第二十一話 浮遊島の正体なのです
「俺ら以外に生き残りが居たとはなぁ!」「おねーちゃんなんで翼があるのー?」「おみみぴこぴこー!」「人間じゃないみたいだぞ」「どこから来たんだ?!」「大変だったろうに」
「あははははは……どうするべきなのです?これ……」
「えと……えと……水無月、助けて」
鬱蒼とした木々を抜けてようやっと塔まで辿り着いたと思った二人は、今度はその塔の前に広がっていた村の住人に囲い込まれていた。
『とりあえず、逃げたりするのだけはNG。あとできるだけ嘘も避けて。聞き取り調査は気になる単語が出た時だけそれとなく軽く聞く程度で』
「分かった」
「とはいえどうしたものか……」
「ねーねー!おねーちゃん達はどこからきたのー?」
「え、えーっと他の世界ー……からかな?」
「なんじゃ、戻ってきてみればなんだか賑やかなことになっておるではないか」
「ヘグレーナ」「ヘグちゃん!」
「もうそっちは大丈夫なのです?」
「うむ。気になっていた事の確認は終わったしの、後で水無月の所へ一度戻って軽く議論してくる予定じゃ」
「おぉ!更にもう一人!もしかしてあの方もお二人のお仲間ですかな?」
「あ、はい!そうなのです!アタシ達共々仲良くしてくれると助かるのです!」
水無月からの指示を聞いた二人がとりあえず目の前にいる村人達とどうするか考えていたタイミングでヘグレーナも合流し、改めてこの世界の人々との交流を始める。
「勿論ですとも!いやぁしかし、こんな美人さんが生きているだなんて、我らの神に感謝だ!」
「我らの神?」
「すまんがお主、その神とは誰の事なんじゃ?」
「おや、知らないのかい?っと、他所の国から来たなら知らなくても仕方がないか三人とも着いてくるといい」
村人の言っていた我らの神についてヘグレーナが訪ねると、男はそう言うと着いてくる様に行って村の奥へと向かう。
そして三人が男に着いて村の奥へと行くと、そこには村から物理的に切り離された島に建つ、ここまで目印にもしてきた目的地である巨大な塔がそこにあった。
「改めて近くで見ると、この塔デカいのぉ」
「でも、思ってたよりもボロボロなのです」
「原型保ってるのが、不思議」
「だろう?この塔に我らの神は住んで居てな、あの方のおかげで我らは今でも死なずに済んで居るのだ」
「死なずに済んでる……なのです?」
「む?外の国では崩壊の影響はないのか?」
「えっと、ヘグちゃん……」
「あー……すまんがお主、一度妾達の話を聞いてはくれまいか?」
案内してくれた男や着いてきた村人達が勘違いしてると察したヘグレーナは、そう言うと自分達がどこから来たか、どういう立場にあるのかを懇切丁寧に説明する。
「えーっと、つまりなんだ、お前さんらは他の世界からやってきた奴らで?そっちの世界での異変を止めるべくこっちの世界の異変を止めに来た……って事でいいのか?」
「まぁ、そういう所じゃの」
「なるほどねぇ……これは機じゃないかしら?貴方」
「そう……か、そうかもな。すまん、申し遅れた。俺はこの村の村長をしているヤムルカと言う。こっちは妻のテルルカだ」
「テルルカです」
「そ、村長さんだったのですね!てっきりノリがいいだけのおじさんかと……」
「ははっ。よく言われます」
「それでヤムルカ殿、その機とは?」
「ここではなんです。中で話しましょう、この世界の事を」
村長を名乗るヤムルカにそう言われ、三人はすぐ近くにあった二人の家へと案内された後、ヤムルカの口からこの世界がどういった世界なのかについて語られる。
「この世界は、数年前までは普通の世界でした。大地は生命を育み、海を挟んで世界はどこまでも続いていました。しかしある日、大昔より大戦を繰り返していた二つの国がぶつかり合いました」
「戦争……」
「はい。過去に類を見ない大規模な大戦でした。そしてその大戦では二つの巨大な兵器がぶつけられたのです。その兵器には当時発見されたばかりの魔法技術が使われていて……いえ、それは今関係ありませんね。とにかく、その兵器の攻撃がぶつかり合った事で崩壊という現象が起きました」
「崩壊……というと、さっきお主が行っていた奴か」
「はい。兵器同士の攻撃がぶつかった事で両軍共に壊滅状態になり、戦場に残ったのは空が見える一つの小さな穴でした」
「それが、崩壊」
「そうです。最初こそその穴はただの不思議な穴でした。何度か探索も試みられはしたものの帰還者は出ず、なんの成果も得られない事でそのうち穴は忘れられ、ちょっとしたゴミ捨て場になってしまいました。今思えばこれが問題だったのでしょうね」
「ゴミ捨て場にされたのが、問題なのです?」
「はい。穴が街のゴミ捨て場にされてから少したった頃、その穴は大きくなっており、今まで以上にゴミを飲み込む様になり、それに比例して穴の大きくなるスピードは早くなったのです。そしてそのスピードは緩む事なく、穴は巨大化し続け……」
「気がつけば、今のようにか」
「はい。巨大化した穴は自ら世界を食らうようになり、世界はこの様になりました。そして世界に残された場所がここだけとなった時、塔が現れ、その主たる神の御業により崩壊は止められたのです」
「なるほどのぅ……ということはあの鎖がこの世にこの大陸をつなぎ止めておるのか」
「鎖なのです?」
「うむ。妾だけ別行動を行ったであろう?実は移動中にちらりとじゃが見えたものがあっての────」
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「さてさて、確認の為に来てみたものの、やはりか……」
バサりと翼を羽ばたかせ、島の下へと回り込んだヘグレーナが予想通りという顔をする前には、人よりも太い浮遊島に繋がる鎖がいくつもそこにあった。
「出処は……異空間、ノルンの空間収納に近いものか。本質は親類に近しい力を感じるが、変質しきっておるのぉ。さて、この浮遊島の正体も分かった事だし帰るとするかの」
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「という事じゃ」
「つまり、この島が消えずに残っているのはその神様のおかげで、この島も浮遊島という訳じゃなく大陸の消え残りがつなぎ止められているだけ、ということなのです?」
「じゃな。さて、それではヤムルカよきかせて貰おうか、先程お主の妻が行っていた機とやらを」
「はい。貴女方には、是非とも我々の神を討ち取って頂きたいのです」
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