第2話 悩める破壊神

フラット「さて…どこから手をつけよっかな?」

ガッシャーン!

フラット「うわっ、何何⁉︎…って、こういう時は

大抵アイツなんだよな」


フラット「ノール、何かあった?」

ノール「げっ、もう来た。あーあ、隠し通せると

思ったのに」

フラット「こういう音を立てるのはノール以外に

誰が居るっていうのかな?にしても、また派手に

壊してくれたねぇ〜…木材が全部粉々って…

何があったの?」

ノール「建て付けが甘かったんだ。急に木材が

倒れてきて危うく下敷きだったぞ」

フラット「まぁ、立てかけてあっただけだもんね。

ていうか、これここに置いてたのって…」

黒狼獣人「すまん、俺だ。大丈夫か、ノール」

ノール「キルユウ…ちゃんと安全確認してから

置いてって言ってるはずだけど」

キルユウ「紐で縛っておいたはずなんだが…」

黒豹獣人「うぃ〜、ヒック!」

キルユウ「あ、テメッ、バルシア!それ、

木材縛り付けといた紐だ!ネクタイじゃねぇ!」

ノール「…もう、バカコンビ」

フラット「とか言って、ちょっと笑顔じゃん」

ノール「これは…別にいいでしょ。面白いのは

たしかなんだし」

フラット「まっ、そうだね…ハハッ」

ノール「何だよ気持ち悪い」

フラット「いや、ノールも変わったなぁって」

ノール「はぁ?お前、急にどうした?

熱でもあるのか?」

フラット「違う違う、最初に会った時とは

大違いってこと!」

ノール「あぁ、そういう…って別にいいだろ」

フラット「うん、そうだね」

ノールと出逢ったのは、五月晴れの日だったー


フラット「ん〜!あ、もうこんな時間!今日は

ベストさんのとこでタクマ達とご飯だった!」

ナックル「やっと起きたか?遅いぞ」

フラット「あ、起きてるなら起こしてくれても

いいじゃんか!」

ナックル「えっ?あ、あぁ、そいつはすまなかったな」

フラット「?まっ、とにかくタクマ達と

朝食行ってるから!」

ナックル「おう、俺は大学だしな!」

フラット「じゃ、またオフィスで!」

ナックル「おう!気をつけろよ!」


1節 初のイベント!

タクマ「で?どうだったんだ?初の戦闘の感想はよ?

是非聞かせてくれよ!」

ヒナ「あ、私も聞きたい!でも、デ・ロワーかぁ…

いいなぁ、有名事務所に入れるなんて」

フラット「でも、有名ファイターはナックルさんしか

残ってないけどね」

ヒナ「ほとんどが宇宙に出ちゃうもんね。あ、

うどん来た!」

タクマ「お、そんじゃいただき!」

フラット「ストーップ!一気にすすらないでね?」

タクマ「は?うどんはすすって食うもんだろ」

フラット「あ…」

ズルル…ピタッ

フラット「…ヒナ、多分タクマ気絶してるから」

ヒナ「…うん、見たらわかるよ、トリップしてるから」

フラット「だからすするなって警告したのに」

ヒナ「でも、それだけ美味しいってのは

分かったよ。それじゃ...」

フラット「うん、一口を頬張りすぎると

トリップするからそれぐらいがいいよ」

ヒナ「…何これ…美味しすぎる!生きててよかった!」

フラット「アッハハハハ!そこまで?」

ヒナ「うん!この日のために頑張ってきた気がする!」

フラット「大袈裟だなぁ」

タクマ「…はっ!あれ、俺寝てたか⁈」

フラット「幸せそうに桃源郷まっしぐらだったよ」

タクマ「いやぁ、これは天国だ。やばい、

食い終えれるか?」

フラット「食べ終えられなきゃ勿体無いよ?」

タクマ「お前俺に死ねと言ってるのか⁈」

フラット「2人して大袈裟すぎだよ。じゃあ…

ベストさん!普通のかき揚げ!」

ベスト「あいよ!」

フラット「かき揚げ食べながらだったらいけるよ」

ヒナ「何で?」

フラット「食べれば分かるよ」

ベスト「はいお待ちどう!かき揚げ3丁!」

フラット「あ、ありがとう!さっ、この真緑の

かき揚げ、何だと思う?」

ヒナ「匂いは...えっ、もしかしてこれ全部セロリ⁉︎」

タクマ「いや...パクチーもあるな」

フラット「そう!ほとんどの人が嫌いがちな野菜を

たっぷり使ったかき揚げだよ!これで、中和されるね」

タクマ「うわ...これ口に入れるのか?」

フラット「違うよ、うどんの中に、こうやって入れて、

ぐちゃぐちゃにかき混ぜて…よし、こんな感じ」

ヒナ「私は…いいや。普通に食べる」

タクマ「そうだな…俺もそのまま食う」

フラット「え〜…」


ヒナ「あー、美味しかった!メーメィ、フラット!」

フラット「メーメィ?」

ヒナ「うん!私の星の言葉!ありがとうって

意味だよ!」

タクマ「お前はよく、そんなこと言えるなぁ。

人前で自分は宇宙人です、なんて言えないぞ?」

ヒナ「フラットには言えるもん!ね?」

フラット「そ、そう?あ!やば、もうこんな時間⁉︎

ごめん、そろそろオフィス行かなきゃ!また大学で!」

タクマ「おーう、気ぃつけろよ!」

ヒナ「お仕事頑張ってね〜!」

フラット「うーん!」

タクマ「忙しそうだな、アイツも。おし、

こっちもこっちで仕事といこうかヒナ!」

ヒナ「いこーういこーう!」


フラット「失礼します!」

ペーター「お、おはよう新隊長君!」

フラット「ちょっと、それはやめてください!

まだ自覚はしてませんから!」

エド「…ナックラーさんは?」

フラット「大学だよ。なんかやる事ないかなぁ〜?」

ペーター「...やること...か」

ピピポポピ

フラット「?電話…何話してんだろ」

コンコン

バジー「失礼致します。コーヒーをお持ち…って、

フラット様、いらしてたんですね。ペーター様は

お電話中ですか」

フラット「はい、端末じゃなくて固定電話で

連絡するのは珍しいですね」

エド「フラット、転送ロッカーに書類届いてるっすよ」

フラット「書類?ありがと、誰からだろ…えっ⁉︎嘘!」

バジー「どうされました?」

フラット「四大からだよ!えっ、嘘でしょ⁉︎」

ペーター「ふぅ…あ、届いたかい?驚いただろ、

今日の夜、ここに来る。ナックラーにも伝えてー」

ピロロロ!ピロロロ!

フラット「ん…ナックルさん?」

ピッ

フラット「もしもし―」

ナックル「フラット‼︎そっちに鞄置いてないか⁈」

フラット「うわっ、声落として声!耳いった〜い!」

ナックル「そんなことより俺の鞄だ!」

フラット「もう…これ?また忘れたの?転送ロッカー、

使ってもいいですか?」

ペーター「あぁ、中に電子端末が入ってないならな」

フラット「入ってる?」

ナックル「中にパソコンが入ってるぜ」

フラット「…少し、大学の方に行ってます。すぐに

戻りますので!」

ペーター「あ、エド君、一緒に行ってこい」

エド「俺っすか⁉︎いや、浅草大学に行っても俺はー」

ペーター「ナックラーも喜ぶだろうなぁ」

エド「早速行かせてもらうっす!」 タタタ!

バジー「単純ですわね、まぁ、それが

可愛らしいのですけれど」

ペーター「…いや、前のエド君じゃ、あんな口車に

乗ることはなかっただろうな。変わり始めてる、

あのエドが」

バジー「フラット様は、お優しい方ですから」


フラット「ナックルさんは…」

タクマ「?お、フラット!」

ヒナ「どうしたの?デ・ロワーにいるはずじゃ

なかったっけ?」

フラット「ちょうど良かった!ナックルさん、

どこにいるか知らない?」

ヒナ「ナックラー?あっ、さっき教授に

相談室連れてかれてたよ」

フラット「…遅かったか」

タクマ「?あ、そこの人!エドだろ?」

ヒナ「本当だ!初めまして、綾川ヒナでーす!」

エド「ヒナちゃん⁉︎本物っすか⁈」

フラット「えっ、ヒナ…ちゃん⁉︎」

ヒナ「本物ですよ〜もーう!」

エド「あ、握手してくださいっす!」

ヒナ「あ、今はダメですよー、事務所を

通してからじゃないと!」

エド「あ、本物っす…」

タクマ「おいおい、映像で見るのとは大違いだな。

こんな明るいやつだったか?」

フラット「い、いや…もしかして、オタク?」

エド「違うっすよ!異星人アイドルなんて、

俺の憧れっすよ!」

ヒナ「憧れぇ?本当ですか⁈私、エドさんのために

これからも頑張ります!応援よろしくね!」

エド「はいっす!」

フラット「…えーっと…鞄、どうしよ…」

ヒナ「相談室の前に置いとけば良いと思うよ」

フラット「まぁ…そうだね。でも、忘れ物なんか

しちゃダメだよね」

タクマ「本当にな!」

全員「アハハハ...!」


フラット「よいしょ…じゃ、帰ろっか」

ガラッ

ナックル「失礼しました…あっ!」

フラット「げっ…エド、走れ!」

エド「了解っす!」

ナックル「あ、この!待ちやがー」

教授「バトラー!忘れ物」

ナックル「あ、筆箱…」

教授「反省レポート、プラス一枚な」

ナックル「うぅ…」


フラット「ふぅ、ふぅ…あれ?走り損だったかな?」

エド「疲れたっす…これで終わりっすね。じゃ、

もう帰るっすよ」

フラット「まーだ!お腹も空いたでしょ?

レストランでも行こうよ」

エド「えっ…いいっす。俺は食堂でー」

フラット「そんなこと言わずに!」

ガシッとエドの腕を掴み、問答無用に歩み始める。


エド「はぁ…結局こうなるっすね」

フラット「いいでしょ?このレストランは、

前にタクマ達と来たし、美味しかったよ」

エド「俺が言いたいのはそうじゃなくて…まぁ…

いいっすけど」

フラット「味の割に安いっていうね!ビックリだよ!

この前だってー」


数日前ー

タクマ「うっま⁉︎このフライドチキン、

めちゃくちゃうめぇぞ⁉︎」

ヒナ「パンも美味しい〜!サックサクだよ〜!」

フラット「うん!あれ、ナックルさん来てない…」

タクマ「あっ…アイツなら…そろそろ来ると思うぞ」

ヒナ「ただ…ちょっとね…」

ナックル「すまんな!今来たぜ!」

フラット「あ、来た…ってなにそのお皿⁉︎」

ナックル「まずは中華コース全制覇だ!」

フラット「グチャグチャじゃん…」

タクマ「これは…酷いな」

ヒナ「折角美味しいのに…勿体無いよ」


フラット「てことがあってさ?」

エド「…ハッハハ!何すかそれ!

は〜、見たかったすよ、その光景」

フラット「そんなに面白かった?」

エド「あっ…」

フラット「は〜い、見ちゃった!エドの笑顔!」

エド「忘れろっす!それじゃ、取りにー」

「キャー!食中毒!」

フラット「へ⁉︎」

エド「食中毒⁉︎」

フラット「こっちからだよね⁉︎行こう!」


男性「うっ…うぅ…」

フラット「?この魚って…」

エド「大丈夫っすか⁈」

フラット「エド、塩水」

エド「えっ…塩水?」

フラット「なるべく濃いめにね」

エド「わ、分かったっす?」

数分後ー

エド「塩水っすよ」

フラット「うん、ありがと…」

男性にゆっくりと塩水を飲ませる

男性「ん…?あれ、治ったで⁉︎気持ち悪ぅの治ったで⁉︎

どないなってんのや⁉︎」

フラット「魚ですよ。この魚は毒があって、

塩素と化合して無毒になるんです。刺身はダメですよ」

男性「そうなんか?これ、わいが釣った魚で、

ここのコックに調理してもらったんやけど…」

フラット「えっ…この魚が有毒なのは、調理人なら

誰でも知ってることなのに…」

エド「なら、聞くのが1番っすよ!」

フラット「うーん…悪意というか作為は感じない…

多分、事故だよ。責任だけとってくれれば

いいと思うから、そんなカッカしなくていいよ」

エド「ダメっすよ!事故であれ、人の命がー」

フラット「あの毒はそこまで危険じゃないよ。

強い腹痛と吐き気を催すだけ」

エド「な…あ、そうなんすか。でも…」

フラット「事件化するにはあまりに些細すぎるよ。

それに、あんまり1人でワーワー騒がないでよ…」

ザワザワ……

エド「あっ…」

フラット「もう…何でもないですよ!

ほら、席に戻るよ」

エド「はいっす…」


午後17時ー

ナックル「ガッハッハ!何じゃそりゃ!不幸だったな!

ガッハッハ!」

フラット「笑い事じゃないよ、もう…」

エド「でも、事件化すべきだったと思うっすよ⁉︎」

ペーター「皆、とりあえず落ち着いて。ちょっとした

お知らせがあるから」

フラット「お知らせ…ですか?」

ペーター「聞いて驚くなよ?実は…」

ナックル「…実は?」

ペーター「イベント実行権復活だ!」

エド「えっ…今…なんて言ったっすか?」

ペーター「2度目は言わないぞ」

フラット「イベント実行権復活だって…?あれ、

じゃあ、今までは…」

ペーター「とある事故がきっかけで、イベント実行権を

停止させられてた。今日から再出発だ!」

ナックル「よっしゃぁ!で、どこに行くんだ⁈」

ペーター「岩手・盛岡だ!」

エド「この時期の岩手っすか…桜が見られるっすね!」

フラット「じゃあ、今年は2回も花見ができるね…って

花見がしたいの?」

エド「ち、違うっすよ!今のはただの…

言葉のあやっすよ!」

フラット「ふーん…言葉のあやか…」

ペーター「それで、今日はイベント出張の準備も

兼ねてこれで解散だ。各自、明日の朝6:15に

浅草駅に集合してくれ」

フラット「分かりました!朝の6:15に浅草駅…

ナックルさん、早起きしてよ〜?」

ナックル「ま、任せとけ!」

ペーター「任せられないから言われてんだろ?

お前、昔はよく遅刻してたみたいだし」

フラット「…昔…?」

ナックル「?覚えてねぇのか?高校の時…あれ?

お前が…高校の時…?」

エド「どうしたんすか?」

ナックル「…いや…何でもねぇ。さーてと、フラット!

帰ろうぜ!」

フラット「え、あ、分かった。それじゃ、僕達は

これで失礼します!」

ペーター「あ、待ってくれ。フラット君には

少し残ってもらいたい」

フラット「へ?」

エド「…俺は帰ってるっすよ。それじゃ」

ガチャ…

ペーター「フラット君には、デ・ロワーの基本事項を

教えておこうと思ってね。簡単な話だ。

この部屋に、挨拶をして入ってもらうだけだ」

フラット「?分かり…ました」

ガチャ…

ペーター「よし、入ってこい」

ガチャ…  し〜ん…

フラット「失礼します」

ペーター「うん、じゃあもう一回」

フラット「?」

ガチャ

フラット(何だこれ?)

ペーター「…よし、入っていいぞ」

フラット「失礼しま―⁉︎」

ラジオ「わァァァァ!」

フラット「え、えっ⁈これ何です?」

ペーター「あぁ、それじゃダメだよ。臨機応変に

顔と感情をコントロールできていない。

このような場所に合った言葉使いをしてくれ」

フラット「あ、そういう練習ですか…やってみようと

思います!」

ペーター「敬語は使わないこと、

硬めな言葉にならないことだ」

フラット「はい!」

ペーター「では、もう一度やってみようか」

フラット「了解でーす!」

ペーター「いい感じじゃないか!入るところから

もう一回」

フラット「は〜い!おっまかせくっださーい!」

ガチャ

ペーター「…ハハ、本当に君のようだよ、カナリア。

君の血をひいてるだけあるよ」

フラット「……まだですか?」

ペーター「あ、失礼!いいよ、入っておいで!」

フラット「ちわ〜っす!フラットで〜す!」

ペーター「何だその陽気な挨拶は。

ちゃんと真剣な挨拶はできんのか?」

フラット「え、軽めでいいって…」

ペーター「…アッハハ!冗談に決まってるだろ?

ナックラーが言ってた通りの天然だな!

イジメがいがあるなぁ」

フラット「…もう」

ペーター「冗談はさておき、これで練習終わりだ。

すまないね、時間貰っちゃって」

フラット「このお代は高くつきますよ?あと、

さっきの冗談に罰を与えないと」

フラットはそう言うと、神器を手にして

ペーターに向ける。

ペーター「へ⁉︎ちょ、やめっ―!」

・・・。

ペーター「?誰も…いない…?これ…手紙?」

[神業・幻想。今のは幻です]

ペーター「やられた〜!でも、こういう

子供っぽいところも…同じだ。よーし!

こうなったら無理難題をバンバン与えてやろう!

わーっハハハハ!」


一方浅草大学・寮〜

フラット「ただいま〜」

ナックル「お、お帰りだぜ!腹減ったし、

なんか作ってくれ!」

フラット「え〜、もう疲れたよー」

ナックル「そう言わずに頼む!」

フラット「あ、そうだ…」

ナックル「作ってくれるのか⁈」

フラット「うん!」

ナックル「何をだ⁉︎」

フラット「それはー」


ナックル「何でこうなってんだ?」

フラット「ナックルさん、今日のうちに支度しないと

寝坊して出来なくなるでしょ?今のうちにやらないと」

ナックル「ハァ〜、めんどくせぇ〜!」

フラット「そう言わずにさ!ほら、もう少し…って、

なにその荷物⁉︎閉まるわけないじゃん!」

ナックル「ちゃんと閉まるって!よっと!」

バゴン!

フラット「…ねぇ、今明らかにキャリーバッグが

閉まる音じゃない音がしたけど」

ナックル「…やっべ…キャリーバッグ、

折れちまった…」

フラット「…馬鹿力は相変わらずだね。小さいけど、

僕の貸すよ。ていうか、何をそんなに…って、

漫画やらゲームやら…こんな持ってっても

全部は無理でしょ?ちゃんと考えて…って、

これじゃ僕、ナックルさんのお母さんじゃんか」

ナックル「お、お前が俺の母さんか!」

フラット「そんなボケかましてないで、早く。

明日6:15に集合なんだよ?」

ナックル「へいへい、分かってますって」

フラット「はぁ…こんなんで大丈夫かな?」


エド「ふわぁ〜、さて、イベント出張に向けて、

もう寝るっす…ピューテおやすみ


ペーター「…カナリア、フラット君に意地悪しても

いいかい?君と同じで、イジメがいがあってね。

面白い子だよ、君とは正反対で」


翌朝ー

ピピピピ!ピピピピ!

フラット「?あれ…このアラームって…大学用の…

てことは、もう6:45⁉︎ちょ、大遅刻!ナックルさん、

起きて!早く!大至急起きて!」

ナックル「はん…?下位に急降りて?」

フラット「…結局これかい…?これって…

目覚まし時計⁉︎ナックルさん…!こうなったら!

神業・与罰!」

フラットが詠唱すると、タライが一つ、ナックルの

顔面に当たる。

ナックル「がはっ⁉︎いってぇ〜!」

フラット「ナックルさん!遅刻!急ぐよ!」

ナックル「遅刻…?あ!やっべ、忘れてた!」

フラット「朝食は駅弁で済ませるから早く!

バイクでぶっ飛ばすから!」

ナックル「へ⁉︎ぶっ飛ばすって…

普通に行こうぜ、な!」

フラット「遅刻してるんだから無理に

決まってるでしょ!」

ナックル「だ…だよな…」


フラット「それじゃ…いくよ!」

ナックル「うぉぉぉ!な、何キロ出す気だ⁉︎」

フラット「…」

ナックル「おい、黙ってないで…答えろって!」

フラット「口開けないで。バイクが赤くなる」

ナックル「ムグッ…」 ガシャン!

ナックル「グゥ⁉︎おい、ちょっとスピードー」

フラット「黙って」

ナックル「グッ…」

フラット「ちょっとスピード上げるよ、ブースト解除、

安全装置解除!」

ナックル「へ⁉︎おい、ちょ、まっー」

ブォォォォォォ!

ナックル「うわァァァァ!」


一方浅草駅リニアホーム

バジー「あら、まだペーター様お一人ですか?」

ペーター「あぁ、ナックラーはともかく、

エドまで遅刻とは…」

エド「ハァ、ハァ…すみませんっす、

道に迷ったっす…」

ペーター「…本当は?」

エド「うぐっ…時間間違ったっす」

ペーター「全く…で、後はナックラー達か。やっぱり、

遅刻するか。時間を早めにしておいて良かったかもな」

バジー「やっぱりですわね。いつもより早い集合時間を

設定したのは遅刻対策」

ブォォ ブオン ブオン

バジー「このバイクの音…フラット様ですわ」

ペーター「えっ、こんな悪趣味な音のバイクを

フラット君は使ってるのかい⁈」

バジー「通常時は普通のバイクですけど、

急ぐ時はリミッター全て解除するので」

ペーター「…そんなバイクに乗せられてるのは…

ナックラーだよな」

エド「遅刻魔にはいい薬っすよ」

フラット「すみませーん!ちょっと…

手伝ってくださ〜い!」

ペーター「手伝う…?あ!」

フラット「ナックルさん、背負うのは無理です〜!」

バジー「あらあらあら…今手伝いますわ!」

ペーター「いや、その必要はないだろう。

ちょっと待っててくれ」 

ガサゴソ…

フラット「キウイ…?」

ペーターはナックルの鼻元にキウイの入った

ポリ袋を近づける。

ナックル「スンスン…キウイ‼︎キウイはどこだ⁉︎」

ペーター「おっと!どうしたナックラー?

キウイなんてどこにもないぞ?」

ペーターは背中の後ろにいたフラットの手に

キウイの入ったポリ袋を握らせる。

フラット「へ⁉︎ちょ、ペーターさん⁈」

ペーターはニヤリとやってやったという顔を

見せつける。

バジー「あら、酷い上司ですわね。フラット様、

そのポリ袋、貰っても宜しいでしょうか?」

フラット「え?あ、はい」

バジー「ありがとうございます。では…自分の尻拭いは

自分でやれってんだ、この野郎!」

ペーターに向かって豪速球を投げつけるバジー。

ペーター「いてっ!」

ナックル「あ…やっちまったなペーター」

フラット「えっ…バジー?」

エド「ひ、人が変わってるっす…」

ナックル「バジーを怒らせたらまずいぜ?

なにせ、二重人格だからよ」

フラット「ま、何とか置いてかれてなくて良かった。

ナックルさんも、目覚まし時計壊さないでよ!

おかげで起きれなかったじゃん!」

ナックル「すまなかったな!俺はうるさい音が

苦手でな。反射的に攻撃しちまうんだ!」

ペーター「困ったやつだ」

放送「まもなく、リニアモーターカー、ライト号が、

27番線に参ります。安全鉄柵が展開されますので、

黄色い線より内側に、お下がりください」

フラット「あ、エド、荷物下げて。

黄色い線乗ってるよ」

エド「…」 ガラッ

ナックル「エド、礼ぐらい言えよ。前も言ったが、

お前は先輩なんだぞ」

エド「…どうもっす。おかげで荷物が挟まれずに

すんだっす」

フラット「別にお礼を言われることじゃ…あ!

リニア来たよ!」

ペーター「それじゃ、収納室に荷物を預けるとするか」

ナックル「お、バジーからの仕置きも―って、え゙⁈」

バジー「一体どうされたのですか?

顔中アザだらけですけど...」

全員(お前だよお前)

ペーター「と、とにかく乗ろう。ほら」


フラット「は〜、やっと落ち着ける!」

ナックル「それじゃ、売店行こうぜ!腹減って

死にそうだ!」

フラット「なら客席注文すればいいのに。えーっと...

じゃあ僕は海鮮丼!」

ナックル「なら俺はピザとスパゲッティ、パエリアだ」

フラット「朝からそんなに食べるの?」

ペーター「そこじゃないだろ」

エド「リニア食堂といえどもそこまではないっすよ。

ただの特急列車ならあるっすけど」

ナックル「冗談に決まってるだろ。普通にAセット。

フラットは、Bセット確定だな。お前の大好きな

和食だぜ!」

フラット「和食は好きだけど、火星料理の方が

好きだよ。ないの?」

ナックル「あるわけねぇだろ。火星発の宇宙船なら

分からないでもないが」

フラット「そっか。じゃあ和食でいいや」

ペーター「まぁ、朝食を済ませたら各自休憩を

とってくれて構わないよ。早起きだっただろうしね」

フラット「あ、じゃあお言葉に甘えて。あのさ、

朝食買ってきてくれない?後でオズは返すから」

ナックル「?ったく、しょうがねぇなぁ。

和食だろ?待ってな!」

フラット「ありがと!それじゃ僕は…エード!はい、

お菓子いっぱい持ってきたから皆で食べよ!」

エド「…何で俺から絡んでくるっすか?」

フラット「1番近いからだよ?はい、バジーも。

ブレッセのチョコだよ」

バジー「あ、ありがとうございます!

ブレッセのチョコが好きなのは、誰も知らないと

思ってましたけど…」

フラット「科学部の人から聞いたんです。

ヒナちゃんですよ」

バジー「あ、ヒナ様ですか…」

放送「発射時刻10分前となりました。

席から離れておられるお客様は、5分前には

お戻りなさるよう、お願い申し上げます」

フラット「ん、ん〜!さーて、のんびりしてよっと!

岩手か〜、何があるんだろ」


2節 破壊の願い

ナックル「ほら、起きろフラット!」

フラット「?あれ、寝てたんだ…ふわぁ〜」

ペーター「よし、全員起きたところで…フラット君、

君は法の神だったよね?」

フラット「はい…そうですけど…神というより

天使だけど」

ペーター「そこでだ。車内に忘れ物をした者には

罰ゲームを与えてもらいたい」

フラット「へ⁉︎」

バジー「フラット様からの罰…ですか⁈」

ナックル「コイツ、何するか分かんねぇぞ⁉︎」

ペーター「だからこそだ。忘れ物の多いお前達には

いい薬だろ?」

エド「人間から罰を貰うなんて屈辱っすね。今のうちに

荷物、まとめておくに限るっす」

ナックル「こりゃ、気が抜けねぇな」

放送「ご乗車ありがとうございます。

間もなく、終点、盛岡に着きます。

お忘れ物の無いようにご注意ください。本日のご利用、

ありがとうございました」

ペーター「それじゃ、よろしく頼んだよ、フラット君」

フラット「…無茶振りじゃん」

ナックル「…アイツがあんな楽しそうな顔したの、

久々に見たな。お前、なんかしたのか?」

フラット「何もしてないよ!逆にされたんだけど!」

ナックル「ガッハハ!たしかにな!」

バジー「ナックル様、お声が大きいですわ!

周りのお客様が見ていますわよ!」

「おい、あれデ・ロワーじゃね?」

「うぉぉぉ!盛岡にくるべか⁉︎」

フラット「ちょ、バレちゃったじゃん!もう…」

ナックル「バレたっていいじゃねぇか!ファンとの

交流も、大事な作業だぜ!」

ペーター「それはここですることではないだろう?

何を抜かしているんだナックラー?」

ナックル「ぎくっ…分かってる。調子乗って

悪かったな」

フラット「ナックルさんが謝った…?えっ、

今日はひょうでも降る?」

エド「たしかにナックラーさんがこんな素直に

謝るのは珍しいっすね」

バジー「ペーター様を怒らせると怖いですからね。

で、どうするんですの?流石に逃げることはできそうに

ありませんわね」

ペーター「仕方あるまい、フラット君はまだ経験が

少ないからちょうどいい機会だ。盛岡駅前で、

許可が降り次第サイン会でも開くか」

エド「俺は参加しないっすよ」

バジー「…エド様…」

フラット「ダーメ!折角ファンが集まってくれたのに

そっけない対応してどうすんの!」

エド「人間が勝手に集まってきただけっす。

こっちの志望じゃないっすもん」

フラット「いいからいいから!絶対楽しいよ!」

エド「…しつこいっすね!いい加減分かれっす!」

「えっ、エドってあんな口悪いの?」

「信じらんなーい!」

フラット「ちょ…ほら、エド!」

エド「俺のせいっすか⁉︎今のはフラットがー」

ナックル「折角誘ってくれたのにあんな返しじゃ、

そりゃ悪く思われるな」

フラット「と、とりあえずお席にお戻りください!

もう少しで着くと思うので!」

ペーター「そうだね、すみませんが駅に着くまでは

お席についてくださりますようお願いします」


放送「盛岡〜、盛岡です。お忘れ物の無いように

ご注意下さい」

ペーター「よし、とりあえず着いたか。じゃ、

降りるとするか」


フラット「僕は…忘れ物してないね」

バジー「私も大丈夫ですわ」

ナックル「俺もないぜ!」

ペーター「無論、俺も」

エド「俺だって…あれ…あれ?」

ペーター「?どうした?」

エド「な、何でもないっすよ!アハハ〜!」

駅員「お客様。このブロマイドの束ですが…」

ナックル「?これって…エドが持ってきてたんじゃー」

ペーター「なるほど。フラット君、面白いのを頼むよ」

フラット「面白いのって…僕の罰は罪の重さで

変わるんだけど…まぁ、やるだけやりますか。

神業・与罰!」

エド「ガッ!」

フラット「あ、あれ⁉︎暴走しちゃった!」

エド「ガッ、ちょっ、やめっ!」

フラット「ご、ごめん!何で暴走したんだろ?」

ナックル「ガッハッハ!コイツにはいい罰じゃねぇか?」

バジー「ナックル様、少しは心配なさってください!」

ナックル「はいはい、分かってるって。大丈夫か…?」

倒れ込んだエドの鞄から見えた、毛むくじゃらの

ある物がナックルの目に映った。

ナックル「これって…キウイ!」

ペーター「キウイ⁉︎おいエド?」

エド「ギクっ!」

バジー「だから罰が重かったんですのね」

ナックル「自業自得じゃねぇか!心配する意味なしだぜ!」

ペーター「それじゃ、宿に向かうか」


フラット「ここですか?」

ペーター「そうだ」

ナックル「岩手のイベントだといつもここだよな」

バジー「不満でも?温泉も気持ちいいですし、

オーナーもいい人じゃないですか」

エド「俺は初めてっすし、何でもいいっすよ」

オーナー「あ、ようこそ!お待ちしておりました、

デ・ロワーの皆様。本日は、地球1のファイター企業、アカデミーの方々に来て頂き、誠に感謝いたします」

ペーター「大袈裟ですよ、デ・ロワーは氷山の一角に

すぎません」

フラット「…?デ・ロワーが地球1の

ファイター企業じゃないの?」

ナックル「デ・ロワーは、アカデミーっていう

ファイター企業に属してる企業だ」

バジー「デ・ロワーは、ほとんどのファイターを

アカデミーに行かせていますから、そこから

地球1のファイター企業という名称が生まれたんですわ」

フラット「ややっこしいなぁ…」

オーナー「あれ、新しいお顔が」

ナックル「お、気づいたか!自己紹介頼むぜ!」

フラット「フラット・クラリオです。入りたての新人です」

ナックル「それだけじゃねぇだろ!お前の立場は?」

フラット「隊長!って…本当なの?」

エド「俺はまだ認めてないっすけどね。あ、俺は

エド・リック・ティガっす」

オーナー「はい、フラット様とエド様ですね。

私はこの旅館のオーナーを務めております、

オッカと申します。1ヶ月間、よろしくお願いします」

フラット「はい、よろしくお願いします」

オッカ「では、こちらへ。チェックインしてもらいたいので」

ペーター「あ、それは俺が。ナックラー、コイツらに

部屋の場所案内しといてくれ」

ナックル「あいよ。こっちだ、2人とも」

オッカ「あ、バジー様はいつものお部屋ですよ」

ナックル「いつもの部屋?」

バジー「…はぁ」


ナックル「おっと、ここだったな」

バジー「こういう扱いは、あまり慣れていませんわ」

あまり嬉しそうな顔を見せずに、バジーは扉を開ける。

フラット「えっ!豪華!」

エド「な、何すかこれ⁉︎スウィートルームじゃないっすか!」

ナックル「フラットは知ってるだろ?バジーの家」

フラット「…バジーの家…?」

ナックル「おいおい、大学じゃ有名な話だぞ?

