第四十話 特訓なのです!
「んで、気付いたらこんな場所に居たと」
「うーむ……ダサいのぅ」
「ダサいのです」
「ダサい」
「ううっ……!」
あれから目を覚ましたロイドに水無月が聞き込みを行い、どうしてこんな森の奥に居たのかを聞いた三人は本人の目の前だと言うのに揃いも揃って包み隠すこと無くそう言い放つ。
「皆もう少し包み隠してあげても……」
「どうせここで暫く面倒を見るなら気を使うだけ無駄じゃ」
「なのです。みーちゃん達日本人が気遣いすぎなだけなのです」
「思考を読み取るくらいやるやる」
「……一人ヤバイのいなかった?」
「大丈夫大丈夫、悪い子じゃないから。それより、当面の間はここで面倒見てもいいけれどこれからどうするの?何かアテになる物とかは?」
「あるには、ありますが……故郷に帰ろうと思います」
「故郷に?」
「はい、僕は……」
『つまりロイド、お前はこのパーティーに要らないんだよ!』
「いえ、なんでもないです」
「そう。なら貴方の体力が回復し次第貴方の村まで私達が送って────」
「ロイドと言ったか。お主、悔しくはないのか?」
水無月との会話の最中、口淀んだ際に一瞬だけ見えた暗い表情を見たヘグレーナは、水無月の提案を遮りながらロイドへとそう問いかける。
するとロイドは何か言いたそうな表情になる。
「話を聞いておった限り、お主は一方的に追い出されておるでは無いか。お主の実力がどの程度の物かは知らんが、背中を丸めて故郷へ帰るのか?」
「っ……!で、でも僕が何した所でもう……」
「それは今関係ないじゃろ。今妾が聞きたいのは一つじゃ、悔しくはないのか?バカにされ、追い出され、どんな形だろうと積み上げた物を壊されて、一矢酬いる事もせず逃げ出して、悔しくはないのか?」
「く、悔しいに……!悔しいに決まってるじゃないですか!でも、僕じゃ!」
「悔しいならば良い。水無月や、時間は何日程取れる?」
「向こうなら長くて三日、時間計測通りなら一時間10分だからだいたい2週間半は大丈夫。勿論交渉は続けるよ」
「えっとヘグレーナさん、時間取るとは一体何を……」
「なぁに決まっておるわ」
「?」
「特訓じゃよ」
ーーーーーーーーーーーー
午前六時────
「うぐっ!」
「もっと上手に受け身を取るのです、こうしゅたっと」
「しゅっ、しゅたっと……?」
「しゅたっとはしゅたっとなのです!こんな感じで全身を使ってしゅたっと!」
日も登りきらないこの時間、ガサガサガサと音を立てノルンに続いて木から降りてきたロイドは盛大な音を立て地面に体を打ち付けていた。
「こ、こんなので本当に体術が身につくのか……」
午後二時────
「私、殴る。君、避ける」
「は、はい?」
「始める。せいっ!」
「ふぐっ!」
お昼過ぎ、木漏れ日が気持ちよく集中力が途切れ始める時間帯、ロイドはロクラエルの拳を顔面から受け止めていた。
「なんで避けない?」
「よ、避けないって、いきなり言われてもわかんないって!ノルンさんのが体術なのは分かるけど、なんの修行なのこれは!」
「避ける修行、次行くよ」
「ふぬぅ?!」
午後九時────
「さて、日中しごきぬかれた後は美人先生による魔術講座じゃ。とはいえ妾達になんの説明されず修行とだけ言われて訳分からんかったじゃろう」
「ホントだよ……」
「ま、身に染みて分かっておるじゃろうが、念の為今回の授業ではお主に行っておる各員の修行の目的を教えてしんぜよう」
「お願いします」
夜、ノルンの作った夕飯を食べ終えた後星空の下でランタンのあかりの元ヘグレーナによる魔術講座が行われていた。
「先ずノルンの修行じゃが、あれは獣人特有の体の使い方、獣人体術を習い、最終的にはナイフを使った戦闘技術を学んでもらう予定じゃ」
「成程……だから木から突き落とされて……成程?」
「深く考えてはならんぞ、頭がバグるだけじゃ。してロクラエルの修行じゃが、これは反射神経を鍛える修行じゃ。最終的には見切りを極めてもらうぞ」
「だから殴るのを避けろって言ってたのかあの人は……」
「あやつは言葉足らずじゃからなぁ。して、妾の修行では魔術について学び、実戦でも充分に使うに値する程に魔術を使えるようになる事が目的じゃ」
「魔術……って事はもしかしてあのグレートウルフを退治した様な魔術も!」
「あれは妾固有の魔法みたいなもんじゃ。一応固有がどういうものかもおしえるが、お主に固有の魔法があるのか分からぬからの、教えるのは魔術になるぞ」
「なるほど……」
「なんじゃ、不安かの?」
「い、いやっ。そんな事は……」
「気にせんでよい。今まで積み上げてきたものが壊されたばかりだからのぅ。じゃがとりあえず一週間、妾達を信じて修行に向き合って見るのじゃ。そうすれば、お主は必ず成長するはずじゃから」
「……はい!」
こうして、ヘグレーナ達三人によるロイド修行の一週間が幕を開けたのだった。
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