておりますので頭を

ぶつける心配はありませんわ。それでは先に

行かせていただきます」

バジーは躊躇うことなく穴へ入る

エド「よく分からないっすけど、入ればいいんすよね!

一か八かっす、うぉぉぉぉ!」

エドも続いて入る

ノール「はっきり言って怪しいが...入らなきゃ

始まんない、か。それじゃ、フラットも来いよ」

ノールは迷いなくすっと入る

フラット「えっ、ちょ...もうどうにでもなれ!」

フラットは唯一、頭から飛び込む。


フラット「うわぁぁぁ!」

エド「ガハッ⁉︎」

エドは頭から落ちてきたフラットと思い切りぶつかる

ノール「エ、エド、大丈夫?」

バジー「お二人とも、お怪我はありませんか?」

フラット「いてて...何?」

ノール「滑り台を頭から滑るやつ、お前ぐらいだ!」

エド「あ、頭がクラクラするっす〜」

バジー「タンコブくらいで済んで良かったですわ。

それで、ここは私達整備課が作った、ファイター専用の

司令室と強化室です。それで神力見極め装置は

こちらの司令室にあります。ついてきてください」


ノール「で、デカイ...」

エド「何すかこの装置...たくさんパイプが

繋がってるっす」

バジー「かなりのパラレルストーンを使いますので...

それでどういった神力をお探しですか?」

フラット「夢の神力です」

バジー「夢ですね...はい、出てきました。

東京に2人、群馬に1人、長野に1人...ですわ」

フラット「白雪村ってどこ?」

ノール「神奈川。でも神奈川には1人もいない。

バジー、その4人の詳細出せるか?」

バジー「やってみます......できましたわ。

東京の2人はファイターではないですが、

力を使いこなせているようです。群馬は前科ありで、

現在は刑務所の中です。長野は...⁈何ですのこれ⁉︎

データが...文字化け⁈違う、これは...人の名前が

たくさん重なっています!」

エド「決まりっすね」

フラット「長野か!」

ノール「さてと...どうやって行こうか」

バジー「それもご心配いりません!クレア様達が

お帰りになるのを待ちましょう!」

フラット「あの、なら僕はスラリアを探しに

行ってきます!」

ノール「私もいく。今回はクレアに説教しないと」

エド「俺もついてくっす!待つだけなんて

嫌っすから!」

フラット「分かった、ついてきて!」


スラリア「...」


クレア「集中出来ねぇなら足手まといだ!」


スラリア「私だって...力になりたいのに...

分かってる、まだ力不足なのは。だから...これから

頑張ろうって決めたのに...」

フラット「スラリア〜!」

スラリア「フラット...探してる?でも...

私がいてもいなくても変わらない。だったらー」

クレア「あ、いた!」

スラリア「えっ⁉︎クレア...か」

クレア「探したんだぞ?ほら、かえー」

スラリア「分からないくせに」

クレア「は?」

スラリア「私の気持ちなんか分からないくせに…探してた?

ふざけないでよ!」

クレア「なっ、こっちは真剣にー」

スラリア「もう言わないで!どっか行って!」

フラット「⁉︎この声...スラリア!」

クレア「とんだお嬢様理論だな。分かった、ただし、俺達の前に

二度と顔を見せるな」

フラット「クレア!」

クレア「フラット、帰るぞ。こんなお嬢様に

付き合ってられるほどー」

フラット「クレア、そんな態度よく取れるね。自分で傷つけたんだよ?」

クレア「自分の実力を理解してないから傷つくんだ。

人はそうやって強くなる」

ノール「その理論なら、泣かせてもいいわけ?

それで何も手を貸さなくていいわけ?」

クレア「そ、それはー」

川原へ続く草原の坂道を下って、ノールはクレアを引っ叩く。

ノール「実力を理解していないのは他でもないお前だけだ!

そんな愛は不器用じゃない、捻くれたものだ!」

クレア「な、何だとぉ〜!」

フラット「僕もそう思う。スラリアがどれだけ悩んできたと思う⁈

たった1人で2年間もの間考え込んで...戦ってきたんだよ⁉︎

自分に対する偏見と…今にも壊れそうな自分と向き合いながら!」

クレア「買い被りすぎだ!コイツのどこにそんな勇気がある!」

フラット「あるよ!クレア、最低だよ」

クレア「そこまで言うか。上等だ、派手に喧嘩したって

いいんだぞこっちは!」

スラリア「やめて!」

フラットとクレアの間にスラリアが割って入った。

クレア「...そう、それでいい」

スラリア「えっ...」

クレア「その勇気がスラリアだ」

スラリア「クレア…?」

ギュッと優しくクレアはスラリアを抱きしめた。その場にいた

フラットとノールはクレアの術が作った風の残像だった。

クレア「俺も知ってるつもりだ。でも、つもりじゃ足りないんだ。

もっとお前ののこと…知りたい」

スラリア「…クレア…告白ってこと?」

クレア「違っ…そうじゃなくて、友達として!」

スラリア「フフフっ、冗談だよ。ありがと」

クレア「ったく…どうするよ?俺と帰るか?」

フラット「ん…?あ、いた!って、何してるの?」

クレア「わわっ⁉︎こ、これはだな―」

スラリア「ふふっ、キャァァァァァァ!クレアが急に抱きしめてきたの!」

フラット「えぇっ⁉︎マ、マジで?」

スラリア「冗談」

フラット「ちょ、スラリア〜!」

クレア「ハァ、びっくりしたわ。じゃあ俺は、スラと帰ってるでな」

クレアはスラリアの手を強く握った。

スラリア「えっ…」

その大胆な行動にスラリアは顔を赤らめた。

クレア「しっかり握ってろよ。神業・風変化!」

強風と共に、クレアはスラリアと共に去った。

フラット「あっ、クレアのやつ〜!こうなったら最終手段!

