第5話 冤罪なる死神

スラリア「フラット!売店ちょっと手伝って!

手が足りないんだ!」

フラット「分かった!何をすればいいの?」

スラリア「フラットはこの売り物の陳列を

してほしい。バルシアとキルユウがどっか

行っちゃってさ、私1人じゃキツくて」

フラット「あ〜...そういうこと...じゃあやるよ。

貸して。サクッと終わらせちゃおう!」

死神スラリア。正直者でクレアの彼女。

実にもったいな...失礼、お似合いの2人だ。

スラリアは...変わりないかな。あの日より

明るくなったぐらいしかー


1節 月へ行こう!


ペーター「なるほど、つもりナックラーが調子に乗って

イベント中にフライトシューズの出力を上げすぎて

エドが吹っ飛ばされて、エドのフライトシューズが

大破、及び足に捻挫か...なぁ、ナックラー」

ペーターはナックルに笑顔を見せる

ナックル「そ...その顔...怒ってるよな?」

ペーター「あぁ、これで何回目だ?イベント中止に

したのは。そんなんでアカデミー正社員に

なれるのか?」

フラット「アカデミー正社員...?何ですそれ?」

ペーター「あぁ、話してなかったっけ。

今、ここにいるファイター全員、まだバイト級の

ファイターだ。フラット君とエドはすぐ正社員に

なれると思う。ただ、魔族の動きが活発的とは

言えない。今起こっている騒動が原因だと考えられる」

フラット「騒動...?」

ノール「それも知らないの?アリジゴクや

異世界モンスターなんかの脅威大量発生」

クレア「理由も分かっていない。ただそれに伴って

指揮者の力を持つコンダクターが増加している。

でも...フラットのようなケースは珍しいな」

フラット「珍しいって、何が」

エド「ファイター兼コンダクターっていう

ケースがっすよ!」

ペーター「俺も一応コンダクターだが、

神力を失ってから手に入れた」

フラット「へぇ〜...」

エド「まぁそれはそれとしてっす...

ナックラーさん!流石に今回ばかりは

許さないっすよ!」

ナックル「分かってるって。修理費も治療費も

俺が出してるだろ?」

エド「そうっすけど...あの人に会うハメに

なるっす...最悪っす...」

フラット「あの人って?」

ペーター「マドール・ジェフィカ。ファイター用の

道具を作ったり修繕している者だよ。まぁ、それは

裏の面で表面はファッションを取り扱ってる。

エドのコーデをいつも指摘してるんだ」

ノール「ファッションか...私も興味はある」

クレア「そうか?着れれば何でもいいと思うが」

ナックル「マドールの前でそんな事言うなよ?

こめかみをグリグリされるか、耳を思い切り

引っ張られるかのお仕置きくらうからよ」

ノール「なんか...アニメみたいなお仕置きだ...」

ピンポーン

女性の声「ペーター君?来たわよ。鍵を

開けてちょうだい」

ペーター「お、来たみたいだ。はい、マドール。

今、開けたよ」

マドール「どうも」

エド「あっ、待つっす!俺、寝巻きのまんまっす!」

フラット「エド⁉︎もういるんだよ⁉︎」

ガチャー

エド「あっ⁉︎」

鳥型獣人「キャッ⁉︎」

フラット「あ〜...大丈夫ですか?」

鳥型獣人「もう...あら、エド君...ってパジャマ⁉︎

しかもまぁ、またそんなガラの悪い...」

エド「どこがっすか⁉︎龍はカッコいいっす!」

鳥型獣人「全く、ワンポイントとかならまだいいけど

エド君のはドデンと龍でしょ?子供じゃないんだから

もう少し落ち着いた服を着なさい。目立つわよ?」

エド「ファイターだからいいんすよ!目立っても

問題はないっすよ」

ペーター「まぁ...いいか。あっ、あと今回は

イベントがある。君たちが少し前に申請した

音楽イベントが月で開かれることになった。

早速、明日の朝6時30分に集合だ」

フラット「はい、分かりました!」

エド「あ、でマドール。このフライトシューズっす」

マドール「...これは流石に私1人じゃ無理ね...

私も月に行かないといけないわ」

ペーター「そうだよね...」

マドール「でもまぁ、デ・ロワーのファイターには

個人的に会いたかったからよしとしましょう」

ノール「会いたかった...?」

マドール「えぇ、コーデを見直す子がいるかどうかを

確認したかったから。で...クレア君だっけ?

服が安っぽすぎるのはファイターとして

どうかと思うわ」

クレア「安っぽすぎるって...別に高いものを

買うまでは...」

マドール「ブランドものじゃなくてもいいから

少しは贅沢してもいいのよ」

クレア「贅沢たって...俺、別にー」

?「あの〜、マドールさん」

マドール「アスカちゃん⁉︎どこ行ってたの⁈」

アスカ「すみません、道に迷ってしまって...

で、どうなりました?フライトシューズ、

直せそうですか?」

マドール「パラレルストーンを入れ替える必要が

あるから、まずは月に行くわ」

クレア「月...か。里帰りになるな」

フラット「クレア、月生まれなんだ」

クレア「あぁ、そうだ。で、ノールは天王星生まれ。

フラットは火星生まれだろ?」

ノール「な、何で知ってる?言ってないはず...」

フラット「風に聞いた...とかじゃないか。

そんなこと、風が知ってるわけないし」

クレア「見れば分かる。目の色や肌の色、

髪の色なんかでな。フラットは天然茶髪で、

目も茶色。火星生まれの証拠。ノールは黒髪に

目は赤色。天王星生まれのものだ」

フラット「詳しいんだね」

ノール「月生まれの特徴は?」

クレア「青い目と天然金髪ってとこだ」

ナックル「この髪は天然なのか!いいなぁ、

俺も髪とかあったらなぁ」

エド「ナックラーさんの種族にはないっすけど、

俺達はあるっすよ」

フラット「あっ、それ髪だったんだ。立髪か何かだと

思ってたよ」

ペーター「...ゴホン」

フラット「あっ、イベントでしたね!音楽イベント」

ノール「歌詞はできてる」

ナックル「編曲も完璧だぜ!」

エド「ギターコードも完璧っすよ!」

クレア「ピアノは大丈夫そうだ」

フラット「僕も大丈夫。できるよ」

アスカ「ていうより、月に行くんですか?いいなぁ、

私も行きたかった」

マドール「専門学校?アスカちゃん、

講義取りすぎてるでしょ?たまには休んでもいいのよ?

お仕事も、有給使っていいから」

アスカ「ですが...そうするとセイが1人に...」

マドール「...そうね。忘れてたわ。アスカちゃん、

セイちゃんがもう少し大人になってから宇宙旅行に

行くしかないわね。それじゃペーター君。

私はこれで。アスカちゃん、帰るわよ」

アスカ「あ、はい、分かりました。それでは」

2人はファイター課の部屋から出て行く

ペーター「それでは解散だ。各自、荷物を

家でまとめてこいよ」

フラット「はい!ナックルさん、帰りますよ!」

ナックル「おう!エド、風邪ひくなよ?」

エド「何で俺が風邪ひくっすか!

そういうナックラーさんも、変な荷物持ってきて

怒られないことっすね!」

ナックル「なっ...何を持ってくるってんだ!」

エド「?俺は別に変なものって言っただけっすよ?

何を考えたんすか?」

ナックル「ぐっ...ふん!船酔いしたって

酔い止めやんねぇからな!」

ナックルはそう言って部屋を出る

フラット「ちょっと、ナックルさん!ぼ、僕も

失礼します!」

ノール「ふぅ、バカ虎の面倒見るのも大変そう。

私もこれで。キルユウとバルシアにお土産何が欲しいか

聞かないと」

クレア「俺も。旅行用のキャリーバッグを

まだ買ってなかったし」

エド「捻挫してさえいなけりゃ

いい旅行だったっすのに...絶対許さないっす」

ペーター「まぁまぁ、そんな機嫌曲げないでさ。

イベント中はギスギスした感じ見せるなよ」

エド「分かってるっすよ。じゃ、俺も失礼するっす」

ペーター「大丈夫...かな?心配になってきたぞ」


フラット「あとは...タオルと、ノートか!

ナックルさん?そっちの荷物は、ってパンパン⁉︎

何入れてるの⁉︎」

ナックル「?あぁ、原子縮小化可能の

大型ゲーム機だぜ!実家から貰ったけど使うことは

なかったが、宇宙旅客機の中だったら暇つぶしに

持っていったところで問題ないだろ?」

フラット「でも...月かぁ。高校の修学旅行ぶりだね。

あの頃は92だっけ...?あれ、何で今更大学生?

普通に考えれば94のはず...今137だよ?

ナックルさんは139だし...」

ナックル「そ、それはな...えっと...」

フラット「?何?」

ナックル「事故があったんだ。俺たち2人を

約40年間眠らせた事故がな」

フラット「えっ?そんなことあったっけ?」

ナックル「お前からしたら目覚めたってだけで

すんだのかもしれないな。でも本当の事だぜ」

フラット「そっか......ねぇ、ナックルさん」

ナックル「?どうした」

フラット「...ううん、やっぱなんでも。よし、

準備も終わったし、早く寝るか!」

ナックル「そうだな!でもよ、月のどこだろうな。

俺達がイベントを行う場所」

フラット「静海じゃない?」

ナックル「流石にそんな有名都市でいきなり

やるわけないだろ。まぁ...やってはみたいな」

フラット「そうだね。じゃ、布団敷いて寝よっか」


ノール「これで準備は完了...」

キルユウ「姉御!俺達も月に連れてってくれるのか⁈」

バルシア「どうなんですか⁉︎どうなんですか⁉︎」

ノール「ペーターからの話の中に、

お前達の話はなかった。つまり、そういうこと」

キルユウ「そんな...せめてお土産買って!」

バルシア「お土産はいいですよね⁉︎」

ノール「何が欲しいか聞くつもりだったけど...

教えて、メモするから」

キルユウ「俺は月名物の輝夜団子が!」

バルシア「月兎が欲しいです!」

ノール&キルユウ「いるわけねぇだろ!」

バルシア「...なら特大冷凍ムーンコーラスでいいです」

ノール「分かった。お前達も月旅行行きたい?」

キルユウ「勿論!

バルシア「でも連れてけないんですよね」

ノール「私が言って休みをあげられたら、

2人で行ってこい」

バルシア「いいんですか⁉︎」

キルユウ「姉御に迷惑かけちまう...」

ノール「家族に寂しい思いだけさせるよりは

いいだろう。それに...粋の計らいにもなる」

キルユウ「じゃあ...頼んどく」

バルシア「やった!姉御からのプレゼント!!」

ノール「大袈裟だ。まぁ、喜んでもらえてよかった」


クレア「荷物まとめ完了、っと。月の大地...

懐かしい風が感じられそうだ」


エド「楽しみで眠れないっす!月、月!

捻挫してても関係ないっす!大はしゃぎっすよ!」


翌朝ー

ナックル「おい、朝だぞ!!」

フラット「朝...?そうだ、月!ていうか、珍しく

早起きだね、ナックルさん!」

ナックル「寝坊したら100キロ越えのバイクに

乗せられるだろ?あれは勘弁だからな」

フラット「おっ、学習したね、偉い偉い」

ナックル「うわっ、ウゼェ!」

フラット「冗談だよ。ほら、朝食は船内のレストランで

いいよね?行こ、浅草宇宙港」

ナックル「よっしゃ、宇宙旅行の始まりだ!」

フラット「まずはデ・ロワーに集合だったね。

忘れてなくて良かった」

ナックル「あれ、いつそんなこと言ってたよ」

フラット「深夜にね、メールきたから。はい」

フラットのRP(リングフォン)に届いたメールを

ナックルに見せる

ナックル「深夜に...本当、大事な情報を伝えるの

遅いやつだな」

フラット「まぁ、起きれてなかったら

宇宙港に直行だったね」

ナックル「それもそうだな。よし、デ・ロワーに

向かうとするか!」


ノール「失礼。あれ、全員はまだ...」

ペーター「流石に早いからね。元マフィアだけあって

早起き得意だね」

ノール「そう?普通のつもりだけど...」

クレア「入りまーす!って、あれ?もう、ノール先に

いるじゃんか。ちぇ、結構早起きできたつもり

だったのに...」

ペーター「まだ集合時間15分前か...あと3人は

あと10分後にならないと全員は集まりそうにー」

フラット「おはようございます!」

ナックル「おはよう、ペーター!」

ペーター「お、おはよう...今日は早かったね」

フラット「ナックルさんが珍しく早起きして

くれましたから」

ナックル「コイツのバイクには絶対に

乗りたくないからな」

ペーター「あぁ、気絶するほど怖いんだろ?お前、

子供でも乗れるジェットコースターにさえ

気絶するし」

フラット「えっ...幼稚だねっ!」

ナックル「うっせぇ、いいだろ」

ペーター「にしてもエド遅いな...」

フラット「あれ、そういえば最近バジー、

ファイター課に顔見せないね」

ペーター「あぁ、今、整備課に依頼が入っててね。

バジーは当分こっちには来れない」

クレア「俺はいいけどよ。アイツ、すぐ俺に

抱きついてくるからよ」

ペーター「金髪好きだからね、仕方ないよ」

ピロロン ピロロン

フラット「あれ、エドからメール?何だろ...

[風邪ひいたので休む。ナックラーさんと喧嘩した際

ファイター課のパソコンを壊したのでフラットに

連絡した]...って言っちゃった」

ノール「隠すつもりでフラットに送ったのに...」

クレア「まぁ、天然天使に秘密ごとを任せるのは

ダメってわけだ」

ペーター「...アイツには、あえて報告せずに

給料から弁償させておくか」

ナックル「それでいいと思うぜ!」

フラット「でも...ギターどうしよう...」

ペーター「なしでやるしかない。他にギターが

得意で月に行くのは...いないし」

クレア「ていうか風邪って...やっぱり」

ナックル「俺か⁈いやいや、あぁは言ったが、

冗談で言っただけだぞ!」

ペーター「まぁいいだろ。これで全員、

集まったわけだし、浅草宇宙港に行くか」

全員「はい!」


浅草宇宙港にてー

ペーター「じゃ、荷物預けろ」

ナックル「預けるだぁ⁈俺はいい!持ってるぞ!」

ペーター「何焦ってんだ?まさか、エドが言った通り

変なもの持ってきたわけじゃないよな?」

ナックル「ち、違うけどよ...」

フラット「どれどれ...」

ナックル「あぁ!フラット⁉︎何勝手に見てんだ⁉︎」

フラット「縮小化された大型ゲーム機、漫画本、

プラモ5つ、それと...これ」

ペーター「ほう、キウイか?お前〜、

いい度胸してんじゃねぇか?」

フラット「まぁ没収だね。よし、じゃあ僕達は

荷物を預けようか」

ノール「全部を預ける必要はない。小説と...

あとは私のNP(ネックフォン)か」

クレア「俺は特訓用の弓と演出の確認用にメモ帳を」

フラット「僕は特にないかな。で、ペーターさん。

何時発の便ですか?」

ペーター「7:04だ。あと10分ある」

フラット「10分⁈ちょっと待っててください!

皆、荷物急いで預けよう!」

全員「おう!」

ペーター「ドタバタだなぁ」

マドール「あら、ペーター君?他の皆は?」

ペーター「荷物を預けに。君はやっぱり1人?」

マドール「えぇ、アスカちゃんはセイちゃんを1人には

できないって。もう中学生の妹なのに、ね?」

ペーター「まぁ、たった1人の家族だ。気持ちは

分からないでもない」

フラット「ペーターさん!預け終わりました!」

ナックル「よし、行こうぜ!」

ノール「私は先に行ってる。売店でお土産を

買わないといけないから」

クレア「俺も船内の特訓場に。また後で」

ナックル「...釣れないやつだな...フラット、俺達も

乗ろうぜ。暇だしよ、ここにいたって」

フラット「そうだね。でも、エド来られないのか...

いつか全員で来ようね!」

ペーター「そうだね。マドールも乗った方が。もう、

残り4分で出発だよ」

マドール「そうね。でも...あのフラットって子...

どっかで見たことがあるような...」


フラット「うわぁ、やっぱりすごい!もう、

一つの街だよね!」

ナックル「今時、宇宙旅客機ではしゃぐのは

お前だけだろ。まぁ、いいけどよ」

ノール「お、お前達も乗ったか。お土産は

もう買えた。早く買った方がいい。有名なのはすぐに

なくなっちまうし」

ペーター「そうだね、でもたしかー」

ナックル「それじゃ買いに行くか!」

フラット「現地で買った方がいいと思うけど...

期限とかすぐ切れるよ?」

ノール「えっ...あっ、5日間しかもたない...」

フラット「でしょ?現地で売れ残ったのをこっちに

回してるんだから期限短いよ。お土産用というより

旅客機内で食べるおやつみたいなものだよ」

ペーター「やっぱりね。フラット君が言った通り、

フードレス対策に行われている」

ノール「あぁ...そう。私、コーラス苦手なんだよな」

ナックル「じゃあ俺が食うぜ!好き嫌いは

ないしよ!」

ノール「コーラスが好きって...バカ虎は

バカ舌なんだ」

ナックル「好きではないが嫌いではないってだけだ!

食いもんを捨てるのが勿体無いって

言いたいんだ、俺は」

ノール「そう?まぁ、あげるよ。はい」

ナックル「サンキュ!」

フラット「あっ、僕はクレアの様子を見てくるよ。

3人は休んでてもいいよ」

ナックル「おう、了解だぜ!」

ペーター「てんてこ舞いだね、フラット君は」

ノール「鍛錬室は地下!」

フラット「うん、地下だね、分かった」


クレア「そこ!」

スパン!

クレア「よし、いい感じ!」

フラット「クレア!どう、調子は?」

クレア「いいコンディションだ。見ろよ、

全部ど真ん中だ」

フラット「凄い!流石の腕前だね!」

クレア「でもそれだけだ。お前のように鋭い判断は

まだできない。あの時の勝負でお前が放った第2の矢。

あれがお前の心のようにも感じた。できると信じる、

お前の心のように、な」

フラット「えっ...そんなカッコつけて矢を放ったつもり

ないけど...まぁ自分に出来ることをしようっていうのが

僕のモットーであることに間違いないけど」

クレア「やっぱカッコいいわ、お前。そんなお前だから

エドもお前を認め、人間を信じようって

思えたんじゃないか?」

フラット「...そうかな。隊長らしく...なれたのかな」

クレア「さぁな。お前と同期ってわけじゃ

ないからよ、詳しいとこまでは言えない。だが、

今のお前は、隊長らしいぞ」

フラット「ありがとう。じゃあ、月に着いたら

早速練習しようね!」

クレア「勿論!」

放送「本日は、宇宙旅客機104便をご利用いただき、

誠にありがとうございます。まもなく、

発車いたします。大広場にいられるお客様は

速やかに客室にお戻りください」

フラット「あ、一旦戻ろうか」

クレア「そうだな。あ、その前にエドにメールを

送っとかないか?」

フラット「そうだね。あ、じゃあ暗号文にして

サプライズしちゃおっと!」

フラットはRPで文章を打ち込んでいく

クレア「あれ、音声入力にすればいいのに」

フラット「暗号文にするからね。音声入力じゃ

うまくできないし」


30秒後ー

フラット「できた!よし、送信っと!じゃ、

客室に行こっか」

クレア「そうだな!」


その頃エドー

エド「ゴホッ、ゴホッ!」

ピロロン ピロロン

エド「メールっすか?」

フラット[こんにちわ、エド。元気してる?ナックルさ

    んと喧嘩して元気全部なくなっちゃった?やれやれ、

    どんなに明るいやつでも、風邪には負けちゃうんだね。

    ハメ外して楽しんでくるからお土産は楽しみにね!

    いまはお大事に!今回は残念だったけど、

    つらいのを乗り越えてこそファイターだよ!

    しがない言葉でごめんね。まぁ言いたいのはお大事に!

    よくとしは、もっといい旅行にしようね!

    ps.暗号には気づいた?]

エド「長ったらしい文章っすね...暗号?」

エドはもう一度文章を見つめる

エド「...あっ、そういうことっすか。ありきたりな

暗号っすね。まぁ、わかりやすくて助かるっす。

じゃあ返信を...」

[やっぱり、夜更かししたのが原因ですかね?自分を

くるしめたみたいですねwでも、来年こそ、らいねんこ

そは行きたいです!夜更かししないよう努力します!

