第4話 正義に生きる

フラット「木材の発注も何とかなったし…次は

照明の方でも覗いてみるかな」

エド「あっ、フラット!さっきトリアっていう人が

クレアを探してたっすよ」

フラット「もう会ったよ。それで、照明の準備は

大丈夫そう?」

エド「もちろんっすよ!俺にかかれば、

チョチョイのチョイっすよ!」

フラット「本当に頼りになるよ。ありがとう」

ヒョウ獣人のエド。数学、科学はお手のものの理系脳。

そういえば、ノールと出会った時で完全に人のことが

大好きになったわけじゃなかったな…


1節 友達の意味


フラット「ん〜…久々の大学だ!」

ナックル「そうだな!イベントやら遭難で

大変だったな!」

フラット「ナックルさん…いつから隣に?」

ナックル「さっきからだぜ?」

フラット「…」


昨日ー

獅子獣人「ご理解いただけましたか?」

フラット「本当に…僕とこの体は別のもの…」

獅子獣人「はい、それでやはりナックルは行動を

起こしました。今から立体映像でその時の映像を

見せます。音声付きで」

獅子獣人は2回手を叩くと、立体映像が映し出された。

ナックル「あぁ、フラットらしくない。まさか、

計画が失敗したとでも言うんじゃないだろうな?」

?「…もしかしたら、やつが何か仕組んだのかもな。

例えば、こっちのフラットを殺して異世界線の彼の魂を

入れた、とかな」

ナックル「なるほどな。だが、この計画が

失敗していたら人工アリジゴクは根本的に

見直す必要が出てくるぞ」

?「安心しろ。私の計算にミスはない」

ナックル「ならいいがな」

獅子獣人「ここまでです。どうですか?」

フラット「これ…いつの?」

獅子獣人「あなたがクレアとかいう風神の家で

寝ていた間のことです」

フラット「…」

獅子獣人「これで答えは決まりましたか?

流石にNOとは言えないですよね?」

フラット「だからと言って、YESと言うわけにも

いかない!少し時間を…ちょうだい。

すぐには言えないから」

獅子獣人「まぁ、そうですよね。ではお戻りください」

フラット「ナックルさん…」

と呟き、フラットはまた現実世界に戻る。

獅子獣人「…ミカエルの血はなくなってしまうが…

まぁ、問題ないでしょう」

茶髪男「おいおい、いいのかよ?俺が出れば

一瞬で終わるぜ?」

獅子獣人「あなたですか…世界渡の力はたしかに

渡しましたが、そんなに使われても困ります。

それで、なんの用でしょうか?」

茶髪男「ん?ただ単に暇なんだよ。あの世界は

支配しちまったし…あと、“あの俺”じゃ殺しなんか

絶対に無理だぜ」

獅子獣人「えぇ、承知の上です。本来の作戦であれば

あのフラット様の力を利用してナックルを

誘き出す作戦でしたが…変えましょう。

ナックルがなんらかの抵抗をした場合、あなたが

抹消してください。この世界にいたという存在ごと」

茶髪男「了解。まっ、その報告が来ることは

確定してるがな」

獅子獣人「フフッ…ナックル。これでお前に逃げ場は

なくなった。せいぜい、残された人生を楽しむがいい」


クレア「おい、大丈夫か?」

フラット「あれ…ここって医務室…あ、眠くなって…」

ナックル「お、良かった。起きたか」

フラット「あっ…」


フラット「ごめん、僕、今日教授に聞きたいことが

あるから先に行ってるね!」

ナックル「あ、おい…?どうしたんだ、アイツ…

まさか!…いやいや、まさかな…」


フラット「ふぅ〜…無理矢理すぎたかな?」

ヒナ「フラット!今日は1人だっけ?」

フラット「えっ…あ、いや…」

(待て…今日は1人なんだとか言って

ナックルさんのことを忘れてるフリをすれば!)

フラット「うん、1人だよ!」

ヒナ「そっか!じゃあ、タクマもそろそろ来るし、

また一緒に座ろ!」

フラット「うん!」

タクマ「お、いたいた。ん?今日は1人か。

じゃ、隣失礼するぞ」

フラット「うん、どうぞ」

バジー「あ、ここにいらしてましたか。今日から

フラット様のお側で講義の時間は

ご一緒させていただきますので」

フラット「あ、そうだったっけ」

タクマ「それより、新しくファイターが入っただろ?

それにイベントで起きた事故!聞きたいことが

山積みだ!」

ヒナ「まず先に講義でしょ?でも、終わったら

お昼にあのレストラン行こうよ!」

フラット「あ、いいね!」

ナックル「ふぅ…あれ、フラット…?」

バジー「あ、ナックル様」

タクマ「…ん?フラット、ナックル来てるじゃんか」

ヒナ「え?あ、本当だ」

フラット「あれ、あっ、忘れてた」

タクマ「おいおい」

ヒナ「忘れん坊さんなんだから」

教授「おう、ざわつくな。講義、始めるぞ〜」


昼ー

タクマ「ふぃ〜、肩凝った〜」

ヒナ「よく教授の目の前の席で寝れるよね…」

フラット「それで、起こされた時の第一声がー」


タクマ「野球部宇宙一〜!」


フラット「は…アッハハハハ!やっばい、お腹いたい!」

ヒナ「皆、笑ってたもんね。教授までも」

タクマ「う、うるせぇ。そんなことより、昼飯!」

フラット「そうだね…?あれ、ノール、クレア!」

クレア「お?」

ノール「ん、お前もここで昼か?」

フラット「2人も⁈偶然だね!」

クレア「エドの誘いだ。なんか、応援してくれってさ」

フラット「応援?」

ノール「大学のサッカー大会。エドがキーパーで

出るんだって」

フラット「えっ…本当⁉︎じゃあ、一緒に食べてこうよ!

2人も、大丈夫?」

タクマ「新ファイターと食事できるなんて、

超ラッキー!」

ヒナ「私も、ノールさんの大人っぽいコーデ、

学びたいからね!」

フラット「オッケ!じゃあ皆で食べよ!」


エド「遅いっすね〜…」

ノール「あ、ここだったか…?」

エド「やっと来たっす。約束の時間、すぎてるっすよ」

ノール「いや…私達の席ってー」

バジー「あら?私の席…ここのはず…」

ヒナ「バジー教授⁉︎えっ…ご一緒ですか?」

バジー「い、いえ…でもたしかに、Eー14番…」

ノール「だよな…エド、私達の席はFー14。ここの隣」

エド「えっ…あ、すみませんっす!」

バジー「いえ、大丈夫ですよ。知り合いで

良かったですわね」

フラット「で…僕達は…」

タクマ「Fー15」

ヒナ「じゃあ、皆で食べられるじゃん!」

フラット「うん!それより…エド、ナックルさんは

呼ばなかったの?」

エド「なんか用があるって断られたっす」

フラット「…そっか」

タクマ「それより…その犬は?」

クレア「?デ・ロワーのペットだ!可愛いだろ?」

ヒナ「見たことない犬種だね…羽みたいなのついてる…」

フラット「あぁ、異世界線に存在する犬種だよ。

多分、こっちにはいなかったモノだと思うよ」

ヒナ「へぇ〜…きみ、飛べるの?」

スピカ「ワン!」

タクマ「お、飛べるのか!」

フラット「えっ…?」

タクマ「俺、動物の言葉ちょっとは分かるからよ」

ヒナ「凄いよね、まぁ、当たり前か。なにせタクマはー」

タクマ「さっ、折角来たわけだし、早く料理

持ってこよう!なくなっちまうぞ!」

クレア「そうだな…スピカ、待っててくれ」

スピカ「クゥン…」

タクマ「一緒に行きてぇみたいだな…じゃ、

俺と来るか?ペット連れ込みオッケーなら、

なんかあるだろ、犬用の肉とかな」

ヒナ「あ、私も選びたい!一緒に行ってもいい?」

と、タクマに近づいていくヒナ。そしてタクマの耳元でー

ヒナ「さっきはごめんね」

と囁いた。

タクマ「別に良い。気にしてねぇしな」

ヒナ「な、ならいいんだ」

ノール「…それより、あと2人…遅いな…」

クレア「たしかに…道に迷ったのか?ったく、

しょうがねぇやつらだな。神業・風耳」

ノール「どう?」

クレア「…裏の入り口にいるってさ。アイツら…

正面入り口と裏入り口、間違ってるだろ」

ノール「そういうことか…私、予備に行ってる。

先に取り行ってて構わないから」

フラット「うん、じゃあ行ってようか」


フラット「うん…このぐらいかな…って、タクマ⁉︎

何その黒いご飯⁉︎」

タクマ「?知らないのか?ガスペラス星の郷土料理だ!

というより…主食?」

フラット「ガスペラス星って…あぁ、海の惑星!」

タクマ「そうそう!すごく旨いんだぞ!」

フラット「そうなんだ…でも、ご飯取っちゃったし…

また後でいいかな」

ヒナ「あ、いたいた!」

フラット「ヒナちゃんは相変わらず、野菜ばっかだね」

ヒナ「種族がらね。私の星じゃ肉なんてなかったし」

フラット「ふぅん…あれ…スピカは?」

タクマ「あぁ、先に料理よそって席で食ってるぞ。

犬もやっぱり可愛いよな」

フラット「そうだね。じゃ、席戻ろっか」


ノール「もう、こっちは裏入り口だってば。

正面はあっち!間違えないでよ。それにキルユウまで」

キルユウ「いや、俺は無理矢理こっちに

連れてこられたんだ!」

バルシア「兄貴!俺を盾にするのか⁉︎姉御、

俺が無理矢理連れてこられたんです!」

ノール「こういう時は…どちらにも罰を与えるのが楽か」


ドカーン!

と辺りに大きな爆発音が響き渡った。

フラット「?」

クレア「どうせノールだろ?それより、

エド。サッカー大会だっけか」

エド「はいっす!スカウトがかかってるっすから、

負けるわけにはいかないっすよ!」

タクマ「スカウト…か。俳優が主な俺には、ない話だな」

ヒナ「何で野球部に入ろうと思ったの?」

タクマ「何でって…そりゃ…特に理由はねぇ。

ただ、野球が好きだからじゃダメなのか?」

フラット「エド、ファイトだよ!」

エド「勿論っす!」

「ギシャァァァァ!」

フラット「…えっ⁈」

クレア「おい、外!」

タクマ「な、何だありゃ⁉︎」

ヒナ「さ、魚?」

フラット「見た目通りの水型だね!急行するよ!」

エド「は、はいっす!」

フラット「エドはダメ!明日から大会なんだから

怪我したらアウトだよ!」

エド「俺の怪我はすぐにー」

フラット「バレたらバレたでもアウト!」

エド「そ、そうっすね…」

フラット「エドは避難誘導をお願い!ファイター総員、

緊急出動!」

全員「了解!」


異世界モンスター「ギャヒレップ!」

フラット「随分暴れてるね…ピチピチ跳ねられると

街が壊れるから、なるべく封じ込めた方がいいか!」

ヒナ「あ、封じ込めるならお任せください!

第一舞踏『炎』術・『フレアタップキック』!」

炎に異世界モンスターが閉じ込められ、

その中で自由に舞うヒナに蹴られる。

フラット「うっわ…痛そう…」

クレア「同情なんかいらねぇだろ!倒すんだろ!

第一突風『炎』術・『四方爆破之矢』!」

フラット「…って、水型に何で炎型の業使ってんの⁈」

ノール「今更か?全く、説教してる最中に!

第一破壊『闇之』術・『闇夜行特急列車』!」

異世界モンスター「ピピギュゥゥゥ⁉︎」

フラット「まっ、動きは制限されてるもんね!なら…

第二審判『光』術・『シャイニングカット』!」

異世界モンスター「ピグ…ピガァァァ!」

ヒナ「えっ、私⁉︎」

「第一舞台『炎』術・『火炎涙想劇』!」

異世界モンスター「グルッ⁉︎」

フラット「えっ…誰⁉︎」

謎のファイター「集中だ!まだ来るぞ!」

フラット「うおっと!ちょ、僕達じゃ型が不利だって!」

クレア「だったら、神業をうまく利用して…!

第二突風『零』術・『水切之旋風』!」

異世界モンスター「ピジュゥ⁉︎」

ノール「…あんまり使いたくないけど!

第一暗殺『闇之』術・『幾多刃乱舞』!」

ノールの神器がまるで生きているかのように

決まりのない動きをしながら一直線に

異世界モンスターの方へ飛び交っていく。

異世界モンスター「バゴルゥゥゥ…」

フラット「暗殺って…あぁ、マフィアの記憶から…」

ノール「はぁ…炎型使えないの、結構しんどい」

クレア「それな。まっ、これで一件落着だろ?」

ヒナ「あの、さっきはーってあれ?

あのファイターさんは?」

フラット「…たしかに…いない。どこ行ったんだ?」

タクマ「ん?誰か探してんのか?」

フラット「あれ、タクマ⁉︎いつからそこに⁈」

タクマ「避難誘導終わったから報告しに来たんだよ」

ヒナ「あのね!タクマの声にそっくりなファイターが

いたんだ!タクマ知らない?」

タクマ「はぁ?何じゃそりゃ。俺は知らねぇぞ?

それより討伐が終わったなら早く食お?」

フラット「それもそうだね」


昼下がりー

フラット「ふぅ…満足〜」

タクマ「いやぁ〜、まさかこんな感じで新ファイターに

会えるなんてビックリだ!」

ヒナ「ねっ!こんな偶然ってあるんだね!」

ピロロロ!ピロロロ!

ヒナ「あっ、ちょっとスタッフさんから!」

タクマ「…最近、俺の方に依頼の話とか

来なくなったなぁ」

フラット「まぁ…大変じゃなくていいんじゃない?」

タクマ「大変ぐらいのが俺は丁度いいんだ」

フラット「…ヒナちゃんはアイドルでもあるし、

番組の出演枠が広いんじゃ?」

タクマ「あ〜…そういうことか。俳優一本じゃ

バラエティとか難しいか」

フラット「ていうかタクマってノリが悪いっていうか

面白くないんだよね…そうだ!面白いっていえば…

ナックルさん…?」

タクマ「あぁ、ナックラーか…そういやアイツ、

四年ぐらい前にはテレビに出てたのになぁ」

フラット「えっ⁉︎」

タクマ「戦闘専門家…みたいな感じのな。時々、

冗談とか言って真面目な雰囲気を和ませてたしな」

フラット「あ、ナックルさんなら…しそうだね」

タクマ「?お前、ナックラーとケンカでもしたのか?

ナックルの話になったら急にトーン下がってんぞ」

フラット「そう?気にしすぎじゃない?」

タクマ「…まっ、気にしねぇけど。いいのか?

