第三十四話 鳴門の渦潮なのです!
「はふぅ……阿波踊り凄かったのです」
「まだ耳に音楽が残ってる気がする」
特等席で阿波踊りを存分に楽しんだ次の日、四人は徳島の北部にある鳴門市へと来ていた。
「ふふっ。皆一晩経っても興奮冷めやらぬって感じだね」
「あの一糸乱れぬ踊り、あれは一晩寝ても頭から離れんよ」
「それでみーちゃん、今日はどこに向かってるのです?」
「お祭りある?」
「ロクラエルちゃんは四国ですっかりお祭りの虜になったねぇ……お祭りは残念ながらないけど、自然の凄さなら体感できるんじゃ無いかな?」
「「「自然の凄さ?」」なのです?」
「そう、自然の凄さ。日本の文化を楽しんだ後は自然の雄大さでってね。っと見えてきた見えてきた!あれが今日のメイン観光地、鳴門海峡だよ!」
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「ムリムリムリムリ怖い怖い怖い怖い怖いのですー!」
「あはははは……そういえばノルンちゃんって高い所苦手だったっけ」
「高いだけなら大丈夫なのです。床が透明なのが無理なのです!」
「そういや、別府の時はノルン大丈夫だった」
「足場がないと不安なんじゃろうなぁ……」
鳴門大橋にある渦の道の透明なガラス床の上に居る二人はそう言いながら、んぎゅうと水無月に抱きつくノルンとそのノルンを撫でる水無月を見てそう考えるのだった。
「それで水無月や、このままではただ単に怖がるノルンと透明な床から海を見てるだけじゃが」
「ん?そうだなぁ、時間的には問題ないし……おっ、こっちからなら見えるよ!」
「む?おぉ、これか!」
「そういや徳島に入った時に言ってた」
そう言って三人が覗き込む水無月の立っていた付近のガラス床の下の海には、様々な大きさの渦潮が出来ていた。
「これが鳴門海峡の渦潮だよ。世界でもこれ程の渦潮ができる潮流は殆どなくて世界三大潮流の一つだったりもするんだ。さて、ノルンちゃんも怖がってる事だしここはこれくらいにしといて、次はもっと近くに行ってみようか」
「「へ?」」
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ザッパーン……
「な、なぁ水無月や、まさかとは思うがこの船が向かっておるのは先程の渦潮なのか……?この、小型船であの場所に?」
「そだよー」
「そだよー、ではないわ!本気かお主!?ノルンも何か言ってやれ!」
「スリル満点で楽しそうなのです!」
「んなっ?!さっきまであんなに怯えていたではないか!」
「高い所が苦手ってだけでハラハラドキドキは大好きなのです!」
「こやつ……!さっきあんなに震えておったのに……えぇい!ロクラエル!お主はどうなのじゃ!」
「私、渦潮好き。竜巻みたいで突っ込んだら面白そう」
「えぇ……」
そんな風に今度はノルンと変わってギャイギャイと騒ぐヘグレーナ含む一行は、橋桁にある橋の渦の道から地上へ戻ったと思えば今度は船の上で渦潮へと向かっていた。
「ヘグレーナちゃん、船と渦潮にトラウマか何かあるの?」
「い、いや。トラウマという程ではないが……昔、ヒトの姿で元の世界を旅してた頃にたまたま乗ってた船がリヴァイアサンの渦によって沈められてのぅ。そのまま渦が収まるまで三日三晩洗濯機の様にぐるぐると……」
「うわぁ……ま、まぁでもこの船は大丈夫だから!少なくとも渦潮で沈没したりは──────」
ガタン!
「おわっ!」
「大きい渦なのですー!」
「流石に揺れる」
「だっ、大丈夫なんじゃよな水無月?!」
「大丈夫大丈夫。それよりも、皆こっちおいでー」
グラりと大きな渦潮に船が触れた事で揺れてしまい、がやがやと賑やかになった船内で、水無月はそう言うと三人を手招きする。そして三人がそれについて行くと……
「「「おぉー!」」」
「凄いのです!本当に海の竜巻なのです!」
「渦潮を横から見れるなんて、びっくり」
「これは、テンション上がるのぅ!」
「ふふっ♪この船は船底に展望スペースみたいなのがあってね、横から渦潮を見る事が出来るんだよ。所でヘグレーナちゃん、渦潮大丈夫なの?」
「いや、なんというか普通にテンション上がって怖く感じなかったわ」
「そりゃあよかった」
真横で竜巻のように渦を巻く渦潮をみて、三人は大いに盛り上がったのであった。
その後、ヘグレーナとロクラエルが渦潮スレスレを飛行し水無月がハラハラさせられたのはまた別のお話。
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