くつじょくは今年が最初で最後にしたいですし!]


2節 死神との出会い

フラット「ん...あれ、寝てたか」

ナックル「よぅ!起きたか!もうすぐ月だぜ」

ノール「機内食食べて寝るなんて、子供」

クレア「お、もう集まってたか。特訓も

終わったぞ」

ペーター「そろそろ降りる準備をしておこう」

マドール「あら、フラット君。服が汚れてるわよ。

これは...ソース?機内食、少しこぼしたの?」

フラット「えっ...?僕の機内食は日本食だったので

ソースなんてかかってませんけど...」

ノール「ソースがかかっていたのは、バカ虎の

ハンバーグだった」

ナックル「ギクっ...なんのことだ?」

クレア「神業・風耳......なるほど、すっとこどっこい、

お前フラットの服にハンバーグこぼしたろ?」

ナックル「ど、どこにそんな証拠が...」

フラット「まぁ、あの術を使えばいいだけだね。

このソースに使われてる材料は...

赤ワイン大さじ2、ケチャップ大さじ1、

中濃ソース大さじ1、コンソメ僅か、砂糖同量で

バター5gか。これをメモして...厨房に聞けば

一瞬だね」

クレア「お前、凄い術だな。そういうことが

出来るってことは、お前相当料理上手いだろ」

ナックル「コイツの卵料理は絶品だぜ!

茶碗蒸しなんか、卒倒もんだぜ!」

ノール「茶碗蒸し⁉︎えっ、食べたい!いいでしょ!」

フラット「う、うん?いいよ、月で作ってあげるよ」

ノール「マジか!茶碗蒸し、大好きなんだ!」

フラット「子供みたいな味覚だね。まぁ、

作るのに時間かかるけど、いいよ」

マドール「料理ができる男子は、モテるわよ。

ところで、今日はエド君、いないのかしら?」

ペーター「あぁ、風邪で休んでいるよ。君にとっては

いい話でしかないはずだけど?」

マドール「いい話じゃないわよ!あの子の

フライトシューズでしょ⁉︎全く、もし仮病だったら

許すわけにはいかないわ!」

放送「まもなく月面宇宙港・雲海港です。

無重力運転モードを解除いたします」

フラット「あ、もうすぐだね」

ノール「お、見なよ、窓。月面都市が見えるぞ」

ナックル「おお、やっぱカッコイイぜ!未来都市感が

半端ねぇ!興奮するしかないな!」

クレア「帰ってきたんだ...雲海に...俺の、故郷に」

ペーター「さぁ、降りる支度はできたかい?」

フラット「僕は荷物預けてますから」

ノール「私も小説も持ったし大丈夫」

クレア「俺も弓とメモ帳、OKだ」

マドール「私も荷物を預けているから問題ないわ」

ナックル「俺もすぐ閉まっちまうな!

この大型ゲーム機」

フラット「手伝うよ。この量は大変でしょ」

ナックル「ありがとな!さっさと終わらせちまおう!」


数分後ー

フラット「終わった〜。じゃ、着陸するまでー」

放送「着陸態勢に入ります」

ペーター「君たち、いつもと同じくー」

ナックル「罰ゲームはいらんだろ。全員荷物は

持ったぜ。フラットの罰ゲーム、怖いからよ」

クレア「エドから聞いたぞ?タライ落としだっけ?

それにキウイ見て襲いかかったからって氷漬けって

恐ろしいことするよな」

フラット「あれは...反射的に」

と、フラットが言うとー

ガシャン!

という音が響く。それはー

放送「雲海港です。長旅お疲れ様でした。

いい旅を」

フラット「あ、じゃあ降りよっか」

クレア「ちょ、ちょっと待て、よっと」

ノール「うわっ、おい、気をつけろ。弓がもう少しで

私の目に刺さるとこだったぞ」

クレア「あ、あぁすまん。見えなかった」

ナックル「客との距離も気をつけろよ」

クレア「分かってる」

フラット「おーい、置いてっちゃうよ!」

ノール「あ、今行く。せっかちだなぁ」

クレア「俺も今行く!待ってくれ!」

ナックル「おい、クレア!走るな!」

ペーター「宇宙船の降り口の階段は急だから

危ないぞ!」

クレア「大丈夫って、うわぁ!」

ノール「えっ、いやっ!」

クレアはノールを巻き込み階段から落ちる

フラット「2人とも⁉︎大丈夫⁈」

ノール「私はなんとか...クレア、多分足か腕、

どっちか、階段に強くぶつかって...」

クレア「右腕だ...イッテェ...!」

フラット「ちょっと見せて!」

クレアの右袖をフラットはバッとあげる

フラット「内出血起こしてる...骨折の可能性がある...

長い棒状のものが有れば」

整備員「どうされました⁉︎」

フラット「右腕を骨折してるかもしれなくて...」

整備員「じゃあ長い棒状のものが必要ですね!

ちょっとお待ちください!誰かぁー!誰か

長い棒状のものを持っている人はいませんかー!」

老人「杖ならあるが...」

整備員「ですが、お客様、それがないと...」

老人「人が怪我しているんだろう?だったら

使ってやれ。杖なんか買い直せばいい」

フラット「えっ...ならお礼としてお代は僕がー」

老人「いい、いい。まだ若いうちにそんなことを

気にするでない」

フラット「は、はぁ...」

老人「ではこれで。あぁ、若いの」

フラット「はい」

老人「友を傷つけて、若者は強くなる。

それを忘れるなよ」

フラット「...はい」

老人「それだけだ」

老人は会釈をし、その場を去る

ナックル「おい、大丈夫か⁉︎」

ペーター「今、凄い音がしたが...」

マドール「あっ、クレア君!その腕...」

ノール「フラット。今回はお前にも非はある」

フラット「分かってる。ごめん、クレア」

クレア「なーに、調子乗って走ったのは俺だしよ。

お前のせいじゃないさ。それに忠告を聞かなかった

俺が全面的に悪い」

フラット「...」

クレア「そんな目、すんなって。らしくない」

フラット「...ありがと。整備員さん、医務室は

どこですか?」

整備員「こちらです!今、応急処置は済みましたから

案内します!」

クレア「えっ...あ、そっか。すっとこどっこいの翼は

人前では使わないんだったな」

フラット「では、案内お願いします!」

フラットは整備員に連れてかれる

ノール「私も行く。ついてくよ」

ペーター「俺も行くよ。今のフラット君は

1人にしておくわけにはいかないし」

マドール「私もついてくわよ。フラット君、

明らかに抱え込んじゃってるもの」

ナックル「おっと、俺は月に来たついでに用事が

あるからな。ちょっと済ましちまうな」

ペーター「用事?珍しい」

ナックル「ただの買い物だ。すぐ戻る」


フラットは医務室の前でただ静かにクレアの診断結果を

待つ。ただ時々、しょげた顔を見せる

フラット「...ごめん」

ノール「フラット、だから何で謝る?」

マドール「別にフラット君だけが悪いってわけじゃ

ないと思うわよ。あくまでフラット君にも

非があるってだけだし」

フラット「...非がある」

ペーター「慰めになってないよ。フラット君みたいに

優しく言わないと」

ノール「えっ...慰めになってない...」

マドール「私、こういう方法でアスカちゃんを...」

ペーター「フラット君、何で君1人で責任を負うんだ?

別に誰も責める気はないよ。若いうちは失敗したって

いいんだよ。それから学べばいい。ウジウジしてたって

何も進まないよ」

フラット「失敗しちゃ...いけないんです。僕は...

法を司る者として」

ノール「あっちゃ、これは...」

マドール「かなり深い悩みを見つけた感じね...」

?「君、そんな悩みを持っているのか。まるで、

スラリアみたいだ」

フラット「スラリア?」


一歩その頃ナックルー

ナックル「あぁ、俺だ。フラット、俺のことに

何故か勘づいているようだ。もしや、アイツが

動いている可能性もある。やはりフラットは

お前が言った通り、“1度死んだ”と見て

間違いなさそうだ」

電話相手「そうか...早いとこ、見切りをつけないと

いけないってわけか」

ナックル「いや、見切りはつけん。俺が

フラットを守る。何があっても。アイツの手を二度と

“血で汚さない”ためにも」


?「あぁ、すまないね。俺はランケール。先程

口にしたスラリアの義兄だ」

フラット「あの...同じ悩みってことですか?」

ランケール「あぁ、アイツも自分の役目を

果たすべきなのかどうかを悩んでいる。

心理カウンセラーを雇っても全然解決できなくて、

困っていてね。それでどうだ?スラリアの

心理カウンセラーを君に任せたい。他の人達も

屋敷に泊まっていただいて結構ですから」

フラット「人助けですか?いいですよ!

お任せください!」

ノール「自分と同じ悩みを解決するんだ。それを

忘れてないか?」

医師「クレアさんですけど...右腕骨折でした。

今ギプスをつけ終えたので問題は無いかと。

しかし...戦闘といった激しい運動は

避けてください」

ペーター「分かりました。

どうもありがとうございます」

医師「いえ、では」

クレア「おっと、すみません」

医師「構いませんよ。どうぞ」

クレア「フラット!こんな怪我、どうってこと

ないからよ!」

フラット「クレア...ごめんね」

クレア「だーかーらー、謝んなって!お前らしくない」

フラット「...ありがとう」

ランケール「で...依頼はどうします?」

フラット「あ、引き受けさせてもらいます。

僕と同じ悩みなんて持っちゃいけません!」

ノール「?おい、それどういうー」

ランケール「助かります!ではついてきてください。

私の屋敷に案内します」

ペーター「わざわざ俺達まで...」

ランケール「人数が多いと、スラリアも喜びますよ。

悩んでるとはいえ、人のことは大好きだから」

フラット「だとしたら、絶対助けないと!

お車まで案内してください」

ランケール「はい、こっちです」

マドール「あ、私はお仕事があるのでここでお別れに

なるわ。それじゃあね」

ペーター「まぁ、しょうがないね。ランケールさん、

案内していただけますか」


ナックル「ふぅ、電話終了。長電話になっちまったな。

さて、これからどうしたものか」

「嘘、あれナックラーじゃん!」

「マジで⁉︎うわっ、生だぜ生!これは拡散だな!」

「俺も写真!ヤベェ、レアものだぜ!」

ナックル「ヤベっ...コレは説教もんか?」

「あの...サインください!」

「こっちにも!」

「握手してください!」

フラット「?何、あの集団」

ノール「ゲートまでの道のりで...迷惑」

クレア「...ナックルを呼ぶ声が聞こえる。まさか、

バレたんじゃないか?」

ペーター「バレたぁ⁉︎アイツ、何やってんだ。

ちょっと荷物持っててくれ」

フラット「は、はい!」

ペーターは集団に近寄り、思い切り息を吸う

ペーター「スーっ、ナァァァァックラァァァァ!

何してる⁉︎」

ナックル「ヤッベ、ペーター来ちまった⁉︎」

ペーター「おいナックラー、何迷惑かけてんだ?

おかげでゲートまでの道が塞がれてんだが?」

ナックル「俺だってまさかこうなるとは...」

ペーター「はぁ...仕方ない。皆さん、この雲海で

音楽イベントを行います。来週一週間やりますので

終了後に毎回30分、サイン会を開きます。その時に

また来てください。来園者に限らず、誰でも

構いません」

ナックル「お、おい...そんなことしていいのか?

流石にアカデミーになんて言われるか...」

ペーター「こんなことでアカデミーは何も

言ってこないさ」

ナックル「それもそうか。なら、そうしよう。

すまんな、来週まで待ってくれ!この、

ナックラーとの約束だぜ!」

そう言われると、ファン達は仕方なさそうに散っていく

ペーター「それで、このランケールさんの所にー」

ナックル「ランケール⁉︎」

ランケール「...初めまして、ナックルさん。

よろしくお願い致します」

ナックル「...すまんが、俺は先に行ってる」

ペーター「どこにだ?ランケールさんの所に

宿泊することになったんだが」

ナックル「...俺はお断りだ。俺は1人、違う所で

泊まる。じゃあな」

フラット「ナックルさん⁈...どうしたんだろ?」

ランケール「さぁ...まぁ車はこっちです」

ノール「バカ虎...すまない、私も後でそっち行く。

先に行ってて。フラット、これ。発信機持ってて」

フラット「いいけど...遠いと思うよ?車で...って、

今思ったけど何でランケールさんは宇宙港に

いたんですか?宇宙船にはいなかったはず...」

ランケール「あぁ、友人を見送りにね。それで、

お手洗いに行って出たら君達の会話が聞こえてね。

それで声をかけたってわけ」

クレア「偶然...なのか?まぁいいや、早く行こうや。

ここにいたってつまらんしよ」

フラット「そうだね、お願いします」

ペーター「俺もノールの方に行く。すまんな」

フラット「い、いえ。大丈夫ですよ」

クレア「なーんだ、皆して行かないって...

まぁ親切破壊神と多重人格課長は来るだろうが」

フラット「クレアって安直なあだ名をつけるよね。

誰のことか一瞬で分かるよ」

クレア「俺の癖だ、気にするな」

フラット「別に気にしてはないけど...じゃあエドは

なんて呼ぶの?」

クレア「単純豹男。そう呼ぶ」

フラット「安直すぎない?もう少しひねった

あだ名をつけた方がー」

クレア「ったく、人の癖にケチつけるなよ。

フラットだってー

いや、やっぱ何でもない。でもあだ名はこのままだ」

フラット「分かった。あっ、すみません。

ランケールさんが知らないようなお話を...」

ランケール「いえ、全然構いませんよ。あなた方の事は

よく知っていますから。あ、車です」

フラット「えっ...これって...」

クレア「おいおい、豪華だなぁ」

ランケール「スラリアの家は豪華ですから」

クレア「今更だがリア家か?スラリアって。

元アカデミー四大・水の1人、ジャスミー・リアの

娘じゃなかったか?」

フラット「四大?」

クレア「お前、そんな事も知らないのか?

四大っていうのは、ファイター企業の幹部ってとこだ。

ペーターの言ってた正社員ってのは中級ファイターって

とこで、四大は上級だ。その上となると、ボス、

つまり社長だ。アカデミーではゼウスと呼ぶ」

フラット「ゼウス...」

ランケール「鍵開けたのでお乗りください」

フラット「あ、はい、分かりました」

クレア「どうも」


一方ナックルー

ナックル「運命ってあるものなのか。まさか、

ランケールと俺が再会するなんて夢にも

思ってなかったぜ」

ノール「バカ虎」

ナックル「ノ、ノール...何で?」

ノール「気になったから。挙動も少しおかしかったし

何よりランケールと言われてから明らかに

様子が一変した。ランケールのこと、

なんか知ってるのか?」

ナックル「いや?何も。ただリア家の家には

近づきたくないだけだぜ」

ペーター「そうだろうと思った。でも、たまには

“実家”に帰った方がいいと思うぞ」

ノール「実家⁈嘘、バカ虎の実家ってリア家?」

ペーター「どっちかと言えば養子だが...

実家に変わりないだろ?」

ナックル「俺は...俺の実家はバトラー家だ!

リア家じゃねぇ。お袋も親父も...いねぇけどよ」

ペーター「フラットも同じさ。だろ、ナックラー」

ナックル「今は関係ねぇだろ、フラットは」

ペーター「いや、ある。フラットは...お前達を

家族として見ているはずだしな」

ナックル「...そうかもしれないけどよ...」

ペーター「アイツはー」

フラット「宜しくお願いします!

ちわ〜っす!フラットでーす!」

ペーター「素直でー」

フラット「何か一言あるならー」

ペーター「それでいて真面目でー」

フラット「って、言っちゃった...」

ペーター「なおかつ天然。ナックラー、何でアイツを

隊長にしたと思う?」

ナックル「分からん。アイツに長けた才能があるかと

言われればあるが...人に指示することは

あまり得意じゃない...」

ノール「そのアイツは、たしかに隊長としての自覚は

ないかもしれない。だけど、誰かのためになることを

しようとする心意気は、カッコいいと思う」

ナックル「カッコいい...か。たしかにな」

ペーター「その思いが、今日になって分かった。

あのフラットが言った、法を司る者として

失敗してはいけないって言葉...アイツは

役目とモットーに葛藤しているんだろう。どちらを

選ぶのが正解なのか」

ノール「正解...か。そんなの決まってる」

ペーター「その答えに気付くのはアイツ自身だが、

アイツがお前達にやったように、ヒントを与えるのは

いいと思う。恩返ししてやれ、若いうちにな」

ノール「了解。では、私はリア家に」

ナックル「しょうがねぇなぁ。行ってやるか。

あくまでフラットに恩返しするためにな」

ペーター「そうか、俺も行くとしよう。バジョーを

救って俺達と再会させてくれた恩返しにな」



ランケール「着きましたよ、お二人とも」

フラット「うわぁ、すごい...雲海にこんな屋敷が...」

クレア「デケェ...」

ランケール「早速驚かれたようで。中はもっと

凄いですよ」

ランケールは2人に微笑みながら、大きな木製扉の鍵を

開ける。その音さえ、2人には豪華に聞こえた

ランケール「では、中にどうぞ」

フラット「お、お邪魔します...ってコレ...」

クレア「ヤベェ、マジでヤベェよこれ!

赤い絨毯に二手に分かれる階段、そしてシャンデリア!

まさしくお屋敷だ!」

ランケール「お気に召されましたか?まず、お部屋に

案内しますね。こちらです」

フラット「はい!クレア、早く早く!」

クレア「はしゃぐなって!気持ちは分かるがよ」

2人はランケールについて歩く。終始笑顔が

止まらなかったが

ランケール「こちらの東側の部屋をお使いください。

先程女性の方がいらしたので、スラリアからは

止められていますが、スラリアと同じ西側の部屋を

使わせてもらいます」

フラット「止められているんですよね?だったら

端の部屋を使えば...」

ランケール「あれは私の部屋なんです」

クレア「あ〜...ならしょうがないな。で、どうする?

荷物を置くのはいいとして、スラリアに

会いに行くのか?」

フラット「いや、いきなり会うのはあれだし...

ていうかさ...」

グゥ〜

フラット「お腹空かない?」

クレア「ハハッ、実は俺も空いてる...」

ランケール「では食事にしますか?食堂ありますし」

クレア「食堂って...レストラン⁉︎」

フラット「そういう意味じゃないよ、こういう屋敷だと

そういう部屋があるってこと」

ランケール「そうですよ。初めてこられた方は必ず

驚かれますから」

クレア「おぉ!気になる、荷物置いて速攻行こうや」

フラット「賛成!ちょっとお待ちください、

荷物置いてきてしまうので」

2人は部屋に入り、荷物を置き、廊下に出る

ランケール「では、食堂は一階の正面玄関を

まっすぐ行った階段下の扉の向こうになります。

私は後で行きますので先に行っててください」

フラット「分かりました。じゃ、行こっ、クレア!」

クレア「その前に少し見物してもいいだろ?」

フラット「だーめ!人の家であちこち回るのは

非常識だよ」

ランケール「?あれ、スラリア⁉︎」

?「ランケール...?その方達は?」

ランケール「お客さんだよ。スラリアと似た悩みを

持っているフラット君と、その友人のクレア君」

?「また心理カウンセラーでも雇ったの?

前も言ったけど、私は外に出る気はないからね。

それだけは先に言っとくよ」

ランケール「それは分かってる。どうして廊下にー」

?「お手洗いよ、それじゃあね」

ランケール「あっ...すみません。あれがスラリアです。

少し前まではあんな性格じゃなかったんですけど...

2年ほど前からあんな感じに...」

フラット「外に出ないって、どういう意味ですか?」

ランケール「そこまでは...私にすら

話してくれなくて分からないんです」

クレア「可愛い...」

フラット「へ?」

クレア「スラリアだよ!めっちゃ可愛かった!」

フラット「...大丈夫?」

クレア「お前は何とも思わなかったのか⁈あの美少女を

目の前にして、なんとも⁉︎」

フラット「う、うん...クレア、タイプなんだね」

クレア「俺のタイプとかじゃなくってさ!

普通に...」

フラット「そうかな?ていうか、悩みを解決しに

来たんだよ?グイグイ近づいて嫌われたらまずこっちも

困るから。本人の前でそんなこと言わないでよ?」

クレア「わ、分かった」

フラット「じゃ、食堂行こっか」

クレア「そうだな、行こう」


一方スラリアー

スラリア「...私と同じ悩み?だったら友達なんて

いるわけない...!皆、嘘つきだ!」


3節 束縛する運命

フラット「は〜...こりゃまた見事な部屋...」

クレア「食卓に燭台って、お屋敷だよ!」

フラット「いや、お屋敷だし」

クレア「こんなとこで毎日飯を食うんだろ?

