第三十三話 伝統の踊りなのです!
「ただいまっ!」
「お、戻ったか水無月……って、大丈夫か?!」
「汗だくだ。戦場帰りみたい」
「みーちゃんお水なのです!」
「あ、ありがとう……ノルンちゃん」
それじゃあちょっと行ってくると言って昨日泊まったホテルから朝早く出ていた水無月が、息も絶え絶え汗だくで服や髪がぐちゃぐちゃになっているのを見た三人はギョッとしながらも水無月を心配する。
「ぷはっ!生き返るぅー……助かったよノルンちゃん」
「いえいえ〜。所で、こんな朝早くからあんな慌てた様子で出ていった上にここまでボロボロになるなんて、一体何してきたのです?」
「いやぁー実はね、今日行く予定の阿波踊りを特等席で見れるチケットがあってね、いつもならネット販売の段階で即売り切れの物なんだけど調べたらたまたま当日券販売中って書いてあって……」
「それでもみくちゃにされながらも買ってきたと」
「そゆこと!何とかギリギリ全員分の席を確保出来たからね!」
「なるほどのぅ。通りで今日はなんだか騒がしいと思った訳じゃ。して、チケットが買えたという事は今日の予定はその祭りを見に行くって事で良いのかの?」
「もちろん!でも始まるまでに色々と巡る予定だよー。という事で、今日も元気にしゅっぱーつ!」
「「「おー!」」」
ーーーーーーーーーーーー
「ふぅー!風が気持ちいいのーう!」
「あ!また橋が見えてきたのです!」
「橋の人みってるー?」
「皆ノリノリだねぇ」
徳島市内を流れる川をなかなかの速さで走るクルーザーの上、ひょうたん島クルーズへと参加している四人は川の上から徳島の街並みを川から見ていた。
「正直、人の街並みなぞこれといった特徴がない限り区別など付かんが、違う視点から見るとこれはこれで面白い物があるのぅ」
「元の世界の川ではこういう楽しみ方は出来ないのです!」
「空から見るのとはまた違う」
「全国でも街中をこうやって船で観光する場所は珍しいんじゃないかなぁ」
「はーい皆さん頭下げてくださいねー」
「「「頭?」」」
「お二人は翼も伏せさせといた方がいいかも」
「こう?」「こうかの?」
「そうそう、それじゃあそのままの体勢でいてくださいねー。それじゃあ橋、潜りまーす」
「うひゃあ!スレスレ!橋スレスレなのです!」
「ぶつかる!ぶつかる!角がぶつかる!」
「これはスリル満点」
そんなちょっとしたスリルも味わいながら、四人はクルーザーを満喫したのであった。
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「それじゃあ撮りまーす。はい、チーズ」
カシャ!
「ありがとうございました!あ、お礼と言っちゃあれですが徳島バーガーオマケつけときますね!」
ガヤガヤと賑やかな阿波踊りの会場付近の出店にて、三人は店員のハツラツなおじさんの頼みでそのおじさんと一緒に水無月に写真を撮ってもらっていた。
「ん、バーガーなのにレンコンが入ってる。斬新」
「トマトの酸味とも意外と合ってるのです」
「こっちのすだちドリンクもなかなかじゃぞ」
「健康にいい感じするー」
「唐揚げとかに合いそうなのです」
「確かに。ついでに買って行って試してみようか」
「っと水無月や、そろそろ時間ではないか?」
「ほんとだ、それじゃあそろそろ会場の方に行こうか」
「今更だけど、この阿波踊りって何のお祭り?」
「踊るのです?高知のよさこいみたいな感じで」
朝何とか取った特等席に向かいながら、耳をぴこぴこさせたり翼をパタパタさせながらよさこいの動きをする二人を見て、水無月はクスリと笑った後に阿波踊りについて説明を始める。
「よさこいと同じでこのお祭りも四国三大祭りの一つでね、よさこいが自由でパワフル!って感じなら阿波踊りは伝統的で繊細って感じかな?」
「ほぅ。という事は神聖な儀式の様な祭りなのかの?」
「いーやー、盛り上がりならばよさこいにも引けを取らないくらいだよ!まぁ私としては阿波踊りの方が日本の昔ながらのお祭りって感じがするかな。元となった盆踊り感が強いって感じ?」
「なるほど、だから昔ながらって感じなのですね!」
「そういうこと!」
「さて、それじゃあ飲んで食べてしながらお祭り楽しもう!」
「「「はーい!」」」
水無月から阿波踊りのレクチャーを受け、この祭りについての知識が深まった所で太鼓や笛の音が聞こえ始める。
そして四人は特等席から阿波踊りを楽しみ、大いに盛り上がったのだった。
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