ケプラ家だよケプラ家!超有名な化学開発企業の!」

フラット「えーっと…」

フラットは聞いたことのあるような、ないような話に

戸惑う。まるで夢を思い出すかのような感覚に襲われた

フラット「……ケプラ家……」

ナックル「?お前、少しはニュースに興味持てよ。

まぁ、今はどうでもいいか。俺達の部屋はこっちだ!」

フラット「……何だったんだろ…今の感覚…」


獅子獣人「…勘付いてきましたか…そろそろ、時でしょうか」


ナックル「ふぅ…やっと一息つける〜」

フラット「ん…ん〜!で、イベントって何?」

ナックル「ダァ〜!そっからかよ!」

エド「常識っすよ常識!」

フラット「そんなこと言われても、知らないものは

知らないもん!」

ナックル「これだこれ!」

フラット「台本?えーっと…新戦人物語?」

ナックル「ヒーローショーだ!子供に夢を与える、

それがイベントだ!」

エド「俺はやらないっすよ」

ナックル「照明係は欲しいしな。お陰で事故が

減ったぜ」

フラット「事故?」

ナックル「前まではバジーが照明係だったんだが、

どこか見落とししてて、器具が落ちたり、照明が

切れたり…色々あったんだ」

フラット「怖っ⁉︎」

ナックル「怪我人が出なかったのがラッキーだったな!」

エド「ま、まずは準備っす。先に行ってるっすよ」

ナックル「…はぁ…まだ場所も言われてないのに

どこに行くってんだ?」

エド「別に散歩も兼ねてっす」

ナックル「ふーん…散歩か…珍しいな。人が多いような

場所に行こうとするなんてよ」

エド「気分転換っすよ。普通のことっす」

ナックル「お前にとっては普通じゃねぇから

聞いてんのによ」

フラット「それより、ペーターさんの所に行こうよ。

準備場所聞かないと何も出来ないし」

ナックル「そうするか」

と、部屋から出ようとすると、ちょうどペーターが

部屋に訪れた。

ペーター「おっと、どうした?」

フラット「あ、ちょうど良かったです。イベントって

どこで行うんですか?」

ペーター「あ、忘れてた。宿の目の前にある公園だよ」

フラット「分かりました!じゃ、準備やろっか!」

ペーター「あ、イベント考案者はオッカさんだから。

おっとそうだった!その彼が君達を来賓室に呼んでいたんだった」

フラット「でもエドが…」

ナックル「アイツが来るわけねぇだろ」

フラット「ダメだよ、今ならまだ玄関だと思うから

ちょっと先に行ってて!」

ナックル「あ…ったく」

ペーター「ま、すぐに戻ってくるだろ」


フラット「エド〜!良かった、追いついた」

エド「どうしたんすか?」

フラット「オッカさんが来賓室に来るようにって!

行こっ!」

エド「…俺はー」

フラット「ほら、行こう行こう!」

エド「ちょっ、人の話を聞けっす〜!」


フラット「今来ました〜!」

ナックル「エドも来たか…」

エド「ほぼ強引っすけどね」

オッカ「それで…まずナックル様にお願いです。

以前のように酔っ払って食堂を荒らさぬようご注意ください」

ナックル「おい待て!それは言わなくてもいいだろ!

言うとしても、何も全員の前でー」

オッカ「皆様にも知っておいてもらいたくて」

エド「ナックラーさん、そんなことしたっすか?」

ペーター「あぁ、おかげで説教されてたな」

フラット「分かりました、厳重に見張っておきます」

オッカ「それでは本題に。イベントは宿の前にあります

公園を使ってもらいます。許可は降りてますので。

それと、これは来賓室でしか話せないことです」

ペーター「…何か事件でも?」

先程とは違う、真剣な声色になるペーター。

オッカ「実は…今、盛岡では破壊事件が

多発しておりまして。それがこの度デ・ロワーに

来て頂いた理由でもあります」

ナックル「なるほど、ヴァイスか。

俺の得意分野じゃねぇか!」

ペーター「まぁ待て。それで犯人の目星はついてるのですか?」

オッカ「はい、この子です?」

フラット「ん…?子供?」

オッカ「いえ、これは30年前の写真です。今は高校も

卒業していい人生を送るのでは…そう思ってました。

しかし…この盛岡に戻ってきた彼女は以前のような

優しさなどない、絵本に出てくる破壊神になっていました」

エド「絵本に出てくる破壊神…っすか?」

フラット「じゃあ、この人は破壊神?」

オッカ「今とは全く違う破壊神です。この街を出る前は

人助けのために破壊の力を使っていました」

ナックル「人助けのために…破壊?」

オッカ「そうです。台風があれば土石流の跡を

破壊して、工事に邪魔な物を破壊して…ために

力が暴走して壊しすぎることもありましたが、

それでも私達にとっては皮肉でも何でもなく、彼女は

神だった。なのに…何で…」

フラット「…きっと理由があるはず!」

ペーター「たしかに、帰ってきていきなり人が

変わるとは思えない…だが、引っかかる点がある

どうしてこの街に戻ってきた?」

フラット「そういうのは、本人に聞くのが1番でしょ?」

ペーター「どうやって会うつもりなんだ?」

フラット「班を分けます!Aグループは僕とエドで、

午前はイベント準備、午後は盛岡市内の警備!

Bグループはこの逆で、ナックルさんとバジー!」

ペーター「だが…作業効率が落ちるぞ」

フラット「その辺は問題なく。僕がいれば

すぐに終わるので!」

ペーター「はぁ?」

エド「ちょっと待つっす!何で俺まで準備っすか⁈」

フラット「いいじゃん、やろ?」

エド「気になったっすけど、何でそんなに

俺につきまとうっすか⁈」

フラット「つきまとうは酷いな〜。まぁ、理由は特にないよ」

エド「じゃあやめてくださいっす!

俺は仲良くする気なんてないっすから」

フラット「まっ、今日はもう午後近いし…エド、

警備の時間だよ」

エド「だから俺はー」

フラット「それじゃ、行ってきまーす!」

エド「ちょっと、離せっす!」

ペーター「ハッハハ、エド君も明るくなってきたな」

ナックル「驚いたぜ。アイツがあんな顔するなんてな。

初対面の時が嘘みたいだ」


フラット「じゃ、外に出たことだし!昼食にしよっか!」

エド「なら一旦解散っすね。俺は1人でー」

フラット「ダーメ!2人分予約しちゃってるからね!」

エド「ぐっ…先手打たれたっす…」

フラット「じゃ、決まりだね!エドも気にいると

思うよ!こっち!」

エド「だからそんな強く引っ張るなっす!」


フラット「予約したフラットです」

店員「あ、承っております。席はこちらで?」

フラット「はい!ほら、エド!」

エド「……」

フラット「どう?気にいると思ったんだけど」

エド「…俺の…故郷そっくりっす…」

フラット「えへへ、盛岡にエドみたいなヒョウ獣人の

世界から流れてきた人の店があるって知って調べたら

故郷を再現したってあってさ!」

エド「……何で……」

フラット「?」

エド「何でそこまで俺のこと…!」

フラット「だから大した理由はないよ。ただ…

エドと友達になりたいから!」

エド「えっ…」

フラット「分かってる…つもり。エドが僕のこと

どう思ってるのか。だから、分かり合えないとは

分かってる上で、僕はエドと分かち合えたらいいなって

そう思ってる!」

エド「…友達…分かち合える…」

エドが少しうつむくと、とあるものがフラットの目に映った

フラット「あっ……」

エド「?」

フラット「……だから、か。エド、辛かったね」

エド「な、何のことっすか?」

フラット「実験台として扱われて、辛かったでしょ?」

エド「⁉︎何で分かるっすか⁈」

フラット「昔、流れ者がここに来るようになってから

話題になったニュースがあってね。

それが実験台だった。脳をいじったり、もしくは

薬を与えて変化を見たり。エドの頭に…

その跡があって…ごめん!」

エド「…フラット!」

フラット「!うん、何⁉︎」

エド「俺…すっごく…すっごく嬉しいっす!」

フラット「えっ…?嬉しい…?」

エド「俺…この世界に来て…もう幸せは叶わないって

思ってたっす…でも……フラットが…色々と

やってくれて…それなのに俺は……

酷いことばっか言って…謝るのは俺っす!

ごめんなさいっす!」

フラット「酷いこと…?何のこと?よく分からないけど

昼食にしよ!お腹ぺこぺこだよー」

エド「…はいっす!俺も腹ペコっす!」

フラット「それじゃ…僕は…って読めない」

エド「そりゃそうっすよ!これは俺のとこの

言語っすもん!オススメは…これっすね!

こっちの世界でいったらピザっすよ!

すごい大きいんすよ!」

フラット「それ、2人で食べ切れる?」

エド「ムリっすよ!」

フラット「じゃあ別の」

エド「ならこれっすね!サラダっす!茎野菜が

多いっすけど、食感が面白くてバクバクいけるっすよ!」

フラット「じゃあそれと…」

2人は次々とタブレットに注文をしていく。


フラット「こんな感じ?」

エド「そうっすね!でも、俺がいなかったら

どうするつもりだったんすか?」

フラット「えっ、考えてないよ」

エド「何すかもう」

フラット「アッハハ、無理矢理にでも連れてくるつもり

だったしね」

エド「あの…料理が来るまではさっきの話、

続けてもいいっすか?」

フラット「もちろん」

エド「何でフラットは俺にあれこれやってくれたんすか?」

フラット「さっきも言ったじゃん、友達にー」

エド「それは分かってるっす。何でそう思ったのかって話っすよ」

フラット「あ、そゆこと。実を言うとね、

僕も分からない。昔からそうなんだ。エドみたいに

孤独になりたがる人を助けたいって思うんだ。

寂しいのを堪えるのって…辛いってこと知ってるから」

エド「…フラットも同じ思いしたんすか?」

フラット「すごく小さい時にね。神力を

上手く扱えなくて、すぐ暴走させちゃって」


フラット「あ…」

「お?おーい!コイツまたタマネギ産んだぜ?」

「やーいタマネギ星人!」

フラット「…っ!」


フラット「結構虐められてね。理解されないって

これ以上のないほど心に傷が残るからね。

誰も救ってくれなかった。声を上げても、

僕の力に恐れて大人も近づいてくれなかった」

エド「…」

フラット「でもね、この力のおかげで僕は助けられた!」


2942年。東日本に大津波を引き起こすほどの大地震が

起きた1.27。それは正午に起きた。

フラット「と、とりあえず校庭に出ないと!」

「嘘⁉︎非常階段壊れてる!」

「2回も火事で降りらねないぞ!」

フラット「…逃げられない…?嫌…生きたい…

生きたいよ!」

その叫びと共に、水道の蛇口が吹っ飛び、水が溢れ、

教室の机や教卓の木面が外される。水道の水は

火事による火を消し、木面は非常階段の破損部分を

補うかのようになっていた。


フラット「た…助かった…?」

「今の…お前がやったんだよな……悪かった。

あんなこと言って…カッコよかった!」

フラット「えっ…?」


フラット「あの地震から、僕の神力は安定した。

自分の思うように使えるようになった」

エド「いい話っすね」

店員「はい、お待たせしましたっす」

フラット「え」

店員「あっ、ごめんなさい。つい同じ世界の人を

見たら、安心しちゃって…」

エド「この、〜っすってのは、俺達の人種の

方言みたいなもんっすよ。だから仕方ないっすよ!」

フラット「そういうものなんだ。じゃ、

いただきまーす!」

エド「俺も、いただきますっす!」


ノール「…カジノ…こんな物があるとは…」


フラット「ごちそうさま!美味しかった〜」

エド「まさか郷土料理を食べれるなんて、

夢にも思ってなかったっす!」

フラット「じゃ、お会計も済ませたし、そろそろ警備にー」

ドーン!ドカン!