羨ましすぎてもはや悔しい!」

フラット「まぁ分からなくもないけど、僕だったら

落ち着かないね。燭台の光が揺れる度に反応しそう」

クレア「あ〜、なんかその気持ち分かるわ」

フラット「だよね〜、毎日席に着こうよ。

突っ立ってても、退屈だし」

スラリア「あれ...さっきの。ランケールは?」

クレア「あっ...」

フラット「い、今はここにいないよ。後で来るって」

スラリア「そう、後で来る...じゃあ待たせてもらうよ。

用事があるから」

クレア「ヤベェ...かわー」

フラット「ゴホン、クレア、今は部屋に戻ってれば?」

クレア「そ、そうだな。ちょっと戻ってるわ」

フラット「うん、じゃあまた後で」

クレアは2階に戻る。時々スラリアを見返しながら

フラット「はぁ」

スラリア「あの人、私のこと好きでしょ?」

フラット「えっ?ま、まぁ好きというか

可愛いと思ってるぐらい...」

スラリア「ふーん...可愛い...か。あなたは

どう思ってるの?」

フラット「僕⁈いや...別に...ごめん!」

スラリア「えっ、何とも思ってないの?ふふ、

不思議。人は初めて誰かと会う時は

何か思うものだよ?それに何で謝るの?」

フラット「いや...失礼に当たるかなって...」

スラリア「失礼...フフフ、面白いこと考えるね」

フラット「面白い...?当たり前かと思うけど...」

スラリア「当たり前...ねぇ、フラットって

いったっけ?クレアだっけ?どんな関係なの?」

フラット「関係...?今でこそ友達だけど、

色々あったよ、大変なこと」

スラリア「色々?」

フラット「そうだよ、色々」

スラリア「教えてよ、その色々」

フラット「分かったよ、えーっと、まずはー」


一方ナックル達ー

ノール「発信機の反応はこっちから」

ナックル「別に場所覚えてるから大丈夫だぜ。

こっちだ」

ペーター「だが、イベントできるか?会場が

近いかどうか...」

ナックル「近いぜ。雲海イベント会場はリア家の

すぐ側だぜ」

ペーター「なら...いいか。よし、タクシー拾って

向かうとしよう」

ノール「あ、ちょうど来た。タクシー!」


スラリア「へぇ〜...そんなことが。で?

私と同じ悩みっていうのは?」

フラット「悩み...なのかな?僕さ、法の天使なんだ。

だから失敗とかしちゃいけない。

罪を犯すってことだから」

スラリア「それが悩み...似てるね、私とたしかに。

じゃあ言うね。私は死神の力を持ってる。それで、

人に余命を伝えて魂を冥土に送る。それが役目だけど...

私は余生を悔いなく過ごしてほしい。

それが私のモットーなんだ。だから一週間前に

命日を伝えて、未練を残さないようにって伝えてた。

でも...私は殺し屋って呼ばれるようになった」

フラット「...殺し屋?」

スラリア「うん。何故かは...言わない。辛いから」

フラット「分かったよ。ありがとう、話してくれて。

あ、安心して。ランケールさんには今のこと

言わないでおくよ」

スラリア「本当?」

フラット「うん、本当」

スラリア「ありがと。ちょっと楽になった。

何でだろ?」

フラット「悩みを話せたからじゃない?」

スラリア「そうかも。フフフ」

ピンポーン

スラリア「あれ、誰だろ...ごめん、部屋にー」

フラット「あ、多分僕の友達だよ。遅れて来るって

言ってたから」

スラリア「友達...?」

フラット「あと3人いるんだ。あ、でも1人は上司か。

ごめん、2人は友達だから」

スラリア「そんな悩み持ってても友達はできるんだ」

フラット「できるよ、いつの間にか。まぁ、僕が

友達だと一方的に認めてるだけだけど」

スラリア「一方的に?」

フラット「僕もね、友達って何だろうって考えるんだ。

互いが友達って認めてやっとなれるのかなって。

だったら、あの皆は友達なのかなって、

時々マイナスに考えちゃう」

スラリア「私は、友達とか考えたことないな。

そばにいて楽しいって思える人が友達だと思う。

私、フラットなら友達って思えるよ」

フラット「えっ...」

スラリア「冗談かもしれないけどね」

フラット「...もう。あ、扉開けないと。ちょっと

行ってくるね」

スラリア「うん」


フラット「あれ...チャイム鳴って1分ぐらい

経っちゃったのに...鳴らさないって変だな」

フラットは怪しみつつ扉をあける。すると、足元に

1枚の手紙が置いてあった

フラット「何...これ?」

フラットはゆっくりと丁寧に手紙を開ける。

中には、大きく死ねと書かれた紙と、

胸に釘を打たれた藁人形があった

フラット「なっ、悪趣味な...」

スラリア「フラット?どうしたの?」

フラット「あっ!」

(見せちゃダメだ!)

フラットは咄嗟にポケットにそれらを入れる

ノール「あ、フラット!」

ナックル「おい待て、タクシー代!」

ペーター「そうだよ!払ってけ!」

フラット「あ、今きたんだね!」

ランケール「あれ、フラット君...あ、さっきの。

?ナックル君...来たのか」

ナックル「...ただいまだ」

スラリア「なっくん⁉︎」

フラット「なっくん⁈」

ノール「バカ虎、ここの養子だって。スラリアとも

知り合いなんじゃないか?」

スラリア「お帰り。急に飛び出してどっか

行っちゃったから心配してたんだ」

ナックル「すまんな、スラ。元気してたか?」

スラリア「元気...じゃないかな。でも、

なっくんの顔見て少し嬉しい」

ランケール「というか、フラット君、クレア君は?」

フラット「あ、今は部屋にいますよ」

ランケール「そうか、ありがとう。昼食はできてるから

先に食べててください。クレア君も呼んできます」

ランケールは二階に続く階段を登っていく

ペーター「たしかに小腹は空いたが...」

ナックル「ん?いい匂いだ。これは...なるほど。

厨房にはアイツらがいるのか。ちょっと行ってる」

フラット「あ、僕達も食堂に行こう」

ノール「お腹空いたし、そうだな」

スラリア「私は...食堂で」

ペーター「全員分あるのか?」

ノール「ここまで匂いがくるってことは

量もあるってこと」

フラット「まぁ行こう。お腹空いた〜」

全員は食堂に向かう

ノール「これは...凄い」

ペーター「まさにお屋敷の食堂だな...」

フラット「でも...この料理の量...おかしくない?

まるで全員が集まることを予知していたような

量だよ、これ...僕も厨房行ってくる」

ペーター「おい、フラット⁈...はぁ」

ノール「まぁ食べてよう。どうせこの量だ。

バカ虎がいてやっと食べ切れる」

スラリア「バカ虎って...なっくんはバカじゃないよ!」

ノール「お?そうか。私から見ると、

脳筋だが」

スラリア「それは...否定できないけど...」

ペーター「いや、否定できろよ」


フラット「失礼します!」

センリ「⁉︎お前は...」

シャリー「フラットのお兄さん...」

ナックル「おい、知り合ってるのか?」

フラット「うん、この前の大量人工アリジゴク発生時に

偶然知り合って...でも何でここに?」

センリ「俺達はここの厨房で働いている」

シャリー「そうなの。前は地球の食料を貰いに

出向いたらその事件に鉢合わせて」

フラット「そうなんだ。嫌な偶然だね」

センリ「...それでナックル。帰るのか、また地球に」

ナックル「当たり前だ。戻るに決まってる」

シャリー「戻って...どうするの?またあれをー」

ナックル「フラットの前でそれをー」

センリ「フラットはもう知っている。お前が、

人工アリジゴク計画の裏の面に携わっていることを。

俺達もな。理由を話してくれ。分からないから

フラットは少し戸惑っていた。一応真実を伝えて

思いが固まったようだが」

フラット「ちょっ...言っちゃうの⁈」

シャリー「センリは隠し事嫌いなの。で、

お兄さん?昼食の用意は終わってるから早く

食べに行ったら?なくなっちゃうわよ」

フラット「僕はナックルさんを迎えにきたんだ。

ほら、行くよ」

ナックル「...フラット。お前は俺のこと何も

思ってないのか?犯罪者だぞ」

フラット「ナックルさんが理由なしでそんなこと

するはずない。そう信じてるから」

ナックル「フラット...」

フラット「僕は、少なくともナックルさんを疑うことは

しないよ。ずっとそばにいてくれたし、

味方してくれた。だから...僕は絶対信じる」

ナックル「...本当だよな?」

フラット「嘘つくわけないでしょ。ほら、昼食食べよ」

ナックル「そうだな、一緒に食べような!」

2人は厨房から出て食堂に戻る

シャリー「あのことは言わなくていいのかしら?」

センリ「まだフラットは知らない。だったら

教える必要は今のところない」

シャリー「そう?ならいいわ」


フラット「ごめん、一緒に、ってもう食べてる⁉︎

ちょっと、待ってくれたっていいじゃん!」

ノール「お腹がすいてら食べる。当たり前のことだ」

ナックル「いや、そうだけどよ。一緒に食った方が

もっと美味いぜ!」

クレア「やっぱ脳筋か。すっとこどっこいなやつは

そういう体育会系のことしか言えないのかねぇ?」

ナックル「なっ...コイツめ〜!」

クレア「アッハハハハ!ここまでおいで〜だ!」

スラリア「フフ...アハハ!」

ランケール「...笑ってる...スラリアが...笑ってる...!」

ペーター「あれが、フラット君の仲間、いや、

友達ですよ。気付かぬうちに誰かを幸せにする...

そんなフラット君を学び、今の彼らになった。

フラット君は優しい子ですよ。“あの頃の彼“は

もういないと言っていいでしょう」

ランケール「そうみたいですね。しかし...

