第四十五話 大阪の名所なのです!
「これは、すっっごいのぉ!」
「立派なのです!」
「すごく豪華」
見事に晴れた晴天の元、四人の前にそびえ立つ緑青色の屋根と、その屋根の上にある金の鯱がキラリと輝く豪華な天守閣を見上げ、三人はそう声を上げていた。
「凄いでしょ、大阪城は」
「はい!あんな大きなビルに囲われてるのに、それでもこの存在感。凄いとしか言い様がないのです!」
「風格、というものじゃろうな。ただ大きいだけではない、あちこちに施されている意匠によってこの建物の風格が生まれてるのじゃろう」
「それだけじゃない。刻まれた歴史の重さが風格には、必要」
「お、ロクラエルちゃんよく分かってるね。建て直されたりはしてるけど、大阪城自体はだいたい五百年前に建てられた物でね、豊臣秀吉っていう日本を統一した人のお城なんだ」
「日本を統一、なのです?」
「私達は色んな県を旅してるじゃない?今でこそ一つの日本って国の県だけど、昔はそれぞれが国でね。鹿児島は薩摩、愛媛は伊予、そしてここ大阪は摂津に和泉、河内って色んな国に別れてたんだよ。それを統一したのがこの城を建てた豊臣秀吉その人ってわけ」
「ほぉ、幾つもの国を平定した者の城というわけか。ならばこの風格にも納得というものよ。じゃが水無月、何故この城の瓦は緑なのじゃ?」
「確かに緑。他のお城は黒かったのに」
「あれは銅板瓦っていう銅の板を瓦にした物でね、それが錆びて緑青色になってるんだよ。確か元の秀吉公が作った天守閣は金箔を貼った瓦だったような」
「なるほど、銅は錆びる前なら金みたいにキラキラ光ってるのです。もし錆を剥せる魔法があったら全部剥がして見たかったのです」
「無いならば作れば良いだけよ、なぁ水無月や」
「あの緑青色の屋根は大阪城のトレードマークな所もあるし、もし作ったとしても勝手に使ったりはしないように」
「「はーい」」
大阪城の緑青瓦を見て、そんな事を考え始めた二人に水無月はそう釘を刺すのであった。
ーーーーーーーーーー
「お待ちどう。ミックス四人前と焼そばひとつ」
「大将さんありがとうございます」
「……何か分からない事があれば」
「ありがとうございます。さて、それじゃあ注文してたのも届いたしお昼ご飯にしよっか!」
「……ご飯じゃない」
「……水無月や、これが昼飯とはいうまいな?」
鉄板を挟んで向こう側、お昼ご飯を食べにお店へとやって来ていた四人の内有翼組二人は水無月に向い、今しがた届いたキャベツやエビ、豚、タコ、牛といった具材の浮かぶドロドロが入った器を前にそう尋ねる。
「いやいや、どう見てもお昼ご飯でしょ。まぁまだ調理前だけど」
「それじゃ!普通店というのは調理済みのを出すもんじゃろ!」
「ふっ。甘い、甘いよヘグレーナちゃん。大阪のおばちゃんがくれる飴ちゃんより甘いよ」
「なんじゃとー?」
「大阪のお好み焼きは自分で作ってなんぼ。作ってくれるお店も多いけど、自分で作る事でより美味しく感じるんだーよっと」
じゅぅぅう……
カチャカチャと手際よくその具材の入ったドロドロ、お好み焼きの種を混ぜ、鉄板で焼きながらヘグレーナへとそう説明した水無月は、いい感じに焼けたお好み焼きをひっくり返す。
「美味しそう。ノルン、私のも焼いて」
「はいなのです」
じゅぅぅう……
「ぐぬぬぬぬ……」
そんなひっくり返した後の食欲をそそる匂いと音にはヘグレーナも逆らえず……
「水無月や、そのー……妾の分も頼んで良いかの?」
「ふふっ♪いいけど、せっかくだしヘグレーナちゃん自身で焼いてみない?やり方は教えるから」
「ま、まぁいいじゃろう」
「素直じゃないんだから」
こうして四人は大阪の粉物を大いに楽しんだのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます