第四十四話 ハシゴなのです!

「「「「かんぱーい!」」」」


 ガヂャン!


 店内の個室にも関わらずガヤガヤと外の賑やかさが聞こえてくる中、無事異世界より戻ってきた四人はグラスが割れるのではと心配になるほどの勢いでグラスを合わせていた。


「かーっ!ひっさしぶりの酒は身に染みるのぅ!」


「だねぇ!アルコールが肝臓に染み渡る!」


「本当に二人はお酒が大好きなのです。アタシも飲んで見たいのですー」


「ノルン、お酒は堕落の始まり。ジュースが一番」


「だとしても憧れはあるよねぇ。お酒は大人の嗜みたなんて言うし、まぁノルンちゃんもあと五年もすれば────」


「お待たせしました。こちらご注文の品々になります」


「お、きたきた!ありがとうございます」


「やっと料理が来たのです!料理ー……が?」


「えっ……えっ?」


「み、水無月よ、この量は何かの間違いでは……」


「ふっふっふっ……!今回はいつもよりも長丁場だったけど皆頑張ってくれてたからね、作戦完了も兼ねてのお祝いだよ!」


「つまりこれ全部……」「食べて……」「いいのです?!」


「勿論!さっ、冷える前に食べちゃって!」


「「「いただきまーす!」」」


 水無月からのGOサインを貰った三人は、目の前に並べられた綺麗に盛り付けられた沢山の豚を初めとした牛や鳥、エビタコイカの海鮮、そして野菜にちょっと変わった卵やチーズの串カツ等へと手を伸ばし頬張り始める。


「ほふほふっ!ほふいほへふ!」


「そりゃあ出来たてだからねぇ」


「サクサク、ふわふわ、じゅわぁ」


「ふふっ♪ロクラエルちゃん語彙力死んじゃってる」


「肉のジューシーさにソースがピッタリで最高に美味いのぅ!どれ、もう一度ソースを付け────」


「おっとヘグレーナちゃん。2度付けは禁止だよ。場所によってはすっごい怒られるから注意しててね」


「でもすっごく美味しいのです!玉ねぎなんか甘くて最高なのです!」


「お肉も凄く美味しい」


「この紅しょうがのカツもピリッとしておってなかなかいけるぞ。酒にもあって最高じゃ!」


「ふふっ、皆楽しんでるねぇ。さっ、まだまだ来るからいっぱい食べてねー」


 ーーーーーーーーーー


「「「ふぅー……食べた食べたー」」」


「いっぱい食べてたもんねー。所で皆、今お腹の具合はどんな感じ?」


「3分目くらいじゃな」「4分目なのです」「1分目?」


「流石皆、よく食べるねぇ」


「だとしてもロクちゃんのお腹は底なしなのです」


 あの後、串カツ屋で三回くらい同じ量を注文した後、街へと出た四人はタクシーを拾い、次の目的地へと向かっていた。


「ふふふふふっ♪にしても、移動1つにタクシーを使うなぞ、今日はなんだか羽振りがいいのぅ水無月よ」


「いやぁ実はね、ちょっとやらかしたって悩んでた同期に黙っといてあげるっていったら今日のお代全部財布から払ってくれるって言うから」


「あー……なるほどなのです」


「それで、今はどこに?もう帰る?」


「ふっふっふっ……!皆今日は覚悟するのだ、なんと言っても今日はハシゴするからね!」


「「「ハシゴ?」」」


 ーーーーーーーーーー


「でっかい蟹が……動いてるのです!」


「動いてるというより、蠢いてる?」


「カニ天国って名前じゃが……威圧感凄いのぉ」


「私も初めて見た時は圧倒されたなぁ。ささっ、ここでつっ立ってても迷惑だしさっさと中に入るよ」


 かに天国と書かれた看板の上にある動くデカいカニに圧倒されていた三人が、水無月にそう言われ店内に入り暫く待っていると……


「お待たせしました。特上コース四人前と単品の焼きタラバ、タラバの天ぷら、カニ握り、かに造り、甲羅酒、そして毛ガニの姿茹となっております」


「「「うおぉー!」」」


「かっ、かに!本当にカニ天国じゃ!」


「いっぱいなのです!しかも全部高級なやつなのです!」


「凄い、カニ丸々一匹茹でられてるのもある」


 次々と目の前に茹で用焼き用生用のカニに加え、カニのお寿司や天ぷら、丸々一匹茹でられたカニなど様々な料理が並べられ、三人とも目を丸くしながらそれぞれ連れて来甲斐のあるリアクションを取る。


「ふふふっ!さっ、これも食べちゃって!」


「「「いただきまーす!」」」


 そんな3人を見て楽しそうに笑った水無月にそう言われ、三人は机に並べられたカニを次々と平らげたのであった。


 ーーーーーーーーーー


「いやぁー……竜の胃をもってこれ程までに満腹を感じたのはいつぶりじゃろうか」


「もう後1品くらいしか入んないのです」


「美味しかった。まだ食べたい」


「本当にロクラエルの胃は底なしじゃな……」


 あれからふぐ料理店で大皿のてっさやてっちりを楽しみ、更に焼肉屋で高級和牛やらホルモンやらと存分に食べ尽くした一行は、満たされたと言った顔でホテルへと歩いていた。


「でもほんと、こうして美味しいものを囲めるのも皆のお陰だよ」


「そう言われると照れるのぅ」


「水無月にしては珍しい。これがお酒の力」


「なのですー。って、あれはっ!みーちゃん、あれ!最後にあれいいですか?!」


「あれ?お、たこ焼きかぁ。締めにちょうどいいし皆でつつくか。おじちゃん、たこ焼き一舟おねがーい」


「お!近頃有名な異種族の嬢ちゃん達じゃねぇか!丁度焼きたてだからうめぇぞ!はいお待ち!食べるならそこのベンチで食べてきな!」


「ありがとうなのです!」


「さてさて、それじゃあ皆一つずつ爪楊枝刺して貰って……」


「「「「いただきまーす」」」」


「んっ、あふあふは」


「熱々じゃが、タコもこりこりでうまいのぅ!」


「ふー……ふー……はふっ。はふふふっ!はふいほへふ!」


「あらあら、ノルンちゃん猫舌なのに急ぐから。でも美味しいねぇ」


 賑やかに一舟のたこ焼きをつつきながら、四人はこれでハシゴを締めくくったのであった。

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