神業・飛翔!」


地下司令室にてー

ノール「遅いな〜、アイツら」

クレア「よっ、今帰ったぞ!」

スラリア「たっだいま〜!」

ノール「えっスラリア…クレアに酷いこと言われたんじゃ?」」

スラリア「?全然?ね?」

クレア「俺がスラにひでぇことを言うわけねぇだろ?狐か狸にでも

化かされたんじゃねぇの?」

ノール「そんなわけあるか!て、その前にフラットは?」

エド「そういえば見当たらないっすね」

スラリア「あたし達はフラットを置いて風に乗って帰ってきたから

まだ帰ってこないんじゃない?」

「ウワァァァ!」

天井から大きな音と共に悲鳴が聞こえた。それは―

フラット「あいっててて…あっ!やっちゃったか〜」

なんとデ・ロワーの屋上から地下まで突き抜けてフラットは

その場に落ちてきた。

ノール「だ、大丈夫?」

フラット「アッハハ、使い慣れてない神業なんて使っちゃダメだよね」

クレア「お前、法の神力…だよな?」

フラット「一応ね。母さんが天空の神力を持ってたから引き継いで

持ってるんだよね」

エド「あぁ、引き継いだだけっすか」

スラリア「わ、分かった」

フラット「ふぅ…さてと。これ直さないと。神業・分子合成」

粉々になった天井の欠片が次々と一枚の人形の板に変わり、

やがて屋上から地下の天井にくっつき、元通りになった。

スラリア「スッゴォ〜イ!」

フラット「えっ?」

エド「もう慣れたっすよ、フラットの神業の凄さには」

ノール「私と正反対だから何かやらかしても、どうにでもなるから

助かるしね。じゃ、長野に行くか」

フラット「だね。じゃあ浅草駅に―」

バジー「いえ、わざわざ駅を用いて通る必要は

ありませんわ。司令室の奥の扉、暗証番号と顔認証、

あと各社員のコードを入力して開けられますわ」

フラット「向こうには何があるんですか?」

バジー「まだお一つ残っていますよね?

整備課に来たご依頼は3つ」

クレア「あぁ、なんちゃら号ってやつか」

エド「それ、結局何すか?」

バジー「それは見てからのお楽しみですわ。では、

扉の暗証番号を打ち込みますのでお待ちを」

バジーは扉横の入力装置に次々と番号を

打ち込んでいく

バジー「できましたわ。はい、顔認証とコードを

打ち込んでください」

フラット「それじゃ僕から」

装置「認証...完了。コード認証に移ります」

フラット「えっと...22590と」

装置「合致しました。フラット・クラリオ。

中へどうぞ」

フラット「それじゃ先に。早く来てね!」

ノール「隊長優先か。じゃ、次は私」

装置「認証...完了。コード認証に移ります」

ノール「…55555…ってふざけてんの⁈」

クレア「これランダムで決まってるしな…

ある意味運がいいんじゃないか?」

装置「合致しました。ノール・タール。中へどうぞ」

ノール「後でコード変えてもらわないと。早く来い、

待っている」

クレア「次は俺だ!」

装置「認証…エラー。近すぎです、もう一歩

お下がりください」

クレア「こうか?」

装置「完了しました。コード認証に移ります」

クレア「19635…と」

装置「合致しました。中へどうぞ」

クレア「あとは2人だ、チャチャっと終わらせろよ!」

エド「俺次っす!」

装置「エラー。笑わないでください」

エド「あ、すみませんっす」

装置「認証…完了しました。コード認証に移ります」

エド「08012…っすね」

装置「合致しました。中へどうぞ」

エド「次で最後っすね!スラリアも早くするっす!」

スラリア「うん…これでいいのかな?」

装置「認証…完了。コード認証に移ります」

スラリア「あれ…そういえば貰ってたっけ…」

バジー「40632ですわ!」

スラリア「あれ、どこから⁈」

バジー「放送機能をつけておいて良かったですわ。

40632です。覚えましたか?」

スラリア「大丈夫そう!やってみる!40632…っと!」

装置「合致しました。中へどうぞ」

スラリア「良かった。私で最後だし、急がなきゃ!」


フラット「スラリアも来たね」

ノール「で、これは?」

バジー「ファイター輸送兵器、

『スパークフラッシュ号』ですわ。これは地下を

安全性に配慮しながら掘り進む地下リニアです。

作るのに一番苦労しましたわ」

クレア「地下に...リニア?できるものなのか?」

バジー「リニアと言っても最新型で、

パラレルストーンを用いているので磁力がなくても

浮けるのですよ」

エド「パラレルストーンって...そういえば詳しくは

知らないっす」

「おいおい、そんなんでファイターできるのか?」

フラット「えっ...いつの間にー」

ナックル「よっ!復活のナックラーってか?」

ノール「バカ虎⁈病気はどうした⁉︎」

ナックル「あんなので横になる俺じゃねぇ!

もう治ったぜ!」

フラット「...バトラー!」

エド「バトラー?」

フラット「あ、いやナックルさん」

スラリア「良かった。全身麻痺にならなくて」

ナックル「で、パラレルストーンが

何なのか、だったか?バジー、発車準備してくれ。

その最中に話してやるよ」

フラット「発車準備...そうだ、座らないと!」

クレア「そうだった!えっとシートベルトは...」

ノール「ここ。はい、持って」

スラリア「ノール、それは私のだよ!クレアのは

こっち!もう...」

クレア「スラリア⁈なんで隣に...」

スラリア「いいでしょ?ダメなの?」

クレア「い、いやいいけどさ...」

バジー「メインエンジン異常なし、動力源効率正常、

ドライブモードノーマル。発車準備完了!」

ナックル「全員シートベルト装着完了!