帰ったら気まずい雰囲気。耐えられるのか?」

フラット「…ヤバっ」

タクマ「そうなるだろうなぁとは思った。

耐えられそうにねぇならうちに来い。ちょっとは

おもてなしもできる」

フラット「…ありがとう」

タクマ「じゃ、とりあえず俺は帰る。いつでも来いよ。

今日は母さんも父さんも出張でいないし」

フラット「あ、じゃあお泊まりオッケー?」

タクマ「もち!」

フラット「じゃあ…今日はもう行っていい?ちょっと…

色々あってね」

タクマ「そういうのは聞かない主義なんだ。それより、

俺の家はあっちだ。ついてこーい」

ヒナ「あっ!ちょっと置いてかないでよ!」

フラット「あ、忘れてた」

ヒナ「と言っても、私はここでバイバイだけどね。

銀座に戻らないと」

タクマ「オフィスに戻るのか?やっぱ仕事?」

ヒナ「ううん、さっき言ったでしょ?タクマの声に似た

ファイターと戦ったって。あの人、ファイターリストに

載ってなかったからファイター法の反してるってことで

調査頼まれちゃった」

フラット「そうだったんだ…あれ?

さっきスタッフからの電話って…」

ヒナ「あぁ、スタッフさんはあってるよ。ただ、

その連絡が終わった直後にメールきて…ほら」

タクマ「…本当だ。にしても誰だろうな。

そのファイター」

フラット「うーん…分からない」

ヒナ「じゃ…あっと!タクマ、ダバ君と一緒に

宇宙のあれこれ探検隊の出演、決まったよ」

タクマ「…は?」

フラット「えっ、有名番組じゃん!」

タクマ「マジ⁉︎えっ、誰のオファー⁉︎」

ヒナ「それは勿論、司会のあの人に

決まってるでしょ?」

タクマ「いよっし!出演枠ゲット!」

フラット「良かったじゃん…でも…何で?」

ヒナ「ツッコミ?」

フラット「あ〜、あり得る」

ヒナ「タクマとダバ君のコンビは最高だもん!」

フラット「そうそう!テレビでよく見た!

でも、最近ダバンゴ見なかったね。なんかあったの?」

タクマ「一年間企画やってたんだ。もうそろそろ

テレビでやるから楽しみにしてろ」

ヒナ「ノー編集映像で見たけど、それでも

面白かったから!」

フラット「じゃあ、放送日教えてよ、録画するから」

タクマ「ん〜…データごと渡すってのは?」

ヒナ「流石に怒られるって。社長が知ったら

首切られるよ?」

タクマ「だろうな…何でこうもデ・ロワーと

仲が悪いのか」

ヒナ「方向性の違いだって」

フラット「何だかバンドの解散理由みたい」

タクマ「たしかにな」

ピロン

ヒナ「あっ、催促のメール!ごめん、私行くね!

バイバイ!」

フラット「うん!それじゃ、連れてって」

タクマ「オッケ。こっちだ〜」


一歩その頃ー

ナックル「…あぁ、俺だ」

?「どうした?お前から連絡を寄越すとは珍しいな」

ナックル「いや何、気になることがあってな。

まさかと思うが、フラット、俺達のこと

気づいた可能性がある」

?「…やっと勘づいたか。あの男はフラットを

媒介にして探りをいれているんだろう」

ナックル「チッ、なるほどな。“あんな過去“を持つ

フラットの体なら利用できるって策略か」

?「そういうことだ。気をつけろよ、お前が消えたら

全てが水の泡どころか、地球の滅亡に繋がるんだぞ」

ナックル「心配無用だ。俺が消えてもアイツらがいれば

どうにでもなる。命懸けでやんねぇとマジで

計画が実行されちまう」

?「そうだな。しかし勘のいい男だ…?おいナックル。

なぜ管理者に疑われるんだ?やつなら行動の全てを

管理できてるはずだ」

ナックル「それには答えん。例えお前でもな」

?「分かった。詮索は控えておく。それと…

どんな手を使ってでもフラットは手の内にしておけ。

このままだと管理者に”あの過去“をバラされる」

ナックル「そうなったらマズイな。分かった、

手段は選ばない。やつより面白いシナリオを

書こうとするか」


タクマ「?あれ、母さん…まだいたのか」

フラット「そういえば、タクマって親と一緒なんだ」

タクマ「あぁ、母さんは肺が弱くて薬が必要だから、

誰かが一緒にいなきゃいけねぇんだ。父さんは

仕事でほぼ地球外だから俺がな」

フラット「えっ、だったら宇宙のあれこれ探検隊なんて

出られないんじゃ…」

タクマ「大丈夫!こういう時に頼れる人が

ちゃんといるしな!」

フラット「あ、そうなんだ。でもさ、タクマの家って

外装綺麗だね。それに…プール付きって」

タクマ「あ…もうそこは使ってない。

それより早く入れ。外にいても仕方ないだろ」

フラット「それもそっか」


タクマ「ただいま〜、母さん、どこだ〜?」

母親「あ、お帰りなさい、タクマ。お友達?」

タクマ「前も話しただろ?大学で酷いこと

言われてたやつがいるって」

母親「あぁ、指揮者の…いらっしゃい、タクマが

お世話になっております」

フラット「えっ、お世話にって…」

タクマ「今日、おかしいと思わなかったのか?

周りの視線、普通だっただろ?」

フラット「うーん…そういえば…」

タクマ「実はな?お前がイベントでいなかった時に

言っといたんだ、フラットを信じてくれるようにな」

フラット「ふぇ⁉︎よ、よく聞いてくれたね」

タクマ「半ば強引だけどな。フラットがいるから

ファイターが動けるんだって叫んだら1発だった!」

フラット「…よく通ったね?」

タクマ「パッションこそ正義!ってな」

母親「この子、借りがある子にはそうやって

倍で返すの。何に影響されたの?」

タクマ「か、母さん!余計なこと言うな!」

フラット「?僕、何かした?」

タクマ「ほら、俺と初対面でちゃんと話してくれたろ?

大体のやつは遠慮して敬語使ったり、遠ざかるのに、

お前は普通に接してくれた。それが嬉しかっただけだ」

フラット「変わった芸能人だね」

タクマ「やかましい!それにしても、母さん今日から

出張だろ?こんな時間に家にいて大丈夫なのか?」

母親「あのね、今日が何日か分かってる?」

クレア「7月2日…あ!」

母親「あなたを待ってたの!早く来なさい!

ごめんなさいね、来てもらって早々…ちょっとタクマは

行く場所があるから」

タクマ「すまん!リビングにゲームあるから遊んでて

問題ないからな!」

フラット「わ、分かった。行ってらっしゃい」

タクマ「なるべく早く帰るようにするからな!

待っててくれ!」

フラット「う、うん…」


母親「全く、早く帰れるの?」

タクマ「似てるんだよ、性格がな」

母親「そう?聞いてたよりマジメそうだけど?」

タクマ「案外子供だ。それに悩み抱えてる時なんか、

本当に兄ちゃんそっくりだ」

母親「そう…」

タクマ「そ、それより早く花飾れって!客人を

1人にしておくわけにもいかんだろ!」


フラット「あちゃ〜…ボロ負け…」


タクマ「…まっ、楽しんでるなら問題はないんだが」

母親「早くシートベルト締めなさい」

タクマ「あ、あぁ。っと」


フラット「あ〜、また負けた…あ、

ランク下がっちゃった」

タクマ「ちょと待てちょと待て〜!今何つった⁉︎」

フラット「あ、お帰りタクマ」

タクマ「そうじゃなくて今何つった⁉︎」

フラット「べ、別に何とも?」

タクマ「この画面見ても言えるか?」

フラット「…え〜っと…ランク下げました」

タクマ「お前なぁ…俺がエキスパートまで行ったのに

どれだけの日数かかったと思ってる⁈」

母親「いいじゃないの、ランク下がっても

上がる目の前でしょ?」

タクマ「あのなぁ…カンストしてたんだぞ?」

母親「またカンストするのも楽しいでしょ?」

タクマ「母さんはポジティブだよな…」

母親「まっ、もう駅に行くから。仲良くね」

タクマ「もちろん!とにかくフラットは

ネット対戦系は禁止な!普通にマルチ対戦にするぞ」

フラット「分かった!」


母親「…たしかに、あの子そっくりね」


2節 思い合う心


フラット「よし、また勝ち!」

タクマ「な、何でカンストしてる俺がフラットに?」

フラット「タクマのやり方はよく動画サイトで

見るもん。対処法は分かってるよ」

タクマ「こ、この方法ならどんなやつにも刺さるのに…」

フラット「ざんね〜ん、たしかに通るけど

背後をとるのは僕の方が一歩上手だったね」

タクマ「チェ…?おいフラット、メール来てんぞ?」

フラット「えっ?あぁ!デ・ロワーからだ⁉︎

何だろ…」

[明日からエド君が不在のため、代わりに仕事を

手伝ってもらいたい。ペーターより]

フラット「はぁ?何で僕がー」

タクマ「隊長だからだろ?」

フラット「そういうものなのかな?ごめん、

ちょっと行かなくちゃ!すぐにでも終わらせるから」

タクマ「別にいいっての、慌ててやってミスしたら

それこそマズイだろ」

フラット「うーん…じゃあなるたけ早くするからね」

タクマ「おう、気をつけてけよ」


ペーター「いや、もう本当にごめんね。ノールにも

クレアにも声をかけたのに誰も来ないって…」

フラット「まだ奨励会してんのかな?」

ペーター「というか、ナックラーは仕事が山ほど

残ってんのに来てないし…」

フラット「えっ…?」

ペーター「何か知らないかい?」

フラット「い、いや…何も…」

ペーター「うぅん…そうか…まぁ、

来てくれてありがとう。2人で片付けようか」

フラット「そうですね…あれ?」

ペーター「どうかしたのかい?」

フラット「あの、隊長が誰とかって一般人には

伝わってないはずですよね?」

ペーター「あ、あぁ。そうだよ?」

フラット「ですよね…」

(何でタクマ…僕が隊長って知ってたんだ?)

コンコン

ノール「ごめん、メール気付かなかった。

シャワー中で」

ペーター「あ、それはどうも失礼かけたね」

ノール「いいよ、それより3人いれば

エド1人分の仕事もすぐに終わるはず」

ペーター「そうでないと困るよ」

フラット「そうだよ」

ノール「…あれこれ言ってる前に手を動かせって」

フラット「相変わらず手厳しいね、分かってる」

ペーター「俺は話しながらでも仕事はできるしね」

ノール「ふぅ…にしても、バカ虎やエドがいないだけで

この部屋がこんなに静かになるのか」

ペーター「騒がしいのがいないからね。あの2人の

ありがたみが分かるよ」

フラット「そうですねー…」


日没ー

フラット「ふぅ、終わり〜!」

ノール「いい感じ。これでいい?」

ペーター「あぁ、ナックラーの分の仕事は俺が

片付けておくから」

ノール「そう。じゃあー」

と、ノールが席から立つと、カサカサという

音が響いた。

フラット「えっ…カサカサって…」

ノール「ご、ゴキ…⁉︎ゴキ!」

フラット「うわっ、バルサン、バルサン焚いて!」

ペーター「バカ、先に窓開けてから!」


数分後ー

フラット「さ、3匹もいたなんて…」

ノール「帰る前に掃除だ掃除。折角の有名企業に

ゴキがいるなんて…」

ペーター「そういえば、人が減ってから掃除とかしてる

暇がなかったなぁ…」

フラット「…掃除してから帰ろっか」

ノール「流石に、ゴキが出てくるオフィスでこのまま

働くのはごめんだし賛成」

ペーター「手間かけてごめんね。終わったらご飯でも

奢るよ。それより、本当にナックラーのやつ、

何やってんだか」

フラット「さ、さぁ…」

ノール「駄弁ってないでやってくれ。本当にゴキだけは

勘弁なんだ」

3人が掃除を始めようとすると、オフィスの扉が開いた

クレア「よう、昼に倒した魚、捌けたから

持ってきたぞ…?すっとこどっこいはいないのか?」

ノール「す、すっとこどっこい…?バカ虎のこと?」

クレア「そうそう、いないのか?」

ペーター「そうなんだ。どこで油売ってんのやら」

フラット「…」

クレア「そうだ!法神さん、これ渡しといてくれよ!」

フラット「ぼ、僕⁈い、いや今日は帰らないし!」

クレア「?帰んねぇって何かあったのか?」

フラット「友達の家に寝泊まりするだけだよ。

家の鍵渡すから、寮に届けといて」

クレア「お、いいのか?折角入っていいって許可を

貰えたわけだし…弱みでも」

フラット「僕が許容したのはその魚を

寮に届けるためだからね?」

クレア「分かってるっての、ただのジョークさ」

フラット「ていうより、メール届いてない?」

クレア「…あっ」

ノール「サボる気だったの?」

ペーター「2人とも、今日は帰っていいよ。クレア、

1人で掃除してくれ」

クレア「うぅ…何で来ちまったかな?」

ノール「特に何も考えないでサボった証拠だな」

フラット「そうだね…」

ガンっ!

フラット「ガン…?あっ!」

フラットは少し年季の入った金属製の引き出しを

蹴飛ばした。

ノール「あっ…片付けしてるとこに散らかさないで。

もう…?何だこの写真?」

ペーター「写真…?見せてくれるか?」

ノール「あ、うん」

ペーター「…これは⁉︎」

フラット「あ、僕が入る前ですか?ペーターさんと

ナックルさんに…この2人は?」

ペーター「…この緑毛の虎人はグリテール、

半獣人のやつはバジョーだ」

フラット「あっ…」

ペーター「キルユウとバルシアから聞いてただろ?

この2人の名前」

フラット「…今はいないって…」

ペーター「あぁ、この2人がイベント停止の

きっかけになった」

ノール「…私は知ってる」

クレア「俺は知らんぞ」

フラット「ぼ、僕も詳しくは」

ペーター「話しておくべきか…実際、これから

ありえなくもない話だから。これはエド君の入る、

四年前にバグ星で開かれたイベントからの

帰りの宇宙船でのことだったー」


グリテール「はぁ〜、まさかヴァイスの俺達が

ファイターになるとはな」

バジョー「ビックリしたな、デ・ロワーに入れるとは」

ナックル「これからは同じ職場で働く仲間だ!

よろしくな!」

ペーター「一緒に楽しもうじゃないか」

ナックル「…“アイツ”にもこの光景を

見せてやりたかったな」

ペーター「?アイツ?」

ナックル「あ、いや何でもねぇ」

グリテール「それより、宇宙に出たのも

何年ぶりだろうな…」

バジョー「母親を追いかけてずっとバグ星に

いたって言ってたもんな」

ナックル「…母さんに会えるように願っとけ。

これから色んな異星に行くことにもなるだろうしな」

ペーター「旅費はデ・ロワーが負担するから心配は

いらない、ファイターとして働いてくれれば、ね」

グリテール「はい!」

バジョー「どんな事件でもかかってこい!」

ナックル「いいスタートが切れそうだな、コイツら!」

グリテール「ドンと任せてもらって大丈夫!

俺達にかかれば一瞬でかたがつくってんだ!」

バジョー「言いすぎ!まぁ…任せてください!」

ペーター「アハハ、期待してるよ」

宇宙船は平和に包まれ、このまま地球まで

何事もなく到着すると誰もが思っていた、がー

緊急アナウンス「第二倉庫車両、異常確認!」

ナックル「…あ⁈」

ペーター「な、何だ⁈」

グリテール「この信号って…!」

バジョー「緊急アナウンス!第二倉庫車両で

何か起こったみたい!」

緊急アナウンス「第二倉庫車両、大破!…

第二倉庫車両、切り離されました」

ナックル「ば、爆発事故か?」

アナウンス「皆様、この宇宙船はただいまから

リミッターを解除して急発進します!

衝撃に備えてください!」

どこか慌ただしい声のアナウンスが流れた。

ナックル「な、何が起こってんだ⁉︎」

ペーター「倉庫車両の方に向かう!」

全員「了解!」


第七客席車両ー

グリテール「!おい、あそこ!」

窓の外を指差すグリテール。そこにはー

ナックル「アリジゴク⁉︎」

ペーター「マズイ、あっちの方がスピードは上だ!」

バジョー「待ってろ、神業・予知!…まずい、

ワープゲートをくぐる前にはやられる!」

ナックル「だが、どうするよ⁉︎宇宙空間で戦えるわけが

ねぇだろ⁉︎打つ手がないぞ!」

緊急アナウンス「第一倉庫車両、異常確認!」

ペーター「もう射程圏内か…このままだと、

客席車両に来るぞ!」

グリテール「あるとすれば…!」

何かを呟くと、グリテールは1人で倉庫車両へ

繋がる扉を開ける。

バジョー「グリテール⁉︎」

ナックル「何してんだ!こっちに来るぞ⁉︎」

グリテール「…俺に手がある!」

バジョー「…!グリテール!」

グリテール「…」

何かに勘づいたバジョーにグリテールは

一つ、ウインクを見せる。

バジョー「グリテール…俺も手伝う!1人でやるよりは

成功しやすい!」

グリテール「なっ⁉︎」

バジョーはグリテールの驚く表情を無視して

倉庫車両に入っていく。

ナックル「手って…何だ?」

グリテール「俺達が囮になって、やつを誘き出して、

この車両を突き破ってきたところで俺達は脱出。

この中にある火薬を爆発させる」

バジョー「倒せずとも、逃げ切ることはできます!

お二人は切り離しボタンを!」

ナックル「な、そんな危険な作戦なら俺達が!」

グリテール「ダメだ!俺達がボタンを任せられるのは

荷が重すぎる!それに、こういう命懸けの作戦は

大得意だからな、任せろ!」

バジョー「それに、こういう初任務で成功をするのは

カッコいいだろ?」

ナックル「お前ら、これは緊急事態だ!素人が

手を出していい問題じゃー」

アナウンス「第一倉庫車両、切り離されました」

ペーター「は…?いや…何だ今の放送…」

ナックル「…!まさか!」

ペーター「!ケーブルが切れた⁈」

グリテール「…と、いうことは」

ナックル「くっ…」

恐る恐るナックルは切り離し装置のボタンを押す。

その結果は悲劇にもー

ナックル「…くそっ!動け!動けよぉぉぉ!」

グリテール「…バジョー、お前は戻れ」

バジョー「何言ってんだ。お前を1人にするわけにも

いかないだろ」

ペーター「なら俺が行く!ファイターになるほどの

神力を失った俺が行くべきだ!」

グリテール「アンタが1番来るべきではない。

この中でファイター歴が1番長いんだ。

後から来るやつにお手本を教えてやれるのはアンタだ」

ペーター「ナックラーがいればなんとでもなる!」

バジョー「ナックルがものを教えるのが苦手なのは

付き合って2日の俺でも知ってる!」

ペーター「ぐぅ…!」

ナックル「なら俺だ!お前らを見殺しにはできねぇ!」

グリテール「…そしたら、俺達は地球1のファイターを

見殺しにした最低ファイターだ。そんなレッテルを

貼られて平気なのか?」

ナックル「で…でもよ…!」

緊急アナウンス「第一倉庫車両、中破!」

バジョー「このままだとこの宇宙船の乗客すべて

喰われる!命懸けの戦闘、だろ?命懸けってのは

死に際を彷徨いながら戦うことだ!」

ナックル「だったら約束しろ!必ず…帰ってこいよ!」

グリテール「もちろん!どんな手を使ってでも

アイツを倒し、ここに顔を合わせてやる!」

ペーター「…絶対だ!」

バジョー「はい!」

ナックル「グリテール、バジョー!初出動!」

グリテール&バジョー「了解!」

ナックル達とグリテール達の間に

冷たい鉄扉の壁ができる。

そして間もなくして、グリテールの神力で

鉄扉の色素がなくなり透明になる。

ナックル「?」

グリテール「…顔、合わせたぞ」

ナックル「!」

ペーター「おい、待て!」

ナックル「くそ、くそっ!開け!開けってんだ、

このぉぉぉ!」

ペーター「ケーブルが切れてるせいで開けられない!」

グリテール「…バジョー、いいのか?」

バジョー「まっ、悔いはないしな。ファイターに

なれたのは勿体なかった…かもな」

グリテール「今からでも遅くない、戻れ!」

バジョー「残念だけど、叶いそうにもない。

扉、アイツら開けてこないだろ?未来を見ても

開ける未来は見えないし、逆に

そのうち真っ暗になっちまう。つまり…

そういうことだ」

グリテール「…そうか。謝りたいが…どうしようもないか」

バジョー「謝る必要もない。自分で選んだ道だ」

グリテール「そうだな。で、火薬はどうだ?」

バジョー「バッチリ。あとはやつが近づいたら…な」

グリテール「…来たぞ!」

バジョー「よし…着火!…あれ…?」

グリテール「どうした⁉︎」

バジョー「…火がつかない!」

グリテール「何だと、うわっ!」

強い揺れが倉庫車両の中の2人を襲う。

グリテール「…こうなったら、中から切り離すまでだ」

バジョー「…それしかないか。こっちに注意が

向いてるわけだし…な」

グリテール「…てことは、また顔を見せることになるな」

迷うことなくナックル達の姿を映す鉄扉に

グリテールは歩んでいく

ナックル「グリテール…!」

グリテール「ま、顔は見せるって言ったしな。

一言、言っておく。俺達をファイターにしてくれて

ありがとう。おかげで最初で最後の任務、

成功しそうだ」

バジョー「俺からも、ありがとう。生きてて初めて、

夢というもの教えられた。だからこそ

生きててほしい。夢を…教え続けてほしい」

ナックル「何言ってんだ…!グリテール!

母親に会いたいんじゃなかったのか⁈

バジョー!生まれて初めての夢を叶えたいとは

思わないのか⁉︎」

グリテール「…もうお袋に会う資格は俺にない。

でもな、ナックル…いや…兄ちゃん!

アンタになら会える!俺にない輝きがあれば、

きっと…きっと!」

バジョー「ナックル!俺の夢は笑顔を守ることだ!

それが達成されれば、晴れて俺に悔いはない。

最後に…ペーター」

ペーター「…何だ?」

グリテール「俺達の映像、それと記録。

残してくれないか?そして…ファイターの姿に

してくれないか?最初で最後のワガママだ、頼む」

ペーター「…ワガママだよ…ワガママすぎだよ。

ナックラー、カメラ」

ナックル「クッソ…!帰ってきたら

ただじゃおかねぇからな!」

グリテール「…あぁ、また叱ってくれ。待ってる、その時を」

バジョー「うおっ、おい、もう時間ない!」

ペーター「カメラ、回したぞ」

ナックル「こんな勝利…認めねぇからな!

勝利の…Vサイン…!」

全員「キメッ…!」

ペーター「いつか…絶対また会うからな!笑って…

必ず…!戦闘モード、強制起動!」

グリテール「じゃ、俺達、行くな」

グリテールとバジョーは2人に会釈をし、

最後の言葉を口にした。後、それと同時にー

緊急アナウンス「第一倉庫車両、大破」

というアナウンスがほとんどかき消してしまった。

グリテール「…切り離し装置、起動」

バジョー「…俺達、生まれ変われるのか?」

グリテール「消化されてしまえば、

どうなるか分からないな」

バジョー「ここまで来たら賭け。喰われるのは存在。

だったら魂は助かるかもだ」

グリテール「そうだな…まっ、その賭けの時間が

来たようだ。ありがとう、兄ちゃん」

バジョー「また、会える日まで」

アナウンス「第一倉庫車両からの反応、途絶えました」

ナックル「…クッソ!」

ペーター「…っ!」


フラット「…宇宙空間での…」

ノール「アリジゴク…か」

クレア「なんか胸くそ悪い話聞いちまったし、

帰るとするか」

ノール「クレア⁉︎」

フラット「ノール、あれは冗談に決まってるでしょ。

クレアは本音を隠すタイプ。あぁ言っといて、

実は黙って帰るって意味だと思う」

ノール「でも、あんな言い方はー」

フラット「まぁ…許してあげて。クレアの不器用さは

分かってるでしょ?」

ノール「優しいやつ。私も帰るよ」

フラット「…2人とも行っちゃったか…」

ペーター「すまないね、暗い話しちゃって。

この写真、偶然でも見つけてくれてありがとう。

それと…異星でのイベント…」

フラット「…僕、思うんです。命懸けで戦うのは、

大切な人の笑顔を守るため、そしてその笑顔を

また見るためだと。この写真は…涙もあるけど…

笑顔もある。泣かせてしまうけれど、

最後に笑顔がみれてこの2人も幸せだったと思います」

ペーター「…フラット君…」

フラット「あ、あくまで僕の考えです!すみません、

知ったような口聞いてしまって!」

ペーター「…約束できるかい?」

フラット「えっ…約束?」

ペーター「命懸けで戦って、また帰ってこれると」

フラット「…当然じゃないですか」

ペーター「えっ⁉︎」

フラット「僕達に不可能なんかないです!

1人でできないことを、1人のできることで補う!

きっと、僕達ならできます!」

ペーター「アッハハ!論点ズレっズレだよ。

俺が聞きたいのはそうじゃなくて…あれ…

俺…笑ってた?」

フラット「はい!言ったじゃないですか、

笑顔を守るって!僕は笑顔を咲かせたい!

泣きたい人には涙を、笑いたい人には笑顔を!

って、これは以前、ナックルさんから言われた言葉ですけど」

ペーター「…たしかにあいつらしいね」

フラット「そうですよね!あ!もうこんな時間!

すみません、そろそろ僕も失礼します!」

フラットは慌ててオフィスから出る。

ペーター「…大切な人の笑顔を守り、

またその笑顔を見るため…か」


フラット「ごめーん!結構時間かかっちゃった!」

タクマ「おせぇよ!腹減ったし、なんか作るか」

フラット「あ、さっきクレアから昼の魚貰ったし、

これと白米でいいんじゃない?」

タクマ「は、白米⁉︎」

フラット「?うん。あ、パン派?」

タクマ「い、いやそうじゃないが…」

フラット「ん?何だこの調味料…何語だろこれ?」

タクマ「そ、それは…」

フラット「お米は…って黒⁉︎」

タクマ「げっ…」

フラット「これってガスペラス星の主食って…」

タクマ「ま、前に旅行でガスペラス星に行って

そのお土産だ!」

フラット「…前に聞いたことあるけど、

ガスペラス星の人は地球生命体の全ての言語が

理解できて、文字もこんな感じ…だった気がする。

もしかして…」

タクマ「…ふぅ。そうだよ、俺はガスペラス人。

だが地球人のハーフだ」

フラット「?い、いや開き直ったかのように

言われても…」

タクマ「あぁ、やっぱり怖いか」

フラット「へ?」

タクマ「お前達とは異種、だもんな」

フラット「あの!誰も怖いとか言ってないよ?」

タクマ「これを見てもか?」

タクマは襟元のボタンを外し、首元を見せる。

そこには魚でいうエラのような筋が入っていた。

フラット「…いや、だから怖くないって」

タクマ「はぁ?」

フラット「だって、ガスペラス人っていっても

タクマはタクマでしょ?それに羨ましいぐらいだよ、

エラ呼吸もできるなんて!陸海の両方で

生活できるじゃん!」

タクマ「お前…本当に変わったやつだな。でも…

ありがとう…」

フラット「何でお礼なんか言うの?よく分かんないけど

ご飯にするんでしょ?早く作ろ!」

タクマ「…そうだな!」


狐獣人「…ベスト、このフラットという子、警戒しとけ」

ベスト「はぁ?アイツがどうかしたのか?」

狐獣人「依頼があってな。というより、

何か知ってるのか?」

ベスト「あぁ、俺のうどん屋のレシピをくれたやつだ。

優しい子だぞ?」

狐獣人「そうか、まぁ、それは本当っぽいか。

盗聴器でたしかに確認できた」

ベスト「盗聴器⁉︎お前なんてもん使ってんだ⁉︎」

ベスト「依頼主も使っていいと許可してくれた。

まっ、この調子ならアプローチを仕掛けても

問題なさそうだ。依頼主の家に行ってるから後の作業、

やっといてくれ」

ベスト「はいはい、サボりだったら許さないぞ」

狐獣人「探偵業の方も忙しいだけだ。それに俺は

サボりじゃなくて休憩だ」

ベスト「仕事中に寝てるやつを休憩と呼べるか。

まぁ?探偵業を副業にしてるから仕方ないのは

分かってるが両立ってものも…って聞いてるか?」

ベストが振り向くと、既に狐獣人の姿はなかった。

ベスト「…はぁ、勝手なやつだ」


タクマ「お、いい焼き加減になったな。

そろそろ火を止めてっと」

フラット「盛り付けるお皿はこれでいい?」

タクマ「おう、それぐらいの大きさなら

モーマンタイだろ」

フラット「…古臭っ」

タクマ「い、いいだろ!ほら、それより盛り付け!」

フラット「それもそうだね」

2人が魚料理を皿に乗せようとしていると―

狐獣人「お、いい匂いだな!」

タクマ「ゴンのおっさん⁉︎ど、どうした⁉︎」

ゴン「ん?お前の母さんから今日は

家にいてほしいってな」

タクマ「そ、そうか…」

ゴン「それより魚か?僕もお腹を空かせててね」

タクマ「いいぞ、1匹余ってるし自分で作ってくれ」

ゴン「ほいほい、それより、ヒロユキの墓参り、

行ってきたか?」

タクマ「そういうおっさんは行ったのか?