あのスラリアをたった1日で笑わせられるとは、

正直驚いてます。これなら外に出られるのも

きっとすぐですね。ペーターさん、ありがとう」

ペーター「いや、感謝するならフラットですよ。

俺は何もしていません」

フラット「これ美味しい!」

ノール「こっちも美味しい!」

ナックル「この〜!その頬つねってやるよ!」

クレア「わ〜った!すまんかった!」

ペーター「この今を見られているのは、

フラット君、君のおかげだ。本当にありがとう」


午後ー

フラット「てことで、音楽イベントに向けて

練習しよう!」

全員「おーっ!」

フラット「まずは一回合わせてみよう。それじゃ、

ワン・ツー!」


クレア「うーん...イマイチ」

ノール「聞いてて思ったけど、ドラムいなかった」

フラット「たしかに...ナックルさん、できたよね」

クレア「俺も、アコギならできる。エレキは流石に

できないが」

ノール「私は無理だよ。楽器なんてカスタネットと

鍵盤ハーモニカしか触ったことない」

スラリア「ねぇ、今の音何?」

フラット「あっ、ごめん。うるさかった?」

スラリア「いや、綺麗だったから...」

フラット「そう⁈ありがとう!」

ノール「やってみない?案外楽しいと思う」

スラリア「ピアノならできるけど...

足引っ張っちゃうよ、私だと」

フラット「いいからいいから!気にしないよ、

ミスしたって!だから...あれ、矛盾してるね、

僕の思いと今の発言」

クレア「やっと気付いたか。そうだ、矛盾してるぞ。

俺やノールは罪を犯したのにお前は許した。

なのにお前は自分が失敗しただけでも罪だと

考える。理由は多分、法の象徴である自分は

象徴であり続けなければならないと思っているから」

ナックル「そんな必要ないぜ!お前はお前でいい!

失敗したって、誰かを傷つけたってお前らしく

対応すればいい!法の象徴なんかに縛られるな!

自分っていう胸を張っていればそれでいい!」

フラット「‼︎...ありがとう。気持ちがだいぶ晴れたよ」

スラリア「...自分という...胸を張って...ねぇ!

楽器ないでしょ?さっき聞こえたけど、

ドラムとアコースティックギターだよね。

楽器屋が近くにあるから案内するよ」

ナックル「外に...出るのか?」

スラリア「うん!なっくんの言葉で気づいた!

私も死神の役目に縛れれていたんだって。でも...

私は私、だから私のモットーで動けばいいんだって...

やっと分かった。だから...負けない、

負けたくなんかない...私に対する偏見になんか...」

ナックル「偏見⁈」

クレア「偏見ってなんだ⁉︎」

スラリア「あ、言っちゃった...」

フラット「詳しく教えて。いい?」

スラリア「...うん。いいよ...私ね...言ったでしょ、

フラット?殺し屋って呼ばれてるって。

何でだと思う?」

フラット「...余命が分かるから?」

スラリア「違う。私ね、死因までは分からないんだ。

だから、あと一週間したら死にます、としか

伝えられなかった。そしたら、私が実は

殺しているんじゃないかっていう噂が広がって...

それで分からなくなった。私のしたことは

間違いだったのか。何が正解なんだろうって...」

フラット「正解...か。それは自分で見つけないと。

自分にとって大事なものをそれで守れるのか。

それを考えればきっと辿り着ける」

スラリア「私にとって大事なもの...ありがと、

参考にするね!あ、じゃあ楽器屋に案外するね。

ついてきて!」

全員は笑顔になったスラリアについていく


スラリア「ここだよ!」

フラット「本格的〜...流石月だね、最新モデルから

最古モデルまで全部ある!」

ナックル「で、ドラムは...お、あった!

って、やっす⁉︎こんな最新モデルがたった80000オズ⁉︎

俺は夢でも見ているのか⁉︎」

スラリア「今、月はデフレなんだ。オズの価値が

地球の4分の1になって...」

フラット「政治が大変そう...」

クレア「いや楽だろ。インフレじゃないんだし。

お、いいアコギ見っけ!ネックも...ちょうどいい!」

スラリア「ピアノなら家にあるから問題ないね。

じゃあお会計済ませてー」

「おい、殺し屋がいんぜ?」

「うおっ、誰を殺すか品定めしてんだぜきっと」

「でも最近は見なかったよな?」

「どうりで最近は死人が少なかったんだな!」

スラリア「...っ!」

スラリアは店を飛び出し街の方へ向かう

フラット「スラリア⁉︎クレア、怪我してるなら

お前が支払いを!」

クレア「分かった!行ってこい!」

フラット「うん、行くよ!」

ノール「私は残る。ちょっと痛い目に遭わせないと

分かる気しないだろうし」

フラット「ダメ!ノールも来る!手分けして探した方が

効率がいい!」

ナックル「そうだぞ!お前も来い!」

ノール「...分かった!」


スラリア「...母さん...」

スラリアはとある川原で泣いていた。

スラリア「昔、ここで...母さんと一緒に絵を描いて...

一緒に歌の練習したり...でも!」


8年前ー

スラリア「母さん!私静海大学受かったよ!」

ジャスミー「良かったじゃない!偉い偉い。

流石はスラね。今日はバイキングに行こっか!」

スラリア「やったぁ!ありがと、母さ...?」

スラリアはあるものを見て、喜ぶのをやめる。

そして手に下げていた鞄を床に落とす

スラリア「嘘...でしょ?母さん、どこか悪いの?」

ジャスミー「えっ?どこも悪くないけど...」

スラリア「ごめん、今日はバイキングいいや!

私、部屋に戻ってる!」

ジャスミー「あ、スラ!」


ジャスミー「スラ⁈どうしたの、スラ⁈」

スラリア「見えたんだ!」

ジャスミー「えっ...?」

スラリア「母さん...3日って...見えたんだ...」

ジャスミー「そう...でもスラ?言ってたじゃない。

余生を未練なく過ごしてほしいって。母さん、

スラと一緒じゃないと楽しくないよ」

スラ「母さん...でも...でも...!」

スラリアは鍵を開けると同時にジャスミーの胸に

飛び込む

スラリア「嫌だよぉ...私、もっと母さんに...

だって...迷惑ばっかかけちゃったもん...!」

ジャスミー「スラ、母さん迷惑だなんて

思ったことないよ。スラのこと大好きなんだから。

失敗したって許したでしょ?誰かを怪我させたら

そりゃ怒ったけど...でも、スラのこと大好きだから、

全部許したでしょ?だから母さん、最後まで

スラと一緒にいたい。それが私の願い」

スラリア「...母さん...!」

3日後、母さんは大雨の日に買い物に行ったきり

帰ってこなかった。私は大学に一人暮らしだったため

その知らせに気づいたのはその一週間後だった


スラリア「母さん...母さんならなんて言ってくれるの?

私は...何をすればいいの?たとえ私のモットーを

果たせたとしても...誰も...私すらも幸せになれない!

何が正解?何が正しいの?分からないよ...

もう...疲れた...悩むのもバカらしくなってきちゃった。

母さん、天国には行けそうにないよ。ごめんね」

スラリアはゆっくりと川に近づく。その腕をー

フラット「スラリア!」

スラリア「⁉︎...フラット...」

フラット「良かった...間に合った」

スラリア「離して」

フラット「えっ」

スラリア「離してよ!私はもう死ぬ!それで...

いいんだ!」

ノール「甘ったれるな!」

ノールの平手打ちがスラリアの右頬に当たる

ノール「自分中心に世界が動いてるとでも思ってる?

バカじゃない⁉︎自分から何もしないで正解になんか

辿り着けるわけない!それでもフラットは

お前のこと思いやって色々と優しくしてた!

その思いを踏みにじるつもり⁉︎」

スラリア「私から...何も...」

ナックル「そうだぜ。抵抗することなくただ受け入れて

どうするよ?運命をそのまま変えないつもりか?」

スラリア「なっくん...」

フラット「でも、スラリアは頑張ったと思うよ。

今まで一人で悩みながら生きてきたんだもん。でもね、

これからは僕たちも親身になって協力したい。

ダメかな?...いや、ダメでもしたい」

スラリア「私は...私は...!」

クレア「おーい!買い終わった、ってうわ!」

フラット「クレア⁉︎」

スラリア「危ない!」

ナックル「うぉぉ...ナイスキャッチ!」

スラリアは落ちてきたクレアをなんとか受け止める

ノール「...やるじゃん」

クレア「あ...あれ...」

スラリア「大丈夫?腕、痛くない?」

クレア「スラリア⁈あ、あぁ大丈夫。ありがと...」

フラット「おや?顔が赤いぞ?」

クレア「うっせぇ」

スラリア「...皆、ありがとう。私、間違ってた。

何もしないくせに助けを願っても叶うわけないって。

だから...やってみようと思う。もう一度」

ノール「うん、いい心がけだと思う。あと、

さっきは叩いてごめん。大丈夫?」

スラリア「かなり痛い」

ノール「ごめん!後で冷やす」

スラリア「なんてね!痛いのはそうだけど

もう飛んでっちゃった!」

ノール「...怒りたいけど、そんな笑顔で言われると

もうなんか清々しい。許す」

フラット「ノールも変わったね」

クレア「...ていうか...そろそろ離してくれねぇか?

ちょっとマジで恥ずかしい...」

スラリア「ん〜...どうしよっかな〜」

フラット「アハハハ、いいと思うよ、クレアも

喜ぶよ!」

クレア「お前〜!わけが違う、わけが〜!」

「うわー‼︎ヴァイスだ、ヴァイスが暴れてる!」

ナックル「⁉︎ヴァイスだと?」

フラット「いくよ、スラリア、クレア離して!

ナックルさん、今人いないから翼で!」

ナックル「おう!来い、『真光之人工正翼』!」

クレア「なんかすまんな。俺のために2回も...」

ナックル「気にすんな!神業・治癒」

クレア「お...おお!腕の痛みが消えてく!

やっぱすげぇ!すっとこどっこいの翼は天下一品だな」

ナックル「じゃ、解除だ!クレア、来い!」

クレア「あぁ、行ってやるとも!」

スラリア「待って、私も...行く」

フラット「えっ⁉︎スラリアは

ファイターじゃないでしょ‼︎だからダメ!」

スラリア「カメラをやるだけならできる!それに、

ファイターじゃないけど素質はある!父さんは

ずっと昔にアリジゴクに喰われたけど覚えてる!

それが証拠!」

フラット「...そっか。じゃあお願いするよ!

カメラマン、よろしく!」

スラリア「了解!」


ヴァイス1「オラオラー!さっさと金出せよ」

警備ロボ「ダメです!これは雲海に住む人達の

お金です。あなた方なんかに奪われるものじゃない!」

ヴァイス2「人間じゃない機械風情が生意気言うなよ。

おい、コイツ、ぶっ壊すぞ」

ヴァイス3「よっしゃあ!くらえ!」

ノール「そんな破壊で満足か?もっと綺麗な破壊を

見せてやる。神業・爆破!」

ヴァイス1「うおっ⁉︎誰だ!」

ノール「デ・ロワーファイター課、一級ファイター、

ノール・タール。強欲な私利私欲を叶えるための破壊を

見逃すわけにはいかない。ここで叩き潰す!

第一破壊『炎』術・『闇夜行特急列車』!」

ヴァイス2&3「グワァァァァ!」

ノール「あと1人か」

クレア「全く、荒々しい戦闘だな。俺が清らかな戦闘を

教えてやるよ、見とけ!

第一突風『零』術・『水切之旋風』!」

ヴァイス1「ガァァァ⁉︎」

フラット「出る幕でもなかったか。あとは警察が

捕まえてくれるだろう。解除っと」

スラリア「...すごい、これがファイター...カッコいい」

ナックル「だろ?素質があるならいつかなれるぜ」

スラリア「...うん!頑張ってみる!」

警備ロボ「あの...ありがとうございます。

まさかこんな目に遭うとは...」

フラット「いえ、あっ、少し傷が...動力源は

パラレルストーンですか?」

警備ロボ「いえ、自己発電で動いています」

フラット「なら大丈夫。神業・原子復元」

警備ロボ「おぉ、傷が...すごい能力ですね」

フラット「どうも。ではこれで。お仕事頑張って」

スラリア「お疲れ。生の戦闘、初めて見た...

もう大満足!」

クレア「そ、そうか?なら何度でも見せてやる!」

ナックル「お前はただ単にカッコつけたいだけだろ?」

クレア「ダメなのか⁉︎」

ノール「まっ、誰でも恋はする。悪いことではない」

フラット「じゃあ、帰ろっか」

「あの...娘を見ませんでした?」

フラット「えっ...まさか銀行の中...って、

あそこにいる女の子、そうですか?」

「あっ、はい、そうです!すみません」

スラリア「...家族か...?あの子...」

ノール「どうした?あの子が...気になる?」

スラリア「...余命が見える。7日って...

あんなに小さな子が...言わなきゃ...でも...」

フラット「大丈夫!行ってみなって」

スラリア「う、うん。やってみる」

スラリアは手をギュッと握り締め、小さく頷く

スラリア「あっ、あのー」


最終節 ありがとうと言いたくて

スラリア「あっ、あの...その子...その...余命が

見えました!7日って...」

「...どうせあんたが殺すんだろ?させないよ」

スラリア「...っ!」

ノール「自分から何もしないでー」

スラリア「...するんだ!私は...!」

スラリアは両手で頬を叩く。そしてー

スラリア「私はただ余生を未練なく過ごして

ほしいだけです!死神は人を...殺しちゃ

いけないんです。それに...まず死神は人を...

殺せないし...」

「どうだか。それも嘘じゃないのかい?」

スラリア「嘘じゃないです!...でも...証拠が」

フラット「スラリア。よく頑張った。もういいよ」

スラリア「えっ?」

フラット「御言葉ですが...スラリアが人を殺せるわけ

ありません!スラリアは優しくて、か弱くて...

それでも笑顔が綺麗な普通の女の子だ!死神だからって

何されるか分からない...その気持ちは

分からなくもない。でも...それに自分なりの想像話を

付け足して、冤罪を被せたのはそっちの方だ!

そのせいで...スラリアは傷付いて...自殺しようと...」

フラットは言いたい一言を口にするのを恐れる。

それは説教だとしても言っていい言葉ではなかったから

しかし、フラットは決断した

フラット「...罪のないスラリアを、そこまで追い込んだ

あんたらの方が殺し屋にピッタリだよ!」

スラリア「フラット...」

ナックル「ヒュー、言うようになったなぁ」

クレア「いい言葉だな。ちょっと言い過ぎだが」

ノール「その方がいい。アイツ、やっと気がついた」

「くっ...」

スラリア「...?この気配...フラット!危ない!」

スラリアは何かからフラットを庇う

フラット「なにっ⁉︎」

クレア「あっ、おい、空!」

ノール「異世界モンスターか...今回は鳥と」

スラリア「...たとえ私を傷つけた人達でも...

余生がある人達を...襲う気なら許さない!」

無機質な声「新たなコードを確認。名前、スラ・リア。

コードを認証し、パラレルウェーブを

引き起こしますか?」

フラット「来たっ!スラリア!その思い、叶えたい⁈」

スラリア「勿論!」

フラット「よし、それじゃあ叶えるよ!」

フラットは認証を押す

スラリア「?これ...!母さんの⁉︎」

ナックル「ジャスミーの⁈ハハッ、

ジャスミーの復活だな!」

クレア「イケてるじゃねぇか!俺達も行こうや!

新ファイターのサポートに回るぞ!」

ノール「いや、たしかジャスミーは...お前ら、

サポートじゃなく攻撃だ!」

クレア「えっ?何言ってんだ、ここは

新ファイターに見せ所をー」

ノール「ジャスミーはファイターでも部類は

サポーター!攻撃は得意じゃないはず!」

スラリア「大丈夫です!翼を使えば、

攻撃技も使えるから!なので、異世界モンスターを

弱らしたら私が決めます!」

ナックル「分かったぜ!お前の決め技、

見せてもらうぞ!それじゃあ...1発!

第一突進『光』術・『光纏タックル』!」

異世界モンスター「ググッ⁉︎」

ナックル「よし、いい感...じ?」

しかし、攻撃してパラレルストーンからのエネルギーは

たしかに一瞬途切れたが、すぐに回復された

ノール「なっ、なんて回復力⁉︎なら...あちこちに

ダメージを与えれば!いけ!

第二破壊『炎』術・『バンフレイムクラッシュ』!」

異世界モンスター「グギィ⁉︎」

しかし同じく全て回復される

フラット「てことは...皆、あれはもう助けられない!

パラレルストーンの力に完全支配されてる!

だったら...やるしかない!」

クレア「分かった。だったら...『突風之正翼』!

これで...一気に片付けてやるよ!

最終突風『暴風』術・

『デッドサイクロンカッター』!」

異世界モンスター「グギヤァ⁉︎」

スラリア「ごめんね。殺すしかないの。もう余命は

決まってるから。安心して私が冥土に送ってあげる。

発動、『死導之負翼』!さぁ、終わらせよう。

最終死導『和音』術・『死奏不協和音』!」

異世界モンスター「グユゥゥゥ⁉︎ガァァァ...」

フラット「...終わりだね」

スラリア「あとは、私の仕事だね。おいで、

残酷にも体をなくした魂よ。我が命に従い、

冥土に送ろう」

スラリアはそう言うと、異世界モンスターの死骸から

ふわりと、鳥のような影が空へ飛んでいった

「なんだい、今の音は...なんて美しい...」

「ママ...あれ...耳痛かった...」

スラリア「...これで...良かったのかな」

フラット「説明してこいって。術の」

スラリア「そう...だね。あの...さっきの音、

どう聞こえた?」

「耳が痛かった」

スラリア「この音が変に聞こえた...それは死期が

近づいてる証。私はたしかに人は殺せない。

さっきの術も、命日となったものから魂を引き抜く術。

耳が痛いってことは魂が引っ張られてるってこと。

私は魂を冥土に連れて行くことしかできないんです!」

「...ごめんなさい。勘違い...してました」

スラリア「...では、私はこれで。でも...

あなたの娘なんですから、楽しい余生に

してあげてください。それでは」

フラット「スラリア、グッジョブ!」

スラリア「...フラット...その...あの...

やっぱなんでもない!」

フラット「あっ、スラリア⁉︎」

スラリアは戦闘モードを解除して屋敷の方へ

駆け抜けて行く

ノール「どうしたんだ、アイツ...」

ナックル「アイツを知ってるから言うが、あれは

恥ずかしがってるんだ」

クレア「ヤベェ...マジ可愛い...」

フラット「クレア。分かったから落ち着け」

ナックル「とにかく戻ろうぜ。楽器はどうした、

クレア?」

クレア「えーっと...あ、さっきの川原に」

フラット「じゃあ取り行ったら戻ろっか」


ナックル「だぁ〜...疲れたぁ」

クレア「何グデってんだ?今から練習だぞ?」

フラット「ちょっと休もうよ。僕は

バルコニー行ってる」

ノール「私はお風呂でも借りるよ」

ペーター「あ、お前ら⁉︎練習すっぽかして

どこ行ってた⁉︎」

フラット「楽器の買い出しと異世界モンスターを

退治に行ってました。あと...スラリアは?」

ランケール「さっき外から帰ってきて

自分の部屋戻ったよ。しかしビックリだよ、

こんなに早くスラリアが外に...」

フラット「なんか自分でほとんど

解決してたような気が...」

ペーター「いや、君がここに来なかったらスラリアは

変わろうとしなかっただろう」

ノール「そうだ。お前と会えなかったらもしかしたら

そろそろ限界だったかもしれない」

フラット「そうかな?でも...助けられたならいいや」

ナックル「それじゃあ少し休んだら練習しようぜ!」

フラット「うん、一旦解散!15分後に

大部屋で集合して練習!」

全員「了解!」


スラリア「へへっ...母さん、私、友達できたよ。

すごく優しいんだよ?でも時にはカッコよくて...