いつでもいいぜ!」

バジー「了解ですわ!スパークフラッシュ号、発車!」

フラット「わわっ⁉︎揺れる〜!」

ノール「キツく締めろ!ほら、こう!」

フラット「ありがと、ノール」

バジー「発車完了!目的地、長野!」


3節 死を謳うもの

?「ウフフ、もうこのお人形さん飽きちゃった。

次のお人形さんは誰かな?キャハハッ!」


エド「で、パラレルストーンって何すか?」

ナックル「パラレルストーンは平行宇宙の狭間の世界に

彷徨い続けた魂の跡とでも思ってくれればいい。

その思念がエネルギーに変わって使われる」

フラット「てことは、僕達は魂のなりの果てを

使っているってこと?」

ノール「なんか...複雑」

スラリア「それじゃ冥土に送られることないまま...!」

ナックル「その心配はいらないぜ。パラレルストーンと

なった魂は石の中で眠っている状態なんだ。つまり、

魂の力ではなく、魂にこびりついた

パラレルウェーブ現象による力の塊を砕いて

それをエネルギー源としているってわけだ」

クレア「じゃあ、魂を救っているって

解釈でいいのか?」

ナックル「それで構わないぜ」

バジー「ですが、やはり使うのは気が引けますね。

運悪く流されて、流れ着くこともなく一生を終えた方の

魂を使っているように思えて...」

ノール「それでも、石の中にある魂をそのままに

しておくわけにもいかない」

スラリア「それに、その魂は私が冥土に送りますし」

フラット「...スゥ」

エド「あっ、フラット、何寝てるっすか⁉︎」

ナックル「まぁ、たまにはいいだろ?フラットは

隊長で疲れていたっておかしくないわけだしよ」

エド「そうっすけど...」

スラリア「でも、フラットの寝顔は初めてかも」

ノール「私も見たことない。倒れた時は

寝顔というより、なんだかうなされてたようにも

見えたし...そうだ、寝顔ゲット!」

クレア「お、俺もそうしよ!落書きしてデ・ロワーの

掲示板にデカデカ貼りつけてー

うわっ⁉︎フラット、起きてたのか⁈」

フラット「へ?あ、寝てた?ごめん...ふわぁ〜」

ナックル「寝てていいぜ。疲れてるだろ?」

ノール「無理に起きなくていい。この依頼は

四大レベルなんだろ?戦闘に備えて、今のうちに

寝てしまった方がいい」

フラット「...ごめんね、昨日は眠れなくて...お言葉に

甘えさせてもらうね」

ナックル「あぁ、おやすみな」

ナックルは自分のジャケットをフラットにかける

エド「ナックラーさん、紳士っす...」

ナックル「こんぐらい当然だろ?」

クレア「はぁ〜...まじびびった...」

ノール「撮れた。案外可愛い寝顔するな...」

クレア「俺も撮れたっと。ハハハ、無防備なやつだ」

スラリア「私は撮らないよ。バレたらタダじゃ

すまなさそうだし」

エド「白雪村に着くまでは俺達も戦闘に備えた方が

いいっすよ!」

ナックル「そうだな!絶好のコンディションで

いかねぇとマジで危険だ」

ノール「そういえば、ファイター強化パーツって

なんだ?強化室にはなかったような気がする」

バジー「それはこちらにありますわ。丁度紹介を

しようと思っていたので」

ナックル「...フラットはどうする?」

クレア「起こせばいいだろ?お前らしくないぞ、

いちいちそんなこと悩むの」

ナックル「...そうか。おい、フラット。ちょっと

起きろ。話があるからよ」

フラット「?何ぃ?」

ノール「ファイター強化パーツを紹介するから

ついてきて。隊長のフラットが話を聞かないと

いけないから」

フラット「あ、分かった」

エド「聞き終わったら寝てもいいっすよ!」

フラット「いや、流石に悪いよ。起きてるって」

スラリア「寝てていいって!フラット、最近疲れてると

思うし。私達がちゃんと起こすし、フラットの体調が

悪いと戦闘に支障が出ちゃうから」

ノール「さっきも言った通り、四大レベルの戦闘に

なる可能性が高い。全員がベストコンディションで

いないと少なくとも大怪我を負うのは確実」

エド「だからフラットも休むっす!俺達も

休んだり、鍛錬を積んどくっすから!」

フラット「...分かった」

バジー「お話はよろしいでしょうか?では、

こちらにいらして下さい」


クレア「うわぁ...まるでゲームのようなギルドだ」

スラリア「色んな機械があるよ...ノール、

壊したらやばいかもね?」

ノール「善処する。それで...この機械は?」

フラット「たしかに...なんか目立ってる」

バジー「それは神器の封印を解く装置ですわ」

エド「神器の封印っすか?」

バジー「えぇ、5002年に神軍が敗れた日から

神器の力はほとんど封印されていました。その封印を

解く鍵こそ、支援力なのです。皆様の技は支援力が

あってのものです。この機械は神器に残っている

支援力を使って封印を解く装置ですわ」

フラット「バジー...詳しいんだね」

バジー「いえ、これはある人から教わったことです。

私の知識ではありません」

ナックル「これはどう使うんだ?」

バジー「まず台に神器を置き、パネルに表示される

封印された力を確認します。そして、光っているのが

現段階で解ける封印です。支援力はもともと、

人々の神に信仰する心。それが今では応援などの

プラスな思考に変わり必要な支援力が増えましたが、

その時代に比べれば集めやすいものになっていると

思います」

フラット「じゃあ、僕から先に、と...」

ノール「あれ...フラットの神器って名前あったっけ?」

フラット「グラディウス。法の父とも呼ばれた

グロティウスから取った名前だって」

ノール「私はじゃあ...『デストロイヤー』にしよう」

クレア「そのまんまだな」

ノール「そういうクレアは何て名前にするつもり?」

クレア「俺は...『アーチュリティ』だな」

スラリア「私は神器がないから...」

エド「俺も人工神器っすし...」

ナックル「人工なんか関係ないぜ!俺のは

『光甲冑・ライトメタル』って名前があるしな!」

フラット「あれ...全部光ってる?」

バジー「えっ、そんなはずありませんわ。フラット様は

まだそんなに戦闘は...」

バジーは詳細画面を開く

バジー「支援力...12万⁈ありえませんわ、

こんな数値!」

ナックル「俺でも3万とかだぜ⁈4倍なんてそんな簡単に

集まる量じゃねぇって!」

クレア「まさか、全部解けるって言わないよな?」

フラット「...無理っぽい。なんか全部高い。

一つの封印解除に2万とかかかる」

バジー「おかしいですわね...普通にかかる支援力は

高くても1万のはずですのに...」

ナックル「...なぁ、予測だがフラットの血液の75%は

神の血じゃねぇか?」

ノール「その予測だと必要な支援力が高いのは

理解できる。でも...何で元からそんなに高い支援力を

持っていたのかが気になる」

クレア「長い間隠れとしてファイターやってたからじゃ

ないか?フラット、隠れだっただろ?」

フラット「そうだけど...まぁいいや。強化しないと。

それじゃあ試しに...この『束縛』を解除しよっと!」

エド「結構当てずっぽうにやってるっすけど...