俺は行った」

ゴン「俺も行ってから来た」

フラット「え〜っと…ヒロユキって誰?」

ゴン「タクマの兄で、この家の長男だ」


3節 苦しみもがいたあの頃はー


ゴン「タクマの兄でこの家の長男だ」

フラット「…タクマのお兄さん?」

タクマ「おいおっさん!」

フラット「あ、ご、ごめん!その…」

ゴン「ヒロユキはイジメが原因で自殺。ところで

フラット君も差別があったようだけど、どう思った?」

フラット「どうって…うーん…またいつか、

元通りになる!とは思いました」

ゴン「…そう、か」

タクマ「……」

ゴン「ヒロユキはタクマとは違ってガスペラス人の

容姿に近くて、まだ異星人の少ない地球では

差別や偏見が多かった。うろこをとられたり

火で軽く炙られたり…残酷なイジメだった」

フラット「…酷い…」

タクマ「おっさん、そこまでー」

ゴン「そして、67年前、ヒロユキは自殺をした。

ガスペラス人の平均寿命は300年。発見者は

42歳と人間で言えば未就学児のタクマだった」

タクマ「…俺、2階いってる」

フラット「あっ…!」

ゴン「フラット君、話を聞いてほしい」

フラット「何でタクマの前でそんな話するの⁉︎」

ゴン「…もちろん理由がある。フラット君、

君がタクマと会う前、大学内でのタクマの存在は

どんな感じだった?」

フラット「えっ…静かであまり交流を深めようとは…」

ゴン「そうだ。でも、君と出会った日から

アイツは一変した。まるで生きがいを見つけたように

目を輝かせているんだ」

フラット「そうだったんですか?」

ゴン「前までは無口で、作り笑顔ばかりだったが、

演技じゃなくて本物の笑顔を見せるようになった。

だから、君に頼みたいんだ。アイツのことを。

助けられると思った」

フラット「…つまり、タクマはお兄さんの事を

悔やんで、僕に対する差別を…」

ゴン「実は、タクマ泣いてたんだ。君が

差別されてるって知って」

フラット「えっ…」


タクマ「俺…怖いんだ!また…失っちまうのかって

思えて…!」


ゴン「優しいやつなんだ。誰かを想える涙を

流せるぐらいな」

フラット「それは知ってます!じゃあ、泣かせた原因の

僕が笑わさないとですね!」

ゴン「…フフッ、君は頑張り屋さんだ。行ってこい」


タクマ「兄ちゃん…やっぱり憎い!憎くて憎くて

どうしようもない!」

フラット「タクマ、入っていい?」

タクマ「あ…あ、あぁ、今開ける」

フラット「ごめんね、ありがと。ご飯どうする?」

タクマ「…いや、悪いが後にする」

フラット「そう?じゃあなんか話そっか」

タクマ「話すって何を?」

フラット「そうだな〜…何がいい?」

タクマ「お前から言ったんだからお前が決めろよ!」

フラット「じゃあ、教えてよ、ヒロユキさんのこと」

タクマ「なっ…」

フラット「嫌でしょ?だからそっちが決めてって

言ったんだけど…」

タクマ「いや…何で知りたいのかって思って…」

フラット「えっ、だってタクマのそんな顔を笑顔に

変えたいから」

タクマ「…」

フラット「そのためにも、まずは知らないと

いけないでしょ?」

タクマ「…お前は頑張り屋なんだな」

フラット「あの人も同じ事言ってたんだけど…」

タクマ「だろうな。俺とゴンのおっさんは

結構気が合うから。兄ちゃんとは真逆だったが」

フラット「ふぅん…」

タクマ「話すことはしないが、いつかな。

でも…なんで…!」

フラット「タクマ?」

タクマ「何で俺を笑顔にしたいとか思ったんだよ!」

フラット「?な、何怒ってんの?」

タクマ「怒ってねぇ!聞いてんだ、答えろ!」

フラット「…え〜っと…タクマが僕をね…

友達と思ってくれたから!」

タクマ「!」

フラット「タクマみたいに近づいてくれたの、

すごく嬉しかった!今日も一緒にご飯食べて、

作って、これからまた一緒に食べて、遊んで、寝る!

僕、子供の時以来だよ!誰かと寝泊まりするの!」

タクマ「…どういうことだ?」

フラット「僕の出身地はエリアFU。今は

特別警戒地域だね。脅威の住宅地とも言われてる」

タクマ「じゃあ移住したのか。家族はいるのか?」

フラット「…ううん、両親の顔も覚えてない。

早くになくしてるから」

タクマ「…俺より辛いのか…」

フラット「だからタクマはいいなぁって思うよ」

タクマ「えっ?」

フラット「家族のことを愛せるんだから!」

タクマ「ま、まぁそうだな。でも孤児院には

いたんだろ?なら…」

フラット「えっ…孤児院…?」

タクマ「は?違かったらお前、どこでどう育ったんだ?」

フラット「…思い出せない、ごめん」

タクマ「そんな昔のこと…なのか?でも、

お前と話してたら楽になった、ありがとよ」

フラット「そう?なんか変に話が

噛み合わなかったような気がするけど…結果よければ

全てよしってことで!晩御飯にしよっか!」

タクマ「そうだな!」


ゴン「あ、降りてきた」

フラット「はい、任された通りです!」

タクマ「おっさん、結局何の用なんだ?」

ゴン「タクマのことを知ってもらおうと思ってたんだが

まだ無理そうだね。俺は仕事があるから戻るよ。

友達ごっこで終わらせるなよ、タクマ」

フラット「なっ…」

ゴン「それじゃ、これでー」

フラット「ごっこじゃないです!」

ゴン「!」

タクマ「フラット…?」

フラット「嫌なことを語らないのは当たり前!

例え友達でも、教えたくない秘密だってある!

タクマは僕の…友達…かもしれない!」

ゴン「かもしれない?」

フラット「はっきり言って…僕も友達が何なのかは

分からない。互いが友達と思うことで友達なのか、

そばにいるだけで楽しいと思える存在が友達なのか。

でも…タクマはこの両方なんだ!」

ゴン「…タクマ、ここまで言われて話す気は

起きないのか?」

タクマ「俺は…」

フラット「無理に話す必要はないよ。悲しい過去を

乗り越えられればそれでいい。だから…

語らなくていいよ、無理しなくていい、

強がらなくていい!だって、それが人間だもん!」

ゴン「…どうやら、俺がここにいる必要も

ないらしいな。フラット君、これからは君に

タクマを任せる。これ以上僕が携わる必要は

ないって分かったからね」

タクマ「えっ…」

フラット「もしかして…テストしてたんですか⁉︎」

ゴン「あぁ。君にならタクマを心から

笑わせられそうだと思った」

フラット「…何言ってるんですか。タクマは

心から笑ってます。僕と出会った時から。

だから、感謝するのは僕の方だよ。ありがとう」

タクマ「な、何でお前が感謝するんだよ」

フラット「僕と出会ってくれてありがとう!」

タクマ「…フラット…」

フラット「これからも、一緒に頑張ろ!

どんな時でも隣にいるから!」

タクマ「…バカ、家族でもないのにいつも隣に

いれるわけがー」

フラット「いれるよ、例え目に見えなくても

心の中で、いつも笑顔で」

タクマ「全く、臭いこと真顔で言いやがって。

ナックルの言ってた通りの天然だな」

ゴン「…じゃあな、タクマ」

タクマ「?おっさん?」

フラット「あれ、ゴンさんどこ行ったんだろ?」

タクマ「いっつも急に消えるんだよな…まっ、

飯にしよう!」

フラット「さんせーい!」


ゴン「タクマ、幸せにな。さて…行くか。

エリアHAに」


翌日ー

タクマ「おい、フラット!もう朝だ!」

フラット「へ…あ、そっか。タクマの家で

寝泊まりしてたんだっけ…」

タクマ「それより朝食作ったから早く食べるぞ!」

フラット「そうだね」

ベッドからフラットが降りると―

ピンポーン!

と、チャイムが鳴り響いた。

ヒナ「タクマ!大変大変!早くあけて!」

タクマ「ヒナ⁉︎なんだなんだ、今開けるぞ」

ヒナ「大変大変!ニュース見てニュース!」

フラット「ニュース?」

ヒナ「えっ、何でフラットが…って、

それどころじゃないんだって!」

フラット「え〜っと?」

キャスターロボ「繰り返します。銀座大学の

サッカー部員でありデ・ロワーのファイター、

エド・リック・ティガさんが昨晩未明から

行方をくらましています。お心当たりのある方は

お近くの交番にお立ち寄りにー」

フラット「えっ⁉︎」

ヒナ「私達も探してるけど…フラット!

エドさんが行きそうなとこってどこか分からない⁉︎」

フラット「…ちょっと待って!」

フラットはウォッチフォンである人物に連絡する。

クレア「はいはい、クレア。どうした?」

フラット「クレア、エドがいる場所を風から

聞いて!できる⁉︎」

クレア「あ?そんなのお手のものだ。待ってろ、

神業・風耳」

フラット「…どう?」

クレア「…えっ⁉︎まずいぞ!エドのやつ、冷凍保存庫に

閉じ込められてるそうだ!」

フラット「どこの⁉︎」

クレア「豊洲市場!」

フラット「分かった!すぐに向かう!」

フラットはすぐに電車を切る。

タクマ「どこにいるか分かったか⁈」

フラット「豊洲市場の冷凍保存庫!」

ヒナ「えっ⁉︎まだ開いてない!」

タクマ「昨晩からだろ⁉︎凍死しちまうぞ⁉︎」

フラット「一か八か…2人とも、手を握ってくれる⁈」

ヒナ「えっ⁈」

フラット「天空術を使うから!」

タクマ「そうだな、ひとっ飛びで頼む!」

ヒナ「信じてるよ!」

フラット「それじゃ…!神業・飛翔!」


フラット「くっ…上手く飛べない…でも…!

エドが待ってる…!お願い、この一回だけでもいい!」

ヒナ「見えたよ!」

フラット「くっ…降下!」

タクマ「お、おい速すぎる!落下死する速さだぞ!」

フラット「こ、これぐらい?」

ヒナ「もう!降下は私がやる!」

タクマ「仕方ないか。頼む!」

ヒナ「うん!フラット、背中のジッパー、開けれる?」

フラット「ふぇ⁉︎」

ヒナ「大丈夫!早く!」

フラット「う、うん」

ゆっくりとヒナの服のジッパーを開けていく。

すると、トンボのような羽が顔を覗かせる。

フラット「えっ、これって…」

ヒナ「早く!時間が惜しいから!」

フラット「わ、分かった!」

勢いに任せて一気にジッパーを下げる。そして

4枚の細長い羽が一気に降下を促すように羽ばたく。

フラット「うわっ、さっきより…速い!」

ヒナ「今!着地っと!」

タクマ「ふぅ…こえぇ」

フラット「今の羽って…ヒナちゃん、バーデル星の⁉︎」

タクマ「お前、いいのか?」

ヒナ「何で?緊急事態に秘密とか

気にしてらんないよ!」

タクマ「…そうか」

フラット「とにかく、急ぐよ!」


警備員「?誰だ!」

フラット「あの!冷凍保存庫の扉を開けてください!」

警備員「はぁ?」

タクマ「人が閉じ込められてるんです!」

ヒナ「ニュースになってる、ファイターのエドさんが

そこにいるんです!」

警備員「そう言われても…どの倉庫か分からないと…」

クレア「14番倉庫だ!」

警備員「14番⁉︎」

フラット「クレア!」

クレア「お前ら、待つことを知らんのか!もう少し

情報を練ろうと思って風に聞いてたら勝手に

通話切りやがって!」

フラット「あ、ごめん」

警備員「分かりました、こっちですので

ついてきてください」


警備員「よし、開いた」

ガラッ

警備員「…どこにも…!」

フラット「いた!」

ヒナ「すぐに助けないと!」

フラット「うん!」


タクマ「救急車も呼んだ。だが…これは…」

フラット「うん、事件…だね」

ヒナ「酷い…誰がこんなこと…」

クレア「4人組のいかにも悪そうな連中だな。

居場所も突き止めてる。行くか?」

タクマ「おっと、すまん!俺、大学!

じゃ、続きは任せた!」

フラット「タクマはファイターじゃないからね、

任しといて!あと、手伝ってくれてありがと!」

タクマ「こんなのどうってことねぇよ!」

ヒナ「それじゃ、私はその4人組の所に!」

フラット「もちろん僕も。あの、後は

任せてもいいですか?発見者として…」

警備員「もちろんです!ファイターとして、

頑張ってください!」

フラット「はい、行こう!」


ノール「ん、バカ虎も来たか」

ナックル「ふぅ…エドの容体は⁉︎」

ペーター「アイツが死ぬわけないだろ」

ナックル「そういうことじゃなくて!」

ペーター「低体温症だったが目立った外傷は特になし…

と、思ってたがな…」

ナックル「何かあったのか⁈」

ペーター「アイツの体だからすぐに治るだろうが

左腕、右足首、鼻。この3箇所が骨折だそうだ」

ノール「それと、大量の睡眠薬が胃の中に

あったそうだ。これは事件だ」

ナックル「ちっくしょう!誰が!」

ペーター「その犯人を、フラット君とクレアが

特定し追っている」

ナックル「だったら俺も行く!」

ペーター「そうしてもらいたいのは山々なんだが、

分かっているだろ?エドの危険な性質」

ナックル「…まさか…ストレス⁉︎」

ペーター「あぁ、もの凄いストレスだ。このままだと…

爆発する」

ノール「そうなったら…どうなる?」

ペーター「目に映った生物を見境なく襲う」

ナックル「だからストレスを与えないように

しなきゃいけねぇんだ。それに、こっちの世界の

ストレス抑制剤じゃ効果がねぇ!」

ペーター「つまり、溜まりきってしまえば

殺処分しか治す方法はない」

ノール「えっ…」

ペーター「そうならないように俺達3人は

エドの近くにいること。いいね?」

ナックル「…了解だぜ」

ノール「分かった」


フラット「ここ?」

クレア「あぁ、ちょっと俺の手、握ってろよ。

風になって弱みでも握ってやろう」

フラット「手段は選ばないよ」

ヒナ「なんか潜入捜査みたいでドキドキするね」

クレア「なんか1人余裕ぶっこいてるやついるけど…

まぁ、作戦開始だ!神業・風変化!」


ヴァイス1「あの依頼の成功で金も入ったし

ほんとにうまい話だったな!」

ヴァイス2「俺の弟に感謝しとけよ?にしても、

弟のポジションを奪うとは最低なやつだったな」

ヴァイス3「ま、これであの男も消えるわけだし、

ポジションも取り戻せるんじゃない?」

ヴァイス4「だろうな。ゴールキーパーを

あんなヒョウ獣人に任せられるかってんだ!」

クレア「おい、今の聞いたな!」

フラット「どうやら、銀座大学のサッカー部の

誰かがこの組織と繋がりがありそうだね」

ヒナ「ね、ねぇ…あの人、こっち見てるよ?」

フラット「えっ?」

ヴァイス3「そこにいるの!出てきなさい!」

クレア「な、何でバレてるんだ⁈」

ヴァイス3「あたいの能力は空気の流れを読む。

アンタら、どうやら風に化けてるみたいだけど?