私もあんな風になれるかな?」

コンコン

フラット「スラリア?いるでしょ?」

スラリア「留守だよー」

フラット「いるじゃん。入るよ」

スラリア「もぅ、ちょっとは乗ってよ〜、

ノリが悪い〜!」

フラット「本当、ジョークが好きなやつだね」

スラリア「フフッ、ごめん...あっ!」

スラリアはサッと写真を隠す

フラット「何?隠し事?」

スラリア「フラットだってポッケの中に

隠してるでしょ。手紙と藁人形」

フラット「えっ...何で知ってるの⁈」

スラリア「いつものことだから。でもフラットは

私のこと気遣ってくれた。初めてだった。

私の心理カウンセラーに来た人は、全員それを

私に見せてきた。誰も...私のことなんか考えてない。

そう思ってきた。でも、フラットに会えて分かった。

皆、多分心配してくれたんだって。私が

ワガママすぎただけだって」

フラット「そっか。でも...ワガママすぎても

いいと思うよ。だってー」

クレア「失礼するぞ」

フラット「うわっ、クレア⁉︎」

スラリア「レディの部屋にノックなしで

入ってくるなんて非常識!」

クレア「す、すまん!ただ...これ」

スラリア「何これ、花?」

クレア「お前の部屋殺風景だからさ。少しでも

明るくしようってな!アリウムだ!」

フラット「...ねぇ、アリウムの花言葉知ってるの?」

クレア「えっ?知らんが」

スラリア「深い悲しみ。本当、非常識」

クレア「別にいいだろ⁈キレイなんだし!」

スラリア「冗談だよ。花言葉なんて、人間が

勝手に花に意味をつけただけのもの。大事なのは

美しさと凛とした花。それだけだから」

クレア「何だよー、驚かせやがって」

コンコン

ノール「そろそろ集合時間。言い出しっぺのフラットが

遅れたら本末転倒だ。早く来い」

フラット「あっ、分かった!スラリアも一緒に!」

クレア「ほら、お前のピアノ聞いてみたいしよ!」

スラリア「…いいよ!行く!」


ペーター「お、始まったみたいだ」

ランケール「スラリア、変わったようだ。前よりも

明るい音色を...流石だ、フラット君」

ペーター「それで...フラット君のことだが...」

ランケール「あぁ、まぁ安心していいだろう。

昔のアイツのことは、四大やゼウスのような

桁違いに高い神力を持つ者以外は忘れているからね。

アイツ自身も忘れているみたいだし」

ペーター「そこが、引っかかっているんだ。

どうして俺やナックラーが覚えているのか。まさか

呪術が解けそうなんじゃ」

ランケール「あれはそう簡単に解けるものじゃない。

それに解けるとしたらそれは対象者の死を意味する。

つまり、フラットが死なない限り解けない」

ペーター「ならいいが...アイツの過去は、

掘り返されてはいけないからな」

フラット「あ、ペーターさん、練習終わりました。

聞いてましたか?」

ペーター「あ、あぁ。聞いてた。いい感じだったよ」

ノール「よし、ペーターがそう言うなら問題ない」

クレア「久々にギターを弾いたが、案外腕は

なまらないもんだな」

スラリア「クレア、所々ミスしてたよ。

誤魔化してたけど」

ナックル「大丈夫か?本番一週間切ったぞ」

クレア「問題ない!3日あればなんとかなる!」

ランケール「まぁ、休憩ですよね?今日は

色々あって疲れたでしょう?休んでも

いいと思いますが」

スラリア「私はテラスでも。少し風にあたりたい。

フラットも一緒にどう?クレアも」

クレア「へ⁉︎俺もか⁈」

スラリア「そう、ダメ?」

クレア「いいに決まってる!」

フラット「僕も風にあたりたいしいいよ。

一緒に行こっか」


スラリア「ふぅ〜...気持ちいい。月の風って、

優しいでしょ?」

フラット「たしかに、地球は夏だけど涼しくて

気持ちいい。寝転がりたい」

クレア「地球のと違って変な感じだ。でも、

気持ちいいのはたしかだ。ていうか、気づけば

もう夕方か。時が過ぎるのはあっという間だな」

フラット「それはそうだね。でも空模様はあくまで

地球のものだけどね。映像よりかやっぱり

自然の空の方が落ち着く」

スラリア「自然の空...か。見てみたいな。

本物の青空を」

フラット「じゃあ来る?デ・ロワーに!

今までサポーターなんていなかったからってのも

あるけど、スラリアとも折角友達になれたからさ!」

スラリア「...私もフラットのこと...ううん、

皆のこと友達だって思ってるよ!」

クレア「...いい顔するようになったな」

スラリア「あれ、本当だ。笑ってる」

フラット「それじゃ、皆で遊ぼっか!ナックルさんが

大量のゲーム機持ってきてるから、きっと楽しいよ!」

スラリア「じゃあ...行く!」

クレア「じゃあすっとこどっこいの荷物から

何台か大広間に持っていこう!」


クレア「よっしゃ、起動完了!だが...」

フラット「同じのばっか...はぁ、ゲームオタクだったの

すっかり忘れてた...」

スラリア「凄い!こんなに縮小化可能大型ゲーム機を

持ってるなんて...地球にしかないって言ってたから

結構高いものだと思ってたけど...」

フラット「あぁ、高いよ。一台50万オズ」

スラリア「高い...」

フラット「こんなに買うと、しかも同じものって

考えると無駄遣い以外言葉はないけど」

ノール「?何してる?」

ナックル「あっ、俺のコレクション!

何勝手に起動してんだ⁈」

フラット「機械は使われるためにあるんだよ。

使われないなんて可哀想だよ」

クレア「ど正論だな。さぁ、なんて言い返す?」

ナックル「グゥ...」

ノール「グゥの音を出した。これはフラットの勝訴」

フラット「こんなので裁判にしないでよ。

ほら、ナックルさんが反論しないからやっていいよ。

もし長い間使われてなくて壊れてたら

ナックルさんのせいってことでよろしく」

全員「はーい!」

ナックル「ま、待て!せめて手袋つけてくれ!

指紋だらけになるのはー」

フラット「分かった。手袋ね。ある?」

スラリア「ゴム手袋なら...ていうかいちいち

口うるさいなぁ」

クレア「オタクってそういうもんだ」

ノール「なら遊ばなきゃいいだけ。それより

いい遊び道具持ってる。一緒に遊ぼう」

スラリア「何?」

ノール「面白い遊びだ。教えてやる」

フラット「神業勝負なんて言わないでよ」

ノール「ない。するわけない」

クレア「どうせバルシアとキルユウが教えた遊びだろ?

まぁ面白そうだからいいけど」

ナックル「よ、良かった...」

フラット「...まぁいっか。じゃ、片付けといてね」

ナックル「はぁ⁉︎何で俺が⁈」

フラット「だって触られたくないんでしょ?だったら

自分で片付けたらいいじゃん」

ナックル「...後で片付けとく。今は...」

フラット「いいよ!皆で遊ぼっ!」

ノール「あっとその前に!」

クレア「忙しくてアレやってなかったな!」

フラット「そういえば...そうだね!今やっちゃおう!」

スラリア「えっ、えっ?」

フラット「それじゃ、スラリア中心に!いくよ!

カメラ電源よし、タイマー10秒!OK!

掛け声、勝利のVサインー」

全員「決めっ!」


フラット「あれ...ここは?さっきまでたしかに...」

獅子獣人「...」

フラット「お前は...⁉︎」

獅子獣人「まさかと思いますけど、ナックルを

殺さないという決断をくだしたなんて

言わないですよね?」

フラット「だったら何?悪いの?」

獅子獣人「どうやら、まだあなたは立場が

分かっていないようですね」

獅子獣人はゆっくりとフラットに近づく

フラット「な...何を...」

獅子獣人「こうするまでです!」

獅子獣人はフラットの首を絞める

フラット「ぐっ...!」

獅子獣人「お前に拒否権などない。与えられた時点で

それは死ですよ」

フラット「くっ...このっ...!」

獅子獣人「まぁそれでも...期限は与えましょう。

2か月です。それまでにナックルを...殺すことです」

フラットは意識を失う寸前に獅子獣人がそう告げたのを

耳にした


フラット「⁉︎ここは...屋敷?」

ノール「良かった、目、覚めた」

ナックル「写真撮り終えていきなり倒れたから

驚いたぜ!慣れない空間で戦ったからか?」

フラット「いや...何でもない!疲れただけだよ」

スラリア「まぁ、余命も見えないから問題ないよ!

大丈夫。それにフラットがそんなあっけなく

死ぬわけないでしょ?」

フラット「...そうだね」

ペーター「あ、それでスラリアの入隊手続きを

済ませておいたよ」

スラリア「本当ですか⁉︎いよいよデビューか...

あぁ、夢みたい」

フラット「ごめん、ちょっと外の風浴びてもいい?

少し1人になりたい」

スラリア「えっ...分かった」

ナックル「俺、付き添うぜ?」

フラット「いいよ。僕、少し疲れちゃったから」

ナックル「そうか?」

フラット「10分でもしたら戻るよ」

ノール「あぁ、待ってる」


フラット「ふぅ...僕...どうすればいいんだろう...」

センリ「やはり会ったか。あの男に」

フラット「センリさん⁉︎」

センリ「フラット。困った時は俺達を頼れ。

ナックルには言えないだろう。そんなこと」

センリはあるネックレスをフラットに渡す

フラット「...どうして知ってるの?」

センリ「...さっきやつの力の気配がした。お前を

連れてったんだろ。一応忠告しとく。

あの男の言うことは聞くなよ。それだけだ」

フラット「アイツの正体、知ってるの?」

センリ「...知らない。ただ、やつは敵だ。

実際、この脅威大量発生はあの男のせいだ。

そのおかげで魔族の攻撃は減ったが、被害の数は

その何十倍にも上がった。魔族より厄介なものを

あの男はこの世界で起こしている」

フラット「つまり...アイツが消えればー」

センリ「脅威による異変は、自然のものだけになる。

あの男を倒せれば、な。フラット、負けるな、

ナックルを殺す必要はない」

センリはフラットの肩に優しく手を置く

フラット「ありがとう、センリさん。あの...しばらく

そばにいてもいいですか?なんか...センリさんの側に

いると落ち着くっていうか...」

センリ「...君が落ち着くって言うなら、

いくらでも側にいてやろう」

フラット「ありがとう...ございます」


フラットは思い出すのをやめる

フラット「なんか色々あったなぁ」

スラリア「?何か言った?」

フラット「あ、いや?そういえば、スラリアが

最初に写った写真、何も書いてなかったね」

スラリア「あ、フラットが倒れて書けなかったっけ。

あ〜あ、あの時書けてたらなぁ」

フラット「なんて書くつもりだったの?」

スラリア「ありがとうって、書くつもりだったよ」

フラット「ハハハハ、本当に一言だったね」

スラリア「悪い?まぁ手伝ってよ!」

フラット「分かってるって、今やるよ!」

スラリア(ありがとう、フラット。あの日のこと、

忘れたりしないよ)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る