第二十一話 崩れゆく塔の主
「せあっ!」
Guooooooo……
「やはりロクラエルの拳は鋭いのぉ」
「ゴーレムだって目じゃないのです!」
「私の拳は岩をも砕く」
所々壁面が崩れ、迷宮のようになっている内部も瓦礫で散乱としている崩れかけの塔の中、幾つもの階層を進んだ三人はもう何度も相手にしたゴーレムを打ち倒していた。
ガラガラガラガラ……
「さてさて、だいぶ登ってきたのぅ。とはいえ、あまりゆったりはしてられんようじゃが」
「塔が崩れ始めているのです?」
「ここまで戦い過ぎた?」
「いや、どちらかと言えばこの塔の力そのものが尽きかけておるのじゃろう。幾ら神の住居とはいえ、世界を蝕む力を肩代わりし続けるのは無理があるじゃろうからな」
「なら、早く登らないとなのです。ヤムルカさん達の願いの為にも」
「だね」
三人は頷き合うと、出発前、ヤムルカ達に頼まれた事を思い出す。
ーーーーーーーーーーーー
「討ち取って欲しい?お主らを守る神をか?それは余りにも忘恩負義であろう」
「すいません、言葉が足りませんでしたね。正しくは我々からあのお方を解き放って頂きたいのです」
「解き放つ、なのです?」
「……あの方は、もう十数年の間本来滅ぶはずだった我々を生きながらえさせてくださいました。しかし、今尚力を失っているあの方と違い、もう我らに未来はありません」
「未来がない……って、どういうこと?」
「余り他所様に言う事では無いですが、世界がこの様になってから村人の誰一人子を孕まないのです」
「その十数年の間、ずっとなのです?」
「はい。しかし子が出来ないのに対し、我々は歳を取っています。このままでは、どう足掻いても数十年後には我々は滅んでしまう。そんなもう終わる世界の為に、まだ先のあるあの方の力を失って欲しくないのです。
そしてこれは、我ら村人全員の総意です」
ーーーーーーーーーーーー
「でもあの人達も何とか助けてあげたいのです」
「そっちは水無月が何とかしてくれる」
「そうじゃな。あやつが任せてと言っておったのじゃから、ここは任せる事にしておこうぞ」
「…………そうです……そうなのです。みーちゃんなら、あの人達を必ず何とかしてくれるはずなのです」
「うむ。そうと決まれば、そろそろ乗り込もうとするかの。塔の頂きへ」
そんな話をしつつ、ゴーレムを倒した階から細い階段を登り、崩れた壁から幾筋もの光が差し込んでいる小さな何もない広間に辿り着いた。
そしてヘグレーナがその広間の奥の扉を開くとそこには夕暮れに照らされた塔の頂きと────
「……来たか」
「お主が、この世界の神か」
袖や裾の縁に意匠の凝られた白色の金属の飾りのある、漆黒のコートを羽織った、銀髪をオールバックにしている紫の瞳のクマの酷い異様な雰囲気を放つ男がそこに居た。
「下の者達に聞いたのか」
「む、村の皆さんは!貴方にこの世界に縛られて欲しくないって思っているのです!それに、村の皆さんはアタシ達で何とかするのです!だから────」
ジャラララララララッ!
「っ!?」
「それと、俺がこの世界を守る事に関係はないだろう」
男のその雰囲気にやられたのか、真っ先に本題を話してしまったノルンに男が目をやるとどこからとも無く鎖が飛び出しノルンの鼻先を掠める。
「でも、貴方程の存在がこの世界に干渉する理由にもならない」
「ロクラエルは天使、ノルンは祭司、妾は夜を司る存在、神に近しい立場上、神と崇められる存在が世界へと干渉する理由や利点は充分把握しておる。じゃから、お主がこの世界を守る義務や利点が無いことは分かる。だのに何故この世界を捨てない」
「利点が無くとも、それが捨てる理由にはならないだけだ。さて、お前らにもお前らの目的と理由があるのだろう。だが、それが俺をこの世界より排除する事なら────
始めよう、戦いを」
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