フラット「⁉︎爆発⁉︎行ってみるよ!」

エド「はいっす!」


フラット「こ…これって…」

エド「見るっす!カジノの看板っすよ!」

フラット「じゃあ…この瓦礫の山はカジノ⁉︎

嘘…でもこの壊れようは…爆弾?」

?「よく分かったな!」

?「だが兄ちゃん?逃げなかったとは驚きだ」

フラット「誰だ!」

雪豹獣人「俺はキルユウ」

雪狼獣人「で、俺がバルシアっていうんだ!」

エド「よく分からないっすけど、アンタらが犯人っすか⁉︎」

キルユウ「あぁ、そうだ。ノールが破壊活動を

してると聞いてな」

バルシア「邪魔しに来たんだ!」

フラット「邪魔って…協力してるようにしか

見えないけど⁈」

キルユウ「協力…?まぁいい。テメェら、覚悟しとけ!

俺達にかかれば、テメェらごときー」

ノール「やめろ、2人とも」

キルユウ「ノール⁉︎」

バルシア「姉御!」

ノール「お前達、何をしている?ケンカを

ふっかけるなど、チンピラのすることだ。私の目的は

達成した。もう帰っていいぞ」

キルユウ「分かった…じゃあな!」

バルシア「姉御、次も任せとけ!」

ノール「…はぁ、ではな。なるべく私と会わないことだ」

フラット「あ、待って!目的は何⁉︎」

ノール「…私利私欲の破壊。それだけ」

フラット「あっ…」

エド「フラット、アイツ、さっきの写真のやつと

似てなかったっすか?」

フラット「たしかに…名前とか聞けば1発かも。

でも…こんな大規模な破壊をして誰も怪我人が

いないなんてな…」

エド「まぁ、昼なんすから、カジノは営業時間外っすよ」

フラット「そりゃまぁ…そうだけど…とりあえず、

報告だけしよっか。宿に戻ろ」

エド「そうっすね」


ナックル「ふぅ…俺も警備行きたかったなー」

バジー「明日になれば行けますわよ」

ナックル「そうだなぁ…」

フラット「おーい、ナックルさーん!」

ナックル「?フラット?」

フラット「ナックルさん、ペーターさんは?」

ナックル「いねぇよ。来賓室だぜ。それより、

警備に行ってたんじゃねぇのか?さっき、

バカでかい音がしたが…」

フラット「じゃ、教えてあげる。エド、教えられる?」

エド「はいっす!えーっと…」

ナックル「ん⁉︎おい、エド?何の真似だ?」

エド「あ!酷いっす!そんな言い方しなくても

いいじゃないっすか!」

ナックル「…おいフラット。何した?」

フラット「特になーんにも?ね!友達だもんね?」

エド「何すかその言い方…なんか鼻につくっす」

フラット「っハハ!冗談冗談!」

ナックル「…スゲェな、お前。で、

教えてくれるんだろ?あの音のこと」

エド「あ、そうだったっす。実は俺達、

オッカさんの言ってたヴァイスに会ったっすよ」

ナックル「…ハァァァァァァ⁉︎」


3節 守りたいから

ナックル「ハァァァァァァ⁉︎」

フラット「うるさっ!」

エド「ちょ、耳が!耳が!」

ナックル「す、すまねぇ…いや、驚き5000倍だ!」

フラット「んな大袈裟な…」

ナックル「とりあえず、ペーター達にも

伝えておいた方がいいんじゃねぇか?」

フラット「うん、そうするとこだよ。準備、頑張ってね」

ナックル「おう!こっちは任せとけよ!」

フラット「じゃ、行こうか!」

エド「はいっす!」


ペーター「ん〜…ならここをついて、王手!」

オッカ「おわっ…これは参りました…」

ペーター「いや、苦戦した〜」

フラット「ペーターさーん!」

ペーター「おわわっ!」

フラット「大ニュースです、大ニュース!」

ペーター「ど、どうしたんだい?」

フラット「ノールという、いかにも先程言っていた

ヴァイスらしき人と会いました!」

オッカ「会ったのですか、ノールと!」

エド「会いましたっす!破壊活動の理由は

私利私欲の破壊みたいっすよ!」

ペーター「…エド君?やけにハキハキと話すね」

エド「なんか…俺のイメージってどんなっすか⁈」

フラット「ま、まぁ…キャラが変わりすぎってのは

あるかな…でも、今のエドの方がいいな」

エド「って、それより!そのヴァイスはノールで

いいんすね!」

オッカ「はい…私利私欲の破壊?」

ペーター「何か気になる点でも?」

オッカ「…ノールは盛岡にいるときは、そんなこと

なかったんですよ。普通の、ちょっと大人しい

女の子って感じで。家族といるときなんて、

よく弟さんと遊んでおられて、この宿に来ると

必ず、温泉上がりに牛乳が欲しいとワガママを

言う子でしたから…」

フラット「えっ…あのノールが…?」

オッカ「今とは大違いですよ。よく笑う子だったのに」

ペーター「…ノールは盛岡から出て、

どこに行ったんですか?」

オッカ「沖縄ですよ。何でも、地震の影響で

祖父母の家に行くことになったとか…でも、

その割には荷物が少なかったような…」

フラット「その時、ノールはどんな感じでしたか?」

オッカ「涙ぐんでさよならと言っておりましたが…

きっと、盛岡から去ることが辛かったのでしょう」

フラット「…そうですか。とりあえず、報告は

これだけです。では。エド、僕達も準備行こっか」

エド「はいっす!」

ペーター「…あのエド君が、あんなに笑えるように…」


ナックル「よし、こんなもんか!」

フラット「おーい…って、もう一区切り

ついちゃってたか」

バジー「私がいますので、そんなに時間は

かかりませんわ」

エド「まだこんな時間っすね…何するっすか?」

フラット「そうだ!ナックルさん、大量にゲーム

持ってきてたよね?皆でやろうよ!」

ナックル「お、いいなそれ!」

エド「ゲームっすか!やりたいっす!」

ナックル「お、お前もやるか!珍しいな!」

エド「ゲームは大好きっすもん!」

バジー「あ、私は辞めておきますわ。ゲームをやると

プログラムのこととか気にしちゃうタイプですので」

フラット「本当に理系…なんか機械をパッと見ただけで

設計図とか書けそう」

バジー「あら、描けますわよ?」

フラット「えっ⁉︎」

バジー「フフッ、私の講義、こっそり参加してみます?

面白いですわよ」

フラット「いや、やめときます、僕文系ですから!」

バジー「そうですか?面白いですのに」

エド「俺が行きたいっすよ!これでも銀座大学の

生徒っすよ!」

ナックル「銀大⁉︎理系大学じゃトップじゃねぇか!」

フラット「東京総合大学所属でもトップの大学じゃん!

ていうか、何で進学したの?」

エド「…ほぼ無理矢理っす。でも、

行かなかったっすけど」

フラット「えっ…入学したのはいつ?」

エド「一昨年っす!」

フラット「もう退学になってるんじゃ?」

バジー「なるわけありませんわ。大学に入ったのは

私達が出会った時ですもの。犯罪さえ犯さなければ、

もしくは退学届を出さない限りは退学なんか

なりませんから」

フラット「あ、出席数は関係ないんだ」

ナックル「でも、留年にはなってるからな⁈

良くはないぞ!」

エド「分かってるっすよー!それよりゲームっす!」

フラット「そうだね、部屋に戻ろ!」


数時間後ー

バジー「失礼致します。皆さん、夕食のお時間ですわ。

食堂の方にー」

フラット「やった!また勝ち!」

ナックル「ウッソだろ⁉︎さっきまで連敗だったやつが!」

エド「何が起こるのか分からないのがカブスゴの

面白さっすよね!」

バジー「…フフッ、仲睦まじくて羨ましいですわ」

フラット「あれ、バジー…あ、晩御飯!」

ナックル「そういや、腹減ったな!」

エド「飯っす飯飯!」

フラット「あ…あんなにはしゃいで…

ちょっと待ってよ!僕も一緒に行く!」

ナックル「…スゲェな…誰かに笑顔を与えるか。

俺にはできない笑顔だ」

バジー「どうされました?食堂、参りますわよ」

ナックル「あ、おう!」


フラット「うわぁ、フルコースじゃん!」

エド「どれもこれも美味そうっすね!」

フラット「あ!欲張りすぎだよ!」

ペーター「おっ、君達も来てたか。それより、

エド君がフラット君と一緒にいるのは珍しいね」

エド「そんなことないっすよ!そうっすよね、フラット!」

フラット「ねっ!じゃ、席に行こ!」

エド「はいっす!」

ペーター「…『予想通り』だ。エド君も、そろそろか」


ナックル「お、相変わらずフラットの皿は綺麗だよな」

フラット「ナックルさんみたいにグチャグチャには

しないよ。でも、この料理美味しい!」

オッカ「驚きましたか?」

ナックル「オッカさんか。でも前来た時には

こんな料理なかっただろ?」

オッカ「ここの料理は、全てお客様が作るのですよ。

このお料理も、お客様が作ったものです」

ナックル「それ、マジか⁉︎」

エド「料理の天才っすね!」

ナックル「だったらフラット!お前の茶碗蒸し、

作ってこいよ!」

フラット「えっ…この人数だと…うん、足りる!