あれでいいんすか?」

バジー「まぁあれ全部解放されていたのが本当の

神器ですから、いいとは思いますよ」

フラット「でーきた!早速...『束縛』!」

槍の先端が鎖のようなもので伸び、壁に穴を開ける

フラット「やば、やっちゃった感じ?」

ノール「フラットなら直せるだろ?」

フラット「そうだけどさ!」

クレア「でも束縛だろ?攻撃技ではないと思うんだが」

ノール「多分、対象者がいないとまっすぐただ

飛んでくってだけだと思う」

フラット「なるほど...じゃあ誰が束縛されたい?」

ナックル「いやいや、あの破壊力を持つのが

束縛するわけだろ?死ぬんじゃないか?」

バジー「どうでしょうか?あくまで取り押さえるために

使われていそうな名前ですし...死ぬほどでは

ないと思いますけど」

フラット「じゃあ僕が決めるね。日頃の行い的に…

ナックルさんだね!」

ナックル「俺か⁈おい、冗談はー」

フラット「冗談じゃないよ!『束縛』!」

ナックル「ぐっ...あれ、痛くねぇ?」

バジー「あくまで束縛という解釈で良さそうですわね」

フラット「でも、これはこれで使いやすそう。

たくさん使い道があるから」

ノール「たしかにあれだけの勢いがあれば

攻撃手段としても使えそう」

スラリア「あと、束縛としての使い方としても使える」

フラット「それもあるけど、仲間が危険な状況に

立ち会った時に助けられる!」

エド「フラットの発想力には到底追いつけないっす...」

ナックル「どうやって助けんだよ」

フラット「束縛して思い切り引っ張り上げる」

ノール「なんか痛々しい...」

バジー「それでスキルは四つまで

装備できるみたいです」

フラット「四つまでか。分かった」

エド「それじゃ強化するっす!」


数十分後ー

フラット「終わった〜!」

クレア「お前は6つだけだったな」

ノール「しかも12万あった支援力も一桁になった」

フラット「大変だぁ」

エド「俺達は8つぐらい強化できたっすのに...」

ナックル「でもまぁ、いいのを選べたんだろ?」

スラリア「面白そうなのも入れてたよね」

フラット「うん、じゃあそろそろー」

バジー「もうすぐ長野ですわ。ファイター反応...あら?

消えましたわ⁈」

フラット「まずい!急いで!」

バジー「はい!出力最大!」

全員「うわぁ!」

バジー「⁉︎フラット様、大変です!車内に

夢の自力反応が!」

フラット「くっ!バレたか⁉︎」

?「♪かごめかごめ...

キャハハッ!スターのこと、知っちゃった?

知っちゃったなら、お人形さんにしないと...

ウフフ...キャハハハハ!」

フラット「この中じゃ危険すぎる...!バジー、

地上まであとどのくらい⁈」

バジー「それが...スパークフラッシュ号自体が

止まっていて、地上に出られないんです!」

ナックル「こりゃ...緊急事態だな」

スター「じゃあ...私と遊ぼ?死ぬまで!

第一突風『闇之』術・『影刃之旋風』!」

クレア「突風術⁈どうしてアイツが...!

第一突風『炎』術・『四方爆破之矢』!」

クレアの矢の爆発で、スターの刃のような鋭い

ブーメラン状の神器が落ちる

スター「なっ...⁈だったら...!

第一悪夢『闇之』術・『死誘正夢』!」

ノール「丁度いい!試させてもらう!

『神力破壊』!」

ノールがスターの術をかき消す

スター「なんで⁈」

ノール「はぁ、はぁ...この術、かなり体力を消耗する」

フラット「凄い...封印されてた術ってこんなに

強力なんだ...」

スター「何なのコイツら⁈夢で見たのと違う!

ここは退くべき!」

フラット「逃がすか⁉︎『束縛』!」

スター「これは...私は自由になったんだ!

縛られることなんて...もうない!」

スターは透明になり、一瞬でその場からいなくなる」

フラット「逃がした...」

クレア「アイツ...まさかな」

バジー「...あ、動力源が復旧しましたわ!

スパークフラッシュ号、再発車します!」


スター「なっ、なんなんだアイツら...夢で見たよりも

強い⁈私の術が効かないなんて...!」

?「あ、帰ってきた!どうしたの?」

スター「...ユーリック...私がお前を自由にする。

もう少しでそれも叶う。だから...我慢できる?」

ユーリック「うん!」

スター「それじゃあ、私は行くね。また後でな」

ユーリック「気をつけてね」

スター「...あぁ、すぐ戻るよ!」

スターは外に出る

ユーリック「...私は外にでも行ってよ」


バジー「地上に着きましたわ。少し山なので

気をつけて下山してください」

フラット「やっとか。さっきの戦闘は焦った〜」

ノール「急な戦闘で、かつあの戦闘に不向きな場所で

あそこまで上手く戦えたのは封印を解けたおかげだ」

スラリア「私の術、使えなかった...」

エド「俺もっす...」

ナックル「俺は使わなくて良かっただろうし...」

フラット「だろうね」

クレア「あの術...いや、ありえない」

フラット「クレア?どうしたの?」

クレア「あ、いや、何でもないぞ」

フラット「そう?」

ユーリック「あれ...こんなとこに人がいる?」

クレア「君は?」

ユーリック「私はスタ...じゃなかった、

ユーリックだよ」

ノール「ユーリック⁈たしか記事で載ってた...」

ユーリック「...何?記事って」

ノール「えっ...白雪村少女消失事件についての

記事だけど...」

ユーリック「白雪村⁈ごめんなさい、私、帰る!」

フラット「あ、ちょっと⁉︎」

クレア「あの口調もどっかで...」

エド「追いかけるっすよ!あの子、

何か知ってるっす!」

クレア「追いかける...か。それがいい!」


ユーリック「ふぅ、ここまで来れば大丈夫かな?

“ユーリックでいる“のも大変...」

スター「ちょっと?今の君は”スター“じゃない。

ユーリックなんだ。いいな?」

スター「分かってる。ごめんなさい」

ユーリック「お前はユーリックだ。自由になるためには

お前はスターでいちゃいけない」

スター「...はい」


ナックル「チッ、見失った...」

フラット「でも、あのスターを探せば

大丈夫そうだね!」

クレア「...すまん。多分だが...あのスターは俺の妹だ」

ノール「...大体予想はついてた。やっぱり」

スラリア「たしかに突風術使ってたもんね」

フラット「でも...あの子スターって言いかけてた。

それに...あの体であの口調はおかしい。多分だけど

あのユーリックの体とスターの体の魂が入れ替わってる

可能性がある」

バジー「魂入れ替えですか⁈ハイリスクすぎますわ!」

エド「でも、そうなると不思議っす。あの突風術は

スターのものとして、夢の術はユーリックのっす。

となると、スターの術が引き継がれてるっすよ⁈」

フラット「それがね...ユーリックの体は魂だけで、

体自体はまるで死体のような感じだった」

ノール「...辻褄があったかもしれない。もしかして

ユーリックはスターを誘拐してすぐ力を与えた。

その後自殺するとともに、魂入れ替えを行った。

そしてスターの体で事件を起こし、ユーリックの体と

なったスターを無実にする。スターを自由にするには

これ以上のない方法とでも考えたんだろう」

クレア「だとしたら、絶対に許さねぇ...!」

フラット「その前に何でクレアはスターを

妹だって思ったの?」

クレア「親父からそう聞いてる。俺には妹がいて、

お袋が守るために親戚に物心がつく前に

引き渡したってな。俺とは20歳ぐらいの差がある」

ノール「クレアは107だから...87くらいってとこか」

フラット「うん、スターと名乗ってた方は明らかに

口調が大人だった。それで考えるとノールの

考えが正しいと思う」

エド「俺もそう思うっす!」

ナックル「でもよ、スターからすると自分の身体を

使われて、尚且つ罪を被せられてるんだぜ?

嫌とか普通なら思うだろ?」

スラリア「長い間、白雪村の地下牢で

閉じ込められてたんでしょ?だったら、嫌とか

助けてなんて感情を失ってるかもしれない」

フラット「もしくは、別の考え方も出来るけど...

少しありえない話だから...」

スター「あれ、さっきの...」

クレア「スター...?」

スター「⁉︎何で私のこと知ってるの...⁈まさか

白雪村の人⁈ユーリックに教えないと!」

フラット「待って、僕達は君と同じ力がある!」

スター「...私と同じ力?」

クレア「見てろ。風よ...我が命に答えよ...

神業・風舞!」

スター「キャッ!凄い風...私と同じ...突風術...」

ナックル「お前はどうしてユーリックに全てを委ねた?

何か理由でもあるのか?」

スター「...ユーリックは私を自由にしてくれるって

約束をしてくれた。そのためには私がこの力を

手放すことになるって言ってて...でもいつかその力を

返せる日が来るって言ってた。だから...信じてるんだ」

エド「なんか可哀想な子っすね...」

ノール「でも、信じる心は残ってるみたい。だったら

話は早い。あのユーリックを倒して、無理矢理にでも

スターに力を与えよう。アイツがやっていることは

この子の代わりの復讐だから」

ナックル「その通りだ!望まない復讐をしているんだ!

やめさせねぇと!」

フラット「待って!それだとユーリックの思う壺だよ!

ユーリックはスターの身体を支配してる。だから、

夢の中でユーリックを倒さないと!」

エド「そうっすね。俺も同じこと考えてたっす。

ユーリックを現実で倒すことはスターは

ユーリックとして生き続けることになるっす」

スラリア「頭の回るやつだね...厄介なことに

なってきた...」

スター「あの...それじゃ!」

ナックル「あ、ちょっと待て!少し付き合ってくれ」

スター「えっ?」

ナックルはスターを連れて花屋に入っていった


ナックル「これ、一輪」

店員「何色がいいですか?」

ナックル「ピンクだな」

店員「ピンクですね。プレゼントですか?」

ナックル「まぁ、そういうとこだな」

店員「メッセージカード付けますか?」

スター「バラ...?」

ナックル「いや、カードはいい。そのままで」

店員「分かりました。ではこのままで。

あとはどうしますか?」

ナックル「あとはコイツが決めるので」

スター「私が?だったら...向日葵と朝顔、

マリーゴールドにカモミール!」

店員「朝顔は種になりますけどよろしいですか?」

スター「いいです!」

店員「分かりました。ではこれでお会計で?」

ナックル「そうだな、何オズ?」

店員「1520オズです」

ナックル「よっと」

店員「はい、では少々お待ちください」


フラット「何してるんだろ?」

クレア「さぁな。ただ...ユーリックとやら、

絶対に許さねぇ...俺の妹の身体で!」

ノール「落ち着け。分からないでもないが、怒りで

我を忘れてはいけない」

エド「大丈夫っすよ!必ず助けようっす!」

スラリア「そういえば、何でネット情報が

あったんだろう?普通、解決されるまでは

ファイター案件って公開されないはずなのに...」

ノール「それは普通のネットワークサービスの場合。

ファイターになると、無償で通信機器が渡されるだろ?

そのネットワークサービスは普通のと違って

ファイター関連の情報も入手できるってわけだ」

フラット「そうだったんだ、全然知らなかった」

ユーリック「あれ?あなた達...いたんですか?」

スラリア「ユーリック⁈」

クレア「貴様、何しにきた⁈」

ユーリック「別に?スター...いえ、ユーリックが

いなかったので探していたのです」

フラット「そうなんだ、で?本音は何?ユーリック」

ユーリック「それは...⁉︎」

ノール「お前がユーリックなのは既に知っている。

さぁ、何者だお前は。答えろ!」

ユーリック「答える気などない!」

クレア「何だと!」

ユーリック「おっと、弟のくせに歯向かう気?」

クレア「弟⁈」

ユーリック「...つい言っちまった。まぁいいか。

私はゴールド家長女として生まれるはずだった

ユーリック・ゴールド。母さんが流産して私は

魂を残して死んだ。そしてアンタが生まれた。でも、

私はアンタには入れなかった。でも、その後生まれた

スターには入れた。男だったから入れなかったって

ことかもね。でも殺す気はないよ。アンタ達は

罪もないしね。でも白雪村の奴らだけは許さない。

可愛い妹から自由を奪ったこと、後悔さしてやる!」

エド「スターはそれを望んでるっすか⁈」

ユーリック「スターがどうこうじゃない。私が

気に食わないから殺す。それだけだ」

ノール「それが姉のすること?」

フラット「妹の気持ちを考えず、ただ自分の

気持ちで行動する。それは姉妹がすることじゃない」

クレア「それはさておき、何でさっき俺達を

攻撃した?」

ユーリック「力試しだ。スターを守れるかどうかの」

エド「守るって...お前が守ってるじゃないっすか⁈」

ユーリック「守る?馬鹿言わないで、私はただ

スターを人形にしてるだけだ。あの弱虫には

それぐらいの価値しかないから」

スラリア「なっ、価値⁈」

ユーリック「アンタらには、あの人形を守れと

言っている。分かるか?」

エド「妹を人形呼ばわりするやつの気持ちなんか

分かる気ないっすよ!」

フラット「僕も。あの子にだって価値はある」

クレア「...ユーリック。お前は俺の姉じゃない。

家族でもない。消えろ!

第一突風『零』術・『水切之旋風』!」

ユーリック「おっと、交渉決裂か。だったら仕方ない。

ここでアンタらも人形にするまでだ!」


スター「⁉︎この気配...ユーリック!」

ナックル「おい、どこに行く⁉︎」


ユーリック「第一悪夢『闇之』術・『死誘正夢』!」

ノール「くそ、神力が...まだ上手く使えない!」

フラット「しかもさっきより...強い⁉︎」

クレア「ここまでか!」


最終節 自由はここに

クレア「ここまでか!」

スター「させない!」

スラリア「スターちゃん⁈」

スター「知ってた...!ユーリックがこんなこと

してたって。でも...スターはそんなこと望んでない!

ただ分かってほしかっただけ!たしかに私は...

風の力を使って怪我を治したり、夢を叶える道を

教えたりしたけど...人を傷つけることはできないって

教えたいだけ!ユーリックは間違ってるよ!」

ユーリック「スター、お前まで私を裏切るのか...!

ならばもういい。その魂ごと奪い取ってやる!」

クレア「スター⁉︎」

スター「イヤっ!」

ユーリックはスターを取り込む。

まるでアリジゴクのように

フラット「アリジゴク...だったのか」

ユーリック「アリジゴクは元々人間の魂。肉体をなくし

彷徨い続けた成れの果て。キャハハっ、私は

エリート級のアリジゴク。人間の形を取り戻した

人間に最も近い存在」

クレア「スターを...返せ!」

ユーリック「なら...夢の中で戦いましょうか。

神力・夢写」

全員はバタバタと倒れていく


フラット「?ここは...」

ユーリック「♪かごめかごめ...

さて...生きるか死ぬかを賭けた夢。勝負に負ければ

死、勝てば生きる。スターはここだ。なぁスター?

自由になりたいだろ?」

スター「自由には...なりたい」

ユーリック「力があれば、簡単に自由になれるぞ?」

スター「...本当?」

クレア「信じるな!」

エド「ダメっす、催眠状態っす、俺達の声は

届いてないっす!」

ノール「あの野郎...気にくわねぇ!フラット、

私はいくぞ!」

クレア「俺もいく!あんなやつに...スターを...妹を

持っていかれるわけにはいかない!」

スラリア「家族を人殺しにするなんて絶対許さない!

私もいかせて!力になれなくても...皆を支えたい!」

フラット「うん、いくよ!戦闘モード起動!」

ユーリック「無駄だよ!この領域には入れない」

フラット「なっ、なんだこれ⁉︎空間が...ねじれてる⁉︎」

エド「夢の中だからっすか⁈」

クレア「いや...これは...この空間を支配してるのが

ユーリックだからだ!」

フラット「アイツ、この夢の空間を作り上げてる!

でも、アイツがあそこにいるってことは必ず繋がる道が

あるってこと!探すよ!」

全員「了解!」


ナックル「ったく、スターのやつどこに...⁉︎

おい、お前らどうした⁈」

「...」

ナックル「気絶してるのか?でも全員...」

バジー「すみません、木陰から見ているしか

できませんでした」

ナックル「バジー、何か知ってるのか?」

バジー「はい、実はー」


ユーリック「私がお前に自由になる力をやる。それで、

お前は暴れろ。自由になるまで。孤独の自由を作れ」

スター「...孤独の...自由...」

スターはユーリックの神器を手に取る


フラット「ここもねじれてる...こっちは...大丈夫!

すすむよ!」

ノール「おい、あれ!」

エド「スターが...神器を⁈」

クレア「チッ!まずい、力を与えられた!」

スラリア「...絶対に許さない。妹を血で汚そうなんて...

絶対に!私は...アイツを倒す!家族を...人を価値で

表現するようなやつを生かしておくわけにはいかない!

アイツがアリジゴクなら...私は倒す!」

無機質な声「ファイター・ソルジャー反応。

スラ・リア。ソルジャーの素質を発見しました。

認証しますか?」

フラット「これ...スラリア!」

スラリア「...お願い。私はあの子を救いたい!だって...

まだ余生のある子だもん!」

フラット「分かった。認証!」

スラリア「...!これは!」

スラリアの手に斧状の神器が宿る

クレア「斧...?鎌かと思ってたが」

エド「まぁ、神器なんてそれぞれっすよ!

それじゃ、いくっすよ!」

フラット「待って!どうやってスターの魂と

ユーリックの魂を分離させるの?」

クレア「決まってるだろ!」

ノール「バジョーの時と同じく...」

エド「コアを壊せばいいっす!」

フラット「分かった。コアを破壊してスターを

助けよう!」

全員「了解!」


ナックル「なるほどな...ユーリックが全員を

夢の中に...なぁバジー。前に作ってなかったか?

仮死状態にする薬」

バジー「ありますけど...実験をしていませんし、

第一、ユーリックさんが作られた夢の中に

入れるかどうか...」

ナックル「まだここに神力が残っている。

それを集めることはできないのか?」

バジー「それならできますわ!」

ナックル「俺がその薬を飲んだら集めた神力を俺に

使ってくれ!そうすれば行けるはずだ!」

バジー「では...これがその薬です」

ナックル「サンキュ!」

バジー「では...私の力で!神力吸収!」

ナックル「流石バジーだな。“元アリジゴク”だけある」

バジー「嬉しくない褒め言葉ですわ。では、

参りますわよ!」

ナックル「おう!ング...」

バジー「...今です!神力解放!」


フラット「辿り着いた!」

スター「来た...私の自由を邪魔するやつらが」

クレア「おい、コアが見えねぇぞ⁈」

ノール「いや、見えないんじゃない。隠れてる。

ユーリックの魂は、スターを身代わりにしている」

スラリア「とことん下衆なやり方...!妹を道具としか

見ていないってことがよく分かった!」

エド「絶対に許すわけにはいかないっす!」

スター「その前に...この空間の本当の姿を

見せてあげる」

フラット達が見ていたお城のような空間が一気に

牢屋のような空間に変わる。赤い絨毯は床に広がった

たくさんの血痕、机の上にあったケーキは骸骨、

そこら中に転がっていた人形は腐りかけた死体に

変わった

フラット「ぐっ、なんだこの場所⁈」

スラリア「しかも...聞こえる...閉じ込められたままの

魂達の声が...!ずっと...苦しんでる!」

ノール「狂気に満ちている...罪悪感など微塵もない

壊れた心から溢れ出る狂気が次は私達が人形に

なる番だと語りかけてくる」

クレア「なってたまるかよ!だが...攻撃...出来ねぇ!」

スラリア「大丈夫!きっと何か手がある!」

フラット「...来るよ!」

スター「こわれろ...ぜんぶ...こわれロ!」

スターの背中から無数の腕がフラット達を襲う

ノール「チッ、こっちがユーリックだ!」

クレア「これなら...攻撃できる!」

ユーリック「できるのか?どうなっても知らないよ?」

スラリア「下手な脅しを...!ハァァァァァァ!」

スラリアは斧を思い切り振り下ろし、腕を切り落とす。

すると、その腕はスターの中へ入っていく

スター「グッ!」

ユーリック「キャハハハ!言ったでしょ?

この腕を後二つ切り落とせば、この子は

アリジゴクになっちゃうよ?

もう助からなくなっちゃうよ?キャハハっ!