会話で空気が乱れてバレバレ」

クレア「こうなったら…!フラット、頼む!」

フラット「はぁ⁉︎ちょ、いきなり言われても…

神業・与罰!」

ヴァイス3「ギャァァァァ!」

ヒナ「で、電撃⁉︎怖ぁ…」

フラット「今のうちに!」

クレア「何言ってんだよ?弱み握ったなら、

もうコイツらに用はないだろ?

潰しても問題は無いだろ」

フラット「まぁ…そうだね!やるよ!」


一方その頃ー

エド「…」

ナックル「な、なぁエド?」

エド「…」

ナックル(喋りにくい…こんなやつとフラットは

話してたのか…)

ペーター「とにかく気晴らしに外でも行かないか?

いい天気だし、ストレス発散になると思うよ」

ノール「嫌なことは物を壊すことで発散できる。

ボウリングの方がいいんじゃない?」

エド「…散歩がいいっす」

ペーター「じゃ、じゃあ行こうか」


フラット「ふぅ…大したことなかったね」

クレア「俺達にかかれば、ザッとこんなもんだ!」

ヒナ「それじゃ、警察にー」

フラット「あ、それなら大丈夫。今の中継、

動画サイトじゃなくて臨時ニュースで映してたから」

クレア「はぁ⁉︎それってジャックじゃないのか⁉︎」

フラット「何言ってんの?ファイター専門チャンネルが

できたばっかりじゃん!そこで放送してたから

問題なし!」

ヒナ「最先端に乗れたね!じゃあ今の放送で!」

フラット「そう!視聴者は警察に連絡、

もしくは視聴者の中に警察官がいるってわけ!」

クレア「なるほどな。じゃあそろそろ…」

フェアード「お前ら!抵抗せずお縄に

ついてもらおうか!」

デラガ「ファイター法違反と殺害未遂!」

ラルバ「ご協力、ありがとうございます!」

ヒナ「ちなみに、なんて題名にしたの?」

フラット「エドの仇!ってだけ」

クレア「何じゃその題名…ま、いいか。それじゃ後は

警察に任せてエドの方に行こうや」

ヒナ「あ、私そろそろオフィスに行かないと!」

フラット「そう?それじゃ!」

ヒナ「うん、またね!」


一方その頃ー

タクマ「アイツが、あの4人に絡んでるのか…」

男子生徒1「いゃ〜負けた負けた。これでエドが

来なかったせいって言えば俺がまたキーパー!

くぅ〜!ナイスだ兄貴!」

タクマ「つくづく最低のやつだ、

誰もいないここなら…?」

ペーター「どうだい?」

エド「…」

ノール「何も回復してない気がするけど…」

男子生徒1「お?誰かと思ったら今日の試合に

来てくれなかったエド君じゃん?」

タクマ「なっ⁉︎マズイ、まさか鉢合わせるとは…!」

男子生徒1「おかげで惨敗だよ。

どう責任とってくれるんだ?」

ノール「お前、ニュース見てないのか?

エドは事件に巻き込まれた被害者だ」

男子生徒1「あぁ知ってるよ。事件に巻き込まれるほど

人に恨み買うからいけねぇんじゃないか?」

タクマ「なっ…あの野郎〜!」

ペーター「君、言葉を選びなさい。いくらなんでも

度が過ぎている」

ナックル「それに負けた責任はエド1人の

せいじゃねぇだろ!」

男子生徒1「あー、部外者の人達が口を挟まないで

もらえますか?これは俺達の問題なんで」

ナックル「んだと〜⁉︎」

男子生徒1「イリュージョン」

男子生徒がそう言うと、3人はどこかへ

消えてしまった。

男子生徒1「さて…まさか本当に生きてるとは

驚きだよ。ま、もうお前の居場所はねぇよ。

俺のポジションを奪った罰だ、アッハハ!」

タクマ「…そんなケンカの売り方、

恥ずかしくねぇの?」

男子生徒1「あぁ?誰だテメェ」

タクマ「恥ずかしくねぇのか聞いてんだ!答えろ!」

男子生徒1「ヘェ〜、俺にそんな口聞けるんだ。

兄貴に頼めばお前なんかー」

タクマ「そうやって誰かに頼まねぇとできねぇんだな、

ポジションを奪還するのも、俺に勝つことも。

しかも、暴力じゃないとな」

男子生徒1「ふん、言うじゃねぇか。だがな、

俺は残念だがー」

エド「グルル!」

男子生徒1「うわっ!」

タクマ「エドさん⁉︎まさか…!」


クレア「!おい、こっち!」

フラット「クレア⁉︎どうしたの⁈」

クレア「今、風が助けを求めた!微かにだが

血の匂いもする!」

フラット「わ、分かった!」


タクマ「エド…さん!やめて…ください!」

エド「グルル…ガルル!」

クレア「!エド!」

フラット「ちょ、どうなってるの⁈」

タクマ「フラット!」

フラット「えっ、何でタクマがここに⁉︎大学は⁈」

タクマ「そんなことより主犯を見つけた!

懲らしめるなら渡すぞ!」

男子生徒1「ちっ、ここは逃げるか!」

フラット「今はそれよりエドだよ!」

クレア「それじゃ、俺が主犯を!」

フラット「タクマもお願い!」

タクマ「いいのか⁈」

フラット「うん、後で追いつくから!」

タクマ「…分かった、任せる!」

フラット「…エド…」

エド「ガルル…!」

フラット「さっ、勝負といこうか!そっちから

かかってきて」

エド「グルル…‼︎」

フラット「ジグザグなコースで攻め込むか…だったら、

神業・十字結界!」

エド「っ⁉︎」

フラット「ほら、囲んだよ。次はどうする?」

エド「ガゥゥゥゥ!」

フラット「結界の基盤を壊す気か…なら、

第一審判『炎』術・『永久黒炎結界』!」

エド「ガウ⁉︎」

フラット「僕なら…できるはず!お願い…叶って!」

そのフラットの叫びに神器が応えるように

光を放つ。

フラット「これ…!いける!エドを絶対…助ける!

第四審判『光』術・『闇浄光雨』!」

エド「グルル…?俺…?」

フラット「良かった〜…上手く行った〜…」

エド「フラット…?」

フラット「何があったか分かってる。エドが

どんな思いをしたかも何となく分かる。痛みまでは

分からないけど裏切られる気持ちは分かるよ。

だから…」

フラットはゆっくりエドの肩に手を置く。

エド「俺…!」

フラット「大丈夫。僕がいつでもそばにいる。

前も約束したよ、そばにいるだけで楽しい存在に

なるって。まだまだだからさ」

エド「そんなことないっすよ…!俺がちゃんと

してなかっただけっす!」

フラット「いや、泣かしちゃったじゃん。

それじゃ意味がないんだって」

エド「…でも…俺…」

フラット「エドが気にすることは何にもないよ!

友達を助けるのが友達!何となくだけど、

僕はそう思うよ」

エド「フラット…」

フラット「じゃあさ…」

フラットは躊躇うことなくエドを優しく抱きしめる。

まるで、兄が弟を励ますように。

フラット「嬉しいことは一緒に笑い合う。

悲しいことや嫌なことは一緒に乗り越えようよ。

乗り越えるまではこうやって温まってよ?

一緒にいるってそういうことだと思うな。難しくて、

時に傷つける。分かち合うことしかできないけど、

精一杯そばにいるから。だって…家族みたいなものでしょ?」

エド「家族…っすか」

フラット「たしかに僕達は他人だった。でも、

オフィスにいる時、出張で遠くへ行ってる時。

楽しい、面白い、笑い合える!同じ時間を同じ思いで

過ごせる!それって家族と同じじゃないかな?」

エド「…ッハハ!フラットって面白い

考え方するんすね!」

フラット「それでさ…聞きたいけど、

エドの正義って何?」

エド「俺の正義…っすか?それは悪い奴を片っ端から

倒すことっすよ!」

フラット「アッハハ、エドっぽい!じゃ、

その心を忘れないようにね!正義心があれば

どんな言葉にも負けないから!」

エド「そうっすね…!そう言うフラットの

正義は何すか?」

フラット「僕は間違いを正しい道に修正する!」

エド「フラットらしいっすね!」

フラット「ファイターらしくないこと言ってるけどね。

ほら、帰ろうよ!皆、そろそろ終わってるだろうし」


クレア「全く、逃げ足だけは早いやつだ。だが流石に

もう逃げられないぞ?」

タクマ「大人しく捕まった方が身のためだ」

男子生徒1「…イリュージョン!」

クレア「なっ…!」

タクマ「ちっ、ここまで来て逃した!」

クレア「まぁ、退学処分は確定だな」

タクマ「あぁ、一応礼はしとく。ありがとう」

クレア「こっちこそありがとな!」

タクマ「それじゃ俺は大学に行かなくちゃだしこれで」

クレア「それじゃ、俺もオフィス戻るか」


一方その頃ー

ナックル「ど、どこだここ〜!」

ノール「洞窟…?」

ペーター「出口はどこなんだ?」

ノール「もう…どうでもいいや。神業・破壊!」

ノールの破壊によって天井に穴が開いたーと思いきや

ドサッと大量の枯葉が落ちてきた。

ナックル「ど…どこだここ?」

ペーター「どうやら…デ・ロワーの中庭らしい」

ノール「私の破壊も役に立つもんだな」

ナックル「まっ、アイツらも戻ってるみたいだな。

やっぱりフラットは凄いな」

ペーター「あぁ、殺処分せずにエド君を

元に戻すとは…」


エド「フラット!お茶っすよ!」

フラット「あ、ありがと…ってマズっ…」

エド「まだ残ってるっすからどんどん飲んでくださいっす!」

フラット「エド?自分でも飲んでみる?」

エド「えっ?分かったっす…ってマズっ⁉︎」

フラット「ハハ、僕がお茶は淹れるよ。エドは

紅茶なら何派?」

エド「ミルクティーっす!」

フラット「オッケ、待っててね」


獅子獣人「…もうそろそろ、試作品を試すのに

いい頃合いですね。行きなさい」

バジョー?「了解」

獅子獣人「フフッ、ナックル。あなたはどう立ち回る?」


最終節 法と正義が交わる時(前編)


ペーター「君達…随分仲が良くなったみたいだね」

フラット「エドが一方的にですよ〜!ちょっと

どうにかしてください〜!」

ノール「なんか、昔のキルユウ達みたい」

ナックル「懐かれるのも悪くはねぇと思うぞ?」

エド「えへへ〜」

フラット「喉まで鳴らして…もう」

ピンポーン

ペーター「?誰だ?」

「わいや、わい。入るで」

ナックル「?この声ってどっかで…」

エド「俺も聞き覚えあるっす」

ペーター「あの人か。やっと来た、どうぞ」

関西風男性「ほな、失礼しまっせ。いや〜、ようやっと

来れたわ。前に来ると言ったやろ?その日に

毒魚食うてしゃあなく帰ったんや」

ペーター「あぁ、それは―」

エド「あ!そうっすよ!フラット、覚えてるっすよね!」

フラット「うん、無理矢理エドとバイキングに

行った時に倒れた…」

関西風男性「お、あの時の!わいはダンステード!

このデ・ロワー出身のファイターやで!」

フラット「じゃあ先輩ですね!よろしくお願いします!」

関西風男性「礼儀作法のできるええ子やわ〜!