ちょっと待ってて!」

エド「俺も手伝うっす!」

バジー「…エド様、すっかり変わりましたわね。

フラット様は何をしたのでしょう?」

ペーター「それは分からんが…それより食べてようか」

ナックル「そうだな!いやぁ〜楽しみだな、

フラットの茶碗蒸し!」

バジー「そんなに美味しいんですか?」

ナックル「そりゃもう匂いだけでご飯が進む進む!」

バジー「そ、それは食べてみたいですわ」


フラット「手も洗ったし…じゃあ!」

「?あっ!」

エド「⁉︎この声って…ヴァイスの!」

バルシア「なっ、どうしてあなた達がここに⁈

もしかして泊まってた⁉︎」

フラット「えっ…あ、そっちも⁈」

エド「まさか、この宿も壊すつもりっすか⁉︎それなら、

今のうちに仕留めておくっす!」

フラット「ちょ、ストーップ!」

エド「ちょ、何するっすか!」

フラット「まずはちゃんと話を聞いてから!」

バルシア「よ、良かった…そんなつもりないです!」

フラット「…こりゃ意外な答え。でも、じゃあ何で

カジノを破壊したのかな?」

バルシア「ぐっ…それは俺達の問題です!他者は

出しゃばらなくて結構です!」

フラット「他者って…僕達、ノールのことで

依頼されているんだし、どちらかと言えば

敵だからね?」

バルシア「余計なお世話です!これは…恩返しなんです」

フラット「恩返し…?」

バルシア「姉御は……俺達兄弟を助けてくれたんです。

義姉ですけど…マフィアに囚われてた俺たちを」


ノール「…大丈夫。お前達が手を汚す必要はない。

私がやる」

キルユウ「ノール、何もお前がー」

ノール「いいんだ、キルユウは。私の破壊があれば、

殺す必要はない。行方をくらませて、殺した風に見せる」

バルシア「おぉー!流石は姉御!」

キルユウ「いいのか…?任せてしまっても…」

ノール「だって…お前達をこんな目に遭わせたのは

私だ。2人は何もしないでほしい」

バルシア「…姉御…」


バルシア「俺達はマフィアの仕事をほとんど

姉御に頼んでばっかでした。そして…姉御は

組織を裏切りました」


ノール「シーラス。裏切ったのは私だ」

シーラス「…そうか…面白い。裏切ったらどうなるか…

言っておいたはずだが?」

ノール「母さんと父さんを殺す。いいとも。私も

一緒に死ねるなら!」

シーラス「愚かなやつめ…なら…!」 

ピッ! どかーん!

ノール「…母さん…父さん…ごめんなさい…」

キルユウ「させるか!」

ノール「⁉︎キルユウ…!」

キルユウ「よっと!大丈夫か?」

バルシア「兄貴!ナイス!」

ノール「あ…あっ…!」


バルシア「その次の日から、姉御は行方不明でした。

そして、盛岡で破壊時間が起こってるって聞いて、

もしかしたらと思って帰ってみたら、

姉御だったというわけです」

エド「じゃあ…恩返しっていうのは…

破壊させないためっすか⁉︎」

バルシア「そういうことだ。それでは…俺は行きます」

フラット「…行っちゃった…ノールって…

そんな過去があったんだ…」

エド「だからと言って罪を犯していいわけじゃないっす!」

フラット「…ねぇ」

エド「?」

フラット「茶碗蒸し作ろっか!」

と、大きな声が厨房に響く。

バルシア「…まさか…」

フラット「皆で食べよ!美味しい料理は皆で食べると

美味しく食べられるんだ!」

エド「急に何すか?」

フラット「ううん、別に?」

バルシア「……」 

フラット「腕によりをかけて作るよ!」


1時間後ー

フラット「お待たせ〜!」

エド「茶碗蒸しは時間かかるっすね〜」

フラット「…はい」

バルシア「…どうも…」

フラット「良かった、伝わって」

ナックル「?知り合いか?」

フラット「うん!ノールのこと、知ってるんだ!

今日も会ったことだし」

ペーター「あ、そのことだが。実は明日、早速警察が

来る。ノールのようなヴァイスを

専門に取り扱っててね、ノールは東京でも軽い事件は

起こしていたらしい」

フラット「なるほど。分かりました。それより…

食べていいですか?冷めちゃうと卵豆腐ですよ」

ペーター「それもそうだね。食べようか」

バルシア「姉御が…捕まる…⁉︎」

フラット「…あのさ、エドってなんか

やらかしたんでしょ?何でファイターになれたの?」

エド「あ、それは特権っすよ!ある程度の罪を犯すと

ファイターとして命をかけて戦うっす!俺の罪の分は

終わったっすけど、ファイターになって気付いたっす!

人を脅かす存在を片っ端から倒してく!

それが俺の正義っす!」

フラット「へぇ〜…ヴァイスでもファイターに

なれることってあるんだ。驚きだよ」

バルシア「…ホッ」

フラット「…あ、もうこんな時間か…明日も準備あるし

そろそろ、温泉でも行こうか」

ナックル「えー…まだ21時だぜ?」

フラット「…じゃ、一人で入ってよっと」

バルシア「温泉…誰もいないうちに…」

フラット「それじゃ、また後で」


フラット「ふぅ…それで、いるんでしょ?キルユウも」

キルユウ「ギクっ」

フラット「大丈夫。事情は分かったから。任せてよ。

あと…腕、怪我してるでしょ?」

キルユウ「何で知ってる⁉︎」

フラット「カジノを壊したあと、瓦礫か何かで

腕、痛めたでしょ?骨にヒビは入ってたと思うよ。

隠してたけど内出血してたし」

キルユウ「…お前はすごいな。何でもお見通しってか?」

フラット「そういうわけじゃないけどね。

で、それじゃ温泉無理でしょ?バルシアも…

一緒にどう?皆は来ないし」

バルシア「…いいんですか?」

フラット「だから、いいって。それに、2人は

何も悪くない。ノールが1番の原因だから。

悪い意味じゃないよ⁉︎」

キルユウ「…それは分かってる。俺達がノールの心を

救いたい!寂しそうな目をしてるんだ…アイツは…」

バルシア「昔のように、家族として

笑い合いたいんです!」

フラット「…家族として…か。いいな…家族がいて」

バルシア「あ…ごめんなさい!」

キルユウ「な、なんか楽しい話題ないか?」

フラット「…ぷっ、アッハハハハ!やっぱりだ!

誰も、ヴァイスじゃない。誰かを思って、

正しいと思ってる!本当のヴァイスだったら、

ごめんなんか言わないもん!」

キルユウ「!」

バルシア「……」

フラット「だから…大丈夫。僕達も手伝うよ。ノールを

笑わすこと!」

キルユウ「…ありがとよ。アンタに会えて良かったよ」

バルシア「約束ですからね!姉御が捕まったら

来世まで恨みます!」

フラット「そりゃ怖い。それより温泉行こ〜?」

キルユウ「そうだな、こっちだ、温泉は」


フラット「ぷひぃ〜、あったかあったか」

キルユウ「もういいって、早く流せって」

バルシア「ダメだよー、兄貴の毛硬いもん!

柔らかくなるまで洗うからね!」

フラット「…昔の僕とナックルさんみたい」 ガラッ

エド「?あっ!」

キルユウ「げっ!」

フラット「エード!こっちこっち!」

エド「コイツら、ほっといて良いんすか⁈」

フラット「?誰?バルシアとキルユウにしては

愛想がいいと思うけどなぁ」

エド「た…たしかに…」

フラット「それじゃ、僕も洗おっかな」

(あ…もって言っちゃった!)

エド「俺ももうっすか⁉︎全然浸かってないっす!」

フラット「あっ、あぁごめん!言い間違いだから!」

エド「あ、そうっすか?本当に天然っすよね」

フラット(良かったー、天然で)


翌日ー

フラット「よーし!それじゃあ準備、

頑張ってやろっか!」

ナックル「何で俺達まで…」

フラット「情報が昨日のうちに集まったし、

何より、全然進んでないんだもん!」

バジー「すみません、ナックル様に

うまく教えられなくて…」

エド「ナックラーさんっすか。いつものことっすね。

器具の方は俺が片付けとくっす」

フラット「じゃ、僕は舞台の方を」

ナックル「じゃあ俺達は警備にー」

フラット「行かなくていいから」

ナックル「何でだよ!」

フラット「ナックルさんは不器用だから、見てもらって

次にやってもらいたいから!見ててよ…神業・組立!」

ナックル「出来るか!」

フラット「冗談だって。でもー」

金剛狼獣人「ここがイベント会場ですか〜!本官、

見てもいいですか!」

白狼獣人「今はそれどころじゃないだろ。

情報収集だ。だろ、警部?」

警部?「そうだ。ラルバ、お前は特別に

連れてきたんだ」

ラルバ「え〜!見たいです、見たいです!」

白狼獣人「なら、いい結果でも見せてみろ。で、

フェアード。あそこにいたぞ」

フェアード「あ、久しぶりだなぁ、ナックラー!

それで、君達が新人君達か!」

エド「はいっす!エド・リック・ティガっす!」

フラット「僕はフラット・クラリオです。

それで情報ですよね」

フェアード「あ、それは隊長のナックラーにー」

ナックル「隊長はフラットだぜ」

フェアード「はぁ⁉︎新人に隊長⁉︎何考えてんだ、

あのメガネは」

デラガ「まぁ、いいだろ。おい、情報を話してくれ」

フラット「はい、まずー」

と、フラットが口を開いた瞬間ー

ノール「イベント…汚らわしい!私利私欲に

ありふれた物など…壊してくれる!」

デラガ「⁉︎今の声!」

ノール「神業・爆発!」

どかーん!

フラット「あぁっ!僕達の…努力が…!」

ノール「ん?これ、お前らのか」

ラルバ「見つけましたよ!さっ、本官がバンバン

撃ちまくってー」

フェアード「保護だと言っているだろ!デラガも

手伝ってくれ!」

デラガ「了解した。戦闘モード起動。指揮者はいるか?」

フラット「あ、僕が指揮者です!カメラはバジー!

ナックルさん…はいいや。エド、いくよ!」

ナックル「は?俺は⁈」

フラット「民間人の避難!」

ナックル「チェ、分かったぜ!」

ノール「…避難も何も、もう帰るんだが…」

エド「俺…頼られてるっす!よっしゃ、

張り切っていくっす!」

フラット「ノール、残念だけど今回ばかりは

逃がさないよ。だよね、キルユウ、バルシア?」

キルユウ「あぁ、作戦通りだ!」

バルシア「こうも上手くいくんですね!」

ノール「お前ら⁉︎」

キルユウ「俺達も、同じ犯罪者だ。それでも

逃げようと?」

ノール「…黙れ!」

エド「来るっすよ!」

フラット「うん、いくよ!」

ノール「第一破壊『炎』術・『バンフレイムクラッシュ』!」

エド「うわっと!」

フラット「神業・結界!」

ノール「何⁉︎」

キルユウ「今だ、バルシア!」

バルシア「取り押さえ装置、起動!」

ノール「ぐっ…お前ら…!もういい!神業・破壊!」

フラット「やっと本気になったね…いくよ!」

ノール「私の家族を…消したお前らを…

兄弟だとは思ってない!まずは…お前からだ!