アーッハハハハ!」

クレア「なんの!だったら、俺が行ってやる!」

風がないこの空間だったために、ただクレアはユーリックに

操られているスターの元へと駆けていった。

ユーリック「無駄無駄、キャハッ!」

しかし、幾多もの触手相手にはあまりに無謀すぎて、一瞬で

捕まってしまった。

ユーリック「キャハハ!これでおじさんもあたしのお人形さんだね?」

クレア「おいおい、いくらなんでもおじさんをお人形にするのは

趣味悪すぎだろ、もっと可愛い人形を教えてやるよ!」

なんとクレアは戸惑うことなくスターの体に一本の矢を放った。

ユーリック「なっ―⁉︎」

しかしその傷から流れたのは血ではなく、黒くよどんだモヤだった。

そのモヤからバッと何かが飛び出した。

「スター!」

それは―

フラット「ナックルさん⁈」

ナックル「届け物だ!お前の...ものだ!」

なんとそれはナックルだった。スターのために買ったバラを

手に持って、即座にそのバラを見せた。

スター「...!こわ...レロ!」

それを見たスターはクレアを拘束していた触手を緩めた。

クレア「よっと!ふぅ…」

ナックル「思い出せ、スター!これを見た時のこと!

お前は…笑ってただろ⁈」

スター「笑う…?」

ナックル「バラだ!花言葉は…愛だ!こんなやつに

負けるんじゃねぇ!俺達がお前を自由にしてやる!

たくさん愛してやる!だから…思い出せ!」

スター「…」


スター「これでいいはずだよ。立てる?」

子供「うん!ありがとう!」


スター「風が言ってる。泣いてちゃ始まらないって。

大事なのは何で失敗しちゃったか反省して次に

同じ失敗をしないよう努力することだって。だから、

泣かないで。まだ次があるよ」

高校生「…ありがとう。元気..…出たよ。

頑張れる気がする」


ユーリック「騙されるな!お前はその後どうなった⁈」


村長「怪しい術を使う魔女め!コイツが死ぬまで

地下牢に閉じ込めておけ!」


スター「…そうだ。愛なんて…一瞬で変わる!

全部…偽りだ!孤独こそ自由…誰にも

邪魔されることなく楽しい自由に―」

クレア「そんなの自由じゃねぇ!」

スター「⁉︎」

クレア「孤独の自由?そんなの寂しいだけじゃねぇか。

自由ってのは、仲間と一緒に笑い合ったり、

ふざけあったり、悲しみを分けあったりするもんだ!

一人ぼっちになったら、自由になんかなれない!」

スラリア「私だってそう思う!フラット達と出会って

分かった。孤独の幸せなんてないって!スターちゃんは

何を見て幸せそうって思うの⁈」

スター「私が見て...幸せそうなもの...」


子供1「早く早く〜!始まっちゃうよ!」

父親「そんなはしゃぐなって、転ぶぞ?」

子供2「あ、来た!ここだよ!」

子供1「ごめんね、待った?」

子供3「全然!今日はファイターイベントだもんね!」

子供1「うん!お母さんもそろそろ来ると思うよ!」

スター「...いいなぁ。私も友達がほしい」


スター「...友達が...いること」

ノール「今のお前が望む世界には友達はいるか?」

スター「...いない!」

クレア「だろ?それにもう悩まなくていい。俺が...

兄ちゃんがいい友達教えてやるからよ」

スター「いい友達?」

ユーリック「聞くな!お前は私が自由にー」

クレア「この全員がお前の友達だ!」

スター「皆が...?」

フラット「うん、友達だよ!僕達全員」

ノール「そうだ。可愛がってやる。帰ったら本物の

人形プレゼントする」

エド「俺もたくさん甘いお菓子あげるっすよ!」

スラリア「ケーキも作ってあげるから!」

ナックル「またいくらでも花、買ってやるからよ!」

スター「本当に?私を...自由にしてくれるの?」

ユーリック「よく見ろ!この空間こそ自由だっただろ⁈

お前を自由にしてやれるのはこの部屋だけー」

スターの催眠が解かれたことを気付かないユーリックは

本当の部屋をスターに見せてしまう

スター「...何これ...⁉︎いや...!こんなの自由じゃない!

気持ち悪い...!いらない、こんな自由、いらない!」

ユーリック「グワァっ!」

スターの魂の反発にユーリックは姿を現す

クレア「さーて、妹の心を汚した仕置き、

覚悟しやがれ!」

スラリア「クレア。一緒に手伝ってくれる?

こんな小さな子に深い傷を負わせたこと、

許しておけないから!」

クレア「...いいぞ!一緒に決めよう!

風よ...紛いなる心を持つ者に制裁を下せ!」

スラリア「音よ...御魂を脅しし者を地獄に導け!」

クレア&スラリア「これで夢の終わり!

合体風死術・『竜巻地獄旅』!」

ユーリック「ガァァァ!くっ、このままじゃ...!」

スター「私の自由は皆がくれる!私の邪魔をしないで!

第一突風『光』術・『レインボー旋風』!」

ユーリック「グッ⁉︎こ、ここは逃げー」

ナックル「逃がさねぇよ!」

ナックルはユーリックの腕を強く握る

ユーリック「くっ、離せ!」

クレア「...ノール」

ノール「分かった。『神力破壊』!」

ナックル「お前はこの空間の中で一生彷徨っていろ。

ゆっくりと崩れていく世界を眺めながらな」

ユーリック「な、何故戻れない⁈あっちに神力を

残しておいたはず...まさかお前⁈」

ナックル「あぁ、全部使っちまった」

ユーリック「バカな奴め。お前も死ぬんだぞ?」

ナックル「いいや、死なない。現にもう足が

消えかけてるだろ?俺は仮死状態でここに来た。

時が来れば俺は戻れる」

ユーリック「ならば、ここで殺すまで!」

ナックル「おっと、往生際が悪いやつだ。しかし、

壊れかけた夢の支配は今のお前じゃできない。残念だが

お前ももうここまでのようだな」

ユーリックの足元の床が崩れる

ユーリック「な、何だと⁈」

ナックル「その重みも、もう耐えられなくなっている。

つまり助かろうとしても無駄ってわけだ」

ユーリックの掴んでいた床も剥がれていく。そして、

バキッという音を立ててユーリックを奈落に突き落とす

ナックル「お前の負けだ、ユーリック。お、

俺の方もそろそろ時のようだ」


フラット「あれ...ここは?」

ノール「スパークフラッシュ号の中...だな」

エド「どうやら解決っぽいっすね!」

クレア「スターは⁈スターはどこだ⁉︎」

スター「ここだよ」

スラリア「あ、いた!」

スター「へへへ、ごめんなさい!」

クレア「...良かった。無事で...!」

スター「えっ⁈」

フラット「クレア、いきなり抱きつかない。

スターも困ってるよ」

スター「あ、約束守ってくれるよね?」

ノール「人形、だろ?」

エド「甘いお菓子っす!」

スラリア「ケーキ、焼いてあげるよ」

フラット「友達だよ」

スター「うん!絶対だよ!」

フラット「にしても...ナックルさん遅いなぁ」

バジー「あの!」

ノール「どうした?そんなに慌てて...」

バジー「ナックル様のバイタルが低下してて...!」

フラット「えっ⁈」

バジー「ナックル様は仮死状態で皆様の方に

行かれたのですが...」

スター「もしかして...夢の狭間に落ちた⁈」

クレア「そうなるとどうなっちまう?」

スター「完全に落ちちゃうと...

ずっと彷徨い続けることになる。何もない真っ暗闇を」

エド「つまり死ぬってことっすか⁈」

フラット「助ける方法は⁈」

スター「夢の空間を作って助けるしかない!

上手くできるか分からないけど...約束は絶対だもん!

だから諦めない!神業・夢作り!」


ナックル「このまま...死ぬか生きるかの賭け...か」


スター「もうかなり下の方まで行ってるみたい。

あと30秒もしたら...狭間に落ちちゃう!」

クレア「出来たか⁈」

スター「出来たけど...急いで作ったから耐久性は

すごく低いものになっちゃった!それに...位置がずれて

狭間ギリギリになってる...」


ナックル「な、何だありゃ⁈いって!」

畳でできた床にナックルは落ちる。その衝撃で

周りの床はヒビが入る。既にナックルの体は

上半身だけになっていた

ナックル「このペースだとあと5分ってとこか。

そこまでもつか?」


スター「ヤバい...今の衝撃で夢が半壊した...!」

フラット「僕の力も貸すよ!神業・修正!」

スター「夢が...直ってく!」

フラット「...こんなものでいい?」

スター「うん、でも...ダメみたい。すぐ戻っちゃう」

ノール「あとどのくらいもつんだ⁈」

スター「あと...2分ぐらい」

エド「バジー、ナックラーさんのバイタルは⁈」

バジー「ゆっくりですが上昇しています!」

フラット「無理矢理起こすことはできないの⁈」

バジー「無茶です!直接脳の動きを止める薬ですので

変に起こすと副作用で本当に死んでしまいます!」

ノール「なんでそんな薬飲んでまで来ようとする、

バカ虎⁈」

スター「あと1分で崩壊し始めちゃう!」


ナックル「こりゃちとキツイか?いや、諦めるな俺、

もうあと少しであっちの戻れる。崩壊したとしても

ギリギリまで残ってやる!」


スター「崩壊...始まった!」


ナックル「チッ、いよいよか!」


フラット「僕も手伝うよ!神業・修正!」

スター「ありがとう!何とか崩壊の動きを遅くできたら

助けられるかも!」

ノール「フラット、神力提供する!」

クレア「俺も!」

エド「俺もっす!」

スラリア「ありったけ使って!」

フラット「皆...ありがとう!」


ナックル「?夢が...直ってく!」

フラット「あともう少し!皆、頑張って!」

ノール「バカ虎に1発お見舞いするまでは絶対に

倒れるもんか!」

クレア「こんなのどうってことねぇ!フラットは

自分のことに集中してろ!」

エド「ナックラーさんの無茶には呆れたっす!

帰ったら説教っすね!」

スラリア「最後の最後まで手間かけさせるなんて迷惑、

フラットから罰ゲーム受ける姿見るまで許さない!」

ナックル「アイツら...俺も愛されていたのか。

フラット、ありがとよ。こんな俺でも愛してくれて。

お前はお前でいてくれればいい。昔のことなんて

忘れちまえ。おっと、もうそろそろ戻れるか。さて、

フラットからの罰ゲーム、受けるとするか!」


スター「...反応消えたよ!」

フラット「ていうことは...!」

バジー「ナックル様の意識、戻りましたわ!」

全員「...ヤッッッタァ!」

クレア「スター...ハァ、ハァ...よくやった...」

ノール「...凄い...お前がいなかったら...バカ虎は...

帰ってこれなかった...」

フラット「さーてと、それじゃ、あのナックルさんに

久々の罰ゲームといこうか!」

ナックル「よーう!すまなかったな!」

フラット「神業・与罰!氷漬け!」

ナックル「なっ⁈」

フラット「じゃ、このナックルさんを真ん中にして、

輪になろっか!アレとしてさ!」

クレア「ふぅ...アレ、な」

スター「アレ?」

スラリア「皆で写真を撮るんだよ!スターちゃんと

クレアが1番先頭でいいと思う!」

エド「兄弟仲良くピースサインっすね!」

バジー「カメラOKですわ!」

フラット「写りもOK!それじゃ僕も...っと!

バジー、いつでもいいよ!」

バジー「分かりましたわ!勝利のVサインー」

全員「決めっ!」

バジー「...フフフ、微笑ましいですわ。ではスター様、

一言メッセージをお書きください」

スター「メッセージ...?だったら...こんな感じかな!

じゃあ私はー」

フラット「あっ、待って!スター、デ・ロワーで

ファイターやらない?」

スター「ファイター?」

クレア「おい、子供にやらせるのか⁈」

フラット「スターはまだ幼い。感情が揺れるだけで

神力が暴走する恐れがある。だから保護みたいな

ものだけど...ね?」

スラリア「いいねそれ!イベントも更に

盛り上がりそう!」

ノール「デ・ロワーどころかファイター企業全体的にも

ヒーラーという役職は少ない。いい存在でもある」

バジー「私は...賛同しかねますが、反対でも

ありません。皆様に委ねます」

フラット「じゃあ決定だね。それに友達なのに

今日会って今日別れるのも変でしょ?」

クレア「それは...そうか」

バジー「では決定ですわね。それではデ・ロワーに

戻りましょうか!出発致します!」


フラット「大変だったなぁ、色々と」

スター「フラット?何遠い目してるの?早く次の

作業に移らないとイベント準備、間に合わないよ!」

フラット「あ、そうだね!それじゃまた後で!」

スター「ねぇフラット!覚えてる?スターが

初めて書いたメッセージ!」

フラット「えっ?何だったっけ?」

スター「忘れちゃったならいいよ!また後でね!

あ、その前に!」

フラット「何?」

スター「私の自由は、ずっとここにある!

そうだよね!」

フラット「当たり前!じゃ、またね!」

スター「私の自由は皆がくれる。だから皆の自由は

私があげるよ!ありがとう、フラット!」

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