よろしゅうな、フロート君!」

ペーター「ノータイムで忘れてる…フラット君だ」

関西風男性「あ、せやったわ!すまんなぁ、

わいは人の名前覚えるの苦手やさかい」

フラット「あ、そうですか…」

ナックル「どっかで…あ!そうだ!俺とエドが

口喧嘩した後にフラットがぶつかった!」

フラット「何気に初対面じゃないんだ。偶然って

面白いね!」

ペーター「なんだ、知り合っているなら紹介はいいかな?」

フラット「いやしてください!」

ペーター「じゃ、自己紹介頼んだ」

ダンステード「任されたわ!わいはアカデミー所属、

四大・地の長をやらせてもらってます」

フラット「えっ…⁉︎」

ナックル「四大…」

ノール「地の長⁉︎」

エド「…って何すか?」

全員「わわわわっ!」

ナックル「それはフラットのセリフだろ!」

フラット「いや、僕は分かってるよ」

ノール「もう…ペーター、説明頼む。ていうか、

もう1人はどこ行った?」

フラット「あぁ、そろそろ戻ってくると思うよ」

クレア「よっと…ただいま戻ったぁ〜?」

フラット「ちょ、あ!」

クレアは荷物の重さでバランスを崩し、盛大に

見事なバク転を決める。

フラット「だ、大丈夫?」

クレア「…バク転…できた…!」

ノール「それどころじゃないでしょ。怪我は

なさそうだけど散らかった荷物片付けないと」


5分後ー

ダンステード「何や、わいがいた頃とあんまり

変わってないなぁ」

ペーター「当たり前だろ?そんなホイホイ模様替えを

やってる暇がファイターかにあるかって」

ナックル「…俺も知らない頃のデ・ロワーか…

気になるな」

ダンステード「気になるか?近いうちにわいの同期の

3人も来るさかい、楽しみに待っててな」

フラット「で、ここには何の用で?」

ダンステード「せやせや!ちょいとこれ、

見てもらえます?」

ダンステードは手に提げていた革の鞄から

大きなタブレット端末を出した。

ダンステード「ちょいとこれ、見てほしいねん」

端末には昨日の深夜2時の東京の地図が

映し出されており、時間が経つにつれて

大きな赤い点が浅草にゆっくりと近づいていた。

ダンステード「この赤い点はアリジゴクや。

そしてゆっくりやけどここ浅草に近づいてる。

時速1キロと遅いが、あと4時間でここに来るはずや。

しかもただのアリジゴクやない、人工アリジゴクや!」

エド「人工アリジゴクっすか?あんなの都市伝説じゃー」

ペーター「そうでもない。最近、アメリカで

行方不明者が突然現れては人を喰うという、

ゾンビ化現象と呼ばれる事件が多発している。

調査の結果、アリジゴクの細胞のみに含まれている

アドランがあったことから人工アリジゴク計画は

存在していることになった」

クレア「だが、それって死刑の代わりと言われてる

方法だろ?話が脱線してるぞ」

ダンステード「死刑の代わりってのは、あくまで

表沙汰の話や。それに知っとるか?人工アリジゴクの

裏面のこと」

ノール「裏面?」

フラット「死刑ぐらいの罪人の罪をアリジゴクが

存在を喰らうのと同じ方法で、罪を犯した過去の自分の

存在を喰らわせる。そして、宇宙全体でその罪自体の

存在を消滅させる。つまり、殺された人の存在も

なくす。その存在の全ては裏計画に回されて

人工アリジゴクに変えられる…だよね、ナックルさん!」

ナックル「お、おう。そうだな」

ペーター「やけに詳しいね」

ダンステード「正解や、驚きやで。ファイターの中でも

トップレベルの機密情報をどこで知ったんや?」

フラット「えっ…え〜っと…」

ナックル「俺が教えたんだ、な?」

フラット「う、うん!」

エド「えっ⁉︎そんなことしたんすか⁈下手したら

首切られるっすよ⁉︎」

ペーター「一般人には伝えてないな?」

ナックル「もちろん!一般人に不安を与えないように

機密情報は他言無用だろ?」

ペーター「お前がそれをできるとは思ってもないが」

ナックル「なっ…ペーター!いくら何でもー」

フラット「あっ!今日木曜日!大学忘れて普通に

オフィスきちゃった!ナックルさん、行こう!」

ナックル「ヤベ、忘れてたぜ!すぐ行かねぇと

欠席扱いになっちまう!」

ダンステード「…学生兼ファイターは大変やなぁ」


タクマ「はぁ〜…この前の講義、何とか取り返せて

ラッキー。だが…今日ってあの2人も来るはず…」

教授「ほい、始めっぞ」

タクマ「ん?あの教授って…そうだ、指揮者疫病神説を

提唱した張本人だ!」

ナックル「す、すまん!」

フラット「遅れてすみません!」

教授「…あぁ」

ナックル「…!」

タクマ「2人とも、ここ。開いてるから座れ」

ナックル「あ、あぁ…」

フラット「ナックルさん?」

タクマ「ったく、どうした?寝坊って感じでも

なさそうだし…」

フラット「大学のことすっかり忘れてて

オフィス行っちゃったんだよね」

タクマ「アッハハ、何だよそれ?」

ナックル「俺も忘れてたわけだしな」

タクマ「2人して何してんだ?」

教授「そこ、うるさいぞ」

ナックル「あ、ヤベ!」

教授「やはり、疫病神と絡んでる連中は周りに迷惑しか

かけられねぇんだな」

タクマ「…おい教授。図に乗るのもそこまでにした方が

身のためだと思うがな?」

教授「何だ、教授に向かってその言い草は」

タクマ「そろそろジ・アフダンの情報課から

メールが…お、来たな。少し講義の時間を使うが

ここのプロジェクターを俺のネックフォンに繋げて…

よし、皆、この資料を見て欲しい」

フラット「?何この写真?」

タクマ「この教授が地球連合の人物と

賄賂をしてる写真だ。これは以前ノールが破壊した

盛岡のカジノだ」

ナックル「そういや、あそこはそういう場所だったな」

タクマ「これを捉えたのはそこの防犯カメラだ。

しかし、賄賂現場として用いられる場所。

このデータは結局賄賂で消された。この写真を

復活させんのはさぞかし骨を折っただろうな」

フラット「凄いね…ジ・アフダンの情報課…」

タクマ「さて?これはその写真そのまんまだし、

裁判にでもかければ1発でKOだな」

「あれって…やっぱりでっち上げ?」

「だとしたら…俺、アイツにチョーク投げちまった…」

タクマ「これで半信半疑だったアンタの理論は

ぶっ壊れた。さぁ…あとは罪を償わねぇとー」

教授「フフッ…アッハハハハ!ここまで

追い込まれたなら、そろそろアレを呼ぶとするか!

実験台だが…来い、人工アリジゴク!」

教授が自身のウォッチフォンにそう叫ぶと

空が黄色く染まり、いくつもの黒い点が現れた。

フラット「な、何あれ⁉︎」


その様子をキャンパスの屋上からー

謎の少女「数は57。いけるかしら?」

謎の獣人「任せろ。“俺と似た個体”から魂を救えるのは

俺しかいない。頼んだぞ」

謎の少女「分かったわ。戦闘モード強制起動」

謎の獣人「…クラウ!ヤミヲサキ、ミライヲサカセル!

キンシジュツ・セイメイキュウシュウ!」


フラット「えっ⁉︎ちょ、何が起こってるの⁈」

遠すぎて黒い点のようにしか見えない

人工アリジゴクの大群が緑色の触手のようなものに

包まれ、パンっと破裂したかと思うと

空はもとの青色に戻っており、大群も消えていた。

タクマ「な、何が起こった?」

ナックル「…と、とにかく避難だ!」

フラット「今の触手…屋上から!」

ナックル「フラット、どこに行く気だ⁉︎」


謎の獣人「処理終了。元凶は後で始末する」

謎の少女「そうね。でも、その前にお客さんが

いるみたいよ。相手しないと」

フラット「いた!さっきの触手、お前らか⁉︎」

謎の獣人「いや、俺だ。シャリーは一切関与していない」

フラット「シャリー?」

シャリー「私のことよ。あなたと同じ指揮者。

ファイターじゃないけど。そっちはセンリ。

正体は秘密よ。まだ教える時じゃないもの」

フラット「で?人工アリジゴクを倒したみたいだけど、

ただのファイターじゃないよね。センリって

名乗ってるファイター、見たことないもん」

シャリー「やっぱり、お兄さんは推察力が

高いのね。そうよ、センリはファイターじゃない。

でも、ヴァイスでもないの。言ってしまえば、

脅威に近い存在、とでも言っておこうかしら」

センリ「シャリー、それ以上は口にするな。

主人に怒られるぞ」

シャリー「分かってるわ。あと、お兄さん。私達は

敵じゃないわ。その時が来れば正体を教えてあげる」

センリ「それではな。フラット」

フラット「あ…あれ?僕、名前言ったっけ?」


ナックル「やっと戻ってきたか?」

タクマ「遅かったな、便所」

フラット「えっ?」

ナックル「腹壊して駆けてったの笑えたなぁ」

フラット「…あっ」


センリ「元凶は後で始末する」


フラット「始末…記憶をなくす…存在を消す…まさか!」

ナックル「どうしたよ、1人でブツブツ言って。

まだ腹いてぇのか?」

フラット「ううん、何でもないよ」

タクマ「それより、もうそろそろ講義も終わる時間だ。

ノートとかまとめとかねぇと」

ナックル「そうだな。今日は出張で教授がいなくて

自習とか楽だな〜!」

フラット「…ナックルさんは寝られてラッキー、でしょ?」

タクマ「おっと、時間になったな。じゃな、

俺はジ・アフダンの方に戻らねぇと。

宇宙のあれこれ探検隊の収録がそろそろなんだ」

フラット「決まったんだ!放送日楽しみにしてるよ!」

タクマ「俺のツッコミ、目に焼き付けとけよ!」

ナックル「おい、次の講義もあるんだし、

さっさと出るぞ」

フラット「そうだね。タクマ、始めが肝心だからね!」

タクマ「んなの分かってるって。じゃ、俺はオフィスに

戻るからな」

フラット「うん、にしてもタクマがジ・アフダン…

ファイター課もあったよね、銀座本部の」

タクマ「あぁ、ある。あっともうこんな時間!

すまんな、もう行かねぇと」

フラット「あ、ごめん。楽しみにしてるね、

放送日!」

タクマ「おう!まだ未定だがな!」

ナックル「…アイツも行ったことだし、俺達も

オフィスに行くとするか」

フラット「そうだね。行こっか」


その同時刻ー

シャリー「あのお兄さん、もうそろそろ

目覚めると思うわ」

センリ「きっかけが必要そうだな。あの人が

動いてくれるとは…」

青髪男性「ん?どうかしたのか?」

シャリー「ランケール様。フラットという人、

知っていられるかしら?」

青髪男性「!フラット君…か。知ってるよ、

独特なファイターだろ?指揮者でもある…」

センリ「そうだ。アイツの指揮者としての能力を

上げられないか、と思ってるわけだ」

ランケール「そうだな…そろそろ、月に戻らないと

いけないし…上手く引っ張るか」

シャリー「お願いするわ。お兄さんの力が、

そろそろ必要になると思うから」

ランケール「君の予感は当たるからね。

分かった、なるべく急いでみる」

赤髪男性「ランケール、早く戻ってこい。

電話が来てんぜ」

ランケール「そうか。ありがとな、ミッシェル」


フラット「にしても…本当にやることないね」

ナックル「イベントの依頼も来てねぇしな」

ノール「どっかの誰かがメチャクチャにしたせいで…」

ペーター「依頼なら来てるよ。浅草公園で

脅威発生時の避難訓練を手伝ってほしいってね。

もちろん、いつものイベントも行うよ」

エド「本当っすか⁉︎」

ペーター「あぁ、1週間と短い期間だが

お願いできるかい?」

フラット「準備期間は?」

ペーター「浅草公園の管理人さんが

やってくれてあるそうだから準備の必要はないよ」

ノール「なら良かった。私、自信ないから」

ナックル「たしかに何でもかんでも

壊しちまいそうだしな」

エド「出張イベントの時は出店の準備っすね」

ノール「品出しとかならいいけど…」

フラット「じゃ、早速稽古といこうか。イベント戦闘で

ケガでもしたら大惨事だもん。手合わせしといた方がー」

バジョー?「コワレロ…!」

バジョーらしき人物がデ・ロワーに向けて

エネルギー弾式の銃を打ち込む。

ナックル「⁉︎危ねぇ!」

パリンッと窓のガラスが音を立てて割れる。

ナックル「う…嘘だろ…⁉︎」

ペーター「バジョー…なのか⁉︎」

フラット「いや…この気配、アリジゴク⁉︎」

エド「じゃあまさか、人工アリジゴクっすか⁉︎」

フラット「だったらマズイ!」

バジョー「…!」

急に苦しそうに胸を抑え始めるバジョー。

そのまま影の中へ消えてしまった。

ペーター「今のは…間違いなかった!」

ナックル「あぁ、バジョーだ…!」

フラット「人工アリジゴク…」

無意識にもフラットの目線はナックルに移る。

ナックル「ん?」

フラット「あ、何でもない。気にしないで」

ノール「それより、この緊急事態の時にクレアは

どこに行ったんだ?」

ペーター「人工アリジゴクと見られる反応の調査に

ダンステードと一緒に行ってる」

ノール「そうなんだ…」

ナックル「だが…あのバジョーの顔…苦しそうだった」

フラット「…あの中身、きっとまだ未完成なんだよ!」

ナックル「未完成?」

ペーター「どういうことだい?」

フラット「あの中にはまだ、バジョーさんが

生きてるってことです!」

ペーター「そうなのか⁈」

ナックル「生きてるんだな⁉︎」

フラット「多分…アリジゴクと人間の境目。

コアを壊せばもしかしたら…」

ナックル「だったらすぐにでも助けださねぇと!

クッソ、誰が⁉︎」

フラット「…分からないけど、助けられるうちに

助けないとね!」

ノール「で、どうやって?」

フラット「…イベントの稽古、やろっか」

バジー「失礼します…あら?あまりいい雰囲気とは

思えないような…」

フラット「あ、何でもないですよ」

ペーター「バジー、そういえば新発明してなかったっけ?」

バジー「はい、完成致しましたわ!」

ペーター「そうか!やっとか…!」

バジー「そのご報告をしに来たのですけれど…」

ペーター「早速…あ、クレアが来てないんだったね」

ダンステード「今帰ったで〜」

クレア「なーんも情報なし。目に見えないやつを

風が知ってるわけねぇし」

ペーター「お、帰ってきたね」

クレア「しらみ潰しに探したが何も成果なし。

こうなったら俺が風になってー」

ペーター「その必要はないだろう。ダンステード、

レーダーはどうだ?」

ダンステード「薄くはなっとるが残ってるで。

ここは…渋谷?」

ペーター「四大グループがある所か」

ダンステード「とんだ偶然やな。でも敵の狙いは

ここのはずや。もしかしたら人間に近い状態に

なってるんとちゃうか?」

ナックル「どうにか和解はできないのか?」

フラット「一応アリジゴクだからね?割合で言えば

8割がたアリジゴク。流石に言葉を交わすほどの

力も残ってないと思うよ」

ペーター「…助けられるんだよな?」

フラット「魂は、ですけど」

ナックル「体は⁉︎体はどうなる⁈」

ノール「あの体を形成してる…いや保っているのは

人工アリジゴクに使われた存在の欠片。

解放するということはそれらを浄化するってこと。

つまりあの体は消えてしまう」

ペーター「死んでしまったものを甦らせることなんて

できないんだ。それでも魂さえ救えられるのなら…」

クレア「ちょい、どういうこった⁈バジョーって

ペーターが前に言ってた…」

ノール「ソイツが人工アリジゴクなんだ」

クレア「そういうことか。前に一度だけでも

仲間になったやつが敵か…辛いな」

フラット「クレア?」

何故か切ないような表情を見せたクレアに

疑念を抱くフラット。

クレア「あ、いや気にすんな。ちょっと昔を

思い出してただけだ」

ダンステード「何や?物思いにふけるなんて

若者のすることじゃないで?」

クレア「べ、別に何でもねぇ。それよりイベントが

あるんだろ?稽古もするみたいだし、さっさと

行こうや。時間も限られてるわけだし」


フラット「うーん…折角だし新ファイター同士で

戦ってみる?」

ナックル「6人いるわけだし…月曜と火曜で

クレアとノール、水曜、木曜でダンステードさんと

フラット、金曜と土曜でエドと俺でやって日曜は

全員でやろうぜ」

ノール「バカ虎とやる気はないけど全員でやるなら賛成」

クレア「つまり3vs3か、面白そうだな!」

エド「俺も賛成っすよ!楽しいイベントに

なりそうっすね!」

フラット「それじゃ、早速稽古にしよっか!」

ダンステード「ちょ、ちょい待ち!わいも出るのか⁈」

フラット「えっ、ダメですか?」

ダンステード「わい、物覚えるの苦手なんやけど…」

フラット「あ〜…セリフ短いの5個ぐらいにしますね。

てなると…急に現れた謎のファイター!とか?」

ナックル「それぐらいのセリフしか無さそうだが…

そんな登場のファイターショーじゃ5分で

片付くことになるぞ」

フラット「だよね…」

ダンステード「せやったらわいがファイターで、

それまでは普通に劇やるのはどうやろ?」

クレア「つまり、日常的な展開から始まって、敵役の

フラットが現れると…」

フラット「えっ、あれ、いつから僕、

敵役になってるの⁈」

エド「仕方ないっすよ、折角のゲストっすもん、

敵役をやらせるわけにもいかないっすし…」

ノール「セリフを覚えられないんじゃ、敵役を

こなせられるわけがない」

フラット「…そっか、じゃあ僕が敵役ってことで」

エド「それより早く手合わせするっす!」

フラット「そうだね!それじゃ組に分かれて

稽古始め!」


数時間後ー

ナックル「いい感じじゃねぇかエド!前のお前より

技に磨きがかかってるぜ!」

エド「本当っすか⁉︎ありがとうございますっす!」

ノール「クレア、私を相手にするからと気をつかうな。

いつも通りにやれ。狙いが不安定で逆に危険だ」

クレア「そうか、分かった。ノールは冷静で

助かるわ。あのすっとこどっこいじゃ、

分かりっこないポイントだしな」

ノール「すっとこどっこい…バカ虎のこと?」

クレア「あぁ、脳筋なやつだし、いいあだ名だろ?」

ノール「たしかに」

フラット「ダンステードさんの技、

かわしにくいですよ〜」

ダンステード「なんたって四大の地やからな!

目には見えない地面の下から攻撃を仕掛ける。

見抜いてたらそれは戦いの天才やで」

フラット「見抜くって…反射神経でギリギリでしたよ」

ダンステード「全部かわせたのはフロート君が

初めてや!感激したで?」

フラット「それは嬉しいんですけど…フラットです」

ダンステード「?あぁ、せやったな!」

フラット「あ…もう17時か。そろそろ終わろっか。

今日は解散。おつかれさま」


フラット「ふぅ…あ、もう夜か」

ナックル「おい、飯まだか?」

フラット「えっ…わ、ごめん!すぐに作っちゃうね!」

ナックル「…フラット」

フラット「?何?」

ナックル「…ありがとよ」

フラット「えっ?何々らしくない」

ナックル「いや…ちょっとな」

フラット「ん?」


獅子獣人「…もう少しで抗う。さて…フラット君、

これが終わり次第、君にはまた一つ依頼を渡すよ。

まぁ…この依頼を渡すということは君の死を

意味するんだけどね」


最終節 法と正義が交わる時(後編)


ペーター「全員集まったね。今日は話があって

早く来てもらったよ。バジー」

バジー「分かりましたわ。少しお待ちください。

皆様、パスワードは3751、皆来いで覚えてください」

フラット「?どこの…」

バジーはオフィスの入り口の右の壁を押すと

パカっとパスコードキーが顔を見せる。

ノール「な、何それ?」

バジー「緊急事態用の武器を閉まってある格納庫に

繋がる扉です。3751…と」

バジーがパスコードを打ち終わると、壁に穴が開いた。

クレア「ま、まさかこれを滑ってけって言う気か⁉︎」

バジー「はい、クレア様!」

フラット「えっ…?」

ナックル「おいおい、お前がそんな張り切った声

出したの初めて聞いたぞ」

エド「バジー…クレアに惚れたっすね?」

ペーター「金髪好きだからなぁ」

バジー「クレア様、早く行きましょっ!」

フラット「な、なんかキャラも変わってない?」

クレア「お、おい!押すなって!うわぁぁぁぁ!」

フラット「…バンジージャンプ?」

ノール「あれ、危ないんじゃないか?」

ナックル「危ないってレベルじゃねぇだろ。クレアなら

風に化けられるし問題はないだろうが」

ペーター「君達も早く行ってほしいんだがね」

フラット「あ、ごめんなさい!行こっか!」


バジー「それでは紹介していきますわね。まず、

このドリル式地下リニアトレイン。

パラレルストーンの力で地下を掘り進んで目的地まで

どんな乗り物より早く到着できますわ。

名前はスパークフラッシュ号」

ノール「つまりは輸送兵器ってことか。武装は?」

バジー「ただいま開発中です」

ナックル「あくまで輸送兵器ってわけか」

バジー「続いてはこちらです。神器には

封印されている神業があるということは

ご存知だと思われますが、その封印を解く装置を

開発しましたわ」

クレア「お、つまりは新技を解放できるってわけか!」

バジー「はい、ですがそれには戦闘で使用した支援力を

使います。かなりの数を必要としますよ」

クレア「じゃ、早速…お、四方風神召喚術か!

面白そう…ってあれ?」

ノール「必要支援力70万…たりないだろ。

お前はファイターになったわけだし」

クレア「それもそうか…お、これならできそうだな!

え〜っと…不可視之矢?」

フラット「目に見えない矢ってこと?」

クレア「うーん…微妙」

ノール「じゃ、私も…あ!結構できる!って…

必要支援力、少なくても2万って…

5個で限界か。じゃあ…逆に1番消費量の多いこれ…

え〜っと…バンフレイムクラッシュ?」

バジー「中には必殺技が封印されているのですね。

消費支援力も10万とは…」

ノール「それじゃ、封印解除」

バジー「…完了しましたわね」

ノール「どんなのか気になるが…後だな」

フラット「ここで使われるとマズイからね」

ナックル「これって人工神器でもいいのか?」

バジー「いえ、本物の神器ではないと…」

エド「じゃあ俺達は強化できないんすね」

バジー「第一に人工神器は神器の劣化版のようなもの、

あくまでヒーローの装備ですもの」

フラット「ヒーロー?」

ノール「お前、常識知らずにも程があるぞ。神業を

扱えるほどの神力はないが、願望が強くてファイターに

なれるやつのことだ」

バジー「ソルジャーは神力をも扱えるほどの

ファイターのことですわ」

フラット「へぇ〜…」

ノール「まぁ、次はフラットだ」

フラット「あ、そうだっけ。え〜っと…あれ?」

バジー「ぜ、全部解放されてる⁈」

ノール「で、でも神器の力は封じられてるはず…!」

クレア「もしかしたら、その神器自体が

封印されてた物だったりしてな」

バジー「たしかに…フラット様の神器は

見たことがありませんわ。それに、

ファイター兼指揮者という事例も…」

ペーター「1人だけ、いないこともない」

ナックル「知ってるのか?」

ペーター「カナリアというね、第五次神魔戦争の時の

法の天使の頭領がそうだった。しかし、魔族の勢力に

押され、最終的には神魔のバランスを保つことになり、

互いの神器、魔器を封印したとされている」

ナックル「…てことは…」

エド「フラットの神器って…」

クレア「本当に封印されてたものってわけか!」

ノール「へぇ…そういう神器もあるんだ」

ペーター「だから神力も封印されずにそのまんまなんだ」

ナックル「そうか。神力を封印したわけじゃなかったのか」

ペーター「それがフラット君の強い理由にもなる」

エド「じゃあ神器が本領発揮すれば、あんな風に

なれるってわけっすか⁉︎」

ペーター「そうだろう。神器の世界は無限の知識と

神時代の人々は言っているぐらいだ」

ノール「無限の知識…」

クレア「たしかにそうだな。こんだけの数が

封印されてるんだ。もしこの全てを解放して

組み合わせたら…本当に無限の世界だな!」

ナックル「くっそ〜!俺達にも神業が使えるぐらいの

神力があれば!」

エド「こればかりは諦めるしかないっすよ」

ペーター「中にはファイターを辞めた人が

残った神力を分け与えるというケースも

あるらしいけどね」

エド「そういうペーターさんはどうなんすか⁉︎」

ペーター「俺はダメだ。神力は残っている。ただ…」

フラット「ただ?」

ペーター「俺はファイターになれない理由がある。

これだけは言っておく」

バジー「…禁止術」

ペーター「⁉︎」

バジー「神業の中には禁止術と呼ばれていたものが

あるようです。その術を使った者は堕天使となり、

魔族の巣食う闇世界の住人となる、と言われていますが

ペーター様はれっきとした天使ですものね、

私の勘違いでしたわ」

ペーター「ビックリしたよ、疑われてるのかと」

バジー「フフッ、申し訳ございません」

フラット「なーんだ、これじゃ解放する意味も…?

何これ?」

バジー「何かありましたか?」

フラット「なんか…この画面じゃ入りきれてない場所に

何かある気がするんだけど…」

ナックル「…たしかに。見切れてるが何かあるな」

バジー「何でしょうか…というより、フラット様の

神器の力、あまりに少ないような…」

ノール「もしかして長い間封印されてて神器の力が

失われたとか?」

エド「あ、それありえるっすね!」

バジー「神器にお詳しいのはダンステード様

なのですけれど…」

ペーター「今日は四大グループの方に行ってから来ると

言っていたから、まだ来ないだろう」

ナックル「…神器って引き継がれてると

聞いたことがあるぞ」

クレア「そうなのか?」

ノール「私も知らない」

ナックル「前にそういう説があるとなんかの雑誌で

読んだことがある」

ペーター「そうだよ、神器は引き継がれている。

ダンステードが研究した結果、姿は変わるが

神器の中に宿る神力は同じらしい。つまり先祖代々から

引き継がれて、神器は強くなっているというわけだ」

フラット「じゃあ、この封印されてる神力って…」

ペーター「第5次神魔戦争以前まで引き継がれ、

その代のファイターと呼ぶべき存在が編み出したものだろう」

クレア「てなると、俺達の手で新しい技を

作れるってわけか!」

ノール「それもそれで面白そう」

ナックル「それは人工神器と同じなのか」

エド「でも解放はできないっすよ」

ナックル「何言ってんだ、元からある技を

復活させるより新しい技を開発する方が

楽しいだろ!」

クレア「やっぱり、すっとこどっこいだな」

ノール「脳筋にはちょうどいいんじゃない?」

ナックル「オメェら、聞こえてんぞ!」

クレア「耳だけはいいんだな」

ナックル「だけっ…んだとぉ〜⁉︎」

フラット「ま、まあまあ!で、これで終わり?」

バジー「それだけではございません!

特訓場もございますので」

クレア「腕試しにちょうどいいな」

バジー「勝負も可能ですよ。シュミレーションで

脅威や魔族のデータとテストも可能です」

フラット「それ便利そう!」

エド「たしかに楽しそうっすね!」

ノール「…勝負はイベントでもできるだろ」

ナックル「あ…それは…」

ノール「じゃ、イベント稽古、今日も

やるんだろ?」

フラット「もちろん!事故が起きたらまたー」

広報「特殊な脅威を銀座にて探知!」

ペーター「!」

フラット「来た⁉︎」

ナックル「すぐに向かうぜ!」

バジー「早速出番ですわ!スパークフラッシュ号に

搭乗お願いします!」

フラット「そっか、いちいち電車使って

行く必要もないもんね!」

バジー「そういうことですわ!」


バジー「デ・ロワー・ファイター総員の搭乗を確認!

パラレルストーンエネルギー供給効率最大!

路線確定!エンジン稼動、スパークフラッシュ号、

発射準備整いました!」

ナックル「それじゃ、合図は隊長に一任するぜ!」

フラット「目的地・銀座、特殊脅威の討伐!

デ・ロワー総員、出撃!」

全員「了解!」


バジョー?「クラウ…クライツクス!」

シャリー「センリ、できるかしら?」

センリ「…すまない。アイツは無理だ」

シャリー「どうしたの?いつものセンリなら

そんなこと言わないわ」

センリ「やつは…“俺個人”として無理だと言っている」

シャリー「知り合いなの?」

センリ「あぁ。“センリ”としてではなく、“俺”のな」

シャリー「分かったわ。それに…タイミングよく

救世主様のお出ましみたいよ」

地下歩道からスパークフラッシュ号が勢いよく

飛び出し、扉の中からファイター達が飛び出していく。

エド「ちょ…待ってくださいっす…よ、酔ったっす」

クレア「ったく、お前は休んでろ!」

フラット「やっぱりバジョーさんか!ちょうどいいや、

さっきの装置で気になる技もあったことだし

使ってみよう!神業・罪魂ハント!」

クレア「?」

ノール「な、なんだあのバジョーの腹部の赤い点⁉︎」

フラット「あそこか…作戦通達!腹部の赤い点に

集中攻撃!その中にバジョーの魂がある!」

ナックル「了解したぜ!」

フラット「支援をノールとクレア!アタッカーは

ナックルさんでいくよ!」

クレア「つまり、フラットは指揮者か!任せた!」

ノール「私が支援なのは正解だ。遠距離型だしな」

フラット「私語は謹んで!戦闘中だよ!」

ノール&クレア「了解!」

フラット「ナックルさん、触手警戒!

ノールとクレアは触手のカバー!」

ナックル「おう!お前の指揮の光おかげで

触手が目立って避けやすいぜ!」

ノール「どちらかというと、囮作戦の方が有効か。

いかせてもらう!」

クレア「お、おいノール⁉︎」

フラット「ちょ、勝手に動かないでって!」

クレア「おい、触手がそっち行ってるし!

だ、第一突風『炎』術・『四方爆破之矢』!」

フラット「だから勝手に動かないでって!」

バジー「あら…これ、大丈夫でしょうか?」

ナックル「うわっ!おいクレア!俺まで

巻き添いくらいかけたぞ!」

クレア「す、すまん!」

ノール「よし、ほとんどの触手が来てー⁉︎」

少し余裕がある顔だったノールの目の前に

2本の触手が立ち塞がっていた。

ノール「う、嘘⁉︎」

あっという間にノールの首に巻きつき、追いかけていた

触手は四肢を引き裂こうとする勢いで巻き付いた。

フラット「ま、マズイ⁉︎」

「第一発明『零』術・『水刃一閃』!」

バジョー?「グゥッ⁉︎」

ノール「うわっ!」

ノールを締め付けていた触手をある人物の

レーザーガンのような神器が切り落とした。

ダンステード「何や何や!わい抜きで楽しそうなこと

しとんなぁ!」

フラット「ダンステードさん⁉︎」

ダンステード「さっきの広報聞いて慌てて

飛び出して来たんや。せやけど、

酷いやられっぷりやのぉ」

ノール「なっ…」

ダンステード「四大の戦い方ってやつ、

見せつけてくれるわ!いくで!