第一破壊『闇之』術・『闇夜行特急列車』!」

フラット「…!」

エド「フラット、危ないっす!」

ノール「なっ⁉︎」

フラット「エド!」

フラットを庇うために立ち塞がったエド。しかし、

ノールの必殺技を形成するナイフ型の神器が

エドの背中に次々と刺さっていく。

エド「グゥっ‼︎」

ノール「あっ…あっ…!」

ノールはある日の夜を思い出す。


父親「ノール…俺達は置いていけ」

ノール「ど、どういうこと…?」

母親「いいのよ。あなたは生きなさい。お母さん達は

置いていって。あの子達のためにも」

ノール「…できるわけないでしょ⁈何でー」

母親「ノールに私達はもう必要ないもの。ね?」

父親「ノール、行きなさい。お父さんもお母さんも

何とか脱出してみせるさ!」

ノール「だったら、先にー」

母親「娘が1番に決まってるでしょ?母さん達は

後からでいい」

ノール「でも…」

父親「ノール…ありがとうな。こんな時にも親のことを

考えてくれて。でもな…」

父親はノールを力強く抱きしめる。

ノール「えっ…?」

父親「その優しさを…忘れないでくれ」

そうノールに告げると、父親は全力でノールを

投げ飛ばした。その刹那、焼け落ちた屋根が両親を

下敷きにしてしまった。

ノール「っ!母さん…父さん…!」


ノール「また…私のせいで…!」

フラット「?」

ノール「何で…!何で!」

キルユウ「ノール…」

バルシア「姉御…」

ノール「傷つける気なんかなかったのに…!

ただ脅して…終わらせるつもりだったのに…!」

フラット「エド、大丈夫⁉︎」

ナックル「おい、貴様!絶対に神器を解除するなよ!」

そう言われても、既にショックを受けているノールには

戦闘モードどころか、神器を操る願望すらも

なくなっていた。

フラット「あっ…どうしよう…!」

エド「大丈夫っすよ…俺なら…フラットなら…

分かるんじゃないっすか?」

フラット「…あ!実験台…まさか⁉︎」

エド「そうっすよ…俺の傷はすぐに治るっす。

致命傷だったとしてもっす」

ノール「私は…私は…」

キルユウ「ノール…」

ゆっくりとキルユウはノールに近づいていく。そしてー

キルユウ「いい加減目を覚ませ!」

力強くノールの頬を叩いた。

ノール「っ!」

キルユウ「俺達は…これ以上お前が罪を犯すような

真似、見たくもないしさせたくもない!」

ノール「…だったら…この怒りはどこに

ぶつければいいわけ⁉︎私の親を殺した私利私欲を…

この力を…どうやったら正しく導ける⁉︎」

ナックル「なるほどな…エドと同じか」

エド「…そうっすね」

フラット「正しく…か。ノール!これだけは言えるよ!

正しいかどうかは自分で決めることだよ!」

ノール「!」

キルユウ「その通りだ。お前が正しいと思ったことは

お前にとっては正しいのかもしれない。でもな…

その正しさで誰かが傷つく可能性もある。

お前が1番知ってることだった」

ノール「…分かってる。だからその可能性を消すために

毎回予告状を出してるんでしょ⁉︎」

フラット「予告状⁉︎」

ラルバ「はい、いつも出してますよ」

デラガ「ただ、アイツの破壊活動は危険すぎるが故に

破壊目的地に残るのは御法度だ」

フェアード「つまり、チャンスは破壊してすぐ…

だったんだが今回は予告状なかったな」

ノール「えっ…出しといたはずだけど…」

?「それは、私が消しておきました。あなたが

嫌と言えないようにね、再び組織に入ってもらうことを」

ノール「…この声はシーラス!」

シーラス「お久しぶりですね、破壊にしか才能のない

私のペット」

キルユウ「貴様…!」

バルシア「これ以上姉御を傷つける気なら、

容赦はしないぞ!」

シーラス「あなた達に何ができる。ファイターでもない

ただの獣人ごときに私を傷つけることができるとでも?」

ノール「…2人とも。ここは私がやる。見つけたから。

怒りのぶつけどころ。私の正しさを見せつけるチャンスを!」

シーラス「愚かなやつめ…切り刻んでくれる!」

フェアード「やっと見つけたぞ!貴様のようなゲス、

即刻逮捕だ!」

フラット「あれ、さっきと言ってることが真逆だけど⁈」

デラガ「あのシーラスという男は、自分の

役に立つ神力ならどんな手を使ってでも

利用するやつだ。ノールもその被害者ってわけだ」

ラルバ「なので、ノールの罪は器物損壊罪だけですよ」

フラット「そうなんだ!良かった〜…じゃあ、

あのシーラスを倒せばいいってわけだね!」

ノール「えっ…どうして⁉︎」

フラット「僕だって許せないもん!人のために

一生懸命頑張ってきたノールを傷つけたこと…

その罪を、一緒に裁きたい!」

ノール「フラット…!」

ナックル「そうだな!いいこと言うじゃねぇの!」

エド「俺もやるっすよ!俺の正義、見せつけてやるっす!」

キルユウ「…よし…いくぞ、バルシア!」

バルシア「分かってるとも、兄貴!」

シーラス「私に歯向かおうとは…面白い!実力の差を

見せつけてやろう!」


最終節 ずっとそばに


シーラス「実力の差を見せつけてやろう!」

フラット「くるよ!」

エド「負けるわけにはいかないっす!」

ナックル「隊長、指示は任せたぜ!」

フラット「分かってるよ!ナックルさんは正面突破、

エドは回り込んで!」

ナックル&エド「了解!」

シーラス「敵の目の前で作戦を口にするとは…なんたる愚行!

第一暗殺『炎』術・『キラーフレイム』!」

フラット「僕に役割がないのに気付いてない?」

シーラス「気づいている!」

フラット「僕の役割は…リベロ!

第一審判『零』術・『凍瀧之結界』!」

シーラス「なっ⁉︎」

ノール「…私は…怖い…誰かを傷つけることが…

でも…!」

ナックル「何迷ってやがる⁉︎」

ノール「えっ…?」

ナックル「戦線離脱するぜ!任せた!」

エド「ちょ、ナックラーさん⁉︎」

ナックル「ノール!お前にとって正義ってなんだ!」

ノール「…人を助けるための…力…」

ナックル「そうだ!お前にだって…お前の力だって

誰かを助けることは出来るぜ!」

ノール「私の力が正義になる…?面白いことを

言える口だ。出来るわけがー」

ナックル「そうやって諦めてるから出来ねぇんだ!」

ノール「っ!」

ナックル「諦める前に、笑ってみろ!」

ノール「笑うって…何に…!」

キルユウ「よし…目的とは違うが、いくぞ!」

バルシア「姉御のためだ!煙弾、投射!」

ノール「アイツら…」

ナックル「お前が罪を重ねないように、破壊活動を

やっていたそうだ。いい兄弟じゃねぇか」

ノール「…何で…何でそこまで…!」

ナックル「お前が愛されてるからだ!」

ノール「えっ…私が…」

エド「うわぁぁぁぁ!」

フラット「エド⁉︎マズイ…僕1人じゃ…」

ノール「…フフッ…そうか。私の時は…

止まってなかった。気付かぬうちに…動いてた。

お父さん、お母さん…さよなら…ありがとう…私、

決めたよ!私が正しいと思う破壊をする!

そのためにも…ここで終わらせよう!」

シーラス「懲りずにまた刃を向けるとは…

憐れなピエロだな」

ノール「私はノール・タール…明星の破壊神!

第一破壊『闇之』術・『闇夜行特急列車』!」

シーラス「くっ…流石はノール!」

ノール「お前のお褒めの言葉なんか嬉しくない!

私の前から…消えろ!

第二破壊『炎』術・『バンフレイムクラッシュ』!」

シーラス「なっ…これは!」

フラット「逃がさないよ…神業・結界!」

キルユウ「よし、煙弾もあいまって視界が悪いはず!」

バルシア「姉御!やるなら今です!」

ノール「…現れよ、『破壊之負翼』!

最終破壊『壊滅』術・『ロストワールドクラッシュ』!」

シーラス「第二暗殺『霧之』術・『刹那風火』!」

ノール「ちっ、逃がした…」

フラット「お疲れ、ノール!」

ノール「フラット…」

キルユウ「お前にしては頑張ったんじゃないか?」

バルシア「姉御、カッコよかった!」

ノール「…でも…私利私欲を壊したことは…

消せないよね…」

フラット「そりゃそうだよ。ノール、言ってることが

矛盾してるもん」

ノール「矛盾?」

フラット「だって…ノールも私利私欲で

動いてたじゃん」

ノール「えっ…私も私利私欲で?」

フラット「そう、私利私欲を壊したいっていう欲に

かられて破壊をしてたでしょ?」

ノール「あ…」

エド「いててて…」

ナックル「大丈夫か?」

フラット「…ああやって誰かを想う心も…」

キルユウ「ノール、怪我してないか?」

バルシア「早くこっちにきてくださーい!」

フラット「家族を愛する心も…全部、欲が

あってこそだよ!」

ノール「欲が…あってこそ…」

フラット「だから、私利私欲を壊すってことは

闇雲すぎるよ。まっ、大罪だろうね、3人して」

ノール「大罪…」

フラット「だから…一緒に戦わない?」

ノール「えっ⁉︎」

フラット「きっと、楽しいよ!あの2人も一緒に!」

ナックル「…いいんじゃねぇの?」

エド「デ・ロワーが賑やかになるっすね!」

ノール「でも…私はヴァイス!罪は償わないと!」

フラット「ファイターとして償えばいいじゃん?

命をかけて戦うんだもん、ね?」

ノール「フラット…」

キルユウ「ノール、こう言われてんだ、断る理由も

ないだろ?」

バルシア「俺達も、ファイターじゃないですけど…

手段があるなら!」

フラット「うん、分かってる。それに、天使の一生は

約千年。必ずどんな罪でも償えるよ!」

ノール「フラット…」

ナックル「まっ、これで事件も終わり、だな!」

エド「そうっすね!」

ラルバ「うぅ…出番なしなんて…」

フェアード「…いいだろう。ノールを笑顔にできれば、

何だっていい」

デラガ「フェアードは…そうだろうな。怪我人は

いなかったしな」

ノール「…あの…私が壊したのって…元通り?」

フェアード「…君は偉いね。違法建設物やら

違法娯楽施設を壊してくれてさ」

フラット「えっ⁉︎」

ナックル「お前…なんだ、ヴァイスじゃねぇのか。

まっ、ファイター法には反してるがな」

エド「それをヴァイスって言うんすよ!」

フラット「悪質じゃないからいいよ。でも…

あのカジノは?」

ラルバ「あそこは、有名ヴァイス組織の

ワイロ現場として使われていたんですよ!」

ナックル「よっしゃ、ならなおさらデ・ロワーに

来てほしいな!」

ノール「…ナックラー…フラット…エド…分かった!