第二発明『炎』術・フレイムバズーカ』!」

レーザーガン状の神器がロケットランチャー状の

見た目に変わり、空に向かって1発、球を打ち上げた。

ダンステード「盛大な花火で盛り上がって、

美味しい締めも頂きや!」

フラット「あ、あの狙いは腹部なんですけど!」

ダンステード「あぁ、大丈夫やで、心配は無用や。

あの弾はわいの思いで操っとる。失敗は…ないで!」

落ちてきた弾はそのままの勢いで、まるで

弾道ミサイルのように地面を沿って

バジョーの腹部へ当たる。

バジョー「グワァ!」

ダンステード「見事急所に大当たりや!」

フラット「凄い…!」

ダンステード「しかし、君の指揮は的確やな。

分かりやすくて助かるわ。せやけど…

まだ、倒しきれてないな、むしろ効いてない感じや」

フラット「ちょ、ナックルさん!バジョーさんって水⁉︎」

ナックル「すまん!伝えてなかった!」

ダンステード「あ、じゃあわいはお手上げやわ。

地術じゃ歯が立たへんからな」

ナックル「だが、触手が切れただけでもありがたいぜ!

第一突進『光』術・『光纒タックル』!」

バジョー「グフっ!」

パリンっ!

フラット「?」

わずかに“何か”が割れる音をフラットは聞いた。

ダンステード「どないしたんや?」

フラット「…まさか…そういう仕掛け?」

ダンステード「なんか分かったんか、フルーツ君!」

フラット「だからフラットですってば!

それより…なるほど、それなら、神業・束縛!」

フラットの槍型の神器の先端が鎖のようなもので

伸びていき、腹部を思い切り突き刺す。そして、

ヒビの入った“何か”に巻きつく。

フラット「…あった!コア!」

ナックル「これ…!」

フラット「その中に、バジョーさんの魂がある!

傷口が回復する前に早く!」

ナックル「分かったぜ!と言いたいが…俺は

突進系の技しか持ってねぇ!くそっ!このチャンスを

逃したくねぇ!頼む!俺にできる何かをくれ!」

ナックルの神器「願望確認。バックアップを読み取り、

アップデートします」

ナックル「…!」

フラット「新技の獲得…!」

ナックル「…来た!」

ナックルの神器「新技の獲得に成功しました。

第一掌握『光』術・『握圧喝破』」

ナックル「握圧喝破…よし、いくぜ!

第一掌握『光』術・『掌握喝破』!」

コアに向けて光に包まれたナックルの拳が

思い切り殴りかかる。コアは音ひとつ立てずに

一瞬で浄化するかのように消え去った。

バジョー「…あ?」

ナックル「バジョー!」

バジョー「ん…ナックル?」

ナックル「あぁ!分かるか?」

ダンステード「…わいらは邪魔やな」

フラット「そうですね」

フラット達は先にスパークフラッシュ号の中へ

戻っていく。

バジョー「どうやら、賭けは成功したか」

ナックル「賭け…?」

バジョー「アリジゴクに喰われたら…どうなるのか…

未知の領域に…俺達は賭けた…どうやら…

魂は消えないらしいな…」

ナックル「ど、どういうことだ⁉︎」

バジョー「存在が消えて…魂だけになった俺達を…

誰かは知らんが改造した…」

ナックル「…そうか…」

バジョー「だが…感謝している」

ナックル「⁈」

バジョー「どんな形であれ…こうやってお前と…

再会できた…!」

ナックル「…俺は感謝なんかできねぇ!

俺は…ただ普通に生まれ変わって…またお前達と

会いたかった!なのに…!」

バジョー「違うぞ」

ナックル「何がだ⁉︎」

バジョー「お前と初めて会ったこの体で…

もう一度会いたかったんだ」

ナックル「…!」

バジョー「この願いが叶ったなら文句はない。

それに…お前とまた、戦えた…!」

ナックル「バジョー…!」

バジョー「ありがとう…泣いてくれて。短かったが、

一緒にいれてすごく楽しかった。俺の力じゃ…

誰も…幸せにはできないと思ってたのに…

愛されるなんて…思ってもなかったのに…」

バジョーは思い切りナックルに飛びつく。

バジョー「大好きだ…!俺も…お前のこと…!

本当は…もっとそばにいたかった!」

ナックル「…バカ野郎!もう遅すぎなんだよ!」

バジョー「…それでいい。ナックルは…素直で

いてくれれば良い。俺達のワガママ、聞いてくれて

ありがとう。そろそろ、俺はいくみたいだな。

さよなら、だな」

ナックル「…あぁ。今度は伝えられるな…!」

フラット「おーい!アレ、やろ?」

ダンステード「ちょ、おいフラット君⁉︎」

ノール「早くやんないと手遅れになる」

クレア「俺達は位置についたからな!」

エド「う、ウップ!」

クレア「おい!抑えろ!」

バジョー「…アッハハ、お前の新しい仲間、

愉快そうだ」

ナックル「…ったく…でも、お前と初めてアレをやるな」

バジョー「…あぁ、“初めて”、な」

ナックルは消え始めているバジョーの肩を抱き、

2人に用意された位置に行く。

フラット「…フレームよし!それじゃ、セーの!」

全員「勝利のVサイン、キメっ!」

シャッターが切られ、バジョーも映った写真ができ、

皆で確認する。ナックルも行こうと動いた時ー

バジョー「…ナックル、幸せにな」

ナックル「バジョー?」

風のようにうっすらとした声に慌てて振り返るも、

もうそこにはバジョーの姿はなかった。

ナックル「バジョー…!2回も別れがあるなんてよ…?」

しかし、ナックルはバジョーのいた所に落ちている

ある物を見つけた。それはー


四年前、イベント終了後ー

ナックル「ふぃ〜、お疲れさん!」

バジョー「大盛況で楽しかった」

グリテール「最初のイベントにしては気持ち良かった」

ペーター「それじゃ、新ファイターを祝って

何かプレゼントを買わないとね」

ナックル「じゃ、バジョーのは俺が買ってやろう!」

グリテール「俺のも買ってほしいんだが?」

ナックル「冗談だぜ冗談。ペーターは課長だし、

ファイターとしての先輩の俺が2人に

プレゼントだ!」

ナックルは四葉のクローバーのブローチを

4人分買い、全員同じ葉に同じ名前を書いた。


回想終了ー

ナックル「あの時の…」

バジョーのブローチをぎゅっと握り締め、

空を見上げた。

ナックル「…幸せ詰まった四葉に 

四つの名前を書いたなら…」

フラット「ナックルさんも早くー?」

ナックル「真っ白な花咲かせて

誰かを笑わす 光を作ろうか」

涙しながら、そう“あの帰り道”で4人揃って歌った歌を

また歌っていた。それはまだ切れていなかった中継にも

バッチリ映っており、ペーターもオフィスで歌っていた

ペーター「誰かの 笑顔になる 希望の花」

ナックル「密かに 涙する 強き花」

ペーター「クローバーだらけの 草原に

うずくもった 四葉を」

ナックル「もし 見つけられたなら 

またその手を握ろう」

ペーター&ナックル「幸せを祈って」

フラット「…ナックルさん…」

ノール「…音楽イベント…!」

フラット「えっ?」

ノール「やってみない?音楽イベント!」

クレア「おい、エド、大丈夫か?」

エド「も、もう限界っす!」

フラット「あ、後で聞いてみよっか。全員、

聞けるような状況じゃないしね」

ノール「そう…だな」

ナックル「…バジョー…俺達が叶えてやるとも!

幸せいっぱいの花畑にしてやるぜ!」

ペーター「絶対に…諦めたりしない!」

バジー「それでは戻りましょうか…?あら⁉︎」

ノール「どうした?」

バジー「中継が切れてなかったようで…

凄いコメント数ですわ」

フラット「なんか…泣けた、とか何で忘れてたんだろ、

って感じのコメントが多いね」

クレア「たしかに、俺でもあれはジーンと来たな」

ナックル「おい!詰まってるから早くしてくれ!」

フラット「あぁ、ごめん!ってあれ?エドは?」

クレア「アイツ、酔ってるから置いてった方が

良いと思うぞ。帰りも酔ったら大変だ」

フラット「それもそっか。じゃあ、僕はエドと一緒に

帰ろっかな」

ノール「私はこっちでいい。楽だし」

クレア「俺もそうするわ」

ナックル「じゃ、俺はフラットと!」

フラット「うん、じゃあまた後で合流しようね!」


獅子獣人「…まさか、“あの体”にそんな秘密が

あったとは。あの世界の歴史については

詳しく調べる必要がありますね…」

茶髪男「ヘェ〜、じゃあ俺の体にもあぁいう力が…」

獅子獣人「あなたは堕天使なので失われてるはずですよ」

茶髪男「ジョークだ。それより作戦失敗とはねぇ」

獅子獣人「今回は焦りすぎました。しかし…

脱走した試作品2号があの世界にいるとは…

早条センリ…か」

茶髪男「ぶっ殺せば良いんじゃないのか?」

獅子獣人「…殺してしまえばまた逃げられる。ならば、

放っておきましょう。どちらにせよ、あの試作品は

あれ以上に“アリジゴクを喰うこと”は不可能でしょうし」


フラット「この写真、デ・ロワーに飾っておこうか」

ペーター「えっ…しかし…」

フラット「折角、バジョーさんが映ってる写真です!

デ・ロワーの記念写真ですよ!」

ペーター「…分かった、隊長のいうことだし

素直に従うよ」

ナックル「ありがとよ、フラット」

フラット「それより!今日でイベント最終日だし

頑張ってこー!」

全員「おーっ」


フラット「さぁて…エド!あの図体のデカイやつを

狙え!クレアはあの黒いやつだ!」

ダンステード「つまりわいはあんさんと戦闘やな?」

フラット「そういうこと!」

ナックル「オメェら!どいてろよ⁈フライトシューズ、

最高出力!全力でいくぜ!

第一突進『光』術・『光纒タックル』!」

エド「えっ、え⁈」

ナックル「ヤッベ!上げすぎちまった!」

ものすごい勢いでナックルはエドを吹き飛ばす。

バジー「えぇ⁉︎ま、幕を下ろさないと!」

バジーが無理に垂れ幕を引っ張ったせいで

吹き飛ばされたエドに追い討ちをかけるように

幕が落ちる。

バジー「あ、あら⁈え、えーっと…

しょ、照明を落とすには…このボタンだったかしら?」

完全に焦ったバジーは誤って舞台分解用に使うはずの

爆破装置を押してしまった。

フラット「へ⁈」

ドカーン!と、小規模な爆発が起こった。


数時間後ー

フラット「…とりあえず…」

フラットはナックルを睨むような全員の様子を見回し、少しひねくれた表情を見せてため息をついた。

フラット「怪我人がいなかっただけマシだよ…

エドを除いて」

エド「…ナックラーさん?」

ナックル「い、いやすまん!」

クレア「俺がなんとか客をひっくるめて風に化けたから

何とかなったものの、お前のせいで公園の修理費も

かかってんだからな!」

ノール「本っ当に脳筋なんだな!少しは落ち着いて

行動したらどう⁉︎」

フラット「ま、まあまあ!ん?」

クレア「どうした?」

フラット「ごめん、今更だけど、ナックルさんって

イベント出演禁止じゃ?」

ナックル「…あっ」

ノール「…すっかり忘れてた」

クレア「つまり、契約違反だから…」

ペーター「あぁ、ナックラーは当分、給与のうち8割を

減給ということになった」

ナックル「は、8割⁉︎」

フラット「あーあ、普通のアルバイトの収入より

少ないんじゃない?時給800オズも160オズだよ?」

ナックル「うわっ…キッツ…」

フラット「まっ、自業自得だね」

ノール「アハハハ!いい様!」

クレア「今回ばかりは味方しないからな」

ナックル「くぅ〜!」

エド「ぷっ…あっハハハハ!」

フラット「エド…笑った…」

ナックル「…お前がそんなに笑うなら、

もうどうでも良くなった」

ペーター「たしかにね。エド君があんな大声で

笑うなんて思ってなかったよ」

ナックル「これはフラットのおかげだな」

フラット「ううん、僕はエドに教えただけ。

変わったのはエド自身だから」

ナックル「ったく、少しは胸張れって!」

ペーター「そうだよ、こういう時こそ素直に

喜ぶべきだと思うけど?」

フラット「え〜…素直に言ってるんですけど…」

ノール「フラットはこういうやつだろ。

だからいいんじゃない?」

クレア「たしかにな。それより…ん〜!

これからイベント終了祝いにいかないか?」

フラット「たしかに!どちらにしても今日で

イベントは終わりだったもんね!」

ペーター「あ、フラット君。音楽イベントの申請は

終わったよ。こればかりはナックラーも

やっていいと許可を貰ってる」

フラット「分かりました!通るといいですね!」

ペーター「えらく他人事だね…」

フラット「今は今でやることがあるんで!

それじゃ、いこーう!」

全員「おーっ!」


回想終了ー

エド「フラット?大丈夫っすか?」

フラット「あ、うん。それよりさ、照明の準備が

終わったなら、ちょっと舞台の補強の方、

手伝ってくれる?」

エド「もちろんいいっすよ!俺にドンっと

任せてくださいっす!」

ナックル「お?お前ら、立ち話してねぇで

準備しろ!復興イベントまであと少ししかねぇんだぜ」

フラット「分かってるって、ただ状況確認だよ」

ナックル「そうか?まっ、俺は売店整理の方が

まだ残ってるからまたな」

フラット「発注数間違えないでよ?」

ナックル「スラリアじゃあるまいし、間違えねぇよ!」

スラリア「なっくん?あたしのこと、何か言った?」

ナックル「いいや?何にも言ってないぜ」

スラリア「聞こえてたんだけど?あたしがいつ、

発注数を間違えたって言うのかな?」

ナックル「えっ、間違えてただろ!」

スラリア「あれはスターちゃんだよ!」

ナックル「あ、あれスターだったのか。

てっきりスラリアかとばかり思ってたぜ」

スラリア「もう…って、こんな所で暇潰してる場合じゃ

なかった!」

フラット「なんかあったっけ?」

スラリア「さっきクレアが木材取りに行ったから

代わりに舞台の補強やっといてって」

エド「それは俺がやっとくっすよ!スラリアは

自分の役割やっといてくださいっす」

スラリア「あ、ありがと」

エド「じゃあ俺はいくっすね!」

フラット「うん!あ、その前に!」

エド「?」

フラット「覚えてる?あの歌」

エド「歌…!あれっすか!」

フラット「そうそう!最初にエドと書いた!」

エド「正しさと」

フラット「法が」

フラット&エド「導く先に 温もりある笑顔が

生まれますように 溢れますように…」

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