私、入る!ファイターになる!」

フラット「うん!よろしくね!」

ノール「こちらこそ…よろしくお願いします!」

2人は握手を交わす。

ナックル「それじゃ、まずはアレといこうぜ!」

エド「アレっすね!」

ノール「アレ…?」

フラット「僕のウォッチフォンを使うね!

カメラ起動して…ノール中心にキルユウとバルシアが

囲んで!両端にナックルさんとエド!

僕がバックで映るから!」

全員はフラットの指示した通りの定位置につく。

フラット「よし、それじゃ、ノール!掛け声は

勝利のVサイン、きめっ!だよ?」

ノール「分かった!」

ナックル「それじゃ、合図よろしくな!」

ノール「キルユウとバルシアも!」

キルユウ「俺もか⁉︎ノールが言うなら…」

バルシア「じゃ、やりますよ!セーの!」

3人「勝利のVサインー」

全員「きめっ!」

フラット「できた!じゃ、ノール!裏に一言書いて!」

ノール「それじゃ…こうかな」

フラット「お…いいこと書くじゃん!」

ノール「あっ!見ないで!」

フラット「ごめん!それと…この壊したセット、

直してよ?」

ノール「私一人で⁉︎忘れてないよね?私が

破壊神の力を持ってること!」

フラット「分かってるよ、一緒にってこと!

キルユウとバルシアもね!」

キルユウ「作るのは得意だ!」

バルシア「任せといてください!」

ラルバ「あっ、本官達も手伝いますよ!」

デラガ「管轄外だぞ」

フェアード「まぁ、そんな硬いこと言わずにな。

イベント、見せてもらうわけだし、

手伝ってもいいだろ?」

フラット「じゃ、じゃあお礼に何かー」

ラルバ「お礼はいらないですって!困った時は

お互い様です!」

ノール「いや、巡査は困ってないじゃん」

デラガ「だな?」

ラルバ「うぐっ…別にいいじゃないですか!」

フェアード「とりあえず、お礼はいらないさ。

ボランティみたいなものと考えてくれ」

フラット「はぁ…」

ナックル「残り3日しかねぇから急ぐぜ!急ピッチだ!」

エド「照明は俺がやっとくっす!」

フラット「それじゃ、協力して取り掛かろう!」

全員「おーっ!」


その夜ー

ノール「お父さん、お母さん…私…もうあまり顔を

見せられないかもしれない…でも!遠く離れてても

分かるぐらい輝くから!」

キルユウ「お、やっぱりここにいたか。俺も

お参りしないとな。拾ってもらったわけだし…」

ノール「覚えてる?キルユウ達が来た日のこと」


父親「ノール、アザミ…あのな、話がある」

母親「話?」

ノール「何?」

父親「この家に、流れ者の子を迎えてあげたい。

どうだろう?」

ノール「えっ…家族が増えるの⁈」

母親「いきなり…たしかにうちはお金に問題はないけど

その子達はなんて言ってるの?」

父親「まだこっちの言葉は話せないが…

ノールのためにもなるだろ?保育士みたいなもんだ。

それに、ノールも兄弟が欲しいだろ」

ノール「えっ…いいの⁉︎」

父親「あぁ、長女として、明るく振る舞ってくれ」

母親「良かったね、ノール。お母さん、赤ちゃんもう

産めないから…」

ノール「お母さんは悪くないよ。子宮がんじゃ…ね」

母親「いつぐらいにこっちに来れるの?」

父親「今日の夕方だ。すまんな、急すぎて」

母親「そこはいいの。テランがそう言う性格なのは

よく分かってるから。幸いにも、今日は休日。

ノール、パーティの準備手伝ってくれる?」

ノール「いいよ!」


そして夕方ー

父親「帰ったぞー!」

ノール「お帰り!」

母親「来たのね!お名前は?」

父親「キルユウとバルシアだそうだ。あと、これ」

ノール「翻訳機…!初めて見た!」

母親「これで会話にも困らないね!」

ノール「早速使ってみよっと!えーっと…

私はノール!よろしく!」

翻訳機「アレル ノゥ ノール。 ピピット!」

キルユウ「!アレル ノゥ キルユウ!

ピピット ミィ!」

バルシア「アレル ノゥ バルシア、

ピピット ミィ!」

ノール「うわぁ〜!会話出来た!」

キルユウ「アレル シャミック ゲシ コーゴ!」

翻訳機「私はここの言葉を知りたい」

ノール「いいよ!」

翻訳機「ネルツェ!」

キルユウ「デンラ!」

翻訳機「ありがとう!」

ノール「楽しい〜!あ、こっち来て!

パーティするから!」


ノール「楽しかった。一家団欒だんらんで」

キルユウ「あの時のバルシアは懐かしいな。

今とは違って、シャイだったもんな」

ノール「キルユウこそ、大人しくなった。

昔はヤンチャだったのに」

キルユウ「べ、別にいいだろ。すぐプッツンして

ケンカしちまうより」

ノール「たしかに。ねぇ、キルユウ」

キルユウ「?どうした?」

ノール「…私ね…キルユウのこと…昔からね…

好きだったんだ」

キルユウ「へ…?」

ノール「出会った時から…ずっと…だから…その…

ダメかな…」

キルユウ「…今日は冷えるな」

ノール「えっ…?」

キルユウ「こうも冷えると、手先が凍える。手、

貸してくれ」

ノール「キルユウ…!もちろん!」


フラット「遅いな〜…もう30分はかかってるよ」

エド「早く帰ってきてほしいっす〜、イベントの

最終確認したいっすのにー」

ナックル「もうノールなしでやらねぇか?」

ペーター「にしても、ヴァイスをファイターにするとは

驚かされたよ」

バジー「でも、破壊神ですか…攻撃の際に被害が

出そうですが…」

エド「多分大丈夫っすよ。神力をうまく操れてるように

見えたっすよ」

ペーター「それより、待つとしよう。全員が

集まらないと会議が成立しないしね」

フラット「早く来ないかな〜」

バルシア「それで、俺と兄貴はどこに

配属されるんですか?」

ペーター「君達は営業課の方に属してもらおう。

デ・ロワーに住み込みでいいかい?」

フラット「思ったんですけど、住み込みって

デ・ロワーってアパートでもあるんですか?」

エド「実は74階からは住居スペースなんすよ!」

フラット「えっ…デ・ロワーって便利…」

ナックル「家賃も安いしな!」

ペーター「あ、来たみたいだね」

ノール「ごめん、お墓参りしてたら時間かかった」

キルユウ「それじゃ、会議を」

ペーター「あぁ、それじゃー」


フラット「やっと終わった〜…もう寝よーっと」


獅子獣人「ふむ…どうやら“あの魂”はこちらの

フラットとは大違いのようだ。少し試練を

与えてみましょう」

獅子獣人は指を鳴らす。

フラット「ん…?あ、あなたは⁉︎」

獅子獣人「お久しぶりです。少しお話がありまして。

あなたはどうやら、人の心に光を与えられる

存在であるとお見受けしました。そこで、あなたに

試練を与えましょう。あなたの運命を変えるような…

試練を」

フラット「はぁ…?分かりました」

獅子獣人「では、これで。失礼しました、お戻りください」


フラット「うわっ…夢?うーん…変なの」

獅子獣人「試練を与えましょう」

フラット「なんか引っ掛かるなぁ…?あれ…

ナックルさんが…いない…」


獅子獣人「折角私が与えた力を愚行に使うなど…

許されたものではない。フラット君、君なら

あの男を罰してくれるだろう。“その体の記憶”が

蘇れば…」


ノール「おーい?何またボーっとしてる?

風邪でもひいてるのか?」

フラット「あ、いや…昔のこと思い出してただけ。

それより、イベント準備やろっか!」

ノール「あ、ちょっと待って。木材どうするの?」

フラット「あ…じゃあ誰かに発注頼まないと」

キルユウ「ふぅ〜…バルシア寝かしてきたぞ」

フラット「あ、お疲れ様。それより…早く浅草に

戻りたいね」

ノール「仕方ないだろ。デ・ロワーはぼろぼろだし」

キルユウ「おかげで仕事もなくなって収入が激減…

どうしたものか」

フラット「あれ…?何でキルユウの収入減ってるの?

ジ・アフダンの営業課で働いてるはずだけど…」

キルユウ「へ⁉︎聞いてないぞ!」

ノール「あ…バルシアから聞いてなかった?」

フラット「あー…ごめん、僕達の方から

伝えるべきだったね」

キルユウ「クッソ!アイツ、忘れっぽいのがなけりゃ

有能なのによ!」

フラット「ま、まぁ今日からでも働ければ大丈夫だよ!」

キルユウ「そうだな…すまん、行ってくる」

ノール「もう…って、忘れっぽいのがなくても

バルシアは無能でしょ」

フラット「アッハハ、たしかに」

エド「2人ともー!早くきてくださいっす〜!」

ナックル「おせぇぞ!」

フラット「あ、ごめん!」

ガタッ!

ノール「?何今の音…⁉︎」

それはジ・アフダンのビルの影の中に潜んでいた

幼体のアリジゴクが切り屑となった木材を

どかす音だった。

ノール「…こんな時に!」

フラット「幼体だから何とかなりそうだね!」

キルユウ「ちょっと待った!憂さ晴らしだ!

くらえ、対脅威用火薬!」

ノール「ちょ、伏せろフラット!」

フラット「うわっ!」

アリジゴク「ギュルル…ギュー!」

ノール「キルユウ!こんな狭い所で爆弾なんか使うな!

危ないだろうが!」

キルユウ「す、すまん…だが…倒したぞ」

ノール「全く…あれ…?あれれ…ない…写真がない!」

キルユウ「?これか?正なる破壊を目指してって

書いてあるやつ」

ノール「読まないでよ!返して!」

キルユウ「おっと、そりゃ悪かったな。ほらよ」

ノール「本当、デリカシーがないんだから…」

フラット「それじゃ、今度こそイベント準備に

取り掛かろっか!」

ノール「そうだな。私も鬱憤溜まったし、

ストレス発散も兼ねて全力でやろっと」

フラット「…やっぱりノールはいいや」

ノール「な、なんで?」

フラット「ノールが全力でやると何か壊れるのは

確実だから」

ノール「最低!私だってわざとじゃない!」

フラット「分かってるよ、だからどうしようもなくて

困ってるんじゃん」

ノール「もういい!待てフラット!」

フラット「かけっこで僕には勝てないよーだ!」

ノール「くっそ〜!」

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